JP5377368B2 - 発泡ポリウレタンおよびその製造方法、ならびに発泡ポリウレタンで構成された自動車用防振部材 - Google Patents

発泡ポリウレタンおよびその製造方法、ならびに発泡ポリウレタンで構成された自動車用防振部材 Download PDF

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Description

本発明は、耐ヘタリ性に優れ、ボイドを実質的に含まない発泡ポリウレタンおよびその製造方法、ならびに該発泡ポリウレタンで構成された自動車用防振部材に関する。
自動車では、多くの箇所に防振部材が配設されている。例えば、自動車のサスペンションにおいては、車体と車輪との間に生ずる変位量を弾性的に規制するために、防振部材として弾性体で構成されたマウント部材を備えたマウント装置が配設されており、かかる弾性体としてはゴムが一般的に使用されている。しかし、近年においては、自動車用防振部材の軽量化や、マウント部材が圧縮変形する際に発生する異音防止などの観点から、かかる弾性体として発泡ポリウレタンが使用される傾向がある。
下記特許文献1では、ポリエステル系ポリオール、ポリイソシアネート、発泡剤、およびフッ素系撥水剤を混合・撹拌した後、金型内に注型させて得られた発泡ポリウレタンで構成されたバンパスプリングが記載されている。しかしながら、かかる発泡ポリウレタンは発泡状態が不均一になる傾向があり、自動車用防振部材としては、動倍率などの防振性能の点で改良の余地があった。
ところで、発泡ポリウレタンの製造方法として、超臨界状態の非反応性ガスを発泡剤として用いる、いわゆる超臨界発泡方法が知られている。超臨界発泡方法によれば、均一かつ微細な発泡状態を有する発泡ポリウレタンを製造することができるが、その一方で発泡ポリウレタン内部に大きなボイドが発生する場合がある。このようなボイドが発生すると、発泡ポリウレタンの耐久性や防振特性などに悪影響を及ぼす。
下記特許文献2では、超臨界状態の非反応性ガスを発泡剤として使用し、タルクを発泡核剤として使用した超臨界発泡方法により、発泡ポリウレタンを製造する方法が記載されている。かかる方法では、タルクを発泡核剤として使用することで、発泡ポリウレタン内部のボイドを低減することができる。しかしながら、本発明者らが鋭意検討した結果、タルクを発泡核剤として使用すると、発泡ポリウレタンの耐ヘタリ性が悪化することが判明した。したがって、ボイドを実質的に含まず、かつ耐ヘタリ性が向上した発泡ポリウレタンを製造することは困難であるのが実情であった。
特開2004−293697号公報 特開2002−79545号公報
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、耐ヘタリ性に優れ、ボイドを実質的に含まない発泡ポリウレタンおよびその製造方法、ならびに該発泡ポリウレタンで構成された自動車用防振部材を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、以下に示す発泡ポリウレタンにより上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明に係る発泡ポリウレタンは、溶融状態の熱可塑性ポリウレタン組成物に超臨界状態の非反応性ガスを混合して得られる非反応性ガス溶解熱可塑性ポリウレタン組成物を、金型に射出成形することにより得られる発泡ポリウレタンであって、前記熱可塑性ポリウレタン組成物が、熱可塑性ポリウレタンと、イソシアネート末端プレポリマーと、シリコン系界面活性剤と、を含有するものであることを特徴とする。
上記発泡ポリウレタンは、熱可塑性ポリウレタンと、架橋剤として作用するイソシアネート末端プレポリマーとを含有する熱可塑性ポリウレタン組成物を原料として得られるため、発泡ポリウレタン中に三次元的な架橋構造が発現する。その結果、本発明に係る発泡ポリウレタンは、耐ヘタリ性に優れる。また、本発明に係る発泡ポリウレタンは、溶融状態の熱可塑性ポリウレタン組成物に超臨界状態の非反応性ガスを混合して得られる非反応性ガス溶解熱可塑性ポリウレタン組成物を、金型に射出成形することにより得られるため、均一かつ微細な発泡状態を有する。このため、動倍率などの防振性能に優れる。
上述のとおり、超臨界発泡方法により製造された発泡ポリウレタンは均一かつ微細な気泡を有するが、場合によっては発泡ポリウレタン内部に、微細な気泡に比して大きなボイドが発生することがある。発泡ポリウレタン中にボイドが発生すると、防振性能や耐ヘタリ性の悪化を招く恐れがある。しかしながら、本発明に係る発泡ポリウレタンは、原料である熱可塑性ポリウレタン組成物中にシリコン系界面活性剤を含有するため、耐ヘタリ性が良好に確保され、かつ実質的にボイドを含まない。なお、本発明において「ボイド」とは、気泡径が1000μm以上のものを意味する。
上記発泡ポリウレタンにおいて、前記シリコン系界面活性剤が、ポリアルキルシロキサンとポリエーテルとの共重合体であり、かつ前記シリコン系界面活性剤の分子量分布(Mw/Mn)が2.5〜7.5であることが好ましい。かかるシリコン系界面活性剤を含有する発泡ポリウレタンは、実質的にボイドを含まず、かつ特に優れた耐ヘタリ性を有する。
また、本発明に係る自動車用防振部材は、上記いずれかに記載の発泡ポリウレタンで構成されたものである。上記のとおり、本発明に係る発泡ポリウレタンは、ボイドを実質的に含まず、かつ耐ヘタリ性に優れたものであるため、本発明に係る自動車用防振部材は、優れた防振性能および耐久性を有する。
また、本発明に係る発泡ポリウレタンの製造方法は、熱可塑性ポリウレタン組成物を加熱により溶融状態とする溶融工程と、溶融状態の前記熱可塑性ポリウレタン組成物に超臨界状態の非反応性ガスを混合し、非反応性ガス溶解熱可塑性ポリウレタン組成物とする溶解工程と、前記非反応性ガス溶解熱可塑性ポリウレタン組成物を金型に射出成形する射出成形工程と、を含む発泡ポリウレタンの製造方法であって、前記熱可塑性ポリウレタン組成物が、熱可塑性ポリウレタンと、イソシアネート末端プレポリマーと、シリコン系界面活性剤と、を含有するものであることを特徴とする。
一般的に、熱可塑性ポリウレタンと、架橋剤として作用するイソシアネート末端プレポリマートとを含有する熱可塑性ポリウレタン組成物を射出成形することにより無発泡ポリウレタンを製造すると、射出成形時の射出圧力が時間経過とともに上昇し、射出圧力が射出不可能な領域まで高くなる傾向がある。このため、熱可塑性ポリウレタンとイソシアネート末端プレポリマーとを含有する熱可塑性ポリウレタン組成物の射出成形は、生産性が低下するという問題があった。
本発明に係る発泡ポリウレタンの製造方法では、溶融状態の熱可塑性ポリウレタン組成物に超臨界状態の非反応性ガスを混合し、非反応性ガス溶解熱可塑性ポリウレタン組成物とした後(溶解工程)、非反応性ガス溶解熱可塑性ポリウレタン組成物を金型に射出成形する(射出成形工程)。ここで、溶解工程において、非反応性ガスが超臨界状態であると、溶融状態の熱可塑性ポリウレタン組成物に対する溶解拡散効果が大幅に高まり、短時間で溶融状態にある熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物中に浸透する。これにより、熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物の大幅な可塑化が可能となり、射出成形時の射出圧力を低減でき、発泡ポリウレタンの生産性を向上することができる。加えて、熱可塑性ポリウレタンと、イソシアネート末端プレポリマーと、シリコン系界面活性剤と、を含有する熱可塑性ポリウレタン組成物を原料とすることにより、耐ヘタリ性に優れ、ボイドを実質的に含まない発泡ポリウレタンを製造することができる。
上記発泡ポリウレタンの製造方法において、前記シリコン系界面活性剤が、ポリアルキルシロキサンとポリエーテルとの共重合体であり、かつ前記シリコン系界面活性剤の分子量分布(Mw/Mn)が2.5〜7.5であることが好ましい。かかる製造方法によれば、実質的にボイドを含まず、かつ特に優れた耐ヘタリ性を有する発泡ポリウレタンを製造することができる。
上記製造方法において、所望の形状を有するように金型を設計することにより、容易に各種用途向けの発泡ポリウレタンを製造することができる。本発明に係る発泡ポリウレタンは、耐ヘタリ性に優れ、ボイドを実質的に含まないため、自動車用防振部材、特にはストラットマウント、アッパーサポート、バウンドストッパ、バンパスプリング、トルクロッド、ボディマウント、エンジンマウント、バウンドバンパなどとして特に有用である。本発明に係る発泡ポリウレタンは、特に優れた耐ヘタリ性を有するため、上述した用途の中でも、大きな圧縮負荷が常時かかる用途、例えばストラットマウント用として特に好適である。
本発明に係る発泡ポリウレタンは、溶融状態の熱可塑性ポリウレタン組成物に超臨界状態の非反応性ガスを混合して得られる非反応性ガス溶解熱可塑性ポリウレタン組成物を、金型に射出成形することにより得られる。熱可塑性ポリウレタン組成物は、熱可塑性ポリウレタンと、イソシアネート末端プレポリマーと、シリコン系界面活性剤と、を含有する。
熱可塑性ポリウレタンは、ポリオールとポリイソシアネートとを必須成分として合成されたものである。ただし、発泡ポリウレタンの耐加水分解性を向上するためには、熱可塑性ポリウレタンが、ポリエーテル系ポリオール、ポリラクトン系ポリオールおよびポリカーボネート系ポリオールの少なくとも1種のポリオール、ならびにポリイソシアネートを必須成分として合成されたものであることが好ましい。
ポリエーテル系ポリオールとしては、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリヘキサメチレングリコールなどが挙げられる。ポリラクトン系ポリオールとしては、ポリカプロラクトングリコール、ポリプロピオラクトングリコール、ポリバレロラクトングリコールなどが挙げられる。ポリカーボネート系ポリオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、ノナンジオールなどの多価アルコールと、ジエチレンカーボネート、ジプロピレンカーボネートなどとの脱アルコール反応により得られるポリオールが挙げられる。耐加水分解性の向上を図る場合、これらのポリエーテル系ポリオール、ポリラクトン系ポリオールまたはポリカーボネート系ポリオールを単独で、あるいは2種以上のポリオールを混合して使用することができる。
ポリイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジメチルジフェニルジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。これらのポリイソシアネートは、単独で、あるいは2種以上のポリイソシアネートを混合して使用することができる。
熱可塑性ポリウレタンは、上記ポリオールおよびポリイソシアネートに加えて、他のポリオール、鎖延長剤などを含有する組成物から合成されたものであってもよい。但し、発泡ポリウレタンの耐加水分解性を向上するためには、アジペート系ポリオールを含有しない組成物から合成されたものであることが好ましい。
鎖延長剤としては、両末端に活性水素を有する2官能性鎖延長剤を使用する。具体的には、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルオクタンジオール、1,9−ノナンジオールなどの脂肪族ジオール類;1,4−シクロヘキサンジオールなどの脂環族ジオール類;1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ヒドロキノン、レゾルシン、クロロヒドロキノン、ブロモヒドロキノン、メチルヒドロキノン、フェニルヒドロキノン、メトキシヒドロキノン、フェノキシヒドロキノン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルサルファイド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、ビスフェノールA、1,1−ジ(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェノキシ)エタン、1,4−ジヒドロキシナフタリン、2,6−ジヒドロキシナフタリンなどの芳香族ジオールなどが挙げられる。これらの鎖延長剤は、単独で、あるいは2種以上の鎖延長剤を混合して使用することができる。
イソシアネート末端プレポリマーは、ポリオールとポリイソシアネートとを必須成分として合成されたものである。ただし、発泡ポリウレタンの耐加水分解性を向上するためには、イソシアネート末端プレポリマーが、ポリエーテル系ポリオールおよびポリイソシアネートを必須成分として合成されたものであることが好ましい。ポリエーテル系ポリオールおよびポリイソシアネートとしては、上述したものと同じものを使用することができる。なお、イソシアネート末端プレポリマーの分子量は、数平均分子量が3000以下であることが好ましく、2000以下であることがより好ましい。数平均分子量が3000を超えると、発泡ポリウレタンの耐ヘタリ性が悪化する場合がある。一方、イソシアネート末端プレポリマーの数平均分子量の下限は特に限定されるものではないが、常温にて固体状態である程度の数平均分子量、具体的には550以上であることが好ましい。
熱可塑性ポリウレタン組成物中のイソシアネート末端プレポリマーの含有量は、発泡ポリウレタンの用途や要求特性に応じて変量可能である。ただし、発泡ポリウレタンの耐ヘタリ性を考慮した場合、熱可塑性ポリウレタン100重量部に対するイソシアネート末端プレポリマーの含有量は、3〜30重量部であることが好ましい。
シリコン系界面活性剤としては、熱可塑性ポリウレタンおよびイソシアネート末端プレポリマーと反応しないで、微細な気泡を安定的に形成するものは、限定無く使用可能である。ただし、実質的にボイドを含まず、かつ特に優れた耐ヘタリ性を有する発泡ポリウレタンを製造するためには、シリコン系界面活性剤が、ポリアルキルシロキサンとポリエーテルとの共重合体であり、かつシリコン系界面活性剤の分子量分布(Mw/Mn)が2.5〜7.5であることが好ましい。かかるシリコン系界面活性剤を含有する発泡ポリウレタンは、特に耐ヘタリ性が優れるため、耐ヘタリ性の要求が厳しい用途、具体的には例えばストラットマウント用発泡ポリウレタンとして特に有用である。
熱可塑性ポリウレタン組成物中のシリコン系界面活性剤の含有量は、発泡ポリウレタンの用途や要求特性に応じて変量可能である。ただし、発泡ポリウレタンの耐ヘタリ性を考慮した場合、熱可塑性ポリウレタン100重量部に対するシリコン系界面活性剤の含有量は、0.1〜1重量部であることが好ましい。0.1重量部未満であると、得られる発泡ポリウレタンがその内部にボイドを含む場合があり、1重量部を超えると、得られる発泡ポリウレタンの耐ヘタリ性が悪化する場合がある。
熱可塑性ポリウレタン組成物は、上記熱可塑性ポリウレタンとイソシアネート末端プレポリマーとシリコン系界面活性剤とに加えて、必要に応じて任意成分として、ポリウレタン以外の他の熱可塑性樹脂、可塑剤、分散剤、相溶化剤、架橋剤、架橋助剤、プロセスオイル、顔料、酸化防止剤、補強材、着色剤、加水分解防止剤、整泡剤などを含有してもよい。
熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン、ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリブテン、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリエーテルエーテルケトンなどが挙げられる。熱可塑性樹脂を熱可塑性ポリウレタンとともに使用する場合、ポリウレタンの特性を良好に維持するためには、熱可塑性ポリウレタン100重量部に対して、熱可塑性樹脂の含有量は20重量部以下であることが好ましく、10重量部以下であることがより好ましい。
本発明に係る発泡ポリウレタンの製造方法は、熱可塑性ポリウレタン組成物を加熱により溶融状態とする溶融工程と、溶融状態の熱可塑性ポリウレタン組成物に超臨界状態の非反応性ガスを混合し、非反応性ガス溶解熱可塑性ポリウレタン組成物とする溶解工程と、非反応性ガス溶解熱可塑性ポリウレタン組成物を金型に射出成形する射出成形工程と、を含む。以下、各工程について射出成形により製造する例により説明する。
(溶融工程)
まず、溶融工程において熱可塑性ポリウレタン組成物を加熱により溶融状態とする。具体的には、熱可塑性ポリウレタン組成物を、ホッパーなどより、射出成形機の樹脂溶融シリンダー内に送入し、熱可塑性ポリウレタン組成物の融点あるいは可塑化温度以上の温度、具体的には160〜240℃の温度にて加熱することにより溶融状態とする。
(溶解工程)
つぎに、溶解工程において溶融状態の熱可塑性ポリウレタン組成物に超臨界状態の非反応性ガスを混合し、非反応性ガス溶解熱可塑性ポリウレタン組成物とする。具体的には、射出成形機の樹脂溶融シリンダー内にて溶融状態に保たれた熱可塑性ポリウレタン組成物に、超臨界状態の窒素ガス、二酸化炭素ガスなどの非反応性ガスを混合し、非反応性ガス溶解熱可塑性ポリウレタン組成物とする。例えば、超臨界状態の非反応性ガスは、液化(または気化)状態の非反応性ガスを貯蔵するボンベより定量ポンプに注入され、該定量ポンプ内で昇圧され、射出成形機の樹脂溶融シリンダー内にて溶融状態に保たれた熱可塑性ポリウレタン組成物に混合される。このとき、樹脂溶融シリンダー内に存在する非反応性ガスが超臨界状態であると、溶融状態の熱可塑性ポリウレタン組成物に対する溶解拡散効果が大幅に高まり、短時間で溶融状態にある熱可塑性ポリウレタン樹脂組成物中に浸透する。溶解工程において、射出成形機の樹脂溶融シリンダー内の設定温度は、非反応性ガス溶解熱可塑性ポリウレタン組成物の温度を160〜240℃の範囲内とするために、165〜245℃とすることが好ましい。
溶解工程において、熱可塑性ポリウレタン組成物に対する非反応性ガスの混合量は0.01〜5重量%であることが好ましく、0.05〜3重量%であることがより好ましい。かかる製造方法によれば、所望の比重を有する発泡ポリウレタン、具体的には比重が0.4〜0.8である発泡ポリウレタンが得られる。
(射出成形工程)
つぎに、射出成形工程において、非反応性ガス溶解熱可塑性ポリウレタン組成物を金型に射出成形する。具体的には、射出成形機の樹脂溶融シリンダー内に存在する非反応性ガス溶解熱可塑性ポリウレタン組成物を、例えば射出プランジャーを備える射出装置に送入し、かかる射出装置にて計量した後、金型内に射出する。本発明に係る製造方法においては、射出成形工程における非反応性ガス溶解熱可塑性ポリウレタン組成物の射出量と、非反応性ガス溶解熱可塑性ポリウレタン組成物中の非反応性ガスの混合量とを調整することにより、任意の比重および発泡倍率を有する発泡ウレタンを製造することができる。
本発明においては、溶解工程での非反応性ガス溶解熱可塑性ポリウレタン組成物を160〜240℃の範囲内とし、射出成形工程での金型温度を20〜50℃の範囲内とすることが好ましい。このように温度条件を設定した場合、非反応性ガス溶解熱可塑性ポリウレタン組成物中の非反応性ガスが気化することで、熱可塑性ポリウレタン組成物が発泡するとともに、非反応性ガス溶解熱可塑性ポリウレタン組成物が金型内で急速に冷却され、十分な厚み(50μm〜150μm)を有するスキン層を備えた発泡ポリウレタンを製造することができる。発泡ポリウレタンのスキン層が十分な厚みを有する場合、発泡ポリウレタンの耐加水分解性が特に向上するため好ましい。
射出成形工程での金型温度が20℃未満であると、金型に射出された非反応性ガス溶解熱可塑性ポリウレタン組成物の流動性が悪化し、得られる発泡ポリウレタンのスキン層表面が荒れたり、発泡ポリウレタンにてボイドが発生する傾向がある。一方、射出成形工程での金型温度が50℃を超えると、発泡ポリウレタンのスキン層厚みが薄くなる傾向がある。
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例などについて説明する。なお、発泡ポリウレタンの諸物性の評価は、以下のようにして行った。
(1)分子量分布の測定
重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィ)にて測定し、標準分子量ポリプロピレングリコール(PPG)により換算した。測定したMwをMnで除することで、分子量分布(Mw/Mn)を求めた。GPCを使用した測定条件は以下のとおりである。
GPC装置:LC−10A(島津製作所社製)
移動相:テトラヒドロフラン(THF)
流量:0.7ml/min
室温(25℃)測定
カラム温度:40℃
使用カラム:PLMix E2本(Polymer Laboratories社製)
試料濃度:0.3wt%
試料注入量:40μl
標準物質:標準分子量PPG(Mp=4950,2100,1060,810,470,192)
(2)耐ヘタリ性(圧縮永久歪)
直径30mm×厚さ12.5mmの直円柱形状の発泡ウレタン試験片を作製して、JIS K7312に準拠して圧縮永久歪(%)を測定した。圧縮永久歪が小さいほど、耐ヘタリ性に優れることを意味する。
(3)ボイド発生の有無
製造した発泡ポリウレタンにおいて、ボイドの発生の有無を目視にて確認した。ボイドが存在する場合を「有り」、存在しない場合を「無し」とした。
実施例1〜17
ポリテトラメチレングリコール、1,4−ブタンジオールおよびジフェニルメタンジイソシアネートを含有する組成物から合成された熱可塑性ポリウレタン(「E380−MNAT」、日本ポリウレタン工業社製)100重量部を、90℃にて5時間以上乾燥させた。この熱可塑性ポリウレタンと、ポリテトラメチレングリコールおよびジフェニルメタンジイソシアネートを含有する組成物から合成されたイソシアネート末端プレポリマー(「クロスネートEM30」(数平均分子量1800)、大日精化工業社製)10重量部と、表1に記載の各種シリコン系界面活性剤(熱可塑性ポリウレタン100重量部に対するシリコン系界面活性剤の各配合部数は表1に記載)と、をMuCell型射出成形機(日本製鋼所社製)のホッパーから樹脂溶融シリンダー内に送入して溶融し(溶融工程)、さらに超臨界状態の窒素ガス(非反応性ガス)を、熱可塑性ポリウレタン組成物に対して0.1重量%となるように樹脂溶融シリンダー内に送入して混合し、窒素ガス溶解熱可塑性ポリウレタン組成物とした(溶解工程)。また、溶解工程における樹脂溶融シリンダー内の設定温度は200℃に設定し、このときの窒素ガス溶解熱可塑性ポリウレタン組成物の温度は195℃であった。さらに、195℃の窒素ガス溶解熱可塑性ポリウレタン組成物を、40℃に設定した金型内に射出成形し、5分間放置後に金型より脱型して発泡ポリウレタンを製造した。かかる発泡ポリウレタンを使用して、上記特性評価を行った結果を表1に示す。
なお実施例1〜17において、以下のシリコン系界面活性剤を使用した。
L−5340:重量平均分子量(Mw)=5800、数平均分子量(Mn)=2160、分子量分布2.69、日本ユニカー社製
L−5420:重量平均分子量(Mw)=4840、数平均分子量(Mn)=1210、分子量分布4.00、日本ユニカー社製
SZ−1705:重量平均分子量(Mw)=8740、数平均分子量(Mn)=1980、分子量分布4.41、東レダウコーニング社製
SZ−1666:重量平均分子量(Mw)=4440、数平均分子量(Mn)=1490、分子量分布2.98、東レダウコーニング社製
SF−2908:重量平均分子量(Mw)=5200、数平均分子量(Mn)=820、分子量分布6.34、東レダウコーニング社製
SF−2939:重量平均分子量(Mw)=7060、数平均分子量(Mn)=2300、分子量分布3.07、東レダウコーニング社製
SF−2937F:重量平均分子量(Mw)=3500、数平均分子量(Mn)=2000、分子量分布1.75、東レダウコーニング社製
SF−2938F:重量平均分子量(Mw)=3350、数平均分子量(Mn)=1900、分子量分布1.76、東レダウコーニング社製
SF−2915F:重量平均分子量(Mw)=5110、数平均分子量(Mn)=3120、分子量分布1.64、東レダウコーニング社製
SF−2969:重量平均分子量(Mw)=998、数平均分子量(Mn)=907、分子量分布1.10、東レダウコーニング社製
SH−192:重量平均分子量(Mw)=5650、数平均分子量(Mn)=620、分子量分布9.11、東レダウコーニング社製
SH−193:重量平均分子量(Mw)=3000、数平均分子量(Mn)=1300、分子量分布2.31、東レダウコーニング社製
SZ−1923:重量平均分子量(Mw)=6060、数平均分子量(Mn)=270、分子量分布22.44、東レダウコーニング社製
SZ−1932:重量平均分子量(Mw)=5590、数平均分子量(Mn)=260、分子量分布21.50、東レダウコーニング社製
274DL:重量平均分子量(Mw)=1370、数平均分子量(Mn)=570、分子量分布2.40、東レダウコーニング社製
比較例1
シリコン系界面活性剤を使用しないこと以外は、上記と同じ方法によって発泡ポリウレタンを製造した。かかる発泡ポリウレタンを使用して、上記特性評価を行った結果を表1に示す。
Figure 0005377368
表1の結果から、実施例1〜17の発泡ポリウレタンは、耐ヘタリ性に優れ、ボイドを含まないことがわかる。また、表1の結果から、実施例1〜6の発泡ポリウレタンは、ボイドを含まず、かつ耐ヘタリ性が特に優れることがわかる。したがって、ポリアルキルシロキサンとポリエーテルとの共重合体であり、かつ分子量分布(Mw/Mn)が2.5〜7.5であるシリコン系界面活性剤を含有する発泡ポリウレタンは、特に耐ヘタリ性が要求される用途、例えばストラットマウント用として好適であることがわかる。

Claims (5)

  1. 溶融状態の熱可塑性ポリウレタン組成物に超臨界状態の非反応性ガスを混合して得られる非反応性ガス溶解熱可塑性ポリウレタン組成物を、金型に射出成形することにより得られる発泡ポリウレタンであって、
    前記熱可塑性ポリウレタン組成物が、熱可塑性ポリウレタンと、イソシアネート末端プレポリマーと、シリコン系界面活性剤と、を含有するものであることを特徴とする発泡ポリウレタン。
  2. 前記シリコン系界面活性剤が、ポリアルキルシロキサンとポリエーテルとの共重合体であり、かつ前記シリコン系界面活性剤の分子量分布(Mw/Mn)が2.5〜7.5である請求項1に記載の発泡ポリウレタン。
  3. 請求項1または2に記載の発泡ポリウレタンで構成された自動車用防振部材。
  4. 熱可塑性ポリウレタン組成物を加熱により溶融状態とする溶融工程と、溶融状態の前記熱可塑性ポリウレタン組成物に超臨界状態の非反応性ガスを混合し、非反応性ガス溶解熱可塑性ポリウレタン組成物とする溶解工程と、前記非反応性ガス溶解熱可塑性ポリウレタン組成物を金型に射出成形する射出成形工程と、を含む発泡ポリウレタンの製造方法であって、
    前記熱可塑性ポリウレタン組成物が、熱可塑性ポリウレタンと、イソシアネート末端プレポリマーと、シリコン系界面活性剤と、を含有するものであることを特徴とする発泡ポリウレタンの製造方法。
  5. 前記シリコン系界面活性剤が、ポリアルキルシロキサンとポリエーテルとの共重合体であり、かつ前記シリコン系界面活性剤の分子量分布(Mw/Mn)が2.5〜7.5である請求項4に記載の発泡ポリウレタンの製造方法。
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