JP5374176B2 - 透明体およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、基材上にハードコート構造を備えた透明体に関し、特に、紫外線遮蔽機能をもつハードコート構造を備えた透明体に関する。
従来よりレンズ等の透明部材は、表面の傷や割れを防止するためにハードコート層が設けられる。ハードコート層としては、一般的に酸化珪素(SiOx)薄膜が用いられる。
また、透明部材の基材がポリカーボネート(以下PCと記す)からなる場合、PCが波長250〜360nmの紫外線によって黄変する性質があるため、ハードコート層とは別に、紫外線を遮蔽する層を設け、黄変を防止する必要がある。紫外線を遮蔽する層としては、酸化亜鉛(ZnO)等の金属酸化物薄膜からなる紫外線吸収層が用いられる。ZnOは、約3.3eVのバンドギャップを持つ半導体で380nm付近以下の紫外線を吸収し、数千オングストロームの膜厚でPCの黄変を防止できる。他にITO(酸化インウム・スズ)膜やTiO膜等を用いることができる。ZnO膜はイオンプレーティングやスパッタ等の真空蒸着又は塗布によって成膜する。
紫外線吸収層とハードコート層とを組み合わせて用いる場合、透明基材上に紫外線吸収層を配置し、最上層にハードコート層を設ける。このような二層構造で紫外線遮蔽機能を持つハードコートは、例えば特許文献1に開示されている。しかし、紫外線吸収層(ZnO膜)とハードコート層の2層からなるハードコート構造をPC基材上に設けた場合、PC基材とZnO膜との界面からハードコート構造が剥離しやすい。そこで、特許文献2には、PC基材とZnO膜との間にバッファ層を挿入し、ハードコート構造を3層にすることが提案されている。バッファ層としては、例えば酸化珪素(SiOx)膜が開示されている。
また、特許文献3には、所定の割合で炭素を含有する酸化チタン層を保護膜として透明基材上に形成することにより、透明で紫外線を遮断し、かつ、耐候性の高い透光性積層体が提供できると開示されている。特許文献3において、酸化チタン層に所定割合で炭素を含有させているのは、酸化チタンに備わる光触媒能により基材が変質し、基材の透明性が劣化したり、酸化チタン層が剥離しやすくなるのを防止するためである。
紫外線吸収層とハードコート層の2層からなるハードコート構造は、例えば自動車用ヘッドランプに用いられる。ヘッドランプの構造は、特許文献4に記載されているようにランプが固定されたハウジングの前面にPC製のレンズが密封接着されている。レンズの内壁への入射光はランプからの光に限られ、PC製のレンズを黄変させる波長は含まれないため、レンズの内壁には紫外線吸収層は不要である。そこで、太陽光等が入射するレンズの外壁には、紫外線吸収層とハードコート層の積層構造を設けることにより、レンズ基材がPCであっても傷や損傷を防止でき、しかも黄変を防止することができる。
特開平7−267683号公報 特開2008−105313号公報 特開2008−45160号公報 特開2000−207908号公報
自動車用ヘッドランプは酸性雨に曝される可能性があるため、レンズには耐酸性が求められる。しかしながら、紫外線吸収層として用いられる酸化亜鉛(ZnO)膜は酸に弱いという性質がある。紫外線吸収層は、その上をハードコート層である酸化珪素(SiOx)膜に覆われてはいるが、酸化珪素膜には若干の水浸透性があり、酸の一部は酸化亜鉛膜まで達することがある。この場合、酸が到達した部分は、酸化亜鉛膜が溶解して消失し、PC基材の黄変防止能力を失ってしまう。一方、酸化亜鉛膜に酸が到達しないように水浸透性のない透明ハードコート層を形成することは現時点の技術では非常に困難である。
また、特許文献3のように所定の割合で炭素を含有する酸化チタン層を形成するためには、有機チタン化合物を原料としてプラズマCVD法で成膜する必要がある。しかしながら、有機チタン化合物は高価であるため、低コストなハードコート構造を実現することが困難である。
本発明の目的は、紫外線遮蔽機能をもち、酸性雨に対する耐性の高いハードコート構造を備えた透明体を提供することにある。
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様によれば、以下のような透明体が提供される。透明基材と、基材上に順に配置された、紫外線吸収層とハードコート層とを有する透明体であって、紫外線吸収層として、アモルファスなTiO膜を用いる。TiO2膜は、耐酸性が高い性質を有し、しかも、アモルファスなTiO膜は光触媒性能を備えないため、基材との密着性が高い。
アモルファスなTiO膜は、微結晶を含まないことが望ましい。
アモルファスなTiO膜の膜厚は、1.0μmより大きいことが望ましい。膜厚を1.0μmより大きくすることにより、波長350nmの透過率が30%以下になるため、透明基材の黄変防止効果を発揮できる。
本発明の第1の態様によれば、以下のような透明体の製造方法が提供される。すなわち、プラズマガンが発生した直流プラズマを坩堝に導き、坩堝に充填されたTiOを直流プラズマにより加熱して蒸発させ、透明基材上に堆積させることにより、アモルファスなTiO膜を成膜する工程を有する製造方法である。このように、直流プラズマを用いてTiO膜を形成することにより、TiOを蒸発源として容易にアモルファスなTiO膜を成膜することができる。
上記成膜工程では、透明基材を100℃以下の温度に維持することが望ましい。
本発明によれば、アモルファスなTiO膜を紫外線吸収層として用いることにより、酸性雨や紫外線に対する耐性の高いハードコート構造を備えた透明体を提供することができる。
本実施形態の透明体の構造を示す断面図。 本実施形態の透明体の製造に用いる成膜装置のブロック図。 実施例で形成したアモルファスなTiO膜のX線回折測定結果を示すグラフ。 実施例の透明体の分光透過率を示すグラフ。
本発明の一実施の形態について図面を用いて説明する。
まず、本実施の形態の透明体の構造について図1を用いて説明する。本実施の形態の透明体は、PC(ポリカーボネート)製の基材1と、これを傷や損傷から保護するためのハードコート構造5とを備えるものであり、ハードコート構造5は、PC製基材1を黄変させる紫外線を遮蔽する機能を備える。このような透明体の一例としては、ヘッドランプのPCレンズ、眼鏡のPCレンズ、PCを使用した窓等の建材、ならびに、PCを使用した自動車窓等が挙げられるが、本実施の形態の透明体は、これらに限定されるものではなく、他の用途の透明体にも適用される。
具体的には、ハードコート構造5は、図1に示したように基材1の上に形成された紫外線吸収層2、およびハードコート層3の2層構造である。紫外線吸収層2の材質は、アモルファスなTiOである。アモルファスなTiOは、微結晶を含まないことが望ましい。このようにアモルファスなTiO膜を紫外線吸収層2として用いることにより、TiO膜は光触媒性能を備えないため、PC基材1に対する密着性が高く、しかも、光触媒性能によりPC基材1を劣化させるおそれもない。
紫外線吸収層(アモルファスなTiO膜)2の膜厚は、1.0μmより大きい値に設定することが望ましい。発明者らは、PC基材1にTiO膜を紫外線吸収層2として備えた場合に、PC基材1に黄変を生じさせないための紫外線吸収層2の透過率を予め測定した結果、波長350nmにおける透過率が30%より小さいと黄変が生じないことを目視にて確認している。一方、アモルファスなTiO膜の膜厚と波長350nmにおける透過率とは、表1のような関係にある。表1より紫外線吸収層(アモルファスなTiO膜)2の膜厚を1.0μmより大きい値に設定することにより、透過率を30%より小さくすることができるため望ましい。
Figure 0005374176
また、紫外線吸収層(アモルファスなTiO膜)2は、3.0μm以下であることが望ましい。その理由は、膜厚が3.0μmを超えると、波長350nmのTiOの吸収率は2%付近で飽和するため、膜厚を3.0μmを超えて厚くしても紫外線吸収能力は高くならず、膜厚が3.0μmを超えた辺りからPC製基材1やハードコート層3との密着性が低下し、剥がれやすくなるためである。
ハードコート層3の材質は、SiOxである。xは、1.5<x<2.0であることが望ましい。
ハードコート層(SiOx膜)3の膜厚は、ハードコートとして機能しうる硬度を生じさせるために1000オングストローム以上であることが望ましく、5000オングストローム以上10μm以下であることがより望ましい。
つぎに、ハードコート構造5の各層の機能について説明する。ハードコート層3は、基材1に傷や割れが生じるのを防止するために最表層に配置されている。紫外線吸収層2を構成するアモルファスなTiO膜は、3.0〜3.3eVのバンドギャップを有し、380nm付近以下の紫外線を吸収する性質を有する。よって、アモルファスなTiO膜を紫外線吸収層2としてハードコート層3と基材1との間に配置したことにより、PC基材1に黄変を生じさせる波長250〜360nmの紫外線を紫外線吸収層2に吸収させることができる。
本実施の形態では、微結晶を含まないアモルファスなTiO膜は、光触媒性能を有さないため、PC基材1の上に直接配置しても、高い密着性を得ることができ、ハードコード構造5を基材1上に強固に配置することができる。また、光触媒性能を有していないため、光触媒性能によりPC基材を劣化させることもない。
また、アモルファスなTiO膜は、SiOx膜とも密着性が高い。よって、紫外線吸収層(アモルファスなTiO膜)2とハードコート層(SiOx膜)3との界面における密着性も高い。
また、TiO膜は、耐酸性が高いことが知られている。この性質は、アモルファスなTiO膜であっても変わらない。よって、ハードコート層(SiOx膜)3に酸性雨が浸透した場合であっても、紫外線吸収層(アモルファスなTiO膜)2が溶解して消失することがなく、PC基材の黄変防止能力を継続して発揮することができる。
つぎに、本実施の形態の透明体の製造方法について説明する。ここでは、直流プラズマを用いる図2の成膜装置を用いて、直流プラズマを用いた真空蒸着法と化学的気相成長(CVD)法により透明体のハードコート構造5を連続して形成する。
図2の成膜装置は、プラズマガン31と成膜室7とを備えている。成膜室7には、プラズマガン31と対向する位置にアノード電極38が配置され、直流プラズマがプラズマガン31からアノード電極38に向かって生じる。これらの間の空間に反応ガス37を導入するための反応ガス導入管8が備えられ、反応ガス導入管8と向かい合う位置に基材1を保持する基材ホルダー36が備えられている。これらの構成により、CVD法により成膜を行うことができる。また、成膜室7内には、電極を兼ねた坩堝33が配置され、プラズマガン31からのプラズマを坩堝33内の材料に導くことにより、坩堝33内に充填されているTiO34を蒸発させ、蒸着法による成膜を行うことができる。プラズマガン31とアノード電極38と坩堝33には、それぞれ電源10が接続されている。プラズマガン31の外側、ならびに、成膜室7の外側にはそれぞれ中心軸が一致するように電磁石12が配置されている。電磁石12は、プラズマガン31が発生したプラズマ35をビーム状に収束する作用をする。
まず、基材1を基材ホルダー36にセットし、成膜室7を所定の圧力まで排気した後、プラズマガン31にキャリアガス32を導入し、プラズマガン31と坩堝33間に電圧を印加し、坩堝33との間にプラズマ35を発生させる。これにより、坩堝33内のTiO34を加熱して蒸発させ、基材1上にアモルファスなTiOを所定の厚さまで堆積させる。これにより、紫外線吸収層(TiO膜)2を形成する。
直流プラズマを用い、基板温度を150℃以下に維持することにより、TiOを蒸発源としてアモルファスなTiO膜を蒸着法により容易に形成できる。他の成膜条件は、例えば、成膜速度5000オングストローム/min以下、DC放電電力10kW以下に設定する。しかしながら、基板温度を除き成膜条件は、この成膜条件に限定されるものではない。
つぎに、アモルファスなTiO膜成膜後、成膜室7を開放することなく、プラズマガン31とアノード電極38間に電圧を印加しプラズマ35を発生させる。そこに反応ガス37としてシロキサンを反応ガス導入管8から導入し、重合反応を生じさせ、基材1にSiOxを所定の厚さまで堆積させる。これにより、ハードコート層(SiOx層)3を形成する。ただし、ハードコート層3は、ハードコートとして機能を発揮させるために上述した所定の膜厚に成膜する。なお、ハードコート層3の成膜方法は、この成膜方法に限られるものではなく、例えば蒸着法やスパッタ法等の他の成膜方法により形成することが可能である。
以上により、図1のように基材1上に二層構造のハードコート構造5を備えた透明体を連続成膜より効率よく製造できる。
このように本実施の形態の透明体は、紫外線吸収層2として、耐酸性の大きなTiO膜を微結晶を含まないアモルファスな構造とすることにより、光触媒性能を生じさせず、PC基材との密着性を高めることができる。また、PC基材を光触媒性能により劣化させることもない。したがって、紫外線吸収層2によってPC基材1の黄変を防ぎつつ、ハードコート層3によって基材1の傷や損傷を防ぐことができる。
しかも、本実施の形態では、直流プラズマを用いることにより、アモルファスなTiO膜をTiOを蒸発源として容易に成膜することができるため、高価な材料を用いる必要がなく、耐酸性に優れたハードコート構造5を低コストで形成することができる。
本実施の形態の透明体の構造は、ヘッドランプのPCレンズ、眼鏡のPCレンズ、PCを使用した窓等の建材、ならびに、自動車のPCを使用した窓等に適用することができる。例えば、自動車用ヘッドランプに用いる場合、ランプが固定されたハウジングの前面に密封接着されたPC製レンズに、本実施の形態のハードコート構造5を適用することができる。すなわち、PC製レンズを基材1として、その表面にハードコート構造5を設けることができる。PC製レンズの内壁への入射光はランプからの光に限られ、PC製のレンズを黄変させる紫外波長は含まれないため、レンズの内壁には紫外線吸収層は不要である。そこで、太陽光等が入射するレンズの外壁に、本実施の形態ハードコート構造5を設ける。これにより、レンズ基材がPCであっても傷や損傷を防止でき、しかも黄変を防止す
ることができる。
以下、本発明の一実施例について説明する。
本実施例では、図1の構造の透明体を製造した。紫外線吸収層2の材質は、微結晶を含まないアモルファスなTiOである。ハードコート層3の材質は、SiOx(1.5<x<2.0)である。基材1はPCであり、厚さ3mmの板状である。
紫外線吸収層(アモルファスなTiO膜)2の膜厚は、2.0μmとした。ハードコート層(SiOx膜)3の膜厚は、0.5μm、1μm、1.5μm、2.0μm、2.5μmの5種類の実施例の透明体を製造した。
各層の成膜は、実施の形態で説明した製造手順の通り、図2の成膜装置を用いて行った。アモルファスなTiO膜の成膜時の蒸発源はTiOを用いた。このとき基板1は加熱せず、基材1の温度が150℃以下になるように制御した。ハードコート層3となるSiOx膜の成膜時の反応ガス37は、ヘキサメチルジシロキサンを用いた。キャリアガス32としては、Arを用いた。
本実施例と同じ成膜条件により形成したTiO膜の結晶構造をX線回折により測定したところ、図3に示すように、ブロードであり、アモルファスであることが確認された。
また、比較例として、ハードコート層3を備えず、他の構成については本実施例と同様にした比較例の透明体を製造した。さらに、紫外線吸収層をIn膜(厚さ0.5μm)とし、ハードコート層3としてSiOx膜(膜厚:0μm、0.5μm、1μm、1.5μm、2.0μm、2.5μm)とした6種類の透明体を製造した。さらに別の比較例として、PC基材1上にバッファー層としてSiOx層(厚さ0.5〜1μm)を配置した後、紫外線吸収層としてZnO膜(厚さ0.2μm)を形成し、さらにハードコート層3としてSiOx膜(膜厚:0μm、0.5μm、1μm、1.5μm、2.0μm、2.5μm)を形成した6種類の透明体を製造した。なお、ZnO膜の下にバッファー層を配置したのは、PC基材1上にZnO膜を直接形成すると後述する表3のように剥離しやすく、剥離のために耐酸性試験を行うことが困難になるためである。
比較例の透明体の製造は、図2の成膜装置を用いて、本実施例と同様に行った。
<評価>
(耐酸性)
ハードコート層3の膜厚の異なる5種類の実施例の透明体と、比較例の計13種類の透明体について、耐酸性試験を行った。試験は、実施例および比較例の試料のハードコート構造5の上に0.1NのHSO溶液0.2mlを滴下し、24時間放置後水洗いし、さらに1時間放置することにより行った。試験後、目視にて、基板の状態を観察し、評価した。その結果を表2に示す。
Figure 0005374176
表2より、紫外線吸収層としてZnO膜を用いた比較例は、ハードコート層(SiOx膜)3がどのような膜厚であっても、ZnO膜がすべて消失しており、0.1NのHSOに対して耐酸性がないことがわかった。
紫外線吸収層としてIn膜を用いた比較例は、ハードコート層(SiOx膜)3の厚さが2μm以上であれば、In膜が消失しないが、2μmよりも薄い場合には、In膜が消失してしまうことがわかる。
これに対し、本実施例の紫外線吸収層2としてアモルファスなTiO膜を用いた試料は、ハードコート層(SiOx膜)3がどのような膜厚であってもアモルファスなTiO膜が消失しないことがわかる。さらに、ハードコート層(SiOx膜)3を備えない(0μm)比較例であっても、アモルファスなTiO膜は消失してしない。
このことから、紫外線吸収層2としてアモルファスなTiO膜は、In膜やZnO膜と比較し、耐酸性に非常に優れ、ハードコート層3の水浸透性に関わらず溶解することはない。よって、酸性雨にさらされた場合でも、消失することなく、紫外線吸収性能を発揮し続けることができ、PC基材1の黄変を防止できる。
(密着性)
次に、PC基材と本実施例のアモルファスなTiO膜との密着性を測定した。密着性の測定は、JIS D0202 8.12に準ずるゴバン目試験により行った。ただし、試験に用いた試料のアモルファスなTiO膜2の膜厚は2000オングストロームとした。ハードコート層3は形成しなかった。
また、比較例として、PC基材の上にIn膜(膜厚2000オングストローム)を配置した試料、PC基材の上にZnO膜(膜厚2000オングストローム)を配置した試料をそれぞれ蒸着法により形成し、同様に密着性を測定した。
その結果、表3に示すようにPC基材とアモルファスなTiO膜との密着性、および、PC基材とIn膜との密着性は、いずれも1であり、これらの密着性は良好であることがわかった。これに対し、PC基材とZnO膜のゴバン目試験の結果は4であり、密着性は低かった。これにより、アモルファスなTiO膜は、PC基材への密着性が高く、膜剥がれを生じないことが確認できた。よって、PC基材とTiOとの間にバッファ層等を配置する必要がなく、製造工程を簡略化できる。
Figure 0005374176
(耐熱性)
また、本実施例の透明体と比較例の透明体を用いて耐熱性試験を行った。本実施例の透明体試料は、耐酸性試験で用いた試料と同様に、PC基材1上に紫外線吸収層2(アモルファスなTiO膜(膜厚2μm))とハードコート層3を備えたものである。また、比較例として、PC基材1上に紫外線吸収層(In膜(膜厚0.5μm))とハードコート層を備えた試料と、PC基材1上にバッファー層(SiOx層(厚さ0.5〜1μm))と紫外線吸収層(ZnO膜(厚さ0.2μm))とハードコート層を備えた試料とを用いた。ハードコート層は、実施例と比較例のいずれの試料もSiOx層(厚さ2.5μm)とした。
耐熱試験方法は、130℃で1時間加熱した後、ゴバン目試験を行い、目視にて密着性を評価することにより行った。
その結果、アモルファスなTiO膜を用いる本実施例の試料と、ZnO膜を用いる比較例の試料に剥がれは見られなかったが、In膜を用いる比較例の試料には剥がれが生じていた。
以上の耐酸性、密着性および耐熱性の各評価結果から、本実施例のアモルファスなTiO膜を用いる実施例の試料が、耐酸性、密着性および耐熱性に優れていることがわかった。
(分光透過性)
さらに、本実施例のハードコート構造5(アモルファスなTiO膜(厚さ2.0μm)とSiOx膜(厚さ1.0μm)の積層体)の分光透過率を測定したところ、図4のグラフのように350nmの透過率が20%以下であり、PC基材1を黄変させないための350nmの透過率30%以下の条件を満たしていた。図4のグラフから明らかなように、実施例のハードコート構造は、紫外線吸収層2としてZnO膜を形成した試料よりも紫外線透過率が高いが、十分な黄変防止性能が得られる。
なお、アモルファスなTiO膜が、ZnO膜よりも紫外線透過率が高くてもPC基材に対して十分な黄変防止性能が得られる理由は現時点では明らかではないが、黄変防止性能が十分であることは、本実施例のアモルファスなTiO膜を用いた試料に促進紫外線照射試験(波長295〜450nm、100mw/cmの強度の光を72時間照射する試験)を施し、PC基材に黄変が生じないことにより確認している。
1…PC基材、2…紫外線防止層、3…ハードコート層、5…ハードコート構造、7…成膜室、8…反応ガス導入管、10…電源、12…電磁石、31…プラズマガン、32…キャリアガス、33…坩堝、34…蒸発源TiO、35…プラズマ、36…基板ホルダー、37…材料ガス、38…アノード電極。

Claims (5)

  1. ポリカーボネート製の透明基材と、該基材上に順に配置された、紫外線吸収層とハードコート層とを有し、
    前記紫外線吸収層は、3.0〜3.3eVのバンドギャップを有するとともにX線回折においてブロードなカーブを示すアモルファスで、光触媒性能を示さないTiO膜であり、
    前記ハードコート層は、SiO (ただし、xは、1.5<x<2.0)であることを特徴とする透明体。
  2. 請求項1に記載の透明体において、前記TiO膜は、微結晶を含まないことを特徴とする透明体。
  3. 請求項1または2に記載の透明体において、前記TiO膜の膜厚は、1.0μmより大きいことを特徴とする透明体。
  4. プラズマガンが発生した直流プラズマを坩堝に導き、
    坩堝に充填されたTiOを直流プラズマにより加熱して蒸発させ、ポリカーボネート製の透明基材上に堆積させることにより、3.0〜3.3eVのバンドギャップを有するとともにX線回折においてブロードなカーブを示すアモルファスで、光触媒性能を示さないTiO膜を成膜する工程と、
    前記TiO膜を成膜する工程に連続して、前記アモルファスなTiO膜の上に、SiO (ただし、xは、1.5<x<2.0)のハードコート膜を成膜する工程と
    を有することを特徴とする透明体の製造方法。
  5. 請求項4に記載の透明体の製造方法において、
    前記成膜工程では、前記透明基材を150℃以下の温度に維持することを特徴とする透明体の製造方法。
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