JP4112691B2 - 表面親水性基体 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、建材、ガラス、レンズ、鏡、金属、タイル、冷媒、管、合成樹脂パネル、繊維・不織布等の基材表面に親水性処理が施された、その表面が親水性作用を有する防露、防曇機能を備えた表面親水性基体に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、眼鏡レンズ、浴室鏡、注射針等の表面に親水性・防曇性等を付与するコーティング剤としては、界面活性剤やポリビニールアルコール系樹脂の有機系親水剤や、シリカ化合物に有機高分子樹脂を混合シリコン系樹脂がよく知られている。また、光触媒能を有するアナターゼ型酸化チタンTiO2 とシリコン系樹脂との混合物からなるコーティング剤をコーティングし、紫外線照射時に親水性作用を発揮する表面親水性基体も知られている。
【0003】
例えば、特開平8−313705号公報には、物品表面に光触媒能を有する酸化チタンを主成分とする層や白金を添加した光触媒能を有する酸化チタンを主成分とする層を設け、その表面に発生した小さな水滴を紫外線の存在下光触媒反応により分解し、曇りの原因になる水滴が成長することをなくしたレンズ、鏡、窓、ゴーグル等の防曇性物品が開示されている。
【0004】
また、特開平8−119673号公報には、硬化性ケイ素樹脂溶液に、酸化錫及び酸化アンチモンを主成分とする粉末、酸化亜鉛粉末、酸化チタン粉末等からなる金属酸化物を配合したガラス用親水化処理剤をガラス基板表面にコーティングし、次いで530〜700℃の温度で焼付硬化する親水化処理方法が開示されている。
【0005】
また、特開平9−59041号公報には、シリコーンの前駆体又は未硬化の若しくは部分的に硬化したシリコーンからなる塗膜形成要素と半導体光触媒の粒子とを溶媒中に均一に分散させ、基材に塗布し塗膜を形成した後に光触媒を光励起したときに、光触媒の作用により塗膜表面が水との接触角に換算して約10°以下の親水性を呈する防曇性コーティング組成物が開示されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
親水性有機高分子樹脂をコーテイングすることにより得られる親水性基板は、水による親水機能成分の流出などにより、戸外での使用や長期にわたる使用においてはその性能を維持することが難しく、また、界面活性剤を中心とする防曇溶剤を用いた親水性基板は、水中バブリング等に対しては成分が流出し、機能維持ができないという問題点があった。また、シリコン系樹脂を親水性コーティング剤として用いた場合、シリコン系樹脂面に生じる静電気により、大気中の塵埃等が着塵し、その表面を黒く汚すという問題点があった。
【0007】
さらに、現在、光触媒を担持させる基材として多用されている、プラスチック板やプラスチックレンズなどの有機高分子樹脂基板に対して、光触媒能を有するアナターゼ型酸化チタンTiO2 とシリコン系樹脂とからなる上記親水性コーティング剤を適用すると、酸化チタンによる静電気放電防止作用により大気中の塵埃等の着塵は防止しうるが、光触媒機能により有機高分子樹脂からなるプラスチック材の劣化が著しいという問題点があった。また、この光触媒能を有するアナターゼ型酸化チタンTiO2 とシリコン系樹脂とからなる親水性コーティング剤は、親水機能を発揮するためには紫外線照射が必要とされており、紫外線が照射されない場所に設置された場合には親水性機能が発揮できないという実用上の不都合があった。
【0008】
また、シリカ化合物を主体として光触媒機能が付加された親水性基板は、コロイダルシリカをはじめとしたシリカを主体とするところから、実質的な膜強度を得るためにはシリカ溶融温度の500℃以上に加熱を行わなければならず、この温度に耐えられない例えば軟化点の低い合成樹脂板等は使用することができず、使用できる基材が制限されるという問題があった。また、シリカ溶融温度以下での加熱では実質的な膜強度が得られないため、特に戸外での使用性に問題があった。また、光触媒能を有するアナターゼ型酸化チタンを使用するものは、造膜性能とともに親水性能の均質性に問題がある上に、上記のように合成樹脂板等は光触媒作用によって分解されることから、この場合もまた使用できる基材が制限されるという問題があった。
【0009】
本発明の課題は、使用する基材の種類に制限がなく、低温で造膜することができ、紫外線照射による光励起を生じさせない場合においてもその表面が優れた親水性を有し、耐候性や透明性に優れた表面親水性基体を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、鋭意研究したところ、親水性処理が施された基材の表面に、アモルファス型過酸化チタンゾル等の光触媒能を有さないアモルファス型チタン酸化物からなるコーティング層を設けた親水性基体が、極めて優れた親水性を有するのみならず、かつ常温で成膜し得るばかりか強い膜強度を有するなど成膜性にも優れ、加えて静電気放帯電防止作用を有し汚れを静電付着させることがなく、かつ基材としての有機高分子樹脂材が劣化しないばかりか、紫外線照射がないところでも親水機能を充分発揮しうることを見い出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
【0012】
すなわち、本発明は、基材の表面に、親水性有機高分子樹脂や、界面活性剤及び/又は親水剤と、光触媒能を有さないアモルファス型過酸化チタン及び/又はアモルファス型酸化チタンとの混合物を含有するコーティング層が設けられ、その上に光触媒能を有さないアモルファス型過酸化チタン及び/又はアモルファス型酸化チタンを含有するコーティング層が設けられ、その上にさらに光触媒能を有する光触媒体を含有する光触媒層が設けられている表面親水性基体に関する。
【0013】
【発明の実施の形態】
本発明の表面親水性基体において使用される基材としては、セラミックス、ガラスなどの無機材、有機高分子樹脂、ゴム、木、紙などの有機材、並びにアルミニウム、鋼などの金属材等その種類に制限なく用いることができ、また、その大きさや形には制限されず板状、針状、ハニカム状、ファイバー状、濾過シート状、ビーズ状、発泡状やそれらが集積したものでもよい。そして、基材が有機高分子材からなるものであっても、本発明の表面親水性基体においては該有機高分子材を劣化させることなく使用することができ、従来の親水性基板に比べて有機高分子樹脂系基材の使用が制限されるということがない。
【0014】
基材表面に親水性や防曇機能をもたせる方法としては、表面を多孔質にして水の表面張力を拡散させる方法や、表面に親水基(−OH)を生じさせ、空気中の水分と結合させる方法が知られているが、本発明において、上記基材の表面に親水処理を施す方法としては、光触媒を用いない従来公知の親水化処理方法であればどのようなものでも使用することができ、例えば、親水性の有機高分子樹脂をコーティングする方法や、界面活性剤及び/又は親水剤をコーティングする方法の他、基材が有機高分子樹脂基材である場合には表面に多孔質親水処理を施す方法を例示することができる。
【0015】
親水性の有機高分子樹脂としては、有機高分子樹脂そのものをコーティングした場合に親水性を有するものや、界面活性剤及び/又は親水剤を有機高分子樹脂に混合したものを例示することができ、例えば上記従来技術に開示された親水性の有機高分子樹脂など、従来公知のものであればどのようなものでも使用することができる。そして、界面活性剤としては、具体的に、ノニオン系界面活性剤(花王株式会社製「クリンスルー710M」)、アニオン系界面活性剤(ライオン株式会社製「サンノールNP−1030」)等を例示することができ、親水剤としては、n−メチルピロリドンやコロイダルシリカ等の二酸化珪素の他、シリコーン、オルガノポリシロキサン等のシロキサン類化合物、水ガラス等のケイ素酸化物を含有する親水剤を例示することができる。また、上記親水性有機高分子樹脂や親水剤や界面活性剤を含む機能性素材や、親水作用を有する機能性素材を用いて基材に親水性処理を施すこともでき、親水作用を有する機能性素材として、例えば帯電防止剤(コルコート株式会社製「コルコートN−103X」、「コルコートR」等)を具体的に挙げることができる。
【0016】
有機高分子樹脂基材の表面に多孔質親水処理を施す方法としては、プラズマ、電磁波、近紫外線以下の波長の光を照射し、それらが有するエネルギーにより、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、アクリル系等の有機高分子樹脂基材の表面をナノスケールレベルでの多孔質マット状に加工する方法を挙げることができ、この方法によると表面積が著しく増大する結果、水の表面張力が拡散し、親水性を呈することとなる。
【0017】
本発明におけるアモルファス型の過酸化チタンTiO3 やアモルファス型酸化チタンTiO2 は、上記従来の親水性基板材料に使用されている紫外線によって光励起して光触媒能を有するアナターゼ型酸化チタンTiO2 やルチル型酸化チタンTiO2 と異なり、光触媒機能は実質上殆どない。これら光触媒能を有さないアモルファス型チタン酸化物の中でも、特開平9−71418号公報や特開平9−262481号公報に記載されているアモルファス型過酸化チタンゾルが成膜性等の点から特に好ましく使用される。
【0018】
このアモルファス型過酸化チタンゾルは、例えば次のようにして製造することができる。四塩化チタンTiCl4 のようなチタン塩水溶液に、アンモニア水ないし水酸化ナトリウムのような水酸化アルカリを加える。生じる淡青味白色、無定形の水酸化チタンTi(OH)4はオルトチタン酸H4TiO4とも呼ばれ、この水酸化チタンを洗浄・分離後、過酸化水素水で処理すると、本発明のアモルファス形態の過酸化チタン液が得られる。このアモルファス型過酸化チタンゾルは、pH6.0〜7.0、粒子径8〜20nmであり、その外観は黄色透明の液体であり、常温で長期間保存しても安定である。また、ゾル濃度は通常1.40〜1.60%に調整されているが、必要に応じてその濃度を調整することができ、低濃度で使用する場合は、蒸留水等で希釈して使用する。
【0019】
また、このアモルファス型過酸化チタンゾルは、常温ではアモルファスの状態で未だアナターゼ型酸化チタンには結晶化しておらず、密着性に優れ、成膜性が高く、均一でフラットな薄膜を作成することができ、かつ、乾燥被膜は水に溶けないという性質の他に、光触媒に対して安定であるという特性を有している。なお、アモルファス型の過酸化チタンのゾルを100℃以上で加熱すると、アナターゼ型酸化チタンゾルに変化し始め、アモルファス型過酸化チタンゾルを基材にコーティング後乾燥固定したものは、250℃以上の加熱によりアナターゼ型酸化チタンになる。
【0020】
本発明において用いられるアモルファス型酸化チタンとしては微粉末状のものやこの微粉末状のものを硝酸等の溶媒に懸濁分散させたゾル状のものが知られている。この光触媒機能を有さないアモルファス型酸化チタンの内、微粉末状のものを用いる場合には、熱硬化水溶性樹脂などのバインダーと混合してコーティングすることになる。
【0021】
発明の表面親水性基体は、基材の表面に、親水性有機高分子樹脂や、界面活性剤や、親水剤や、界面活性剤と親水剤の混合物や、これら親水性有機高分子樹脂、界面活性剤、親水剤、又は界面活性剤と親水剤の混合物を含む機能性素材や、親水作用を有する帯電防止剤等の機能性素材と、光触媒能を有さないアモルファス型過酸化チタン及び/又はアモルファス型酸化チタンとの混合物とからなるコーティング層を設けることによって調製することができる。
【0022】
光触媒能を有さないアモルファス型過酸化チタン、光触媒能を有さないアモルファス型酸化チタン又はそれらの混合物からなる膜は、疎水性能を有しており、親水性処理が施された基材の表面に疎水性のこれらアモルファス型過酸化チタン等をコーティングした場合の造膜表面や、親水性有機高分子樹脂と疎水性のこれらアモルファス型過酸化チタン等の混合物からなるコーティング膜表面が、親水性能を発揮するのかそのメカニズムは必ずしも明らかではないが、本発明の表面親水性基体は紫外線の非照射時においても優れた親水機能を発揮する。また、アモルファス型過酸化チタン等は、耐薬品性や耐摩耗性に優れていることから、この本発明の表面親水性基体は戸外での使用や、水中バブリングにも充分耐えることができ、その親水性能を長期にわたって維持することができる。また、本発明の表面親水性基体の造膜成分として、上記アモルファス型過酸化チタン等とともに、紫外線遮断機能や静電気放電防止機能を有する誘電体セラミックス材料や導電性セラミックス材料を、必要に応じて含有せしめることができる。
【0023】
また、アモルファス型過酸化チタン等のコーティング層を設ける方法としては、スプレーコート、ディッピング、スピンコートなどの工法で薄膜を作る方法が挙げられる。また、コーティング薄膜(層)の厚みとしては、親水性付与という目的が達成しうる厚みやバインダー等の造膜性能により決定されるが、例えばバインダー機能をも兼ね備えているアモルファス型過酸化チタンゾルと、コロイダルシリカとの混合物からなるコーティング剤を用いる場合、通常0.5μm〜5.0μmの厚みにコーティングされる。コーティング後は通常乾燥することにより造膜工程が終了する。
【0024】
これら本発明の参考となる表面親水性基体の模式図を図1〜3に示す。図1には、基材1の表面に親水性有機高分子樹脂層2が設けられ、該親水性有機高分子樹脂層2の表面に光触媒能を有さないアモルファス型過酸化チタン及び/又はアモルファス型酸化チタンからなるコーティング層3が設けられている表面親水性基体が示されている。図2には、プラズマ、電磁波等を用いた親水性処理によってその表面が多孔質4となった有機高分子樹脂基材1の表面に光触媒能を有さないアモルファス型過酸化チタン及び/又はアモルファス型酸化チタンからなるコーティング層3が設けられている表面親水性基体が示されている。図3には、基材1の表面に親水性有機高分子樹脂と、光触媒能を有さないアモルファス型過酸化チタン及び/又はアモルファス型酸化チタンとの混合物からなるコーティング層5が設けられている表面親水性基体が示されている。
【0025】
記表面親水性基体に、親水機能に加えて防汚機能を相乗させるため、さらにその上に光触媒層を設けることできる。この光触媒層を有する表面親水性基体は、親水性処理が施された基材の表面に、光触媒能を有さないアモルファス型過酸化チタン、光触媒能を有さないアモルファス型酸化チタン又はそれらの混合物からなるコーティング層が設けられた上記表面親水性基体や、基材の表面に、親水性有機高分子樹脂や、界面活性剤や、親水剤や、界面活性剤と親水剤の混合物や、これら親水性有機高分子樹脂、界面活性剤、親水剤、又は界面活性剤と親水剤の混合物を含む機能性素材や、親水作用を有する帯電防止剤等の機能性素材と、光触媒能を有さないアモルファス型過酸化チタン及び/又はアモルファス型酸化チタンとの混合物からなるコーティング層が設けられた上記表面親水性基体や、基材の表面に、親水性有機高分子樹脂や、界面活性剤や、親水剤や、界面活性剤と親水剤の混合物や、これら親水性有機高分子樹脂、界面活性剤、親水剤、又は界面活性剤と親水剤の混合物を含む機能性素材や、親水作用を有する帯電防止剤等の機能性素材と、光触媒能を有さないアモルファス型過酸化チタン及び/又はアモルファス型酸化チタンとの混合物からなるコーティング層が設けられ、その上に光触媒能を有さないアモルファス型過酸化チタン及び/又はアモルファス型酸化チタンを含有するコーティング層が設けられた表面親水性基体の上に、さらに、光触媒能を有する光触媒体を含有するコーティング層や、あるいは光触媒能を有さないアモルファス型過酸化チタンゾル等と光触媒能を有する光触媒体との混合物を含有するコーティング層を設けることによって得られる。
【0026】
この光触媒能を有する光触媒体を含有するコーティング層、すなわち光触媒層を有する本発明の表面親水性基体は、紫外線照射時には優れた親水機能と光触媒による防汚機能とを有し、紫外線非照射時には光触媒による防汚機能は発揮し得ないが優れた親水機能を有するという特徴をもつ。そして、この本発明の表面親水性基体の場合、光触媒能を有する光触媒体を含有するコーティング層と親水性樹脂層との間には、光触媒機能による劣化をブロッキングする機能も併せもつアモルファス型過酸化チタン及び/又はアモルファス型酸化チタンを含有する層があるので、親水作用が劣化することなく、優れた親水機能と防汚機能が長期にわたって維持される。
【0027】
この光触媒層を有する本発明の参考となる表面親水性基体の模式図を図4〜7に示す。図4には、基材1の表面に親水性有機高分子樹脂層2がコーティングされ、該コーティング層の表面に光触媒能を有さないアモルファス型過酸化チタン及び/又はアモルファス型酸化チタンからなるコーティング層3が設けられ、さらにその上に光触媒層6が設けられている表面親水性基体が示されている。図5には、プラズマ、電磁波、又は近紫外線以下の波長を用いた親水性処理によってその表面に多孔質4となった有機高分子樹脂基材1の表面に光触媒能を有さないアモルファス型過酸化チタン及び/又はアモルファス型酸化チタンからなるコーティング層3が設けられ、さらにその上に光触媒層6が設けられている表面親水性基体が示されている。図6には、基材1の表面に親水性有機高分子樹脂と、光触媒能を有さないアモルファス型過酸化チタン及び/又はアモルファス型酸化チタンとの混合物からなるコーティング層5が設けられ、さらにその上に光触媒層6が設けられている表面親水性基体が示されている。
【0028】
本発明において使用しうる光触媒体としては、TiO2、ZnO、SrTiO3、CdS、CdO、CaP、InP、In23、CaAs、BaTiO3、K2NbO3、Fe23、Ta25、WO3、SaO2、Bi23、NiO、Cu2O、SiC、SiO2、MoS2、MoS3、InPb、RuO2、CeO2などを挙げることができるが、これらの中でも粉末状又はゾル状のアナターゼ型酸化チタンTiO2 が好ましい。
【0029】
ゾル状のアナターゼ型酸化チタン、すなわちアナターゼ型酸化チタンゾルは、上記のように、アモルファス型過酸化チタンゾルを100℃以上の温度で加熱することにより製造できるが、アナターゼ型酸化チタンゾルの性状は加熱温度と加熱時間とにより多少変化し、例えば100℃で6時間処理により生成するアナターゼ型の酸化チタンゾルは、pH7.5〜9.5、粒子径8〜20nmであり、その外観は黄色懸濁の液体である。このアナターゼ型酸化チタンゾルのゾル濃度は通常2.70〜2.90重量%に調整されているが、必要に応じてその濃度を調整して使用することもできる。
【0030】
酸化チタンとしては、上記のアナターゼ型酸化チタンゾルの他、粉末状の二酸化チタンとして、例えば市販の「ST−01」(石原産業株式会社製)や「ST−31」(石原産業株式会社製)をも使用しうる。この場合、バインダーとしては、光触媒作用により劣化を受けないもので、かつ、光触媒機能を低下させないものであればどのようなものでも使用できるが、常温での優れた接着性を有する上記アモルファス型過酸化チタンゾルをバインダーとして用いることが望ましい。
【0031】
光触媒体には、光触媒反応を促進補完するものとして、その製造過程で、光触媒機能補助添加金属(Pt,Ag,Rh,RuO,Nb,Cu,Sn,NiOなど)を添加しておくこともできる。また、成形前に、光触媒と共に、自発型紫外線放射剤又は蓄光型紫外線放射剤の粒子あるいはこれらの放射剤を混入した粒子を混合しておくこともできる。
【0032】
本発明の表面親水性基体は、ショウケースガラス、浴室鏡、眼鏡レンズ、自動車のウインドウガラスやボディーに用いられ、それらの曇り防止、注射針の体内注入時の刺激痛軽減、窓ガラス、天窓の結露防止、浴室とユニットバスとの間や外壁と窓枠との間やタイルとタイルとの間等のシリコン系シーリング材や油性コーキング材等建材の汚れ防止などの優れた機能を発揮する。また、光触媒体がコーティングされた表面親水性基体の場合は、ガラスやタイル等の無機材からなる基材表面に付着した塵、油、垢等の汚染有機物が光触媒作用によって分解されるので、外装建築材等に用いると特に有利である。
【0033】
【実施例】
以下に、実施例を掲げてこの発明をさらに具体的に説明するが、この発明の技術的範囲はこれらの例示に限定されるものではない。
参考例A(アモルファス型過酸化チタンゾルの製造)
四塩化チタンTiCl4の50%溶液(住友シティクス株式会社)を蒸留水で70倍に希釈したものと、水酸化アンモニウムNH4OHの25%溶液(高杉製薬株式会社)を蒸留水で10倍に希釈したものとを、容量比7:1に混合し、中和反応を行う。中和反応後pHを6.5〜6.8に調整し、しばらく放置後上澄液を捨てる。残ったTi(OH)4のゲル量の約4倍の蒸留水を加え十分に攪拌し放置する。塩化銀でチェックし上澄液中の塩素イオンが検出されなくなるまで水洗を繰り返し、最後に上澄液を捨ててゲルのみを残す。場合によっては遠心分離により脱水処理を行うことができる。この淡青味白色のTi(OH)43600mlに、35%過酸化水素水210mlを30分毎2回に分けて添加し、約5℃で一晩攪拌すると黄色透明のアモルファス型過酸化チタンゾル約2500mlが得られる。なお、上記の工程において、発熱を抑えないとメタチタン酸等の水に不溶な物質が析出する可能性があるので、すべての工程は発熱を抑えて行うのが望ましい。
【0034】
参考例B(アモルファス型過酸化チタンゾルからの酸化チタンゾルの製造)
上記アモルファス型過酸化チタンゾルを100℃で加熱すると、3時間程度経過後にアナターゼ型酸化チタンが生じ、6時間程度加熱するとアナターゼ型酸化チタンゾルが得られる。また、100℃で8時間加熱すると、淡黄色やや懸濁蛍光を帯び、濃縮すると、黄色不透明のものが得られ、100℃で16時間加熱すると極淡黄色のものが得られるが、これらは上記100℃、6時間加熱のものに比べて乾燥密着度が多少低下する。この酸化チタンゾルは、アモルファス型過酸化チタンに比べ粘性が低下しているのでディッピングしやすいように2.5重量%まで濃縮して使用する。
【0035】
(表面親水性基体の調製)
参考例1
100×100×5mmのPETフィルムの表面に親水性有機高分子樹脂(株式会社タバックス製「水溶性防曇剤TV74−4」)0.08gを均一に塗布し、150℃で乾燥後、その上に参考例により作製したアモルファス型過酸化チタンゾル(TiO3 として1.7重量%含有)を2倍希釈したもの0.24gを均一に塗布し、150℃で乾燥し、表面親水性基体を調製した。なお塗布には、明治機械社製の直径0.54mmの丸型吹き出しノズルを有するスプレーガンFS−G05R−1を2Kg/cm3 のエアー圧で用いた(以下同じ)。
【0036】
参考例2
上記PETフィルムの表面に上記親水性有機高分子樹脂0.08gを均一に塗布し、150℃で乾燥後、その上に上記アモルファス型過酸化チタンゾル(TiO3 として1.7重量%含有)を2倍希釈したもの0.08gを均一に塗布し、150℃で乾燥し、さらにその上に上記アモルファス型過酸化チタンゾル(TiO3 として1.7重量%含有)とアナターゼ型酸化チタンの1:1混合物0.24gを均一に塗布し、100℃で乾燥し、表面親水性基体を調製した。
【0037】
参考例3
上記のPETフィルムの表面に親水性有機高分子樹脂と、上記アモルファス型過酸化チタンゾル(TiO3 として1.7重量%含有)との1:1混合物0.24gを均一に塗布し、150℃で乾燥し、表面親水性基体を調製した。
【0038】
参考例4
上記のPETフィルムの表面に親水性有機高分子樹脂と、上記アモルファス型過酸化チタンゾル(TiO3 として1.7重量%含有)との1:1混合物0.24gを均一に塗布し、150℃で乾燥し、その上に上記アモルファス型過酸化チタンゾル(TiO3 として1.7重量%含有)とアナターゼ型酸化チタンの1:1混合物0.24gを均一に塗布し、150℃で乾燥し、表面親水性基体を調製した。
【0039】
参考例5〜8
PETフィルムに代えて、あらかじめ界面活性剤(花王株式会社製「クリン・スルー」)を0.1g/100cm2 となるように用いてその表面をプライマー処理した100×100×5mmのフロートガラスを用いる他は、それぞれ参考例1〜4と同様にして参考例5〜8の表面親水性基体(参考例5〜8)を調製した。
【0040】
参考例9〜12
100×100×5mmのPETフィルムに代えて100×100×5mmのポリカーボネート板(三菱ガス化学株式会社製「コーピロンガラス」)を用い、親水性処理として、表面に親水性有機高分子樹脂層を設ける代わりに、波長253.7nmをピークとする殺菌ランプ15W(東芝ライテック株式会社製)を20cmの距離から、70時間照射する以外は、それぞれ参考例1〜4と同様にして参考例9〜12の表面親水性基体(参考例9〜12)を調製した。
【0041】
比較例1
親水性有機高分子樹脂層を設けない他は参考例1と同様にして得られた基体を比較例1とし、アモルファス型過酸化チタンゾルからなるコーティング層を設けない他は参考例1と同様にして得られた基体を比較例2とした。
【0042】
(親水機能試験)
参考例1〜12及び比較例1及び2で調製された親水性基体上に、水道水0.1mlをスポイトにて1cmの高さから滴下し、紫外線を照射せずに約10分間放置後、基板上の水滴の広がりを調べる実験を4回繰り返したところ、参考例1〜12及び比較例2のものは優れた親水性を示したが、比較例1のものは疎水性を示した。次に、参考例1〜12及び比較例2のものを30分間水中でバブリング処理に付した後に、上記親水機能試験を再度実施したところ、参考例1〜12の親水性基体は優れた親水性を維持していたが、比較例2のものは成分が流出し、もはや親水性を示さなかった。
【0043】
【発明の効果】
本発明の親水性コーティング剤組成物は、極めて優れた親水性を付与しうるばかりでなく、かつ成膜性に優れ、加えて静電防止作用を有し汚れを静電付着させることがなく、かつ有機高分子樹脂基板を劣化させることがないばかりか、紫外線を吸収し紫外線照射がないところでも親水機能を充分発揮しうる。また、最外側に光触媒層を設けることにより、紫外線非照射下では親水機能を、紫外線照射下では親水機能に加えて光分解作用をも有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の参考となる表面親水性基体を表す模式図である。
【図2】本発明の参考となる異なる態様の表面親水性基体を表す模式図である。
【図3】本発明の参考となる異なる態様の表面親水性基体を表す模式図である。
【図4】本発明の参考となる光触媒機能も有する表面親水性基体を表す模式図である。
【図5】本発明の参考となる異なる態様の光触媒機能も有する表面親水性基体を表す模式図である。
【図6】本発明の参考となる異なる態様の光触媒機能も有する表面親水性基体を表す模式図である。
【符号の簡単な説明】
1 基材
2 親水性有機高分子樹脂層
3 光触媒能を有さないアモルファス型過酸化チタン及び/又はアモルファス型酸化チタ ンからなるコーティング層
4 有機高分子樹脂基材表面の多孔質構造
5 親水性有機高分子樹脂と光触媒能を有さないアモルファス型過酸化チタン及び/又は アモルファス型酸化チタンとの混合物からなるコーティング層
6 光触媒層

Claims (1)

  1. 基材の表面に、親水性有機高分子樹脂や、界面活性剤及び/又は親水剤と、光触媒能を有さないアモルファス型過酸化チタン及び/又はアモルファス型酸化チタンとの混合物を含有するコーティング層が設けられ、その上に光触媒能を有さないアモルファス型過酸化チタン及び/又はアモルファス型酸化チタンを含有するコーティング層が設けられ、その上にさらに光触媒能を有する光触媒体を含有する光触媒層が設けられていることを特徴とする表面親水性基体。
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