JP5371485B2 - 合成樹脂シート - Google Patents

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Description

本発明は、デスクマットやテーブルマット等に好適に使用される合成樹脂シートに関する。
従来から、デスクマットやテーブルマット等として、透明性や柔軟性に優れた塩化ビニル系合成樹脂製シートが使用されている。しかしながら、印刷紙やコピー紙等を塩化ビニル系合成樹脂製デスクマットの下に挟んで使用すると、塩化ビニル系合成樹脂シートに配合されている可塑剤がシート表面に移行することで、印刷紙やコピー紙等の印刷部分がシートに転写してしまう問題点があった。
この問題を解決するために、塩化ビニル系合成樹脂シートの片面あるいは両面に、ウレタン−アクリレート系等のUV硬化型塗料の層を形成する方法が提案されている。この方法では、UV硬化型塗料中の未反応物によるブロッキングの発生や、経時的使用に伴うUV硬化層の亀裂の発生等が見られるため、長期使用においてシートが劣化してしまうという問題点があった。
そこで、塩化ビニル系合成樹脂以外の材料として、可塑剤を添加しなくとも柔軟性に優れた、透明性を有するオレフィン系合成樹脂シートからなるデスクマットが提案されている。しかしながら、オレフィン系合成樹脂シートは一般的に表面が傷つきやすく、さらに人体から分泌される手油や汗などに含まれるオレイン酸、パルミチン酸、リノール酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸あるいはハンドクリームや化粧品に含まれる油類を吸収して膨潤してしまうので、デスクマット等人の手が触れる用途に利用すると波打つように変形してしまい、デスクマット等の用途には適さないものであった。
このような膨潤や傷つきを防ぐため、オレフィン系合成樹脂シートにUV硬化型塗料を塗布したり、外層としてポリアミド系樹脂等を積層させる方法が提案されている。しかしながら、前述したように、UV硬化型塗料層を形成する場合では長期使用に適しておらず、またポリアミド系樹脂には吸湿性があるため、ポリアミド系樹脂を積層させたシートはカールしやすいという問題点があった。さらに、これらのバリヤーコート層を設けるには生産工程も増えることから、生産性が悪化するといった問題が残されていた。
これらの問題を解決する方法として、アイオノマー樹脂をオレフィン系合成樹脂シートの表面に積層させたデスクマット等が提案されている(特許文献1及び2参照)。アイオノマー樹脂とは、α−オレフィンとカルボキシル基を有するモノマーとの共重合体で、そのカルボキシル基間を金属イオンで架橋されている熱可塑性樹脂であり、透明性が高く、耐油性、耐溶剤性、靭性(傷付き性)に優れたものである。そのため、アイオノマー層を設けることで、オレフィン系合成樹脂シートの問題とされている油類による膨潤やシート表面の傷付きを抑えることが可能となる。また、アイオノマーと相溶性のあるオレフィン系合成樹脂シートを用いれば、共押出成形が可能なので、生産性も改善される。
しかし、アイオノマー層を設けたオレフィン系合成樹脂シートであっても、長期間使用していれば、アイオノマー層に浸透した油成分も多くなり、その上、基材であるオレフィン系合成樹脂層の方まで油成分が浸透してしまうと、シートが波打つように変形する問題があった。
特開平4−64441号公報 特開2002−219030号公報
したがって、本発明は上記の問題点を解決するために、人体から分泌される手油や汗などに含まれるオレイン酸、パルミチン酸、リノール酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸あるいはハンドクリームや化粧品に含まれる油類による膨潤起因の変形を長期間抑えることができ、シート表面が傷付きにくいと共に、デスクマット等として好適な合成樹脂シートを提供することを課題とする。
上記課題を解決するため、本発明は、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体からなる基材層に、曲げ剛性率が200MPa〜350MPaの亜鉛イオンで架橋されているアイオノマー樹脂を、少なくとも一方の面に表面層として積層させてなる合成樹脂シートであって、前記表面層と基材層の厚み比が1:1〜1:14であることを特徴とする合成樹脂シートに関するものである。
また、本発明は、前記エチレン−不飽和カルボン酸共重合体の曲げ剛性率が60MPa以下であることが好ましい。
さらに、前記エチレン−不飽和カルボン酸共重合体が、酢酸ビニルの含有量が14重量%〜33重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体であってもよい。
本発明により、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体からなる基材層に、曲げ剛性率が200MPa〜350MPaの亜鉛イオンで架橋されるアイオノマー樹脂を積層することで、傷付き性に優れるだけでなく、膨潤による波打つような変形を長期間抑えることのできる合成樹脂シートが得られた。また、基材層に曲げ剛性率が60MPa以下の柔軟性のある樹脂を用いることで、デスクマット等の用途に優れた柔軟性を有する合成樹脂シートが得られた。
なお、本発明で用いる傷付き性とは、傷が付きにくいことを意味する。
本発明の表面層として、曲げ剛性率が200MPa〜350MPaの亜鉛イオンで架橋されたアイオノマー樹脂を使用した。
アイオノマー樹脂とは、α−オレフィンとカルボキシル基を有するモノマーとの共重合体で、そのカルボキシル基間を金属イオンで架橋されている熱可塑性樹脂であり、透明性が高く、耐油性、耐溶剤性、靭性(傷付き性)に優れたものである。
アイオノマー樹脂として、具体的には、エチレン−不飽和カルボン酸の共重合体のカルボキシル基を、金属イオンで架橋したものが使用される。エチレン−不飽和カルボン酸共重合体は、不飽和カルボン酸エステルやビニルエステル等を第3成分として共重合させたもの又は2種以上のこれらの共重合体を混合したものであってもよい。
上記不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等、又はそのエステルが挙げられる。
また、アイオノマー樹脂の金属イオンとしては、ナトリウム、カリウム、亜鉛等のイオンが挙げられる。その中でも、亜鉛イオンで架橋されたアイオノマーは、他の金属イオンよりも傷つき性、耐オレイン酸性に優れるため好ましい。
本発明の表面層は、上記アイオノマー樹脂からなると共に、曲げ剛性率が200MPa〜350MPaであり、傷つき性、耐オレイン酸性に優れるものである。
耐オレイン酸性に優れるとは、人体から分泌される手油や汗等に含まれる成分として代表的なオレイン酸に接触しても、波打つような変形を防ぐことができることを意味する。
そのような耐オレイン酸性を有する表面層とするには、アイオノマー樹脂の曲げ剛性率が200MPa〜350MPaであればよい。曲げ剛性率が200MPa未満であれば、基材層のオレイン酸等による波打つような変形が防ぎ難く、耐オレイン酸性に劣ってしまう。350MPaを超えると、耐オレイン酸性は優れるが、デスクマット等に適した柔軟性が得られなくなってしまう。
したがって、曲げ剛性率が200MPa〜350MPaであるアイオノマー樹脂であれば、傷つき性、耐オレイン酸性だけでなく、柔軟性にも優れた表面層が得られる。
また、アイオノマー樹脂には、必要に応じて、酸化防止剤、滑剤、無機物などの各種添加剤を添加することもできる。この添加剤の種類および添加量は、特に限定されるものではなく、従来からこの種の樹脂シートに使用されている添加剤を、アイオノマー樹脂が持つ物性を阻害しない範囲で添加することができる。
本発明では、上記で示したように、表面層に硬いアイオノマー樹脂を用いるため、基材層には、柔軟性のある樹脂として知られているエチレン−不飽和カルボン酸共重合体を使用した。
前記エチレン−不飽和カルボン酸共重合体の不飽和カルボン酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等、又はそのエステルや酢酸ビニル等のビニルエステルが挙げられる。また、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体は、不飽和カルボン酸エステルやビニルエステル等を第3成分として共重合させたもの又は2種以上のこれらの共重合体を混合したものであってもよい。
特に、曲げ剛性率が60MPa以下であるエチレン−不飽和カルボン酸共重合体が好ましい。曲げ剛性率60MPaを超えるエチレン−不飽和カルボン酸共重合体に、本発明の表面層を積層させてなる合成樹脂シートとした場合、デスクマット等の用途に適した柔軟性に劣る傾向にある。
具体的には、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)が挙げられ、さらに、EVAの酢酸ビニル含有量が14重量%〜33重量%であることが好ましい。酢酸ビニルの含有量が14重量%未満であれば、曲げ剛性率が60MPaを超えてしまう。また、酢酸ビニルの含有量が33重量%を超える場合、軟化点が30℃以下になってしまい、通常生活において使用すると、べたついてしまう傾向にある。
また、上記エチレン−不飽和カルボン酸共重合体には、必要に応じて、酸化防止剤、滑剤、無機物などの各種添加剤を添加することもできる。この添加剤の種類および添加量は、特に限定されるものではなく、従来からこの種の樹脂シートに使用されている添加剤を、基材層が持つ物性を阻害しない範囲で添加することができる。
本発明は、上記エチレン−不飽和カルボン酸共重合体からなる基材層に、上記曲げ剛性率が200MPa〜350MPaのアイオノマー樹脂からなる表面層を積層させてなる合成樹脂シートである。この合成樹脂シートは、硬い表面層を有するため、傷付き性、耐オレイン酸性に優れたものである。また、基材層として柔軟性のあるエチレン−不飽和カルボン酸共重合体を用いるので、そこにアイオノマー樹脂のように硬い表面層を積層させた本発明においても、デスクマット等の用途に適した柔軟性のある合成樹脂シートが得られるものである。
さらに、基材層、表面層ともに、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体からなるため、基材層と表面層間の接着性、透明性に優れた合成樹脂シートが得られる。
このような合成樹脂シートの全体厚みは1.5mm〜2.0mmが好ましく、表面層と基材層の厚み比は、1:1〜1:14である。表面層の厚みが薄すぎると、基材層のオレイン酸等による波打つような変形を抑えにくく、また、表面層の厚みが厚すぎると、耐オレイン酸性は優れるが、柔軟性に劣ってしまい、デスクマット等に適したシートとならない傾向にある。
さらに、表面層の厚みは、0.1mm〜0.8mmであるのが好ましい。0.1mm未満であれば、傷つき性に劣り、オレイン酸等による波打つような変形を防ぐほどの剛性が得られない。また、0.8mmを超えると、シートの柔軟性を損ねてしまい、カールしやすくなるなど、デスクマット等の用途に適さないものとなる。さらに表面層の厚みが0.2mm〜0.6mmであればより好ましい。
また、本発明の合成樹脂シートは、基材層の少なくとも片方の面に、表面層を積層させた2種2層のシートに限定されたものではなく、基材層の両面にアイオノマー樹脂又は他の樹脂を積層させた2種3層、又は他の樹脂を積層させた3種3層のシートであってもよい。この場合、両面の表面層を合わせた厚みと基材層の厚み比は、1:1〜1:14であるのが好ましい。他の樹脂としては、デスクマット等に適した柔軟性又は透明性を有していればよく、好ましくはエチレン系樹脂が挙げられる。
本発明のような合成樹脂シートの製造方法としては、共押出法、共押出/ラミネート法、などを用いて製造することができる。また、カレンダー法、押出法、インフレーション法で基材層と表面層を別々に成形した後に、熱ラミネートや接着剤等を用いて、それらを張り合わせて製造することも可能である。その中でも、共押出法が好ましい。この製造方法を用いれば、Tダイの種類によって、層構成が2種2層だけでなく、2種3層、3種5層等の積層体を一度に成形でき、生産性にも優れている。
以下に、実施例により本発明を具体的に説明する。
なお、得られたシートを評価するため、以下の方法を採用した。
・ 柔軟性・・・丸めた状態で40℃×1週間促進後広げた時に、著しくカールせず1日後にはほぼ平らな状態に戻る:○、ややカールする:△、戻らない:×
・ 傷つき性・・・学振磨耗試験(カナキン500g荷重で100回磨耗)
傷が付かない又は目立たない:○、傷が付く又は目立つ:×
・ 耐オレイン酸性・・・6cm×6cmのシートにオレイン酸2gを含浸させた2cm×2cmのキムタオルをのせ、室温で3日間放置してから、40℃で8時間促進後の重量変化率が0.5%未満:○、0.5%以上1%未満:△、1%以上:×
上記(3)耐オレイン酸性の評価方法は、シートを長期間使用した状態での耐オレイン酸性を評価するものである。なお、重量変化率が0.5%未満であれば波打つような変形なし、0.5%以上1%未満であれば、波打ったときの波の高さが5mm程度、1%以上であれば、波打ったときの波の高さが5〜10mm程度である。
(実施例1)曲げ剛性率が55MPaであって、酢酸ビニル含有率が14重量%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA;エバフレックス:三井デュポンポリケミカル製)に、曲げ剛性率が307MPaであって、亜鉛イオンで架橋されたエチレン不飽和カルボン酸アイオノマー(ハイミラン:三井デュポンポリケミカル製)が積層されてなる2種2層のシートを得た。前記シートは、共押出法によって成形され、表面層であるアイオノマー樹脂層の厚みが0.3mm、基材層の厚みが1.2mmのシートとした。
(実施例2)基材層が、曲げ剛性率が24MPaであって、酢酸ビニル含有率が25重量%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA;エバフレックス:三井デュポンポリケミカル製)であること以外は、実施例1と同様の2種2層のシートを得た。
(実施例3)基材層が、曲げ剛性率が72MPaであって、酢酸ビニル含有率が10重量%であるエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA;エバフレックス:三井デュポンポリケミカル製)であること以外は、実施例1と同様の2種2層のシートを得た。
(実施例4)基材層が、曲げ剛性率が52MPaであるエチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA;ニュクレル:三井デュポンポリケミカル製)であること以外は、実施例1と同様の2種2層のシートを得た。
(比較例1)表面層が、曲げ剛性率が197MPaである、亜鉛イオンで架橋されたエチレン不飽和カルボン酸アイオノマー(ハイミラン:三井デュポンポリケミカル製)であること以外は、実施例1と同様の2種2層のシートを得た。
(比較例2) 表面層が、曲げ剛性率が197MPaである、亜鉛イオンで架橋されたエチレン不飽和カルボン酸アイオノマー(ハイミラン:三井デュポンポリケミカル製)であること以外は、実施例2と同様の2種2層のシートを得た。
(比較例3)表面層が、曲げ剛性率が197MPaである、亜鉛イオンで架橋されたエチレン不飽和カルボン酸アイオノマー(ハイミラン:三井デュポンポリケミカル製)であること以外は、実施例3と同様の2種2層のシートを得た。
(比較例4)表面層が、曲げ剛性率が322MPaであって、ナトリウムイオンで架橋されたエチレン不飽和カルボン酸アイオノマー(ハイミラン:三井デュポンポリケミカル製)であること以外は、実施例4と同様の2種2層のシートを得た。
表面層に、剛性のあるアイオノマー樹脂を用いることで、傷つき性だけでなく、耐オレイン酸性にも優れたシートが得られた。さらに、基材層の曲げ剛性率が60MPa以下であれば、一層柔軟性に優れたシートが得られた(実施例1〜4)。
また、表面層として、曲げ剛性率の低いアイオノマーを用いると、柔軟性は得られるが、耐オレイン酸性に劣り、膨潤によって波うつように変形したシートが得られた(比較例1〜3)。
さらに、表面層にナトリウムイオンで架橋されたアイオノマー樹脂を用いると、亜鉛イオンで架橋されたアイオノマー樹脂を用いた実施例4の合成樹脂シートに比べ、傷つき性、耐オレイン酸性に劣るシートが得られた(比較例4)。
(実施例5)実施例2のシートにおいて、表面層の厚みが0.75mm、基材層の厚みが0.75mmであるシートを得た(表面層と基材層の厚み比1:1)。
(実施例6)実施例2のシートにおいて、表面層の厚みが0.1mm、基材層の厚みが1.4mmであるシートを得た(表面層と基材層の厚み比1:14)。
(比較例5)実施例2のシートにおいて、表面層の厚みが0.05mm、基材層の厚みが1.45mmであるシートを得た(表面層と基材層の厚み比1:29)。
(比較例6)実施例2のシートにおいて、表面層の厚みが0.9mm、基材層の厚みが0.6mmであるシートを得た(表面層と基材層の厚み比1.5:1)。
表面層であるアイオノマー樹脂層は、曲げ剛性率が307MPaと硬いため、膨潤による波うち変形がし難いものであるが、アイオノマー樹脂層の厚みが薄いと、耐オレイン酸性が得られなかった(比較例5)。また、アイオノマー樹脂層が厚すぎると、耐オレイン酸性や傷つき性は良好であるが、柔軟性に劣るものであった(比較例6)。
また、表面層と基材層の厚み比が、1:1〜1:14であれば、柔軟性もあり、耐オレイン酸性の優れた合成樹脂シートが得られた(実施例5,6)
表1に、樹脂の配合比、表面層(表)と基材層(基)の厚み比及び評価結果を示す。
本発明は、透明で柔軟性を有するだけでなく、傷つき性や耐オレイン酸性にも優れた合成樹脂シートに関するものであって、デスクマットやテーブルマット等に利用することができる。

Claims (3)

  1. エチレン−不飽和カルボン酸共重合体からなる基材層に、曲げ剛性率が200MPa〜350MPaの亜鉛イオンで架橋されているアイオノマー樹脂を、少なくとも一方の面に表面層として積層させてなる合成樹脂シートであって、前記表面層と基材層の厚み比が1:1〜1:14であることを特徴とする合成樹脂シート。
  2. 前記エチレン−不飽和カルボン酸共重合体の曲げ剛性率が60MPa以下であることを特徴とする請求項1記載の合成樹脂シート。
  3. 前記エチレン−不飽和カルボン酸共重合体がエチレン−酢酸ビニル共重合体であり、酢酸ビニルの含有量が14重量%〜33重量%であることを特徴とする請求項1又は2記載の合成樹脂シート。
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