JP6754589B2 - 樹脂被覆金属積層体、電池外装体及び電池 - Google Patents
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Description
一般的な樹脂フィルムを用い、追加の加工を行わずに得られた樹脂被覆金属積層体は、通常、表面に光沢を有する高艶積層体となる。一方、最近では意匠性を高めるため、表面を低艶化したマット処理樹脂被覆金属積層体に対する要求がある。
例えば特許文献1には、マット層(マットコート層)、耐熱性樹脂からなる外側基材層、金属箔、熱可塑性樹脂からなる内側シーラント層がこの順に積層されてなる成形用包装材であって、マット層は無機及び/又は有機の固体微粒子が分散含有された耐熱性樹脂組成物を塗着形成して得られ、マット層側の表面グロス値が30%以下に設定された成形用包装材が開示されている。このようなマット層は、当該マット層内の微細粒子の存在により、マット層の厚さ方向に微細な凹凸を有するものとなる。そして、この凹凸が、マット層に入射した光を拡散反射(乱反射)させるため、良好なマット性が得られる。
しかしながら、特許文献1に記載のような積層体では、マット性獲得のため、マット層表面に微細な凹凸を設けているため、微細な絵柄や文字を表面に印刷する際の印刷特性に劣るという問題があった。
本発明の第一の態様の樹脂被覆金属積層体は、少なくとも、マット層、基材層、バリア層、及びシーラント層をこの順に備えてなる樹脂被覆金属積層体であって、前記マット層の外側に、厚さ0.1μm以下の表面保護層が積層されてなることを特徴とする。
前記表面保護層の、メチルエチルケトンに対する接触角は、10〜50°であることが好ましい。
前記マット層は、粒径2〜5μmのシリカ粒子、アクリルウレタン樹脂、及びアクリルビーズを含むことが好ましい。
前記表面保護層は、非シリコーン剥離剤を含むことが好ましい。
前記表面保護層が設けられた前記マット層の60°入射角における光沢値は、1.0〜3.0であることが好ましい。
前記バリア層は、厚さ40μm以下の金属箔であることが好ましい。
前記シーラント層は、厚さ40μm以下のポリプロピレン、ポリエチレン、又はプロピレンとエチレンとの共重合体からなる層であることが好ましい。
前記基材層は、厚さ3〜11μmのポリエチレンテレフタレート又はポリアミドからなる層であることが好ましい。
前記表面保護層及び前記マット層が設けられた前記基材層と、前記バリア層とは、ウレタン系接着剤を介して接着されてなることが好ましい。
前記樹脂被覆金属積層体は、電池外装用であることが好ましい。
本発明の第二の態様の電池外装体は、第一の態様の樹脂被覆金属積層体を備える電池外装体であって、電池を収納する内部空間を有し、前記樹脂被覆金属積層体のシーラント層の側が当該内部空間の側となることを特徴とする。
本発明の第三の態様の電池は、前記第二の態様の電池外装体を備えることを特徴とする。
本発明の第一の態様の樹脂被覆金属積層体(以下、単に「積層体」ということがある。)は、少なくとも、マット層、基材層、バリア層、及びシーラント層をこの順に備えてなる樹脂被覆金属積層体であって、マット層の外側に、厚さ0.1μm以下の表面保護層が積層されてなるものである。ここでマット層の外側とは、マット層の、基材層に面する側とは逆の側を指すものであって、表面保護層を含む各層の配置は順に、表面保護層、マット層、基材層、バリア層、シーラント層、となる。
本実施形態に係る積層体10は、表面保護層11、マット層12、基材層13、着色層14、第1接着剤層15、第1腐食防止層16、バリア層17、第2腐食防止層18、第2接着剤層19、及びシーラント層20をこの順に備える、10層構成である。
以下、各層について詳述する。
表面保護層11は、後述するマット層12の上に設けられて、積層体10表面、すなわち表面保護層11へ絵柄や文字を印刷する際の印刷特性を向上させるものである。表面保護層11がマット層12により形成された表面凹凸を消失させてしまう場合、積層体10のマット性が過度に失われ得るため、マット性と印刷特性との両立がなされない虞がある。そのため、表面保護層11は、マット層12により形成された凹凸を表面保護層11で埋め戻して、或いは覆って積層体10表面を平坦とするものではなく、表面保護層11の表面特性により、印刷特性を向上させるものである。
表面保護剤として具体的には、長鎖アルキル基含有ビニルモノマーの重合体、フッ化アルキルビニルモノマーの重合体等の非シリコーン系の剥離剤(離形剤);フッ素系界面活性剤等の界面活性剤;等が挙げられる。なかでも、長鎖アルキル基含有ビニルモノマーの重合体であるピーロイル1050、ピーロイル1010、ピーロイル1070、ピーロイル1200、ピーロイル406(いずれも商品名、一方社油脂工業社製)が好ましく、ピーロイル1050が特に好ましい。
また、表面保護層11を形成するための表面保護剤の塗布量は特に限定されるものではなく、マット層12の表面凹凸の程度(例えば、マット層12が含有する微粒子の粒径や量、マット層12の膜厚、等)に応じて適宜決定されることが好ましい。一例として、表面保護剤としてピーロイル1050を使用する場合であれば、ピーロイル1050の0.003〜0.3質量%トルエン溶液を準備し、バーコーターを用いて当該溶液を1〜10g/m2でマット層12上に塗布することが好ましい。
このようにして形成される表面保護層11の厚さは、0.1μm以下であり、0.01μm以下であることが好ましい。より具体的には、0.0001μm〜0.01μmとすることが好ましく、0.0005μm〜0.005μmであることがさらに好ましい。
マット層12は、積層体10にマット性を付与するための層である。マット層12により艶消し状の外観が得られるのみならず、光沢度が高い場合に比して積層体10表面の摺り傷等が見え難いという効果も奏し得る。
良好なマット効果を、簡便に得るため、マット層12は微粒子を有することが好ましい。微粒子がマット層12中に含有されることにより、マット層12表面に微細な凹凸が形成され、この凹凸によって光が散乱する結果、光沢度が低下してマット効果が得られる。
マット層12は具体的には、主剤となる樹脂中に微粒子が分散された組成物からなる層が好ましく、樹脂と微粒子とを溶剤に分散したマット層形成剤を、基材層13上に薄く塗布して形成されることがより好ましい。
なかでもマット層12の樹脂としては、アクリルウレタン樹脂が好ましい。
微粒子の形状、大きさは特に限定されず、定形、不定形のいずれでもよいが、略球状が好ましく、その大きさは平均粒子径において1〜10μmが好ましく、特に2〜5μmが好ましい。
なかでもマット層12の微粒子としてはアクリル粒子(アクリルビーズ)、及びシリカ粒子からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、これらの併用がより好ましい。
また、マット層12を形成するためのマット層形成剤の塗布量は特に限定されるものではなく、積層体10に要求される光沢度や、マット層12に用いられる微粒子の粒径、量、形状等に応じて適宜決定されることが好ましい。一例として、マット層形成剤としてアクリルウレタン樹脂とシリカ粒子とアクリルビーズとを使用する場合であれば、当該成分を固形分10〜50質量%で含有する溶液を準備し、バーコーターやグラビア印刷機を用いて当該溶液を2〜15g/m2で基材層13上に塗布することが好ましい。
このようにして形成されるマット層12の膜厚は、例えば、0.1μm〜1mmとすることができ、0.5μm〜100μmが好ましい。
基材層13は、十分な機械的強度を有するものであれば特に制限されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)等のポリエステル樹脂;ナイロン(Ny)等のポリアミド樹脂;延伸ポリプロピレン(OPP)等のポリオレフィン樹脂;ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)等からなる層(フィルム)が使用できる。なかでも、ポリエステル樹脂又はポリアミド樹脂からなる層が好ましく、PET又はNyからなる層がより好ましい。
基材層13の厚さは、例えば、1〜50μmとすることができ、1〜30μmが好ましく、3〜15μmがさらに好ましい。
着色層14は、本発明では任意の構成であって、積層体10の意匠性を高めるため、表面側(表面保護層11の側)から積層体10を目視した際の色味を任意に決定する層である。
着色層14を形成する着色剤の種類や、着色層14の形成方法は限定されるものではなく、市販の顔料や染料を用いて、バーコーター等の公知の塗布装置により、着色層14を形成することができる。
第1接着剤層15は、本発明では任意の構成であって、後述する第2接着剤層19と同様の構成としてもよく、一般的なウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤等の接着剤からなる層であってもよい。第1接着剤層15の厚さは、例えば、0.5〜10μmとすることができる。厚さをこの範囲とすることによって、基材層13とバリア層17とを高い接着力で接着させることができ、層間剥離を防ぐことができる。
第1腐食防止層16、第2腐食防止層18は、いずれも本発明では任意の構成であって、金属からなる層であることが好ましいバリア層17(詳細は後述)の、錆等による腐食を防ぐための層である。
第1、第2腐食防止層16、18はいずれも任意構成ではあるが、本発明の積層体10を、金属腐食を亢進し得る成分と接触し得る用途で用いる場合には、第1、第2腐食防止層16、18をバリア層17表面に設けることが好ましい。例えば、本発明の積層体10を、電池外装用として用いる場合であれば、内包される電池から電解液等の薬液が漏れ出るおそれがあり、漏出した薬液はバリア層17の金属を腐食させ得るため、バリア層17表面に腐食防止処理を施すことが好ましい。また、電池外装用途の場合、電解液と接触する可能性が高い側は、内包される電池の側、即ち、バリア層17のシーラント層20の側となるため、少なくとも第2腐食防止層18を設けることが好ましい。
また、第1、第2腐食防止層16、18は、ハロゲン化金属化合物に加えて、さらに、水溶性樹脂と、キレート剤又は架橋性化合物とを含有することが好ましい。よって、第1、第2腐食防止層16、18としては、ハロゲン化金属化合物と、水溶性樹脂と、キレート剤又は架橋性化合物とを含有することが好ましく;第1、第2腐食防止層16、18は、ハロゲン化合物と、水溶性樹脂と、キレート剤又は架橋性化合物とを含有する水溶液を、下層となる層の上に塗布した後、乾燥・硬化させることによって形成されることがことが好ましい。以下、第1、第2腐食防止層16、18を形成する材料を、「腐食防止処理剤」ということがある。
ハロゲン化金属化合物は、耐電解液性等の耐薬品性を向上させる作用を有する。すなわち、バリア層17の表面を不動態化し、電解液に対する耐腐食性を高めることができる。第1、第2腐食防止層16、18が後述する水溶性樹脂を含有する場合には、ハロゲン化金属化合物は水溶性樹脂を架橋させる作用も有する。
ハロゲン化金属化合物は、後述の水溶性樹脂との混和性や水溶性媒体に分散して塗布する場合を鑑みて、水溶性を有することが好ましい。
ハロゲン化金属化合物としては、例えば、ハロゲン化クロム、ハロゲン化鉄、ハロゲン化ジルコニウム、ハロゲン化チタン、ハロゲン化ハフニウム、チタンハロゲン化水素酸、およびそれらの塩、等が挙げられる。ハロゲン原子としては、塩素、臭素、フッ素が挙げられ、塩素又はフッ素が好ましい。また、特に好ましくはフッ素である。ハロゲン化金属化合物がフッ素を含有することにより、条件によっては腐食防止処理剤からフッ酸(HF)を発生させることが可能となる。
また、ハロゲン化金属化合物は、ハロゲン原子、金属以外の原子を有していてもよい。
なかでも、ハロゲン化金属化合物としては、鉄、クロム、マンガン又はジルコニウムの塩化物又はフッ化物が好ましい。
水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール樹脂又はその誘導体、及び、ポリビニルエーテル系樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。
ポリビニルアルコール樹脂は、例えば、ビニルエステル系モノマーの重合体又はその共重合体をケン化することで製造することができる。ポリビニルアルコール樹脂は変性されていてもよい。
ビニルエステル系モノマーの重合体又はその共重合体としては、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、酪酸ビニル等の脂肪酸ビニルエステルや、安息香酸ビニル等の芳香族ビニルエステル等のビニルエステル系モノマーの単独重合体又は共重合体、及びこれと共重合可能な他のモノマーの共重合体などが挙げられる。共重合可能な他のモノマーは特に限定されない。また、重合や共重合は常法により行うことができる。
特に、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、その他、各種グリコールや多価アルコールのモノビニルエーテル等の、水酸基を有する脂肪族ビニルエーテルをモノマーに含むポリビニルエーテル系樹脂は、水溶性を有し、かつ水酸基に対する架橋反応が可能なので、本発明に好適に用いることができる。
キレート剤は、金属イオンに配位結合し金属イオン錯体を形成し得る材料である。
キレート剤は、ハロゲン化金属化合物に由来の金属化合物(酸化クロム等)と、前記水溶性樹脂とを結合させて、第1、第2腐食防止層16、18の圧縮強度を高めるため、第1、第2腐食防止層16、18の厚みが、例えば0.2μmを越え、1.0μm以下である場合でも、第1、第2腐食防止層16、18が脆化して割れや剥離が生じることはない。このため、バリア層17と第1、第2接着剤層15、19との間の接着強度及び密着性を高めることができる。
また、キレート剤は、水溶性樹脂またはハロゲン化金属化合物と化学反応することにより、水溶性樹脂を耐水化する作用を有する。
なかでもキレート剤としては、ホスホン酸系キレート剤、(ポリ)リン酸系キレート剤等のリン酸系のキレート剤(リン酸化合物)が好ましく、ホスホン酸系キレート剤がより好ましい。
架橋性化合物は、前記水溶性樹脂と反応して架橋構造を形成し得る化合物をいう。このような架橋性化合物を用いることにより、第1、第2腐食防止層16、18内において前述の水溶性樹脂と架橋性化合物とが緻密な架橋構造を形成し、バリア層17表面の不動態性及び耐腐食性をより向上させることができる。
架橋性化合物としては、水溶性樹脂内の親水性基(例えば、カルボキシ基、カルボン酸基等)と反応して架橋構造を形成し得るものであれば特に限定されるものではないが、例えば、エポキシ基を有する化合物や、オキサゾリン基を有する化合物が挙げられる。
バリア層17は、積層体10において、当該積層体で密閉された内容物の漏れ(例えば電池の液漏れ)を低減するために重要な役割を果たすものである。また、機械的強度の高い金属を用いることにより、積層体10を用い、絞り成形によって電池収納用の凹部を形成する際に、ピンホールの発生を低減することができ、結果として積層体で密閉された内容物の漏れ(例えば電池の液漏れ)を低減することが可能となる。
バリア層17としては、金属又は合金を薄く展延したものであれば特に限定されるものではなく、アルミニウム、銅、鉛、亜鉛、鉄、ニッケル、チタン、クロム等の金属箔;ステンレス鋼等の合金箔が挙げられる。ステンレス鋼箔としては、オーステナイト系、フェライト系、マルテンサイト系などのステンレス鋼からなるものであれば特に限定されない。オーステナイト系としては、SUS304,316,301等があり、フェライト系としてはSUS430等が挙げられ、マルテンサイト系としてはSUS410等が挙げられる。
なかでも、加工性、入手の容易さ、価格、強度(突き刺し強度、引張強度、等)、耐腐食性等の観点から、アルミニウム箔又はステンレス鋼箔が好ましい。
第2接着剤層19は、本発明においては任意の層であって、シーラント層20と、第2腐食防止層18が表面に形成されたバリア層17とを接着するために設けられる層である。
第2接着剤層19を形成する接着剤としては、上記の層を良好に接着し得るものであればその材料は特に限定されるものではないが、例えば、接着性と貯蔵弾性率とを満たし得ることから、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)と、複数のエポキシ基を含有する化合物(B)と、を含有する接着剤からなる層であることが好ましい。
以下、酸変性ポリオレフィン樹脂(A)を「(A)成分」、複数のエポキシ基を含有する化合物(B)を「(B)成分」ということがある。
酸変性ポリオレフィン樹脂(A)((A)成分)とは、不飽和カルボン酸またはその誘導体で変性されたポリオレフィン系樹脂であって、ポリオレフィン系樹脂中に、カルボキシ基や無水カルボン酸基等の酸官能基を有するものである。
(A)成分は、不飽和カルボン酸またはその誘導体によるポリオレフィン系樹脂の変性や、酸官能基含有モノマーとオレフィン類との共重合等により得られる。なかでも(A)成分としては、ポリオレフィン系樹脂を酸変性して得られたものが好ましい。
共重合する場合の前記オレフィン系モノマーとしては、1−ブテン、イソブチレン、1−ヘキセン等が挙げられる。
(B)成分は、エポキシ基を複数含有する化合物である。(B)成分は低分子化合物であっても高分子化合物であってもよい。前記(A)成分との混和性、相溶性を良好とする観点からは(B)成分は高分子化合物(樹脂)であることが好ましい。一方、接着剤が溶剤型のドライラミネート用接着剤である場合には、有機溶剤への溶解性を良好とする観点から、(B)成分が低分子化合物であることも好ましい。
また、上記(A)成分の酸官能基の一部と、(B)成分のエポキシ基の一部とが反応し、(A)成分と(B)成分との架橋構造が第2接着剤層19内で形成される結果、この架橋構造により第2接着剤層19の強度が補強され、優れた接着性と共に良好な耐久性が得られるものと考えられる。
本発明で用いられる接着剤は、さらに、有機溶剤を含有していてもよく、含有していなくてもよい。
有機溶剤を含有して液状の接着剤とすることにより、溶剤型ドライラミネート用接着剤とすることができる。このような液状接着剤を、下層となる層(例えば、バリア層17の第2腐食防止層18を設けた面)の上に塗布及び乾燥することにより、第2接着剤層19を形成することができる。押出し成形に代えて塗布を選択することにより、接着剤層をより薄層で形成可能となり、接着剤層の薄層化及び接着剤層を用いた積層体全体の薄膜化が可能である。
一方、有機溶剤を含有しない場合、(A)成分と(B)成分とを溶融混練し、その後押出し成形等することにより、熱ラミネート等に好適な接着剤層を形成することができる。
シーラント層20は、本発明の樹脂被覆金属積層体10を重ねあわせ、ヒートシールにより互いに接着させることを可能とする層である。
シーラント層20としては、上記のようなシーラント層としての機能を果たし得る層であれば特に限定されるものではないが、入手の容易さ、ヒートシール性等の観点から、ポリオレフィンからなる層が好ましい。ポリオレフィンからなる層は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリイソブチレン、プロピレンとエチレン又はα−オレフィンとのランダム共重合体、プロピレンとエチレン又はα−オレフィンとのブロック共重合体等が挙げられる。
なかでも、第2接着剤層19との接着性が向上することから、ホモポリプロピレン(プロピレン単独重合体;以下、「ホモPP」ということがある。)、プロピレン−エチレンのブロック共重合体(以下、「ブロックPP」と言うことがある。)、プロピレン−エチレンのランダム共重合体(以下、「ランダムPP」と言うことがある)等のポリプロピレン系樹脂が好ましい。なかでも、ホモPP又はブロックPPがより好ましく、機械強度に優れることから、ブロックPPが特に好ましい。
シーラント層20は、単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。
シーラント層20の厚さは、例えば、1〜50μmとすることができ、5〜30μmが好ましい。
本発明の樹脂被覆金属積層体10を製造する方法は特に限定されないが、例えば以下のようにして製造することができる。
次に、基材層13の、マット層12が形成された面とは反対側の面に、塗布装置により着色剤を塗布して着色層14を形成し、必要に応じてオーブン等により乾燥する。
その後、形成されたマット層12の上に、表面保護剤を塗布して表面保護層11を形成する。表面保護層11は、マット層12と同様にして形成が可能である。エージングは行ってもよく、行わなくてもよい。
その後、上記の手順により得られた4層積層体(表面保護層11、マット層12、基材層13、及び着色層14)を規定の幅に切断する。
具体的には、上述のような腐食防止処理剤をバリア層17の表面に塗布した後、加熱乾燥する。このとき、バリア層17の片面のみに腐食防止処理剤を塗布することにより、第2腐食防止層18のみを形成してもよく、バリア層17の両面に腐食防止処理剤を塗布することにより、第1腐食防止層15を同時に形成してもよい。なお、バリア層17の両面に腐食防止層を設ける場合、腐食防止処理剤中にバリア層17を浸漬させてバリア層17の両面に腐食防止処理剤を付着させた後、加熱乾燥する方法を採用し、第1、第2腐食防止層16、18を同時に形成することも好ましい。
溶融混練は、一軸押出機、多軸押出機、バンバリーミキサー、プラストミル、加熱ロールニーダー等の公知の装置を用いることができる。溶融混練時のエポキシ基の分解を抑制するため、水分等のエポキシ基と反応し得る揮発成分は、予め装置外へ除去しておき、且つ、反応中に揮発成分が発生する場合には脱気等により随時装置外へ排出することが望ましい。前記酸変性ポリオレフィン樹脂が、酸官能基として酸無水物基を有する場合、エポキシ基との反応性が高く、より穏和な条件下で反応が可能となるため好ましい。溶融混練時の加熱温度は、両成分が十分に溶融し、且つ熱分解しないという点で、240〜300℃の範囲内から選択することが好ましい。なお、混練温度は、溶融混練装置から押し出された直後における、溶融状態の接着剤に、熱電対を接触させる等の方法によって測定することが可能である。
具体的には、シーラント層20を構成するフィルムを予め準備し、当該フィルムを第2接着剤層19上に配した上で、ラミネートを行う。ラミネートの温度は、第1接着剤層を介してシーラント層20と、第2腐食防止層18及びバリア層17とが良好に接着される温度であれば特に限定されるものではなく、第2接着剤層19を構成する接着剤の材料や融点を考慮して決定することができる。ドライラミネートの場合の温度は、一般的には70〜150℃であって、80〜120℃が好ましい。
一般的に、熱伝導率が低く膨張し難い金属箔に高熱を付加した場合、金属箔の幅方向に歪み(カール)が発生しやすくなる。このような金属箔を用いて熱ラミネートを行う場合、面内で十分に熱が伝播せず、幅方向で熱圧着ローラーに接触していない部分が生じたり、ロールに接触していないことや、歪み自体によって熱圧着時に折れやシワが生じたりすることがある。また、金属箔に歪みが発生しない程度の高温まで加熱を行う場合、加工速度の低下や必要な熱量の増大によって生産効率が低下し得る。加えて、ラミネート時の温度を下げることにより、シーラント層20の熱による白化等を防ぐことも可能となり、シーラント層20の劣化を防ぎ、シーラント層20の選択の幅を広げることが可能となる。
そして、本態様の樹脂被覆金属積層体10の製造においてドライラミネートを採用する場合、折れ、シワ、樹脂の白化等の発生を抑制し、好適な樹脂被覆金属積層体10を高い生産効率で製造することができる。
また、図1に示した樹脂金属積層体10では、基材層13とバリア層17との間に第1接着剤層15を形成し、バリア層17とシーラント層20との間に第2接着剤層19を形成している。しかしながら、これらは必須構成ではなく、いずれか一方のみを形成してもよく、共に形成しなくてもよい。
さらに、図1に示した樹脂金属積層体10では、着色層14を設けているが、積層体10を着色する必要がない場合には着色層14を設ける必要はない。
本発明の第二の態様の電池外装体は、前記第一の態様の樹脂被覆金属積層体を備える電池外装体であって、電池を収納する内部空間を有し、前記樹脂被覆金属積層体のシーラント層の側が当該内部空間の側となる電池外装体である。具体的には、シーラント層が内部空間に面するように第一の態様の樹脂被覆金属積層体を所望の形状に成形し、必要に応じて端部を密封等することにより得られるものである。
電池外装体の形状、大きさ等は特に限定されず、用いられる電池の種類に応じて適宜決定することができる。
電池外装体は、一の部材からなるものであってもよく、図2を用いて後述するように二以上の部材(例えば、容器本体及び蓋部)を組み合わせて形成されるものであってもよい。
本発明の第三の態様の電池は、前記第二の態様の電池外装体を備えたものである。
電池としては二次電池であるリチウムイオン電池等の二次電池や、電気二重層キャパシタ等のキャパシタなどの、電解液に有機電解質を使用したものが挙げられる。本発明の樹脂被覆金属積層体は、良好な耐薬液性(耐電解液性)を有し得るため、LiPF6等を含む電解液を用いた場合にも好適に動作し得る電池を得ることが可能となる。
一例として、二次電池50の斜視図を図2に示す。二次電池50は、電池外装用容器30に、リチウムイオン電池37を内包したものである。
電池外装用容器30は、本発明の第一の態様の樹脂被覆金属積層体10からなる容器本体40と、樹脂被覆金属積層体10からなる蓋部43とを重ね、周縁部39をヒートシールすることにより形成されている。符号38は、リチウムイオン電池37の正極および負極に接続された電極リードである。
まず、図3(a)に示すように、樹脂被覆金属積層体10を、凹部41を有するトレー状となるように、絞り成形などにより成形し、容器本体40を得る。凹部41の深さは、例えば、2mm以上とすることができる。
容器本体40の凹部41に、リチウムイオン電池(図2中のリチウムイオン電池37)を収納する。
次いで、図3(b)に示すように、樹脂被覆金属積層体10からなる蓋部43を容器本体40の上に重ね、容器本体40のフランジ部42と蓋部43の周縁部44をヒートシールすることによって、図2に示す二次電池50が得られる。すなわち、図3に示す電池では、容器本体40の上面が蓋部43に覆われることにより、凹部41と蓋部43とによって電池を収容する内部空間が形成される。
<実施例1〜9>
まず、厚さ6μmの片面コロナ処理PETフィルムを用意した。このPETフィルムのコロナ処理面に、バーコーターを用いて表1に示すマット層形成剤を6.0g/m2で塗布した後、80℃のオーブンで30秒加熱し、マット層を形成した。その後、40℃条件下で8時間静置し、エージングを行った。マット層の厚さは面内の平均が5μmであった。
次いで、上記PETフィルムのマット層が形成された面とは逆側の面に、バーコーターを用いて、固形分25質量%の黒インクを、5.0〜5.5g/m2で塗布した後、80℃のオーブンで加熱して着色層を形成した。
その後、マット層の上に、バーコーターを用いて、表1に示す表面保護剤を、3g/m2で塗布した後、80℃のオーブンで30秒加熱乾燥し、表面保護層を形成した。表面保護層の厚さは0.001μmであった。
次いで、形成された第2腐食防止層上に、第2の接着剤を塗布し、厚さ3μmの第2接着剤層を形成した。第2の接着剤は、マレイン酸変性ポリプロピレンに対し、エポキシ樹脂を5重量部混練したものを用いた。
この金属箔を含む積層体における第2接着剤層と、厚さ20μmのポリプロピレン樹脂(ブロックPP)フィルムからなるシーラント層とをドライラミネートにより積層した。
その後、第1腐食防止層上に、グラビアコーターを用いて、4.0g/m2で第1の接着剤を塗布した後、80℃のオーブンで30秒加熱し、第1接着剤層を形成した。第1の接着剤は、ウレタン系接着剤を用いた。
この第1接着剤層と、上記で得られた積層体における着色層とを対向させ、80℃のドライラミネートにより積層した。
その後、60℃で2日間に次いで80℃で3日間、その後40℃で1日間のエージング処理を経て、樹脂被覆金属積層体を得た。
表面保護層を設けなかった以外は、上記実施例1〜9と同様にして、樹脂被覆金属積層体を得た。
P−1:長鎖アルキルペンダント型剥離剤(ピーロイル1050、商品名、一方社油脂工業社製)
P−2:フッ素系界面活性剤
P−3:アルキド樹脂型剥離剤
P−4:シリコーン型離型剤
M−1:アクリルウレタン樹脂の90質量部と、表1中に示す粒径のシリカ粒子の10質量部と、アクリルビーズ(粒径5μm)の1質量部とを、固形分30質量%となるようにメチルエチルケトンに分散させたマット層形成剤。
M−2:アクリルウレタン樹脂の90質量部と、表1中に示す粒径のシリカ粒子の10質量部とを、固形分30質量%となるようにメチルエチルケトンに分散させたマット層形成剤。
M−3:アクリルウレタン樹脂の90質量部と、アクリルビーズ(粒径5μm)の1質量部とを、固形分30質量%となるようにメチルエチルケトンに分散させたマット層形成剤。
上記各例で製造された樹脂被覆金属積層体の、表面保護層上(又は、比較例1〜3においてはマット層上)にMEKを3μm滴下し、10秒間静置した後、DropMaster DM−700(商品名、協和界面科学社製)を用いて接触角を測定した。測定結果を、「MEK接触角」として表1に併記する。なお、接触角が5°を下回る例においては、MEKが濡れ広がってしまい、接触角の測定が困難であったため、結果を「<5°」とした。
両面テープ(100mm×50mm)を準備し、両面テープの片面をアクリル板に対抗させ、荷重2kgのローラーを用いて圧着した。その後、両面テープの他面(アクリル板に接着されていない面)に、上記各例で製造された樹脂被覆金属積層体を切り出したサンプル(110mm×55mm)の、マット層もしくは表面後保護剤側の面を対向させ、荷重2kgのローラーを用いて圧着した。次いで、感圧接着テープ片(80mm×5mm)を用意し、前記樹脂被覆金属積層体サンプル上に貼り合わせ、荷重2kgのローラーを用いて圧着した。さらに、アルミニウム箔(210mm×10mm)の裏面をアルコールで洗浄した後、感圧接着テープ片上に貼り合わせ、荷重2kgのローラーを用いて圧着した。得られた試験片を、23±1℃、湿度50±5%条件下に1時間静置した後、「オートグラフAGS−X」(商品名、島津製作所社製)を用い、500Nのロードセルで180°剥離試験(300mm/分)を行った。結果を「剥離力」として表1に示す。
A:5N/5mm以上
B:5N/5mm未満
JIS K−5701に準拠して耐摩耗性試験を行った。
具体的には、学振型摩擦堅牢度試験機「AB−301」(商品名、テスター産業社製)に1500番のサンドペーパーを取り付け、荷重500gの1サイクル条件下で、上記各例で製造された樹脂被覆金属積層体の、表面保護層面における、耐摩耗性試験を行った。以下の基準で評価を行った結果を、「耐摩耗性」として表1に示す。
A:キズが認められない。
B:若干キズがあるが許容範囲内である。
C:著しくキズ付いている。
上記各例で製造された樹脂被覆金属積層体の、表面保護層面の60°入射角における光沢度(GU値)を、マイクロ−グロス60°携帯型光沢計(BYKガードナー社製)を用いて測定し、以下の基準で評価を行った。結果を「GU値」として表1に示す。
A:2±1以内
B:2±2以内
C:4以上
Claims (12)
- 少なくとも、マット層、基材層、バリア層、及びシーラント層をこの順に備えてなる樹脂被覆金属積層体であって、
前記マット層の外側に、厚さ0.1μm以下の表面保護層が積層されてなり、
前記表面保護層は、前記マット層により形成された表面凹凸を維持するように形成されており、
前記表面保護層の、メチルエチルケトンに対する接触角が10〜50°であることを特徴とする樹脂被覆金属積層体。 - 少なくとも、マット層、基材層、バリア層、及びシーラント層をこの順に備えてなる樹脂被覆金属積層体であって、
前記マット層の外側に、厚さ0.1μm以下の表面保護層が積層されてなり、
前記樹脂被覆金属積層体の、表面保護層面の60°入射角における光沢値が、1.0〜3.0であることを特徴とする樹脂被覆金属積層体。 - 少なくとも、マット層、基材層、バリア層、及びシーラント層をこの順に備えてなる樹脂被覆金属積層体であって、
前記マット層の外側に、厚さ0.1μm以下の表面保護層が積層されてなり、
前記表面保護層は、前記マット層により形成された表面凹凸を維持するように形成されており、
前記基材層が、厚さ3〜11μmのポリエチレンテレフタレート又はポリアミドからなる層であることを特徴とする樹脂被覆金属積層体。 - 前記表面保護層は、前記マット層により形成された表面凹凸を維持するように形成されている、請求項2に記載の樹脂被覆金属積層体。
- 前記マット層が、粒径2〜5μmのシリカ粒子、アクリルウレタン樹脂、及びアクリルビーズを含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂被覆金属積層体。
- 前記表面保護層が、非シリコーン剥離剤を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂被覆金属積層体。
- 前記バリア層が、厚さ40μm以下の金属箔である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の樹脂被覆金属積層体。
- 前記シーラント層が、厚さ40μm以下のポリプロピレン、ポリエチレン、又はプロピレンとエチレンとの共重合体からなる層である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の樹脂被覆金属積層体。
- 前記表面保護層及び前記マット層が設けられた前記基材層と、前記バリア層とが、ウレタン系接着剤を介して接着されてなる、請求項1〜8のいずれか一項に記載の樹脂被覆金属積層体。
- 電池外装用である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の樹脂被覆金属積層体。
- 請求項10に記載の樹脂被覆金属積層体を備える電池外装体であって、
電池を収納する内部空間を有し、前記樹脂被覆金属積層体のシーラント層の側が当該内部空間の側となることを特徴とする電池外装体。 - 請求項11に記載の電池外装体を備えることを特徴とする電池。
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