JP5368847B2 - 赤外線放射素子 - Google Patents

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Description

本発明は、主として赤外線の高速変調が要求される用途に用いられる赤外線放射素子に関するものである。
従来から、赤外線放射源から放射した赤外線を検出対象に照射し、赤外線の吸収量や反射量に基づいて、検出対象を検出する装置が提供されている。
たとえば、赤外線ガス分析計では、赤外線放射源から放射した赤外線を検出対象であるガス(メタン、一酸化炭素、二酸化炭素など)に照射し、赤外線の受光量に応じた受光信号を出力する赤外線受光素子を用いてガスによる赤外線の吸収波長や吸光量を検出することにより、ガスの種類・濃度などを検出している。
赤外線受光素子は、赤外線放射源から放射される赤外線のうち検出対象のガスが吸収する波長の赤外線のみを選択的に通過させるフィルタを介して赤外線を受光する。したがって、フィルタを選択的に通過する波長によりガスの種類が特定され、赤外線の受光量(赤外線受光素子の出力信号レベル)に応じてガスの濃度が計測される。
この種の装置では、検出対象であるガスでの吸光量を検出するために、1回の分析において、ガスに対して赤外線を断続的に複数回照射することが必要である。したがって、検出対象を検出する時間を短縮するには、高速変調が可能な赤外線放射源を用いて断続させる時間間隔を短くすることが要求される。また、赤外線を複数回照射するから、赤外線の放射に要するエネルギー(電力)を低減するために、投入エネルギーに対する赤外線の放射量を高める必要がある。さらには、検出精度を高めるために、赤外線放射源からの毎回の赤外線の放射量を一定量にすることも必要である。
代表的な赤外線放射源には、タングステンや白金などの材料でコイル状に形成したフィラメント、あるいはタングステンや白金からなるコイル状の芯材の表面をアルミナなどのセラミックで被覆することにより赤外線の放射効率を高めたフィラメントを備え、フィラメントを透光性の気密容器に収納した構成の赤外線放射源がある。
ただし、この種の赤外線放射源は、フィラメントが外気に露出した状態では使用することができないから、気密容器による大型化を避けることができず、装置の小型化が困難になる。また、フィラメントや気密容器を含む熱容量が大きくなるから、電源投入から赤外線が所要強度まで上昇するのに要する立ち上がり時間、および電源遮断から赤外線が規定強度まで減少するのに要する立ち下がり時間が長く、しかも立ち上がりや立ち下がりに急峻な特性が得られない。
したがって、この種の赤外線放射源では、赤外線を断続させる周波数を0.1〜10Hz程度にしか設定できない。また、赤外線の放射強度の立ち上がりや立ち下がりが急峻ではないから、波形のなまりによる検出誤差が生じやすい。
一方、小型化が可能な赤外線放射源としては、図10に模式的に示すように、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)技術を用いて形成する赤外線放射素子が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。図示する赤外線放射素子は、シリコン基板にエッチングを施して形成した矩形枠状の支持基板21を有し、支持基板21の一表面に窒化シリコンの熱絶縁層22を介してドープしたポリシリコン膜の赤外線放射層23が形成され、さらに、赤外線放射層23を覆う窒化シリコンの絶縁層24に金属層である白熱フィラメント25を埋設した構造を有している。支持基板21において赤外線放射層23の背面側に相当する部位には開口26が形成される。
この赤外線放射素子は、白熱フィラメント25に接続された電極27を有し、電極27間に通電することにより白熱フィラメント25を発熱させ、白熱フィラメント25により赤外線放射層23を加熱する傍熱型の構成を有している。また、白熱フィラメント25は、赤外線放射層23の表面を覆っているが、幅を極めて狭くし赤外線放射層23からの赤外線の放射率が著しく減少するのを防止している。
この赤外線放射素子は、赤外線放射層23の背面側において支持基板21に開口26を形成し、赤外線の放射に寄与する白熱フィラメント25および赤外線放射層23の周囲を断熱性の高い空気により囲んでいるから、赤外線の放射に寄与する部分と周囲との熱容量差が大きく、白熱フィラメント25に通電する電流の断続に対して比較的高速に応答することが可能になっている。すなわち、上述した気密容器を備える赤外線放射源では、0.1〜10Hz程度の応答であったのに対して、図10の構成を採用した場合に、200Hzまでの応答が可能になることが特許文献1に記載されている。
特開平9−184757号公報
ところで、上述したように、赤外線放射源には、高速な応答性と、投入エネルギーに対する放射効率と、赤外線放射量の安定化とが要求される。特許文献1に記載の構成を採用すれば、上述したように高速な応答性は達成される。
しかしながら、白熱フィラメント25と赤外線放射層23との間に絶縁層24が介在する傍熱型の構成であるから、白熱フィラメント25から発生する熱エネルギーの一部が窒化シリコンからなる絶縁層24により吸収されて赤外線放射層23の加熱に寄与せず、結果的に、投入エネルギーに対する赤外線の放射量を十分に高めることができないという問題を有している。
本発明は上記事由に鑑みて為されたものであり、その目的は、小型かつ高速応答が可能である上に、投入エネルギーに対する赤外線の放射効率が高く省エネルギー化が可能である赤外線放射素子を提供することにある。
本発明は、赤外線放射素子であって、基板の一表面に形成され通電に伴う発熱により赤外線を放射する発熱層と、一面に発熱層が積層されることにより発熱層を支持するように基板の一表面に形成された熱絶縁層とを備え、熱絶縁層は、熱伝導率が基板よりも小さく、発熱層の通電に伴う発熱層からの伝熱による一部の温度上昇と、発熱層から入射する赤外線の反射との少なくとも一方により、発熱層に向かう向きに赤外線を放射し、発熱層は、熱絶縁層から放射された赤外線を通過させる機能を有し、通電による発熱時の発熱層のシート抵抗は30〜1000Ωsqであることを特徴とする。
熱絶縁層の他面が気体に接触している構成を採用してもよい。
また、熱絶縁層の厚み寸法は、目的波長の赤外線に対する光路長が当該赤外線の半波長の自然数倍となる寸法に設定されるのが望ましい。
あるいはまた、熱絶縁層の他面が基板に接触しており、熱絶縁層と基板との境界面が熱絶縁層から基板に向かう目的波長の赤外線を反射させる反射面であって、熱絶縁層の厚み寸法が、目的波長の赤外線に対する光路長が当該赤外線の4分の1波長の奇数倍となる寸法に設定されている構成を採用することもできる。
熱絶縁層は、加熱時に空洞放射により赤外線を放射するマクロポアがバルク半導体に形成され、かつマクロポア内にナノポアが形成された構造とすることができる。
また、熱絶縁層は、半導体の酸化物を含む電気絶縁膜により形成することができる。
一方、発熱層は、負の抵抗温度係数を持つ材料により形成するのが望ましい。
発熱層は、TaN、TiNから選択するのが望ましい。
本発明の構成によれば、熱絶縁層により発熱層を支持しているから、発熱層の変形による断線が生じにくく、発熱層の熱容量を低減するために薄肉化することが可能であって、結果的に高速応答が可能になる。すなわち、発熱層への通電を開始してから赤外線の放出までの立ち上がり時間が短いから、赤外線の放射を繰り返すときに、毎回の赤外線の放射量が略一定になり、赤外線ガス分析計のような検査装置に適用すると高精度化が可能になる。また、熱絶縁層において、発熱層からの伝熱による一部の温度上昇と、発熱層から入射する赤外線の反射との少なくとも一方により、発熱層に向かう向きに赤外線を放射し、しかも発熱層において熱絶縁層から放射された赤外線を通過させるから、発熱層から熱絶縁層に向かって放射されるエネルギの一部が赤外線放射のエネルギとして利用されることになり、投入電力に対する赤外線の放射効率を高めることができる。言い換えると、所望量の赤外線を放射するのに必要な投入電力の低減につながる。そして、通電による発熱時の発熱層のシート抵抗が30〜1000Ωsqであるから、赤外線の放射率を所定の値以上にするために必要な駆動電圧が低減される。
熱絶縁層の一面に発熱層を配置し他面を気体に接触させている構成では、気体の断熱性により熱絶縁層からの放熱が抑制されるから、発熱層から熱絶縁層に伝達された熱による熱絶縁層の温度上昇が均一化され、赤外線の放射量を増加させることになる。
目的波長の赤外線に対して半波長の自然数倍の光路長を持つように熱絶縁層の厚み寸法を設定すれば、目的波長の赤外線に対して熱絶縁層において共鳴の条件が成立し、目的波長の赤外線について相対的な放射強度を高めることができる。この形態では、発熱による熱変形を抑制するため、熱絶縁層を補強する補強部を設けることが望ましい。
また、発熱層と基板との間に熱絶縁層を介在させている構成では、絶縁層と基板との境界面が反射面になるから、目的波長の赤外線に対して4分の1波長の奇数倍の光路長を持つように熱絶縁層の厚み寸法を設定することにより、目的波長の赤外線に対して熱絶縁層において共鳴の条件が成立し、目的波長の赤外線について相対的な放射強度を高めることができる。
熱絶縁層が、空洞放射により赤外線を放射するマクロポアを有し、かつマクロポア内にナノポアが形成された構造では、マクロポアによる空洞放射を利用することで、赤外線の放射効率を高めることができる。しかも、マクロポア内にナノポアが形成されているから、マクロポアによる空洞放射を阻害せずにマクロポアの形成に伴う熱絶縁層の強度低下を補うことができる。さらに、マクロポア内にナノポアが存在するポーラス半導体を熱絶縁層に用いることにより、熱絶縁層に高い断熱性能が得られる。
半導体の酸化物を含む電気絶縁膜により熱絶縁層を形成した構成では、半導体を熱酸化などの処理により酸化させるか、酸化物を含む材料のCVDを行うかにより熱絶縁層を形成することができるから、製造プロセスが比較的簡単であり、半導体を多孔質化する場合よりも量産性を高めることができる。
負の抵抗温度係数を持つ材料を用いて発熱層を形成している場合には、駆動電圧が同じであっても温度上昇に伴ってシート抵抗が低下して発熱層1を流れる電流が増加するから、温度上昇に伴って投入電力が増加し、到達最高温度を高くすることができる。また、発熱層に印加する電圧を得るために電源電圧を昇圧回路により昇圧している場合に、到達最高温度を高めながらも昇圧回路の昇圧比の増加を抑制することができることになり、昇圧回路での電力損失を抑制できる。
発熱層の材料としてTaN、TiNのいずれかを用いる構成では、発熱層の耐酸化性が高いから、発熱層を空気中に露出させて使用することが可能になる。つまり、真空中あるいは不活性ガス中で使用する必要がなく、パッケージの構造が簡単になる上に、密封のための窓材が不要であって窓材による赤外線の減衰がなく、放射した赤外線の利用効率を高めることができる。さらに、これらの材料は窒素含有率を調整することによりシート抵抗を調整することができるから、所望のシート抵抗を得るのに必要な厚み寸法を調節して熱容量の小さい発熱層を形成することができ、結果的に、高速応答が可能になる。
実施形態1を示す断面図である。 同上の製造過程を示す図である。 同上用いる発熱層の特性を示す図である。 同上に用いる熱絶縁層の温度特性を示す図である。 同上に用いる発熱層の放射率を示す図である。 同上に用いる発熱層の平面図である。 同上に用いる熱絶縁層の構造を示す断面図である。 実施形態2に用いる発熱層の放射率を示す図である。 (a)(b)は実施形態3を示す断面図である。 従来構成を示す断面図である。
(実施形態1)
本実施形態の赤外線放射素子は、図1に示すように、通電により発熱して赤外線を放射する発熱層1および発熱層1の背面を支持する熱絶縁層2を基板3の一表面に備えた構成を有する。ここに、基板3に対する「一表面」の用語は、面自身ではなく、面に接する領域を意味するものとする。したがって、発熱層1および熱絶縁層2は基板3の一表面に形成されていることになる。
基板3は、半導体基板(たとえば、単結晶のシリコン基板)であって直方体状に形成されている。熱絶縁層2は、基板3よりも熱伝導率が十分に小さくなるように形成されている。また、熱絶縁層2は、基板3の上記一表面において深さ方向に形成してあり、熱絶縁層2の一面(図1の上面)を基板3の一面(図1の上面)と面一に形成してある。
熱絶縁層2は、具体的には、基板3の上記一面の周部を残した領域に陽極酸化を施すことにより、基板3を多孔質化して形成する。陽極酸化の条件(電流密度、処理時間など)は、基板3の導電形および導電率に応じて適宜設定する。
陽極酸化は、フッ化水素水溶液中で行い、多孔度が略70%の多孔質半導体層(たとえば、ポーラスシリコン層)として形成してある。また、基板3の導電形は、p形とn形とのどちらでもよいが、p形のシリコン基板はn形のシリコン基板に比較して陽極酸化による多孔質化を行った際に多孔度が大きくなりやすいという傾向があるから、基板3にはp形のシリコン基板を用いるのが望ましい。
さらに、熱絶縁層2における熱伝導率を低減するために熱絶縁層2の一部あるいは全部を酸化あるいは窒化を行ってもよい。酸化あるいは窒化を行えば電気絶縁性も高くなる。陽極酸化により多孔質化した熱絶縁層2は、熱容量および熱伝導率が小さい上に耐熱性が高く、しかも表面が平滑であるという特徴を有している。
一方、陽極酸化により多孔質化する代わりに熱酸化により半導体酸化膜を形成し、この半導体酸化膜を熱絶縁層2に用いてもよい。熱絶縁層2として、半導体酸化膜を用いる場合には、熱酸化により熱絶縁層2を形成したり、酸化物を含む材料でCVDにより熱絶縁層2を形成すれば、多孔質化に比較して製造プロセスが簡単になり、量産性を高めることが可能になる。CVDにより熱絶縁層2を形成する場合には、アルミナのような熱絶縁性の高い酸化物を用いたり、この種の酸化物を含む材料を用いることが可能である。さらには、この種の材料の多孔体を熱絶縁層2として形成することも可能である。
発熱層1は、基板3の一表面において基板3との間に熱絶縁層2を介して形成されている。発熱層1には、良導電性の金属材料(たとえば、アルミニウム)により形成した一対の電極4が設けられる。図1においては、電極4を左右に離間して設けてある。発熱層1の形状は適宜に設定することができる。たとえば、発熱層1を1枚の矩形状に形成し、向かい合う二辺にそれぞれ電極4を形成することができる。あるいはまた、図1の左右方向に長い複数枚の短冊を有し各短冊の長手方向の一端を各電極4にそれぞれ接続した形状の発熱層1を形成してもよい。いずれの場合も両電極4の間に電圧を印加することにより、発熱層1に通電して発熱させ、赤外線を放射させることができる。
発熱層1の材料は、TaNとTiNとから選択するのが望ましい。これらの材料は耐熱性および耐酸化成に優れている。したがって、発熱層1を空気雰囲気で使用することが可能であって、赤外線放射素子をパッケージに収納せずにベアチップとして基板に実装することが可能になる。また、パッケージに収納する場合でも赤外線を透過させるためにパッケージに形成した窓孔を封止する必要がなく、窓孔に装着する窓部材による赤外線の減衰がないから、赤外線の放射効率を高めることができる。
また、これらの材料は、発熱層1として形成するのに適した厚み寸法(数十nm)において、シート抵抗が所望値(後述する)になるという物性を有している。しかも、シート抵抗は成膜時の窒素ガスの分圧によって制御することが可能である。ただし、発熱層1を形成する材料は、TaN,TiN以外も使用可能であり、他の窒化金属や炭化金属を用いてもよい。
上述のように構成した赤外線放射素子において、両電極4に所定の電圧を印加して発熱層1に通電すると、発熱層1が発熱することにより赤外線が放射される。また、発熱層1への通電を停止すると発熱層1の温度が低下して赤外線の放射が停止する。発熱層1への印加電圧を断続させる場合だけではなく、正弦波状に変化する電圧を印加した場合も電圧の増加期間に温度を上昇させ、電圧の減少期間に温度を下降させることが可能である。つまり、電極4への印加電圧に応じて赤外線の強度を変調することができる。
ところで、上述の構成の赤外線放射素子の電極4に正弦波状の電圧を印加するものとして、熱絶縁層2の熱伝導率をαp〔W/mK〕、熱絶縁層2の体積熱容量(比熱容量と密度との積)をCp〔J/mK〕、発熱層1が応答可能な周波数(印加電圧の周波数の2倍)をf〔Hz〕とすれば、熱絶縁層2の熱拡散長μは、次式で表される。
μ=(2αp/ωCp)1/2 …(1)
ただし、ω=2πfである。
熱絶縁層2は、発熱層1から交流的に変化する熱が与えられたときに、温度振幅が減衰して基板1に放熱されないように厚み寸法Lpを設定する必要がある。すなわち、熱絶縁層2の厚み寸法Lpは少なくとも熱拡散長μよりも大きい値に設定する(Lp>μ)ことが望ましいが、大きくしすぎると熱絶縁層2への蓄熱により温度振幅比が減少するため、最適化が必要である。
いま、熱絶縁層2をポーラスシリコンにより形成するものとし、発熱層1の応答可能な周波数f、熱絶縁層2の体積熱容量Cp、熱絶縁層2の熱伝導率αpを、それぞれf=10〔kHz〕、αp=1.1〔W/mK〕、Cp=1.05×10 〔J/ K〕として、(1)式に代入すると、Lp=5.8×10−6〔m〕になる。したがって、熱絶縁層2の厚み寸法Lpを10〔μm〕に設定すれば、10〔kHz〕以上の正弦波状の電圧に応答可能になる。このように、(1)式を用いることで、発熱層1の昇温を阻害しないように熱絶縁層2の厚み寸法Lpを設定することができる。
発熱層1から放射される赤外線のピーク波長λ〔μm〕は、ウィーンの変位則を満足しており、発熱層1の絶対温度T〔K〕とは、次式の関係がある。
λ=2898/T …(2)
したがって、発熱層1の温度を変化させることにより、発熱層1から放射される赤外線のピーク波長を変化させることができる。発熱層1の温度を調節するには、発熱層1に印加する電圧の振幅や波形などを調節し、単位時間当たりに発生するジュール熱を変化させる。
たとえば、両電極4の間に100V程度の正弦波状の電圧を印加することによりピーク波長が3〜4〔μm〕の赤外線を放射させるように設計することが可能であり、電圧を調節すれば、ピーク波長が4〔μm〕以上になる赤外線を放射させることも可能である。
ところで、発熱層1に電圧を印加して発熱させると、熱伝導により熱絶縁層2の温度が上昇する。つまり、発熱層1の温度上昇時には発熱層1の背面に放射された赤外線により熱絶縁層2が加熱されることになる。発熱層1の背面に放射された赤外線は赤外線放射素子から放射する赤外線としては利用されていないから、投入電力に対する赤外線の放射効率が低下する要因になる。
そこで、本実施形態では、発熱層1に赤外線を透過させる機能を持たせている。具体的には上述した材料を選択するとともに、発熱層1の厚み寸法を目的とする赤外線の波長に比較して十分に小さく設定する(2桁程度小さい)ことにより赤外線透過性を持たせている。
本実施形態の構成では、電極4への電圧印加により発熱層1に通電されると、図1にE1として示しているように、発熱層1から前方(図1の上方)に赤外線が放射されるともに、発熱層1から熱絶縁層2への伝熱により熱絶縁層2が加熱され、図1にE2として示しているように、熱絶縁層2の一部の温度上昇により熱絶縁層2からも赤外線が放射される。熱絶縁層2は、発熱層1を支持しているから、発熱層1から直接伝熱されることになり、発熱層1を熱源として直熱型の赤外線放射源を構成していると言える。
ここで、発熱層1は赤外線透過性を有しているから、熱絶縁層2から発熱層1に向かう向きに放射された赤外線は発熱層1を透過して発熱層1の前方に放射される。つまり、赤外線放射素子からは、発熱層1から前方に放射される赤外線E1と、熱絶縁層2から発熱層1を通過して発熱層1の前方に放射される赤外線E2とが併せて放射され、結果的に投入電力に対する赤外線の放射効率を高めることができる。
以下では、図1に示す構造の赤外線放射素子を製造するプロセスを簡単に説明する。まず、図2(a)に示すように、比抵抗が80〜120Ωcm程度のp型のシリコン基板11に酸化処理(パイロ酸化)を行うことにより、シリコン酸化膜からなる矩形状の開口領域を有した陽極酸化マスク12を形成する。次に、図2(b)のように、シリコン基板11の裏面のシリコン酸化膜を除去した後、バックコンタクト用のアルミ電極13をスパッタリングにより形成する。
さらに、図2(c)に示すように、陽極酸化マスク12の開口領域に陽極酸化処理を施しポーラスシリコンからなる熱絶縁層2を形成する。陽極酸化処理では、フッ化水素が30%となるようにフッ化水素水溶液とエタノールとを混合した電解液を用い、シリコン基板11において陽極酸化を行う表面のみを電解液に接触させる。
その後、シリコン基板11の厚み方向の各面のうち陽極酸化マスク12を形成しているほうの一面に図示しない白金電極を配置するとともに、厚み方向の他面に通電可能な治具にセットして、所定の電流密度の電流を所定時間だけ流して陽極酸化を行う。
電流密度や電流を流す時間は、熱絶縁層2としての目的の多孔度や厚み寸法に応じて調節される。たとえば、多孔度が70%程度の熱絶縁層を形成するには、電流密度を100〔mA/cm〕に設定する。
熱絶縁層2を形成した後には、図2(d)のように、陽極酸化マスク12に囲まれた開口領域に発熱層1を成膜する。発熱層1の中央部は開口領域内に形成され、発熱層1の端部は開口領域の周部において陽極酸化マスク12の上に形成される。発熱層1をTaNで形成する場合には、反応性スパッタ法を採用し、Taターゲットを用いるとともに、ArガスとNガスの混合雰囲気でTaNを成膜する。
反応性スパッタ法により発熱層1を成膜すれば、投入パワーやNガスの分圧によりTaNの組成を制御することが可能であるから、発熱層1の比抵抗を制御することが可能になる。すなわち、発熱層1のシート抵抗値を成膜条件により所望値に調整することができる。発熱層1の厚み寸法は、たとえば40〔nm〕とし、シート抵抗は、たとえば駆動時の最高到達温度で300〔Ωsq〕とする。
発熱層1を形成した後には、図2(e)に示すように、発熱層1の両端部にそれぞれ電極4を形成する。電極4の形成には、たとえば、メタルマスクを利用した蒸着法を採用することができる。
ところで、図3に示すように、着目する波長の赤外線に対する発熱層1の反射率(曲線イ)と透過率(曲線ロ)と吸収率(曲線ハ)とは、発熱層1のシート抵抗に依存して変化することが理論的に示されている。一方、キルヒホフの法則によれば、熱平衡状態であるときに、吸収率と放射率とは等しいことが知られている。
また、本実施形態の構成では、図4に曲線イで示すように、熱絶縁層2には厚み方向(発熱層1からの深さ方向)において温度分布があり、熱絶縁層2の背面側に基板3が設けられているから、熱絶縁層2における発熱層1に近い部位(図4の左端部)と基板3に近い部位(図4の右端部)とでは温度差が大きくなる。
すなわち、発熱層1の発熱に伴って熱絶縁層2の温度が上昇し、熱絶縁層2からも赤外線が放射されることが予想される。そこで、着目する波長の赤外線に対する発熱層1の透過率をTh、放射率をEh、熱絶縁層2の放射率をEiとすると、発熱層1の見かけの放射率Eは、次式で表すことができる。
E=Eh+Th・Ei …(3)
ここに、熱絶縁層2の放射率Eiは、発熱層1と同温度としたときの放射パワーに対する換算値である。Ei=0.5として、発熱層1のシート抵抗に対する発熱層1の見かけの放射率Eを計算すると図5のようになる。図3と図5とを比較するとわかるように、放射率の最大値は、発熱層1のみを単独で用いる場合よりも、本実施形態のように発熱層1と熱絶縁層2とを組み合わせて赤外線の放射に用いる場合のほうが大幅に向上する。
図示例では、発熱層1を単独で用いたときの放射率の最大値は約0.5であり、このときのシート抵抗は187Ωsqになっている。また、赤外線の放射に発熱層1と熱絶縁層2とを併用したときの放射率の最大値は0.714であり、このときのシート抵抗は471Ωsqになっている。
ところで、発熱層1に印加する駆動電圧で赤外線の放射強度を制御する場合に、発熱層1に投入する電力が同じであれば、シート抵抗が小さい発熱層1ほど駆動電圧を低減することができる。駆動電圧が低ければ、昇圧による損失を低減できるとともに、赤外線放射素子内の電界強度が小さくなって破損の可能性を低減できるから、シート抵抗は小さいほうが望ましい。ここに、放射率が0.7を超えるシート抵抗の範囲は約300〜800Ωsqであるから、シート抵抗は、この範囲の下限である300Ωsqとしている。この場合、見かけの放射率(発熱層1と熱絶縁層2とを併用したときの放射率)は、発熱層1を単独で用いたときと比較して40%向上する。
赤外線放射素子として使用可能であるためには、放射率Eが0.25以上となる範囲において、通電による発熱で発熱層1が断線しない(シート抵抗が大きくなりすぎない)という条件を設定することが考えられ、この条件を満足するには、赤外線放射時の発熱層1のシート抵抗を30〜1000Ωsqとすることが望ましい。
さらに、発熱層1は、温度上昇に伴ってシート抵抗が低下する負の抵抗温度係数を持っている。したがって、駆動電圧が同じであっても温度上昇に伴ってシート抵抗が低下して発熱層1を流れる電流が増加する。すなわち、温度上昇に伴って投入電力が増加し、到達最高温度を高くすることができる。
ちなみに、発熱層1にTaNを用いて抵抗温度係数を−0.001〔℃−1〕に設定し、駆動時の最高到達温度を500〔℃〕として、その温度でのシート抵抗を300〔Ωsq〕とすれば、室温でのシート抵抗は571〔Ωsq〕になる。
上述のように発熱層1が負の抵抗温度係数を持たせることで、発熱層1に印加する電圧を得るために電源電圧を昇圧回路により昇圧している場合に、到達最高温度を高めながらも昇圧回路の昇圧比の増加を抑制することができることになり、昇圧回路での電力損失を抑制できる。
また、室温でのシート抵抗を変更せずに、図6に示すように、発熱層1の形状を変えることによって投入電力に対する駆動電圧を低減することが可能になる。
いま、図6(a)のように、平面形状が正方形状である発熱層1を基本形状とする。この基本形状に対して、図6(b)のように、両電極4を結ぶ方向における発熱層1の幅寸法を基本形状よりも小さくすれば発熱層1の抵抗値を低減することができる。ここに、シート抵抗は変更しないものとする。この構成では、発熱状態と相関のある発熱層1の単位面積当たりの投入電力を同じにしながらも、印加電圧を低減することができる。
また、図6(c)のように、3個の電極4を設けて中央の電極4と両端の電極4との間に電圧を印加するようにしてもよい。この構成では、図6(b)に示した発熱層1を並列に接続したことになり、図6(b)の構成と同じシート抵抗で図6(b)の構成よりもさらに抵抗値を低減させることができる。つまり、印加電圧を低減し、昇圧回路の昇圧比の増加を抑制して電力損失を抑制することができる。しかも、図6(c)の形状では、赤外線を放射する領域の形状が正方形状であって、発光パターンが正方形状になるから光学的な取り扱いが容易である。
ところで、本実施形態では、上述したように、基板3を陽極酸化により多孔質化したポーラス半導体を熱絶縁層2として用い、発熱層1の発熱により赤外線を発生させるのに加えて、発熱層1で熱絶縁層2を加熱することにより赤外線を発生させることで、赤外線の放射率を高めているが、熱絶縁層2として以下の構造を採用することにより、赤外線の放射率をさらに高めることが可能になる。
すなわち、熱絶縁層2は、図7に示すように、バルク状シリコンからなる数μmのマクロポア(図示していないが、バルク状シリコンの表面が微視的に波打っている)内に、数nmのナノポアが形成された構造を有する。この構成は、陽極酸化の際に、半導体基板11の導電型、比抵抗、陽極酸化の条件(電解液の組成、電流密度、処理時間)を調節することにより形成する。たとえば、半導体基板11として、100Ωcm程度の高抵抗のp型シリコン基板を用い、陽極酸化の条件としてはフッ酸濃度が25%程度の高濃度のフッ酸溶液を用い、100mA/cm程度の比較的大きな電流密度で処理すればよい。
熱絶縁層2として図7に示す構造を採用すると、発熱層1からの熱で熱絶縁層2が加熱されると、マクロポアによる空洞放射が生じて赤外線の放射率を一層高くすることができる。しかも、マクロポア内にナノポアが形成されていることにより、熱絶縁層2の表面にはナノサイズの微細な凹凸が生じるだけであって、熱絶縁層2の表面の平滑性を維持することができる。つまり、発熱層1を形成するにあたって、熱絶縁層2の表面状態が発熱層1にほとんど影響しないから、発熱層1を数十nm程度の厚みに形成することが可能である。
熱絶縁層2を赤外線の放射に寄与させるには、熱絶縁層2の厚み寸法を0.5μm以上に設定する必要がある。この厚み寸法は、(1)式を用いて、発熱層1に印加する電圧の周波数との関係により設定される。
本実施形態の構成を採用することにより、発熱層1の熱容量を小さくすることができる上に、熱絶縁層2の熱絶縁性を高くしていることにより、発熱層1への電圧印加に対する立上り応答がよくなる。しかも、発熱層1の発熱により放射される赤外線だけではなく、発熱層1の背方への熱で熱絶縁層2を加熱して熱絶縁層2から放射される赤外線も利用することで赤外線の放射率を高めているから、単パルス通電でも赤外線の放射強度を高くすることが可能になる。さらに、熱絶縁層2に着目波長の赤外線の空洞放射を行うマクロポアを設けた構成では、より高い強度の赤外線を放射することが可能である。
(実施形態2)
本実施形態は、発熱層1の背方に放射される赤外線の利用効率をさらに高めるために、熱絶縁層2と基板3との境界面において赤外線を反射させ、反射した赤外線を発熱層1の前方に放射する構成を採用している。熱絶縁層2と基板3との境界面で赤外線を反射させるために、熱絶縁層2の材料として、赤外線に対して透明であり、かつ屈折率が基板3よりも小さい材料を選択している。
いま、発熱層1の透過率をTh、発熱層1の放射率をEh、熱絶縁層2と基板3との境界面での反射率をRsとすると、発熱層1の見かけの放射率Eは、次式で表される。
E=Eh+Th・Eh・Rs …(3)
いま、反射率Rs=0.8として、発熱層1のシート抵抗に対する発熱層1の見かけの放射率Eを計算すると図8のようになる。図3と図8とを比較するとわかるように、放射率の最大値は、発熱層1のみを単独で用いる場合よりも、発熱層1と熱絶縁層2とを組み合わせて用いるとともに熱絶縁層2と基板3との境界面での反射を利用する場合のほうが大幅に増加する。
図8に示す例では、赤外線の放射に発熱層1と熱絶縁層2とを併用し、かつ熱絶縁層2と基板3との境界面での反射を利用したときの放射率の最大値は0.62であり、このときのシート抵抗は270Ωsqになっている。つまり、発熱層1を単独で用いたとき(放射率の最大値が0.5)と比較して放射率が21%向上することになる。
実施形態1と同様に、放射率Eが0.25以上となる範囲において、通電による発熱で発熱層1が断線しない(シート抵抗が大きくなりすぎない)という条件を設定すると、赤外線放射時の発熱層1のシート抵抗を30〜1000Ωsqとすることが望ましいことになる。
本実施形態の構成では、熱絶縁層2としてマクロポアを形成せずに多孔質化したポーラス半導体を用いている。すなわち、熱絶縁層2による空洞放射の効果はなく、半導体として赤外線の吸収率が小さいシリコンを用いると、熱絶縁層2の赤外線に対する透過率は、熱絶縁層2を形成しているポーラス半導体の空孔部(ナノサイズの微粒子間に形成される隙間=ナノポア)に存在する気体分子の赤外線吸収特性が支配することになる。したがって、熱絶縁層2の中に含まれる気体を赤外線吸収がほとんど生じない空気や窒素とすれば、熱絶縁層2は赤外線に対して実質的に透明になる。
ところで、熱絶縁層2と基板3との境界面で赤外線が反射されることに鑑みて、熱絶縁層2により赤外線を共鳴させると、熱絶縁層2から放射される赤外線の強度を高めることができると考えられる。熱絶縁層2の厚み寸法をLp〔m〕、熱絶縁層2の屈折率をnとすると、光路長はn・Lpであるから、目的とする赤外線の真空中での波長をλ〔m〕とすれば、共鳴条件は次式で表される。
n・Lp=(2m−1)λ/4 …(4)
ここに、mは正整数である。たとえば、熱絶縁層2の多孔度を70%とすると、目的とする赤外線の波長が4μmであるときには、屈折率は1.35になるから、m=5に設定すれば、熱絶縁層2の厚み寸法Lpは6.7μmになる。この厚み寸法Lpは、実施形態1に示した駆動条件と熱絶縁層2の熱物性とにおいて、必要な熱絶縁層2の厚み寸法Lpである5.8μm以上を満足する。
なお、実施形態1においても説明したように、陽極酸化によって形成されるミクロ構造は、半導体基板11の導電型、比抵抗、陽極酸化の条件(電解液の組成、電流密度、時間)により調節することができる。たとえば、半導体基板11として、低抵抗のp型シリコン基板を用い、電解液の組成としてフッ酸濃度を高くすることで、ナノポアのみを有する熱絶縁層2を形成することができる。他の構成および動作は実施形態1と同様である。
(実施形態3)
上述した各実施形態では、熱絶縁層2を基板3の一表面に形成した例を示したが、本実施形態では、熱絶縁層2の背面に気体が接触する構成を採用している。具体的には、図9(a)のように熱絶縁層2と基板3との間に気体層5を形成するか、図9(b)のように基板3において熱絶縁層2の背面側となる部位に表裏に貫通した開口6を形成する。
図9(a)の構造は、ポーラスシリコンからなる熱絶縁層2を陽極酸化により形成した後に、熱絶縁層2の背面側に陽極酸化により気体層5を形成する。熱絶縁層2と気体層5とは陽極酸化の際に電流密度などの条件を変えることにより形成される。たとえば、熱絶縁層2を形成する際には多孔質化の条件で電流密度を比較的小さくし、気体層5を形成する際には電解研磨の条件となるように電流密度を大きく設定する。熱絶縁層2を形成した後には、熱絶縁層2が多孔質化されていることによって基板1よりも高抵抗であるから、電解研磨の条件において熱絶縁層2を残したままで気体層5を形成することができる。
また、図9(b)の構造を形成するには、基板1の背面からKOHのようなアルカリ液を用いた異方性エッチングにより堀込みを形成し、熱絶縁層2までの数μmを残して異方性エッチングを終了した後、反応性イオンエッチングを行って開口6を熱絶縁層2まで開通させる。
ところで、実施形態1では、熱絶縁層2の厚み寸法を(1)式で求められる寸法Lpよりも大きく設定しているが、本実施形態では、熱絶縁層2の厚み寸法を(1)式で求められる寸法Lpよりも小さく設定している。
すなわち、実施形態1では、発熱層1から熱絶縁層2に向かって放射された赤外線が基板3に到達しないように熱絶縁層2の厚み寸法を寸法Lpよりも大きく設定する必要があるのに対して、本実施形態では、発熱層1から熱絶縁層2に向かって放射された赤外線が、熱絶縁層2の背面において気体に接触するように、熱絶縁層2の厚み寸法を寸法Lpよりも小さく設定しているのである。
いま、実施形態1と同条件で考え、熱絶縁層2をポーラスシリコンで形成し、発熱層1に正弦波状の電圧を印加するものとして、発熱層1の熱的な応答周波数f、熱絶縁層2の体積熱容量Cp、熱絶縁層2の熱伝導率αpを、それぞれf=10〔kHz〕、αp=1.1〔W/mK〕、Cp=1.05×10 〔J/ K〕とすると、(1)式からLp=5.8〔μm〕になり、本実施形態では、熱絶縁層2の厚み寸法をこの寸法Lp(=5.8〔μm〕)よりも小さくすることが必要である。
さらに、赤外線の放射効率を高めるには、所望の赤外線の真空中での波長をλ〔m〕、熱絶縁層2の屈折率をnとして、次式で表される共鳴条件を成立させるのが望ましい。
n・Lp=mλ/2 …(5)
ただし、mは自然数である。
本実施形態におけるポーラスシリコンにより形成した熱絶縁層2の厚み寸法Lpは、所望の赤外線の波長を4〔μm〕とし、(5)式においてn=1.35、m=1とすれば、1.5〔μm〕になる。すなわち、1.5〔μm〕<5.8〔μm〕であるから、本実施形態において要求される条件を満足することができる。
すなわち、熱絶縁層2は、発熱層1の昇温を阻害せず、発熱層1と熱絶縁層2との全体としての体積熱容量を小さくすることができる。そのため、発熱層1は印加された電圧の変化に高速に応答し、印加電圧の変調周波数を高くすることが可能になる。
また、熱絶縁層2をポーラスシリコンにより形成することにより、体積熱容量を低減して熱応答時間を短くすることで、発熱層1の昇温効率をより高めることになる。しかも、本実施形態では、熱絶縁層2の裏面が気体に接触しており、一般に気体は熱絶縁層2よりも熱伝導率が小さいから、熱絶縁層2の背面を断熱することによって、熱絶縁層2から発熱層1の周辺への熱伝導の経路を減少させ発熱層1の周辺部への放熱を抑制することになる。したがって、図3に曲線ロとして示すように、発熱層1を支持している熱絶縁層2は発熱層1の発熱時に、深さ方向において大きな温度差が生じないように温度上昇することになる。
ところで、図9(a)の構成のように気体層5を形成している場合には、気体層5の厚み寸法Lgを、以下の条件で設定するのが望ましい。すなわち、発熱層1への印加電圧を正弦波状とし、印加電圧の周波数をf〔Hz〕、気体層5の熱伝導率をαg〔W/mK〕、気体層5の体積熱容量をCg〔J/mK〕とするとき、気体層5の厚み寸法Lgを次式で表される範囲に設定する。
0.05Lg′<Lg<3Lg′ …(6)
ただし、Lg′=(2αg/ωCg)1/2、ω=2πfである。
たとえば、発熱層1への印加電圧を周波数f=10〔kHz〕の正弦波とし、気体層5の熱伝導率αg、体積熱容量Cgを、それぞれαg=0.0254〔W/mK〕、Cg=1.21×10〔J/mK〕とすれば、(5)式から1.3〔μm〕<Lg<77.5〔μm〕になるから、気体層5の厚み寸法Lgを、たとえば25〔μm〕に設定することにより、(5)式の条件を満足することができる。望ましくは、この範囲内で温度振幅比が最大となる厚みに設定する。
図9(a)に示す構成の気体層5は、基板3の温度を一定とすれば、熱絶縁層2の温度と厚み寸法Lgとに依存して断熱性と放熱性とのいずれかの機能を持つから、気体層5の厚み寸法Lgを(5)式の条件範囲において適宜に調節することにより、発熱層1への印加電圧が上昇する期間には気体層1に断熱性を持たせ、発熱層1への印加電圧が下降する期間には気体層1に放熱性を持たせることが可能になる。
すなわち、気体層5の断熱性と放熱性とを利用するタイミングを、発熱層1への印加電圧の増減のタイミングにほぼ一致させることが可能になり、発熱層1への印加電圧が高周波で変調されている場合でも、発熱層1の温度を電圧の周波数に略同期するように変化させることが可能になる。つまり、気体層2を設けていない場合よりも応答性を高めることが可能になる。
しかも、発熱層1が熱絶縁層2を加熱することによって、実施形態1と同様に、発熱層1の背面側に放射された赤外線の少なくとも一部を発熱層1の前方に放射させることになって、投入電力に対する赤外線の放射効率を高めることができる。さらには、熱絶縁層2の厚み寸法Lpが共鳴条件を満たすように設定することにより、共鳴を利用して赤外線の放射強度をさらに高めることが可能になる。他の構成および動作は実施形態1、2と同様である。
1 発熱層
2 熱絶縁層
3 基板
4 電極
5 気体層

Claims (8)

  1. 基板の一表面に形成され通電に伴う発熱により赤外線を放射する発熱層と、一面に発熱層が積層されることにより発熱層を支持するように基板の一表面に形成された熱絶縁層とを備え、熱絶縁層は、熱伝導率が基板よりも小さく、発熱層の通電に伴う発熱層からの伝熱による一部の温度上昇と、発熱層から入射する赤外線の反射との少なくとも一方により、発熱層に向かう向きに赤外線を放射し、発熱層は、熱絶縁層から放射された赤外線を通過させる機能を有し、通電による発熱時の発熱層のシート抵抗は30〜1000Ωsqであることを特徴とする赤外線放射素子。
  2. 前記熱絶縁層の他面が気体に接触していることを特徴とする請求項1記載の赤外線放射素子。
  3. 前記熱絶縁層の厚み寸法は、目的波長の赤外線に対する光路長が当該赤外線の半波長の自然数倍となる寸法に設定されていることを特徴とする請求項1記載の赤外線放射素子。
  4. 前記熱絶縁層の他面は前記基板に接触しており、熱絶縁層と基板との境界面は、熱絶縁層から基板に向かう目的波長の赤外線を反射させる反射面であって、熱絶縁層の厚み寸法は、目的波長の赤外線に対する光路長が当該赤外線の4分の1波長の奇数倍となる寸法に設定されていることを特徴とする請求項1記載の赤外線放射素子。
  5. 前記熱絶縁層は、加熱時に空洞放射により赤外線を放射するマクロポアがバルク半導体に形成され、かつマクロポア内にナノポアが形成された構造であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の赤外線放射素子。
  6. 前記熱絶縁層は、半導体の酸化物を含む電気絶縁膜により形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の赤外線放射素子。
  7. 前記発熱層は、負の抵抗温度係数を持つ材料により形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の赤外線放射素子。
  8. 前記発熱層は、TaN、TiNから選択されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の赤外線放射素子。
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