JP5366589B2 - 試料容器及びグロー放電分析装置 - Google Patents

試料容器及びグロー放電分析装置 Download PDF

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Description

本発明は、試料を収容保持する試料容器、並びに該試料容器及び電極を有するグロー放電分析装置本体を備えたグロー放電分析装置に関する。
試料表面の深さ方向元素分析にグロー放電分光分析装置が利用されている。グロー放電分光分析装置には、例えば、マーカス型のグロー放電管が設けられている。グロー放電管は、露出した陽極と、該陽極を囲繞するように収容し、試料表面が陽極に対向するように陽極を支持する支持ブロックとを備える。
支持ブロックは、該支持ブロックに押圧された試料によって封止される。そして、該陽極と、試料との間にはアルゴン等の不活性ガスが供給され、高周波電圧が印加される。高周波電圧が印加された陽極と、試料との間には、グロー放電が発生する。グロー放電によって発生したイオンは試料表面に衝突し、試料表面の原子がたたき出される。該原子は、プラズマ中で励起し、基底状態に戻る際、元素固有の波長を有する光(以下、グロー放電発光という)を放射する。グロー放電分光分析装置は、グロー放電発光を分光器にて分光分析し、試料表面の元素を同定する。
一方、グロー放電分光分析装置にセットされた試料周辺に密閉空間を形成し、不活性ガスを通流させることによって、試料及び陽極間への大気の侵入を確実に防止することができるグロー放電分光分析装置が開示されている(例えば、特許文献1、2)。
また、特許文献1、2と同様の構成によって、小さな外形サイズの試料又は分析面を含む表面全体が細かい凹凸面又は多孔質の面になった試料であっても、試料及び陽極間への大気の侵入を確実に防止し、分光分析を正確に行うことができるグロー放電分光分析装置が開示されている(例えば、特許文献3)。
特開2004−151042号公報 特開2005−257506号公報 特開平8−193953号公報
しかしながら、従来のグロー放電分光分析装置は、グロー放電分光分析装置にセットされた試料周辺に密閉空間を形成し、不活性ガスを通流させる構成であるが、グロー放電分光分析装置に試料をセットする際には、試料が空気に晒される。従って、不活性ガス雰囲気中での取り扱いを要する試料、例えばリチウムイオン電池素材を分光分析することができないという問題があった。
なお、原理的には、パージガス置換型のグローブボックス中にグロー放電分光分析装置を設置し、不活性ガス雰囲気中で試料の分光分析を行うことも考えられる。しかし、グロー放電分光分析装置を収容できるような専用の大型グローブボックスを用意することは困難であり、非現実的である。
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、不活性ガス雰囲気中での取り扱いを要する試料のグロー放電分析を可能にする試料容器及びグロー放電分析装置を提供することを目的とする。
本発明に係る試料容器は、試料を収容し、グロー放電分析装置本体の電極に該試料が対向するように保持する試料容器であって、開口部を有し、試料を収容する試料収容体と、前記電極及び試料が密封されるように、前記試料収容体をグロー放電分析装置本体に着脱可能に取り付けるための取付部と、前記グロー放電分析装置本体から離脱した前記試料収容体の開口部を開閉させるシャッタ部材と、前記試料収容体の開口部と異なる側面に設けられた孔部及び前記シャッタ部材の窓部とを進退可能であり、試料をグロー放電分析装置本体の試料保持体へ押圧するための電圧印加電極である試料押圧部材とを備えることを特徴とする。
本発明に係る試料容器は、前記試料収容体は、前記試料収容体に不活性ガスを供給する不活性ガス供給口と、前記試料収容体から不活性ガスを排気する不活性ガス排気口とを備えることを特徴とする。
本発明に係る試料容器は、前記不活性ガス供給口は逆止弁を備え、前記不活性ガス排気口は、前記試料収容体内の圧力が所定圧力以上になった場合に開状態になる安全弁を備え、前記シャッタ部材は、前記不活性ガス供給口及び不活性ガス排気口よりも前記開口部側に設けられていることを特徴とする。
本発明に係る試料容器は、前記試料収容体は、略中央に孔部が形成された円板部及び該円板部に周設された円筒部を有する有底円筒状をなし、更に、前記円板部の孔部に進退可能に貫装されており、試料をグロー放電分析装置本体へ押圧するための試料押圧部材と、前記孔部及び前記試料押圧部材間をシールする第1のシール部材と、前記試料収容体及び前記シャッタ部材間をシールする第2のシール部材と、前記試料収容体及び前記グロー放電分析装置本体間をシールする第3のシール部材とを備えることを特徴とする。
本発明に係るグロー放電分析装置は、電極を有するグロー放電分析装置本体と、上述のいずれか一つの試料容器とを備えることを特徴とする。
本発明にあっては、試料容器は取付部を備えているため、グロー放電分析装置本体から試料容器を取り外すことができる。従って、グロー放電分析装置本体から取り外した試料容器のみを、パージガス置換型のグローブボックスに搬入することが可能になる。
また、試料容器は、試料を出し入れするための開口部と、開口部を開閉するシャッタ部材とを備えているため、グロー放電分析装置本体から取り外した試料容器の開口部を開き、試料を収容し、該開口部を閉じることができる。従って、グローブボックスの不活性ガス雰囲気中で、試料容器に試料を収容することが可能になる。また、試料容器の開口部を閉じることによって、空気に晒すことなく、試料をグローブボックスから搬出することが可能になる。
更に、試料容器は取付部を備えているため、グロー放電分析装置本体の電極及び試料が密封されるように、試料容器をグロー放電分析装置本体に取り付けることができる。従って、グロー放電分析装置本体に試料容器を取り付け、開口部を開くことによって、試料を空気に晒すことなく、試料及び電極を対向配置することができ、該試料の分析が可能になる。
よって、不活性ガス雰囲気中での取り扱いを要する試料のグロー放電分析が可能になる。
本発明にあっては、試料収容体は、不活性ガス供給口及び不活性ガス排気口を備えている。従って、不活性ガス供給口にて不活性ガスを試料収容体に供給し、不活性ガス排気口にて不活性ガスを排気することによって、試料収容体内を不活性ガスで置換することが可能になる。
本発明にあっては、不活性ガス供給口は逆止弁を備え、不活性ガス排気口は安全弁を備える。このため、シャッタ部材を不活性ガス供給口及び不活性ガス排気口よりも開口部側に設けても、シャッタ部材を閉じることによって、試料収容体を密閉することが可能になる。
従って、不活性ガス供給口及び不活性ガス排気口をシャッタ部材よりも開口部側に設ける場合に比べ、密閉可能な試料収容空間の容積をより大きくすることが可能になる。言い換えると、所用の試料収容空間を確保し、試料容器を小型化することが可能になる。
また、試料容器をグロー放電分析装置本体に取り付けた状態における、シャッタ部材と、グロー放電分析装置間本体との距離を短くすることができるため、試料容器取付時の密閉空間に残留する空気の量を最小限にすることが可能になる。なお、僅かに残留した空気は、グロー放電分析装置本体によって排気される。
本発明にあっては、グロー放電分析装置本体に取り付けられた試料容器の開口部を開き、試料押圧部材をグロー放電分析装置本体側へ移動させることによって、試料をグロー放電分析装置本体へ押圧することができる。
また、第1乃至第3シール部材によって、試料収容体と、試料押圧部材、シャッタ部材及びグロー放電分析装置本体との間をシールする。
本発明によれば、不活性ガス雰囲気中での取り扱いを要する試料のグロー放電分析が可能になる。
本発明の実施の形態1に係る試料容器の構成を模式的に示す斜視図である。 試料容器の構成を模式的に示す側断面図である。 図2のIII−III線断面図である。 試料容器を備えたグロー放電分光分析装置の構成を模式的に示す側断面図である。 開状態にある試料容器の構成を模式的に示す斜視図である。 開状態にある試料容器の構成を模式的に示す側断面図である。 試料押圧部材にて、試料をグロー放電分光分析装置本体側に押圧した状態にある試料容器の構成を模式的に示す側断面図である。 試料容器の使用手順を示す流れ図である。 変形例に係るグロー放電分光分析装置を用いた試料の交換方法を説明するための説明図である。 実施の形態2に係るグロー放電分光分析装置の構成を模式的に示す斜視図である。 グロー放電分光分析装置の要部を模式的に示す横断面図である。 試料収容室が開状態にあるグロー放電分光分析装置の構成を模式的に示す斜視図である。
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る試料容器1の構成を模式的に示す斜視図、図2は、試料容器1の構成を模式的に示す側断面図、図3は、図2のIII−III線断面図、図4は、試料容器1を備えたグロー放電分光分析装置の構成を模式的に示す側断面図である。本実施の形態1に係るグロー放電分光分析装置は、図4に示すように、陽極33(電極)を有するマーカス型のグロー放電管3及び分光器4が設けられたグロー放電分光分析装置本体2と、試料Sを収容し、該試料Sが陽極33に対向するように保持する試料容器1とを備える。
対向した陽極33と、試料Sとの間には、不活性ガスが供給され、高周波電圧が印加される。高周波電圧の印加によって、陽極33と、試料Sとの間にはグロー放電が発生する。グロー放電によって発生したイオンは試料S表面に衝突し、試料Sの原子がたたき出される。該原子は、プラズマ中で励起し、基底状態に戻る際、元素固有の波長を有するグロー放電発光Lを放射する。グロー放電発光Lは、分光器4に入射し、演算部61によって分光分析されるように構成されている。
<試料容器1の構成>
本実施の形態1に係る試料容器1は、開口部11cを有し、試料Sを収容する試料収容体11と、試料収容体11の開口部11cを開閉させるスライド式のシャッタ部材12とを備える。
試料収容体11は、円板部11aと、円板部11aに対して略垂直に周設された円筒部11bと、円筒部11bの開放側にシャッタ部材12をスライド自在に保持するシャッタ保持環11fとを有し、有底円筒状をなしている。
円板部11aの略中央には孔部11dが形成されており、孔部11dには、試料Sをグロー放電分光分析装置本体2側へ押圧するための試料押圧部材13が、試料収容体11の中心線方向へ進退可能に貫装している。試料押圧部材13は、円柱部分13aと、円柱部分13aのグロー放電分光分析装置本体2部側を拡径してなる試料保持押圧部13bとを有する。試料保持押圧部13bは、試料Sが貼着された金属プレートMを磁力によって保持する磁石を備える。なお、試料保持部13b全体を磁石で構成しても良い。試料保持押圧部13bに磁石を備えることによって、金属プレートMに試料Sを貼着し、試料Sが貼着された金属プレートMを試料保持押圧部13bに保持させることができる。従って、試料Sを試料保持押圧部13bに直接貼着させる構成に比べて、より容易に試料Sを試料保持押圧部13bに取り付けることが可能になる。
また、試料押圧部材13は、電圧印加電極を兼ねている。分光分析の際、試料押圧部材13には、図示しない高周波電源が接続され、高周波電圧が印加される。孔部11dの内周面には、試料収容体11と、試料押圧部材13の円柱部分13aとの間をシールするシール部材(第1のシール部材)16aが設けられている。シール部材16aは、例えばOリングである。
円筒部11bは、図3に示すように、シャッタ部材12の両側部を挟むように、開放端側周縁部の適宜箇所から該円筒部11bの中心線方向へ延設され、シャッタ保持環11fに螺合する雄ねじ11eを有する。より詳細には、雄ねじ11eは、シャッタ部材12の側部に当接する平面部分と、円筒部11bの外周面に倣うように形成された円弧面部分と、円弧面部分の外周面先端部に形成されたねじ部とで構成されている。また、円筒部11bの開放端側環状面には、試料収容体11の円筒部11bと、シャッタ部材12との間をシールするシール部材(第2のシール部材)16bが設けられている。
また、試料収容体11の円筒部11bには、試料収容体11に不活性ガスを供給する不活性ガス供給口14と、試料収容体11から不活性ガスを排気する不活性ガス排気口15とが設けられている。不活性ガス供給口14には、逆止弁14aが設けられ、不活性ガス排出口には、試料収容体11内の圧力が所定圧力以上になった場合に開状態になる安全弁15aが設けられている。
シャッタ保持環11fは、雄ねじ11eが内嵌する環状凹部を有し、環状凹部には、雄ねじ11eが螺合する雌ねじ11gが形成されている。雄ねじ11eと、シャッタ保持環11fの雌ねじ11gとが螺合した場合、シャッタ保持環11fは円筒部11bに締結され、シャッタ部材12は、円筒部11bと、シャッタ保持環11fとの間に挟まれた状態で保持される。以下、シャッタ部材12が締結されるシャッタ保持環11fの回転方向を締結方向、シャッタ部材12の締結が解除されるシャッタ保持環11fの回転方向を締結解除方向という。
また、シャッタ保持環11fの円筒部11b側環状面には、シャッタ部材12と、シャッタ保持環11fとの間をシールするシール部材(第2のシール部材)16cが設けられている。
更に、シャッタ保持環11fのグロー放電分光分析装置本体2側環状面には、試料収容体11と、グロー放電分光分析装置本体2との間をシールするシール部材(第3のシール部材)16dが、設けられている。
更にまた、シャッタ保持環11fのグロー放電分光分析装置本体2側には、陽極33及び試料Sが密封されるように、試料収容体11をグロー放電分光分析装置本体2に着脱可能に取り付けるための取付部11hが形成されている。取付部11hは、シャッタ保持環11fのグロー放電分光分析装置本体2側へ突出した環状部と、図1に示すように、環状部の周方向に沿った適宜箇所に複数形成されたL字状溝部とで構成されている。
シャッタ部材12は、試料収容体11の開口部11cを閉塞する略長方形の閉鎖板12aを備える。閉鎖板12aの短辺は、円筒部11bの内径より大寸法、円筒部11bの外径より小寸法である。閉鎖板12aの長辺は、円筒部11bの外径の2倍超の寸法であり、閉鎖板12aの長手方向一端側には、試料収容体11の開口部11cを開放するための円形の窓部12bが形成され、長手方向他端側にて開口部11cを閉鎖するように構成されている。窓部12bの直径は、円筒部11bの内径と略同一寸法である。閉鎖板12aの長手方向両端には、鉤型の抜け止め部12c,12dが設けられている。
<グロー放電分光分析装置本体2の構成>
グロー放電分光分析装置本体2は、グロー放電管3、分光器4、試料Sをグロー放電管3へ押圧するための押圧ピストン5、演算部61、表示部62及びプリンタ部63を備える。
グロー放電管3は、陽極33を支持する円柱状の陽極支持ブロック31を備える。陽極支持ブロック31は、一端面略中央部に陽極33が嵌合する凹部を有する。
陽極33は、前記凹部に嵌合する円板状の陽極基部33aを有する。陽極基部33aの略中央には、中心線方向に貫通した陽極光路孔33bと、外側へ臨むように突出した陽極円筒部33cとが形成されている。
また、陽極支持ブロック31は、中心線方向に貫通した光路孔31cを略中央部に有する。光路孔31cの分光器4側端部には、グロー放電発光Lを分光器4へ導くレンズ36が配されている。陽極円筒部33c及び試料S間で発生したグロー放電発光Lは、陽極円筒部33c、陽極光路孔33b、光路孔31c及びレンズ36を通じて、分光器4へ導かれる。
更に、陽極支持ブロック31は、光路孔31c、陽極光路孔33b、陽極円筒部33cへ不活性ガスを供給する不活性ガス導入路31aと、光路孔31c等を通流した不活性ガスを排気する不活性ガス排気路31bを有する。
また、グロー放電管3は、絶縁性の試料保持体34を備える。試料保持体34は、外径が陽極基部33aと同寸法で円環状をなし、略中央部に貫通孔34aが形成されている。試料保持体34は、陽極円筒部33cに間隙を有して外嵌している。また、貫通孔34aの周縁部には、陽極円筒部33cに対向するように、試料Sをグロー放電ランプに押圧することによって、貫通孔34aを封止するためのOリング35が設けられている。試料保持体34は、陽極33と共に、固定環32によって陽極支持ブロック31にねじ止め固定されている。固定環32の外周面には、取付部11hに係合し、試料容器1をグロー放電分光分析装置本体2に係止させる係合突起32aが複数形成されている。
分光器4は、入射スリット41、回折格子42、出射スリット43、光電子増倍管44を備える。レンズ36に入射したグロー放電発光Lは、入射スリット41で焦点を結ぶ。入射スリット41を通過した光は、回折格子42によって回折され、回折によって元素特有のスペクトルに分けられたスペクトル光は出射スリット43を通過し、光電子増倍管44によって検出される。
光電子増倍管44によって検出されたスペクトル光の情報は、演算部61へ出力される。演算部61は、該情報に基づいて、分光分析を行い、分光分析結果を表示部62又はプリンタ部63へ出力する。
<試料容器1の動作説明>
図5は、開状態にある試料容器1の構成を模式的に示す斜視図、図6は、開状態にある試料容器1の構成を模式的に示す側断面図である。本実施の形態1に係る試料容器1は、図1,2,5,6に示すように、シャッタ部材12を長手方向へ移動させることによって、試料収容体11の開口部11cを開閉させることができる。
図7は、試料押圧部材13にて、試料Sをグロー放電分光分析装置本体2側に押圧した状態にある試料容器1の構成を模式的に示す側断面図である。本実施の形態1に係る試料容器1は、試料容器1をグロー放電分光分析装置本体2に取り付け、図6及び図7に示すように、試料押圧部材13をグロー放電分光分析装置本体2側へ押し込むことによって、試料Sを陽極円筒部33cに対向させ、貫通孔34aを封止することができる。
<試料容器1の使用方法>
図8は、試料容器1の使用手順を示す流れ図である。
まず、試料容器1及び試料Sをパージガス置換型のグローブボックスに搬入する(ステップS1)。試料容器1がグロー放電分光分析装置本体2に取り付けられている場合、グロー放電分光分析装置本体2から試料容器1を取り外して、グローブボックスに搬入する。
グローブボックスの作業室内を不活性ガスで置換した後、シャッタ保持環11fを締結解除方向へ回転させ、図5に示すように、試料容器1のシャッタ部材12を開方向へ移動させ、開口部11cを開く(ステップS2)。そして、金属プレートMに試料Sを貼着し、試料Sが貼着された金属プレートMを試料保持押圧部13bに保持させ(ステップS3)、図1に示すように、シャッタ部材12を閉方向へ移動させ、シャッタ保持環11fを締結方向へ回転させることによって開口部11cを閉じる(ステップS4)。
次いで、試料Sを収容した試料容器1をグローブボックスから搬出する(ステップS5)。試料容器1は密閉されているため、空気が試料容器1に侵入することはない。従って、不活性ガス雰囲気中での取り扱いを要する不安定な試料Sを、空気に晒すことなく試料容器1に収容し、試料Sを収容した試料容器1をグローブボックスからグロー放電分光分析装置本体2へ搬送することができる。
そして、グロー放電分光分析装置本体2に試料容器1を取り付ける(ステップS6)。具体的には、係合突起32aと、取付部11hのL字状溝部との位置を合わせて、試料容器1をグロー放電管3側へ押し込む。そして、試料容器1を回転させることによって、係合突起32aをL字状溝部に係合させて、グロー放電分光分析装置本体2に取り付ける。
そして、グロー放電分光分析装置本体2側の図示しない真空ポンプを用いて、シャッタ部材12及びグロー放電分光分析装置本体2間の空間の真空引きを行う(ステップS7)。真空引きは、該空間の圧力が所定圧力未満に到達するまで行い、所定圧力未満に到達した場合、真空引きを停止させる。次いで、グロー放電分光分析装置本体2側の図示しない不活性ガス供給ガスボンベを用いて、不活性ガス導入路31a及び不活性ガス排気路31bを通じた不活性ガスの供給及び排気を行い、シャッタ部材12及びグロー放電分光分析装置本体2間の空間に不活性ガスを供給し、また試料容器1の不活性ガス供給口14に図示しない不活性ガス供給ガスボンベを接続し、不活性ガスを試料容器1に供給することによって、試料収容体11内部を不活性ガスに置換する(ステップS8)。なお、試料収容体11内部を不活性ガスに置換するための第1の不活性ガス供給路と、不活性ガス導入路31aに接続され、シャッタ部材12及びグロー放電分光分析装置本体2間の空間を不活性ガスに置換する第2の不活性ガス供給路とをグロー放電分光分析装置本体2に夫々設けても良い。この場合、一の不活性ガス供給ガスボンベを用いて、各部を不活性ガスに置換することが可能になる。
次いで、試料収容体11に不活性ガスを供給しながら、シャッタ保持環11fを締結解除方向へ回転させ、図6に示すように、シャッタ部材12を開方向へ移動させて、開口部11cを開き(ステップS9)、図7に示すように試料押圧部材13を押し込み、試料Sを陽極33に対向配置させる(ステップS10)。試料Sは、Oリング35を介して試料保持体34に押圧されることによって、貫通孔34aは封止される。
そして、グロー放電分光分析装置本体2側の図示しない真空ポンプを用いて、シャッタ部材12及びグロー放電分光分析装置本体2間の空間の真空引きを行う(ステップS11)。真空引きは、該空間の圧力が所定圧力未満に到達するまで行い、所定圧力未満に到達した場合、真空引きを停止させる。次いで、試料Sと、陽極33との間に高周波電圧を印加することによって、グロー放電発光Lを発生させ、分光分析を行う(ステップS12)。
以上のように構成された、実施の形態1に係る試料容器1及びグロー放電分光分析装置にあっては、不活性ガス雰囲気中での取り扱いを要する試料Sのグロー放電分光分析が可能になる。
また、試料収容体11は、不活性ガス供給口14及び不活性ガス排気口15を備えているため、不活性ガスを給排気することによって、試料収容体11内を不活性ガスで置換することが可能になる。従って、試料Sが空気に晒されることをより確実に防止することができる。
更に、不活性ガス供給口14及び不活性ガス排気口15には、夫々逆止弁14a及び安全弁15aが設けられ、シャッタ部材12は、不活性ガス供給口14及び不活性ガス排気口15よりも開口部11c側に設けられている。
従って、所用の試料S収容空間を確保し、かつ試料容器1を小型化することが可能になる。
また、試料容器1をグロー放電分光分析装置本体2に取り付けた状態における、シャッタ部材12と、グロー放電分光分析装置間本体との距離を短くすることができるため、試料容器1取付時の密閉空間に残留する空気の量を最小限にすることができ、試料Sが空気に晒されることをより確実に防止することができる。
更にまた、試料容器1をグロー放電分光分析装置本体2に取り付け、試料収容体11を密閉したまま、試料押圧部材13をグロー放電分光分析装置本体2側へ移動させ、試料Sと、陽極円筒部33cとを対向させることができる。従って、グローブボックス内で試料Sを試料容器1に収容する際、試料Sと、陽極円筒部33cとの距離を厳密に調整する必要はなく、試料Sを簡易に収容し、試料S及び陽極円筒部33cを対向配置させることができる。
更にまた、グロー放電分光分析装置本体2にグローブボックスを設け、或いは、グロー放電分光分析装置本体2を収容可能な専用のグローブボックスを用意する場合に比べ、部品点数を減少させることができる。従って、不活性ガス雰囲気中での取り扱いを要する試料Sの分光分析を低コストで行うことができる。
なお、本実施の形態1では、試料収容体に不活性ガス排気口及び不活性ガス吸気口を備えているが、不活性ガス排気口及び不活性ガス吸気口を設けないように構成しても良い。また、不活性ガス排気口及び不活性ガス吸気口のいずれか一方を備えるように構成しても良い。グロー放電分光分析装置本体の不活性ガス吸気路及び不活性ガス排気路を通じて、試料容器内に不活性ガスを通流させることも可能である。
また、本実施の形態1では、進退可能な試料押圧部材を備えているが、試料と、陽極円筒部とを対向させることが可能であれば、他の構成を採用しても良い。例えば、円板部に弾性部材からなる試料押圧部材を貫通させて固定し、試料容器をグロー放電分光分析装置本体に取り付けた場合、該試料押圧部材によって試料が陽極円筒部側へ付勢されるように構成すれば良い。このように構成された場合、孔部及びシール部材を設ける必要が無く、試料容器をより確実に密閉させることができる。
更に、試料容器の開口部を開閉させる機構として、スライド式のシャッタ部材を例示したが、開口部の開閉機構はこれに限定されない。例えば、アイリス型ダイヤフラムシャッタ、ロータリ型シャッタにて、試料容器の開口部を開閉するように構成しても良い。
更にまた、試料容器の取付部の構成も、本実施の形態1の構成に限定されない。例えば、ねじ機構で固定するように構成しても良い。
更にまた、本実施の形態1では、グロー放電分析装置を説明したが、グロー放電を用いた質量分析装置、その他の分析装置に本発明を適用しても良い。
(変形例)
変形例に係るグロー放電分光分析装置は、グロー放電分光分析装置本体2に対する試料容器1の取り付けを一度行うだけで、複数の試料S1,S2,S3,S4の分光分析を可能にするものである。変形例に係る試料容器1は、試料容器1をグロー放電分光分析装置本体2に取り付けた場合に、試料押圧部材13の円柱部分13aの中心線A1と、陽極円筒部33cの中心線A2とが芯ずれするように構成されている(図9参照)。より具体的には、グロー放電分光分析装置本体2に取り付けられた試料容器1の円板部11aの中心線と、陽極円筒部33cの中心線とが略一致するように陽極33を設け、かつ試料容器1を構成する円板部11aの中心から所定距離離隔した部位に孔部11dを形成し、該孔部11dに試料押圧部材13を進退可能に貫装すれば良い。逆に、グロー放電分光分析装置本体2に取り付けられた試料容器1の円板部11aの中心線と、陽極円筒部33cの中心線とが芯ずれするように陽極33を設け、かつ試料容器1を構成する円板部11aの中心に孔部11dを形成し、該孔部11dに試料押圧部材13を進退可能に貫装すれば良い。また、試料押圧部材13は、試料容器1の円板部11aに対して回動可能に貫装している。
図9は、変形例に係るグロー放電分光分析装置を用いた試料S1,S2,S3,S4の交換方法を説明するための説明図である。変形例に係る試料容器1は、円柱部分13aの中心線A1と、陽極円筒部33cの中心線A2とが芯ずれしているため、中心線A1の周方向に沿って試料S1,S2,S3,S4を配した場合、図9(a)〜(d)に示すように試料押圧部材13を円板部11に対して回動させることによって、試料S1,S2,S3,S4を各別に陽極円筒部33cに対応配置させることができる。従って、試料容器1をグロー放電分光分析装置本体2に一度取り付けるだけで、4回の測定が可能になる。
なお、言うまでもなく、金属プレートMに貼着する試料の数は4つに限定されない。
(実施の形態2)
以下では、本発明の課題を解決することができるグロー放電分光分析装置の他の実施形態を説明する。
図10は、実施の形態2に係るグロー放電分光分析装置の構成を模式的に示す斜視図、図11は、グロー放電分光分析装置の要部を模式的に示す横断面図である。グロー放電分光分析装置は、実施の形態1と同様のグロー放電分光分析装置本体2を備える。実施の形態2に係るグロー放電分光装置は、陽極33を覆うように形成されたグローブボックス装置7を備える。
グローブボックス装置7は、陽極33に試料Sを取り付けるために必要な作業空間を有する試料収容室71を備える。試料収容室71は、グロー放電分光分析装置に固定された矩形の底板部71a、該底板部71aに対して略垂直に形成された正面壁71b、側面視が略五角形の側壁71c、天板71d及び扉体71eを備え、構成されている。扉体71eは、開閉が可能であり、扉体71eには透明の作業窓71fが形成されている。また、試料収容室71を密閉できるよう、扉体には、図示しないシール部材が設けられている。また、各側壁71cには、作業用の挿入口72が設けられ、図11に示すように、人の手を差し入れ可能なグローブ73が挿入口72に気密に取り付けられている。なお、作図の便宜上、図10、11では、グローブ73を省略して図示してある。また、試料収容室71には、試料収容室71に不活性ガスを供給するための不活性ガス供給管75が設けられている。不活性ガス供給管75には、ガス供給弁82を介してガスボンベ83が接続されている。更に、試料収容室71には、不活性ガスを排気するための不活性ガス排気管74が設けられている。不活性ガス排気管74には真空ポンプ81が接続されている。
図12は、試料収容室71が開状態にあるグロー放電分光分析装置の構成を模式的に示す斜視図である。実施の形態2に係るグロー放電分光分析装置によれば、グローブボックス装置7の扉体71eを図12に示すように開き、試料収容室71に試料Sを入れることができる。該試料Sは、例えば、空気に晒されないようにアルミパウチ等によって密閉されている。そして、扉体71eを閉じ、不活性ガスを試料収容室71に給排気することによって、試料収容室71内を不活性ガスで置換する。作業者は、挿入口72のグローブ73を装着することによって、試料収容室71内に手を差し入れ、不活性ガス雰囲気中で試料Sを取り扱い、陽極33に対向配置させることができる。具体的には、前記アルミパウチを開封し、該アルミパウチ内の試料Sを取り出し、試料Sを陽極33に対向配置させることができる。
以上のように構成された実施の形態2にあっては、不活性ガス雰囲気中での取り扱いを要する試料Sを不活性ガス雰囲気中で取り扱い、陽極33に対向配置させ、グロー放電分光分析を行うことができる。
以上の実施の形態では分光分析を用いた分析装置について例示したが、これに限られるものではなく、質量分析等、グロー放電を用いた他の分析装置にも応用可能である。さらに、分析装置のみではなく、グロー放電を用いて電子顕微鏡等、表面分析装置用の試料を作成するための試料掘削、清浄装置へも応用可能である。
また、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
1 試料容器
2 グロー放電分光分析装置本体
3 グロー放電管
11 試料収容体
11a 円板部
11b 円筒部
11c 開口部
11d 孔部
11h 取付部
12 シャッタ部材
13 試料押圧部材
14 不活性ガス供給口
14a 逆止弁
15 不活性ガス排気口
15a 安全弁
16a、16b、16c、16d シール部材
33 陽極
S 試料

Claims (5)

  1. 試料を収容し、グロー放電分析装置本体の電極に該試料が対向するように保持する試料容器であって、
    開口部を有し、試料を収容する試料収容体と、
    前記電極及び試料が密封されるように、前記試料収容体をグロー放電分析装置本体に着脱可能に取り付けるための取付部と、
    前記グロー放電分析装置本体から離脱した前記試料収容体の開口部を開閉させるシャッタ部材と
    前記試料収容体の開口部と異なる側面に設けられた孔部及び前記シャッタ部材の窓部とを進退可能であり、試料をグロー放電分析装置本体の試料保持体へ押圧するための電圧印加電極である試料押圧部材と
    を備えることを特徴とする試料容器。
  2. 前記試料収容体は、
    前記試料収容体に不活性ガスを供給する不活性ガス供給口と、
    前記試料収容体から不活性ガスを排気する不活性ガス排気口と
    を備えることを特徴とする請求項1に記載の試料容器。
  3. 前記不活性ガス供給口は逆止弁を備え、
    前記不活性ガス排気口は、前記試料収容体内の圧力が所定圧力以上になった場合に開状態になる安全弁を備え、
    前記シャッタ部材は、
    前記不活性ガス供給口及び不活性ガス排気口よりも前記開口部側に設けられている
    ことを特徴とする請求項2に記載の試料容器。
  4. 記孔部及び前記試料押圧部材間をシールする第1のシール部材と、
    前記試料収容体及び前記シャッタ部材間をシールする第2のシール部材と、
    前記試料収容体及び前記グロー放電分析装置本体間をシールする第3のシール部材と
    を備えることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか一つに記載の試料容器。
  5. 電極を有するグロー放電分析装置本体と、
    請求項1乃至請求項4のいずれか一つに記載の試料容器と
    を備えることを特徴とするグロー放電分析装置。
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