JP5365568B2 - ワイヤハーネス用のグロメット - Google Patents

Description

本発明は、車両に配索するワイヤハーネス用のグロメットに関し、特に、グロメットを係止する車体パネルの貫通穴の周縁からバーリングが突設している場合に、バーリングの突出寸法や曲率にばらつきがあってもシール性能を確保できるようにするものである。

車両内において、被水領域と車室内とを仕切る車体パネルに設けられた貫通穴を通して配索するワイヤハーネスには、ゴムまたはエラストマーからなるグロメットを装着し、該グロメットを貫通穴の内周に係止して装着し車室への浸水防止をはかっている。

前記グロメットを取り付ける車体パネルの貫通穴が大きくなる程、図６（Ａ）に示すように、貫通穴Ｈの周縁からバーリングＢが一方側に突出しているバーリング穴が多い。
車体パネルＰの貫通穴Ｈがバーリング穴である場合、該貫通穴Ｈに挿入係止するグロメット１００は、図６（Ａ）（Ｂ）に示すように、ワイヤハーネス１０１を密着して挿通する小径筒部１１０に連続する拡径筒部１１１の大径側の外周に環状の車体係止凹部１１２を設け、車体係止凹部１１２の底面１１２ａにはシールリップ１１３を突設している。該車体係止凹部１１２の底面１１２ａは傾斜壁１１５側の側壁１１２ｂと先端厚肉部１１６側の側壁１１２ｃで挟んでいる。

グロメット１００の貫通穴Ｈへの取り付けは、車体パネルＰの貫通穴Ｈにグロメット１００の小径筒部１１０から挿入し、車体係止凹部１１２の底壁１１２ａを挟む傾斜壁１１５を圧縮変形して、貫通穴ＨのバーリングＢを車体係止凹部１１２に落とし込み、バーリングＢの内周面にシールリップ１１３を押し当てている。このシールリップ１１３をバーリングＢに押し当てている点をシールポイントＳＰとしている。

この種の貫通穴Ｈの周縁からバーリングＢが突出している場合、バーリングの高さ寸法（突出量）にバラツキがあると共に、貫通穴Ｈの周縁からのアールにバラツキがある。よって、これらのバーリングの高さ、アールの曲率、貫通穴の内径の相違およびバラツキを考慮しながらグロメットを設計する必要がある。

かつ、図６（Ｃ）に示すように、バーリングＢのアール部分Ｂｒがシールリップ１１３に乗り上げ、必要なシール圧を管理しにくい。また、バーリングＢの突出量のバラツキを考慮したラップ量を多く取りにくいことから、シールリップ１１３は比較的大きなリップとなる。よって、グロメット１００のバーリングＢへの「かかり量Ａ」は不足し、保持力が不足がちになる。そのため「かかり量Ａ」を大として傾斜壁１１５の突出量を大とするとグロメット１００を貫通穴Ｈに挿入するための挿入力が大となる問題がある。

従来、バーリングＢを備えた貫通穴Ｈに取り付けるグロメットが特開平９−６３３８５号公報で提案されている。図７（Ａ）（Ｂ）に示すように、該グロメット２００はゴム等の弾性材からなるアウター部材２０１と樹脂成形品からなるインナー部材２０２からなる、２体物のグロメットである。貫通穴Ｈの周縁から突出するバーリングＢの突出端面Ｂａはアウター部材２０１の孔端当接部２０１ａに突き当て、該アウター部材２０１の孔端当接部２０１ａにインナー部材２０２のリップ押さえ部２０２ａを挿入している。かつ、バーリングＢを貫通孔周縁よりインナー部材２０２で押圧して、アウター部材２０１とインナー部材２０２とで挟持した状態でシール性能を保持している。

特開平９−６３３８５号公報

前記図７に示すグロメットは、ゴム等の成形品であるアウター部材と、樹脂成形品であるインナー部材の２体物であり、かつ、アウター部材およびインナー部材とも形状が複雑であると共に、組みつけ手数もかかり、コスト高になる問題がある。

本発明は、バーリング付きの貫通穴に挿入係止するグロメットがゴムまたはエラストマーの成形品のみからなると共に、簡単な形状としながらバーリングのバラツキがあっても止水性能を確保できるグロメットを提供することを課題としている。

前記課題を解決するため、車両に配索されるワイヤハーネスに外嵌して取り付け、車体パネルのバーリングが突出した貫通穴に装着するワイヤハーネス用のグロメットであって、
ゴムまたはエラストマーから成形された一体成形品のみからなり、
前記ワイヤハーネスを挿通する筒部の外周面に環状の車体係止凹部を備え、該車体係止凹部の底面を挟む両側面のうち、前記バーリングの突出方向の一方の側面に向けて前記車体係止凹部の底面を円弧状態で傾斜させて外周側へ突出させた円弧状底面部にすると共に、該円弧状底面部にシール突起を設けず、前記バーリングの突出した先端面を前記円弧状底面部に食い込ませて押接してシールポイントとしていることを特徴とするワイヤハーネス用のグロメットを提供している。

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前記した本発明のグロメットは、バーリングの先端面を車体係止凹部の円弧状底面に食い込ませるように押接し、この押接したバーリングの先端面をシールポイントとしている。車体係止凹部の底面には従来突設していたシールリップ（シール突起）を突設していない。
このように、バーリングの先端面をシールポントとすると、バーリングのアールのバラツキに影響をうけず、バーリングの突出量（高さ寸法）のみを考慮して車体係止凹部の対向する側壁間の寸法を設計すればよく、設計管理を容易としながら、安定した止水性能を得ることができる。
かつ、グロメットは一体成形品のみであり、特許文献１に記載のように２体物とする必要がないため、コスト低下を図ることができる。

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前記本発明のグロメットでは、前記車体係止凹部の底面を挟む両側壁はグロメットの軸線方向に直角な垂直側面とし、前記円弧状底面部の突出側と接する一方の垂直側面の外方先端から他方の垂直側面に向けてシールリップを突出させることが好ましい。

なお、本発明のグロメットは、車体係止凹部の底面形状を前記形状とすればよく、他の部分の形状は特に限定されない。
即ち、前記ワイヤハーネスを密着して挿通できる小径筒部と、該小径筒部に連続して拡径する拡径筒部を備え、該拡径筒部の大径側に前記環状の車体係止凹部を設け、
前記車体係止凹部を小径筒部側から拡径する傾斜壁と大径側先端の厚肉壁に設けていることが好ましい。

前記のように、本発明では、バーリングの突出した先端面を車体係止凹部の一方側の側面に向けて突設した円弧状底面部に食い込ませるように押し当て、バーリングの先端面をシールポイントとしている。
このように、バーリングの突出端をシールポイントとしているため、バーリングのアールのバラツキに影響をうけず、バーリングの突出寸法（バーリングの高さ）を管理すればよく、グロメットの設計が簡単になると共に、安定した止水性能を得ることができる。

本発明の参考第一実施形態のグロメットを車体パネルのバーリング付き貫通穴に挿入係止した状態を示す断面図である。 図１のグロメットの要部拡大断面図である。 （Ａ）は参考第二実施形態のグロメットの要部拡大断面図、（Ｂ）はバーリング付き貫通穴にグロメットを係止した状態の要部拡大断面図である。 本発明の実施形態のグロメットの要部拡大断面図である。 参考第三実施形態のグロメットの要部拡大断面図である。 （Ａ）（Ｂ）（Ｃ）は従来のグロメットを示す図面である。 （Ａ）（Ｂ）は他の従来例のグロメットを示す図面である。

以下、本発明のグロメットの参考実施形態および実施形態を図面を参照して説明する。 図１および図２に参考第一実施形態のグロメットを示す。
グロメット１は図１に示すように、エンジンルーム（Ｘ）と車室（Ｙ）とを仕切る車体パネルＰに設けたバーリング付き貫通穴Ｈに挿入係止するものである。即ち、貫通穴Ｈから突出したバーリングＢをグロメットの外周面に環状に設けた車体係止凹部５内に挿入係止するものである。

グロメット１はゴムまたはエラストマーからなる弾性体により成形した１部品からなり、本実施形態ではＥＰＤＭで成形している。グロメット１は、ワイヤハーネス２を密着して挿通する小径筒部３と、該小径筒部３の一端から拡径する拡径筒部４と、該拡径筒部４の大径側に設けた環状の車体係止凹部５を備えている。該車体係止凹部５は底面１０を垂直側面１１と傾斜側面１２とで挟んでいる。該傾斜側面１２は外周側を垂直側面１１に向けて傾斜させ、先端にシールリップ１３を設けている。
車体係止凹部５は小径筒部３側の傾斜壁６と、大径側先端の厚肉壁７との間に形成し、前記垂直側面１１は傾斜壁６側に設け、前記傾斜側面１２は厚肉壁７側に設けている。

底面１０と接する位置における垂直側面１１と傾斜側面１２との間の寸法Ｌ１は、前記車体パネルＰとバーリングＢの先端間の寸法（バーリングＢの突出高さ寸法）Ｌ２より小さく設定している。即ち、Ｌ１＜Ｌ２とし、かつ 好ましくは、Ｌ１＝（０．６〜０．９）×Ｌ２としている。
また、環状の底面１０の外径Ｄ１は、バーリングＢの穴径（内径）Ｄ２と同等としている。

前記したグロメット１は小径筒部３を拡げ治具（図示せず）で拡げてワイヤハーネス２を小径筒部３に挿通すると共に拡径筒部４に通して、ワイヤハーネス２にグロメット１を外嵌し、小径筒部３の外周面からワイヤハーネス２の外周面にかけて粘着テープＴを巻き付けて固定している。

ワイヤハーネス２を車体パネルＰの貫通穴Ｈに挿通して、グロメット１を貫通穴Ｈに挿入係止する際、小径筒部３から貫通穴Ｈに挿入し、傾斜壁６を圧縮変形して、車体係止凹部５に貫通穴Ｈの周縁のバーリングＢを落とし込んで係止している。

詳細には、図１に示すように、車体係止凹部５に落とし込まれたバーリングＢの内周面は車体係止凹部５の底面１０に接触し、貫通穴Ｈの周縁の車体パネルＰは垂直側面１１に接触する。バーリングＢの突出した先端面Ｂｐは傾斜側面１２の奥端（底面１０と接する部分）で、傾斜側面１２に食い込むように押し当てられて押接される。即ち、バーリングＢの先端面Ｂｐと傾斜側面１２との接触点がシールポイントＳＰとなる。

このように、バーリングＢの突出寸法Ｌ２より垂直側面１１と傾斜側面１２との間の寸法Ｌ１を小さく設定しているため、バーリングＢの先端面Ｂｐを傾斜側面に確実に食い込むように押接させることができ、安定した止水性能を得ることができる。かつ、バーリングＢのアールおよびアールのバラツキの影響をうけず、グロメットの設計が容易となる。 さらに、グロメットはゴムまたはエラストマーからなる一部品からなり、前記特許文献１のように２体物ではないため、安価に提供することができる。

図３（Ａ）（Ｂ）に参考第二実施形態のグロメット１Ａを示す。
該グロメット１Ａでは、車体係止凹部５の底面を挟む両側面をいずれも垂直側面１１、１５として平行に設けている。
垂直側面１１は傾斜壁６側に設け、垂直側面１５は厚肉壁７側に設けている。
車体係止凹部５の底面に、一方の垂直側壁１１側から他方の垂直側壁１５に向けて直線状に傾斜して突出する傾斜底面部２０を設けている。
また、垂直側壁１５の外端から垂直側壁１１に向けて突出するシールリップ１３を設けている。

該参考第二実施形態のグロメット１Ａでは、バーリングＢの先端面Ｂｐは傾斜底面部２０に食い込むように押接させる。また、車体パネルＰの一面は垂直側面１１に接すると共に他面には垂直側面１５のシールリップ１３が圧接する。

この参考第二実施形態のグロメットでは、バーリングＢの突出量にバラツキがあっても、その先端面Ｂｐは傾斜底面部２０のいずれかの位置に確実に食い込むように押接させてシールポイントＳＰとすることができるため、安定した止水性能を確保できる。

図４に本発明の実施形態のグロメット１Ｂを示す。
該グロメット１Ｂは車体係止凹部５の底面に傾斜底面部を設ける代わりに、垂直側面１５に向けて突出する円弧状底面部３０を設けている。
このように、円弧状底面部３０を設けて、バーリングＢの先端面Ｂｐを円弧状底面部３０に食い込ませて押接することができ、バーリングＢの先端面ＢｐをシールポイントＳＰとすることができる。

図５に参考第三実施形態のグロメット１Ｃを示す。
グロメット１Ｃは参考第一実施形態と参考第二実施形態とを組み合わせたもので、車体係止凹部５の対向する両側壁１１、１７間の寸法をバーリングＢの突出量より短くすると共に、底面に側壁１７に向けて突出する傾斜底面部２０を設けている。
該構成とすることにより、バーリングＢの突出長さに許容公差内のバラツキがあっても、側壁１７あるいは傾斜底面部２０のいずれかに食い込むように押接でき、安定した止水効果を図ることができる。

１ グロメット
２ ワイヤハーネス
３ 小径筒部
４ 拡径筒部
５ 車体係止凹部
１０ 底面
１１ 垂直側面
１２ 傾斜側面
２０ 傾斜底面部
３０ 円弧状底面部
Ｐ 車体パネル
Ｈ 貫通穴
Ｂ バーリング
Ｂｐ バーリング先端面
ＳＰ シールポイント

Claims (1)

1. 車両に配索されるワイヤハーネスに外嵌して取り付け、車体パネルのバーリングが突出した貫通穴に装着するワイヤハーネス用のグロメットであって、
   ゴムまたはエラストマーから成形された一体成形品のみからなり、
   前記ワイヤハーネスを挿通する筒部の外周面に環状の車体係止凹部を備え、該車体係止凹部の底面を挟む両側面のうち、前記バーリングの突出方向の一方の側面に向けて前記車体係止凹部の底面を円弧状態で傾斜させて外周側へ突出させた円弧状底面部にすると共に、該円弧状底面部にシール突起を設けず、前記バーリングの突出した先端面を前記円弧状底面部に食い込ませて押接してシールポイントとしていることを特徴とするワイヤハーネス用のグロメット。

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