JP5363538B2 - スタッドレスタイヤ用ゴム組成物及びスタッドレスタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、スタッドレスタイヤ用ゴム組成物及びスタッドレスタイヤに関する。
スパイクタイヤによる粉塵公害を防止するために、スパイクタイヤの使用を禁止することが法制化され、寒冷地では、スパイクタイヤに代わってスタッドレスタイヤが使用されるようになった。スタッドレスタイヤは、一般路面に比べ氷雪上路面で路面凹凸が大きく、材料面及び設計面での工夫がなされており、例えば、低温特性(氷雪上性能)に優れたジエン系ゴムを配合し、軟化効果を高めるために軟化剤を増量したゴム組成物が提案されている。ここで、軟化剤としては、低温特性を高めるために、一般にミネラルオイルが配合されることが多い。
しかしながら、低温特性を改善する目的でミネラルオイルを増量すると、一般に耐摩耗性能が悪化する。このような問題を解決する手法として、ミネラルオイルをアロマオイルに変更する方法が考えられるが、低温特性が低下し、充分満足できる氷雪上性能を得ることは難しい。これに対し、アロマオイルとシリカを併用することで耐摩耗性能を低下させることなく、低温特性を改善できるが、性能は未だ不十分である。また、低温特性や耐摩耗性能の他に、ウェットグリップ性能の向上も望まれている。
例えば、特許文献1には、アロマオイル及びシリカを多量に配合し、耐摩耗性能、氷雪上性能、ウェットグリップ性能がバランス良く改善されたスタッドレスタイヤ用ゴム組成物が開示されている。しかし、近年では、これらの性能の更なる改善が求められている。
特開2011−38057号公報
本発明は、前記課題を解決し、氷雪上性能、ウェットグリップ性能、耐摩耗性能をバランス良く改善し、更に良好な加工性も得られるスタッドレスタイヤ用ゴム組成物、及びこれを用いて作製したトレッドを有するスタッドレスタイヤを提供することを目的とする。
本発明は、天然ゴム及びブタジエンゴムを含むゴム成分、アロマオイル、シリカ、カーボンブラック及びシランカップリング剤を含み、上記ゴム成分100質量%中の上記天然ゴム及び上記ブタジエンゴムの合計含有量が30質量%以上であり、上記ゴム成分100質量部に対して、上記アロマオイルの含有量が12〜85質量部、上記シリカの含有量が12〜85質量部であり、上記シリカ及び上記カーボンブラックの合計100質量%中の該シリカの含有量が45質量%以上であり、上記シランカップリング剤が、下記一般式(1)で示される結合単位Aと下記一般式(2)で示される結合単位Bとを含み、かつ該結合単位Bの含有量が1〜70モル%のものであるスタッドレスタイヤ用ゴム組成物に関する。
Figure 0005363538
Figure 0005363538
(式中、Rは水素、ハロゲン、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基、又は該アルキル基の末端の水素が水酸基若しくはカルボキシル基で置換されたものを示す。Rは分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基、又は分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基を示す。RとRとで環構造を形成してもよい。)
上記シリカ100質量部に対する上記シランカップリング剤の含有量が1〜20質量部であることが好ましい。
本発明はまた、上記ゴム組成物をトレッドに用いたスタッドレスタイヤに関する。
本発明によれば、天然ゴム、ブタジエンゴム、アロマオイル、シリカ及びカーボンブラックを所定量含み、更に特定のシランカップリング剤を含むスタッドレスタイヤ用ゴム組成物であるので、これをトレッドに使用することにより、耐摩耗性能、氷雪上性能、ウェットグリップ性能がバランス良く改善され、かつ生産性も良好なスタッドレスタイヤを提供できる。
本発明のゴム組成物は、天然ゴム、ブタジエンゴム、アロマオイル、シリカ及びカーボンブラックを所定量含み、更に特定のシランカップリング剤を含む。このように、アロマオイルやシリカなどを所定量含むゴムに、特定のシランカップリング剤を配合することで、耐摩耗性能、氷雪上性能、ウェットグリップ性能を更に高いレベルでバランス良く改善することができ、良好な加工性も得られる。また、アロマオイルやシリカなどを所定量含まないゴムに該シランカップリング剤を配合した場合と比較して、各性能を大きく改善することができる。
(ゴム成分)
本発明では、ゴム成分として、天然ゴム及びブタジエンゴムが併用される。これにより、低温特性を改善し、氷雪上性能を向上できる。特にブタジエンゴムは、氷雪上性能の確保のための重要な成分である。
天然ゴム(NR)としては、例えば、SIR20、RSS#3、TSR20等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。また、天然ゴム(NR)には、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(HPNR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素添加天然ゴム(HNR)、グラフト化天然ゴム等の改質天然ゴムも含まれる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ブタジエンゴム(BR)としては、シス含量が80質量%以上のものを用いることが好ましい。これにより、耐摩耗性能を高めることができる。シス含量は、85質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましく、95質量%以上が最も好ましい。
また、BRは、25℃における5質量%トルエン溶液粘度が30cps以上のものが好ましい。30cps未満であると、加工性が大幅に悪化し、また耐摩耗性能も悪化するおそれがある。該トルエン溶液粘度は、好ましくは100cps以下、より好ましくは70cps以下が好ましい。100cpsを超えると、かえって加工性が悪化するおそれがある。
更に、加工性の改善と耐摩耗性能の改善を両立できる点から、Mw/Mnが3.0〜3.4のBRを使用することが好ましい。なお、重量平均分子量Mw、数平均分子量Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)(東ソー(株)製GPC−8000シリーズ、検出器:示差屈折計、カラム:東ソー(株)製のTSKGEL SUPERMALTPORE HZ−M)による測定値を基に標準ポリスチレン換算により求めたものである。
BRとしては特に限定されず、例えば、日本ゼオン(株)製のBR1220、宇部興産(株)製のBR130B、BR150B等の高シス含有量のBR、宇部興産(株)製のVCR412、VCR617等のシンジオタクチックポリブタジエン結晶を含有するBR等を使用できる。
ゴム成分100質量%中のNR含有量は、好ましくは30質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは50質量%以上、特に好ましくは55質量%以上である。30質量%未満であると、破断強度が大幅に低下し、耐摩耗性能の確保が困難となるおそれがある。該NR含有量は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは65質量%以下である。80質量%を超えると、低温特性が低下し、スタッドレスタイヤに必要な氷雪上性能を確保できないおそれがある。
ゴム成分100質量%中のBR含有量は、好ましくは10質量%以上、より好ましくは20質量%以上、更に好ましくは30質量%以上、特に好ましくは35質量%以上である。10質量%以上含むことにより、スタッドレスタイヤとして必要な氷雪上性能を発揮することができる。該BR含有量は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。80質量%を超えると、加工性の大幅な悪化、薬品のブリードによる白化が発生するおそれがある。
ゴム成分100質量%中のNR及びBRの合計含有量は、30質量%以上、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上であり、100質量%が最も好ましい。NR及びBRの合計量が多いほど低温特性に優れ、必要な氷雪上性能を発揮できる。
本発明の効果を阻害しない範囲で他のゴム成分を配合してもよい。他のゴム成分としては、スチレンブタジエンゴム(SBR)、イソプレンゴム(IR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)、ハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)などが挙げられる。
(オイル)
本発明では、比較的多量のアロマオイルが使用される。ミネラルオイルの場合、低温特性に優れるため、氷雪上性能は確保できるが、耐摩耗性能が悪化する。ミネラルオイルを減量することで耐摩耗性能は確保できても、低温特性の低下による氷雪上性能の低下が起こり、背反性能である氷雪上性能と耐摩耗性能を両立できない。これに対して、アロマオイルは多量に配合しても耐摩耗性能の低下が少ないため、氷雪上性能と耐摩耗性能の両立が可能となる。更に、多量のシリカ、カーボンブラックとともに配合することにより、更に高いレベルで氷雪上性能と耐摩耗性能を両立できるとともに、良好なウェットグリップ性能も得ることができる。
本発明において、アロマオイルとしては、例えば、ASTM D2140に準拠して求められた芳香族系炭化水素の質量百分率が15質量%以上のものが好適に使用される。即ち、プロセスオイルは、その分子構造的に芳香族系炭化水素(C)、パラフィン系炭化水素(C)、ナフテン系炭化水素(C)を含有し、その含有比率C(質量%)、C(質量%)、C(質量%)に応じてアロマオイル、パラフィンオイル、ナフテンオイルに大別されるところ、本発明では、C含有比率が15質量%以上のものが好ましく、17質量%以上のものがより好ましい。また、アロマオイル中のC含有比率は、好ましくは70質量%以下、より好ましくは65質量%以下である。
アロマオイルの市販品としては、例えば、出光興産(株)製のAC−12、AC−460、AH−16、AH−24、AH−58、ジャパンエナジー(株)製のプロセスNC300Sなどが挙げられる。
アロマオイルの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、12質量部以上、好ましくは15質量部以上、より好ましくは30質量部以上、更に好ましくは45質量部以上、特に好ましくは60質量部以上である。アロマオイルの含有量が多いほど軟化効果が得られ、低温特性が高められるため、氷雪上性能を改善できる。該アロマオイルの含有量は、85質量部以下、好ましくは80質量部以下である。85質量部を超えると、加工性の悪化、耐摩耗性能の低下、老化物性の低下などのおそれがある。
(シリカ)
本発明のゴム組成物は、比較的多量のシリカを含有する。シリカをアロマオイルとともに配合することにより、耐摩耗性能及び氷雪上性能を両立できるとともに、スタッドレスタイヤの弱点とされていたウェットグリップ性能を同時に向上できる。シリカとしては、例えば、湿式法で製造されたシリカ、乾式法で製造されたシリカなどが挙げられるが、特に制限はない。
シリカのチッ素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは80m/g以上、より好ましくは120m/g以上、更に好ましくは150m/g以上である。80m/g未満であると、破断強度が大幅に悪化し、耐摩耗性能の確保が困難となるおそれがある。また、シリカのNSAは、好ましくは250m/g以下、より好ましくは220m/g以下、更に好ましくは180m/g以下である。250m/gを超えると、配合したゴムの粘度が大幅に上昇し、加工性が悪化するおそれがある。
なお、シリカのNSAは、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、12質量部以上、好ましくは15質量部以上、より好ましくは30質量部以上、更に好ましくは45質量部以上である。12質量部以上配合することにより、スタッドレスタイヤとして必要な氷雪上性能を発揮できる。また、該シリカの含有量は、85質量部以下、好ましくは80質量部以下、より好ましくは70質量部以下、更に好ましくは60質量部以下である。85質量部を超えると、加工性及び作業性が悪化し、フィラー増量による低温特性の低下のおそれがある。
(シランカップリング剤)
本発明のゴム組成物は、下記一般式(1)で示される結合単位Aと下記一般式(2)で示される結合単位Bとを含み、かつ該結合単位Bの含有量が1〜70モル%であるシランカップリング剤を含有する。
Figure 0005363538
Figure 0005363538
(式中、Rは水素、ハロゲン、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基、又は該アルキル基の末端の水素が水酸基若しくはカルボキシル基で置換されたものを示す。Rは分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基、又は分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基を示す。RとRとで環構造を形成してもよい。)
上記構造のシランカップリング剤は、結合単位Aと結合単位Bのモル比が上記条件を満たすため、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのポリスルフィドシランに比べ、加工中の粘度上昇が抑制される。これは結合単位Aのスルフィド部分がC−S−C結合であるため、テトラスルフィドやジスルフィドに比べ熱的に安定であることから、ムーニー粘度の上昇が少ないためと考えられる。
また、結合単位Aと結合単位Bのモル比が上記条件を満たす場合、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプトシランに比べ、スコーチ時間の短縮が抑制される。これは、結合単位Bはメルカプトシランの構造を持っているが、結合単位Aの−C15部分が結合単位Bの−SH基を覆うため、ポリマーと反応しにくく、スコーチが発生しにくいためと考えられる。
本発明の効果が良好に得られるという点から、上記構造のシランカップリング剤において、結合単位Aの含有量は、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上であり、好ましくは99モル%以下、より好ましくは90モル%以下である。また、結合単位Bの含有量は、好ましくは5モル%以上、より好ましくは10モル%以上であり、好ましくは65モル%以下、より好ましくは55モル%以下である。また、結合単位A及びBの合計含有量は、好ましくは95モル%以上、より好ましくは98モル%以上、特に好ましくは100モル%である。
なお、結合単位A、Bの含有量は、結合単位A、Bがシランカップリング剤の末端に位置する場合も含む量である。結合単位A、Bがシランカップリング剤の末端に位置する場合の形態は特に限定されず、結合単位A、Bを示す一般式(1)、(2)と対応するユニットを形成していればよい。
のハロゲンとしては、塩素、臭素、フッ素などが挙げられる。
の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。該アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜12である。
の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基としては、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、1−オクテニル基等が挙げられる。該アルケニル基の炭素数は、好ましくは2〜12である。
の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基としては、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、へプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基、ウンデシニル基、ドデシニル基等が挙げられる。該アルキニル基の炭素数は、好ましくは2〜12である。
の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基等が挙げられる。該アルキレン基の炭素数は、好ましくは1〜12である。
の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基としては、ビニレン基、1−プロペニレン基、2−プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、1−ペンテニレン基、2−ペンテニレン基、1−ヘキセニレン基、2−ヘキセニレン基、1−オクテニレン基等が挙げられる。該アルケニレン基の炭素数は、好ましくは2〜12である。
の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基としては、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基、ペンチニレン基、ヘキシニレン基、へプチニレン基、オクチニレン基、ノニニレン基、デシニレン基、ウンデシニレン基、ドデシニレン基等が挙げられる。該アルキニレン基の炭素数は、好ましくは2〜12である。
上記構造のシランカップリング剤において、結合単位Aの繰り返し数(x)と結合単位Bの繰り返し数(y)の合計の繰り返し数(x+y)は、3〜300の範囲が好ましい。この範囲内であると、結合単位Bのメルカプトシランを、結合単位Aの−C15が覆うため、スコーチタイムが短くなることを抑制できるとともに、シリカやゴム成分との良好な反応性を確保することができる。
上記構造のシランカップリング剤としては、例えば、Momentive社製のNXT−Z30、NXT−Z45、NXT−Z60等を使用することができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記構造のシランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは2質量部以上、更に好ましくは3質量部以上である。1質量部未満であると、氷雪上性能、耐摩耗性能を充分に改善できないおそれがある。また、該含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは20質量部以下、より好ましくは16質量部以下、更に好ましくは10質量部以下である。20質量部を超えても、氷雪上性能、耐摩耗性能の更なる向上は認められず、コストの増加に見合った効果が得られない傾向がある。
本発明のゴム組成物において、上記構造のシランカップリング剤以外に、他のシランカップリング剤を併用することもできる。他のシランカップリング剤としては、例えば、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3−トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2−メルカプトエチルトリメトキシシランなどがあげられ、これらをそれぞれ単独で、または任意に組み合わせて用いることができる。なかでも、シランカップリング剤の補強性効果と加工性が良好であるという点から、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−メルカプトプロピルトリエトキシシランを用いることが好ましく、加工性が特に良好であるという点から、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドを用いることがより好ましい。
他のシランカップリング剤を含有する場合、良好な加工性を確保するという点から、その含有量は、シリカ100質量部に対して0.5〜10質量部で、かつ上記構造のシランカップリング剤の含有量よりも少ないことが好ましい。
(カーボンブラック)
本発明では、カーボンブラックが配合される。これにより、補強性が付与される。また、アロマオイル及びシリカとともに、NR及びBRに配合することで、耐摩耗性能、氷雪上性能、ウェットグリップ性能をバランス良く向上できる。カーボンブラックとしては特に限定されず、SAF、ISAF、HAF、FF、GPFなどを使用できる。
カーボンブラックとしては、平均粒子径が31nm以下及び/又はDBP吸油量が100ml/100g以上のものが好ましい。このようなカーボンブラックを配合することによって、必要な補強性を付与し、ブロック剛性、耐偏摩耗性、破壊強度を確保することもできる。また、本発明の効果も良好に得られる。
カーボンブラックの平均粒子径が31nmを超えると、破断強度が大幅に悪化し、耐摩耗性能の確保が困難になるおそれがある。カーボンブラックの平均粒子径は、より好ましくは25nm以下、更に好ましくは23nm以下である。また、カーボンブラックの平均粒子径は、好ましくは15nm以上、より好ましくは19nm以上である。15nm未満であると、配合したゴムの粘度が大幅に上昇し、加工性が悪化するおそれがある。本発明において平均粒子径は数平均粒子径であり、透過型電子顕微鏡により測定される。
カーボンブラックのDBP吸油量(ジブチルフタレート吸油量)が100ml/100g未満であると、補強性が低く、耐摩耗性能の確保が困難となるおそれがある。上記DBP吸油量は、より好ましくは105ml/100g以上、更に好ましくは110ml/100g以上である。また、上記DBP吸油量は、好ましくは160ml/100g以下、より好ましくは150ml/100g以下である。160ml/100gを超えると、カーボンブラック自体の製造が困難である。
なお、カーボンブラックのDBP吸油量は、JIS K6217−4:2001の測定方法によって求められる。
カーボンブラックのチッ素吸着比表面積(NSA)は、好ましくは80m/g以上、より好ましくは110m/g以上である。80m/g未満であると、破断強度が大幅に悪化し、耐摩耗性能の確保が困難になるおそれがある。また、該カーボンブラックのNSAは、好ましくは200m/g以下、より好ましくは150m/g以下である。200m/gを超えると、配合したゴムの粘度が大幅に上昇し、加工性が悪化するおそれがある。
なお、カーボンブラックのNSAは、JIS K6217−2:2001によって求められる。
カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは2質量部以上、より好ましくは3質量部以上、更に好ましく5質量部以上である。2質量部未満では、耐候性、耐オゾン性が大幅に劣るおそれがある。また、該含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは30質量部以下、更に好ましくは20質量部以下、特に好ましくは15質量部以下である。50質量部を超えると、低温特性が悪化し、スタッドレスタイヤに必要な氷雪上性能が確保できないおそれがある。
シリカ及びカーボンブラックの合計100質量%中のシリカの含有量は、45質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは55質量%以上である。45質量%未満であると、本発明の目的である氷雪上性能と耐摩耗性能の両立を達成することができないおそれがある。また、シリカ及びカーボンブラックの合計100質量%中のシリカの含有量は、好ましくは95質量%以下、より好ましくは93質量%以下、更に好ましくは90質量%以下である。95質量%を超えると、耐候性、耐オゾン性が大幅に劣るおそれがある。
(その他配合剤)
上記ゴム組成物には、上記成分以外にも、従来ゴム工業で使用される配合剤、例えば、他の充填剤、ステアリン酸、酸化防止剤、老化防止剤、酸化亜鉛、過酸化物、硫黄、含硫黄化合物等の加硫剤、加硫促進剤等を含有してもよい。
本発明のゴム組成物は、スタッドレスタイヤのトレッドに好適に用いることができる。また、トラック・バス用等にも適用することが出来るが、特に、雪上や氷上での操縦安定性が重要である乗用車用スタッドレスタイヤに用いることが好ましい。
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
以下、以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
NR:RSS#3
BR:宇部興産(株)製のBR150B(シス1,4結合量:97質量%、ML1+4(100℃):40、25℃における5質量%トルエン溶液粘度:48cps、Mw/Mn:3.3)
カーボンブラック:キャボットジャパン(株)製のN220(NSA:120m/g、平均粒子径:23nm、DBP吸油量:115ml/100g)
シリカ:デグッサ社製のUltrasil VN3(NSA:175m/g)
テトラスルフィドシラン:デグッサ社製のSi69(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド)
メルカプトシラン:Momentive社製のA1891(3−メルカプトプロピルトリエトキシシラン)
シランカップリング剤A:Momentive社製のNXT−Z15(結合単位Aと結合単位Bとの共重合体(結合単位A:85モル%、結合単位B:15モル%))
シランカップリング剤B:Momentive社製のNXT−Z30(結合単位Aと結合単位Bとの共重合体(結合単位A:70モル%、結合単位B:30モル%))
シランカップリング剤C:Momentive社製のNXT−Z45(結合単位Aと結合単位Bとの共重合体(結合単位A:55モル%、結合単位B:45モル%))
シランカップリング剤D:Momentive社製のNXT−Z80(結合単位Aと結合単位Bとの共重合体(結合単位A:20モル%、結合単位B:80モル%))
ミネラルオイル:出光興産(株)製のPS−32(パラフィン系プロセスオイル)
アロマオイル:ジャパンエナジー(株)製のプロセスオイルNC300S(芳香族系炭化水素(C)量:29質量%)
ステアリン酸:日油(株)製の桐
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛2種
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製のノクラック6C(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
ワックス:日本精蝋(株)製のオゾエースワックス
硫黄:鶴見化学工業(株)製の粉末硫黄
加硫促進剤TBBS:大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤DPG:大内新興化学工業(株)製のノクセラーD(N,N’−ジフェニルグアニジン)
実施例1〜9及び比較例1〜6
バンバリーミキサーを用いて、表1の工程1に示す配合量の薬品を投入して、排出温度が約150℃となるよう5分間混練りした。その後、工程1により得られた混合物に対して、工程2に示す配合量の硫黄及び加硫促進剤を加え、オープンロールを用いて、約80℃の条件下で3分間混練りして、未加硫ゴム組成物を得た。得られた未加硫ゴム組成物を170℃で10分間プレス加硫することにより、加硫ゴム組成物(加硫ゴムシート)を作製した。
また、得られた未加硫ゴム組成物をトレッド形状に成形して、他のタイヤ部材と貼り合わせ、170℃で15分間加硫することにより、試験用スタッドレスタイヤ(タイヤサイズ195/65R15、DS−2パターンの乗用車用スタッドレスタイヤ)を作製した。
以下に示す方法により、未加硫ゴム組成物、加硫ゴムシート、試験用スタッドレスタイヤを評価した。
<ムーニー粘度及びスコーチタイム>
JIS K6300−1:2001に基づき、(株)島津製作所製のMV202を用いて、130℃で上記未加硫ゴム組成物のムーニー粘度(ML1+4)及びスコーチタイムを測定した。結果は、比較例1のムーニー粘度の値及びスコーチタイムの値を100として指数表示をした。ムーニー粘度は指数値が小さいほど加工性に優れており、スコーチタイムは指数値が大きいほど加工性が優れていることを示す。
<硬度>
JIS K6253:2006の「加硫ゴム及び熱可塑性ゴムの硬さ試験方法」に従って、タイプAデュロメーターにより、上記加硫ゴムシートの硬度を0℃にて測定した。結果は、比較例1を100として指数表示した。
<ガラス転移温度(Tg)>
上記加硫ゴムシートから、所定サイズの試験片を作製し、(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメータVESを用いて、初期歪10%、動歪0.5%、周波数10Hz及び振幅±0.25%、昇温速度2℃/分の条件下で測定した温度−100〜100℃のtanδの温度分散曲線から、tanδピーク温度を測定し、その温度をTgとした。
<氷雪上性能>
上記試験用スタッドレスタイヤを国産2000ccのFR車に装着し、下記の条件の下、氷雪上で実車性能を評価した。試験場所は住友ゴム工業株式会社の北海道名寄テストコースで行い、氷上気温は−1〜−6℃、雪上気温は−2〜−10℃であった。
制動性能(氷上制動停止距離):時速30km/hでロックブレーキを踏み停止させるまでに要した氷上の停止距離を測定した。結果は、比較例1をリファレンスとして、下記式により指数表示した。
(氷雪上性能指数)=(比較例1の制動停止距離)/(各配合の停止距離)×100
指数が大きいほど、氷雪上での制動性能が良好であることを示す。
<ウェットグリップ性能>
上記試験用スタッドレスタイヤを用いて、ウェットアスファルト路面のテストコースにて実車走行を行い、この際におけるグリップ性能(グリップ感、ブレーキ性能、トラクション性能)について、フィーリング評価を行った。
フィーリング評価は、比較例1を100として基準とし、明らかに性能が向上したとテストドライバーが判断したものを120、これまでで全く見られなかった良いレベルであるものを140とするような評点付けをした。
<耐摩耗性能>
上記試験用スタッドレスタイヤ(タイヤサイズ195/65R15)を国産FF車に装着し、走行距離8000km後のタイヤトレッド部の溝深さを測定した。測定値からタイヤ溝深さが1mm減るときの走行距離を算出し、下記式により指数化した。
(耐摩耗性能指数)=(1mm溝深さが減るときの走行距離)/(比較例1のタイヤ溝が1mm減るときの走行距離)×100
指数が大きいほど、耐摩耗性能が良好であることを示す。
Figure 0005363538
表1において、天然ゴム、ブタジエンゴム、アロマオイル、シリカ及びカーボンブラックを所定量含み、更に特定のシランカップリング剤(シランカップリング剤A〜C)を含む実施例は、耐摩耗性能、氷雪上性能、ウェットグリップ性能がバランス良く改善され、加工性にも優れていた。比較例3に配合したシランカップリング剤Dは、構成単位A及び構成単位Bを有しているが、構成単位Bの割合が多すぎるため、良好な加工性を確保することができなかった。

Claims (3)

  1. 天然ゴム及びブタジエンゴムを含むゴム成分、アロマオイル、シリカ、カーボンブラック及びシランカップリング剤を含み、
    前記ゴム成分100質量%中の前記天然ゴム及び前記ブタジエンゴムの合計含有量が30質量%以上であり、
    前記ゴム成分100質量部に対して、前記アロマオイルの含有量が30〜85質量部、前記シリカの含有量が12〜85質量部であり、
    前記シリカ及び前記カーボンブラックの合計100質量%中の該シリカの含有量が45質量%以上であり、
    前記シランカップリング剤が、下記一般式(1)で示される結合単位Aと下記一般式(2)で示される結合単位Bとを含み、かつ該結合単位Bの含有量が1〜70モル%のものであるスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。
    Figure 0005363538
    Figure 0005363538
    (式中、Rは水素、ハロゲン、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基、又は該アルキル基の末端の水素が水酸基若しくはカルボキシル基で置換されたものを示す。Rは分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基、又は分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基を示す。RとRとで環構造を形成してもよい。)
  2. 前記シリカ100質量部に対する前記シランカップリング剤の含有量が1〜20質量部である請求項1記載のスタッドレスタイヤ用ゴム組成物。
  3. 請求項1又は2記載のゴム組成物をトレッドに用いたスタッドレスタイヤ。
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