JP5362635B2 - 発光装置の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、搭載基板上の発光素子が金型を用いてガラスにより封止される発光装置の製造方法に関する。
搭載基板上の発光素子がガラスにより封止された発光装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の発光装置は、複数の発光素子を搭載基板に搭載しておき、板状の低融点ガラスのホットプレス加工を行うことにより、各発光素子を一括してガラスにより封止している。
国際公開第2004/82036号公報 特開2008−53545号公報
ところで、特許文献1に記載の発光装置を製造するにあたり、ガラス材を搭載基板側へ金型で押し付けてプレスすると、軟化したガラス材が金型と搭載基板の間を横方向へ流出する。これにより、プレス加工時、ガラス材の圧力分布は、基板中央側が比較的高く、基板外縁側が比較的低いものとなり、同一基板上であっても、ガラス材と搭載基板との接合状態や、各発光素子の下面にガラス材が回り込むことによって封止条件が異なってしまう。従って、基板中央側ではガラス材と搭載基板が十分に接合されていても、基板外縁側では接合が不十分で剥離が生じるおそれや、基板中央側に配置される発光素子と、基板外縁側に配置される発光素子とで、特性がばらつくおそれがあった。
また、上記問題を解決する発光装置として、発光素子のそれぞれにプレス加工を行うものが知られている(例えば、特許文献2参照)。特許文献2に記載の発光装置は、複数の発光素子を搭載基板に搭載しておき、発光素子それぞれを囲む中子を搭載基板上にセットして、中子の内側に粉体ガラスを主成分とする封止材料を供給し、粉体ガラスのガラス軟化点以上となるよう加熱して上金型でプレス成形を行うことにより、各発光素子をガラスにより封止している。
ところで、特許文献2に記載の発光装置を製造するにあたり、発光素子のサイズ及び搭載基板に対する複数の発光素子の配置等の条件に応じて中子及び中子の形状に対応した上金型を用意する必要があった。
本発明は、前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数の発光素子をガラス材により一括して封止する場合に、ガラス材と搭載基板の剥離を抑制するとともに、各発光素子の特性をより均一に近づけることのできる発光装置の製造方法を提供することにある。
前記目的を達成するため、本発明では、搭載基板の搭載面における搭載領域に複数の発光素子を搭載する搭載工程と、金型を前記搭載基板の前記搭載面と対向して配置し、前記搭載基板と前記金型の間に少なくとも前記搭載領域が覆われるようにガラス材を配置するとともに、前記複数の発光素子を搭載した前記搭載領域の外側に前記ガラス材の流出を抑制する枠状の抑制壁部材を配置するプレス準備工程と、加熱により軟化したガラス材を前記金型によりプレスして、前記各発光素子を前記ガラス材により一括して封止するプレス工程と、を含み、前記抑制壁部材は、前記搭載基板又は前記金型のいずれかに、前記抑制壁部材の内側に溜まる気体を外部へ案内させる気体流出孔を設ける発光素子の製造方法が提供される。
上記発光素子の製造方法において、前記プレス工程にて軟化した前記ガラス材が硬化した後、前記ガラス材及び前記搭載基板を分割してもよい。
上記発光素子の製造方法において、前記気体流出孔は、前記搭載基板に形成され、前記分割工程にて、前記気体流出孔の上を通るように前記搭載基板を分割してもよい。
上記発光素子の製造方法において、前記気体流出孔は、前記搭載基板の前記搭載領域の外側に設けてもよい。
上記発光素子の製造方法において、前記抑制壁部材は、前記プレス工程にて、プレスされた後の前記ガラス材の厚みより低くなるよう設けてもよい。
上記発光素子の製造方法において、前記抑制壁部材は、前記搭載領域の外周の全部に配置されてもよい。
上記発光素子の製造方法において、前記抑制壁部材は、前記搭載領域の外周の一部に配置されてもよい。
本発明によれば、複数の発光素子をガラス材により一括して封止する場合に、ガラス材と搭載基板の剥離を抑制するとともに、各発光素子の特性をより均一に近づけることができる。
図1は本発明の一実施形態を示す発光装置の概略縦断面図である。 図2はLED素子の模式縦断面図である。 図3は発光装置の製造方法に関する説明図であり、(a)は発光素子を実装した搭載基板の平面図、(b)は抑制壁部材の平面図、(c)は上金型の底面図である。 図4Aはガラス材の封止加工前の状態を示す模式説明図である。 図4Bはガラス材の封止加工時の状態を示す模式説明図である。 図5は変形例を示すものであって、ガラス材の封止加工時の状態を示す模式説明図である。 図6Aは変形例を示すものであって、ガラス材の封止加工時の状態を示す模式説明図である。 図6Bは変形例を示す搭載基板の平面図である。 図7Aは変形例を示すものであって、ガラス材の封止加工時の状態を示す模式説明図である。 図7Bは変形例を示す搭載基板の平面図である。 図8Aは変形例を示すものであって、ガラス材の封止加工時の状態を示す模式説明図である。 図8Bは変形例を示す搭載基板の平面図である。 図9Aは変形例を示すものであって、ガラス材の封止加工時の状態を示す模式説明図である。 図9Bは変形例を示す抑制壁部材の平面図である。 図10は変形例を示すものであって、ガラス材の封止加工時の状態を示す模式説明図である。 図11は変形例を示す抑制壁部材の平面図である。 図12は変形例を示す抑制壁部材の平面図である。
図1から図4Bは本発明の一実施形態を示し、図1は発光装置の概略縦断面図であり、図2はLED素子の模式縦断面図である。
図1に示すように、この発光装置1は、フリップチップ型のGaN系半導体材料からなるLED素子2と、LED素子2を搭載する搭載基板3と、搭載基板3に形成されタングステン(W)−ニッケル(Ni)−金(Au)で構成される回路パターン4と、LED素子2を封止するとともに搭載基板3と接着されるガラス封止部6とを有する。また、LED素子2と搭載基板3との間には、ガラスがまわりこまない中空部5が形成されている。本実施形態においては、搭載基板3および回路パターン4が、LED素子2を搭載しLED素子2へ電力を供給するための搭載基板を構成している。
発光素子としてのLED素子2は、図2に示すように、サファイア(Al)からなる成長基板20の表面に、III族窒化物系半導体をエピタキシャル成長させることにより、バッファ層21と、n型層22と、MQW層23と、p型層24とがこの順で形成されている。このLED素子2は、700℃以上でエピタキシャル成長され、その耐熱温度は600℃以上であり、後述する低融点のガラスを用いた封止加工における加工温度に対して安定である。また、LED素子2は、p型層24の表面に設けられるp側電極25と、p側電極25上に形成されるp側パッド電極26と、を有するとともに、p型層24からn型層22にわたって一部をエッチングすることにより露出したn型層22に形成されるn側電極27を有する。p側パッド電極26とn側電極27には、それぞれAuバンプ28が形成される。
p側電極25は、例えば銀(Ag)からなり、発光層としてのMQW層23から発せられる光を成長基板20の方向に反射する光反射層として機能する。尚、p側電極25の材質は適宜変更が可能である。本実施形態においては、p側電極25上には2点のp側パッド電極26が形成され、各p側パッド電極26にAuバンプ28が形成される。尚、p側パッド電極26は例えば3点であってもよく、p側電極25上に形成するp側パッド電極26の個数は適宜変更が可能である。
n側電極27は、同一エリアにコンタクト層とパッド層とが形成されている。図2に示すように、n側電極27は、Al層27aと、このAl層27aを覆う薄膜状のNi層27bと、Ni層27bの表面を覆うAu層27cによって形成されている。尚、n側電極27の材質は適宜変更が可能である。本実施形態においては、平面視にて、n側電極27がLED素子2の隅部に形成され、p側電極25がn側電極27の形成領域を除いて、ほぼ全面的に形成されている。
LED素子2は、厚さ100μmで346μm角に形成されており、熱膨張率は7×10−6/℃である。ここで、LED素子2のGaN層の熱膨張率は5×10−6/℃であるが、大部分を占めるサファイアからなる成長基板20の熱膨張率が7×10−6/℃であるため、LED素子2本体の熱膨張率は成長基板20の熱膨張率と同等となっている。尚、各図においてはLED素子2の各部の構成を明確にするために実寸と異なるサイズで各部を示している。
搭載基板としての搭載基板3は、アルミナ(Al)の多結晶焼結材料からなり、厚さ0.25mmで1.0mm角に形成されており、熱膨張率αが7×10−6/℃である。図1に示すように、搭載基板3の回路パターン4は、基板表面に形成されてLED素子2と電気的に接続される表面パターン41と、基板裏面に形成されて外部端子と接続可能な裏面パターン42と、を有している。表面パターン41は、LED素子2の電極形状に応じてパターン形成されたW層4aと、W層4aの表面を覆う薄膜状のNi層4bと、Ni層4bの表面を覆う薄膜状のAu層4cと、を含んでいる。裏面パターン42は、後述する外部接続端子44に応じてパターン形成されたW層4aと、W層4aの表面を覆う薄膜状のNi層4bと、Ni層4bの表面を覆う薄膜状のAu層4cと、を含んでいる。表面パターン41と裏面パターン42は、搭載基板3を厚さ方向に貫通するビアホール3aに設けられWからなるビアパターン43により電気的に接続されている。外部接続端子44はアノード側とカソード側で1つずつ設けられる。各外部接続端子44は、搭載基板3に平面視にて対角に配されている。
ガラス封止部6は、ZnO−B−SiO系のガラスからなる。尚、ガラスの組成はこれに限定されるものではなく、例えば、ガラスは、高屈折率とするためNbを含んでもよいし、低融点化のためにNaO、LiO等を含有していてもよい。さらに、任意成分としてZrO、TiO等を含んでいてもよい。このガラスは、ガラス転移温度(Tg)が490℃で、屈伏点(At)が520℃であり、LED素子2の発光層(本実施形態ではMQW層23)におけるエピタキシャル成長時の形成温度よりも、ガラス転移温度(Tg)が十分に低くなっている。本実施形態においては、発光層のエピタキシャル成長温度よりも、ガラス転移温度(Tg)が200℃以上低くなっている。また、ガラスの100℃〜300℃における熱膨張率(α)は6×10−6/℃である。熱膨張率(α)は、ガラス転移温度(Tg)を超えるとこれより大きな数値となる。これにより、ガラスは約600℃で搭載基板3と接着し、ホットプレス加工が可能となっている。また、ガラス封止部6のガラスの屈折率は1.7である。
また、ガラスの組成は、ガラス転移温度(Tg)がLED素子2の耐熱温度よりも低く、熱膨張率(α)が搭載基板3と同等であれば任意である。ガラス転移温度が比較的低く、熱膨張率が比較的小さいガラスとしては、例えば、ZnO−SiO−RO系(RはLi、Na、K等のI族の元素から選ばれる少なくとも1種)のガラス、リン酸系のガラス及び鉛ガラスが挙げられる。これらのガラスでは、ZnO−SiO−RO系のガラスが、リン酸系のガラスに比して耐湿性が良好で、鉛ガラスのように環境的な問題が生じることがないので好適である。
ここで、本実施形態において、LED素子2の封止に用いられるガラスは、加熱により軟化状態として成形したガラスであり、ゾルゲル法により成形されるガラスと異なる。ゾルゲルガラスでは成形時の体積変化が大きいのでクラックが生じやすくガラスによる厚膜を形成することが困難であるところ、本実施形態のように熱により軟化させて搭載基板3に融着させるガラスはこの問題点を回避することができる。また、ゾルゲルガラスでは細孔を生じるので気密性を損なうことがあるが、本実施形態のガラスはこの問題点を生じることもなく、LED素子2の封止を的確に行うことができる。
また、本実施形態のガラスは、一般に、樹脂において高粘度といわれるレベルより、桁違いに高い粘度で加工される。さらに、ガラスの場合には、屈伏点を数十℃超えても粘度が一般の樹脂封止レベルまで低くはならない。また、一般の樹脂成型時レベルの粘度にしようとすると、LED素子の結晶成長温度を超える温度を要するもの、あるいは金型に付着するものとなり、封止・成形加工が困難になる。このため、10ポアズ以上10ポアズ以下で加工することが好ましい。
図1に示すように、ガラス封止部6は、発光素子2及び搭載基板3を全面的に覆い、厚さが0.5mmとなっている。ガラス封止部6は、搭載基板3と平行な上面6aと、上面6aの外縁から下方へ延び搭載基板3と垂直な側面6bと、を有している。
以上のように構成された発光装置1では、回路パターン4を通じてLED素子2に電圧が印加されると、LED素子2から青色光が発せられる。LED素子2から発せられた青色光は、ガラス封止部6の上面6a又は側面6bを通じて外部へ放射される。
この発光装置1は、以下の工程を経て製造される。
まず、ガラス成分の酸化物粉末を1200℃に加熱し、溶融状態で撹拌する。そして、ガラスを固化した後、ガラス封止部6の厚さに対応するようスライスして封止前ガラス11を板状に加工する(板状加工工程)。この後、封止前ガラス11に、後述するように、各LED素子2に対応する凹部11aを形成する。
一方、ビアホール3aが形成された搭載基板3を用意し、搭載基板3の表面に回路パターンに応じてWペーストをスクリーン印刷する。次いで、Wペーストを印刷された搭載基板3を1000℃余で熱処理することによりWを搭載基板3に焼き付け、さらに、W上にNiめっき、Auめっきを施すことで回路パターン4を形成する(パターン形成工程)。
回路パターン4を形成するにあたっては、焼成されたセラミックにCr,Ti等の金属を蒸着してNiめっき及びAuめっきを施したたり、Cu箔を貼り付けた後に所定形状にエッチングしてAuめっきを施すようにすることができる。
図3は、発光装置の製造方法に関する説明図であり、(a)は発光素子を実装した搭載基板の平面図、(b)は抑制壁部材の平面図、(c)は上金型の底面図である。また、図4Aは、ガラス材の封止加工前の状態を示す模式説明図である。
図3(a)に示すように、複数のLED素子2を縦及び横について等間隔で搭載基板3に搭載する(搭載工程)。本実施形態においては、搭載基板3の中央側が各LED素子2の搭載領域10をなしている。具体的には、搭載基板3の回路パターン4の表面パターン41に複数のLED素子2を各Auバンプ28によって電気的に接合する。本実施形態においては、p側2点、n側1点の合計3点のバンプ接合が施される。
そして、図4Aに示すように、各LED素子2が搭載された搭載基板3を下金型91にセットし、抑制壁部材93を搭載基板3の搭載面3a上にセットするとともに、上金型92を搭載基板3の搭載面3aと対向して配置し、搭載基板3と上金型92の間に搭載領域10が覆われるように封止前ガラス11(図3中不図示)を配置する(プレス準備工程)。尚、このとき、封止前ガラス11は、各LED素子2と接触していてもよいし、離隔していてもよい。下金型91及び上金型92にはそれぞれヒータが配置され、各金型91,92で独立して温度調整される。図3(c)に示すように、上金型92は、搭載領域10上の封止前ガラスと接触する平坦面92aを有している。上金型92は、例えば、ステンレス、タングステンカーバイド等からなる。
図3(b)に示すように、抑制壁部材93は、枠状に形成され、少なくとも搭載領域10を囲むように搭載基板3上に治具等によって位置決めしてセットされる。抑制壁部材93は、例えば、アルミナ、ステンレス鋼等からなる。尚、抑制壁部材93にヒータを配置して温度調整するようにしてもよい。また、抑制壁部材93は、搭載基板3を囲むように下金型91上にセットするものであってもよい。
本実施形態においては、封止前ガラス11は板状に形成される。この後、下金型91及び上金型92を加圧し、窒素雰囲気中で加熱によって軟化したガラス材のホットプレス加工を行う。すなわち、搭載領域10の外側にガラス材の流出を抑制する抑制壁部材93を設けた状態で、加熱により軟化したガラス材を上金型92によりプレスして、各LED素子2をガラス材により一括して封止する(プレス工程)。このとき、封止前ガラス11は、搭載基板3への配置前に加熱されていてもよいし、配置後に加熱されるようにしてもよい。ホットプレス加工は、上金型92から封止前ガラス11に搭載基板3方向へ圧力を加えることにより行われる。これにより、図4Bに示すように、LED素子2が搭載された搭載基板3に封止前ガラス11が融着され、LED素子2は搭載基板3上で封止前ガラス11により封止される(加圧工程)。図4Bは、ガラス材の封止加工時の状態を示す模式説明図である。ここで、ホットプレス加工は、各金型91,92をはじめとする装置各部の酸化を防止する場合、各部材に対して不活性な雰囲気中で行えばよく、窒素雰囲気の他に例えば真空中で行うようにしてもよい。尚、各金型91,92及び抑制壁部材93をはじめとする装置各部の酸化が問題とならない場合、空気中でホットプレス加工を行ってもよい。
図4Bに示すように、封止前ガラス11の上面に上金型92の平坦面92aが全面的に接触し、加圧により軟化した封止前ガラス11が横方向へ流出するところ、抑制壁部材93が封止前ガラス11の流出を抑制することにより、ガラスの圧力をほぼ一定にすることができる。プレス加工時、軟化したガラス材は高粘度の流体として振る舞い、上金型92と搭載基板3により圧縮され、上金型92と搭載基板3との間隙が中央側と外縁側にわたって一定であるならば、外縁側と中央側とで圧力差が生じやすい状態となる。しかしながら、抑制壁部材93を設けることにより、ガラス材の流出を抑制して、内側にキャビティを形成することによって、搭載基板10のガラスの圧力をほぼ一定とすることができるのである。すなわち、本実施形態の製造方法は、高粘度のガラスを用いてホットプレス加工により各LED素子2を封止する際の新規な課題を解決したものである。
図4Bに示すように、封止前ガラス11の上面は、平坦面92aにより全体にわたって平坦に形成される。
以上の工程で、複数の発光装置1が横方向に連結された状態の図4Bに示すような中間体12が作製される。この後、ガラス封止部6と一体化された搭載基板3をダイシング装置にセットして、ダイシングブレードによって、ガラス封止部6及び搭載基板3を各LED素子2に分割するようダイシングして発光装置1が完成する(分割工程)。
以上の発光装置1の製造方法によれば、ガラス封止時に、搭載領域10上のガラス材の圧力がほぼ一定となるので、搭載基板3の外縁側でのガラス材の圧力を増大させることができ、ガラス材と搭載基板3との接合強度が増大し、ガラス材の搭載基板3からの剥離を抑制することができる。また、抑制壁部材93を用いない場合、搭載基板3の外縁側の圧力不足を、封止温度を上げることによって接合強度を確保していたが、本実施形態の抑制壁部材93を用いることにより封止温度を下げても接合強度を確保することができる。発明者らの実験では、平面型の上金型でプレス温度615℃、プレス圧力88kgfとして、基板外縁部でガラスの剥離が生じていたものについても、抑制壁部材93を用いることによりプレス温度595℃、プレス圧60kgfとして基板外縁部の剥離を生じないものとできたことが確認されている。これにより、封止に用いるガラス材料の選択の幅を拡げることができるし、LED素子2の半導体層と電極の熱膨張率差に起因する応力等のLED素子2への影響を軽減することができる。
また、搭載領域10内の各LED素子2に加わる圧力を一定とすることができる。これにより、各LED素子2の封止条件を均一とし、各LED素子2の特性をより均一に近づけることができる。特に本実施形態のように、各LED素子2がバンプ28等を介して搭載基板3に実装されている場合、各LED素子2と搭載基板3との間に隙間が存在する。そして、ガラスの圧力及び流れ方向によって当該隙間へのガラスの回り込み状態が異なり、この回り込み状態がLED素子2の特性に大きく影響するところ、回り込み状態を均一に近づけて各LED素子2の特性ばらつきを抑制することができる。例えば、p側電極25にITO等の導電性酸化膜材料を用いた場合、隙間におけるガラスの回り込み状態により、LED素子2から放射される光の光学挙動が変化し、装置の光量や発光効率に影響してしまう。
また、ガラス封止部6としてZnO−B−SiO−Nb−NaO−LiO系のガラスを用いたので、ガラス封止部6の安定性及び耐候性を良好とすることができる。従って、発光装置1が過酷な環境下等で長期間にわたって使用される場合であっても、ガラス封止部6の劣化が抑制され、光取り出し効率の経時的な低下を効果的に抑制することができる。さらに、ガラス封止部6が高屈折率でかつ高透過率特性のため、高信頼性と高発光効率の両立を実現できる。
また、ガラス封止部6として屈伏点(At)がLED素子2の半導体層のエピタキシャル成長温度より低いガラスを用いたので、ホットプレス時にLED素子2が熱的なダメージにより損なわれることがなく、半導体層の結晶成長温度に対して充分に低い加工が可能である。
さらに、搭載基板3とガラス封止部6の熱膨張率が同等であるので、高温で接着された後、常温あるいは低温状態としても剥離、クラック等の接着不良が生じにくい。さらに、一般にガラスはTg点以上の温度において熱膨張率が増大する特性を有しており、Tg点以上の温度でガラス封止が行われる場合には、Tg点以下だけでなくTg点以上の温度における熱膨張率も考慮することが安定したガラス封止を行うにあたり望ましい。すなわち、ガラス封止部6を構成するガラス材料は、上記したTg点以上の温度における熱膨張率を含む熱膨張率と、搭載基板3の熱膨張率とを考慮した同等の熱膨張率とすることで、搭載基板3に反りを発生させる内部応力を小にでき、搭載基板3とガラス封止部6との接着性が得られているにもかかわらずガラスのせん断破壊が生じることを防ぐことができる。従って、搭載基板3やガラス封止部6のサイズを大きくとり、一括生産できる数量を大にすることができる。また、発明者の確認では、−40℃←→100℃の液相冷熱衝撃試験1000サイクルでも剥離、クラックは生じていない。さらに、5mm×5mmサイズのガラス片のセラミック基板への接合基礎確認として、ガラス、セラミック基板とも種々の熱膨張率の組み合わせで実験を行ったところ、熱膨張率が高い方の部材に対する低い方の部材の熱膨張率の比が0.85以上ではクラックを生じることなく接合が行えることを確認した。部材の剛性やサイズ等にも依存するが、熱膨張率が同等というのは、この程度の範囲を示す。
さらに、LED素子2とガラス封止部6の熱膨張率が同等であるので、搭載基板3を含めた部材の熱膨張率が同等となり、ガラス封止における高温加工と常温との温度差においても内部応力は極めて小さく、クラックを生じることのない安定した加工性が得られる。また、内部応力を小にできるので、耐衝撃性が向上し、信頼性に優れるガラス封止型LEDとできる。
搭載基板3の表面パターン41は、ビアパターン43により裏面パターン42に引き出されるので、ガラスが不必要な箇所へ入り込むことや、電気端子が覆われること等への特別な対策を要することなく、製造工程を簡略化できる。また、板状の封止前ガラス11を複数のLED素子2に対して一括封止加工できるので、ダイサーカットにより複数の発光装置1を容易に量産することができる。尚、ガラスは高粘度状態で加工されるため、樹脂のように封止材料の流れ出しに対して充分な対策をとる必要はなく、ビアホールによらなくても外部端子が裏面に引き出されていれば充分に量産対応可能である。
図5から図12は、本発明の変形例を示し、図5は、ガラス材の封止加工時の状態を示す模式説明図である。
前記実施形態においては、上金型92に気体流出用の構造を特に設けていないが、例えば図5に示すように、気体流出用の構造を形成してもよい。図5においては、上金型92に、平坦面92aの抑制壁部材93の内側と、外部雰囲気とを連通する気体流出孔92cが形成されている。図5では、気体流出孔92cは、上金型92の側面にて外部と連通されている。これにより、ホットプレス加工時に抑制壁部材93の内側に溜まる気体を外部へ案内させ、ガラス封止部6中の気泡を低減することができる。
また、気体流出用の構造における他の例として、図6A,6Bに示すように、搭載基板3の搭載領域10外、又は搭載領域10の端部に、予め搭載基板3を貫通する気体流出孔31aを形成してもよい。これにより、同様に、ホットプレス加工時に抑制壁部材93の内側に溜まる気体を外部へ案内させ、ガラス封止部6中の気泡を低減することができる。尚、気体流出孔31aは、ガラス封止部6に加わる圧力を均一にするために、LED素子2の配置に応じて搭載基板3に対称に設けることが望ましい。また、気体流出孔31aは、ガラス材の漏れがないように、例えば直径0.1mm〜0.2mmといった小さな孔とすることが望ましい。
また、搭載基板3に気体流出孔を設ける他の例として、図7に示すように、搭載基板3の搭載領域10のダイシング装置によって分割されるダイシングパターン(分割目標)上に、予め搭載基板3を貫通する気体流出孔31bを形成してもよい。これにより、発光素子1に気体流出孔31bを残すことなく分割することができる。
また、搭載基板3に気体流出孔を設ける他の例として、図8A,8Bに示すように、搭載基板3のLED素子2の搭載位置付近に、予め搭載基板3を貫通する気体流出孔31cを形成してもよい。気体流出孔31cは、ホットプレス加工時に抑制壁部材93の内側に溜まる気体を外部へ案内させるとともに、LED素子2と電気的に接続される搭載基板3の搭載面3aに設けられた表面パターンと、搭載基板3の裏面に形成され外部端子と接続可能な裏面パターンと、接続する気体流出孔31cの内面に設けられこれらのパターンと連続的に形成される内面パターンとを形成するためのスルーホールでもある。
図8A,8Bに示す例によれば、ホットプレス時にガラス材料を気体流出孔31cまで進入させているので、ガラス材料が硬化した後に当該進入した部分が係合部となり、ガラス封止部5が搭載基板3に強固に固定される。これにより、ガラス封止部5に搭載基板3から剥離する方向に力が加わったとしても、係合部が気体流出孔31cに引っ掛かるので、ガラス封止部5が搭載基板3から離脱することはない。従って、例えば樹脂封止の発光装置で使用不能であった高圧下等の過酷な環境での使用も可能となるし、信頼性が格段に向上する。
また、気体流出用の構造における他の例として、図9A,9Bに示すように、抑制壁部材93の搭載基板3との接触面側に、予め抑制壁部材93を貫通する気体流出孔93aを形成してもよい。これにより、ホットプレス加工時に抑制壁部材93の内側に溜まる気体を外部へ案内させ、ガラス封止部6中の気泡を低減することができる。尚、気体流出孔93aは、ガラス封止部6に加わる圧力を均一にするために、LED素子2の配置に応じて搭載基板3に対称に設けることが望ましい。また、気体流出孔93aは、抑制壁部材93の搭載基板3との接触面に限らず、ガラス封止部6の高さを超えない範囲で設けることができる。
また、前記実施形態においては、抑制壁部材93をガラス封止部6の高さより高く形成したものを示したが、例えば、図10に示すように、ガラス封止部6の高さより低くなるよう変更してもよい。これにより、ガラス材と上金型92の密着時に、ガラス材と上金型92の間の気体が抑制壁部材93の外側へ逃げやすくなる。
また、前記実施形態においては、抑制壁部材93を平面視にて搭載領域10を完全に包囲するよう形成したものを示したが、例えば、図11及び図12に示すように、搭載領域10の外側の一部に形成するようにしてもよい。これにより、ガラス材と上金型92の密着時に、ガラス材と上金型92の間の気体が抑制壁部材93の外側へ逃げやすくなる。図11の例では、4つの抑制壁部材95が当該正方形の四辺の角部近傍以外に対応して形成されている。また、図12の例では、正方形状の搭載領域10に対し、4つの抑制壁部材96が当該正方形の四辺の中央側に対応して形成されている。
また、ガラス材と搭載基板3との接触面積を増大させる面積増大部として、搭載基板3に凹状、凸状等の溝部を形成してもよい。
また、前記実施形態においては、1つの発光装置1に1つのLED素子2が搭載されるものを示したが、1つの発光装置に複数のLED素子2が搭載されるものであってもよい。また、前記実施形態においては、LED素子2としてGaN系半導体材料からなるものを用いた発光装置1を説明したが、LED素子はGaN系のLED素子2に限定されず、例えばZnSe系やSiC系のように他の半導体材料からなる発光素子であってもよい。また、LED素子2の発光波長も任意であり、LED素子2は緑色光、黄色光、橙色光、赤色光等を発するものであってもよい。
また、前記実施形態のガラス封止部6は耐候性に優れているものの、装置の使用条件等によって結露が生じた場合には、ガラス封止部6が変質するおそれがある。これに対しては、結露が生じない装置構成とすることが望ましいが、ガラス封止部6の表面にシリコン樹脂コートなどを施すことで、高温状態での結露によるガラスの変質を防止することもできる。さらに、ガラス封止部6の表面に施すコーティング材としては、耐湿だけでなく、耐酸、耐アルカリ性を有するものとして、例えばSiO系、Al系等のような無機材料が好ましい。
さらに、前記実施形態においては、上金型92と下金型91により搭載基板3及びガラス封止部6に圧力を加えるものを示したが、下金型91を固定部材として上金型92のみによりガラスの封止加工を行うことも可能である。
また、ガラス封止部6に、MQW層23から発せられる青色光により励起されると、黄色領域にピーク波長を有する黄色光を発する蛍光体を含有させてもよい。蛍光体としては、YAG(Yttrium Aluminum Garnet)蛍光体、珪酸塩蛍光体や、YAGと珪酸塩蛍光体を所定の割合で混合したもの等を用いることができる。この場合、LED素子2から発せられた青色光の一部はガラス封止部6内の蛍光体により黄色光に変換され、他部は波長変換されることなくガラス封止部6から外部へ放射される。これにより、ガラス封止部6から放射される光は、黄色領域と青色領域とにピーク波長を有することとなり、この結果、装置外部へは白色光が放射される。また、紫外光を発するLED素子と、青色蛍光体、緑色蛍光体、赤色蛍光体の組合せにより白色光を得るようにしてもよい。
さらに、ガラス封止部6に、拡散粒子を含有させてもよい。拡散粒子としては、例えばジルコニア粒子、アルミナ粒子、シリカ粒子等を用いることができる。拡散粒子の材質は任意であるが、光の透過性の観点からは白色の材質が好ましく、ガラス加工時の安定性の観点からは融点が加工時の温度より高いことが好ましい。
また、前記実施形態のガラス封止部6について、B−SiO−LiO−NaO−ZnO−Nb系のガラスを用いることもできるし、当該ガラスのZnO組成の一部をBiとし、ガラスの屈折率をさらに高くしてもよい。ガラスの屈折率は、1.8であることが好ましい。そして、屈折率が1.8のガラスを用いる場合、基板の屈折率(nd)が1.8以上である発光素子を用いることが、発光素子からの光の取り出し効率を向上させて発光効率の向上を図ることができ好ましい。基板の屈折率が1.8以上である発光素子としては、例えば、Ga基板、GaN基板、SiC基板等の上にGaN系半導体が形成された発光素子がある。また、セットされるガラス材は、バルク状のものに限らず、粉体を固めたもの等であってもよい。ガラス材は、加熱されて高粘度状態となってしまえば、加工前の状態による差異は見られなくなる。
また、前記実施形態においては、搭載基板としての搭載基板3がアルミナ(Al)からなるものを示したが、アルミナ以外のセラミックから構成するようにしてもよい。ここで、アルミナより熱伝導性に優れる高熱伝導性材料からなるセラミック基板として、例えば、BeO(熱膨張率α:7.6×10−6/℃、熱伝導率:250W/(m・k))を用いても良い。このBeOからなる基板においても封止前ガラスにより良好な封止性を得ることができる。
さらに、他の高熱伝導性基板として、例えばW−Cu基板を用いても良い。W−Cu基板としては、W90−Cu10基板(熱膨張率α:6.5×10−6/℃、熱伝導率:180W/(m・k))、W85−Cu15基板(熱膨張率α:7.2×10−6/℃、熱伝導率:190W/(m・k))を用いることにより、ガラス封止部との良好な接合強度を確保しながら高い熱伝導性を付与することができ、LEDの大光量化、高出力化に余裕をもって対応することが可能になる。
また、前記実施形態においては、発光素子としてLED素子を用いた発光装置を説明したが、発光素子はLED素子に限定されるものではない。さらに、下金型91は必ずしも必要ではなく、金型を上金型92のみとしてもよいし、その他、具体的な細部構造等についても適宜に変更可能であることは勿論である。
1…発光装置、2…LED素子、3…搭載基板、3a…ビアホール、4…回路パターン、4a…W層、4b…Ni層、4c…Au層、4d…Ag層、5…中空部、6…ガラス封止部、6a…上面、6b…側面、11…封止前ガラス、11a…凹部、12…中間体、20…成長基板、21…バッファ層、22…n型層、23…MQW層、24…p型層、25…p側電極、26…p側パッド電極、27…n側電極、27a…Al層、27b…Ni層、27c…Au層、28…Auバンプ、31a、31b、31c…気体流出孔、41…表面パターン、42…裏面パターン、43…ビアパターン、44…外部接続端子、91…下金型、92…上金型、93、94、95…抑制壁部材、92a…平坦面、92c…気体流出孔、93a…気体流出孔

Claims (7)

  1. 搭載基板の搭載面における搭載領域に複数の発光素子を搭載する搭載工程と、
    金型を前記搭載基板の前記搭載面と対向して配置し、前記搭載基板と前記金型の間に少なくとも前記搭載領域が覆われるようにガラス材を配置するとともに、前記複数の発光素子を搭載した前記搭載領域の外側に前記ガラス材の流出を抑制する枠状の抑制壁部材を配置するプレス準備工程と、
    加熱により軟化したガラス材を前記金型によりプレスして、前記各発光素子を前記ガラス材により一括して封止するプレス工程と、を含み、
    前記抑制壁部材は、前記搭載基板又は前記金型のいずれかに、前記抑制壁部材の内側に溜まる気体を外部へ案内させる気体流出孔を設ける発光素子の製造方法。
  2. 前記プレス工程にて軟化した前記ガラス材が硬化した後、前記ガラス材及び前記搭載基板を分割する分割工程を含む請求項に記載の発光装置の製造方法。
  3. 前記気体流出孔は、前記搭載基板に形成され、前記分割工程にて、前記気体流出孔の上を通るように前記搭載基板を分割する請求項に記載の発光素子の製造方法。
  4. 前記気体流出孔は、前記搭載基板の前記搭載領域の外側に設けられる請求項又はに記載の発光素子の製造方法。
  5. 前記抑制壁部材は、前記プレス工程にて、プレスされた後の前記ガラス材の厚みより低くなるよう設けられる請求項1からのいずれかに記載の発光素子の製造方法。
  6. 前記抑制壁部材は、前記搭載領域の外周の全部に配置される請求項1からのいずれかに記載の発光素子の製造方法。
  7. 前記抑制壁部材は、前記搭載領域の外周の一部に配置される請求項1からのいずれかに記載の発光素子の製造方法。
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