JP5362246B2 - 潤滑オイルのバリア剤組成物、それを製造する方法およびその用途 - Google Patents
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Description
潤滑オイルは、一般的に粘度が高く、ホコリ等を集積しやすい。したがって、所定の箇所以外への潤滑オイルの滲み出しは、機械の故障の原因にもなっている。
また、潤滑オイルの滲み出しにより、摺動面における潤滑オイルの保持時間が低下するために、精密機械の摺動部品の摺動面に対して、潤滑オイルを再施与する必要性が増す。
しかし、近年、炭素数が8のパーフルオロ基を有するパーフルオロオクタン酸(PFOA)の人体への蓄積性が注目されており、2003年3月に米国環境保護庁(USEPA)は、野生動物や人の血液を含め、種々の環境から検出されるパーフロオロオクタン酸(PFOA)の安全性に関する予備リスク調査報告書を公開した。さらに、2006年1月には、PFOAとその類縁物質、およびこれらの前駆体物質の環境中への排出削減と製品中の含有量削減計画への参加をフッ素樹脂メ−カ−等に提唱している。
しかし、ポリフルオロアルキル基の炭素数を単に6以下としても、バリア剤として十分な性能を発揮しない。
また、バリア剤組成物において溶媒として水系媒体を用いる場合、バリア剤組成物を塗布後高温での乾燥処理が必要であり、バリア剤の乾燥性にも問題が有る。
すなわち、本発明は以下の潤滑オイルのバリア剤組成物を提供する。
本発明の潤滑オイルのバリア剤組成物は、下記式(a)で表される化合物から導かれる重合単位(A)を90質量%以上と、ヒドロキシル基含有不飽和化合物から導かれる重合単位(B)を10質量%以下とを含有し、かつ重量平均分子量が50万以上である重合体(1)と、フッ素系溶剤(2)とを含む潤滑オイルのバリア剤組成物:
CH2=C(R1)−COO−Q1−Rf (a)
式(a)中、
Q1:単結合または2価の連結基、
R1:水素原子またはメチル基、
Rf:炭素数1〜6のポリフルオロアルキル基またはポリフルオロエーテル基である。
前記式(a)における前記ポリフルオロアルキル基が、パーフルオロアルキル基であるのが好ましい。
前記ヒドロキシル基含有不飽和化合物が、下記式(b)で表されるのが好ましい。
CH2=C(R1)−COO−Q2−OH (b)
式中、R1:前記式(a)におけるR1と同じ、Q2:2価の連結基である。
本発明の潤滑オイルのバリア剤組成物は、水系媒体を実質的に含まないのが好ましい。
前記フッ素系溶剤(2)が、ハイドロフルオロエーテルまたはハイドロフルオロカーボンであるのが好ましい。
前記重合体(1)の濃度が、0.01〜20質量%であるのが好ましい。
すなわち、本発明の潤滑オイルのバリア剤組成物の製造方法は、前記式(a)で表される化合物90質量%以上と、前記ヒドロキシル基含有不飽和化合物を10質量%以下とを、乳化剤の存在下水系媒体中で乳化重合させることによって前記重合体(1)を合成し、前記乳化重合後反応系内から前記乳化剤および/または前記水系媒体を除去をし、前記除去後に得られた重合体(1)をフッ素系溶剤(2)に溶解および/または分散させることを特徴とする本発明の潤滑オイルのバリア剤組成物を製造する方法である。
すなわち、本発明の摺動部品または摺動部品に近接する部品の表面をバリア処理する方法は、本発明の潤滑オイルのバリア剤組成物、または本発明の潤滑オイルのバリア剤組成物を製造する方法によって製造された潤滑オイルのバリア剤組成物を、摺動部品または摺動部品に近接する部品の表面に塗付し、前記潤滑オイルのバリア剤組成物を用いた膜を形成する工程を含む、摺動部品または摺動部品に近接する部品の表面をバリア処理する方法である。
また、本発明は、本発明の摺動部品または摺動部品に近接する部品の表面をバリア処理する方法によって表面がバリア処理された、摺動部品または摺動部品に近接する部品を提供する。
したがって、例えば、時計、モーターおよび一眼レフカメラのレンズ等の摺動部品および摺動部品に近接する部品、ならびにその周辺部分を含む近接部位に本発明の潤滑オイルのバリア剤を塗付し、本発明の潤滑オイルのバリア剤組成物を用いた膜を形成することにより、該摺動面からの潤滑オイルの滲み出しを効果的に防止できる。
また、本発明の潤滑オイルのバリア剤組成物は、被処理面の乾燥性に優れる。
また、本発明の潤滑オイルのバリア剤組成物は、溶解性、形成された被膜の堅牢性、形成された被膜の均一性にも優れた効果を発揮し、これらの効果を、金属、プラスチックどちらの被処理面に対しても発揮することができる。
CH2=C(R1)−COO−Q1−Rf (a)
式(a)中、Q1:単結合または2価の連結基、R1:水素原子またはメチル基、Rf:炭素数1〜6のポリフルオロアルキル基またはポリフルオロエーテル基である。
本発明のバリア剤に含まれる重合体(1)は、式(a)で表される炭素数が6以下のポリフルオロアルキル基を含む化合物から導かれる重合単位(A)と、ヒドロキシル基を含有する不飽和化合物から導かれる重合単位(B)とを含有し、かつ重量平均分子量が50万以上である。
CH2=C(R1)−COO−Q1−Rf (a)
ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
Q1:単結合または2価の連結基
R1:水素原子またはメチル基
Rf:炭素数1〜6のポリフルオロアルキル基またはポリフルオロエーテル基。
式(a)において、R1は水素原子またはメチル基である。バリア性能が高くなりやすいことから、メチル基が好ましい。
ポリフルオロアルキル基とは、アルキル基の水素原子の2個ないし全部がフッ素原子に置換された部分フルオロ置換またはパーフルオロ置換アルキル基を意味する。上記Rf基で示されるポリフルオロアルキル基は、直鎖構造または分岐構造のいずれであってもよい。直鎖構造としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基が挙げられる。分岐構造としては、例えば、イソプロピル基、s−ブチル基、t−ブチル基、3−メチルブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、イソヘキシル基などが挙げられる。
また、ポリフルオロエーテル基とは、上記ポリフルオロアルキル基中の1箇所以上の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された基を意味する。
また、Rf基としては、バリア性能により優れるという観点から、ポリフルオロアルキル基が好ましい。さらに、Rf基は、実質的に全フッ素置換されたパーフルオロアルキル基(RF基)が好ましく、直鎖のRF基であることがより好ましい。
Rfは、バリア性能により優れるという観点から、−C6F13、−C4F9であるのが好ましい。
−Y−Z− (α)
ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
Y:直鎖状もしくは分岐状の2価のアルキレン基、6員環芳香族基、4〜6員環の飽和もしくは不飽和の脂肪族基、5〜6員環の複素環基、またはこれらの縮合した環基。
Z:−O−、−S−、−CO−、−COO−、−COS−、−N(R)−、−SO2−、−PO2−、−N(R)−COO−、−N(R)−CO−、−N(R)−SO2−、−N(R)−PO2−。
R:水素原子、炭素数1〜3のアルキル基。
−Y1−Z1− (α’)
ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
Y1:直鎖状もしくは分岐状の2価のアルキレン基、または6員環芳香族基。
Z1:−N(R)−、−SO2−、−N(R)−SO2−。
R:水素原子、炭素数1〜3のアルキル基。
CH2=C(R1)−COO−(CH2)p−Rf (a1)
式(a1)中、p:0〜6の整数であり、R1およびRf:式(a)における定義と同じである。
CH2=CH−COO−(CH2)2−C6F13、
CH2=C(CH3)−COO−(CH2)2−C6F13、
CH2=CH−COO−(CH2)2−C4F9、
CH2=C(CH3)−COO−(CH2)2−C4F9
などである。
式(a)で表される化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
重合体(1)中の重合単位(B)は、ヒドロキシル基含有不飽和化合物から導かれる。
ヒドロキシル基含有不飽和化合物は、化合物(a)と共重合可能な不飽和結合とヒドロキシル基とを有する化合物であれば特に制限されない。この化合物は、バリア性能により優れるという観点から、下記式(b)で表される化合物であることが好ましい。
CH2=C(R1)−COO−Q2−OH (b)
式中、R1:式(a)におけるR1の定義と同じであり、Q2:2価の連結基である。
Q2は、2価の連結基であれば適宜選択可能であり、前記式(a)におけるQ1と同様のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
CH2=C(R1)−COO−Q3−OH (b1)
式中、R1は前記と同じであり、Q3は、アルキレン基、フェニレン基、シクロヘキシレン基、−(CH2CH2O)n−、−(CH2CH2CH2O)n−、下記式(β)で表される基、またはこれらの基の組合せである。(ここでのnは1〜30の整数)。これらの基は、たとえば水酸基、アリール基等の置換基を更に有していても良い。
−Y2−Z2− (β)
ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
Y2:アルキレン基、フェニレン基、またはシクロヘキシレン基。
Z2:−COO−、または−N(R)−CO−。
R:水素原子、炭素数1〜3のアルキル基。
CH2=CHCOOCH2CH2OH
CH2=CHCOOCH2CH2CH2CH2OH
CH2=C(CH3)COOCH2CH2OH
CH2=C(CH3)COOCH2CH2CH2CH2OH
CH2=C(CH3)COO(CH2CH2O)nH
CH2=CHCOO(CH2CH2O)nH
CH2=C(CH3)COO(CH2CH2CH2O)nH
CH2=CHCOO(CH2CH2CH2O)nH
ヒドロキシル基含有不飽和化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
化合物(b)から導かれる重合単位(B1)において、R1、Q2は、式(b)における、R1、Q2と同義である。
重合体(1)中の重合単位(A)の含有量は、90質量%以上であり、好ましくは95質量%以上である。重合単位(A)の含有量が上記範囲内であると、重合体(1)のバリア性能が良好である。なお、本発明のバリア剤に含まれる重合体(1)において、各重合単位の含有量は、実質的に、式(a)で表される化合物およびヒドロキシル基含有不飽和化合物の重合仕込み量とみなすことができる。
重合体(1)中の重合単位(B)の含有量は、10質量%以下であり、5質量%以下であることが好ましい。また、重合体(1)中の重合単位(B)の含有量は、0.1質量%以上含まれていることが好ましい。重合単位(B)の含有量が上記範囲内である場合、重合体(1)のバリア性能が良好となる。
CH2=CH(R1)−COO−R3
式中、R1:水素原子またはメチル基であり、R3:−CH3−CH2CH2N(CH3)2、−(CH2)mH(m=2〜20)、−CH2CH(CH3)2、−CH2−C(CH3)2−OCO−Ph、−CH2Ph、−CH2CH2OPh、−CH2N(CH3)3Cl、−(CH2CH2O)mCH3(m=2〜20)、−(CH2)2−NCO、
CH2=CH(R1)−CONH−R4
式中、R1:水素原子またはメチル基であり、R4:−CmH2m+1(m=2〜20)、−Hである。
また、重合性化合物(c3)としては、以下のようなエポキシ基を有する不飽和エステルも挙げられる。
CH2=C(R1)−COO−Q1−Rf (d)
式(d)中、Q1:単結合または2価の連結基、R1:水素原子またはメチル基、Rf:炭素数7以上のポリフルオロアルキル基またはポリフルオロエーテル基である。
Q1、R1は式(a)と同義である。Rfは炭素数が7以上であること以外は式(a)と同義である。
重合体(1)の分子量が小さいと、十分にバリア性能を発揮することができない。そのため、本発明に係る重合体(1)は、上記のような構造とともに、バリア性能を十分に発揮するための高分子量を必要とする。具体的には、重合体(1)の分子量は、重量平均分子量(Mw)で、50万以上であり、100万以上の分子量を持つのが好ましい。また、分子量があまりにも大きすぎると溶媒への溶解性、重合物の取扱いが困難になるため、200万以下が好ましく、150万以下がより好ましい。重合体(1)の分子量としては、バリア性能により優れ、フッ素系溶剤(2)への溶解性、取扱に優れるという観点から、100万〜150万が特に好ましい。
ここで重量平均分子量とはGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)法で測定される値であり、カラムの充填剤にスチレンジビニルベンゼン共重合体、移動層にAK-225を使用し、標準物質として使用するポリメチルメタクリレートの分子量に換算した値である。
重合体(1)は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
乳化重合に使用される水系媒体は特に制限されない。例えば、水;ケトン類、エステル類、グリコール類、グリコールエーテル類、アルコールのような水溶性有機溶剤;水と水溶性有機溶剤との混合溶剤が挙げられる。
このため、本発明の潤滑オイルのバリア剤組成物は、重合体(1)のフッ素系溶剤(2)への溶解性に優れ、バリア性能により優れるという観点から、乳化剤を実質的に含まないのが好ましい。
本発明のバリア剤において、乳化剤を実質的に含まないとは、本発明のバリア剤組成物中、乳化剤の量が、1質量%以下であることをいう。本発明のバリア剤組成物中、乳化剤の量が1質量%以下であるのが好ましい。
本発明のバリア剤において、水系媒体を実質的に含まないとは、本発明のバリア剤組成物中、水系媒体の量が、1質量%以下であることをいう。本発明のバリア剤組成物中、水系媒体の量が1質量%以下であるのが好ましい。
p−キシレンヘキサフルオリド(以下、p−XHFと記す。)
CF3CH2CF2CH3
CF3CH2CF2H
C6F13OCH3
C6F13OC2H5
C3F7OCH3
C3F7OC2H5
C6F13H
CF2HCF2CH2OCF2CF2H
CF3CFHCFHCF2CH3
CF3(OCF2CF2)n(OCF2)mOCF2H
C8F17OCH3
C7F15OCH3
C4F9OCH3
C4F9OC2H5
C4F9CH2CH3
CF3CH2OCF2CF2CF2H
(上記例示中、m、nはそれぞれ独立に1〜20を表す。)
フッ素系溶剤(2)は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明のバリア剤においては、溶解性により優れるという観点から、溶剤としてフッ素系溶剤(2)のみを用いることが好ましい。
フッ素系溶剤(2)以外の有機溶剤としては、例えば、メタノール、イソプロパノールのようなアルコール類;イソヘキサンのような炭化水素系溶剤が挙げられる。
フッ素系溶剤(2)をフッ素系溶剤(2)以外の溶剤と混合して混合溶剤として使用する場合、混合溶剤中のフッ素系溶剤(2)の割合が、溶解性により優れるという観点から、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましい。
本発明のバリア剤は、重合体(1)がフッ素系溶剤(2)に溶解および/または分散した液状組成物であるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
本発明のバリア剤組成物は目的や用途に応じて希釈して使用することができる。
本発明のバリア剤組成物はその製造について特に制限されない。本発明のバリア剤組成物の製造方法について好適なものを次に説明する。
重合工程において単量体として使用される、式(a)で表される化合物およびヒドロキシル基含有不飽和化合物は上記と同義である。
乳化重合に使用される水系媒体は特に制限されない。例えば、水;ケトン類、エステル類、グリコール類、グリコールエーテル類、アルコールのような水溶性有機溶剤;水と水溶性有機溶剤との混合溶剤が挙げられる。
また、バリア剤組成物が水系媒体を含む場合バリア剤組成物を高温で乾燥させる必要があり乾燥性に劣る。
このため本発明の潤滑オイルのバリア剤組成物の製造方法は、重合体(1)のフッ素系溶剤(2)への溶解性、バリア性能、乾燥性に優れるという観点から、重合工程後反応系内から乳化剤および/または水系媒体を除去する除去工程を有する。
乳化重合後反応系内から乳化剤および/または水系媒体が除去され、得られた重合体(1)を次の混合工程に使用する。
フッ素系溶剤(2)は上記と同義である。
混合工程において、重合体(1)をフッ素系溶剤(2)に溶解および/または分散させる方法は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
本発明の摺動部品または摺動部品に近接する部品の表面をバリア処理する方法は、本発明の潤滑オイルのバリア剤組成物、または本発明の潤滑オイルのバリア剤組成物を製造する方法によって製造された潤滑オイルのバリア剤組成物を、摺動部品または摺動部品に近接する部品の表面に塗付し、前記潤滑オイルのバリア剤組成物を用いた膜を形成する工程を含む方法である。
摺動部品または摺動部品に近接する部品は、潤滑オイルが適用されるものであれば特に制限されない。被処理部分の材質としては、例えば、プラスチック、金属が挙げられる。被処理部分を有するものとしては、例えば、時計、モーターおよび一眼レフカメラのレンズ等の精密機械が挙げられる。
潤滑オイルは例えば精密機器の摺動を目的として使用されるものであれば特に制限されない。例えば、鉱油、セバシン酸ジオクチルが挙げられる。
バリア剤組成物を塗布する箇所は特に制限されない。例えば、被処理部分の表面に直接塗布することができる。
また、本発明の摺動部品または摺動部品に近接する部品の表面をバリア処理する方法によれば、バリア性能に優れる摺動部品または摺動部品に近接する部品を得ることができる。
2−パーフルオロヘキシルエチルメタクリレート(以下、C6FMAと記す。)189.5gと、ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、HEMAと記す。)0.95gと、アセトン47.6gと、ノニオンK−220(日本油脂株式会社製)の20%水溶液133.3gと、イオン交換水226.7gとを、1Lのオートクレーブに仕込み撹拌を行い、50℃で1時間あらかじめ乳化を行った。その後、40℃以下に冷却し、開始剤V−50(和光純薬工業株式会社製)1.90gを加え、反応器内を窒素で置換した後、60℃で18時間ラジカル重合を行った。反応後、ビーカーにイソプロパノール(IPA)600mlをいれ、そこに反応液を滴下して重合物を析出させた。析出した重合物を、イオン交換水600mlで3回、IPA600mlで1回洗浄し、減圧下乾燥を行い、白色の固体として重合物を得た。得られた重合物をm-XHFに溶解させ、1H-NMRによりノニオンK−220の残存量を測定したところ、0.2%であった。
製造例2
C6FMA9.95gと、HEMA0.05gと、アセトン2.5gと、ノニオンK−220の20%水溶液7.0gと、イオン交換水17.5gとを、密閉容器に仕込み撹拌を行い、50℃で1時間あらかじめ乳化を行った。その後、40℃以下に冷却し、開始剤V−50 0.2gを加え、反応器内を窒素で置換した後、60℃で18時間ラジカル重合を行った。反応後、ビーカーにIPA30mlをいれ、そこに反応液を滴下して重合物を析出させた。析出した重合物を、イオン交換水30mlで3回、IPA30mlで1回洗浄し、減圧下乾燥を行い、白色の固体として重合物を得た。製造例1と同様にノニオンK−220の残存量を測定したところ、0.2%であった。
製造例3
開始剤V−50を0.15gとした以外は製造例2と同様に重合を行い、白色の固体として重合物を得た。製造例1と同様にノニオンK−220の残存量を測定したところ、0.2%であった。
単量体を、C6FMA 190.5gのみとした以外は製造例1と同様に重合を行い、白色の固体として重合物を得た。
C6FMA 29.85gと、HEMA 0.15gと、m−XHF29.9gと開始剤V−601(和光純薬工業株式会社製)0.1gとを密閉容器に仕込み、70℃で18時間重合反応を行った。反応後、メタノールにて再沈精製を行い、白色固体として重合物を得た。
2−パーフルオロアルキル(アルキル基の炭素数が6〜14の混合物であり、平均値は9である。)エチルメタクリレート(以下、CmFMAと記す。)22.5gと、m−XHF52.5gと開始剤AIBN18.8mgとを密閉容器に仕込み、70℃で15時間重合反応を行った。反応後m−XHFを加え17%の溶液として重合物を得た。
なお、比較製造例3で使用されたアルキル基の平均炭素数が9の2−パーフルオロアルキルエチルメタクリレート中、アルキル基の炭素数が6の2−パーフルオロアルキルエチルメタクリレートの含有量(GC分析による。)は、2%であった。
比較製造例4
分子量調整剤としてドデシルメルカプタン0.05gを加え、開始剤V−50を0.1gとした以外は製造例2と同様に重合を行い、白色の固体として重合物を得た。製造例1と同様にノニオンK−220の残存量を測定したところ、0.1%であった。
重合組成物を、重合体の濃度が約1%になるように、アサヒクリンAK−225(旭硝子(株)製)を用いて希釈し、測定サンプルとした。昭和電工株式会社製Shodex GPC−104を用いて、以下の条件でGPCを測定した。各重合物の単量体比率と分子量を表1に示す。
<GPC測定条件>
Separtion Column:LF−604(充填剤:スチレンジビニルベンゼン共重合体,昭和電工株式会社製)×2
Default Column:KF600RH(充填剤:なし,昭和電工株式会社製)×2
Clean Liquid:AK−225
Flow Rate:0.2ml/min
標準物質:ポリメチルメタクリレート
製造例1で得られた重合物をHFE−7200(3M社製)で希釈し、0.5%濃度のバリア剤組成物を調製した。このバリア剤組成物について耐熱試験前後のオイルの接触角を測定することでバリア性能を評価した。
実施例2〜3
製造例2〜3で得られた重合物を用いて実施例1と同様にバリア剤組成物を調製し、バリア性能を評価した。
比較例1〜4
比較製造例1〜4で得られた重合物を用いて実施例1と同様にバリア剤組成物を調製し、バリア性能を評価した。
製造例1〜3で得られた重合物を用いてHFE−7200で希釈し、0.1%濃度のバリア剤組成物を調整し、実施例1と同様にバリア性能を評価した。
比較例5〜8
比較製造例1〜4で得られた重合物を用いて実施例4〜6と同様にバリア剤組成物を調製し、バリア性能を評価した。
ポリカーボネート(PC)、ポリアセタール(POM)、黄銅製のテストピースをバリア剤組成物の各々に、常温で1分間浸漬後、取出して室温(25℃)で乾燥させて、バリア剤組成物の被膜を処理した。そのテストピース上の5箇所にセバシン酸ジオクチルを滴下して、それぞれの接触角を測定した。その後、60℃下で24時間そのまま静置させ、再度接触角の測定を行った。5箇所それぞれの接触角の平均値をとり、熱処理前後の結果を表2および表3に示す。接触角の測定には、自動接触角計OCA−20[dataphysics社製]を用いた。
Claims (9)
- 下記式(a)で表される化合物から導かれる重合単位(A)を90質量%以上と、ヒドロキシル基含有不飽和化合物から導かれる重合単位(B)を0.1質量%以上10質量%以下とを含有し、かつ重量平均分子量が50万以上である重合体(1)と、フッ素系溶剤(2)とを含む潤滑オイルのバリア剤組成物:
CH2=C(R1)−COO−Q1−Rf (a)
式(a)中、
Q1:単結合または2価の連結基、
R1:水素原子またはメチル基、
Rf:炭素数1〜6のポリフルオロアルキル基またはポリフルオロエーテル基。 - 前記式(a)における前記ポリフルオロアルキル基が、パーフルオロアルキル基である請求項1に記載の潤滑オイルのバリア剤組成物。
- 前記ヒドロキシル基含有不飽和化合物が、下記式(b)で表される請求項1または2に記載の潤滑オイルのバリア剤組成物:
CH2=C(R1)−COO−Q2−OH (b)
式中、R1:前記式(a)におけるR1と同じ、Q2:2価の連結基。 - 前記潤滑オイルのバリア剤組成物中、水系媒体の量が、1質量%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の潤滑オイルのバリア剤組成物。
- 前記フッ素系溶剤(2)が、ハイドロフルオロエーテルまたはハイドロフルオロカーボンである請求項1〜4のいずれかに記載の潤滑オイルのバリア剤組成物。
- 前記重合体(1)の濃度が、0.01〜20質量%である請求項1〜5のいずれかに記載の潤滑オイルのバリア剤組成物。
- 前記式(a)で表される化合物90質量%以上と、前記ヒドロキシル基含有不飽和化合物を10質量%以下とを、乳化剤の存在下水系媒体中で乳化重合させることによって前記重合体(1)を合成し、前記乳化重合後反応系内から前記乳化剤および/または前記水系媒体を除去をし、前記除去後に得られた重合体(1)をフッ素系溶剤(2)に溶解および/または分散させることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の潤滑オイルのバリア剤組成物を製造する方法。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の潤滑オイルのバリア剤組成物、または請求項7に記載の潤滑オイルのバリア剤組成物を製造する方法によって製造された潤滑オイルのバリア剤組成物を、摺動部品または摺動部品に近接する部品の表面に塗付し、前記潤滑オイルのバリア剤組成物を用いた膜を形成する工程を含む、摺動部品または摺動部品に近接する部品の表面をバリア処理する方法。
- 請求項8に記載の方法によって表面がバリア処理された、摺動部品または摺動部品に近接する部品。
Priority Applications (1)
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