JP5362246B2 - 潤滑オイルのバリア剤組成物、それを製造する方法およびその用途 - Google Patents

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Description

本発明は、潤滑オイルのバリア作用を有する潤滑オイルのバリア剤組成物、潤滑オイルのバリア剤組成物を製造する方法、潤滑オイルのバリア剤組成物を用いて摺動部品または摺動部品に近接する部品の表面をオイルバリア処理する方法、および表面がオイルバリア処理された摺動部品または摺動部品に近接する部品に関する。より具体的には、時計、モーター、および一眼レフカメラのレンズ等の精密機械の摺動部分に使用されている潤滑オイルの滲み出しを防止するために使用される潤滑オイルのバリア剤組成物、潤滑オイルのバリア剤組成物を製造する方法、潤滑オイルのバリア剤組成物を用いて摺動部品および摺動部品に近接する部品の表面をバリア処理する方法、および表面がオイルバリア処理された摺動部品または摺動部品に近接する部品に関する。なお、以下「潤滑オイルのバリア剤組成物」は、単に「バリア剤」と記すことがある。
時計、モーターおよび一眼レフカメラのレンズ等の精密機械の摺動部品の摺動面には、摩擦抵抗を低減させるために、鉱油等からなる潤滑オイルが用いられている。このような潤滑オイルは、摺動面の磨耗防止のために不可欠なものではあるが、通常の状態では液状であるため、摺動面から周辺部へと滲み出す可能性がある。
上記のような精密機械では、通常狭い領域内に複数の部品が配置されていることから、潤滑オイルの滲み出しは、周辺部への潤滑オイルの付着につながる可能性もある。
潤滑オイルは、一般的に粘度が高く、ホコリ等を集積しやすい。したがって、所定の箇所以外への潤滑オイルの滲み出しは、機械の故障の原因にもなっている。
また、潤滑オイルの滲み出しにより、摺動面における潤滑オイルの保持時間が低下するために、精密機械の摺動部品の摺動面に対して、潤滑オイルを再施与する必要性が増す。
そのため、このような精密機械の摺動部品または摺動部品に近接する部品には、潤滑オイルの滲み出しを防止するために、バリア剤が使用されている。バリア剤は、近年の精密機械の集積化と部品の微細化に伴い益々その需要が増してきている。
バリア剤としては、含フッ素化合物などその被膜が撥油性を有する化合物を溶媒に溶解、または、分散させたもの等が知られている。バリア剤は、潤滑オイルの滲み出しの防止と、必要部分への長期保持のために、摺動部品、並びに摺動面の周辺部を含む近接部位に塗布し、乾燥して使用される。
撥油性を有する化合物としては、含フッ素ポリマー等が使用されてきた。これらの化合物は炭素数が8以上のパーフルオロ基を有するものが一般的である。
しかし、近年、炭素数が8のパーフルオロ基を有するパーフルオロオクタン酸(PFOA)の人体への蓄積性が注目されており、2003年3月に米国環境保護庁(USEPA)は、野生動物や人の血液を含め、種々の環境から検出されるパーフロオロオクタン酸(PFOA)の安全性に関する予備リスク調査報告書を公開した。さらに、2006年1月には、PFOAとその類縁物質、およびこれらの前駆体物質の環境中への排出削減と製品中の含有量削減計画への参加をフッ素樹脂メ−カ−等に提唱している。
パーフルオロアルキル基の炭素数が6以下になると、生体および環境へのリスクが大きく低下する。しかしながら、重合体中のパーフルオロアルキル基に起因する、疎水性、疎油性などの性能は、炭素数が6以下であると著しく低下する。これは、炭素数が8以上のパーフルオロアルキル基が結晶性を持つが、炭素数が6以下であると結晶構造を形成しないために、十分な撥油性を発揮しなくなる。
これまでに、炭素数が8以上のポリフルオロアルキル基を含有する、潤滑オイルのバリア剤組成物が報告されている。(特許文献1、2)
しかし、ポリフルオロアルキル基の炭素数を単に6以下としても、バリア剤として十分な性能を発揮しない。
また、バリア剤組成物において溶媒として水系媒体を用いる場合、バリア剤組成物を塗布後高温での乾燥処理が必要であり、バリア剤の乾燥性にも問題が有る。
特開2006-169501号公報 再公表2004/033579
本発明は、以上の問題を鑑みて提案されたものであり、生体および環境への安全性と、従来の炭素数8以上のポリフルオロアルキル基含有の化合物を使用した場合と同等、またはそれ以上の性能とを併せ持ち、乾燥性に優れる潤滑オイルのバリア剤組成物を提供することを目的とするものである。
本発明者は上記の課題を解決するために鋭意検討した結果、炭素数1〜6のポリフルオロアルキル基またはポリフルオロエーテル基を有する特定の構造の化合物とヒドロキシル基含有不飽和化合物とを特定の量を用いて得られる重量平均分子量50万以上の重合体とフッ素系溶剤とを含む組成物が、安全性、バリア性能、乾燥性に優れる潤滑オイルのバリア剤組成物となることを見出した。
すなわち、本発明は以下の潤滑オイルのバリア剤組成物を提供する。
本発明の潤滑オイルのバリア剤組成物は、下記式(a)で表される化合物から導かれる重合単位(A)を90質量%以上と、ヒドロキシル基含有不飽和化合物から導かれる重合単位(B)を10質量%以下とを含有し、かつ重量平均分子量が50万以上である重合体(1)と、フッ素系溶剤(2)とを含む潤滑オイルのバリア剤組成物:
CH=C(R1)−COO−Q−R (a)
式(a)中、
1:単結合または2価の連結基、
1:水素原子またはメチル基、
f:炭素数1〜6のポリフルオロアルキル基またはポリフルオロエーテル基である。
前記式(a)における前記ポリフルオロアルキル基が、パーフルオロアルキル基であるのが好ましい。
前記ヒドロキシル基含有不飽和化合物が、下記式(b)で表されるのが好ましい。
CH=C(R1)−COO−Q−OH (b)
式中、R:前記式(a)におけるR1と同じ、Q:2価の連結基である。
本発明の潤滑オイルのバリア剤組成物は、水系媒体を実質的に含まないのが好ましい。
前記フッ素系溶剤(2)が、ハイドロフルオロエーテルまたはハイドロフルオロカーボンであるのが好ましい。
前記重合体(1)の濃度が、0.01〜20質量%であるのが好ましい。
また、本発明は以下の潤滑オイルのバリア剤組成物の製造方法を提供する。
すなわち、本発明の潤滑オイルのバリア剤組成物の製造方法は、前記式(a)で表される化合物90質量%以上と、前記ヒドロキシル基含有不飽和化合物を10質量%以下とを、乳化剤の存在下水系媒体中で乳化重合させることによって前記重合体(1)を合成し、前記乳化重合後反応系内から前記乳化剤および/または前記水系媒体を除去をし、前記除去後に得られた重合体(1)をフッ素系溶剤(2)に溶解および/または分散させることを特徴とする本発明の潤滑オイルのバリア剤組成物を製造する方法である。
また、本発明は以下の摺動部品または摺動部品に近接する部品の表面をバリア処理する方法を提供する。
すなわち、本発明の摺動部品または摺動部品に近接する部品の表面をバリア処理する方法は、本発明の潤滑オイルのバリア剤組成物、または本発明の潤滑オイルのバリア剤組成物を製造する方法によって製造された潤滑オイルのバリア剤組成物を、摺動部品または摺動部品に近接する部品の表面に塗付し、前記潤滑オイルのバリア剤組成物を用いた膜を形成する工程を含む、摺動部品または摺動部品に近接する部品の表面をバリア処理する方法である。
また、本発明は、本発明の摺動部品または摺動部品に近接する部品の表面をバリア処理する方法によって表面がバリア処理された、摺動部品または摺動部品に近接する部品を提供する。
本発明の潤滑オイルのバリア剤組成物は、重合体中の炭素数が8以上のポリフルオロアルキル基の含有量を抑えて、生体および環境への安全性を確保するだけではなく、ポリフルオロアルキル基の鎖長の減少によるバリア性能の低下を抑え、従来品と同程度またはそれ以上の性能を維持することを可能にした。
したがって、例えば、時計、モーターおよび一眼レフカメラのレンズ等の摺動部品および摺動部品に近接する部品、ならびにその周辺部分を含む近接部位に本発明の潤滑オイルのバリア剤を塗付し、本発明の潤滑オイルのバリア剤組成物を用いた膜を形成することにより、該摺動面からの潤滑オイルの滲み出しを効果的に防止できる。
また、本発明の潤滑オイルのバリア剤組成物は、被処理面の乾燥性に優れる。
また、本発明の潤滑オイルのバリア剤組成物は、溶解性、形成された被膜の堅牢性、形成された被膜の均一性にも優れた効果を発揮し、これらの効果を、金属、プラスチックどちらの被処理面に対しても発揮することができる。
本発明の潤滑オイルのバリア剤組成物は、下記式(a)で表される化合物から導かれる重合単位(A)を90質量%以上と、ヒドロキシル基含有不飽和化合物から導かれる重合単位(B)を10質量%以下とを含有し、かつ重量平均分子量が50万以上である重合体(1)と、フッ素系溶剤(2)とを含む潤滑オイルのバリア剤組成物である。
CH=C(R1)−COO−Q−R (a)
式(a)中、Q1:単結合または2価の連結基、R1:水素原子またはメチル基、Rf:炭素数1〜6のポリフルオロアルキル基またはポリフルオロエーテル基である。
重合体(1)について以下に説明する。
本発明のバリア剤に含まれる重合体(1)は、式(a)で表される炭素数が6以下のポリフルオロアルキル基を含む化合物から導かれる重合単位(A)と、ヒドロキシル基を含有する不飽和化合物から導かれる重合単位(B)とを含有し、かつ重量平均分子量が50万以上である。
CH=C(R1)−COO−Q−R (a)
ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
:単結合または2価の連結基
:水素原子またはメチル基
:炭素数1〜6のポリフルオロアルキル基またはポリフルオロエーテル基。
本明細書においては、式(a)で表される化合物を化合物(a)と記し、他の式で表される化合物も同様に記す。
式(a)で表される化合物について以下に説明する。
式(a)において、Rは水素原子またはメチル基である。バリア性能が高くなりやすいことから、メチル基が好ましい。
式(a)において、Rは炭素数1〜6のポリフルオロアルキル基またはポリフルオロエーテル基である。
ポリフルオロアルキル基とは、アルキル基の水素原子の2個ないし全部がフッ素原子に置換された部分フルオロ置換またはパーフルオロ置換アルキル基を意味する。上記R基で示されるポリフルオロアルキル基は、直鎖構造または分岐構造のいずれであってもよい。直鎖構造としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基が挙げられる。分岐構造としては、例えば、イソプロピル基、s−ブチル基、t−ブチル基、3−メチルブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、イソヘキシル基などが挙げられる。
また、ポリフルオロエーテル基とは、上記ポリフルオロアルキル基中の1箇所以上の炭素−炭素原子間にエーテル性酸素原子が挿入された基を意味する。
f基は直鎖構造または分岐構造のいずれであってもよいが、R基のパッキングを上げる観点からR基は直鎖構造が好ましい。同様の理由から、分岐構造である場合には、分岐部分がRf基の末端部分に存在する場合が好ましい。
また、Rf基としては、バリア性能により優れるという観点から、ポリフルオロアルキル基が好ましい。さらに、R基は、実質的に全フッ素置換されたパーフルオロアルキル基(R基)が好ましく、直鎖のR基であることがより好ましい。
fは、バリア性能により優れるという観点から、−C13、−C49であるのが好ましい。
式中のQは単結合または2価の連結基である。Qは単結合または2価の連結基であれば適宜選択可能であり、これらに限定されるものではない。
2価の連結基としては、直鎖状もしくは分岐状の2価のアルキレン基またはアルケニレン基、2価のオキシアルキレン基、6員環芳香族基、4〜6員環の飽和もしくは不飽和の脂肪族基、5〜6員環の複素環基、または下記式(α)で表される2価の連結基が挙げられる。これら2価の連結基は組み合わされていても良く、環基は縮合していても良い。
−Y−Z− (α)
ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
Y:直鎖状もしくは分岐状の2価のアルキレン基、6員環芳香族基、4〜6員環の飽和もしくは不飽和の脂肪族基、5〜6員環の複素環基、またはこれらの縮合した環基。
Z:−O−、−S−、−CO−、−COO−、−COS−、−N(R)−、−SO−、−PO−、−N(R)−COO−、−N(R)−CO−、−N(R)−SO−、−N(R)−PO−。
R:水素原子、炭素数1〜3のアルキル基。
2価の連結基は、置換基を有していてもよく、置換基の例としては、ハロゲン原子(F、Cl、Br、I)、シアノ基、アルコキシ基(メトキシ、エトキシ、ブトキシ、オクチルオキシ、メトキシエトキシなど)、アリ−ロキシ基(フェノキシなど)、アルキルチオ基(メチルチオ、エチルチオなど)、アシル基(アセチル、プロピオニル、ベンゾイルなど)、スルホニル基(メタンスルホニル、ベンゼンスルホニルなど)、アシルオキシ基(アセトキシ、ベンゾイルオキシなど)、スルホニルオキシ基(メタンスルホニルオキシ、トルエンスルホニルオキシなど)、ホスホニル基(ジエチルホスホニルなど)、アミド基(アセチルアミノ、ベンゾイルアミノなど)、カルバモイル基(N,N−ジメチルカルバモイル、N−フェニルカルバモイルなど)、アルキル基(メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、ブチル、2−カルボキシエチル、ベンジルなど)、アリ−ル基(フェニル、トルイルなど)、複素環基(ピリジル、イミダゾリル、フラニルなど)、アルケニル基(ビニル、1−プロペニルなど)、アルコキシアシルオキシ基(アセチルオキシ、ベンゾイルオキシなど)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル、エトキシカルボニルなど)、および重合性基(ビニル基、アクリロイル基、メタクロイル基、シリル基、桂皮酸残基など)などが挙げられる。
は単結合または2価の連結基であれば適宜選択可能であるが、中でも単結合、直鎖状もしくは分岐状の2価のアルキレン基、下記式(α’)で表される基、またはこれらの基の組合せが好ましい。
−Y−Z− (α’)
ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
:直鎖状もしくは分岐状の2価のアルキレン基、または6員環芳香族基。
:−N(R)−、−SO−、−N(R)−SO−。
R:水素原子、炭素数1〜3のアルキル基。
式(a)で表される化合物のうちでも好適なものとして、下記式(a1)で表される化合物が挙げられる。
CH2=C(R1)−COO−(CH2−R (a1)
式(a1)中、p:0〜6の整数であり、RおよびR:式(a)における定義と同じである。
上記のうちでも、Rが炭素数1〜6の直鎖のパーフルオロアルキル基(R)である構造の化合物が好適である。このような化合物は具体的には、
CH=CH−COO−(CH−C13、
CH=C(CH)−COO−(CH−C13
CH=CH−COO−(CH−C9、
CH=C(CH)−COO−(CH−C
などである。
式(a)で表される化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
ヒドロキシル基含有不飽和化合物について以下に説明する。
重合体(1)中の重合単位(B)は、ヒドロキシル基含有不飽和化合物から導かれる。
ヒドロキシル基含有不飽和化合物は、化合物(a)と共重合可能な不飽和結合とヒドロキシル基とを有する化合物であれば特に制限されない。この化合物は、バリア性能により優れるという観点から、下記式(b)で表される化合物であることが好ましい。
CH=C(R)−COO−Q−OH (b)
式中、R:式(a)におけるRの定義と同じであり、Q:2価の連結基である。
は、2価の連結基であれば適宜選択可能であり、前記式(a)におけるQと同様のものが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
上記のうちでも、下記式(b1)で表される化合物が好ましい。
CH=C(R)−COO−Q−OH (b1)
式中、Rは前記と同じであり、Qは、アルキレン基、フェニレン基、シクロヘキシレン基、−(CHCHO)n−、−(CHCHCHO)n−、下記式(β)で表される基、またはこれらの基の組合せである。(ここでのnは1〜30の整数)。これらの基は、たとえば水酸基、アリール基等の置換基を更に有していても良い。
−Y−Z− (β)
ただし、式中の記号は以下の意味を示す。
:アルキレン基、フェニレン基、またはシクロヘキシレン基。
:−COO−、または−N(R)−CO−。
R:水素原子、炭素数1〜3のアルキル基。
以下に化合物(b)の具体例を挙げるが、化合物(b)はこれらに限定されるものではない。
CH=CHCOOCHCHOH
CH=CHCOOCHCHCHCHOH
CH=C(CH)COOCHCHOH
CH=C(CH)COOCHCHCHCHOH
CH=C(CH)COO(CHCHO)
CH=CHCOO(CHCHO)
CH=C(CH)COO(CHCHCHO)
CH=CHCOO(CHCHCHO)
ヒドロキシル基含有不飽和化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明のバリア剤に含まれる重合体(1)は、重合単位(A)と重合単位(B)とを含有する重合体であり、重合単位(B)が化合物(b)から導かれるものであるのが好ましく、重合単位(A)が化合物(a1)から導かれかつ重合単位(B)が化合物(b1)から導かれるものであるのがより好ましい。
重合体(1)に含有される重合単位(A)および化合物(b)から導かれる重合単位(B1)は以下の式で表される。
Figure 0005362246
重合単位(A)において、Q1、R1、Rfは、式(a)におけるQ1、R1、Rfと同義である。
化合物(b)から導かれる重合単位(B1)において、R1、Qは、式(b)における、R1、Qと同義である。
重合体(1)中の重合単位(A)は、1種のみでもよく2種以上でもよい。
重合体(1)中の重合単位(A)の含有量は、90質量%以上であり、好ましくは95質量%以上である。重合単位(A)の含有量が上記範囲内であると、重合体(1)のバリア性能が良好である。なお、本発明のバリア剤に含まれる重合体(1)において、各重合単位の含有量は、実質的に、式(a)で表される化合物およびヒドロキシル基含有不飽和化合物の重合仕込み量とみなすことができる。
重合体(1)中の重合単位(B)は、1種のみでもよく2種以上でもよい。
重合体(1)中の重合単位(B)の含有量は、10質量%以下であり、5質量%以下であることが好ましい。また、重合体(1)中の重合単位(B)の含有量は、0.1質量%以上含まれていることが好ましい。重合単位(B)の含有量が上記範囲内である場合、重合体(1)のバリア性能が良好となる。
なお、重合単位(A)において、重合単位(A)として2種以上の重合単位が使用される場合、重合単位(A)の含有量は、使用される重合単位の合計である。重合単位(B)についても同様である。
本発明に係るバリア剤に含まれる重合体(1)は、重合単位(A)および重合単位(B)とともに、これら以外の化合物(c)から導かれる重合単位(C)を1種または2種以上含んでいても構わない。他の重合単位(C)は、上記重合単位(A)および重合単位(B)を形成する化合物と共重合しうる化合物から導かれる重合単位であれば特に限定されない。この化合物として、通常、重合性基を有する化合物(c)が挙げられ、具体的には、スチレン系化合物(c1)、上記重合単位(A)および(B)について例示した化合物以外の(メタ)アクリル酸系化合物(c2)、さらに他の重合性化合物(c3)が挙げられる。このような化合物(c)の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
上記(c1)としては、下記式で表わされるスチレン系化合物が挙げられる。
Figure 0005362246
式中、R:−H、CH、−Cl、−CHO、−COOH、−CHCl、−CHNH、−CHN(CH)、−CHN(CH)Cl、−CHNHCl、−CHCN、−CHCOOH、−CHN(CHCOOH)、−CHSH、−CHSONaまたは−CHOCOCHである。
上記(c2)としては、アクリル酸、メタクリル酸および下記式で表わされる(メタ)アクリレートが挙げられる。
CH=CH(R)−COO−R
式中、R:水素原子またはメチル基であり、R:−CH−CHCHN(CH)、−(CH)H(m=2〜20)、−CHCH(CH)、−CH−C(CH)−OCO−Ph、−CHPh、−CHCHOPh、−CHN(CHCl、−(CHCHO)CH(m=2〜20)、−(CH)−NCO、
Figure 0005362246
である。
上記(c2)としては、さらに、アクリル酸ジエステル等の(メタ)アクリル酸のポリエステルおよび下記式で表わされる化合物なども挙げられる。
CH=CH(R)−CONH−R
式中、R:水素原子またはメチル基であり、R:−C2m+1(m=2〜20)、−Hである。
さらに他の重合性化合物(c3)としては、上記(c1)および(c2)以外のビニル化合物、たとえば塩化ビニル(CH=CHCl)、アクリロニトリル(CH=CHCN)などが挙げられる。
また、重合性化合物(c3)としては、以下のようなエポキシ基を有する不飽和エステルも挙げられる。
Figure 0005362246
本発明のバリア剤に含まれる重合体(1)は、重合単位(C)として、上記のような化合物(c)の1種または2種以上から導かれる重合単位を含むことができる。重合体(1)中の重合単位(C)の含有量は、その種類によっても異なるが、重合単位(C)全量で、50質量%以下、好ましくは20質量%以下の量で含むことができる。
本発明のバリア剤において、重合体(1)は、安全性により優れるという観点から、重合単位として下記式(d)で表される化合物から導かれる重合単位(D)を実質的に含有しないのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
CH=C(R1)−COO−Q−R (d)
式(d)中、Q1:単結合または2価の連結基、R1:水素原子またはメチル基、Rf:炭素数7以上のポリフルオロアルキル基またはポリフルオロエーテル基である。
1、R1は式(a)と同義である。Rfは炭素数が7以上であること以外は式(a)と同義である。
重合体(1)の重量平均分子量は、50万以上である。重合体(1)の重量平均分子量がこの範囲の場合、バリア性能に優れる。
重合体(1)の分子量が小さいと、十分にバリア性能を発揮することができない。そのため、本発明に係る重合体(1)は、上記のような構造とともに、バリア性能を十分に発揮するための高分子量を必要とする。具体的には、重合体(1)の分子量は、重量平均分子量(Mw)で、50万以上であり、100万以上の分子量を持つのが好ましい。また、分子量があまりにも大きすぎると溶媒への溶解性、重合物の取扱いが困難になるため、200万以下が好ましく、150万以下がより好ましい。重合体(1)の分子量としては、バリア性能により優れ、フッ素系溶剤(2)への溶解性、取扱に優れるという観点から、100万〜150万が特に好ましい。
ここで重量平均分子量とはGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)法で測定される値であり、カラムの充填剤にスチレンジビニルベンゼン共重合体、移動層にAK-225を使用し、標準物質として使用するポリメチルメタクリレートの分子量に換算した値である。
本発明にかかるバリア剤において重合体(1)は、上記のような重合単位(A)および重合単位(B)、必要に応じて付加的に使用することができる重合単位(C)を含有し、重量平均分子量が50万以上である以外は、重合形態などについては特に制限されない。重合形態は、ランダム、ブロック、グラフトなどのいずれでもよく、特に制限されないが、通常、ランダム重合体が好ましい。
重合体(1)は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明のバリア剤に含まれる重合体(1)を得るには、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合などの各種の重合方法を採用し得る。特に、高分子量の重合体を得るためには水系媒体中での乳化重合による方法が好ましい。重合の開始源としては特に限定されないが、有機過酸化物、アゾ化合物、過硫酸塩等の通常の開始剤が利用できる。水系媒体中での乳化重合の場合はアゾ開始剤や過酸化物系の開始剤のうち水溶性のものを用いることが好ましい。
乳化重合の方法は特に限定されないが、例えば、水系媒体中に単量体としての化合物(a)、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、必要に応じて使用することができる化合物(c)を乳化剤(例えば、界面活性剤)の存在下、撹拌やホモミキサーなどを使用して乳化させ、その後重合を行う通常の方法を利用できる。使用される界面活性剤は特に限定されないが、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等の通常の乳化剤を使用できる。
乳化重合に使用される水系媒体は特に制限されない。例えば、水;ケトン類、エステル類、グリコール類、グリコールエーテル類、アルコールのような水溶性有機溶剤;水と水溶性有機溶剤との混合溶剤が挙げられる。
乳化重合で使用する乳化剤の中には、重合体(1)のフッ素系溶剤(2)への溶解性やバリア性能へ悪影響を与えるものもある。
このため、本発明の潤滑オイルのバリア剤組成物は、重合体(1)のフッ素系溶剤(2)への溶解性に優れ、バリア性能により優れるという観点から、乳化剤を実質的に含まないのが好ましい。
本発明のバリア剤において、乳化剤を実質的に含まないとは、本発明のバリア剤組成物中、乳化剤の量が、1質量%以下であることをいう。本発明のバリア剤組成物中、乳化剤の量が1質量%以下であるのが好ましい。
また、本発明の潤滑オイルのバリア剤組成物は、乾燥性により優れるという観点から、水系媒体を実質的に含まないのが好ましい。
本発明のバリア剤において、水系媒体を実質的に含まないとは、本発明のバリア剤組成物中、水系媒体の量が、1質量%以下であることをいう。本発明のバリア剤組成物中、水系媒体の量が1質量%以下であるのが好ましい。
乳化剤および/または水系媒体の除去方法としては、乳化剤が溶解する溶剤を使用して重合体(1)を再沈精製することが好ましいが、これに限定されるものではない。
本発明のバリア剤はフッ素系溶剤(2)を含む。フッ素系溶剤(2)は重合体(1)を溶解および/または分散させることができるものであれば特に限定されないが、環境問題を考慮すると、ハイドロフルオロカーボン(HFC)またはハイドロフルオロエーテル(HFE)などが好ましい。使用可能なフッ素系溶剤の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
m−キシレンヘキサフルオリド(以下、m−XHFと記す。)
p−キシレンヘキサフルオリド(以下、p−XHFと記す。)
CF3CH2CF2CH3
CF3CH2CF2
613OCH3
613OC25
37OCH3
37OC25
613
CF2HCF2CH2OCF2CF2
CF3CFHCFHCF2CH3
CF3(OCF2CF2)n(OCF2)OCF2
817OCH3
715OCH3
49OCH3
49OC25
49CH2CH3
CF3CH2OCF2CF2CF2
(上記例示中、m、nはそれぞれ独立に1〜20を表す。)
フッ素系溶剤(2)は、重合体(1)を溶解または分散させやすいという観点から、m−キシレンヘキサフルオリドが好ましい。
フッ素系溶剤(2)は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
本発明のバリア剤においては、溶解性により優れるという観点から、溶剤としてフッ素系溶剤(2)のみを用いることが好ましい。
本発明のバリア剤において、フッ素系溶剤(2)以外の有機溶剤を使用するこができる。
フッ素系溶剤(2)以外の有機溶剤としては、例えば、メタノール、イソプロパノールのようなアルコール類;イソヘキサンのような炭化水素系溶剤が挙げられる。
フッ素系溶剤(2)をフッ素系溶剤(2)以外の溶剤と混合して混合溶剤として使用する場合、混合溶剤中のフッ素系溶剤(2)の割合が、溶解性により優れるという観点から、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましい。
本発明のバリア剤組成物は、上記重合体(1)を好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.05〜5質量%の濃度で含む。重合体(1)の濃度がこの範囲内であれば、オイルバリア性能も十分に発揮できる。
本発明のバリア剤は、重合体(1)がフッ素系溶剤(2)に溶解および/または分散した液状組成物であるのが好ましい態様の1つとして挙げられる。
本発明のバリア剤組成物は、組成物の安定性、潤滑オイルに対するバリア性能または外観等に悪影響を与えない範囲であれば、前記した以外の他の成分を含んでいてもよい。このような他の成分としては、例えば被膜表面の腐食を防止するためのpH調整剤、防錆剤、組成物を希釈して使用する場合に液中の重合体の濃度管理をする目的や未処理部品との区別をするための染料、染料の安定剤、難燃剤、消泡剤、または帯電防止剤等が挙げられる。
本発明のバリア剤組成物を用いることによって、バリア処理することが必要な摺動部品または摺動部品近くの部品(以下、総称して「被処理部分」とも言う。)の表面をバリア処理することができる。
本発明のバリア剤組成物は目的や用途に応じて希釈して使用することができる。
本発明のバリア剤組成物はその製造について特に制限されない。本発明のバリア剤組成物の製造方法について好適なものを次に説明する。
本発明の潤滑オイルのバリア剤組成物の製造方法は、前記式(a)で表される化合物90質量%以上と、前記ヒドロキシル基含有不飽和化合物を10質量%以下とを、乳化剤の存在下水系媒体中で乳化重合させることによって前記重合体(1)を合成し、前記乳化重合後反応系内から前記乳化剤および/または前記水系媒体を除去をし、前記除去後に得られた重合体(1)をフッ素系溶剤(2)に溶解および/または分散させることによって、本発明のバリア剤組成物を製造するものである。
前記式(a)で表される化合物90質量%以上と、前記ヒドロキシル基含有不飽和化合物を10質量%以下とを、乳化剤の存在下水系媒体中で乳化重合させることによって前記重合体(1)を合成する重合工程について以下に説明する。
重合工程において単量体として使用される、式(a)で表される化合物およびヒドロキシル基含有不飽和化合物は上記と同義である。
乳化重合の方法は特に限定されないが、例えば、水系媒体中に単量体としての化合物(a)、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、必要に応じて使用することができる化合物(c)を乳化剤(例えば、界面活性剤)の存在下、撹拌やホモミキサーなどを使用して乳化させ、その後重合を行う通常の方法を利用できる。使用される界面活性剤は特に限定されないが、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤等の通常の乳化剤を使用できる。
乳化重合に使用される水系媒体は特に制限されない。例えば、水;ケトン類、エステル類、グリコール類、グリコールエーテル類、アルコールのような水溶性有機溶剤;水と水溶性有機溶剤との混合溶剤が挙げられる。
水系媒体中での乳化重合の場合、開始剤として、アゾ開始剤や過酸化物系のうち水溶性のものを用いることが好ましい。
乳化重合で使用する乳化剤の中には、重合体(1)のフッ素系溶剤(2)への溶解性やバリア性能へ悪影響を与えるものもある。そのため、乳化重合後反応系内から乳化剤を除去することが好ましい。
また、バリア剤組成物が水系媒体を含む場合バリア剤組成物を高温で乾燥させる必要があり乾燥性に劣る。
このため本発明の潤滑オイルのバリア剤組成物の製造方法は、重合体(1)のフッ素系溶剤(2)への溶解性、バリア性能、乾燥性に優れるという観点から、重合工程後反応系内から乳化剤および/または水系媒体を除去する除去工程を有する。
乳化重合後の反応系内からの乳化剤および/または水系媒体の除去方法としては、乳化剤が溶解する溶剤(例えば、イソプロパノールのようなアルコールが挙げられる。)を使用して重合体(1)を再沈精製することが好ましいが、これに限定されるものではない。水系媒体を除去する場合乳化剤を水系媒体とともに除去することができる。重合体(1)を再沈させ精製する方法は特に制限されない。
乳化重合後反応系内から乳化剤および/または水系媒体が除去され、得られた重合体(1)を次の混合工程に使用する。
本発明の潤滑オイルのバリア剤組成物の製造方法は、除去工程後、得られた重合体(1)をフッ素系溶剤(2)に溶解および/または分散させて、バリア剤組成物とする混合工程を有する。
フッ素系溶剤(2)は上記と同義である。
混合工程において、重合体(1)をフッ素系溶剤(2)に溶解および/または分散させる方法は特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
本発明の潤滑オイルのバリア剤組成物の製造方法によれば、安全性、バリア性能、乾燥性に優れるバリア剤を製造することができる。
本発明の摺動部品または摺動部品に近接する部品の表面をバリア処理する方法について以下に説明する。
本発明の摺動部品または摺動部品に近接する部品の表面をバリア処理する方法は、本発明の潤滑オイルのバリア剤組成物、または本発明の潤滑オイルのバリア剤組成物を製造する方法によって製造された潤滑オイルのバリア剤組成物を、摺動部品または摺動部品に近接する部品の表面に塗付し、前記潤滑オイルのバリア剤組成物を用いた膜を形成する工程を含む方法である。
本発明の摺動部品または摺動部品に近接する部品の表面をバリア処理する方法において使用される潤滑オイルのバリア剤組成物は、本発明の潤滑オイルのバリア剤組成物、または本発明の潤滑オイルのバリア剤組成物を製造する方法によって製造された潤滑オイルのバリア剤組成物であれば特に制限されない。
摺動部品または摺動部品に近接する部品は、潤滑オイルが適用されるものであれば特に制限されない。被処理部分の材質としては、例えば、プラスチック、金属が挙げられる。被処理部分を有するものとしては、例えば、時計、モーターおよび一眼レフカメラのレンズ等の精密機械が挙げられる。
潤滑オイルは例えば精密機器の摺動を目的として使用されるものであれば特に制限されない。例えば、鉱油、セバシン酸ジオクチルが挙げられる。
バリア剤組成物を被処理部分の表面に塗布する方法としては、一般的な被覆加工方法が採用できる。例えば、浸漬塗布、スプレー塗布、バリア剤組成物を充填したエアゾール缶による塗布等の方法が挙げられる。
バリア剤組成物を塗布する箇所は特に制限されない。例えば、被処理部分の表面に直接塗布することができる。
本発明の摺動部品または摺動部品に近接する部品の表面をバリア処理する方法は、乾燥性に優れる。
また、本発明の摺動部品または摺動部品に近接する部品の表面をバリア処理する方法によれば、バリア性能に優れる摺動部品または摺動部品に近接する部品を得ることができる。
以下に本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断わりのない限り、以下の実施例の記載において「%」で表示されるものは「質量%」を表すものとする。
製造例1
2−パーフルオロヘキシルエチルメタクリレート(以下、C6FMAと記す。)189.5gと、ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、HEMAと記す。)0.95gと、アセトン47.6gと、ノニオンK−220(日本油脂株式会社製)の20%水溶液133.3gと、イオン交換水226.7gとを、1Lのオートクレーブに仕込み撹拌を行い、50℃で1時間あらかじめ乳化を行った。その後、40℃以下に冷却し、開始剤V−50(和光純薬工業株式会社製)1.90gを加え、反応器内を窒素で置換した後、60℃で18時間ラジカル重合を行った。反応後、ビーカーにイソプロパノール(IPA)600mlをいれ、そこに反応液を滴下して重合物を析出させた。析出した重合物を、イオン交換水600mlで3回、IPA600mlで1回洗浄し、減圧下乾燥を行い、白色の固体として重合物を得た。得られた重合物をm-XHFに溶解させ、H-NMRによりノニオンK−220の残存量を測定したところ、0.2%であった。
製造例2
C6FMA9.95gと、HEMA0.05gと、アセトン2.5gと、ノニオンK−220の20%水溶液7.0gと、イオン交換水17.5gとを、密閉容器に仕込み撹拌を行い、50℃で1時間あらかじめ乳化を行った。その後、40℃以下に冷却し、開始剤V−50 0.2gを加え、反応器内を窒素で置換した後、60℃で18時間ラジカル重合を行った。反応後、ビーカーにIPA30mlをいれ、そこに反応液を滴下して重合物を析出させた。析出した重合物を、イオン交換水30mlで3回、IPA30mlで1回洗浄し、減圧下乾燥を行い、白色の固体として重合物を得た。製造例1と同様にノニオンK−220の残存量を測定したところ、0.2%であった。
製造例3
開始剤V−50を0.15gとした以外は製造例2と同様に重合を行い、白色の固体として重合物を得た。製造例1と同様にノニオンK−220の残存量を測定したところ、0.2%であった。
比較製造例1
単量体を、C6FMA 190.5gのみとした以外は製造例1と同様に重合を行い、白色の固体として重合物を得た。
比較製造例2
C6FMA 29.85gと、HEMA 0.15gと、m−XHF29.9gと開始剤V−601(和光純薬工業株式会社製)0.1gとを密閉容器に仕込み、70℃で18時間重合反応を行った。反応後、メタノールにて再沈精製を行い、白色固体として重合物を得た。
比較製造例3
2−パーフルオロアルキル(アルキル基の炭素数が6〜14の混合物であり、平均値は9である。)エチルメタクリレート(以下、CmFMAと記す。)22.5gと、m−XHF52.5gと開始剤AIBN18.8mgとを密閉容器に仕込み、70℃で15時間重合反応を行った。反応後m−XHFを加え17%の溶液として重合物を得た。
なお、比較製造例3で使用されたアルキル基の平均炭素数が9の2−パーフルオロアルキルエチルメタクリレート中、アルキル基の炭素数が6の2−パーフルオロアルキルエチルメタクリレートの含有量(GC分析による。)は、2%であった。
比較製造例4
分子量調整剤としてドデシルメルカプタン0.05gを加え、開始剤V−50を0.1gとした以外は製造例2と同様に重合を行い、白色の固体として重合物を得た。製造例1と同様にノニオンK−220の残存量を測定したところ、0.1%であった。
[重量平均分子量の測定]
重合組成物を、重合体の濃度が約1%になるように、アサヒクリンAK−225(旭硝子(株)製)を用いて希釈し、測定サンプルとした。昭和電工株式会社製Shodex GPC−104を用いて、以下の条件でGPCを測定した。各重合物の単量体比率と分子量を表1に示す。
<GPC測定条件>
Separtion Column:LF−604(充填剤:スチレンジビニルベンゼン共重合体,昭和電工株式会社製)×2
Default Column:KF600RH(充填剤:なし,昭和電工株式会社製)×2
Clean Liquid:AK−225
Flow Rate:0.2ml/min
標準物質:ポリメチルメタクリレート
Figure 0005362246
実施例1
製造例1で得られた重合物をHFE−7200(3M社製)で希釈し、0.5%濃度のバリア剤組成物を調製した。このバリア剤組成物について耐熱試験前後のオイルの接触角を測定することでバリア性能を評価した。
実施例2〜3
製造例2〜3で得られた重合物を用いて実施例1と同様にバリア剤組成物を調製し、バリア性能を評価した。
比較例1〜4
比較製造例1〜4で得られた重合物を用いて実施例1と同様にバリア剤組成物を調製し、バリア性能を評価した。
実施例4〜6
製造例1〜3で得られた重合物を用いてHFE−7200で希釈し、0.1%濃度のバリア剤組成物を調整し、実施例1と同様にバリア性能を評価した。
比較例5〜8
比較製造例1〜4で得られた重合物を用いて実施例4〜6と同様にバリア剤組成物を調製し、バリア性能を評価した。
<バリア性能評価方法>
ポリカーボネート(PC)、ポリアセタール(POM)、黄銅製のテストピースをバリア剤組成物の各々に、常温で1分間浸漬後、取出して室温(25℃)で乾燥させて、バリア剤組成物の被膜を処理した。そのテストピース上の5箇所にセバシン酸ジオクチルを滴下して、それぞれの接触角を測定した。その後、60℃下で24時間そのまま静置させ、再度接触角の測定を行った。5箇所それぞれの接触角の平均値をとり、熱処理前後の結果を表2および表3に示す。接触角の測定には、自動接触角計OCA−20[dataphysics社製]を用いた。
Figure 0005362246
Figure 0005362246
上記のように、本発明のバリア剤組成物は、耐熱試験後もオイルの接触角が高い値を保持しており、十分なバリア性能を示した。また、測定に用いた5箇所の接触角の値はほぼ同じであり、被膜の均一性に優れていることもわかった。本発明のバリア剤組成物はパーフルオロアルキル基の炭素数が6以下であっても、耐熱試験前のバリア性能が従来のパーフルオロアルキル基の炭素数が8以上のものと同等であり、耐熱試験後のバリア性能は同等以上であった。この事は、本発明が、生体および環境へのリスクを大きく低下させながらも、従来品と同程度またはそれ以上の高い性能を有するバリア剤組成物の提供を可能にすることを示している。

Claims (9)

  1. 下記式(a)で表される化合物から導かれる重合単位(A)を90質量%以上と、ヒドロキシル基含有不飽和化合物から導かれる重合単位(B)を0.1質量%以上10質量%以下とを含有し、かつ重量平均分子量が50万以上である重合体(1)と、フッ素系溶剤(2)とを含む潤滑オイルのバリア剤組成物:
    CH=C(R1)−COO−Q−R (a)
    式(a)中、
    1:単結合または2価の連結基、
    1:水素原子またはメチル基、
    f:炭素数1〜6のポリフルオロアルキル基またはポリフルオロエーテル基。
  2. 前記式(a)における前記ポリフルオロアルキル基が、パーフルオロアルキル基である請求項1に記載の潤滑オイルのバリア剤組成物。
  3. 前記ヒドロキシル基含有不飽和化合物が、下記式(b)で表される請求項1または2に記載の潤滑オイルのバリア剤組成物:
    CH=C(R1)−COO−Q−OH (b)
    式中、R:前記式(a)におけるR1と同じ、Q:2価の連結基。
  4. 前記潤滑オイルのバリア剤組成物中、水系媒体の量が、1質量%以下である請求項1〜3のいずれかに記載の潤滑オイルのバリア剤組成物。
  5. 前記フッ素系溶剤(2)が、ハイドロフルオロエーテルまたはハイドロフルオロカーボンである請求項1〜4のいずれかに記載の潤滑オイルのバリア剤組成物。
  6. 前記重合体(1)の濃度が、0.01〜20質量%である請求項1〜5のいずれかに記載の潤滑オイルのバリア剤組成物。
  7. 前記式(a)で表される化合物90質量%以上と、前記ヒドロキシル基含有不飽和化合物を10質量%以下とを、乳化剤の存在下水系媒体中で乳化重合させることによって前記重合体(1)を合成し、前記乳化重合後反応系内から前記乳化剤および/または前記水系媒体を除去をし、前記除去後に得られた重合体(1)をフッ素系溶剤(2)に溶解および/または分散させることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の潤滑オイルのバリア剤組成物を製造する方法。
  8. 請求項1〜6のいずれかに記載の潤滑オイルのバリア剤組成物、または請求項7に記載の潤滑オイルのバリア剤組成物を製造する方法によって製造された潤滑オイルのバリア剤組成物を、摺動部品または摺動部品に近接する部品の表面に塗付し、前記潤滑オイルのバリア剤組成物を用いた膜を形成する工程を含む、摺動部品または摺動部品に近接する部品の表面をバリア処理する方法。
  9. 請求項8に記載の方法によって表面がバリア処理された、摺動部品または摺動部品に近接する部品。
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