JP2019094400A - 滑油性表面処理組成物、その滑油性表面処理組成物を乾燥してなる被膜を有する部材およびその部材が用いられた設備 - Google Patents
滑油性表面処理組成物、その滑油性表面処理組成物を乾燥してなる被膜を有する部材およびその部材が用いられた設備 Download PDFInfo
- Publication number
- JP2019094400A JP2019094400A JP2017223470A JP2017223470A JP2019094400A JP 2019094400 A JP2019094400 A JP 2019094400A JP 2017223470 A JP2017223470 A JP 2017223470A JP 2017223470 A JP2017223470 A JP 2017223470A JP 2019094400 A JP2019094400 A JP 2019094400A
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- group
- mass
- formula
- copolymer
- structural unit
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Granted
Links
Landscapes
- Application Of Or Painting With Fluid Materials (AREA)
- Materials Applied To Surfaces To Minimize Adherence Of Mist Or Water (AREA)
- Paints Or Removers (AREA)
Abstract
Description
[1] 下記式(a)で表される化合物から導かれる構成単位および下記式(c)で表される化合物から導かれる構成単位を含む共重合体と、溶媒とを含む滑油性表面処理組成物であって、上記共重合体中、上記式(a)で表される化合物から導かれる構成単位の質量aの、上記式(a)で表される化合物から導かれる構成単位および上記式(c)で表される化合物から導かれる構成単位の合計質量a+cに対する質量百分率が33質量%以上である滑油性表面処理組成物。
CH2=CRa1−COO−Rf1 (a)
CH2=CRc1−Q1−Y (c)
式(a)中、
Ra1:水素原子またはメチル基、
Rf1:主鎖の炭素数が2〜3であり、末端基がCF3であるポリフルオロアルキル基。
式(c)中、
Rc1:水素原子またはメチル基、
Q1:単結合または2価の連結基、
Y:数平均分子量(Mn)が1000から30000のオルガノポリシロキサン基。
[2] 上記式(a)で表される化合物が下記式(a1)で表される化合物である上記[1]に記載の滑油性表面処理組成物。
CH2=C(Ra1)−COO−CH2−CF3 (a1)
式(a1)中、
Ra1:水素原子またはメチル基。
[3] 上記共重合体が、さらに下記式(b)で表される化合物から導かれる構成単位を含み、
上記共重合体中、上記式(a)で表される化合物から導かれる構成単位の質量aの、上記式(a)で表される化合物から導かれる構成単位および下記式(b)で表される化合物から導かれる構成単位の合計質量a+bに対する質量百分率が25質量%以上である、上記[1]または[2]に記載の滑油性表面処理組成物。
CH2=C(CH3)−COO−CH2CH2(CF2)6F (b)
[4] 上記共重合体中、上記式(a)で表される化合物から導かれる構成単位、上記式(b)で表される化合物から導かれる構成単位および上記式(c)で表される化合物から導かれる構成単位の合計質量が、上記共重合体の全質量の40質量%以上である、上記[3]に記載の滑油性表面処理組成物。
[5] 上記共重合体中、上記式(a)で表される化合物から導かれる構成単位および上記式(b)で表される化合物から導かれる構成単位の合計質量が、上記共重合体の全質量の50質量%以上である、上記[3]または[4]に記載の滑油性表面処理組成物。
[6] 上記共重合体が、さらに下記式(e)で表される化合物から導かれる構成単位を含む、上記[1]〜[5]のいずれか1つに記載の滑油性表面処理組成物。
CH2=CRe1−Q3−W (e)
式中、
Re1:水素原子またはメチル基、
Q3:単結合または2価の連結基、
W:水酸基、カルボキシ基またはC1〜C3アルコキシシリル基。
[7] 上記共重合体が、さらに下記式(d)で表される化合物から導かれる構成単位を含む、上記[1]〜[6]のいずれか1つに記載の滑油性表面処理組成物。
(CH2=CRd1−COO−)nQ2 (d)
式(d)中、
Rd1:水素原子またはメチル基、
n:2以上の整数、
Q2:n価の連結基。
[8] 表面の少なくとも一部に、上記[1]〜[7]のいずれか1つに記載の滑油性表面処理組成物を乾燥してなる被膜を有する部材。
[9] 上記[8]に記載の部材が用いられた設備。
また、本発明において、下記化学式で表される2価の基(カルボニル基)を「−CO−」と表記することがある。ただし、下記化学式中「*」および「*」は他の原子または原子団との結合点を表す。
また、本発明において、下記化学式で表される2価の基(スルホニル基)を「−SO2−」と表記することがある。ただし、下記化学式中「*」および「*」は他の原子または原子団との結合点を表す。
また、本発明において、下記化学式で表される2価の基(イミノ基)を「−N(R)−」と表記することがある。ただし、下記化学式中「*」および「*」は他の原子または原子団との結合点を表し、「R」は水素原子または1価の基を表す。
また、本発明において、下記化学式で表される2価の基(カルボニルオキシ基、オキシカルボニル基)を、それぞれ、「−COO−」、「−OCO−」と表記することがある。ただし、下記化学式中「*」および「*」は他の原子または原子団との結合点を表す。
また、本発明において、下記化学式で表される2価の基を、それぞれ、「−COS−」、「−SCO−」と表記することがある。ただし、下記化学式中「*」および「*」は他の原子または原子団との結合点を表す。
また、本発明において、下記化学式で表される2価の基を「−PO(OR)−」または「−P(=O)(OR)−」と表記することがある。ただし、下記化学式中「*」および「*」は他の原子または原子団との結合点を表し、「R」は1価の基を表す。
本発明の滑油性表面処理組成物は、構成単位(a)および構成単位(c)を含む共重合体と、溶媒とを含む。
本発明において、滑落性とは、一定以上の傾斜を持った斜面に10μLの液滴を載せた時、液滴の両端が一定の間隔を保持したまま流れることを滑落性があると定義している。液滴の両端の間隔が広がり続けながら流れ落ちる(雨すじ状に流れ落ちる)ことは、滑落には該当しない。液滴が水であれば滑水性、液滴が油であれば滑油性と定義する。
滑油性は、転落角が30度未満であることが好ましく、転落角が20度未満であると滑油性が良好と判断し、転落角が10度未満であると極めて良好であると判断する。
ガラス板を室温の表面処理組成物に1分間浸漬し、取り出した後、120℃で5分間乾燥させて、表面処理被膜付きガラス板を準備する。
この表面処理被膜付きガラス板に市販のサラダ油(食用なたね油,日清オイリオ社製)10μLを着的させ、自動接触角計OCA−20[データフィジックス社製]を用いて転落角を測定する。転落角を測定する際の転落角の移動速度は約1.6度/秒とし、液滴が移動を始めた際の角度を転落角(度)とする。
上記共重合体は、構成単位(a)および構成単位(c)を含み、さらに、構成単位(b)、構成単位(d)、構成単位(e)および構成単位(f)からなる群から選択される1種以上を含んでもよい。
構成単位(a)および構成単位(c)について説明する。
上記共重合体に含まれる構成単位(a)は、下記式(a)で表される化合物〔化合物(a)〕から導かれる構成単位である。
CH2=CRa1−COO−Rf1 (a)
式(a)中、
Ra1:水素原子またはメチル基であり、
Rf1:主鎖の炭素数が2〜3であり、末端基がCF3であるポリフルオロアルキル基である。
上記式(a)において、上記Ra1は水素原子またはメチル基であれば特に限定されないが、好ましくはメチル基である。上記Ra1がメチル基であると、本発明の滑油性表面処理組成物の滑油性がより良好なものとなる。
上記式(a)において、上記Rf1は、主鎖の炭素数が2〜3であり、かつ、末端基がCF3であるポリフルオロアルキル基であれば特に限定されない。
上記Rf1において、「主鎖の炭素数」および「主鎖炭素数」は、いずれも、Rf1中の炭素原子のうちRf1以外の原子団と結合する炭素原子を末端とする、Rf1中の最長の炭素原子鎖の炭素原子数を意味する。
また、上記Rf1において、「末端基がCF3であるポリフルオロアルキル基」は、アルキル基の水素原子のうち3個以上がフッ素原子に置換され、かつ、当該アルキル基の末端のメチル基(−CH3)の少なくとも1つがトリフルオロアルキル基(−CF3)に置換された部分フルオロ置換またはパーフルオロ置換アルキル基を意味する。ここで、上記アルキル基は分岐または非分岐のアルキル基であり、当該アルキル基の末端のメチル基は、主鎖の末端のメチル基であってもよいし、側鎖(主鎖の炭素原子に結合する主鎖以外の炭素鎖をいう。)の末端のメチル基であってもよい。
上記Rf1のうち非分岐状のものとしては、1,1,1−トリフルオロエタン−2−イル基(主鎖炭素数:2)、1,1,1−トリフルオロプロパン−3−イル基(主鎖炭素数:3)およびこれらの基の1つ以上の水素原子にフッ素原子が置換した基が挙げられる。
また、上記Rf1のうち分岐状のものとしては、1−トリフルオロメチルエタン−1−イル基(主鎖炭素数:2)、1,1−ジメチル−2,2,2−トリフルオロエタン−1−イル基(主鎖炭素数:2)、2−トリフルオロメチルプロパン−1−イル基(主鎖炭素数:3)、1−トリフルオロメチルプロパン−1−イル基(主鎖炭素数:3)、1−メチル−3,3,3−トリフルオロプロパン−1−イル基(主鎖炭素数:3)、2,2−ジメチル−3,3,3−トリフルオロプロパン−1−イル基(主鎖炭素数:3)、1,1−ジメチル−3,3,3−トリフルオロプロパン−1−イル基(主鎖炭素数:3)、1−メチル−1−トリフルオロメチルプロパン−1−イル基(主鎖炭素数:3)およびこれらの基の1つ以上の水素原子にフッ素原子が置換した基が挙げられる。
上記化合物(a)の具体例を以下の表に示すが、化合物(a)はこれらに限定されるものではない。
上記化合物(a)は、好ましくは下記式(a1)で表される化合物〔化合物(a1)〕である。
CH2=CRa1−COO−CH2−CF3 (a1)
式(a1)中、
Ra1:水素原子またはメチル基である。
上記共重合体に含まれる構成単位(c)は、下記式(c)で表される化合物〔化合物(c)〕から導かれる構成単位である。
CH2=CRc1−Q1−Y (c)
式(c)中、
Rc1:水素原子またはメチル基であり、
Q1:単結合または2価の連結基であり、
Y:数平均分子量(Mn)が1000〜3000のオルガノポリシロキサン基である。
上記式(c)において、上記Rc1は水素原子またはメチル基であれば特に限定されないが、好ましくはメチル基である。上記Rc1がメチル基であると、本発明の滑油性表面処理組成物の滑油性がより良好なものとなる。
上記式(c)において、上記Q1は単結合または2価の連結基であれば特に限定されない。
上記2価の連結基としては、炭素数が1〜10のアルキレン基、炭素数が2〜10のアルケニレン基、炭素数が1〜10のオキシアルキレン基、6員のアリーレン基、4〜6員環の2価脂環基、5または6員のヘテロアリーレン基、−X1−、−X1−X2−、−Z1−X1−、−X1−Z1−X2−、−Z1−X1−X2−、−Z1−X1−Z2−X2−、およびこれらのうち2つ以上を組み合わせてなる2価の基が挙げられる。ここで、複数の環基を組み合わせてなる2価基においては、2つの単環が縮合していてもよい。
X1およびX2:それぞれ独立に、炭素数が1〜10のアルキレン基、炭素数が1〜10のオキシアルキレン基、6員のアリーレン基、4〜6員の2価脂環基、5または6員のヘテロアリーレン基、および6員のアリーレン基、ならびに4〜6員の2価脂環基および5もしくは6員のヘテロアリーレン基のうち2つ以上組み合わせてなる、2つ以上の単環が縮合していてもよい2価基からなる群から選択される2価の基を表し、
Z1およびZ2:それぞれ独立に、−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−COS−、−SCO−、−N(R1)−、−SO2−、−PO(OR1)−、−N(R1)−COO−、−COO−N(R1)−、−N(R1)−CO−、−CO−N(R1)−、−N(R1)−SO2−、−SO2−N(R1)−、−N(R1)−PO(OR2)−、および−PO(OR2)−N(R1)−からなる群から選択される2価の基を表し、上記式中、R1およびR2は、それぞれ独立に、水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表す。
上記2価の連結基は、置換基を有していてもよい。
上記置換基しては、例えば、フッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)およびヨウ素原子(I)等のハロゲン原子;ヒドロキシ基;シアノ基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基およびオクチルオキシ基等のアルコキシ基;フェノキシ基等のアリールオキシ基;メチルチオ基およびエチルチオ基等のアルキルチオ基;アセチル基、プロピオニル基およびベンゾイル基等のアシル基;メタンスルホニル基およびベンゼンスルホニル基等のスルホニル基;アセトキシ基およびベンゾイルオキシ基等のアシルオキシ基;メタンスルホニルオキシ基およびトルエンスルホニルオキシ基等のスルホニルオキシ基;ジエチルホスホニル基等のホスホニル基;アセチルアミノ基およびベンゾイルアミノ基等のアミド基;N,N−ジメチルカルバモイル基およびN−フェニルカルバモイル基等のカルバモイル基;メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、シクロプロピル基およびブチル基等のアルキル基;フェニル基およびトリル基等のアリール基;ピリジル基、イミダゾリル基およびフラニル基等の複素環基;ビニル基および1−プロペニル基等のアルケニル基;メトキシアセチルオキシ基等のアルコキシアシルオキシ基;メトキシカルボニル基およびエトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;ならびに、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、メタクリロイル基、シリル基および桂皮酸残基等の重合性基などが挙げられる。
上記式(c)において、Yは数平均分子量(Mn)が1000〜30000のオルガノポリシロキサン基であれば特に限定されない。
上記オルガノポリシロキサン基としては、−(SiO)x−で表される繰り返し単位のケイ素原子に、水素原子、アルキル基またはフェニル基等が置換した基が挙げられるが、特に好ましくは、−(Si(CH3)2O)−で表されるポリジメチルシロキサン基である。
また、上記オルガノポリシロキサン基の末端は、好ましくは重合性基ではなく、より好ましくはアルキル基、アルコキシ基またはポリエーテル基であり、さらに好ましくはアルキル基である。ここで、上記したアルキル基、アルコキシ基およびポリエーテル基は、置換基を有していてもよい。
本発明において、オルガノポリシロキサン基の数平均分子量(Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)にて測定することができる。
具体的なGPC測定条件の例としては、次のものが挙げられる。
(1)重合体の濃度が約1%になるように、アサヒクリンAK−225(旭硝子社製)を用いて希釈し、測定サンプルとする。
(2)昭和電工株式会社製のShodex GPC−104を用いて、以下の測定条件で測定する。
(GPC測定条件)
分離カラム: GPC LF−604×2(充填剤:スチレンジビニルベンゼン共重合体,昭和電工社製)
デフォルトカラム:KF600RH×2(充填剤:なし,昭和電工株式会社製)
クリーンリキッド: アサヒクリンAK−225(旭硝子社製)
流速: 0.2ml/min
標準物質:ポリメチルメタクリレート
上記化合物(c)は、好ましくは下記式(c1)で表される化合物〔化合物(c1)〕である。
CH2=CRc1−COO−(CH2)n−(Si(CH3)2O)m−Si(CH3)2−Rc2 (c1)
式(c1)中、
Rc1:水素原子またはメチル基であり、
n:1〜6の整数であり、
m:10〜800の整数であり、
Rc2:置換基を有していてもよいアルキル基であり、
“−(Si(CH3)2O)m−Si(CH3)2−Rc2”で表されるポリジメチルシロキサン基の数平均分子量(Mn)は1000〜30000である。
上記式(c1)において、上記Rc1は水素原子またはメチル基であれば特に限定されないが、好ましくはメチル基である。
上記mは10〜800の整数であれば特に限定されないが、“−(Si(CH3)2O)m−Si(CH3)2−Rc2”で表されるポリジメチルシロキサン基の数平均分子量が、好ましくは5000〜15000となるものであり、より好ましくは10000〜15000となるものである。
上記nは1〜6の整数であれば特に限定されないが、好ましくは2〜4である。
上記Rc2は置換基を有していてもよいアルキル基であり、好ましくは炭素数1〜5のアルキル基の水素原子に置換基が置換していてもよいアルキル基であり、より好ましくは非置換の炭素数1〜5のアルキル基である。
上記共重合体中の上記構成単位(c)の合計質量eの、上記共重合体の全質量wCOPOLYMERに対する質量百分率〔Pc/w≡(c/wCOPOLYMER)×100 質量%〕は、特に限定されないが、好ましくは5〜40質量%であり、より好ましくは10〜20質量%である。
上記Pc/wがこの範囲内であると、本発明の滑油性表面処理組成物の滑落性がより良好なものとなる。
上記共重合体中の上記構成単位(a)および上記構成単位(c)の合計質量a+cの、上記共重合体の全質量wCOPOLYMERに対する質量百分率〔P(a+c)/w≡{(a+c)/wCOPOLYMER}×100 質量%〕は、特に限定されないが、好ましくは40質量%以上(100質量%以下)であり、より好ましくは60質量%以上(100質量%以下)である。
上記P(a+c)/wがこの範囲内であると、本発明の滑油性表面処理組成物の滑油性がより良好なものとなる。
上記構成単位(a)の合計質量aの、上記共重合体中の上記構成単位(a)および上記構成単位(c)の合計質量a+cに対する質量百分率〔Pa/(a+c)≡{a/(a+c)}×100 質量%〕は、33質量%以上(100質量%未満)であれば特に限定されないが、好ましくは40質量%以上(100質量%未満)であり、より好ましくは40〜90質量%であり、さらに好ましくは55〜85質量%である。
上記Pa/(a+c)がこの範囲内であると、本発明の滑油性表面処理組成物の滑油性がより優れたものとなる。
上記共重合体は、下記式(b)で表される化合物〔化合物(b)〕から導かれる構成単位〔構成単位(b)〕を含んでもよい。
CH2=C(CH3)−COO−CH2CH2(CF2)6F (b)
上記共重合体が上記構成単位(b)を含む場合、上記構成単位(a)の合計質量aの、上記共重合体中の上記構成単位(a)および上記構成単位(b)の合計質量a+bに対する質量百分率〔Pa/(a+b)≡{a/(a+b)}×100 質量%〕は、特に限定されないが、好ましくは25質量%以上(100質量%未満)であり、より好ましくは30質量%以上(100質量%未満)であり、さらに好ましくは35〜95質量%であり、いっそう好ましくは40〜90質量%である。
上記共重合体が上記構成単位(a)および上記構成単位(c)に加えて上記構成単位(b)を含む場合、上記Pa/(a+b)がこの範囲内であると、本発明の滑油性表面処理組成物の滑油性がより良好なものとなる。
上記共重合体が上記構成単位(b)を含む場合、上記共重合体中の上記構成単位(a)、上記構成単位(b)および上記構成単位(c)の合計質量a+b+cの、上記共重合体の全質量wCOPOLYMERに対する質量百分率〔P(a+b+c)/w≡{(a+b+c)/wCOPOLYMER}×100 質量%〕は、特に限定されないが、好ましくは40質量%以上(100質量%以下)であり、より好ましくは50質量%以上(100質量%以下)であり、さらに好ましくは60質量%以上(100質量%以下)であり、いっそう好ましくは70質量%以上(100質量%以下)であり、よりいっそう好ましくは95質量%以上(100質量%以下)である。
上記共重合体が上記構成単位(b)を含む場合、上記P(a+b+c)/wがこの範囲内であると、本発明の滑油性表面処理組成物の滑油性がより良好なものとなる。
上記共重合体が上記構成単位(b)を含む場合、上記共重合体中の上記構成単位(a)および上記構成単位(b)の合計質量a+bの、上記共重合体の全質量wCOPOLYMERに対する質量百分率〔P(a+b)/w≡{(a+b)/wCOPOLYMER}×100 質量%〕は、特に限定されないが、好ましくは50質量%以上(100質量%以下)であり、より好ましくは50〜95質量%であり、さらに好ましくは80〜90質量%である。
上記共重合体は、下記式(d)で表される化合物〔化合物(d)〕から導かれる構成単位〔構成単位(d)〕を含んでもよい。
(CH2=CRd1−COO−)nQ2 (d)
式(d)中、
Rd1:水素原子またはメチル基であり、
n:2以上の整数であり、
Q2:n価の連結基である。
上記式(d)において、上記Rd1は水素原子またはメチル基であれば特に限定されないが、好ましくはメチル基である。上記Rd1がメチル基であると、本発明の滑油性表面処理組成物の滑油性がより良好である。
上記Q2はn価の連結基(ただし、nは2以上の整数)であれば特に限定されないが、重合反応の制御の観点から、特に好ましくは2価の連結基である。
上記化合物(d)の具体例を以下の表に示すが、化合物(d)はこれらに限定されるものではない。
i,j,k:相互に独立して、1〜20の整数を表す。
o,p,q:相互に独立して、0〜3の整数を表す。
r,s:rは2または3であり、sは0または1である。ただし、r+s=3である。
Rd1:水素原子またはメチル基である。同一分子内に複数のRd1があるときは、それぞれのRd1はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基である。
Rd2:水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、−CH2OHおよび−CH2−OCO−CRd4=CH2からなる群から選択されるいずれか1つである。ここで、Rd4は水素原子またはメチル基である。
Rd3:下記式(1)〜(3)で示される2価の基から選択されるいずれか1つである。ただし、式中、「*」は窒素原子との結合点を示す。
上記化合物(d)は、好ましくは下記式(d1)で表される化合物〔化合物(d1)〕である。
CH2=CRd1−COO−(C2H4O)n−CO−CRd1=CH2 (d1)
式(d1)中、
Rd1:水素原子またはメチル基であり、
n:2〜20の整数である。
上記共重合体が上記構成単位(d)を含む場合、構成単位(d)の質量dの、共重合体の全質量wCOPOLYMERに対する質量百分率〔Pd/w≡(d/wCOPOLYMER)×100 質量%〕は、特に限定されないが、好ましくは(0質量%超)10質量%以下であり、より好ましくは(0質量%超)5質量%以下である。
上記共重合体が上記構成単位(d)を含む場合、上記Pd/wがこの範囲内であると、本発明の滑油性表面処理組成物の耐久性がより良好なものとなる。
上記共重合体は、下記式(e)で表される化合物〔化合物(e)〕から導かれる構成単位〔構成単位(e)〕を含んでもよい。
CH2=CRe1−Q3−W (e)
式(e)中、
Re1:水素原子またはメチル基であり、
Q3:単結合または2価の連結基であり、
W:ヒドロキシ基、カルボキシ基またはC1〜C3アルコキシシリル基である。
上記式(e)において、上記Re1は水素原子またはメチル基であれば特に限定されないが、好ましくはメチル基である。
上記式(e)において、上記Q3は単結合または2価の連結基であれば特に限定されない。
上記2価の連結基としては、例えば、上記Q1と同様のものが挙げられる。
上記式(e)において、Wはヒドロキシ基(−OH)、カルボキシ基(−COOH)またはC1〜C3アルコキシシリル基であれば特に限定されないが、好ましくはカルボキシ基または“−Si(OAk3)3”で表されるC1〜C3アルコキシシリル基(式中Ak3は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表す。)である。ここで、カルボキシ基は塩の形になっていてもよい。
上記Wがカルボキシ基またはC1〜C3アルコキシシリル基(−Si(OAk3)3;式中Ak3は水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表す。)であると、本発明の滑油性表面処理組成物の密着性がより優れたものとなる。
上記式(e)中のWがC1〜C3アルコキシシリル基である場合、上記化合物(e)は、好ましくは下記式(e1)で表される化合物〔化合物(e1)〕である。
CH2=CRe1−COO−Q31−Si(OAk31)3 (e1)
式(e1)中、
Re1:水素原子またはメチル基であり、
Q31:置換または非置換のアルキレン基であり、
Ak31:炭素数1〜3のアルキル基である。
上記化合物(e1)の具体例を以下の表に示すが、化合物(e1)はこれらに限定されるものではない。
上記式(e)中のWがヒドロキシ基(−OH)である場合、上記化合物(e)は、好ましくは下記式(e2)で表される化合物〔化合物(e2)〕である。
CH2=CRe1−COO−Q32−OH (e2)
式(e2)中、
Re1:水素原子またはメチル基であり、
Q32:−X31−または−X32−X31−である。
ここで、上記Q22において、X31はヒドロキシ基で置換されていてもよい炭素数が1〜10のアルキレン基、フェニレン基またはシクロヘキシレン基を表し、X32は−(C2H4O)p−または−(C3H6O)q−を表し、pおよびqはそれぞれ独立に1〜30の整数である。
上記化合物(e2)の具体例を以下の表に示すが、化合物(e2)はこれらに限定されるものではない。
上記式(e)中のWがカルボキシ基(−COOH)である場合、上記化合物(e)は、好ましくは下記式(e3)で表される化合物〔化合物(e3)〕である。
CH2=CRe1−Q33−COOH (e3)
式(e3)中、
Re1:水素原子またはメチル基であり、
Q33:単結合、炭素数が1〜10のアルキレン基、フェニレン基、シクロヘキシレン基、−(C2H4O)r−、−(C3H6O)s−、−Z31−X33−、または−Z32−X34−Z33−X35−である。
ここで、上記Q33において、rおよびsはそれぞれ独立に1〜30の整数であり、Z31は−COO−を表し、X33は炭素数が1〜10のアルキレン基、フェニレン基、シクロヘキシレン基、−(C2H4O)t−または−(C3H6O)u−を表し、tおよびuはそれぞれ独立に1〜30の整数であり、Z32は−COO−を表し、X34は−(C2H4O)v−または−(C3H6O)W−を表し、vおよびwはそれぞれ独立に1〜30の整数であり、Z33は−CO−を表し、X35は炭素数が1〜10のアルキレン基、フェニレン基またはシクロヘキシレン基を表す。
上記化合物(e3)の具体例を以下の表に示すが、化合物(e3)はこれらに限定されるものではない。
上記共重合体が上記構成単位(e)を含む場合、上記共重合体中の上記構成単位(e)の合計質量eの、上記共重合体の全質量wCOPOLYMERに対する質量百分率〔Pe/w≡(e/wCOPOLYMER)×100 質量%〕は、特に限定されないが、好ましくは(0質量%超)10質量%以下であり、より好ましくは(0質量%超)5質量%以下である。
上記共重合体が上記構成単位(e)を含む場合、上記Pe/wがこの範囲内であると、本発明の滑油性表面処理組成物の密着性がより良好なものとなる。
上記共重合体は、上記化合物(a)〜上記化合物(e)と共重合し得る、上記化合物(a)〜上記化合物(e)以外の化合物〔化合物(f)〕から導かれる構成単位〔構成単位(f)〕を含んでもよい。
上記化合物(f)の例として、下記式(f1)で表されるスチレン系化合物〔化合物(f1)〕を挙げることができる。
R3:−H、−CH3、−Cl、−CHO、−CH2Cl、−CH2NH2、−CH2N(CH3)2、−CH2N+(CH3)3Cl−、−CH2N+H3Cl−、−CH2CN、−CH2COOH、−CH2N(CH2COOH)2、−CH2SH、−CH2SO3NaまたはCH2OCOCH3である。
上記化合物(f)の別の例として、下記式(f2)で表される、上記化合物(a)、上記化合物(b)、上記化合物(c)、上記化合物(d)および上記化合物(e)以外のアクリル系化合物〔化合物(f2)〕を挙げることができる。
CH2=CRf−CO−Q4−R4 (f2)
式(f2)中、
Rf:水素原子、ハロゲン原子またはメチル基であり、
Q4:−O−または−NH−であり、
R4:水素原子または1価の有機基である。
ただし、上記式(f2)で表される化合物のうち、上記化合物(a)、上記化合物(b)、上記化合物(c)、上記化合物(d)および上記化合物(e)のいずれかに該当するものを除く。
上記Rfが水素原子またはメチル基であり、かつ、上記Q4が−O−である場合、化合物(f2)は、好ましくは下記式(f21)で表される(メタ)アクリレート化合物〔化合物(f21)〕である。
CH2=CRf1−COO−R41 (f21)
式(f21)中、
Rf1:−Hまたは−CH3であり、
R41:−CiH2i+1、−CH2CH2N(CH3)2、−CH2−C(CH3)2−O−CO−Ph、−CH2−Ph、−CH2CH2−O−Ph、−CH2−N+(CH3)3Cl−、−(CH2CH2O)j−CH3、−(CH2CH2O)k−H、−CH2CH2−NCO、または下記式(1)〜(4)のいずれかで表される1価の有機基である。ここで、iは1〜20の整数であり、jは2〜20の整数であり、kは1〜20の整数であり、−CiH2i+1は炭素数iの分岐または非分岐のアルキル基を表し、−Phはフェニル基を表す。
上記Rfが水素原子またはメチル基であり、かつ、上記Q4が−NH−である場合、化合物(f2)は、好ましくは下記式(f22)で表される(メタ)アクリルアミド化合物〔化合物(f22)〕である。
CH2=CRf2−CONH−R42 (f22)
式(f22)中、
Rf2:−Hまたは−CH3であり、
R42:−Hまたは−ChH2h+1である。ここで、hは1〜20の整数である。
上記化合物(f)のさらに別の例として、下記式(f3)で表される、上記化合物(a)、上記化合物(b)、上記化合物(c)、上記化合物(d)、上記化合物(e)、上記化合物(f1)および上記化合物(f2)以外のビニル系化合物〔化合物(f3)〕を挙げることができる。
CH2=CH−R5 (f3)
式(f3)中、
R5:水素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、シアノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基またはアシルオキシ基である。
上記共重合体が上記構成単位(f)を含む場合、構成単位(f)の質量fの、共重合体の全質量wCOPOLYMERに対する質量百分率〔Pf/w≡(f/wCOPOLYMER)×100 質量%〕は、特に限定されないが、好ましくは(0質量%超)40質量%であり、より好ましくは(0質量%超)20質量%である。
米国環境保護庁(USEPA)が2003年3月に公開した、野生動物や人の血液を含め、種々の環境から検出されるパーフロオロオクタン酸(PFOA)の安全性に関する予備リスク調査報告書では、PFOAの発生の恐れのあるパーフルオロアルキル基の炭素数が8であるものについて、生体および環境への影響が指摘され、2006年1月には、PFOAとその類縁物質、およびこれらの前駆体物質の環境中への排出削減と製品中の含有量削減計画への参加をフッ素樹脂メーカー等に提唱して以来、化合物中に含有されるパーフルオロアルキル基の炭素数は6以下の短いものが望まれている。
上記共重合体の分子量は特に限定されないが、重量平均分子量(Mw)で、好ましくは1×103〜1×107であり、より好ましくは1×104〜1×106である。
上記共重合体の重量平均分子量がこの範囲であると、上記共重合体の溶媒への溶解性が良好であるとともに、本発明の滑油性表面処理組成物の滑油性能を十分に発揮することができる。
上記共重合体は、構成単位(a)および構成単位(c)を必須の構成単位として含み、さらに、任意に含みうる構成単位として、構成単位(b)、構成単位(d)、構成単位(e)および構成単位(f)からなる群から選択される1種類以上の構成単位を含んでもよい。
上記共重合体の重合形態は、特に限定されず、ランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体およびこれらのうち2種類以上を組み合わせたものであってよいが、好ましくはランダム共重合体である。
上記共重合体の製造方法は、特に限定されず、各種の公知の方法を採用し得る。例えば、各化合物中の不飽和基に基づく付加重合により製造することができる。重合に際しては、公知の不飽和化合物の付加重合条件を適宜に採択して行うことができる。例えば、重合開始剤として、有機過酸化物、アゾ化合物または過硫酸塩等の通常用いられる重合開始剤を利用することができる。また、共重合体の分子量を調整するために、重合反応時に分子量調整剤を利用することもできる。
本発明の滑油性表面処理組成物中の上記共重合体の濃度は、特に限定されないが、好ましくは0.1〜20質量%であり、より好ましくは1〜10質量%である。
本発明の滑油性表面処理組成物中の上記共重合体の濃度がこの範囲内であると、本発明の滑油性表面処理組成物の滑油性能がより優れたものとなる。
本発明の滑油性表面処理組成物中の上記共重合体の濃度は終濃度であればよく、例えば本発明の滑油性表面処理組成物を重合組成物として直接調製する場合には、重合直後の重合組成物の重合体濃度(固形分濃度)が20質量%を超えていてもなんら差し支えない。高濃度の重合組成物は、最終的に上記範囲内の濃度となるように適宜に希釈することができる。
本発明の滑油性表面処理組成物に含まれる溶媒は、上記共重合体を溶解し、または分散することができるものであれば特に限定されない。
このような溶媒として、各種有機溶媒、水またはこれらの混合媒体などが挙げられる。
例えば、上記溶媒として、アルコール以外の極性溶媒やフッ素系溶媒を用いることができる。
本発明の滑油性表面処理組成物の溶媒として使用することができるフッ素系溶媒の具体例を以下に示すが、これらに限定されるものではない。
p−キシレンヘキサフルオリド(以下「p−XHF」と表記する場合がある。)
CF3CH2CF2CH3
CF3CH2CF2H
C6F13OCH3
C6F13OC2H5
C3F7OCH3
C3F7OC2H5
C6F13H
C6F13CH2CH3
CF2HCF2CH2OCF2CF2H
CF3CFHCFHCF2CH3
CF3(OCF2CF2)n(OCF2)mOCF2H
C8F17OCH3
C7F15OCH3
C4F9OCH3
C4F9OC2H5
C4F9CH2CH3
CF3CH2OCF2CF2CF2H
(上記例示中、m、nは各々1〜20の整数を表す。)
安全性の観点から、本発明の重合体は、引火性のない溶媒に溶解させて、滑油性表面処理剤として、引火性を有さないことが好ましい。
本発明において、「引火性」とは、以下の手順で引火点測定を実施し引火点を持つことと定義する。各引火点測定方法はJIS−K−2265に定められている方法に従うものとする。
(a)タグ密閉法による引火点測定の実施。
(b)(a)において、引火点が80℃以下の温度で引火点が測定できない場合にあっては、クリーブランド開放法による引火点測定の実施。
本発明の滑油性表面処理組成物は、本発明の目的を損なわず、その組成物としての安定性、滑油性能および外観等に悪影響を与えない限り、上記共重合体および上記溶媒以外の成分を含んでもよい。
本発明の滑油性表面処理組成物は、被膜成分として上記共重合体を含み、当該共重合体を溶媒中に含む液状形態である。
本発明の滑油性表面処理組成物の製造方法は、特に限定されない。
本発明の滑油性表面処理組成物の製造方法の一態様として、例えば、上記共重合体を後述する溶媒に溶解させることによる製造方法が挙げられる。
また、本発明の滑油性表面処理組成物の製造方法の別の一態様として、例えば、化合物(a)および化合物(c)を溶媒に添加し、この溶媒を重合媒体とする溶液重合によって上記共重合体を合成して当該共重合体を含む溶液または分散液を製造し、これを本発明の滑油性表面処理組成物とする製造方法が挙げられる。また、例えば、乳化重合によって上記共重合体を合成して上記共重合体を含む溶液または分散液を製造し、これを本発明の滑油性表面処理組成物とする製造方法も挙げられる。こうして得られた共重合体を分離し、他の溶媒に溶解させてもよい。また、重合原料の化合物が、ガス状である場合には、圧力容器を用いて、加圧下に連続供給してもよい。
本発明の滑油性表面処理組成物を乾燥してなる被膜を有する部材は、本発明の表面処理組成物を部材の表面に塗布し、乾燥させて溶媒を除去し、当該部材の表面に上記共重合体の被膜を形成して製造されるものである。このようにして製造された本発明の滑油性表面処理組成物を乾燥してなる被膜を有する部材は、その表面に優れた滑油性能が付与される。
乾燥温度は特に限定されないが、被処理部材の材質などにより加熱乾燥が困難な場合には、加熱を回避して乾燥することができる。なお、熱処理の条件は、塗布する滑油性表面処理組成物の組成や、塗布面積等に応じて適宜選択すればよい。
本発明の滑油性表面処理組成物を乾燥してなる被膜を有する部材が用いられた設備として、例えば、本発明の滑油性表面処理組成物を乾燥してなる被膜を有する部材を用いた、レンジフード等の調理機器、切削加工機等の工作機械、下水処理設備、空調設備、および、各種の運送・移動用機器などが挙げられる。
〈(共)重合体の合成〉
《合成原料》
実施例および比較例の(共)重合体を合成するために使用した化合物を表6に示す。これらの化合物は、いずれも、市場から試薬として入手することができる化合物または既知の合成方法によって容易に合成できる化合物である。
(共)重合体の構成単位の組成割合(重合組成)が表7〜表10に示す割合となる仕込比(質量部)で原料化合物を密閉容器に仕込み、70℃で18時間以上反応を行い、実施例および比較例で使用する(共)重合体を合成した。(共)重合体を合成する際の化合物濃度は20質量%とし、開始剤濃度は0.2質量%とした。
なお、合成した(共)重合体は、実施例1〜25および比較例1〜9に対応し、それぞれ、共重合体1〜25および比較(共)重合体1〜9と称する場合がある。
合成した(共)重合体の有効成分濃度が5質量%、アサヒクリンAE−3000(AGC旭硝子社製)が15質量%、およびm−キシレンヘキサフルオリド(以下「m−XHF」と表記する。)が80質量%となるように混合し、実施例で使用する滑油性表面処理組成物および比較例で使用する比較表面処理組成物を調製した。
なお、調製した滑油性表面処理組成物および比較表面処理組成物は、実施例1〜25および比較例1〜9に対応し、それぞれ、滑油性表面処理組成物1〜25および比較表面処理組成物1〜9と称する場合がある。
〈概要〉
調製した表面処理組成物の性能を、水、n−ヘキサデカン(HD)またはサラダ油(食用なたね油,日清オイリオ社製)に対する接触角と、サラダ油(食用なたね油,日清オイリオ社製)に対する転落角とを測定し、評価した。水に対する接触角が大きいほど撥水性能が高く、HDまたはサラダ油に対する接触角が大きいほど撥油性能が高い。また、サラダ油の転落角が小さいほど滑油性能が高い。
《皮膜付ガラス板の作製》
実施例および比較例のそれぞれについて、調製した表面処理組成物にガラス板を浸漬し、1分後に取り出し、120℃で5分間乾燥して、滑油性表面処理組成物または比較表面処理組成物の被膜を有するガラス板(被膜付ガラス板)を作製した。
作製した被膜付ガラス板のそれぞれについて、表面に水10μLを着滴させ、自動接触角計OCA−20(データフィジックス社製)を用いて接触角を測定した。
同様にして、HDに対する接触角も測定した。
作製した被膜付ガラス板のそれぞれについて、表面に市販のサラダ油(食用なたね油,日清オイリオ社製)10μLを着滴させ、自動接触角計OCA−20(データフィジックス社製)を用いて接触角[度]を測定した。
次いで、接触角を測定した後の被膜付ガラス板について、自動接触角計OCA−20(データフィジックス社製)を用いて転落角[度]を測定した。転落角を測定する際の転落角の移動速度は約1.6度/秒とした。液滴が移動を始めた際の角度を、転落角[度]とした。
滑油性表面処理組成物1〜25を使用した実施例1〜25および比較表面処理組成物1〜9を使用した比較例1〜9の接触角および転落角の測定結果を表7〜表10の「接触角[度]」の欄および「転落角[度]」の欄に示す。
(1)サラダ油の転落角が15度以下・・・優れた滑油性能
(2)サラダ油の転落角が13度以下・・・より優れた滑油性能
(3)サラダ油の転落角が11度以下・・・さらに優れた滑油性能
(4)サラダ油の転落角が9度以下・・・いっそう優れた滑油性能
Claims (9)
- 下記式(a)で表される化合物から導かれる構成単位および下記式(c)で表される化合物から導かれる構成単位を含む共重合体と、溶媒とを含む滑油性表面処理組成物であって、前記共重合体中、前記式(a)で表される化合物から導かれる構成単位の質量aの、前記式(a)で表される化合物から導かれる構成単位および前記式(c)で表される化合物から導かれる構成単位の合計質量a+cに対する質量百分率が33質量%以上である滑油性表面処理組成物。
CH2=CRa1−COO−Rf1 (a)
CH2=CRc1−Q1−Y (c)
式(a)中、
Ra1:水素原子またはメチル基、
Rf1:主鎖の炭素数が2〜3であり、末端基がCF3であるポリフルオロアルキル基。
式(c)中、
Rc1:水素原子またはメチル基、
Q1:単結合または2価の連結基、
Y:数平均分子量(Mn)が1000から30000のオルガノポリシロキサン基。 - 前記式(a)で表される化合物が下記式(a1)で表される化合物である請求項1に記載の滑油性表面処理組成物。
CH2=C(Ra1)−COO−CH2−CF3 (a1)
式(a1)中、
Ra1:水素原子またはメチル基。 - 前記共重合体が、さらに下記式(b)で表される化合物から導かれる構成単位を含み、
前記共重合体中、前記式(a)で表される化合物から導かれる構成単位の質量aの、前記式(a)で表される化合物から導かれる構成単位および前記式(b)で表される化合物から導かれる構成単位の合計質量a+bに対する質量百分率が25質量%以上である、請求項1または2に記載の滑油性表面処理組成物。
CH2=C(CH3)−COO−CH2CH2(CF2)6F (b) - 前記共重合体中、前記式(a)で表される化合物から導かれる構成単位、前記式(b)で表される化合物から導かれる構成単位および前記式(c)で表される化合物から導かれる構成単位の合計質量が、前記共重合体の全質量の40質量%以上である、請求項3に記載の滑油性表面処理組成物。
- 前記共重合体中、前記式(a)で表される化合物から導かれる構成単位および前記式(b)で表される化合物から導かれる構成単位の合計質量が、前記共重合体の全質量の50質量%以上である、請求項3または4に記載の滑油性表面処理組成物。
- 前記共重合体が、さらに下記式(e)で表される化合物から導かれる構成単位を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の滑油性表面処理組成物。
CH2=CRe1−Q3−W (e)
式中、
Re1:水素原子またはメチル基、
Q3:単結合または2価の連結基、
W:水酸基、カルボキシ基またはC1〜C3アルコキシシリル基。 - 前記共重合体が、さらに下記式(d)で表される化合物から導かれる構成単位を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の滑油性表面処理組成物。
(CH2=CRd1−COO−)nQ2 (d)
式(d)中、
Rd1:水素原子またはメチル基、
n:2以上の整数、
Q2:n価の連結基。 - 表面の少なくとも一部に、請求項1〜7のいずれか1項に記載の滑油性表面処理組成物を乾燥してなる被膜を有する部材。
- 請求項8に記載の部材が用いられた設備。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017223470A JP7026492B2 (ja) | 2017-11-21 | 2017-11-21 | 滑油性表面処理組成物、その滑油性表面処理組成物を乾燥してなる被膜を有する部材およびその部材が用いられた設備 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2017223470A JP7026492B2 (ja) | 2017-11-21 | 2017-11-21 | 滑油性表面処理組成物、その滑油性表面処理組成物を乾燥してなる被膜を有する部材およびその部材が用いられた設備 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2019094400A true JP2019094400A (ja) | 2019-06-20 |
JP7026492B2 JP7026492B2 (ja) | 2022-02-28 |
Family
ID=66971026
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2017223470A Active JP7026492B2 (ja) | 2017-11-21 | 2017-11-21 | 滑油性表面処理組成物、その滑油性表面処理組成物を乾燥してなる被膜を有する部材およびその部材が用いられた設備 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP7026492B2 (ja) |
Cited By (4)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2019094398A (ja) * | 2017-11-21 | 2019-06-20 | Agcセイミケミカル株式会社 | 滑油性表面処理組成物、その滑油性表面処理組成物を乾燥してなる被膜を有する部材およびその部材が用いられた設備 |
WO2022196502A1 (ja) * | 2021-03-17 | 2022-09-22 | Agc株式会社 | 表面処理剤および表面処理層を有する基材の製造方法 |
WO2022196503A1 (ja) * | 2021-03-17 | 2022-09-22 | Agc株式会社 | 表面処理剤および表面処理層を有する基材の製造方法 |
WO2023286402A1 (ja) * | 2021-07-12 | 2023-01-19 | ユニマテック株式会社 | 含フッ素共重合体およびこれを用いた表面改質基材 |
Citations (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2013185072A (ja) * | 2012-03-08 | 2013-09-19 | Agc Seimi Chemical Co Ltd | 滑水性表面処理剤 |
JP2019094398A (ja) * | 2017-11-21 | 2019-06-20 | Agcセイミケミカル株式会社 | 滑油性表面処理組成物、その滑油性表面処理組成物を乾燥してなる被膜を有する部材およびその部材が用いられた設備 |
-
2017
- 2017-11-21 JP JP2017223470A patent/JP7026492B2/ja active Active
Patent Citations (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2013185072A (ja) * | 2012-03-08 | 2013-09-19 | Agc Seimi Chemical Co Ltd | 滑水性表面処理剤 |
JP2019094398A (ja) * | 2017-11-21 | 2019-06-20 | Agcセイミケミカル株式会社 | 滑油性表面処理組成物、その滑油性表面処理組成物を乾燥してなる被膜を有する部材およびその部材が用いられた設備 |
Cited By (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2019094398A (ja) * | 2017-11-21 | 2019-06-20 | Agcセイミケミカル株式会社 | 滑油性表面処理組成物、その滑油性表面処理組成物を乾燥してなる被膜を有する部材およびその部材が用いられた設備 |
JP7026491B2 (ja) | 2017-11-21 | 2022-02-28 | Agcセイミケミカル株式会社 | 滑油性表面処理組成物、その滑油性表面処理組成物を乾燥してなる被膜を有する部材およびその部材が用いられた設備 |
WO2022196502A1 (ja) * | 2021-03-17 | 2022-09-22 | Agc株式会社 | 表面処理剤および表面処理層を有する基材の製造方法 |
WO2022196503A1 (ja) * | 2021-03-17 | 2022-09-22 | Agc株式会社 | 表面処理剤および表面処理層を有する基材の製造方法 |
WO2023286402A1 (ja) * | 2021-07-12 | 2023-01-19 | ユニマテック株式会社 | 含フッ素共重合体およびこれを用いた表面改質基材 |
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JP7026492B2 (ja) | 2022-02-28 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
JP2019094400A (ja) | 滑油性表面処理組成物、その滑油性表面処理組成物を乾燥してなる被膜を有する部材およびその部材が用いられた設備 | |
JP3612713B2 (ja) | 非水乳化型表面処理剤組成物 | |
KR101773659B1 (ko) | 내구형 방수·방습성 코팅 조성물 | |
JP5320266B2 (ja) | フッ素系重合体およびコーティング剤 | |
JP2019094398A (ja) | 滑油性表面処理組成物、その滑油性表面処理組成物を乾燥してなる被膜を有する部材およびその部材が用いられた設備 | |
JP5971990B2 (ja) | 滑水性表面処理剤 | |
WO2017074709A1 (en) | Solvent-based repellent coating compositions and coated substrates | |
JP5719299B2 (ja) | フルオロアルキル基含有n−置換(メタ)アクリルアミド化合物、その重合体およびその用途 | |
WO2010113646A1 (ja) | 表面処理剤 | |
JP2007284644A (ja) | コーティング組成物 | |
JP5613659B2 (ja) | 表面処理剤 | |
JP5605034B2 (ja) | フッ素系共重合体、フッ素系共重合体の製造方法およびコーティング剤 | |
KR20130108101A (ko) | 코팅용 플루오로중합체 첨가제 | |
JP5362246B2 (ja) | 潤滑オイルのバリア剤組成物、それを製造する方法およびその用途 | |
JP2012046674A (ja) | コーティング組成物、及びその製造方法 | |
WO2005116153A1 (ja) | 潤滑オイルのバリア剤組成物、およびその用途 | |
JP5145262B2 (ja) | 電子部品用樹脂付着防止剤、それを含む電子部材および電子部品 | |
JP2018070832A (ja) | 組成物、コーティング液および物品 | |
WO2022019183A1 (ja) | フッ素樹脂用分散剤、組成物、分散液、物品及び共重合体 | |
JP5943910B2 (ja) | 溶剤系フルオロポリマー添加剤及びコーティング組成物におけるそれらの使用 | |
WO2021090831A1 (ja) | フッ素樹脂用分散剤、分散液及び物品 | |
JP5171452B2 (ja) | 電子部品用樹脂付着防止組成物 | |
JP2020029469A (ja) | 表面処理剤 | |
JP2012214664A (ja) | 表面処理剤 | |
JP2014201724A (ja) | 表面処理組成物 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
RD02 | Notification of acceptance of power of attorney |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7422 Effective date: 20200514 |
|
A621 | Written request for application examination |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621 Effective date: 20201002 |
|
A977 | Report on retrieval |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007 Effective date: 20210726 |
|
A131 | Notification of reasons for refusal |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131 Effective date: 20210803 |
|
A521 | Request for written amendment filed |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523 Effective date: 20211001 |
|
TRDD | Decision of grant or rejection written | ||
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20220208 |
|
A61 | First payment of annual fees (during grant procedure) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61 Effective date: 20220215 |
|
R150 | Certificate of patent or registration of utility model |
Ref document number: 7026492 Country of ref document: JP Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150 |