JP5359153B2 - 複合床構造体及びその施工方法 - Google Patents

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Description

本発明は、船舶甲板、建築物のバルコニー及び共有廊下等の勾配を有する場所への複合床構造体の施工方法及びその施工方法によって得られる複合床構造体に関する。
建築物に付設されているバルコニーや共有廊下などは、屋外に位置しているため風雨に曝されることから耐候性が求められるとともに、コンクリート床表面に雨水が溜まるのを防止するために、一般的にコンクリート床表面には左官鏝などを用いてモルタル材を施工して緩やかな水勾配が形成される。
また、船舶甲板の鋼板床も勾配を有しており、この鋼板床の上面にもコンクリートを用いた複合床構造体を設ける場合がある。
船舶甲板等の塗床方法として、例えば、引用文献1には、予め清掃処理を行った金属塗面に赤錆・黒錆変換液を塗布して一定時間経過後これを洗浄して乾燥せしめる下地処理を行い、次いでその上に二液型エポキシ樹脂と粒状の骨材とを一定の体積比で混練した混練材を含む一定の厚みの塗膜を形成し、さらにこの中層の表面に有機重合物と有機固体分よりなる防水塗料を塗布して防水皮膜を形成することを特徴とする船舶甲板等の塗床方法が開示されている。
また、特許文献2には、船舶の鋼板上に施工される層構造材であって、少なくとも制振層と下地層とからなり、該制振層がアクリル樹脂系エマルションを含む配合物からなり、該下地が合成ゴムラテックスを含有するセメントであることを特徴とする船舶用構造材が開示されている。
また、特許文献3には、エポキシ系合成樹脂材を含む複合樹脂組成物として、粉末骨材と、水硬性材と、エポキシ系合成樹脂材と、樹脂硬化材とを少なくとも混合してなる複合樹脂組成物であって、使用に際して、前記エポキシ系合成樹脂材と樹脂硬化材とが所定比率で混合されることを特徴とする複合樹脂組成物が開示されている。
また、特許文献4には、金属被覆用のセメント組成物として、セメント、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、水、アルコールよりなるセメント組成物が開示されている。
特開昭55−116473号公報 特開2004−249805号公報 特開2001−233941号公報 特開平1−138164号公報
マンションの共用廊下やバルコニー等の外部床は、コンクリート直押えで水勾配の所要精度が得られないため、一般的に、左官用補修材等で補修が行なわれることが多く、溝及び壁際にウレタン系等の塗布防水を施した上に塩化ビニル等の長尺シートによる仕上げが多い。この場合、床補修は微妙な勾配の調整に熟練度が要求されることになるが、左官職人の高齢化・就業者数の減少により、短期間の工期での大量施工が困難になってきている。また、廊下やバルコニーは作業通路として用いられるため、通行禁止期間の短縮が望まれるが、左官用補修材の低温時の硬化遅延、硬化前の他業者の立入りや施工中、養生中の風雨による再補修と相俟って、工事期間が長くなることが多い。
このような背景のもと、近年、省力化を目的として、高流動タイプのモルタルが普及しているが、硬化速度が遅く、工期短縮に至っていないのが現状である。また、日光や風が当たる場所での施工となる場合には、モルタル表面の乾燥によるシワや気泡跡、硬化体にひび割れが発生しやすいなどの問題がある。
また、船舶甲板は勾配を有するので、船舶甲板上面に複合床構造体を施工する場合には、上述の場合と同様、微妙な勾配の調整に熟練度が要求され、短期間の工期での大量施工が困難であるという問題がある。
さらに、床船舶甲板は一般に鋼板床であるので、非吸水性である。このような非吸水性の下地床にレベリング材を施工する場合、レベリング材の一般的なプライマーを用いると、非吸水性の下地床との密着性が悪いという問題が生じる。
本発明は、屋外環境下などの水勾配の形成が必要な施工において、非吸水性の下地床の上面に、下地床との密着性がよく、水勾配の形成が容易で、施工効率が高く、耐久性に優れた、複合床構造体の施工方法及びその方法によって得られた複合床構造体を提供することを目的とする。
本発明は、勾配を有する非吸水性の下地床の上面に、アルミナセメントを含むポリマーセメント組成物からなる下地調整材を用いて下地調整材層を設ける工程と、下地調整材層の上面に、樹脂粉末を含むレベリング材を用いてレベリング材スラリー硬化体層を設ける工程とを含む、複合床構造体の施工方法である。
本発明の複合床構造体の施工方法の好ましい態様を以下に示す。本発明では、これらの態様を適宜組み合わせることができる。
(1)レベリング材に含まれる樹脂粉末が、アクリル共重合系の再乳化型樹脂粉末であって、樹脂粉末の1次粒子の平均粒径が0.2〜0.8μmであり、樹脂粉末の1次粒子表面がポリビニルアルコールの水溶性保護コロイドで被覆されている。
(2)レベリング材が、アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏からなる水硬性成分を含む。
(3)レベリング材が、水硬性成分と樹脂粉末とを含み、さらに無機粉末、細骨材、凝結調整剤、流動化剤、増粘剤及び消泡剤から選択される少なくとも1種以上を含む。
(4)レベリング材スラリー硬化体層の表面のショア硬度が、レベリング材のスラリーの打設の完了から2時間後に10以上である。
(5)レベリング材スラリー硬化体層の表面のショア硬度が、レベリング材のスラリーの打設の完了から6時間後に50以上である。
(6)レベリング材スラリー硬化体層を設ける工程が、下地調整材層の上面に、レベリング材を用いて第一レベリング材スラリー硬化体層を設ける工程と、第一レベリング材スラリー硬化体層の上面に、レベリング材を用いてさらに第二レベリング材スラリー硬化体層を設ける工程とを含む。
(7)レベリング材スラリー硬化体層の上面に、塗り床材仕上げ層、貼り床材仕上げ層及び塗料を用いた塗装仕上げ層から選ばれるいずれか1種の仕上げ層を設ける工程をさらに含む。
(8)ポリマーセメント組成物が、アルミナセメント、ポルトランドセメント及び高炉スラグ粉を含む水硬性組成物と、エポキシ樹脂とを含むポリマーセメント組成物Aであり、エポキシ樹脂が、エポキシ樹脂の非水性主剤とエポキシ樹脂の水性硬化剤とを含む。
(9)エポキシ樹脂が、エポキシ樹脂の非水性主剤と、エポキシ樹脂の水性硬化剤と、水とを配合したエポキシ樹脂エマルションの形態である。
(10)ポリマーセメント組成物が、アルミナセメント、細骨材、フィロケイ酸塩鉱物、短繊維及び消泡剤を含む水硬性組成物と、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルション及びアクリル系重合体エマルションを含むポリマーセメント組成物Bである。
(11)塗り床材仕上げ層が、エポキシ樹脂系塗り床材、ウレタン樹脂系塗り床材、メタクリル樹脂系塗り床材、アクリル樹脂系塗り床材、ポリエステル樹脂系塗り床材、ビニルエステル系塗り床材及びポリマーセメント系塗り床材から選択されるいずれか1種である塗り床材を用いて設けられる。
(12)複合床構造体の床面が勾配を有する。
(13)非吸水性の下地床が、陶磁器タイル張り床、樹脂製張り床、ガラス張り床、石張り床、樹脂塗り床及び鋼板床から選ばれるいずれかである。
(14)非吸水性の下地床が、船舶の甲板の鋼板床である。
また、本発明は、上述の施工方法によって得られる複合床構造体である。
本発明により、屋外環境下などの水勾配の形成が必要な施工において、非吸水性の下地床の上面に、下地床との密着性がよく、水勾配の形成が容易で、施工効率が高く、耐久性に優れた、複合床構造体の施工方法及びその方法によって得られた複合床構造体を得ることができる。
本発明者らは、上記課題に対して鋭意試行錯誤を繰り返した結果、レベリング材のスラリーを安定して施工するに充分な可使時間(ハンドリングタイム)を保持しながらも、工事スケジュールの延長を最小限に留めることが可能な速硬性・速乾性を有しつつ、水勾配を形成することに優れたレベリング材を見出した。
さらにこのレベリング材と、所定の下地調整材とを組み合わせて施工し、場合によりその上面に塗り床材を施工することにより、非吸水性の下地床への密着性の良好な複合床構造体の施工が可能であり、施工効率と水勾配を形成することに優れ、供用時にも良好な耐久性を有する複合床構造体を得ることができることを見出し、本発明を完成させた。
なお、「複合床構造体」とは、下地床と、その上面に設けられた床構造体とを含む床構造体である。また、「非吸水性の下地床」とは、下地床の全体が非吸水性の場合だけでなく、下地床の少なくとも一部が非吸水性である場合も含むものである。
本発明の勾配を有する複合床構造体の施工方法及びその施工方法によって得られる複合床構造体について、図1(a)〜図1(e)に示す図面にしたがって実施形態の一例を説明する。
図1(a)は、屋外の下地床11を示す部分断面図である。本発明では、まず図1(b)に示すように、凹凸(小さな凹凸)や平滑度が低い勾配を有する下地床上面12に、後述する所定のポリマーセメント組成物からなる下地調整材を用いて下地調整材層13を施工する。
次に、下地調整材層13が乾燥して造膜したのち、その上面に図1(c)に示すように、樹脂粉末を含む所定のレベリング材を用いて、レベリング材スラリー14を打設する。
なお、レベリング材スラリーの調製及び施工は、レベリング材を袋物の形態で施工現場に搬入し、施工場所の近傍で現場設置型の混合・混練装置やハンドミキサー等の混合機を用いて、所定量の水とレベリング材とを混合・混練してレベリング材スラリーを調製することができる。
次に、下地調整材層13の上面に供給・打設されたレベリング材スラリー14を、図1(d)に示すように、左官鏝、トンボ及び/又はスパイクローラーなどを用いて所定の勾配が得られるように下地調整材層13の上面全体にレベリング材スラリー14を押し広げたのち、スラリー表面を、左官鏝を用いて所定の傾斜を持たせて平滑に仕上げる。
レベリング材スラリーが硬化した後、図1(e)に示すように、レベリング材スラリー硬化体16の上面に、仕上げ層17を形成することができる。仕上げ層を形成する材料としては、各種樹脂製タイルやシート仕上げ材などの貼り床仕上げ材又は塗り床材などを用いることができる。また各種塗料を用いて塗装仕上げを行うことができる。
なお、前記の本発明の施工方法おいて、施工面積が200m以上の大面積である場合には、特開2008−57202号公報の図4に示すようなレベリング材を貯蔵するタンクを備えたレベリング材スラリー調製・施工用トラックを使用することが好ましい。レベリング材スラリー調製・施工用トラックを用いることにより、レベリング材のスラリーを連続的に調製して、施工箇所へ連続的に供給して施工できることから、施工効率及び施工品質の観点からさらに優れたレベリング材スラリー硬化体層を得ることができる。
レベリング材スラリー調製・施工用トラックを好適に適用できる施工面積としては、好ましくは200m以上の施工面積を有する現場、さらに好ましくは400m以上の施工面積を有する現場、特に好ましくは500m以上の施工面積を有する現場である。このような大面積の現場にレベリング材スラリーを施工する場合に、前記トラックを用いることで施工効率の高さが顕著となり、次工程である塗り床材の施工への移行期間を大幅に短縮することができる。
本発明の複合床構造体の施工方法によれば、所定の下地調整材、所定のレベリング材及び所定の仕上げ材を組み合わせるものである。それによって、多種多様の凹凸や傾斜を有する非吸水性の下地床の上面に、レベリング材スラリーを施工・硬化させて所定の傾斜を有した平滑なレベリング材スラリー硬化体層を形成した後に、仕上げ材を施工することができる。そのため、仕上げ材の仕上り面もまた所定の勾配を有した平滑な仕上げ面を有し、良好な供用性と美観が得られる。
また、本発明の施工方法に用いる好ましいレベリング材は、アルミナセメント及び樹脂粉末を適正量含むことにより、速硬性・速乾性に優れ、所定の勾配を有する床面を容易に形成できるレベリング材を用いることによって、極めて効率的にかつ安定的に各種仕上げ材の下地を施工することが可能である。
また、本発明の施工方法に用いることにより、塗り床材や貼り床材等の非吸水性の、既設の下地床を除去する必要もなく、その上面に、各種仕上げ材を用いた新たな床構造体を、密着性良く施工して設けることによって、本発明の複合床構造体を形成することができる。
本発明の施工方法によって施工することができる既設の非吸水性の下地床としては、例えば、鋼製床表面層やコンクリート床表面層の上面に、塗り床仕上げ層又は貼り床仕上げ層を設けた構造を挙げることができる。貼り床仕上げとしては、タイル仕上げ、天然石板仕上げ、陶磁器板仕上げ、金属板仕上げ、樹脂板仕上げ及び樹脂シートから選ばれる非吸水性仕上げを設けた構造を挙げることができる。特に、船舶の甲板の鋼板床を下地床として本発明の施工方法に用いた場合には、高強度で高耐磨耗な特性を有することから複合床構造体として優れた耐久特性が得られるなど、優れた甲板面を容易に得ることができるために好ましい。
なお、既設の下地床が、鋼製床表面層やコンクリート床表面層の上面の少なくとも一部に、貼り床材仕上げ又は塗り床材仕上げなどの非吸水性仕上げを設けた構造を有する場合のように、下地床の一部が非吸水性であり、他の部分が吸水性であっても、下地床全体に対してポリマーセメント組成物を密着性良く施工することができる。
次に、本発明で用いる下地調整材、レベリング材及び仕上げ材について説明する。
<下地調整材>
本発明で使用する下地調整材は、非吸水性の下地床とレベリング材スラリー硬化体とを強固に接着するために用いる。本発明の施工方法に用いる下地調整材としては、アルミナセメントを含むポリマーセメント組成物を好ましく用いることができ、以下に説明するポリマーセメント組成物A及びポリマーセメント組成物Bから選択される少なくとも一つを用いることが特に好ましい。
<ポリマーセメント組成物A>
本発明の施工方法用いる下地調整材として、所定のポリマーセメント組成物Aからなる下地調整材を用いることが好ましい。ポリマーセメント組成物Aは、アルミナセメント、ポルトランドセメント及び高炉スラグ粉を含む水硬性組成物と、エポキシ樹脂とを含むポリマーセメント組成物であり、エポキシ樹脂が、エポキシ樹脂の非水性主剤(「油性主剤」ともいう)とエポキシ樹脂の水性硬化剤とを含むことを特徴とするポリマーセメント組成物である。以下、本発明の施工方法用いる下地調整材として好ましいポリマーセメント組成物Aの好ましい態様を具体的に説明する。
ポリマーセメント組成物Aに含まれるエポキシ樹脂としては、エポキシ樹脂の非水性(油性)主剤とエポキシ樹脂の水性硬化剤とを用いる。
ポリマーセメント組成物Aに含まれるエポキシ樹脂の主剤は、非水性主剤(油性主剤)であればその種類・タイプ等の制限なく使用できる。エポキシ樹脂の非水性(油性)主剤としては、特にビスフェノールAを好ましくは70%以上、さらに好ましくは75%以上含むものが好適に使用される。ポリマーセメント組成物Aに含まれるエポキシ樹脂の非水性(油性)主剤とは、その構成成分として水を含まないものである。したがって、予めエポキシ樹脂の非水性(油性)主剤と水とを混合攪拌して調製したエマルションは、本発明で用いるエポキシ樹脂の非水性(油性)主剤とは異なるものであり、ポリマーセメント組成物Aでは用いない。
ポリマーセメント組成物Aにおけるエポキシ樹脂の硬化剤は、水性のものであればその種類・タイプ等の制限なくすべて使用できる。エポキシ樹脂の水性の硬化剤としては、特に水に低粘度分散又は溶解するものが好ましく、構造的には変性ポリアミン、変性ポリアミドアミン等が好適に使用できる。
ポリマーセメント組成物Aのエポキシ樹脂は、エポキシ樹脂の非水性(油性)主剤と、エポキシ樹脂の水性硬化剤と、水とを含む配合物とを混合攪拌して、均質なエポキシ樹脂エマルションを調製して、エポキシ樹脂エマルションの形態として使用することが好ましい。
エポキシ樹脂の非水性(油性)主剤とエポキシ樹脂の水性硬化剤との混合割合は、非水性(油性)主剤100質量部に対して、水性硬化剤が20〜400質量部を配合することが好ましい。
ポリマーセメント組成物Aに含まれる水硬性組成物は、水硬性成分としてアルミナセメントとポルトランドセメントとを含む。
アルミナセメントとポルトランドセメントの配合割合は、好ましくはアルミナセメント45〜95質量%に対して、ポルトランドセメント5〜55質量%、より好ましくは、アルミナセメント50〜85質量%に対して、ポルトランドセメント15〜50質量%、特に好ましくは、アルミナセメント55〜75質量%に対して、ポルトランドセメント25〜45質量%の範囲で用いることが、実用的な可使時間を保持しつつ、急硬性で、低収縮性又は低膨張性で硬化中の体積変化の少ない硬化物を得られるために好ましい。アルミナセメントが45〜95質量%の範囲の下限より少ないと、可使時間が短く施工性が不良になる可能性があるとともに、低温域の硬化時間が長くなることがあるので、45〜95質量%の範囲の下限以上であることが好ましい。また、45〜95質量%の範囲の上限を超えると、低温域の硬化が著しく遅れる可能性があることから、45〜95質量%の範囲の上限以下であることが好ましい。
アルミナセメントとしては、鉱物組成の異なるものが数種知られ市販されているが、いずれも主成分はモノカルシウムアルミネート(CA)であり、市販品はその種類によらず使用することができる。
ポルトランドセメントとしては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント及び白色ポルトランドセメントなどのポルトランドセメントなどから選択される1種以上を用いることができる。また、ポルトランドセメントを含む高炉セメント、フライアッシュセメント及びシリカセメントなどから選択される1種以上の混合セメントなども用いることができる。
ポリマーセメント組成物Aに含まれる水硬性組成物は、さらに高炉スラグ粉を含むことが好ましい。水硬性組成物が高炉スラグ粉を含むことにより、乾燥収縮による硬化体の耐クラック性を高めることができる。
ポリマーセメント組成物Aに含まれる水硬性組成物において、高炉スラグ粉の配合量は、水硬性成分100質量部に対し、好ましくは10〜350質量部、より好ましくは30〜200質量部、さらに好ましくは50〜180質量部、特に好ましくは70〜150質量部を配合するのが好ましい。高炉スラグ粉の配合量が10〜350質量部の範囲の下限より少ない場合には、硬化性状が不良となる可能性があるため、10〜350質量部の範囲の下限より多いことが好ましい。また、高炉スラグ粉の配合量が10〜350質量部の範囲の上限より多い場合には、硬化体強度の低下を招く可能性があるため、10〜350質量部の範囲の上限より少ないことが好ましい。
ポリマーセメント組成物Aに含まれる高炉スラグ粉は、JIS A 6206に規定されるブレーン比表面積3000cm/g以上のものを用いることができる。
ポリマーセメント組成物Aに含まれる水硬性組成物は、さらにフライアッシュ及びシリカ粉などから選択される1種以上の無機成分を含むことができ、乾燥収縮による硬化体の耐クラック性を高めることができる。
ポリマーセメント組成物Aに含まれる水硬性組成物において、無機成分の添加量は、水硬性成分(ポルトランドセメント、アルミナセメントの合計)100質量部に対し、好ましくは10〜350質量部、より好ましくは30〜200質量部、さらに好ましくは50〜180質量部、特に好ましくは70〜150質量部とするのが好ましい。
ポリマーセメント組成物Aに含まれる水硬性組成物は、必要に応じてさらに細骨材を含むことができる。細骨材は、水硬性成分100質量部に対し、好ましくは30〜500質量部、より好ましくは50〜400質量部、さらに好ましくは80〜300質量部、特に好ましくは100〜250質量部の範囲が好ましい。
細骨材としては、粒径2mm以下の骨材、好ましくは粒径0.032〜1.5mmの骨材、さらに好ましくは粒径0.075〜1mmの骨材、特に好ましくは0.1〜0.85mmの骨材を主成分としている。
細骨材としては、珪砂、川砂、海砂、山砂及び砕砂などから選択される1種以上の砂類などを好ましく用いることができる。
細骨材の粒径は、JIS Z 8801−1:2006で規定される呼び寸法の異なる数個のふるいを用いて測定する。
ポリマーセメント組成物Aに含まれる水硬性組成物は、必要に応じてさらに石膏を含むことができる。石膏は、無水石膏、半水石膏及び二水石膏等の各石膏がその種を問わず1種又は2種以上の混合物として使用できる。石膏の添加は、ポリマーセメントモルタルの硬化後の寸法安定性改善に寄与し、特に硬化体の防水性能が向上することから好ましい。石膏の配合量は、水硬性成分100質量部に対して、好ましくは1〜50質量部、より好ましくは2〜45質量部、さらに好ましくは3〜40質量部を配合することが好ましい。
ポリマーセメント組成物Aに含まれる水硬性組成物は、材料分離を抑制しつつ適度の流動性を確保する流動化剤(高性能減水剤などの減水剤)を含むことが好ましい。水硬性成分であるアルミナセメント及びポルトランドセメントの発現強度は、ともに水/セメント比の影響を大きく受けることから、減水効果を有する流動化剤を使用して水/水硬性成分比を小さくすることが有効である。
流動化剤としては、減水効果を合わせ持つ、メラミンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物、カゼイン、カゼインカルシウム、ポリエーテル系等及びポリエーテルポリカルボン酸などから選択される1種以上の市販のものが、その種類を問わず使用でき、特にポリエーテル系等及びポリエーテルポリカルボン酸などから選択される1種以上の市販のものが好ましい。
流動化剤は、水硬性成分の特性を損なわない範囲で適宜添加することができ、水硬性成分100質量部に対して好ましくは0.01〜2質量部、より好ましくは0.03〜1.5質量部、さらに好ましくは0.05〜1質量部を配合することができる。添加量が余り少ないと十分な効果が発現せず、また多すぎても添加量に見合った効果は期待できず単に不経済であるだけでなく、場合によっては所要の流動性を得るための混練水量が増大し、同時に粘稠性も大きくなり、施工性が悪化する場合が考えられる。
ポリマーセメント組成物Aに対して、水硬性成分の特性を損なわない範囲で凝結調整剤(凝結促進剤及び凝結遅延剤)を適宜添加することができる。凝結促進剤及び凝結遅延剤の成分、添加量及び混合比率を適宜選択して、水硬性組成物の可使時間を調整することができる。
凝結促進剤としては、公知の凝結を促進する成分を用いることができ、例えば、凝結促進の性質を有するリチウム塩を好適に用いることができる。凝結促進剤の配合量は、水硬性成分100質量部に対して0.002〜1.5質量部、より好ましくは0.005〜1質量部、さらに好ましくは0.01〜0.5質量部の範囲で添加することが好ましい。
リチウム塩の一例として、炭酸リチウム、塩化リチウム、硫酸リチウム、硝酸リチウム、水酸化リチウム、酢酸リチウム、酒石酸リチウム、リンゴ酸リチウム及びクエン酸リチウムなどの有機酸などの、無機リチウム塩や有機リチウム塩などのリチウム塩から選択される1種以上を用いることができる。特に炭酸リチウムは、凝結促進効果、入手容易性及び価格の面から特に好ましい。
凝結遅延剤としては、公知の凝結遅延剤を用いることができる。凝結遅延剤の一例として、硫酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、酒石酸ナトリウム類(酒石酸一ナトリウム、酒石酸二ナトリウム)、リンゴ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム類、グルコン酸ナトリウムなど有機酸などの、無機ナトリウム塩や有機ナトリウム塩などのナトリウム塩、オキシカルボン酸類などから選択される1種以上を用いることができる。特に重炭酸ナトリウムや酒石酸二ナトリウムは、凝結遅延効果、入手容易性及び価格の面から好ましい。
オキシカルボン酸類は、オキシカルボン酸及びこれらの塩を含む。オキシカルボン酸としては、例えばクエン酸、グルコン酸、酒石酸、グリコール酸、乳酸、ヒドロアクリル酸、α−オキシ酪酸、グリセリン酸、タルトロン酸、リンゴ酸などの脂肪族オキシ酸、サリチル酸、m−オキシ安息香酸、p−オキシ安息香酸、没食子酸、マンデル酸、トロパ酸等の芳香族オキシ酸等を挙げることができる。
オキシカルボン酸の塩としては、例えばオキシカルボン酸のアルカリ金属塩(具体的にはナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(具体的にはカルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩など)などを挙げることができる。
凝結遅延剤の添加量は、水硬性成分100質量部に対して0.05〜3質量部、より好ましくは0.1〜2質量部、さらに好ましくは0.3〜1.5質量部の範囲で添加することが好ましい。
消泡剤は、シリコン系、アルコール系及びポリエーテル系などから選択される1種以上の合成物質又は植物由来の天然物質など、公知のものを用いることができる。
ポリマーセメント組成物Aに対して、本発明の特性を損なわない範囲で消泡剤を添加することができる。消泡剤の添加量は、水硬性成分100質量部に対して、好ましくは0.001〜2質量部、より好ましくは0.005〜1.5質量部、さらに好ましくは0.01〜1質量部、特に0.02〜0.5質量部含むことが好ましい。消泡剤の添加量は、0.001〜2質量部の範囲内であることが、良好な消泡効果が認められるために好ましい。
ポリマーセメント組成物Aに対して、増粘剤を添加することができる。増粘剤は、ヒドロキシエチルメチルセルロースを含む増粘剤を好適に用いることができ、ヒドロキシエチルメチルセルロースを除く他のセルロース系、蛋白質系、ラテックス系及び水溶性ポリマー系などから選択される1種以上を併用して用いることができる。
増粘剤の添加量は、本発明の特性を損なわない範囲で添加することができ、水硬性組成物100質量部中に、好ましくは0.001〜2質量部、より好ましくは0.005〜1質量部、さらに好ましくは0.01〜0.8質量部、特に0.03〜0.6質量部含むことが好ましい。増粘剤の添加量が多くなると、流動性の低下を招く恐れがあるために0.001〜2質量部の範囲で用いることが好ましい。
ポリマーセメント組成物Aに対して、増粘剤及び消泡剤を併用して用いることは、水硬性成分や細骨材などの骨材分離の抑制、気泡発生の抑制、ポリマーセメント硬化体表面の改善に好ましい効果を与え、ポリマーセメント硬化体の特性を向上させるために好ましい。
ポリマーセメント組成物Aの水硬性組成物は、アルミナセメント、ポルトランドセメント及び高炉スラグ粉を含むことができる。また、ポリマーセメント組成物Aは、水硬性成分以外の成分として、硅砂などの細骨材、必要に応じて配合する流動化剤、ヒドロキシエチルメチルセルロースを含む増粘剤、消泡剤及び凝結調整剤を含むことができる。
ポリマーセメント組成物Aは、アルミナセメント、ポルトランドセメント及び高炉スラグ粉を含む水硬性組成物と、エポキシ樹脂とを含むポリマーセメント組成物であり、エポキシ樹脂が、エポキシ樹脂の非水性(油性)主剤とエポキシ樹脂の水性硬化剤とを含むことが、非吸水性の下地床及びレベリング材スラリー硬化体層の両方に対する密着性に優れることから好ましい。また、ポリマーセメント組成物に含まれるエポキシ樹脂が、エポキシ樹脂の非水性(油性)主剤とエポキシ樹脂の水性硬化剤と水とを配合したエポキシ樹脂エマルションであることが、より密着性に優れることから、より好ましい。
所定の水硬性成分と、高炉スラグ粉、無機成分、細骨材、必要に応じて配合する流動化剤、増粘剤、凝結調整剤、消泡剤などを混合機で混合することによって、ポリマーセメント組成物Aのプレミックス粉体を得ることができる。
ポリマーセメント組成物Aでは、まずエポキシ樹脂の非水性(油性)の主剤と、エポキシ樹脂の水性硬化剤を含む水溶液とを攪拌機を用いて混合攪拌し、均質なエポキシ樹脂エマルションを調製する。続いて、このエポキシ樹脂エマルションに水硬性組成物を加えて混合攪拌し、ポリマーセメント組成物Aを得る。
また、ポリマーセメント組成物Aでは、まずエポキシ樹脂の非水性(油性)の主剤と、エポキシ樹脂の水性硬化剤を含む水溶液とを攪拌機を用いて混合攪拌し、均質なエポキシ樹脂エマルションを調製したのち、このエポキシ樹脂エマルションに水硬性組成物と水とを加えて混合攪拌し、ポリマーセメント組成物を得ることができる。
ポリマーセメント組成物Aにおいて、水硬性組成物に対するエポキシ樹脂の配合割合は、水硬性組成物100質量部に対して、エポキシ樹脂の非水性(油性)及びエポキシ樹脂の水性硬化剤からなるエポキシ樹脂エマルションの全固形分の使用量が、3〜35質量部の範囲が好ましく、5〜30質量部の範囲であることがより好ましく、6〜25質量部であることがさらに好ましく、7〜20質量部であることが特に好ましい。3〜35質量部の範囲の下限未満では、下地床とポリマーセメント組成物の硬化体との間に充分な接着強度が得られないことがあり、防水性能も低下することがあるため、3〜35質量部の範囲の下限以上であることが好ましい。また、3〜35質量部の範囲の上限を超えるとスラリー粘度の上昇が顕著になり施工性が損なわれることがあり、また経済性も低下することがあるため、3〜35質量部の範囲の上限以下であることが好ましい。
ポリマーセメント組成物Aは、鏝塗り、刷毛塗り、吹付け、流し延べ、注入等の方法により施工し、材料自体の持つ良好な流動性によって下地を平滑に調整することができる。
ポリマーセメント組成物Aは、エポキシ樹脂の非水性(油性)の主剤とエポキシ樹脂の水性硬化剤とを含むエポキシ樹脂エマルションと、水硬性組成物と、さらに必要に応じて水とを一定比率で混合する。このようなポリマーセメント組成物Aは、好ましくは2℃〜40℃の温度範囲において、より好ましくは5℃〜35℃の温度範囲において、可使時間が0.3〜2時間であり、実用上の作業時間確保に充分な可使時間を有し、塗り厚1mm〜3mmの薄塗り時は勿論、塗り厚3mm〜30mmの厚塗り時においても、乾燥及び水和による硬化時間が0.75時間〜9時間で速やかに硬化し、降雨などの障害による塗膜破壊の危険性を極力小さくできる。
さらに、ポリマーセメント組成物Aの硬化体は、防水性能としてJIS A 1404−1994(1時間、294.0kPa)の透水量が3g以下であり、仮防水性又は防水性を保有するものである。
ポリマーセメント組成物Aの好ましい様態は以下のとおりである。ポリマーセメント組成物Aではこれらを複数組み合わせることができる。
1)エポキシ樹脂が、エポキシ樹脂の非水性(油性)主剤とエポキシ樹脂の水性硬化剤と水とを配合したエポキシ樹脂エマルションであること。
2)アルミナセメントとポルトランドセメントの配合割合が、アルミナセメント45〜95質量%、ポルトランドセメント55〜5質量%であること。
3)水硬性組成物がさらに石膏を含むこと。
4)水硬性組成物100質量部に対して、エポキシ樹脂の固形分が3〜35質量部であること。
ポリマーセメント組成物Aは、低温域から高温域の広い温度領域で、多様な材質の下地に施工可能で、速硬性、仮防水性及び下地と強固な接着性を有し、さらに、本発明のポリマーセメント組成物を用いた下地調整材の上に、多様な上塗り仕上げ材の施工が可能なポリマーセメント組成物であり、既設建築物の改修における防水工事をはじめとして、新設建築物の建設における防水工事に好適に利用でき、優れた性能を発揮するものである。
<ポリマーセメント組成物B>
本発明の施工方法用いる下地調整材として、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルション及びアクリル系重合体エマルションを含むポリマーセメント組成物Bを用いることが好ましい。ポリマーセメント組成物Bは、好ましくは、アルミナセメント、細骨材、フィロケイ酸塩鉱物、短繊維及び消泡剤を含む水硬性組成物と、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルション及びアクリル系重合体エマルションをさらに含むポリマーセメント組成物エマルションであることが好ましい。以下、本発明の施工方法用いる下地調整材として好ましいポリマーセメント組成物Bの好ましい態様を具体的に説明する。
ポリマーセメント組成物Bに含まれる所定のエマルションは、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルション及びアクリル系重合体エマルションの少なくとも2種類のエマルションを含むものであり、特性に悪影響を与えない範囲で他のエマルションを含むことができる。
ポリマーセメント組成物Bに含まれる所定のエマルションは、公知の製造方法により得られるものを用いることができる。例えば、乳化剤の存在下に、重合開始剤を用いて、水又は含水溶媒中で合成樹脂の原料となる重合性モノマーを乳化重合する方法などにより製造することができる。
所定のエマルションを製造するために用いることのできる乳化剤としては、公知のものを用いることができる。具体的には、アニオン性、ノニオン性、カチオン性及び両性の界面活性剤並びにポリビニルアルコール等の保護コロイドなどから選択される1種以上を用いることができる。
所定のエマルションを製造するために用いることのできる重合開始剤としては、水又は含水溶媒中でラジカル重合できるものが好ましく、過酸化水素、過酢酸、過硫酸及びこれらのアンモニウム塩、並びに硫酸塩等の水溶性の過酸化物及びその塩などから選択される1種以上を用いることができる。また、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド及び2,2’−アゾビスイソブチルニトリルなどの有機過酸化物、メタ亜硫酸ナトリウムやピロ亜硫酸ナトリウムなどの還元剤を併用することができる。重合開始剤の使用量は、エマルションが製造できる範囲であれば適宜選択できる。
エマルションは、水又は含水溶媒を含まない粉末状の合成樹脂粒子を含み、粉末状の合成樹脂粒子を用いる場合には、エマルションの成分のうち、水又は含水溶媒を除いた全成分を一つのパッケージとすることができる。そのようなパッケージとすると、施工現場では水を添加するだけで使用できるので便利である。
エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルションは、エチレンと酢酸ビニルとを共重合した公知のエマルションを用いることができる。
エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルションの固形分のガラス転移温度は、適宜選択して用いることができるが、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルションの固形分のガラス転移温度は、好ましくは10℃以下、より好ましくは0℃以下、さらに好ましくは−50〜10℃、特に好ましくは−40〜0℃のものが、伸び及び下地追従性(下地寸法変化追従性)を確保するために好ましい。
エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルションとしては、ポリビニルアルコール及びセルロース誘導体などから選択される1種以上の水溶性高分子を、乳化剤や保護コロイドとして用いるものを好ましく用いることができる。特にエチレン−酢酸ビニル共重合体エマルションとしては、保護コロイドとしてポリビニルアルコールを用いたものを用いることが好ましい。
エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルションの重合体成分において、酢酸ビニル含有量は、好ましくは30〜90質量%、より好ましくは50〜90質量%、さらに好ましくは60〜86質量%が好ましい。
エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルション中のエチレン−酢酸ビニル共重合体成分の含有量は、好ましくは40〜65質量%、より好ましくは45〜60質量%、さらに好ましくは47〜60質量%である。
特に、エチレン−酢酸ビニル共重合エマルションは、ポリビニルアルコールを保護コロイドとして用いたものを使用することが好ましい。ポリマーセメント組成物Bの施工性は、エチレン−酢酸ビニル共重合エマルションに用いられる保護コロイド種により影響を受けることがある。例えば、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなどを用いる場合には、組み合わせるアルミナセメント種によっては混練性が悪くなることがある。それに対し、ポリビニルアルコールを保護コロイドにしたエチレン−酢酸ビニル共重合エマルション(以下、「PVA−EVAエマルション」という)の場合には、アルミナセメント種による混練性への影響はほとんど認められないために好ましい。
アクリル系重合体エマルションとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどのアルキル(メタ)アクリレートなど(メタ)アクリレート化合物などを1種又は2種以上を重合したもの、さらにこれらのモノマーと共重合可能な、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニリデンなどから選択される1種以上のビニル化合物と共重合させたものを用いることができる。(メタ)アクリレートとは、メタクリレート及びアクリレートから選択される1種以上を意味する。
アクリル系重合体エマルションは、エマルションに含まれるポリマー成分が、架橋していないポリマー、さらに好ましくはポリマー内又はポリマー間で架橋していないポリマーを用いることにより、伸びに優れるために好ましい。
アクリル系重合体エマルションには、公知の乳化剤や保護コロイドを用いることができる。例えば、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体などの水溶性高分子、非イオン界面活性剤、イオン性界面活性剤などの乳化剤や保護コロイドを用いることができる。
アクリル系重合体エマルションは、公知のエマルションを用いることができ、アクリル系重合体成分の含有量は特に制限がない。
アクリル系重合体エマルションの固形分のガラス転移温度は、適宜選択して用いることができる。アクリル系重合体エマルションの固形分のガラス転移温度は、好ましくは10℃以下、より好ましくは0℃以下、さらに好ましくは−50〜10℃、特に好ましくは−40〜0℃のものが、伸び及び下地追従性(下地寸法変化追従性)を確保するために好ましい。
アクリル系重合体エマルションをPVA−EVAエマルションなどのエチレン−酢酸ビニル共重合エマルションに混合することで、ローラー塗布時や鏝塗り施工時のポリマーセメント組成物の延び及びローラーや鏝の滑りが向上し、施工性が改善されるとともに、低温時の伸びが大きくなり耐久性が大きく向上する。施工性の向上は、単独では粒子径が約0.5μmであるPVA−EVAエマルションなどのエチレン−酢酸ビニル共重合エマルションに、粒子径が約0.1μmのアクリル系重合体エマルションを混合することによるベアリング効果、及び保護コロイドに増粘性材料が使用されていないことによると推測される。また、耐久性の向上は、PVA−EVAエマルションなどのエチレン−酢酸ビニル共重合エマルションに比べアクリル系重合体エマルションの伸びが大きく伸縮性に富んでいることから、PVA−EVAエマルションなどのエチレン−酢酸ビニル共重合エマルション単独より特定割合の混合系にすることにより経時による劣化耐性が大幅に向上したと考えられる。
耐久性は、複合床構造体などに用いる下地調整材では非常に重要であり、特に下地寸法変化追従性及び接着強度が要求される。下地調整材の下地寸法変化追従性が低下した場合は、ピンホールなどの欠陥発生又は破断に至り、下地調整材の役割を果たさなくなる。さらに経年による劣化もあるために、下地寸法変化追従性を長期間維持することは非常に困難である。一方、アクリル系重合体エマルションを、PVA−EVAエマルションなどのエチレン−酢酸ビニル共重合エマルションに混合することで、長期間0.9mm以上、好ましくは1.2mm以上、より好ましくは1.5mm以上、さらに好ましくは1.8mm以上の下地寸法変化追従性を維持することが可能となる。特に、下地が船舶のデッキ甲板などの鋼板の場合には、温度変化によって膨張収縮が繰り返されることから、高耐久な複合床構造体を得るために、下地調整材は高い下地寸法変化追従性を有することが重要である。
アクリル系重合体エマルションの配合量は、エチレン−酢酸ビニル共重合エマルションの固形分100質量部に対してアクリル系重合体エマルションの固形分換算で3〜20質量部、好ましくは4〜20質量部、より好ましくは5〜20質量部、さらに好ましくは6〜20質量部とするのが好ましい。アクリル系重合体エマルションの配合割合が3質量部未満では、エチレン−酢酸ビニル共重合エマルションとの混合効果の発現が十分でない。一方、アクリル系重合体エマルションの配合割合が20質量部を超えると、ポリマーセメント組成物塗布時の皮張りが早く、また角立ちを起こし、作業性の低下を招く恐れがある。
アルミナセメントは、耐火物用、土木用及び建築用などのいずれの用途のアルミナセメントでも問題なく使用でき、アルミナの含有量も特に制限なく用いることができる。アルミナセメントは、鉱物組成が異なるものが数種知られ市販されているが、いずれも主成分はモノカルシウムアルミネートであり、市販品はその種類によらず使用することができる。
アルミナセメントの使用量は、エマルションの固形分100質量部に対して、好ましくは20〜80質量部、より好ましくは23〜75質量部、さらに好ましくは25〜70質量部、特に好ましくは30〜65質量部とするのが好ましい。
アルミナセメントは、水和反応により塗装物の乾燥を促進させ、硬化した塗膜の耐水性向上及び強度の確保のために必要な成分であるが、添加量が20質量部未満の場合は乾燥が不十分となり、また80質量部超える場合はポットライフ(可使時間)が短く、作業性に支障を来すことになる。
ポリマーセメント組成物Bには、フィロケイ酸塩を添加する。フィロケイ酸塩鉱物としては、雲母及びパイロフィライトから選択される1種以上を使用できる。良好な下地寸法変化追従性及び接着強度を得る点から、ポリマーセメント組成物Bに含まれるフィロケイ酸塩鉱物としては、タルク及び/又は蛇紋石を用いることが好ましい。
層状のケイ酸塩であるフィロケイ酸塩の使用によりレベリング性が付与され、ローラー塗装時のローラー滑り及びポリマーセメント組成物の延びが向上し、角立ちが大幅に低減される。また、不織布の上からローラー塗装する際には、粒子形状が層状で配向する性質を利用し、スラリーの保水性を向上させ、水分だけが不織布下に逃げないようにすることで材料分離を著しく改善することが可能である。また、鏝塗り施工時の鏝滑り及びポリマーセメント組成物の延びが向上し、鏝塗り施工性が大幅に向上する。
フィロケイ酸塩鉱物の使用量は、エマルションの固形分100質量部に対して、好ましくは4〜80質量部、より好ましくは6〜70質量部、さらに好ましくは8〜60質量部、特に好ましくは10〜50質量部とするのが好ましい。4質量部以上では所定のレベリング効果を得ることができ、一方、80質量部以下では増粘効果が大きくなりすぎることがなく、作業性も良好であるためである。
なお、フィロケイ酸塩鉱物は、レベリング性及び増粘性の面から、5〜20μm程度の粒子径を持つものを使用することが好ましい。
珪砂は、表面精度の面から5〜7号の使用が適当である。珪砂の使用量は、エマルションの固形分100質量部に対して、好ましくは20〜240質量部、より好ましくは30〜200質量部、さらに好ましくは40〜180質量部、特に好ましくは40〜160質量部とすることが好ましい。
ポリマーセメント組成物Bに対して、本発明の特性を損なわない範囲で消泡剤を添加することができる。消泡剤は、シリコン系、アルコール系及びポリエーテル系などの合成物質又は植物由来の天然物質などから選択される1種以上など、公知のものを適宜選択して用いることができる。
消泡剤の添加量は、水硬性成分100質量部に対して、好ましくは0.001〜2質量部、より好ましくは0.005〜1.5質量部、さらに好ましくは0.01〜1質量部、特に0.02〜0.5質量部含むことが好ましい。消泡剤の添加量は、0.001〜2質量部の範囲内が、良好な消泡効果が認められるために好ましい。
ポリマーセメント組成物Bに対して、本発明の特性を損なわない範囲で短繊維を添加することができる。短繊維は、ポリプロピレン短繊維、ポリエチレン短繊維及びポリビニルアルコール短繊維などのポリマー短繊維や、ガラス繊維、ワラストナイトなどの無機短繊維などから選択される1種以上など、公知のものを用いることができる。特に入手容易性、ポリマーセメント組成物との親和性及び耐久性の点から、ガラス短繊維を好適に用いることができる。
ガラス短繊維は、良好な補強効果及び適正な増粘性付与効果が得られることから、繊維長が、好ましくは2〜10mm、より好ましくは4〜8mm、さらに好ましくは5.5〜6.5mmのものを好適に用いることができる。
短繊維の添加量は、水硬性成分100質量部に対して、好ましくは0.05〜2質量部、より好ましくは0.1〜1質量部、さらに好ましくは0.2〜0.9質量部、特に0.3〜0.5質量部含むことにより、良好な補強効果及び適正な増粘性付与効果が得られるために好ましい。
ポリマーセメント組成物Bは、エマルションを構成するエチレン−酢酸ビニル共重合エマルション及びアクリル系重合体エマルションと、アルミナセメント、フィロケイ酸塩鉱物及び珪砂の夫々所定量を、攪拌機で数分間攪拌・混合して調製することができる。各成分は、夫々を単独で添加しても良いし、予め他の数種と混合したものを添加しても良い。添加順序は特に選ばない。また、攪拌機は、一般的な固液攪拌機が問題なく使用できる。
ポリマーセメント組成物Bには、エマルションを構成するエチレン−酢酸ビニル共重合エマルション及びアクリル系重合体エマルションと、アルミナセメント及びフィロケイ酸塩鉱物以外の他の成分を含むことができる。例えば、ポルトランドセメント、石膏及び高炉スラグなどの水硬性成分、他のエマルション、珪砂、スラグ粉、フライアッシュ、石灰石粉、カオリン、アルミナ粉、酸化チタン、水酸化アルミニウム、マイカ及びパイロフィライトなどの粒状、板状及び繊維状などの充填材などから選択される1種以上を、特性を損なわない範囲で添加して用いることができる。
ポリマーセメント組成物Bは、凝結遅延剤や凝結促進剤などの凝結調整剤、減水剤、流動化剤、増粘剤及び水などから選択される1種以上を、特性を損なわない範囲で添加して用いることができる。
構成各原料を混合して得られたポリマーセメント組成物は、ローラー、鏝などを用いる一般的方法で被施工物表面に塗布して使用される。塗布膜の乾燥後にさらに同じ操作を繰り返し、複数層の塗布膜を形成させることができる。また、高強度な下地調整材層を施工する場合には、塗布膜の乾燥後に塗膜の上にメッシュを置き、メッシュの上から塗布してメッシュを固定する工程を加える工法が採用できる。
ポリマーセメント組成物Bは、非吸水性の下地床上面に、ポリマーセメント組成物Bの硬化体層の順に積層することにより接着強度に優れた下地調整材層を得ることができる。非吸水性の下地床は、非吸水性の下地床の上面にプライマーの硬化物層を設けたのちに下地調整材層を形成することができる。
ポリマーセメント組成物Bの好ましい様態は以下のとおりである。ポリマーセメント組成物Bではこれらを複数組み合わせることができる。
1)アルミナセメント、エマルション及びフィロケイ酸塩鉱物を含む防水用ポリマーセメント組成物であって、エマルションは、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルション及びアクリル系重合体エマルションを含有し、エチレン−酢酸ビニル共重合エマルションの固形分100質量部に対しアクリル系重合体エマルションの固形分を3〜20質量部の割合で含むこと。
2)エマルションの固形分100質量部に対し、アルミナセメント20〜80質量部及びフィロケイ酸塩鉱物4〜80質量部を含むこと。
3)エマルションの固形分100質量部に対し、アルミナセメント20〜80質量部、フィロケイ酸塩鉱物4〜80質量部及び珪砂20〜240質量部を含むこと。
4)エチレン−酢酸ビニル共重合エマルションは、ポリビニルアルコールを保護コロイドとしたエチレン−酢酸ビニル共重合エマルションであること。
ポリマーセメント組成物Bは、低温域から高温域の広い温度領域で、多様な材質の下地に施工可能で、速硬性、仮防水性及び下地と強固な接着性を有する。特に、非吸水性の下地床の上面に施工する場合に、優れた施工性を有する。さらに、本発明のポリマーセメント組成物を用いた下地調整材の上に、多様な上塗り仕上げ材の施工が可能なポリマーセメント組成物であり、既設建築物の改修における防水工事をはじめとして、新設建築物の建設における防水工事に好適に利用でき、優れた性能を発揮するものである。
<レベリング材>
本発明の複合床構造体の施工方法に用いるレベリング材(以下、「本レベリング材」という)は、アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏からなる水硬性成分を含むものである。
アルミナセメントとしては、鉱物組成の異なるものが数種知られ市販されているが、いずれも主成分はモノカルシウムアルミネート(CA)であり、市販品はその種類によらず使用することができる。
ポルトランドセメントは、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント及び白色ポルトランドセメントなどのポルトランドセメント、並びに高炉セメント、フライアッシュセメント及びシリカセメントなどの混合セメントなどから選択される1種以上を用いることができる。
石膏は、無水石膏、半水石膏及び二水石膏等の各石膏がその種類を問わず、1種又は2種以上の混合物として使用できる。石膏は、自己流動性水硬性組成物と水とを混練して得られるモルタルが硬化した後の寸法安定性を保持する成分として機能するものである。
本レベリング材は、水硬性成分として、アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏からなる水硬性成分を用いる。水硬性成分は、好ましくはアルミナセメント20〜80質量部、ポルトランドセメント5〜70質量部及び石膏5〜45質量部(アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の合計は、100質量部である。)からなる組成、より好ましくはアルミナセメント25〜70質量部、ポルトランドセメント10〜60質量部及び石膏10〜40質量部(アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の合計は、100質量部である。)からなる組成、さらに好ましくはアルミナセメント30〜60質量部、ポルトランドセメント20〜50質量部及び石膏15〜35質量部(アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の合計は、100質量部である。)、特に好ましくはアルミナセメント40〜50質量部、ポルトランドセメント30〜40質量部及び石膏20〜30質量部(アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏の合計は、100質量部である。)からなる組成を用いることにより、速硬性・速乾性を有し、低収縮性又は低膨張性で硬化中の体積変化が少なく、クラックの発生を抑制した硬化体が得られやすいために好ましい。
本レベリング材では、構成成分の配合比率を厳格に品質管理できることから構成成分をプレミックス化して供給することが好ましい。このため樹脂粉末については、粉末状の再乳化型樹脂粉末を使用する。
本レベリング材は、屋外で本レベリング材のスラリーを施工した場合の硬化体表面の乾燥による皺や気泡跡の発生、又は、材料分離によるブリージング水の発生を防止して、硬化体表面の仕上りを大幅に向上させる効果とともに、硬化体の弾性を高めてひび割れの発生を防止する効果とを付与するために再乳化型樹脂粉末を使用する。
樹脂粉末の製造方法については特にその種類・プロセスは限定されず、公知の製造方法で製造されたものを用いることができ、また樹脂粉末としては、ブロッキング防止剤を主に樹脂粉末の表面に付着しているものを用いることができる。樹脂粉末は、水性ポリマーディスパーションを噴霧やフリーズドライなどの方法で、溶媒を除去し乾燥した再乳化型の樹脂粉末を用いる。
本発明では、樹脂粉末として保護コロイドアクリルエマルションから製造されたアクリル共重合系の再乳化型樹脂粉末を好適に用いることができ、特に、保護コロイドアクリルエマルションから製造されたアクリル酸エステル/メタアクリル酸エステル共重合体の再乳化型樹脂粉末を好適に用いることができる。
アクリル共重合系の再乳化型樹脂粉末の1次粒子(エマルションの粒子)の平均粒径は、好ましくは0.2〜0.8μmの範囲であり、より好ましくは0.25〜0.75μmの範囲であり、さらに好ましくは0.3〜0.7μmの範囲であり、特に好ましくは0.35〜0.65μmの範囲のものを選択して用いることによって、良好な施工性と、緻密なポリマーフィルムの形成によって得られる優れた接着性や耐久性・耐候性とを併せて得られることから好ましい。
1次粒子の平均粒径が0.2〜0.8μmの範囲のアクリル共重合系の再乳化型樹脂粉末を用いたレベリング材スラリーでは、左官鏝などを用いて適正な勾配を持たせつつスラリー表面を平滑に仕上げる鏝作業を行う過程で、良好な鏝送り性と鏝放れ性とを得ることができる。樹脂粉末の1次粒子の平均粒径が0.2〜0.8μmの範囲より大きい場合、スラリー施工時の作業性は良好なものの、スラリー硬化体の接着性や耐久性・耐候性が低下するおそれがあるため、0.2〜0.8μmの範囲が好ましい。また、樹脂粉末の1次粒子の平均粒径が0.2〜0.8μmの範囲より小さい場合、スラリー硬化体の接着性や耐久性・耐候性は良好であるが、スラリー施工時の鏝送り性と鏝放れ性が低下して作業性が悪くなるおそれがあることから、0.2〜0.8μmの範囲が好ましい。
本レベリング材では、アクリル共重合系の再乳化型樹脂粉末100質量%中に再乳化型樹脂粉末の1次粒子の粒径が、好ましくは0.1〜1μmの粒子を97質量%以上含み、より好ましくは、0.15〜0.9μmの粒子を95質量%以上含み、さらに好ましくは0.2〜0.8μmの粒子を90質量%以上含み、特に好ましくは0.3〜0.7μmの粒子を75質量%以上含むものを選択して用いることによって、良好な施工性と、緻密なポリマーフィルムの形成によって得られる優れた接着性や耐久性・耐候性とを併せて得られることから好ましい。前記範囲の粒径の1次粒子を前記の範囲で含む場合、アクリル共重合系の再乳化型樹脂粉末を用いたレベリング材スラリーでは、左官鏝などを用いて適正な勾配を持たせつつスラリー表面を平滑に仕上げる鏝作業を行う過程で、良好な鏝送り性と鏝放れ性とを得ることができる。樹脂粉末の1次粒子の平均粒径が前記範囲より大きい場合、スラリー施工時の作業性は良好なものの、スラリー硬化体の接着性や耐久性・耐候性が低下するおそれがあるため前記範囲であることが好ましく、樹脂粉末の1次粒子の平均粒径が前記範囲より小さい場合、スラリー硬化体の接着性や耐久性・耐候性は良好であるが、スラリー施工時の鏝送り性と鏝放れ性が低下して作業性が悪くなるおそれがあることから前記範囲であることが好ましい。
本発明で用いるアクリル共重合系の再乳化型樹脂粉末は、その1次粒子がポリビニルアルコールの水溶性保護コロイドで被覆されていることが好ましい。再乳化型樹脂粉末の1次粒子表面が、ポリビニルアルコールの水溶性保護コロイドで被覆されていることによって、再乳化の過程で速やかにかつ均一にもとのエマルションの状態(樹脂粉末化前の状態)、すなわち、レベリング材スラリー中に1次粒子が均一に分散した状態を実現することができる。
本発明では、前記範囲の1次粒子径を前記範囲で含み、かつ、1次粒子の表面がポリビニルアルコールの水溶性保護コロイドで被覆されているアクリル共重合系の再乳化型樹脂粉末を選択して用いることによって、スラリー施工時に優れた作業性が得られるとともに、スラリー硬化体おいては接着性や耐候性、耐水性及び耐アルカリ性に優れた特性を得ることができる。
本発明で用いるアクリル共重合系の再乳化型樹脂粉末は、噴霧乾燥処理などの工程を経て、1次粒子が凝集した2次粒子の形態で用いられる。本発明で用いるアクリル共重合系の再乳化型樹脂粉末の2次粒子の粒子径は、好ましくは20〜100μmの範囲であり、より好ましくは30〜90μmの範囲であり、さらに好ましくは45〜85μmの範囲であり、特に好ましくは50〜80μmの範囲であることが、再乳化型樹脂粉末を含む本レベリング材と水とを混練してスラリー化する過程で、再乳化型樹脂粉末の2次粒子が本レベリング材に含まれている細骨材によって解砕されて容易に再分散し、1次粒子が均一に分散した状態になりやすいことから前記範囲の2次粒子径を有する再乳化型樹脂粉末を用いることが好ましい。再乳化型樹脂粉末の2次粒子径が20〜100μmの範囲より大きくなるとスラリー化の過程で再分散されにくくなり、1次粒子が均一に分散した状態になり難くなるおそれがあることから20〜100μmの範囲が好ましい。また、2次粒子径が20〜100μmの範囲より小さくなると、工場においてプレミックスして本レベリング材を製造する際に、再乳化型樹脂粉末が飛散して作業環境が悪化するなどのハンドリング性が悪くなるおそれがあることから20〜100μmの範囲が好ましい。
本レベリング材では、再乳化型樹脂粉末は、水硬性成分100質量部に対して、好ましくは1〜20質量部、より好ましくは2〜18質量部、さらに好ましくは3〜16質量部、特に好ましくは4〜15質量部の範囲で配合することによって、良好な作業性と高耐久な硬化体特性を併せて得ることができる。樹脂粉末の配合割合が、1〜20質量部の範囲よりも大きい場合、本レベリング材に水を加えて得られるスラリーの粘度が高くなり、施工性及び鏝作業性が低下し、表面の乾燥による皺や気泡跡が発生しやすくなるとともに、硬化体の圧縮強度が低下する傾向があるため、1〜20質量部の範囲であることが好ましい。また、配合割合が1〜20質量部の範囲より小さい場合には、スラリーのチクソトロピック性が低下して緩やかな傾斜面を安定して形成することが困難になる傾向にあり、さらにスラリー硬化体の弾性向上によるひび割れ抑制効果が小さくなり、スラリー硬化体の表面仕上りも悪くなる傾向があるため、1〜20質量部の範囲であることが好ましい。
屋外において勾配を有する複合床構造体を施工する場合に用いる本レベリング材は、アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏からなる水硬性成分及びアクリル共重合系の再乳化型樹脂粉末を含み、さらに無機粉末、細骨材、凝結調整剤、流動化剤、増粘剤及び消泡剤を含むことが好ましい。
本レベリング材は、高炉スラグ微粉末、フライアッシュ、シリカヒューム、炭酸カルシウム微粉末及びドロマイト微粉末から選ばれる少なくとも1種以上の無機成分を含むことが好ましく、特に高炉スラグ微粉末を含むことにより、乾燥収縮による硬化体の耐クラック性を高めることや、低コストで長期強度を増進させることができる。本レベリング材において、無機成分の添加量は、水硬性成分100質量部に対し、好ましくは10〜200質量部、より好ましくは20〜180質量部、さらに好ましくは30〜150質量部、特に好ましくは40〜120質量部とするのが好ましい。
本レベリング材において、高炉スラグ微粉末の添加量は、水硬性成分100質量部に対し、好ましくは10〜200質量部、より好ましくは20〜180質量部、さらに好ましくは30〜150質量部、特に好ましくは40〜120質量部とすることが好ましい。高炉スラグ微粉末の添加量が、少なすぎると硬化体の乾燥収縮が大きくなることや長期強度が十分得られないことがあり、多すぎると初期強度の低下を招くことがあるためである。
高炉スラグ微粉末は、JIS A 6206に規定されるブレーン比表面積3000cm/g以上のものを用いることができる。
本レベリング材は、必要に応じてさらに細骨材を含むことができる。細骨材は、水硬性成分100質量部に対し、好ましくは30〜500質量部、より好ましくは50〜400質量部、さらに好ましくは100〜300質量部、特に好ましくは150〜250質量部の範囲が好ましい。
細骨材としては、粒径2mm以下の骨材、好ましくは粒径0.075〜1.5mmの骨材、より好ましくは粒径0.1〜1mmの骨材、さらに好ましくは0.15〜0.6mmの骨材を主成分としていることが好ましい。細骨材の粒径は、JIS Z 8801に規定される呼び寸法の異なる数個のふるいを用いて測定する。
細骨材の種類は、珪砂、川砂、海砂、山砂及び砕砂などの砂類、アルミナクリンカー、シリカ粉、粘土鉱物、廃FCC触媒及び石灰石などの無機材料並びにウレタン砕、EVAフォーム、発砲樹脂などの樹脂粉砕物などから選択される1種以上を用いることができる。特に細骨材としては、珪砂、川砂、海砂、山砂及び砕砂などの砂類、廃FCC触媒、石英粉末並びにアルミナクリンカーなどから選択される1種以上が好ましく用いることができる。
本レベリング材は、材料分離を抑制しつつ好適な流動性を確保する流動化剤(高性能減水剤などの減水剤)を含むことができる。水硬性成分であるアルミナセメントの発現強度は、水/セメント比の影響を大きく受けることから、減水効果を有する流動化剤を使用して水/水硬性成分比を小さくすることが特に好ましい。
流動化剤としては、減水効果を合わせ持つ、メラミンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物、カゼイン、カゼインカルシウム、ポリカルボン酸系、ポリエーテル系等、ポリエーテルポリカルボン酸などの市販の流動化剤から選択される1種以上が、その種類を問わず使用できる。特にポリエーテル系等及びポリエーテルポリカルボン酸などの市販の流動化剤から選択される1種以上を使用することが好ましい。
流動化剤は、使用する水硬性成分に応じて、特性を損なわない範囲で適宜添加することができる。具体的には、水硬性成分100質量部に対して、好ましくは0.01〜2.0質量部、より好ましくは0.02〜1.0質量部、さらに好ましくは0.05〜0.5質量部を配合することができる。添加量が余り少ないと好適な効果(優れた流動性と高い硬化体強度)を発現せず、また添加量が多すぎても添加量に見合った効果は期待できず単に不経済であるだけでなく、チクソトロピック性の低下により勾配面の形成が困難になることが考えられるため、添加量は0.01〜2.0質量部の範囲であることが好ましい。
凝結調整剤は、使用する水硬性成分や本レベリング材の構成成分に応じて、特性を損なわない範囲で適宜添加することができる。凝結遅延剤及び凝結促進剤の成分、添加量及び混合比率を適宜選択して、本レベリング材の可使時間と速硬性・速乾性とを調整することができ、本レベリング材としての使用が非常に容易になるため、本レベリング材には凝結調整剤を添加することが好ましい。
凝結遅延剤としては、公知の凝結遅延剤を用いることができる。凝結遅延剤の一例として、酒石酸ナトリウム類(酒石酸一ナトリウム、酒石酸二ナトリウム)、リンゴ酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム類、グルコン酸ナトリウムなどのオキシカルボン酸類や、硫酸ナトリウム、重炭酸ナトリウムなどの無機ナトリウム塩などを、それぞれの成分を単独で又は2種以上の成分を併用して用いることができる。
オキシカルボン酸類は、オキシカルボン酸及びこれらの塩を含む。オキシカルボン酸としては、例えばクエン酸、グルコン酸、酒石酸、グリコール酸、乳酸、ヒドロアクリル酸、α−オキシ酪酸、グリセリン酸、タルトロン酸、リンゴ酸などの脂肪族オキシ酸、サリチル酸、m−オキシ安息香酸、p−オキシ安息香酸、没食子酸、マンデル酸、トロパ酸等の芳香族オキシ酸等を挙げることができる。オキシカルボン酸の塩としては、例えばオキシカルボン酸のアルカリ金属塩(具体的にはナトリウム塩、カリウム塩など)、アルカリ土類金属塩(具体的にはカルシウム塩、バリウム塩、マグネシウム塩など)などを挙げることができる。
特に重炭酸ナトリウムや酒石酸二ナトリウムは、凝結遅延効果、入手容易性及び価格の面から好ましい。
凝結遅延剤は、1種又は2種類以上を用いる場合、それぞれの凝結遅延剤の添加量が水硬性成分100質量部に対して、好ましくは0.01〜1.5質量部であり、より好ましくは0.1〜1.2質量部、さらに好ましくは0.2〜1.0質量部、特に好ましくは0.25〜0.8質量部の範囲で用いることにより好適な流動性を得ることができる可使時間(ハンドリングタイム)を確保できることから好ましい。
凝結促進剤としては、公知の凝結を促進する成分を用いることができ、例えば、凝結促進効果を有するリチウム塩を用いることが好ましい。リチウム塩の一例として、炭酸リチウム、塩化リチウム、硫酸リチウム、硝酸リチウム、水酸化リチウムなどの無機リチウム塩や、酢酸リチウム、酒石酸リチウム、リンゴ酸リチウム、クエン酸リチウムなどの有機酸有機リチウム塩などのリチウム塩を用いることができる。特に炭酸リチウムは、凝結促進効果、入手容易性、価格の面から好ましい。又、上記リチウム塩に硫酸アルミニウム、硫酸カリウム、アルミン酸ナトリウム等の凝結促進成分を併用することが、さらに促進効果が発揮されることから、特に好ましい。
凝結促進剤としては、特性を妨げない粒径を用いることが好ましく、粒径は50μm以下にすることが好ましい。特にリチウム塩を用いる場合、リチウム塩の粒径は50μm以下、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは10μm以下であることが好ましい。粒径が50μmより大きくなるとリチウム塩の溶解度が小さくなる場合があり、また、特に顔料添加系では微細な多数の斑点として目立ち、美観を損なう場合がある。
凝結促進剤は、水硬性成分100質量部に対して、好ましくは0.01〜2質量部であり、より好ましくは0.01〜1質量部、さらに好ましくは0.02〜0.5質量部、特に好ましくは0.02〜0.3質量部の範囲で用いることによって、本レベリング材の可使時間を確保したのち好適な速硬性・速乾性を得ることができることから好ましい。
増粘剤は、ヒドロキシエチルメチルセルロースを含み、ヒドロキシエチルメチルセルロースを除く他のセルロース系、スターチエーテル等の化工澱粉系、蛋白質系、ラテックス系、及び水溶性ポリマー系などの増粘剤を併用して用いることができる。増粘剤の添加量は、本発明の特性を損なわない範囲で添加することができる。具体的には、増粘剤の添加は、水硬性成分100質量部に対して、好ましくは0.001〜2質量部、より好ましくは0.005〜1.5質量部、さらに好ましくは0.01〜1質量部、特に0.05〜0.8質量部含むことが好ましい。増粘剤の添加量が多くなると、モルタル粘度が増加して流動性の低下を招く恐れがあるために、0.001〜2質量部の範囲で用いることが好ましい。
増粘剤及び消泡剤を併用して用いることは、水硬性成分や細骨材などの骨材分離の抑制、気泡発生の抑制、硬化体表面の改善に好ましい効果を与え、本レベリング材の硬化物の特性を向上させる上で好ましい。
消泡剤は、シリコン系、アルコール系及びポリエーテル系などの合成物質又は鉱物油系、植物由来の天然物質など、公知のものを1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
消泡剤の添加量は、本発明の特性を損なわない範囲で添加することができる。具体的には、1種類の消泡剤を用いる場合、水硬性成分100質量部に対して、好ましくは0.001〜3.0質量部、より好ましくは0.005〜2.5質量部、さらに好ましくは0.01〜2.0質量部、特に0.05〜1.5質量部含むことが好ましい。消泡剤の添加量は、0.001〜3.0質量部の範囲内が、好適な消泡効果が認められるために好ましい。
また、2種類以上の消泡剤を併用する場合の消泡剤の添加量は、それぞれの消泡剤の添加量が水硬性成分100質量部に対して、好ましくは0.001〜2質量部、より好ましくは0.005〜1.5質量部、さらに好ましくは0.01〜1.3質量部、特に0.02〜1.0質量部含むことが好ましい。消泡剤の添加量は、0.001〜2質量部の範囲内であることが、好適な消泡効果が認められるために好ましい。
本レベリング材を構成する場合に、特に好適な成分構成は、アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏からなる水硬性成分、アクリル共重合系の再乳化型樹脂粉末、無機成分、珪砂などの細骨材、流動化剤、増粘剤、消泡剤並びに凝結調整剤を含むものである。
本発明では、水硬性成分、アクリル共重合系の再乳化型樹脂粉末、無機成分、細骨材、流動化剤、増粘剤、消泡剤及び凝結調整剤などを混合機で混合し、本レベリング材のプレミックス粉体を得ることができる。
本レベリング材のプレミックス粉体は、所定量の水と混合・攪拌して、スラリー状のセルフレベリング性を有するスラリー(レベリング材スラリー)を製造することができ、そのレベリング材スラリーを硬化させて本レベリング材の硬化体を得ることができる。
本レベリング材は、水と混合・攪拌してスラリーを製造することができ、水の添加量を調整することにより、スラリーの流動性、可使時間、材料分離性、スラリー硬化体の強度などを調整することができる。
本発明で用いるレベリング材スラリーは、本レベリング材(S)と水(W)とを質量比(W/S)が、好ましくは0.14〜0.34の範囲、より好ましくは0.16〜0.32の範囲、さらに好ましくは、0.18〜0.30の範囲、特に好ましくは0.20〜0.28の範囲になるように配合して混練することが好ましい。
本レベリング材は、水と混合して調製したレベリング性を有するスラリーのフロー値が、好ましくは140〜230mm、より好ましくは160〜220mm、さらに好ましくは180〜210mmに調整されていることが、施工の容易さ及び適正な勾配を形成しつつ平滑性の高い硬化体表面を得られやすいという理由により好ましい。
本レベリング材を用いたレベリング材スラリーの施工厚さは、下地床表面の凹凸状態や下地床表面の勾配状態によって異なり、個々の施工現場毎に適宜厚さを設定することができ、下地床面の最も凸部分上面を基準にして、好ましくは施工厚さ0.5mm〜50mmの範囲、より好ましくは施工厚さ1mm〜40mmの範囲、さらに好ましくは施工厚さ1.5mm〜30mmの範囲、特に好ましくは施工厚さ2mm〜20mmの範囲で流し込み施工することが好ましい。
本レベリング材を用いたレベリング材スラリーを下地床面の最も凸部分上面を基準にして0.5mm〜10mmの高さまで薄く施工する場合は、前記スラリーを流し込み施工しながら、スパイクローラー、とんぼ、鏝などを用いてスラリーを均等に広げる操作を行い、下地床面に薄層に前記スラリー層を形成し、左官鏝などを用いて適正な勾配になるよう仕上げることが好ましい。
本レベリング材を用いたレベリング材スラリーを床スラブ面の最も凸部分上面を基準にして10mm〜50mmの高さまで厚く施工する場合には、前記スラリーを流し込み施工しながら、とんぼなどを用いてスラリーが均等に広がるように補助的な操作を行い、床スラブ全体に厚層の前記スラリー層を形成し、適正な勾配になるよう左官鏝を用いて表面仕上げを行うか定規ずりを行って仕上げることが好ましい。
本レベリング材を用いたレベリング材スラリーは、良好な施工性を確保するために充分な可使時間(ハンドリングタイム)を有している。レベリング材スラリーの可使時間は、スラリー調製から好ましくは60分間であり、より好ましくは40分間であり、さらに好ましくは30分間である。
本レベリング材を用いたレベリング材スラリーは、施工場所の温度や湿度の条件にもよるが、施工終了後1時間〜3時間の間に硬化を開始し、硬化の進行に伴って硬化体の表面硬度が上昇し、硬化体表面の含水量が低下する。本レベリング材を用いたレベリング材スラリー硬化体表面のショア硬度は、スラリーの打設(施工)から好ましくは5時間後に10以上、より好ましくは4.5時間後に10以上、さらに好ましくは4時間後に10以上、特に好ましくは3時間後に10以上であり、スラリー施工(打設・表面仕上げ)が終了した後、速やかに硬化が進行することによってレベリング材スラリーの施工が完了する。
本レベリング材を用いたレベリング材スラリーは、速硬性・速乾性に優れた特性を有しており、速やかに良好な硬化状態と表面乾燥状態を得ることができ、次工程であるシート仕上げ材や貼り床材の敷設工程への移行が翌日〜3日後には可能となる。
本レベリング材を用いたレベリング材スラリーの硬化体表面は、好ましくは0/1000を超えて50/1000以下の勾配を有すること、より好ましくは0/1000を超えて40/1000以下の勾配を有すること、さらに好ましくは0/1000を超えて30/1000以下の勾配を有することによって良好な排水性を保持することができる。
本レベリング材を用いたレベリング材スラリー硬化体の長さ変化率の膨張は、好ましくは0〜0.08%、より好ましくは0〜0.06%、さらに好ましくは0〜0.05%の範囲であり、長さ変化率の収縮が好ましくは−0.08〜0%、より好ましくは−0.06〜0%、さらに好ましくは−0.05〜0%の範囲である。このような膨張又は収縮の特性を有するレベリング材の場合には、硬化体自体のクラック発生を防止でき、さらに下地床との間で高い接着力を保持できることから好ましい。また、上記の長さ変化率の範囲を外れた場合には、レベリング性スラリー硬化体の硬化収縮によってクラックが生じることがあり、そのクラックを介して下地床の離脱水分が拡散して、レベリング性スラリーの硬化体上面にシート仕上げ材層などを敷設している場合に膨れが生じることがあるため、上記の長さ変化率は0〜0.08%の範囲であることが好ましい。
<仕上げ層>
本発明の施工方法では、レベリング材スラリー硬化体層の上面に、各種樹脂製タイル、シート仕上げ材又は塗り床材などの仕上げ材を適宜選択して用い、仕上げ層を形成することができる。また、本発明の施工方法では、レベリング材スラリー硬化体層の上面に、各種塗料を適宜選択して用い、塗装仕上げ層を形成することができる。
本発明の施工方法の仕上げ層に用いる塗り床材は、一般に、塗り床材用プライマー層、塗り床材用ベースコート層及び塗り床材用トップコート層から構成される。また、目的・用途によっては塗り床材用プライマー層と塗り床材用ベースコート層とを用いて構成され、さらに塗り床材用プライマー層を設けたのち、塗り床材用ベースコート層及び塗り床材用トップコート層をそれぞれ複数層設けて構成される。
本発明の施工方法に用いる塗り床材の種類としては、要求される特性に応じて有機質系塗り床材又は無機質系塗り床材から適宜選択して用いることができる。本発明の施工方法では、塗り床材が、エポキシ樹脂系塗り床材、ウレタン樹脂系塗り床材、メタクリル樹脂系塗り床材、アクリル樹脂系塗り床材、ポリエステル樹脂系塗り床材、ビニルエステル系塗り床材及びポリマーセメント系塗り床材から選択されるいずれか1種であることが好ましい。上述の下地調整材及びレベリング材とともに施工することにより、美観の良好な仕上りとなるためである。
本発明の施工方法に用いる塗り床材用プライマー層は、塗り床材の下地との付着性向上や下地への吸い込み防止、塗り床材のピンホール防止のために用いられる。また、塗り床材用プライマー層の形成のために、有機質系塗り床材用プライマー及び無機質系塗り床材用プライマーなどを用いることができる。
本発明の施工方法に用いる有機質系塗り床材用プライマーは、溶剤形エポキシ樹脂系、無溶剤形エポキシ樹脂系、水性形エポキシ樹脂系、水性形エポキシ樹脂系とセメントの混合物、溶剤形ウレタン樹脂系、溶剤形ウレタン樹脂系とセメントの混合、無溶剤形ウレタン樹脂系、湿気硬化形ウレタン樹脂系、湿気硬化形ウレタン樹脂系とセメントの混合、メタクリル樹脂系、溶剤形アクリル樹脂系及び/又は水性形アクリル樹脂系等を用いることができる。また、用途により有機系顔料、無機系顔料、タルク、炭酸カルシウム及び/又は粉末状シリカ等の充填材を含有した塗り床材用プライマーを用いることができる。
本発明の施工方法に用いる無機質系塗り床材用プライマーは、水形エチレン酢酸ビニル樹脂系、水形アクリル樹脂系、溶剤形エポキシ樹脂系及び/又は溶剤形アクリル樹脂系等を用いることができる。
本発明の施工方法に用いる塗り床材用プライマーの施工は、各塗り床材メーカーの施工要領書に準拠し、ハケ及び/又はローラーを適宜選択して使用することができる。
本発明で使用する塗り床材用ベースコート層は、塗り床材の耐久性、機械的強度及び弾性等の主な機能を付与するために用いられる。また、塗り床材用ベースコート層の形成のために、有機質系塗り床材用ベースコート及び無機質系塗り床材用ベースコートなどを用いることができる。
本発明の施工方法に用いる有機質系塗り床材用ベースコートは、溶剤形エポキシ樹脂系、無溶剤形エポキシ樹脂系、水性形エポキシ樹脂系、溶剤形ウレタン樹脂系、溶剤形ウレタン樹脂系、湿気硬化形ウレタン樹脂系、メタクリル樹脂系、溶剤形アクリル樹脂系、水性形アクリル樹脂系、ポリエステル樹脂系及び/又はビニルエステル樹脂系等を用いることができる。また用途により有機系顔料、無機系顔料、タルク、炭酸カルシウム及び/又は粉末状シリカ等の充填材さらには細骨材を含有した有機質系塗り床材用ベースコートを用いることができる。
本発明の施工方法に用いる無機質系塗り床材用ベースコートは、ポルトランドセメント、白色ポルトランドセメント、超速硬セメント、特殊速硬形セメント及びアルミナセメントからなる1種又は2種以上を組み合わせたセメント質、及びエチレン酢酸ビニル、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリル及びエポキシ等の合成樹脂エマルションからなる1種又は2種以上を組み合わせた樹脂質から構成される塗り床材用ベースコートを用いることができる。また、用途により有機系顔料、無機系顔料、タルク、炭酸カルシウム及び/又は粉末状シリカ等の充填材を含有した無機質系塗り床材用ベースコートを用いることができる。
本発明の施工方法に用いる塗り床材用ベースコートの施工は、各塗り床材メーカーの施工要領書に準拠し、鏝、ローラー及び/又はハケを適宜選択して使用することができる。
本発明で用いる塗り床材用トップコート層は、耐候性、耐汚染性、防滑性及び/又はつや消し仕上げ等のベースコート層の保護や各種機能を付与することを目的として用いられる。
本発明の施工方法に用いる有機質系又は無機系の塗り床材用トップコートとしては、溶剤形エポキシ樹脂系、無溶剤形エポキシ樹脂系、水性形エポキシ樹脂系、溶剤形ウレタン樹脂系、溶剤形ウレタン樹脂系、湿気硬化形ウレタン樹脂系、メタクリル樹脂系、溶剤形アクリル樹脂系、水性形アクリル樹脂系、ポリエステル樹脂系及びビニルエステル樹脂系等から選ばれる1種又は2種以上のトップコートを適宜選択し、1層又は2層以上施工して用いることができる。
本発明の施工方法に用いる塗り床材用トップコートの施工は、各塗り床材メーカーの施工要領書に準拠し、鏝、ローラー又はハケ等を適宜選択して使用することができる。
本発明の施工方法における仕上げ層は、タイル仕上げ、天然石板仕上げ、陶磁器板仕上げ、金属板仕上げ、樹脂板仕上げ及び樹脂シート仕上げから選ばれる貼り床仕上げ、塗り床材仕上げ及び塗料を用いた塗装仕上げから適宜選択して用いることにより設けることができ、上述の下地調整材及びレベリング材とともに施工することにより、美観の良好な仕上りを得ることができる。
以下、本発明について実施例に基づいて詳細に説明する。但し、本発明は下記の実施例により制限されるものでない。
(特性の評価方法)
(1)レベリング材スラリーの流動性評価:
・フロー値の測定法:
JASS・15M−103に準拠して測定する。厚さ5mmのみがき板ガラスの上に内径50mm、高さ51mmの樹脂製パイプ(内容積100ml)を設置し、練り混ぜたレベリング材スラリーを樹脂製パイプの上端まで充填した後、パイプを鉛直方向に引き上げる。スラリーの広がりが静止した後、直角2方向の直径を測定し、その平均値をフロー値とし、スラリーの流動性を評価した。
・SL値の測定方法:
SL値は、図2に示すSL測定器を使用し、幅30mm×高さ30mm×長さ750mmのレールに、先端より長さ150mmのところに堰板を設け、混練直後のスラリーを所定量満たして成形した。成形直後に堰板を引き上げて、スラリーの流れの停止後に、標点(堰板の設置部)からスラリー流れの最短部までの距離を測定し、その値(SL値)をL0とし、堰板より200mm流れる時間を測定し、その測定時間をSL流動速度(L0)(秒/200mm)とした。
(2)レベリング材スラリーの施工性評価:
屋外条件下で、1m×0.5mの区画の硬化コンクリート下地にレベリング材用プライマーの3倍液(原液150g/mに水を300g/m加える)を塗布して自然乾燥させた。プライマーが造膜後、レベリング材スラリーを平均施工厚さが6mmになるよう流し込んだ後、勾配が10/1000となるように左官鏝を用いてスラリー表面を成形し(1000mmスパンにおいて、最低施工厚さは1mm、最高施工厚さ11mmとなる)、鏝作業性を評価した。また、レベリング材スラリーを施工した後、スラリー表面の光沢がなくなるまでの時間(水引き時間)、スラリー施工後のスラリー硬化体の表面硬度(ショア硬度)及び硬化体の表面性状について評価を行った。
・勾配形成性:
スラリーが硬化した後、スラリー硬化体の表面の勾配を測定し、左官鏝を用いて形成した勾配(10/1000)が保持されているか評価した。評価指標は、勾配Xが(9.5≦X≦10)/1000の場合は良、勾配Xが(9≦X<9.5)/1000の場合は可、勾配Xが(X<9)/1000の場合は不可とした。
・鏝作業性:
鏝作業性は、鏝放れ性、鏝切れ性を評価し、評価の高い順より、優>良>可>不可の4段階で評価し、可以上を合格とした。
(3)レベリング材スラリー硬化体の表面特性の評価:
・ショア硬度の測定法:
レベリング材スラリーを流し込み施工した後、所定の経過時間において、硬化した表面にスプリング式硬度計タイプD型(上島製作所製)を用いて任意の6カ所に垂直に押し付け、その時のスプリング式硬度計タイプD型のゲージの読み取り値の平均値をその時間のショア硬度とし表面硬度を評価した。
・硬化体表面の性状:
スラリー硬化体表面の性状は、硬化後(ショア硬度測定可能時点)、材齢24時間時点でシワ及び気泡の有無を目視で観察することで評価した。クラックは、材齢28日にて評価を行った、評価基準は以下のとおりとする。
○:無し、×:有り。
(使用材料):以下の材料を使用した。
1)レベリング材用プライマー : 宇部興産社製、UプライマーG
2)レベリング材 : 下記の原材料を表1に示す配合割合で混合したレベリング材を使用した。
・アルミナセメント : フォンジュ、ケルネオス社製、ブレーン比表面積3100cm/g。
・ポルトランドセメント : 早強セメント、宇部三菱セメント社製、ブレーン比表面積4500cm/g。
・石膏 : II型無水石膏、セントラル硝子社製、ブレーン比表面積3460cm/g。
・細骨材 : 珪砂:6号珪砂。
・無機成分 : 高炉スラグ微粉末、リバーメント、千葉リバーメント社製、ブレーン比表面積4400cm/g。
・樹脂A : アクリル酸エステル/メタアクリル酸エステルの共重合体、1次粒子がポリビニルアルコールの水溶性保護コロイドで被覆された再乳化型樹脂粉末、ニチゴー・モビニール社製、DM7000P。
・樹脂B : 酢酸ビニル/バーサチック酸ビニルエステル/アクリル酸エステルの共重合体、再乳化型樹脂粉末、ニチゴー・モビニール社製、DM2071P。
・樹脂C : エチレン−酢酸ビニル共重合体、再乳化型樹脂粉末、旭化成ケミカルズ社製、RE5044N。
・樹脂D : スチレン/アクリル酸エステル/メタクリル酸共重合体のエマルション、宇部興産社製、UプライマーG。
・凝結遅延剤a : 重炭酸ナトリウム、東ソー社製。
・凝結遅延剤b : L−酒石酸二ナトリウム、扶桑化学工業社製。
・凝結促進剤a : 炭酸リチウム、本荘ケミカル社製。
・凝結促進剤b : 硫酸アルミニウム、大明化学工業社製。
・凝結促進剤c : アルミン酸ナトリウム、北陸化成社製。
・流動化剤 : ポリカルボン酸系流動化剤、花王社製。
・増粘剤 : ヒドロキシエチルメチルセルロース系増粘剤、マーポローズMX−30000、松本油脂社製。
・消泡剤 : ポリエーテル系消泡剤、サンノプコ社製。
(レベリング材のスラリー調製)
表1に示す、条件及び配合割合で調製したレベリング材と水とを、レベリング材100質量部に対して水25質量部の割合で配合し、回転数1100rpmのハンドミキサーを用いて3分間混練して、レベリング材スラリーを調製した。
[実験例1〜3及び比較例1〜4]
表1に示す成分を配合したレベリング材を用いてレベリング材スラリーを調製した。スラリーの流動性(フロー値、SL値、スラリー移動速度)の測定結果を表2に示す。
スラリーの鏝施工性、勾配形成性、ショア硬度及び硬化体表面状態を評価した結果を表2に示す。
(1)樹脂成分を配合していない比較例1のレベリング材の場合、良好な勾配形成性が得られず、さらに硬化体の表面にはクラックが発生した。
(2)樹脂成分としてアクリル酸エステル/メタアクリル酸エステル共重合体の再乳化型樹脂粉末を用いた実験例1の場合、勾配の形成性及び鏝作業性が良好であり、さらに硬化体の表面状態についても良好であった。
また、実験例2及び3に示すように、温度が21℃の場合、5℃の場合においても良好な施工性と勾配形成性、並びに優れた硬化体表面状態を得ることができた。
(3)樹脂成分として酢酸ビニル/バーサチック酸ビニルエステル/アクリル酸エステルの共重合体の再乳化型樹脂粉末を用いた比較例2、及び、エチレン−酢酸ビニル共重合体の再乳化型樹脂粉末の場合、鏝作業性は優れているものの勾配の形成性は実験例1と比較して劣っていた。また、硬化体表面にはシワが発生し、平滑で良好な仕上り面は得られなかった。
(4)樹脂成分としてスチレン/アクリル酸エステル/メタクリル酸共重合体のエマルションを用いた比較例4の場合、施工性については実験例1と同等の特性が得られたが、硬化体表面には気泡が認められ、平滑で良好な仕上り面は得られなかった。
上記実験例の施工方法は、速硬性・速乾性に優れる水硬性成分と、1次粒子がポリビニルアルコールの水溶性保護コロイドで被覆されたアクリル酸エステル/メタアクリル酸エステルの共重合体の再乳化型樹脂粉末とを含むレベリング材を用いることによって、適度なスラリー粘性とチクソトロピックな性状を有していて水勾配の形成が容易で、かつ、平滑な床面の形成が可能であり、速硬性・速乾性に優れるとともに低収縮性、及び、ひびわれ抵抗性を有し、屋外環境下で施工しても良好な表面仕上りが得られ、耐候性に優れた勾配を有する複合床構造体を得ることができる。
[実施例1〜3及び比較例1〜3]
下地調整材として使用したポリマーセメント組成物は、以下の材料を使用した。
(ポリマーセメント組成物Aの使用材料)
ポリマーセメント組成物Aの製造の際に使用した材料は、下記のとおりである。
・エポキシ樹脂/主剤(油性) :R−362クリヤ−R(成分:ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、ノニルフェノール、アイカ工業製)
・硬化剤(水性):P−960H(成分:変性ポリアミドアミン、アイカ工業製)
・アルミナセメント(フォンジュ、ケルネオス社製、ブレーン比表面積3100cm/g)。
・ポルトランドセメント(早強セメント、宇部三菱セメント社製、ブレーン比表面積4500cm/g)。
・細骨材 : 6号珪砂。
・無機成分 : 高炉スラグ(リバーメント、千葉リバーメント社製、ブレーン比表面積4400cm/g)。
・石膏 : II型無水石膏(セントラル硝子社製、ブレーン比表面積3460cm/g)。
・炭酸リチウム(凝結促進剤):(本荘ケミカル社製)。
・重炭酸ナトリウム(凝結遅延剤):重炭酸ナトリウム(東ソー社製)。
・酒石酸ナトリウム(凝結遅延剤):L−酒石酸二ナトリウム(扶桑化学工業社製)。
・流動化剤:ポリカルボン酸系流動化剤(花王社製)。
・増粘剤 :ヒドロキシメチルセルロース系増粘剤(マーポローズEMP−30、松本油脂社製)。
・消泡剤 :ポリエーテル系消泡剤(サンノプコ社製)。
(ポリマーセメント組成物Bの使用材料)
ポリマーセメント組成物Bの製造の際に使用した材料は、下記のとおりである。
・エチレン−酢酸ビニル共重合体及びアクリル系重合体を含むエマルション:高圧ガス工業(株)製、ペガール842(ガラス転移温度:−15℃)。
・アルミナセメント(フォンジュ、ケルネオス社製、ブレーン比表面積3100cm/g)。
・タルク:日本タルク(株)製、タルクS。
・珪砂:宇部サンド工業(株)製、6号珪砂。
・消泡剤 : ポリエチレングリコール系消泡剤(サンノプコ社製)。
・短繊維:ガラス短繊維、繊維長=6mm、日本電気硝子社製。
(ポリマーセメント組成物Cの使用材料)
ポリマーセメント組成物Cの製造の際に使用した材料は、下記のとおりである。
・アクリル系ポリマーエマルション : カチオン系・アクリル樹脂系ポリマーエマルション、樹脂成分(スチレン・アクリル酸アルキルエステル・メタクリル酸アルキルエステル・メタクリル酸共重合樹脂=92質量%、ポリオキシエチレン・ノニルフェニルエーテル=8質量%)、宇部興産社製。
・ポルトランドセメント(早強セメント、宇部三菱セメント社製、ブレーン比表面積4500cm/g)。
・細骨材 : 7号珪砂、瓢屋社製。
・無機成分 : 高炉スラグ(リバーメント、千葉リバーメント社製、ブレーン比表面積4400cm/g)。
・増粘剤 : ヒドロキシエチルメチルセルロース系増粘剤、マーポローズMX−30000、松本油脂社製。
・消泡剤 : ポリエチレングリコール系消泡剤(サンノプコ社製)。
(プライマー)
プライマーは、下記のものを使用した。
・プライマー : U−プライマーG(アクリル樹脂系プライマー)、宇部興産社製。
下地調整材で使用したポリマーセメント組成物A、B及びCは、表3に示す配合割合で水硬性組成物とポリマーとを用いて以下の手順で調製した。
(ポリマーセメント組成物Aの調製手順)
エポキシ樹脂の油性(非水性)主剤と水性硬化剤とを、2Lのポリ容器に計り取り、0.15KW攪拌機を使用して1300rpmの条件下で白濁色の液体になるまで強制混合攪拌してエポキシ樹脂エマルションを調製した。このエポキシ樹脂エマルションと、アルミナセメント、ポルトランドセメント、細骨材、無機成分、石膏、流動化剤、増粘剤、凝結調整剤(凝結促進剤及び凝結遅延剤)及び消泡剤を、ロッキングミキサーを用いて混合して調製した水硬性組成物とを、3分間混合してポリマーセメント組成物Aを調製した。
(ポリマーセメント組成物Bの調製手順)
2Lのポリ容器にエマルションの固形分合計487gと、表3に示す水硬性組成物の成分352gとを0.15KW攪拌機を使用し1300rpmの条件下で3分間混合し、ポリマーセメント組成物Bを調製した。
(ポリマーセメント組成物Cの調製手順)
ポルトランドセメント、細骨材、無機成分、増粘剤及び消泡剤を、ロッキングミキサーを用いて混合して調製した水硬性組成物と、アクリル樹脂系ポリマーエマルションとを、表3に示す割合で0.15KW攪拌機を使用し1300rpmの条件下で3分間混合してポリマーセメント組成物Cを調製した。
300mm×300mm×5mmの鋼板に、ポリマーセメント組成物A〜Cを施工して乾燥させ、鋼板上面に下地調整材層を設けた。また、同様の鋼板にプライマーを塗布施工して乾燥させ、鋼板上面にプライマーの下地調整材層を設けた。下地調整材の厚さは、いずれも0.5mmになるように施工した。
室温20℃、相対湿度65%の条件下で、4種類の下地調整材層を設けた鋼板と下地調整材層を設けない鋼板の上面に、実験例1で用いたレベリング材スラリーを施工厚さが10mmになるように流し込み、左官鏝で表面を均して平坦な面を形成した。このレベリング材スラリーを硬化させ、JASS 15 M−103(セルフレベリング材の品質基準)に記載の表面接着試験用供試体の規定にしたがって、材齢14日間養生してレベリング材スラリー硬化体層を表層に有する接着試験用の複合供試体を得た。
レベリング材スラリー硬化体層を表層に有する複合供試体について、接着試験を行った結果を表4に示す。
表4に示す複合供試体の接着試験の結果から、アルミナセメントを含むポリマーセメント組成物A及びBを用いて下地調整材層を形成した実施例1〜3の場合、良好な接着強度を有する複合供試体を得ることができたといえる。特にエチレン−酢酸ビニル共重合体及びアクリル系重合体を含むエマルションと、アルミナセメントを含む水硬性組成物とを用いたポリマーセメント組成物Bを用いた場合には、特に優れた接着強度特性を示した。また、ポリマーセメント組成物Bを鏝塗り施工して下地調整材層を設けた実施例1では、卓越した接着強度を得ることができた。
本発明の勾配を有する複合床構造体の施工方法について、施工手順の概要を示す模式図である。 SL測定器を用いて水硬性スラリーのレベリング性を評価する概略を示す模式図である。
符号の説明
11 : 下地床
12 : 下地床表面
13 : 下地調整材層
14 : レベリング材スラリー
15 : 左官鏝
16 : レベリング材スラリー硬化体層
17 : 仕上げ層

Claims (12)

  1. 勾配を有する非吸水性の下地床の上面に、アルミナセメントを含むポリマーセメント組成物からなる下地調整材を用いて下地調整材層を設ける工程と、
    下地調整材層の上面に、水硬性成分、凝結促進剤及び樹脂粉末を含むレベリング材を用いてレベリング材スラリー硬化体層を設ける工程とを含む、複合床構造体の施工方法であって、
    レベリング材に含まれる樹脂粉末が、アクリル共重合系の再乳化型樹脂粉末であり、樹脂粉末の1次粒子の平均粒径が0.2〜0.8μmであり、樹脂粉末の1次粒子表面がポリビニルアルコールの水溶性保護コロイドで被覆されており、
    レベリング材に含まれる凝結促進剤が、硫酸アルミニウム又はアルミン酸ナトリウムを含み、
    非吸水性の下地床が、鋼板床であり、
    複合床構造体の床面が、勾配を有する、
    複合床構造体の施工方法。
  2. レベリング材が、アルミナセメント、ポルトランドセメント及び石膏からなる水硬性成分を含む、請求項1記載の複合床構造体の施工方法。
  3. レベリング材が、水硬性成分と樹脂粉末とを含み、さらに無機粉末、細骨材、凝結調整剤、流動化剤、増粘剤及び消泡剤から選択される少なくとも1種以上を含む、請求項1又は2記載の複合床構造体の施工方法。
  4. レベリング材スラリー硬化体層の表面のショア硬度が、レベリング材のスラリーの打設の完了から2時間後に10以上である、請求項1〜のいずれか1項記載の複合床構造体の施工方法。
  5. レベリング材スラリー硬化体層の表面のショア硬度が、レベリング材のスラリーの打設の完了から6時間後に50以上である、請求項1〜のいずれか1項記載の複合床構造体の施工方法。
  6. レベリング材スラリー硬化体層を設ける工程が、
    下地調整材層の上面に、レベリング材を用いて第一レベリング材スラリー硬化体層を設ける工程と、
    第一レベリング材スラリー硬化体層の上面に、レベリング材を用いてさらに第二レベリング材スラリー硬化体層を設ける工程と
    を含む、請求項1〜のいずれか1項記載の複合床構造体の施工方法。
  7. レベリング材スラリー硬化体層の上面に、塗り床材仕上げ層、貼り床材仕上げ層及び塗料を用いた塗装仕上げ層から選ばれるいずれか1種の仕上げ層を設ける工程をさらに含む、請求項1〜のいずれか1項記載の複合床構造体の施工方法。
  8. ポリマーセメント組成物が、アルミナセメント、ポルトランドセメント及び高炉スラグ粉を含む水硬性組成物と、エポキシ樹脂とを含むポリマーセメント組成物Aであり、エポキシ樹脂が、エポキシ樹脂の非水性主剤とエポキシ樹脂の水性硬化剤とを含む、請求項1〜のいずれか1項記載の複合床構造体の施工方法。
  9. エポキシ樹脂が、エポキシ樹脂の非水性主剤と、エポキシ樹脂の水性硬化剤と、水とを配合したエポキシ樹脂エマルションの形態である、請求項記載の複合床構造体の施工方法。
  10. ポリマーセメント組成物が、アルミナセメント、細骨材、フィロケイ酸塩鉱物、短繊維及び消泡剤を含む水硬性組成物と、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルション及びアクリル系重合体エマルションを含むポリマーセメント組成物Bである、請求項1〜のいずれか1項記載の複合床構造体の施工方法。
  11. 塗り床材仕上げ層が、エポキシ樹脂系塗り床材、ウレタン樹脂系塗り床材、メタクリル樹脂系塗り床材、アクリル樹脂系塗り床材、ポリエステル樹脂系塗り床材、ビニルエステル系塗り床材及びポリマーセメント系塗り床材から選択されるいずれか1種である塗り床材を用いて設けられる、請求項1〜10のいずれか1項記載の複合床構造体の施工方法。
  12. 請求項1〜11のいずれか1項記載の施工方法によって得られる複合床構造体。
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