以下、本発明による動力伝達機構を一眼レフカメラにおけるミラー及びシャッタチャージ用の駆動機構として適用した実施形態を説明する。図1に示すデジタル一眼レフカメラ(以下、カメラ)10は、カメラボディ11の前面にレンズ鏡筒12を着脱させるレンズマウントを有し、その内方にミラーボックス13が設けられている。ミラーボックス13内には、ミラーシートヒンジ14xを軸として揺動可能なクイックリターンミラー(以下、ミラー)14が支持されている。ミラー14の後方にはフォーカルプレーンシャッタ(以下、シャッタ)15が設けられ、シャッタ15の後方にはイメージセンサ(撮像媒体)16が設けられている。ミラー14は、図1の実線や図5に示すように、レンズ鏡筒12内の撮影レンズ(撮像光学系)12aからイメージセンサ16に至る撮影光路上に進出する下降位置(ファインダ観察位置)と、図1の二点鎖線や図6ないし図8に示すように、この撮影光路から上方に退避した上方退避位置の間で揺動される。ミラー14は、ミラーシート上にミラーを支持した構造になっており、図5ないし図8に表われているのはミラーシート部分である。ミラー14が下降位置にあるときには、該ミラー14からの反射光がファインダ光学系17(ペンタプリズムや接眼レンズなどにより構成される)に入射され、ファインダ窓17aを通して被写体を観察することができる。一方、ミラー14が上方退避位置にあるときには、撮影レンズ12aからの光はミラー14で反射されずにシャッタ15側に進み、シャッタ15を開くことでイメージセンサ16の受光面上に光を入射させることができる。カメラボディ11の後面に設けたLCDモニタ18には、イメージセンサ16により得られる被写体の電子画像や、電子画像以外の各種の情報を表示することができる。
シャッタ15は、イメージセンサ16に対する入射光軸と直交する面内で走行可能な先幕15a(図2)と後幕15b(図2)からなるシャッタ幕を有している。露光動作時には先幕15aと後幕15bが所定の時間差をもって走行し、後述するシャッタチャージ動作により先幕15aと後幕15bが走行前の位置に戻される。シャッタ15の先幕15a及び後幕15bと連係する部材として、シャッタセットレバー51が設けられている。シャッタセットレバー51は不図示の軸を中心として揺動可能に支持されており、図4ないし図8、図15ないし図18、図23ないし図30にそれぞれ示されているのは、シャッタセットレバー51の自由端部である。シャッタセットレバー51は揺動によってこの自由端部の位置を上下方向に変位させ、自由端部が図5や図8に示す下方のシャッタ保持位置にあるとき、先幕15a及び後幕15bの走行を機械的に規制し、図6や図7に示す上方のシャッタ開放位置にあるとき、先幕15a及び後幕15bの走行を許す。シャッタセットレバー51は、セットレバー復元バネ(付勢部材、シャッタチャージレバー付勢部材)55(図5ないし図8、図15ないし図18、図23ないし図30に概念的に示す)によって、シャッタ開放位置に向けて付勢されている。そして、シャッタ開放位置からシャッタ保持位置へのシャッタセットレバー51の移動により、先幕15aと後幕15bのシャッタチャージが行われる。チャージされた状態の先幕15aと後幕15bはそれぞれ、先幕保持マグネット52(図2)と後幕保持マグネット53(図2)によって保持する(走行を規制する)ことができる。先幕保持マグネット52は、通電されると励磁(オン)されて吸着力が作用して先幕15aを保持し、通電解除されると非励磁(オフ)状態になって先幕15aを走行させる。同様に、後幕保持マグネット53は、通電されると励磁(オン)されて吸着力が作用して後幕15bを保持し、通電解除されると非励磁(オフ)状態になって後幕15bを走行させる。
ミラーボックス13の側部にはミラー・シャッタ駆動機構20が設けられている。図3や図4に示すように、ミラーボックス13の側面に対向する位置(図5ないし図8における紙面手前側)にカバー板21が固定され、カバー板21の下端部付近に駆動モータ(駆動源)22が支持されている。駆動モータ22の回転出力軸にはモータピニオン23が設けられ、モータピニオン23の回転は、3つの減速ギヤ24、25及び26からなる減速ギヤ列を介して遊星ギヤ機構30を構成する太陽ギヤ31に伝達される。図9及び図10に示すように、遊星ギヤ機構30は、太陽ギヤ31の回転軸31xを中心として揺動可能な遊星ギヤアーム32を有し、該遊星ギヤアーム32の先端側に、回転軸31xと平行な回転軸33xによって遊星ギヤ33が回転可能に支持されている。遊星ギヤ33は太陽ギヤ31に対して噛合しており、かつ遊星ギヤ33と遊星ギヤアーム32の間には、遊星フリクションバネ34(図3、図4)によって所定の大きさのフリクション(回転抵抗)が付与されている。
遊星ギヤ33は、遊星ギヤアーム32の揺動によって第1カムギヤ35と第2カムギヤ36に対して択一的に噛合される。遊星ギヤアーム32はサブアーム32aを備え、このサブアーム32aと、ミラーボックス13に形成した揺動制限凸部13aとの係合によって、第1カムギヤ35に対する噛合方向への遊星ギヤアーム32の揺動端が決められる。また、サブアーム32aと、ミラーボックス13に形成した揺動制限凸部(揺動規制手段)13bとの係合によって、第2カムギヤ36に対する噛合方向への遊星ギヤアーム32の揺動端が決められる。
第1カムギヤ35と第2カムギヤ36はそれぞれ、遊星ギヤ33の回転軸33xと平行な回転軸35x、36xを中心として回転可能にミラーボックス13側面とカバー板21の間に支持されており、その外周部には遊星ギヤ33と噛合可能な周面ギヤが形成されている。第1カムギヤ35と第2カムギヤ36は略同径であり、その周面ギヤの歯数が同一(減速比1:1)である。第1カムギヤ35と第2カムギヤ36にはそれぞれ、カバー板21に向く側の面にコード板ブラシ37、38が設けられており、カバー板21にはコード板ブラシ37、38が摺接するコード板39(図3、図4)が支持されている。コード板39上に形成したパターンとコード板ブラシ37、38の導通関係によって、第1カムギヤ35と第2カムギヤ36のそれぞれにおける特定の回転位置が検出される。この検出される各カムギヤ35、36の回転位置の詳細については後述する。また、第1カムギヤ35には、コード板ブラシ37と反対側の面に、ミラー制御カム(周面カム、第1の周面カム)40と第1シャッタ制御カム(周面カム、第2の周面カム)41が形成されている。第2カムギヤ36には、コード板ブラシ38と反対側の面に第2シャッタ制御カム(周面カム、共用周面カム)42が形成されている。これらミラー制御カム40と各シャッタ制御カム41、42の詳細形状についても後述する。以上のモータピニオン23から第1カムギヤ35及び第2カムギヤ36に至るまでの各ギヤの回転軸は全て、ミラーシートヒンジ14xの軸線と略平行である。
ミラーボックス13側面とカバー板21の間には、ミラーシートヒンジ14xの軸線と略平行な回転軸45xを中心として揺動可能にミラー駆動レバー(揺動部材)45が支持されている。ミラー駆動レバー45は、その先端部付近にミラー押さえ部45aを有し、該ミラー押さえ部45aとミラーアップバネ46によって、ミラー14のミラーシートに設けたミラーシートボス14aを挟んで保持し、回転軸45xを中心としたミラー駆動レバー45の揺動に応じて、ミラー14が上述の下降位置と上方退避位置の間で揺動される。すなわち、ミラー駆動レバー45は、ミラー14を光路上の下降位置に保持させるミラーダウン位置(図5、図15)と、ミラー14を上方退避位置に保持させるミラーアップ位置(図6ないし図8、図16)との間で揺動される。ミラー駆動レバー45は、ミラーダウンバネ(付勢部材、ミラー駆動レバー付勢部材)47によってミラーダウン位置に向けて回動付勢されている。ミラーダウンバネ47は、ミラー駆動レバー45の回転軸45x回りに配したコイル部と、該コイル部から延出された一対のアームを有するトーションばねからなり、その一方のアームがミラー駆動レバー45のバネ掛け部45cに係合し、他方のアームがミラーボックス13の側面に設けたバネ掛け突起13cに係合している。図5及び図15に示すように、ミラー駆動レバー45がミラーダウン位置にあるとき、ミラー押さえ部45aがミラーシートボス14aを下方に押し込んで、ミラー14を下降位置に保持させる。図3及び図11に示すように、ミラー14の下降位置を定める規制ピン(揺動規制手段)19がミラーボックス13に設けられており、ミラー駆動レバー45は、この規制ピン19によって回動規制されたミラー14のミラーシートボス(揺動規制手段)14aに対してミラー押さえ部(揺動規制手段)45aを当接させることによりミラーダウン位置に保持される。一方、ミラー駆動レバー45に設けたカムフォロア45bに対して第1カムギヤ35のミラー制御カム40が当接可能であり、第1カムギヤ35を図6ないし図8及び図16に示す位置(ミラーアップ完了位置)まで回転させると、ミラー制御カム40によってカムフォロア45bを押し上げて、ミラー駆動レバー45をミラーダウンバネ47の付勢力に抗してミラーアップ位置に保持させることができる。ミラー駆動レバー45がミラーアップ位置にあるとき、ミラーアップバネ46がミラーシートボス14aを押し上げて、ミラー14を上方退避位置に保持させる。このとき、ミラーアップバネ46を若干撓ませることによって、ミラー駆動レバー45の回動量の誤差を吸収してミラー14を確実に上方退避位置に保持させることができるようになっている。また、ミラーボックス13には、このミラー14の上方退避位置でミラーシートの先端部付近が当接する緩衝体(ミラークッション)48が設けられている。
ミラーボックス13側面とカバー板21の間にはまた、ミラーシートヒンジ14xの軸線と略平行な回転軸50xを中心として揺動可能にシャッタチャージレバー(揺動部材)50が支持されている。シャッタチャージレバー50は、回転軸50xを中心として異なる方向に延出された第1アーム50aと第2アーム50bを有し、第1アーム50aの先端に、シャッタセットレバー51の自由端部に対して当接する先端当接部50cを有している。シャッタチャージレバー50は、先端当接部50cを介してシャッタセットレバー51をシャッタ保持位置に押し込むチャージ位置(図5、図8、図15及び図18)と、該押し込みを解除してシャッタセットレバー51のシャッタ開放位置への移動を許すチャージ解除位置(図6、図7、図16及び図17)との間で揺動可能であり、チャージレバー復元バネ(付勢部材、シャッタチャージレバー付勢部材)54によってチャージ解除位置に向けて回動付勢されている。チャージレバー復元バネ54は引張バネからなり、その一端部を第1アーム50a上のバネ掛け突起50dに係合させ、他端部をミラーボックス13の側面に設けたバネ掛け突起13dに係合させている。シャッタチャージレバー50は、第1アーム50a上に設けたストッパ部50e(図17、図18参照)をミラーボックス13上の揺動制限凸部(揺動規制手段)13e(図3ないし図8、図15及び図16)に当接させることで、この付勢方向への揺動端(すなわちチャージ解除位置)が定められる。また、第1アーム50a上には第1カムフォロア50fが設けられ、第2アーム50b上には第2カムフォロア50gが設けられている。第1カムフォロア50fと第2カムフォロア50gは、回転軸50xから略等距離に配されている。第1カムフォロア50fに対しては第1カムギヤ35の第1シャッタ制御カム41が当接可能であり、第2カムフォロア50gに対しては第2カムギヤ36の第2シャッタ制御カム42が当接可能である。第1カムギヤ35が図5及び図15に示す位置(原点位置)にあるとき、第1シャッタ制御カム41によって第1カムフォロア50fを押し下げて、チャージレバー復元バネ54の付勢力に抗してシャッタチャージレバー50をチャージ位置に保持させることができる。同様に、第2カムギヤ36を図8及び図18に示す位置(シャッタチャージ完了位置)に回転させることによっても、第2シャッタ制御カム42によって第2カムフォロア50gを押し上げて、チャージレバー復元バネ54の付勢力に抗してシャッタチャージレバー50をチャージ位置に保持させることができる。
ミラーボックス13側面とカバー板21の間にはさらに、ミラーシートヒンジ14xの軸線と略平行な回転軸70xを中心として揺動可能にバランサーレバー(揺動部材)70が支持されている。バランサーレバー70は、負荷アーム70aの先端部に、第2シャッタ制御カム42に対して当接可能なカムフォロア70bを備え、このカムフォロア70bを第2シャッタ制御カム42に当接させる方向、すなわち図5ないし図8、図17及び図18の反時計方向へ向けて、バランサーレバー付勢バネ(付勢部材、バランサーレバー付勢部材)71によって回動付勢されている。バランサーレバー付勢バネ71は、バランサーレバー70の回転軸70x回りに配したコイル部と、該コイル部から延出された一対のアームを有するトーションバネからなっており、その一方のアームを、負荷アーム70aと異なる方向へ延出するバランサーレバー70の規制アーム70cに係合させ、他方のアームを、ミラーボックス13の側面に設けたバネ掛け突起13fに係合させている。規制アーム70cをミラーボックス13の揺動制限凸部13bに対して当接させることにより、バランサーレバー付勢バネ71による付勢方向へのバランサーレバー70の揺動端が定められる。
カメラ10には、ミラー・シャッタ駆動機構20とは別に、レンズ鏡筒12に設けた絞り12bを駆動制御するための絞り制御機構27(図2に概念的に示す)が設けられている。この絞り制御機構27は、ミラー・シャッタ駆動機構20の駆動モータ22とは別の駆動源によって駆動され、後述するライブビュー中において、イメージセンサ16によって得られる被写体の明るさ情報に応じて絞り12bの大きさ(絞り値)を随時変化させることができる。
図2は、本実施形態におけるカメラ10の制御系の要部を示すブロック図である。なお、カメラ10は、絞り制御機構27による絞り値の設定やシャッタスピードの設定に関わる露出制御装置や、被写体距離情報に基づいて合焦動作を行う自動合焦装置などを備えているが、これらについては図2では省略している。制御回路60は、レリーズスイッチ61、ライブビュースイッチ62、ミラーダウンスイッチ63、ミラーアップスイッチ64、チャージ完了スイッチ65、チャージレバー退避スイッチ66からの信号入力により、内部メモリに格納されたプログラムに従って、駆動モータ22、先幕保持マグネット52及び後幕保持マグネット53の動作を制御する。レリーズスイッチ61は、カメラボディ11の外面に設けたレリーズ釦の押し込み操作によってオンさせることができ、ライブビュースイッチ62は、レリーズ釦とは別にカメラボディ11の外面に設けたライブビュー釦の操作によりオンオフさせることができる。
ミラーダウンスイッチ63とミラーアップスイッチ64は、コード板ブラシ37とコード板39によって検出される第1カムギヤ35の回転位置情報として入力される。具体的には、第1カムギヤ35が回転して図5及び図15の回転位置(原点位置)に達するとき、ミラーダウンスイッチ63がオンになり、第1カムギヤ35が回転して図6及び図16の回転位置(ミラーアップ完了位置)に達するとき、ミラーアップスイッチ64がオンになる。また、チャージ完了スイッチ65とチャージレバー退避スイッチ66は、コード板ブラシ38とコード板39によって検出される第2カムギヤ36の回転位置情報として入力される。具体的には、第2カムギヤ36が回転して図8及び図18の回転位置(シャッタチャージ完了位置)に達するとき、チャージ完了スイッチ65がオンになり、第2カムギヤ36が回転して図7及び図17の回転位置(原点位置)に達するとき、チャージレバー退避スイッチ66がオンになる。
また、制御回路60は画像処理回路を含んでおり、イメージセンサ16の受光面上に結像した被写体像を処理して電子画像データを生成し、メモリカード67などの記録媒体への画像データの記録や、LCDモニタ18での画像表示を行う。
以上のカメラ10の動作について説明する。以下の動作説明で言及されるカムギヤ35、36などの回転方向は、図5ないし図11や図15ないし図30に基づくものである。図5及び図15は、通常撮影モードにおけるミラー・シャッタ駆動機構20の初期状態を示している。初期状態では、第1カムギヤ35のミラー制御カム40によるミラー駆動レバー45(カムフォロア45b)の押し上げが行われておらず、ミラー駆動レバー45がミラーダウンバネ47の付勢力によってミラーダウン位置に保持され、これに応じてミラー14が下降位置に保持されている。また、第1カムギヤ35の第1シャッタ制御カム41によって第1カムフォロア50fが押し下げられ、シャッタチャージレバー50はチャージレバー復元バネ54の付勢力に抗してチャージ位置に保持されている。シャッタチャージレバー50の先端当接部50cに押し下げられて、シャッタセットレバー51はシャッタ保持位置に保持されている。一方、第2カムギヤ36の第2シャッタ制御カム42は第2カムフォロア50gから離れていて、シャッタチャージレバー50の位置制御には関与していない。このときシャッタ15のチャージは完了しており、シャッタセットレバー51がシャッタ保持位置にあることによって先幕15aと後幕15bの走行が機械的に規制されている。先幕保持マグネット52と後幕保持マグネット53はオフされている。以上の初期状態における第1カムギヤ35、第2カムギヤ36の回転位置を原点位置とする。そして、初期状態では、遊星ギヤ機構30は、遊星ギヤ33を第1カムギヤ35側に噛合させた状態にある(図9参照)。
この初期状態においてレリーズスイッチ61がオンされると、図12のタイミングチャートに示す通常撮影モードでの撮影が行われる。通常撮影モードでは、モータピニオン23を図5の反時計方向に回転させるように駆動モータ22が駆動制御される。このモータ駆動方向を正転(一の方向)と呼ぶ。また、これと反対の、図5の時計方向にモータピニオン23を回転させるモータ駆動方向を逆転(他の方向)と呼ぶ。レリーズスイッチ61がオンされると(図12のU1、以下同様に「U〜」は図12を参照)、まず先幕保持マグネット52と後幕保持マグネット53が通電されてシャッタ15の先幕15aと後幕15bを電磁的に保持する(U2)。ここで、露出制御(測光、絞り値やシャッタスピードの設定)やAF制御のための各種演算やレンズ鏡筒12側との通信が行われるが、その詳細は省略する。
続いて駆動モータ22が正転され(U3)、モータピニオン23から減速ギヤ24、25及び26を介して太陽ギヤ31が図5の反時計方向に回転駆動される。この太陽ギヤ31の回転方向は、揺動アーム32及び遊星ギヤ33を第1カムギヤ35に接近させる方向の回転であるが、遊星ギヤ33が第1カムギヤ35に対して既に噛合しており、かつ当該方向への遊星ギヤアーム32の移動はサブアーム32aと揺動制限凸部13aの関係によって規制されている。そのため、太陽ギヤ31の反時計方向回転によって遊星ギヤ33がその軸位置を変えずに図5の時計方向に回転され、第1カムギヤ35が同図の反時計方向に回転される。第1カムギヤ35がその原点位置から所定量回転すると、ミラー制御カム40がカムフォロア45bに当接してミラー駆動レバー45をミラーアップ位置方向へ押圧回動させる。すると、ミラーアップバネ46によってミラーシートボス14aが上方へ押し上げられ、ミラー14が下降位置から上方退避位置へ向けて回動される(U4)。第1カムギヤ35が原点位置から回転されることで、コード板39に対するコード板ブラシ37の接触位置が変化し、ミラーダウンスイッチ63がオフになる(U5)。また、原点位置からの第1カムギヤ35の反時計方向回転ではさらに、第1シャッタ制御カム41が徐々に第1カムフォロア50fに対する押し下げ量を小さくして、チャージレバー復元バネ54の付勢力によってシャッタチャージレバー50がチャージ位置からチャージ解除位置に向けて回動される(U6)。このシャッタチャージレバー50の回動に追随して、シャッタセットレバー51も、セットレバー復元バネ55の付勢力によって、シャッタ保持位置からシャッタ開放位置に向けて回動される。
第1カムギヤ35が図6及び図16に示すミラーアップ完了位置まで回転されるとミラーアップスイッチ64がオンされ(U7)、このスイッチ入力により駆動モータ22の正転が停止される(U8)。すると、ミラーアップ動作(ミラー14及びミラー駆動レバー45の上昇回動)とシャッタチャージレバー50の退避動作(上昇回動)が停止され、ミラー14とミラー駆動レバー45はそれぞれ上方退避位置とミラーアップ位置に保持され(U9)、シャッタチャージレバー50はチャージ解除位置に保持される(U10)。このときミラー・シャッタ駆動機構20は図6及び図16に示す露光可能状態になっている。そして、駆動モータ22の停止後、先幕保持マグネット52が通電解除され(U11)、すでに機械的係止の解除されているシャッタ15の先幕15aが走行する(U12)。続いて、設定されたシャッタスピードに基づくシャッタ開閉時間の経過がチェックされ、先幕走行から所定時間を経過すると後幕保持マグネット53が通電解除されて(U13)、シャッタ15の後幕15bが走行する(U14)。この先幕15aと後幕15bの差動によってイメージセンサ16の受光面に被写体光が入射し、露光が行われる。
露光完了後に駆動モータ22は正転駆動され(U15)、ミラー14の復帰動作とシャッタチャージ動作が行われる。まず、第1カムギヤ35が図6及び図16のミラーアップ完了位置から回転することによりミラーアップスイッチ64がオフになる(U16)。また、第1カムギヤ35の回転に伴い第1シャッタ制御カム41が第1カムフォロア50fを押し下げて、チャージレバー復元バネ54及びセットレバー復元バネ55の付勢力に抗してシャッタチャージレバー50がチャージ解除位置からチャージ位置に向けて回動される(U17)。このシャッタチャージレバー50の回動によってシャッタセットレバー51が下方に押し込まれ、シャッタ15の先幕15aと後幕15bのチャージが行われる(U18)。また、第1カムギヤ35の回転に伴ってミラー制御カム40によるカムフォロア45bの押し上げ量が徐々に小さくなり、ミラーダウンバネ47の付勢力によってミラー駆動レバー45がミラーアップ位置からミラーダウン位置へ向けて回動される。このミラー駆動レバー45の回動によって、ミラー押さえ部45aがミラーシートボス14aを押し下げ、ミラー14が上方退避位置から下降位置に向けて回動される(U19)。第1カムギヤ35が一回転して原点位置に復帰する時点で、ミラー14の下降位置への回動(ミラー駆動レバー45のミラーダウン位置への回動)と、シャッタチャージレバー50のチャージ位置への回動は完了しており(U20、U21)、第1カムギヤ35が原点位置に達してミラーダウンスイッチ63のオンが検出されると(U22)、駆動モータ22の正転駆動が停止され(U23)、ミラー・シャッタ駆動機構20が図5及び図15の初期状態に戻る。つまり、通常撮影モードにおける1回の撮影シーケンスでは、第1カムギヤ35が原点位置から一回転されてミラー14(ミラー駆動レバー45)とシャッタ15(シャッタチャージレバー50)に関する動作を制する。
図5及び図15に示すミラー・シャッタ駆動機構20の初期状態でライブビュースイッチ62がオンされると(図13のV1、以下同様に「V〜」は図13を参照)、図13のタイミングチャートに示すライブビューモードに入る。ライブビューモードでは、図6及び図16の露光可能状態になるまでは通常撮影モードと同様に動作する。すなわち、図13に示すV2〜V10は、先に説明した図12のU2〜U10と同じ制御及び動作であり、駆動モータ22の正転駆動(V3)によって第1カムギヤ35が原点位置からミラーアップ完了位置まで回転され、この間にミラーアップ動作(V4、V9)とシャッタチャージレバー50の退避動作(V6、V10)が行われる。第1カムギヤ35が図6及び図16のミラーアップ完了位置に達すると、先幕保持マグネット52の通電がオフされ(V11)、シャッタ15の先幕15aが走行する(V12)。通常撮影モードと異なり、先幕15aに続けて後幕15bは走行されず、シャッタ15が開かれた状態が維持される。よって、撮影レンズ12a側からの光線が継続してイメージセンサ16の受光面に入射し、画像処理を経てその電子画像がLCDモニタ18上に表示される。一方、ミラー14が上方退避位置にあるため、ファインダ光学系17による被写体観察は不可となる。
ここでライブビュースイッチ62をオフすると(V13)、後幕保持マグネット53がオフになり(V14)、シャッタ15の後幕15bが走行する(V15)。続いて駆動モータ22が正転駆動され(V16)、これ以降は図12のU16〜U23と同様の初期状態への復帰動作が行われる(V17〜V24)。つまり、第1カムギヤ35が図6及び図16のミラーアップ完了位置から図5及び図15の原点位置まで回転し、この間にミラーダウン動作(V20、V21)とシャッタチャージ動作(V18、V19、V22)が行われる。
一方、図13における先幕15aの走行(V12)後のライブビュー状態(このときミラー・シャッタ駆動機構20は図6及び図16の状態にある)で、レリーズスイッチ61をオンして撮影動作を行うことができる。このライブビューモードでの撮影動作を示したのが図14のタイミングチャートであり、レリーズスイッチ61がオンされると(図14のK1、以下同様に「K〜」は図14を参照)、まず後幕保持マグネット53の通電がオフされて(K2)後幕15bが走行し(K3)、シャッタ15が一旦閉じられる。これでシャッタ15はチャージされていない状態となるため、続く撮影動作の準備としてシャッタチャージを実行する。図12に示す通常撮影モードでは、駆動モータ22の正転により第1カムギヤ35を回転させてシャッタチャージを行うが、このライブビューモードでの撮影時には、後幕15bの走行後に駆動モータ22が逆転駆動される(K4)。駆動モータ22が逆転駆動されると、モータピニオン23から減速ギヤ24、25及び26を介して太陽ギヤ31が図6の時計方向に回転駆動される。遊星フリクションバネ34の付勢力によって遊星ギヤ33が遊星ギヤアーム32に対して所定のフリクションで押し付けられているため、この太陽ギヤ31の時計方向回転によって、遊星ギヤ33は、回転軸31xを中心として遊星ギヤアーム32を同図の時計方向へ回転させながら太陽ギヤ31の周面上を移動(公転)し、第1カムギヤ35との噛合を解除して第2カムギヤ36に噛合する(図10)。この遊星ギヤ機構30における噛合切替直後の状態を示したのが図7及び図17である。第2カムギヤ36は、図5及び図15の初期状態から図6及び図16の露光可能状態に至るまでモータ駆動力が伝達されていないため原点位置に保持され続けており、図7及び図17の状態でも原点位置にある。そして、遊星ギヤ33が第2カムギヤ36に噛合すると、遊星ギヤアーム32のそれ以上の回転がサブアーム32aと揺動制限凸部13bの関係によって規制され、これ以降は駆動モータ22の逆転駆動力を受けて、第2カムギヤ36が図7及び図17に示す原点位置から時計方向に回転される。バランサーレバー70は、第2カムギヤ36の回転駆動時に適切な負荷を与えて、遊星ギヤ33と第2カムギヤ36を確実に噛合させるためのものであり、その機能の詳細については後述する。
ライブビューモードでの撮影時には、第2カムギヤ36の回転位置(コード板ブラシ38とコード板39)に応じてオンオフされるチャージ完了スイッチ65とチャージレバー退避スイッチ66によって駆動が制御される。図7及び図17に示す第2カムギヤ36の原点位置では、コード板ブラシ38とコード板39の接触関係によってチャージレバー退避スイッチ66がオンになっているが、この原点位置からの回転によりコード板ブラシ38とコード板39の接触位置が変化し、チャージレバー退避スイッチ66がオフになる(K5)。そして。第2カムギヤ36が原点位置から所定量回転すると、第2シャッタ制御カム42が第2カムフォロア50gに当接してこれを押し上げて、チャージレバー復元バネ54の付勢力に抗してシャッタチャージレバー50がチャージ解除位置からチャージ位置に向けて回動される(K6)。このシャッタチャージレバー50の回動によって、シャッタセットレバー51がセットレバー復元バネ55の付勢力に抗してシャッタ開放位置からシャッタ保持位置に向けて回動され、先幕15aと後幕15bに対するシャッタチャージが行われる(K7)。第2カムギヤ36が図8及び図18に示すシャッタチャージ完了位置に達すると、シャッタチャージレバー50がチャージ位置に位置されてシャッタチャージが完了し(K8)、チャージ完了スイッチ65がオンになる(K9)。この信号入力を受けて、先幕保持マグネット52と後幕保持マグネット53がそれぞれ通電されて、先幕15aと後幕15bが電磁的に保持される(K10)。
このシャッタチャージ完了後も駆動モータ22の逆転駆動が継続されて第2カムギヤ36が回転され、チャージ完了スイッチ65がオフになり(K11)、第2シャッタ制御カム42による第2カムフォロア50gの押し上げ状態が徐々に解除されて、シャッタチャージレバー50がチャージレバー復元バネ54の付勢力によって図8及び図18のチャージ位置から図7及び図17のチャージ解除位置に向けて回動される(K12)。やがてチャージレバー退避スイッチ66がオンになり(K13)、この信号入力により駆動モータ22の逆転駆動が停止される(K14)。このとき、第2カムギヤ36は図7及び図17に示す原点位置に戻っており、チャージレバー復元バネ54の付勢力によってシャッタチャージレバー50がチャージ解除位置に保持される(K15)。また、シャッタチャージレバー50に追随して、シャッタセットレバー51も、セットレバー復元バネ55の付勢力によってシャッタ開放位置に保持される。
そして、通常撮影モードと同様に、先幕保持マグネット52が通電オフされて(K16)先幕15aが走行し(K17)、設定されたシャッタスピードに応じた所定時間後に後幕保持マグネット53が通電オフされて(K18)、後幕15bが走行し(K19)、露光が行われる。この露光後の状態ではシャッタ15が閉じられているため、シャッタ15を開いてライブビュー状態にするべく、第2カムギヤ36が原点位置からもう一回転される。その動作は、先に述べたK4〜K15と同様のものなので簡潔に述べる。まず後幕15bの走行後に駆動モータ22が逆転駆動されて第2カムギヤ36の回転を開始させ(K20)、チャージレバー退避スイッチ66がオフになる(K21)。第2カムギヤ36の回転に伴い、第2シャッタ制御カム42が第2カムフォロア50gに再び当接してこれを押し上げ、シャッタチャージレバー50がチャージ解除位置からチャージ位置へ向けて回動され(K22)、シャッタチャージが行われる(K23)。やがて、第2カムギヤ36が図8及び図18に示すシャッタチャージ完了位置に達すると、シャッタチャージレバー50がチャージ位置に保持され(K24)、チャージ完了スイッチ65がオンになり(K25)、この信号入力に応じて先幕保持マグネット52と後幕保持マグネット53が通電されて先幕15aと後幕15bを電磁的に保持する(K26)。駆動モータ22の逆転駆動は継続され、チャージ完了スイッチ65はオフになり(K27)、第2シャッタ制御カム42による第2カムフォロア50gの押圧が徐々に解除されて、シャッタチャージレバー50はチャージレバー復元バネ54の付勢力によって再度チャージ解除位置へ回動する(K28)。やがてチャージレバー退避スイッチ66のオンが検出されると(K29)、駆動モータ22の逆転駆動が停止され(K30)、シャッタチャージレバー50がチャージ解除位置にて保持される(K31)。ここで、先幕保持マグネット52の通電をオフして(K32)、先幕15aが走行され(K33)、後幕15bは走行させずに保持させることで、図13のV12後における先幕走行後と同じライブビュー状態になる。
以上の図14に示すライブビューモードでの撮影時には、遊星ギヤ33が第2カムギヤ36に噛合した状態にあって、第1カムギヤ35は図6ないし図8及び図16に示すミラーアップ完了位置に留まっているため、ミラー14は上方退避位置に保持され続ける。つまり、ライブビューモードでの撮影時には、ミラー14の昇降動作が一切生じない。
図14におけるK33の先幕走行後のライブビュー状態で、ライブビュースイッチ62をオフしてライブビューモードを終了すると、先に説明した図13のV13〜V22と同様の動作が行われ、図5及び図15の初期状態に戻る。但し、図14のライブビューモードでの撮影シーケンスを経た後は、遊星ギヤ33が第1カムギヤ35ではなく第2カムギヤ36に対して噛合している点が、撮影動作を行わずに(図14の撮影シーケンスに入らずに図13のシーケンスのみで)ライブビューモードから抜けた場合と相違する。そのため、図14の撮影シーケンスを経た場合は、図13のV16における駆動モータ22の正転駆動時に、遊星ギヤ33が第2カムギヤ36との噛合を解除して第1カムギヤ35に再噛合するという遊星ギヤ機構30の噛合切替動作が生じる。これでミラー・シャッタ駆動機構20は図7の状態から図6の状態に戻り、以降は先に説明した通りのライブビューモードの終了処理が行われる(V17〜V22)。
以上のように、本実施形態のミラー・シャッタ駆動機構20では、駆動モータ22の正転、逆転に応じて遊星ギヤ機構30によって第1カムギヤ35と第2カムギヤ36に対して択一的にモータ駆動力を伝達させることによって、駆動源が単一の駆動モータ22でありながら、ライブビューモードでの撮影動作時にミラー14の昇降動作を伴わずにシャッタチャージを行うことが可能となっている。そして、遊星ギヤ機構30の遊星ギヤ33を第1カムギヤ35と第2カムギヤ36のそれぞれに対して確実に噛合させて高精度な駆動を達成するべく、以下に説明する構成を有している。
上述した通り、第1カムギヤ35のミラー制御カム40と第1シャッタ制御カム41に対しては、ミラー駆動レバー45のカムフォロア45bとシャッタチャージレバー50の第1カムフォロア50fがそれぞれ当接する。ミラー駆動レバー45に対するミラーダウンバネ47による回動付勢力は、カムフォロア45bからミラー制御カム40を介して第1カムギヤ35に伝わる。また、シャッタチャージレバー50に対するチャージレバー復元バネ54の回動付勢力や、シャッタセットレバー51に対するセットレバー復元バネ55の回動付勢力は、第1カムフォロア50fから第1シャッタ制御カム41を介して第1カムギヤ35に伝わる。第1カムギヤ35に対してはさらに、シャッタセットレバー51からシャッタチャージレバー50の第1カムフォロア50fを経由して、シャッタ15からのシャッタチャージ負荷(シャッタ幕走行力)が作用する。シャッタチャージ負荷は、先幕15aや後幕15bをチャージするときの反力や、先幕15aや後幕15bがチャージされた状態であって先幕保持マグネット52や後幕保持マグネット53による保持がなされていないときのチャージ開放力である。第1カムギヤ35は、遊星ギヤ33に噛合されて駆動モータ22からの駆動力を受けることで回転されるものであるが、その駆動対象であるミラー駆動レバー45やシャッタチャージレバー50から所定の外力が加わった場合、遊星ギヤ33との確実な噛合が妨げられる可能性がある。このような所定の外力とは、具体的には、遊星ギヤ33による第1カムギヤ35の回転進行方向(すなわち図5ないし図8における反時計方向)へ該第1カムギヤ35を回転させようとする余剰な力(以下、アシストトルクと呼ぶ)である。第1カムギヤ35に対してこのようなアシストトルクが作用する状況下で遊星ギヤ33から第1カムギヤ35に回転伝達させようとすると、遊星ギヤ33において、第1カムギヤ35に対する噛合が外れて第2カムギヤ36側に向けて弾かれるような挙動が生じるおそれがある。そのため、このようなアシストトルクが第1カムギヤ35に対して作用しないようにするべく、第1カムギヤ35上のミラー制御カム40と第1シャッタ制御カム41は、以下のような形状設定がなされている。
図19ないし図24に示すように、ミラー制御カム40は、回転軸35xを中心とする最大外径位置に、その回転方向位置が変化しても回転軸35xからの半径方向距離が変わらないカム面形状をなす大径の定径カム部40aが形成され、定径カム部40aよりも回転軸35xに近い半径方向位置に小径の逃げカム部40cが形成され、この逃げカム部40cと定径カム部40aの間を、回転方向位置の変化に応じて回転軸35xからの半径方向距離が変化するカム面形状の非定径カム部40bで接続した構成になっている。非定径カム部40bは、第1カムギヤ35の半径方向において定径カム部40aと逃げカム部40cの間の範囲に形成されており、定径カム部40aよりも外径側に突出したり、逃げカム部40cよりも内径側に入り込んだりする領域は存在しない。非定径カム部40bは、定径カム部40aの両側(すなわち逃げカム部40cの両側)に一対形成されており、図中ではそれぞれ40b-1、40b-2で表している。これら一対の非定径カム部40b-1、40b-2は互いの形状(カム曲線)が異なる。逃げカム部40cと非定径カム部40b-1の境界部は、その周辺の凸カム面形状とは逆に回転軸35xに接近する凹面形状となっている。また、第1シャッタ制御カム41は、回転軸35x中心とする最大外径位置に、その回転方向位置が変化しても回転軸35xからの半径方向距離が変わらないカム面形状をなす大径の定径カム部41aが形成され、定径カム部41aよりも回転軸35xに近い半径方向位置に小径の逃げカム部41cが形成され、この逃げカム部41cと定径カム部41aの間を、回転方向位置の変化に応じて回転軸35xからの半径方向距離が変化するカム面形状の非定径カム部41bで接続した構成になっている。非定径カム部41bは、第1カムギヤ35の半径方向において定径カム部41aと逃げカム部41cの間の範囲に形成されており、定径カム部41aよりも外径側に突出したり、逃げカム部41cよりも内径側に入り込んだりする領域は存在しない。非定径カム部41bは、定径カム部41aの両側(すなわち逃げカム部41cの両側)に一対形成されており、図中ではそれぞれ41b-1、41b-2で表している。これら一対の非定径カム部41b-1、41b-2は互いの形状(カム曲線)が異なる。逃げカム部41cは、その周辺の凸カム面形状とは逆に回転軸35xに接近する凹面形状になっている。
ミラー駆動レバー45は、そのカムフォロア45bがミラー制御カム40の定径カム部40aに当接するとき、上述のミラーアップ位置に保持される。ミラーアップ位置では、カムフォロア45bが第1カムギヤ35の回転軸35xから最も離間した状態(カム軸離間位置)にあり、ミラーダウンバネ47の撓み量は最大となる。逆に、ミラー駆動レバー45は、そのカムフォロア45bがミラー制御カム40の逃げカム部40cに対向するとき、上述のミラーダウン位置に保持される。ミラー駆動レバー45のミラーダウン位置は、規制ピン19への当接により下降位置に保持されたミラー14のミラーシートボス14aに対して、ミラーダウンバネ47の付勢力によってミラー押さえ部45aを当接させることによって定められ、このときカムフォロア45bが第1カムギヤ35の回転軸35xに最も接近した状態(カム軸接近位置)にあるが、カムフォロア45bは逃げカム部40cに当接していない。シャッタチャージレバー50は、その第1カムフォロア50fが第1シャッタ制御カム41の定径カム部41aに当接するとき、上述のチャージ位置に保持される。チャージ位置では、第1カムフォロア50fが第1カムギヤ35の回転軸35xから最も離間した状態(カム軸離間位置)にあり、チャージレバー復元バネ54及びセットレバー復元バネ55の撓み(伸び)量は最大となる。逆に、シャッタチャージレバー50は、その第1カムフォロア50fが第1シャッタ制御カム41の逃げカム部41cに対向するとき、上述のチャージ解除位置に保持される。チャージ解除位置は、チャージレバー復元バネ54及びセットレバー復元バネ55の付勢力によってストッパ部50eが揺動制限凸部13eに当接することによって定められ、このとき第1カムフォロア50fが第1カムギヤ35の回転軸35xに最も接近した状態(カム軸接近位置)にあるが、第1カムフォロア50fは逃げカム部41cに当接していない。
図19から図24は、通常撮影モードでの第1カムギヤ35への力の作用関係を模式的に示したものである。図中の「f1」は、シャッタセットレバー51から作用する力を表し、図19から図21におけるf1は、セットレバー復元バネ55の付勢力(復元力)であり、図22から図24におけるf1は、セットレバー復元バネ55の付勢力(復元力)とシャッタ15のシャッタチャージ負荷を合わせた力である。「f2」はチャージレバー復元バネ54による付勢力(復元力)、「f3」はシャッタチャージレバー50の第1カムフォロア50fが第1シャッタ制御カム41のカム面を押す力、「f4」はミラー駆動レバー45のカムフォロア45bがミラー制御カム40のカム面を押す力を表している。また、「r1」はシャッタチャージレバー50の回転中心(回転軸50xの軸線)からf1までの半径方向距離、「r2」はシャッタチャージレバー50の回転中心(回転軸50xの軸線)からf2までの半径方向距離、「r3」はシャッタチャージレバー50の回転中心(回転軸50xの軸線)からf3までの半径方向距離、「r4」はミラー駆動レバー45の回転中心(回転軸45xの軸線)からf4までの半径方向距離、「r5」は第1カムギヤ35の回転中心(回転軸35xの軸線)からf3までの半径方向距離、「r6」は第1カムギヤ35の回転中心(回転軸35xの軸線)からf4までの半径方向距離を表している。また、「M1」は、f1とf2によるシャッタチャージレバー50の回転モーメントを表し、「M2」は、ミラーダウンバネ47によるミラー駆動レバー45の回転モーメントを表す。以下の説明中の「T1」は、第1カムギヤ35に対してその回転進行方向(反時計方向)と同方向に作用するアシストトルクであり、「T2」は、第1カムギヤ35に対してその回転進行方向と反対方向(時計方向)に作用するトルク(以下、負荷トルクと呼ぶ)である。
通常撮影モードでの撮影シーケンスにおいて、第1カムギヤ35が図5及び図15に示す原点位置から図6及び図16に示すミラーアップ完了位置を経て原点位置に戻るまでの、第1カムギヤ35に対するアシストトルクT1と負荷トルクT2の作用関係を示したのが図31である。同図から分かるように、第1カムギヤ35に対してアシストトルクT1と負荷トルクT2のいずれも作用しない状態(中立位置)が2箇所存在する。その一方は第1カムギヤ35の原点位置(第1の中立位置)であり、他方はミラーアップ完了位置(第2の中立位置)である。
まず、第1カムギヤ35の原点位置からミラーアップ完了位置までの負荷変動について説明する。原点位置からミラーアップ完了位置までは、ミラーダウンバネ47の付勢力に抗してミラー制御カム40によってミラー駆動レバー45をミラーアップ位置(カム軸離間位置)に押圧していくため、ミラー駆動レバー45(ミラー駆動系)側が第1カムギヤ35に対する負荷トルクT2の作用源となる。一方、シャッタチャージレバー50は、第1シャッタ制御カム41による押圧が徐々に解除されて、チャージレバー復元バネ54及びセットレバー復元バネ55の付勢力によってチャージ解除位置(カム軸接近位置)に向けて回動していくため、シャッタチャージレバー50(シャッタチャージ系)側がアシストトルクT1の作用源となる。そして、この間のアシストトルクT1と負荷トルクT2はそれぞれ次式(1)、(2)で求められる。
(1)T1=f3×r5
但し、f3=M1/r3、M1=f1×r1+f2×r2
(2)T2=f4×r6
但し、f4=M2/r4
第1カムギヤ35の原点位置(第1の中立位置)では、図15に示すように、ミラー駆動レバー45は、規制ピン19への当接により下降位置に保持されたミラー14のミラーシートボス14aに対してミラー押さえ部45aを当接させることによってミラーダウン位置(カム軸接近位置)に保持されており、カムフォロア45bはミラー制御カム40の逃げカム部40cに対して若干離間して対向しているため、ミラー駆動レバー45から第1カムギヤ35に対する回転方向のトルクは作用していない。すなわちT2=0である。また、シャッタチャージレバー50は、第1カムフォロア50fを第1シャッタ制御カム41の定径カム部41aに当接させてチャージ位置(カム軸離間位置)に保持されている。この定径カム部41aに対する第1カムフォロア50fの当接状態では、f3の作用方向が回転軸35xを中心とする第1カムギヤ35の半径方向と一致するため、r5=0である。すなわち、T1=f3×0=0となり、第1カムギヤ35に対しては、ミラー駆動レバー45とシャッタチャージレバー50のいずれからも、回転方向のトルクは作用していない。
第1カムギヤ35が図5及び図15の原点位置から若干量回転されて、図31の「H1」に達した状態を示したのが図19である。このとき、シャッタチャージレバー50の第1カムフォロア50fは、原点位置に引き続いて第1シャッタ制御カム41の定径カム部41aに当接しており、シャッタチャージレバー50から第1カムギヤ35に対する回転方向のトルクは作用していない。すなわちT1=0である。一方、ミラー駆動レバー45のカムフォロア45bは、ミラー制御カム40の逃げカム部40cに離間して対向する状態から、非定径カム部40b-1に当接して上方へ押し上げられる状態に変化し、図12のU4に示すミラーの上昇回動が開始される。その結果、f4の作用方向が、回転軸35xを中心とした半径方向に一致せずr6≠0となり、ミラー駆動レバー45の回転モーメントM2が、第1カムギヤ35に対する負荷トルクT2として作用するようになる。つまり、第1カムギヤ35が原点位置から回転を開始すると、まず、アシストトルクT1は作用せずに、負荷トルクT2のみが先行して作用する状態になる(図31のQ1区間)。
第1カムギヤ35が回転を続けると、図31の「H2」の位置で、シャッタチャージレバー50の第1カムフォロア50fが、第1シャッタ制御カム41に対する当接位置を定径カム部41aから非定径カム部41b-1に変化させて、図12のU6に示すシャッタチャージレバー50のチャージ解除方向の回動が開始される。すると、図20に示すように、f3の作用方向が変化してr5≠0となり、シャッタチャージレバー50の回転モーメントM1が、第1カムギヤ35に対するアシストトルクT1として作用するようになる。これ以降は、第1カムギヤ35に対してアシストトルクT1と負荷トルクT2が同時に作用するようになる(図31のQ2区間)。但し、図31から分かるように、Q2区間では常にT1<T2の関係が成立しており、第1カムギヤ35にはT2−T1の大きさの負荷トルクが作用している。換言すれば、アシストトルクT1と負荷トルクT2が同時に作用するQ2区間では必ずT1<T2になるように、非定径カム部40b-1、41b-1のカム曲線とバネ(47、54及び55)の荷重が設定されている。なお、この実施形態ではQ2区間において常時T1<T2であるが、少なくともT1≦T2を満たせば効果が得られる。
第1カムギヤ35が図31の「H3」に達すると、シャッタチャージレバー50がチャージ解除位置(カム軸接近位置)への移動を完了し、ストッパ部50eと揺動制限凸部13eの当接によってチャージ解除位置に保持される(図12のU10)。この状態では、図21に示すように、第1カムフォロア50fは、第1シャッタ制御カム41の非定径カム部41b-1への当接状態から、逃げカム部41cに対して若干離間して対向する状態へと変化し、シャッタチャージレバー50はストッパ部50eと揺動制限凸部13eの当接によって保持される。よって、第1カムギヤ35に対するアシストトルクT1が作用しなくなる。一方、図12のU9とU10のタイミングの相違から分かる通り、ミラー制御カム40の非定径カム部40b-1によるミラー上昇動作は継続しており、第1カムギヤ35に対する負荷トルクT2が作用し続けている(図31のQ3区間)。図21の状態から第1カムギヤ35が若干回転し、図31の「H4」位置に達すると、ミラー駆動レバー45のカムフォロア45bがミラー制御カム40の定径カム部40aに当接してミラー駆動レバー45がミラーアップ位置(カム軸離間位置)に保持される。カムフォロア45bと定径カム部40aの当接状態ではr6=0となり、その結果、負荷トルクT2が0になる。そして、アシストトルクT1と負荷トルクT2が共に0である図31のQ4区間において、第1カムギヤ35が図6及び図16に示すミラーアップ完了位置(第2の中立位置)に達する。
つまり、通常の撮影シーケンスにおいて、第1カムギヤ35が図5及び図15の原点位置(第1の中立位置)から図6及び図16のミラーアップ完了位置(第2の中立位置)まで回転するとき、ミラー制御カム40によるミラー駆動レバー45のミラーアップ位置への回動の開始(図31のH1)が第1シャッタ制御カム41によるシャッタチャージレバー50のチャージ解除位置への回動の開始(図31のH2)よりも早いタイミングで生じ、かつミラー駆動レバー45のミラーアップ位置への回動の終了(図31のH4)がシャッタチャージレバー50のチャージ解除位置への回動の終了(図31のH3)よりも遅いタイミングとなるように、ミラー制御カム40と第1シャッタ制御カム41の形状(特に非定径カム部40b-1、41b-1の形成領域)が設定されている。また、ミラー駆動レバー45とシャッタチャージレバー50がそれぞれ対応するカム40、41の非定径カム部40b-1、41b-1に案内されて同時に回動されているとき(図31のQ2)には、ミラー駆動レバー45側の負荷トルクT2をシャッタチャージレバー50側のアシストトルクT1よりも大きくさせるカム曲線が非定径カム部40b-1、41b-1に付与されており、このカム曲線は、上記式(1)、(2)を構成する諸条件に基づいて設定することができる。つまり、原点位置からミラーアップ完了位置まで回転される第1カムギヤ35に対して、初期段階ではミラー駆動レバー45による負荷トルクT2のみが作用し、途中の段階では常にミラー駆動レバー45による負荷トルクT2がシャッタチャージレバー50によるアシストトルクT1より大きくなり、最終段階では再び負荷トルクT2のみが作用するように、ミラー駆動レバー45及びシャッタチャージレバー50によるトルクの作用するタイミングと、トルクの大小関係が設定されている。
第1カムギヤ35のミラーアップ完了位置(第2の中立位置)に対応した図31のQ4区間では、第1カムギヤ35に対してアシストトルクT1と負荷トルクT2のいずれも作用しない状態が続く。そして、シャッタ走行後、図5及び図15に示す原点位置(第1の中立位置)まで第1カムギヤ35が回転するときには、図31のQ1〜Q3区間とは逆に、チャージレバー復元バネ54とセットレバー復元バネ55の付勢力、及びシャッタチャージ負荷に抗して第1シャッタ制御カム41によってシャッタチャージレバー50をチャージ位置(カム軸離間位置)に押圧していくため、シャッタチャージレバー50(シャッタチャージ系)側が第1カムギヤ35に対する負荷トルクT2の作用源となる。一方、ミラー駆動レバー45は、ミラー制御カム40による押圧が徐々に解除されて、ミラーダウンバネ47の付勢力によってミラーダウン位置(カム軸接近位置)に向けて回動していくため、ミラー駆動レバー45(ミラー駆動系)側がアシストトルクT1の作用源となる。そして、ミラーアップ完了位置から原点位置までのアシストトルクT1と負荷トルクT2はそれぞれ次式(3)、(4)で求められる。
(3)T1=f4×r6
但し、f4=M2/r4
(4)T2=f3×r5
但し、f3=M1/r3、M1=f1×r1+f2×r2
第1カムギヤ35が図6及び図16のミラーアップ完了位置から若干量回転されて、図31の「H5」に達した状態を示したのが図22である。このとき、ミラー駆動レバー45のカムフォロア45bは、ミラーアップ完了位置に引き続いてミラー制御カム40の定径カム部40aに当接しており、ミラー駆動レバー45から第1カムギヤ35に対する回転方向のトルクは作用していない。すなわちT1=0である。一方、シャッタチャージレバー50の第1カムフォロア50fは、第1シャッタ制御カム41の逃げカム部41cに対して離間した状態から、非定径カム部41b-2に当接して下方に押し込まれる状態に変化し、図12のU17に示すシャッタチャージレバー50のチャージ位置方向への回動が開始される。このときのf3の作用方向によって、シャッタチャージレバー50の回転モーメントM1が、第1カムギヤ35に対する負荷トルクT2として作用するようになる。つまり、通常撮影モードにおけるシャッタ走行後の第1カムギヤ35の回転では、まず、アシストトルクT1は作用せずに、負荷トルクT2のみが先行して作用する状態になる(図31のQ5区間)。
第1カムギヤ35が回転を続けると、図31の「H6」の位置で、ミラー駆動レバー45のカムフォロア45bが、ミラー制御カム40に対する当接位置を定径カム部40aから非定径カム部40b-2に変化させて、図12のU19に示すミラー駆動レバー45のミラーダウン位置方向への回動が開始される。すると、図23に示すように、f4の作用方向が変化し、ミラー駆動レバー45の回転モーメントM2が、第1カムギヤ35に対するアシストトルクT1として作用するようになる。これ以降は、第1カムギヤ35に対してアシストトルクT1と負荷トルクT2が同時に作用するようになる(図31のQ6区間)。但し、図31から分かるように、Q6区間では、先に説明したQ2区間と同じく常にT1<T2の関係が成立しており、第1カムギヤ35にはT2−T1の大きさの負荷トルクが作用している。換言すれば、アシストトルクT1と負荷トルクT2が同時に作用するQ6区間では必ずT1<T2になるように、非定径カム部40b-2、41b-2のカム曲線とバネ(47、54及び55)の荷重が設定されている。なお、この実施形態ではQ6区間において常時T1<T2であるが、少なくともT1≦T2を満たせば効果が得られる。
第1カムギヤ35が図31の「H7」に達すると、ミラー駆動レバー45がミラーダウン位置(カム軸接近位置)に達してミラー14の下降動作が完了する(図12のU20)。このとき、図24に示すように、カムフォロア45bがミラー制御カム40の逃げカム部40cに対向する位置関係になり、ミラー駆動レバー45は、規制ピン19によって回動規制されたミラー14のミラーシートボス14aに対してミラー押さえ部45aを当接させることによってミラーダウン位置に保持される(図11)。よって、カムフォロア45bによるミラー制御カム40への押圧が解除され、ミラー駆動レバー45から第1カムギヤ35へのアシストトルクT1が作用しなくなる。一方、図12のU20とU21のタイミングの相違から分かる通り、第1シャッタ制御カム41の非定径カム部41b-2によるシャッタチャージレバー50のチャージ位置方向への押圧回動は継続しており、第1カムギヤ35に対する負荷トルクT2が作用し続けている(図31のQ7区間)。この図24の状態から第1カムギヤ35が回転して図31の「H8」位置に達すると、シャッタチャージレバー50の第1カムフォロア50fが第1シャッタ制御カム41の定径カム部41aに当接してシャッタチャージレバー50がチャージ位置(カム軸離間位置)に保持される。第1カムフォロア50fと定径カム部41aの当接状態ではr5=0となり、その結果、負荷トルクT2が0になる。そして、アシストトルクT1と負荷トルクT2が共に0である図31のQ8区間において、第1カムギヤ35が図5及び図15に示す原点位置(第1の中立位置)に達する。
つまり、通常の撮影シーケンスにおいて、第1カムギヤ35がミラーアップ完了位置(第2の中立位置)から原点位置(第1の中立位置)に戻るとき、第1シャッタ制御カム41によるシャッタチャージレバー50のチャージ位置への回動の開始(図31のH5)がミラー制御カム40によるミラー駆動レバー45のミラーダウン位置への回動の開始(図31のH6)よりも早いタイミングで生じ、かつシャッタチャージレバー50のチャージ位置への回動の終了(図31のH8)がミラー駆動レバー45のミラーダウン位置への回動の終了(図31のH7)よりも遅いタイミングとなるように、ミラー制御カム40と第1シャッタ制御カム41の形状(特に非定径カム部40b-2、41b-2の形成領域)が設定されている。また、ミラー駆動レバー45とシャッタチャージレバー50がそれぞれ対応するカム40、41の非定径カム部40b-2、41b-2に案内されて同時に回動されているとき(図31のQ6)には、シャッタチャージレバー50側の負荷トルクT2をミラー駆動レバー45側のアシストトルクT1よりも大きくさせるカム曲線が非定径カム部40b-2、41b-2に付与されており、このカム曲線は、上記式(3)、(4)を構成する諸条件に基づいて設定することができる。つまり、ミラーアップ完了位置から原点位置まで回転される第1カムギヤ35に対して、初期段階ではシャッタチャージレバー50による負荷トルクT2のみが作用し、途中の段階では常にシャッタチャージレバー50による負荷トルクT2がミラー駆動レバー45によるアシストトルクT1より大きくなり、最終段階では再び負荷トルクT2のみが作用するように、ミラー駆動レバー45及びシャッタチャージレバー50によるトルクの作用するタイミングと、トルクの大小関係が設定されている。
続いて第2カムギヤ36の負荷制御に関する構成を説明する。上述した通り、第2カムギヤ36の第2シャッタ制御カム42に対しては、シャッタチャージレバー50の第2カムフォロア50gが当接するが、さらに第2カムギヤ36の回転駆動時の負荷調整手段としてバランサーレバー70が設けられており、第2シャッタ制御カム42に対してバランサーレバー70のカムフォロア70bが当接可能である。第2カムギヤ36は、遊星ギヤ33に噛合されて駆動モータ22からの駆動力を受けることで回転されるものであるが、第1カムギヤ35の場合と同じく、その駆動対象であるシャッタチャージレバー50などからアシスト方向のトルク(第2カムギヤ36の回転進行方向に働く力)が作用する状況下で遊星ギヤ33から第2カムギヤ36に回転伝達させようとすると、遊星ギヤ33において、第2カムギヤ36に対する噛合が外れて第1カムギヤ35側に向けて弾かれるような挙動が生じるおそれがある。そのため、このようなアシストトルクが第2カムギヤ36に対して作用しないようにするべく、第2カムギヤ36上の第2シャッタ制御カム42は、以下のような形状設定がなされている。
図25ないし図30に示すように、第2シャッタ制御カム42は、回転軸36xを中心とする最大外径位置に、その回転方向位置が変化しても回転軸36xからの半径方向距離が変わらないカム面形状をなす大径の定径カム部42aが形成され、定径カム部42aよりも回転軸36xに近い半径方向位置に小径の逃げカム部42cが形成され、この逃げカム部42cと定径カム部42aの間を、回転方向位置の変化に応じて回転軸36xからの半径方向距離が変化するカム面形状の非定径カム部42bで接続した構成になっている。非定径カム部42bは、第2カムギヤ36の半径方向において定径カム部42aと逃げカム部42cの間の範囲に形成されており、定径カム部42aよりも外径側に突出したり、逃げカム部42cよりも内径側に入り込んだりする領域は存在しない。非定径カム部42bは、定径カム部42aの両側(すなわち逃げカム部42cの両側)に一対形成されており、図中ではそれぞれ42b-1、42b-2で表している。これら一対の非定径カム部42b-1、42b-2は互いの形状(カム曲線)が異なる。
シャッタチャージレバー50は、その第2カムフォロア50gが第2シャッタ制御カム42の定径カム部42aに当接するとき、上述のチャージ位置に保持される。チャージ位置では、第2カムフォロア50gが第2カムギヤ36の回転軸36xから最も離間した状態(カム軸離間位置)にあり、チャージレバー復元バネ54及びセットレバー復元バネ55の撓み(伸び)量は最大となる。逆に、シャッタチャージレバー50は、その第2カムフォロア50gが第2シャッタ制御カム42の逃げカム部42cに対向するとき、上述のチャージ解除位置に保持される。上述の通り、チャージ解除位置は、チャージレバー復元バネ54及びセットレバー復元バネ55の付勢力によってストッパ部50eが揺動制限凸部13eに当接することによって定められ、このとき第2カムフォロア50gが第2カムギヤ36の回転軸36xに最も接近した状態(カム軸接近位置)にあるが、第2カムフォロア50gは逃げカム部42cに当接していない。バランサーレバー70は、そのカムフォロア70bが第2シャッタ制御カム42の定径カム部42aに当接するとき、カムフォロア70bを第2カムギヤ36の回転軸36xから最も離間させたカム軸離間位置に保持される。このときバランサーレバー付勢バネ71の撓み量は最大となる。逆に、バランサーレバー70は、そのカムフォロア70bが第2シャッタ制御カム42の逃げカム部42cに対向するとき、カムフォロア70bを第2カムギヤ36の回転軸36xに最も接近させたカム軸接近位置に保持されるが、このカム軸接近位置は、規制アーム70cが揺動制限凸部13bに当接することによって定められ、カムフォロア70bは逃げカム部42cに当接しない。
図25から図30は、ライブビューモードでの第2カムギヤ36への力の作用関係を模式的に示したものである。図中の「f11」は、シャッタセットレバー51から作用する力を表し、図25から図28におけるf11は、セットレバー復元バネ55の付勢力(復元力)とシャッタ15のシャッタチャージ負荷を合わせた力であり、図29と図30におけるf11は、セットレバー復元バネ55の付勢力(復元力)である。「f12」はチャージレバー復元バネ54による付勢力(復元力)、「f13」はシャッタチャージレバー50の第2カムフォロア50gが第2シャッタ制御カム42のカム面を押す力、「f14」はバランサーレバー70のカムフォロア70bが第2シャッタ制御カム42のカム面を押す力を表している。また、「r11」はシャッタチャージレバー50の回転中心(回転軸50xの軸線)からf11までの半径方向距離、「r12」はシャッタチャージレバー50の回転中心(回転軸50xの軸線)からf12までの半径方向距離、「r13」はシャッタチャージレバー50の回転中心(回転軸50xの軸線)からf13までの半径方向距離、「r14」はバランサーレバー70の回転中心(回転軸70xの軸線)からf14までの半径方向距離、「r15」は第2カムギヤ36の回転中心(回転軸36xの軸線)からf13までの半径方向距離、「r16」は第2カムギヤ36の回転中心(回転軸36xの軸線)からf14までの半径方向距離を表している。また、「M11」は、f11とf12によるシャッタチャージレバー50の回転モーメントを表し、「M12」は、バランサーレバー付勢バネ71によるバランサーレバー70の回転モーメントを表す。以下の説明中の「T11」は、第2カムギヤ36に対してその回転進行方向(時計方向)と同方向に作用するアシストトルクであり、「T12」は、これと反対方向(反時計方向)に作用するトルク(以下、負荷トルクと呼ぶ)である。
ライブビューモードでの撮影シーケンスにおいて、第2カムギヤ36が図7及び図17に示す原点位置から図8及び図18に示すシャッタチャージ完了位置を経て原点位置に戻るまでの、第2カムギヤ36に対するアシストトルクT11と負荷トルクT12の作用関係を示したのが図32である。なお、図14を参照して先に説明したように、ライブビューモードでの撮影時には、1シーケンスにおいて第2カムギヤ36が二回転される。一方、図32の横軸は、第2カムギヤ36の一回転(360°)動作を表しているため、1シーケンスで図32に示すトルク変動が二度繰り返されることになる。図32から分かるように、第2カムギヤ36に対してアシストトルクT11と負荷トルクT12のいずれも作用しない状態(中立位置)が2箇所存在する。その一方は原点位置(第1の中立位置)であり、他方はシャッタチャージ完了位置(第2の中立位置)である。
まず、第2カムギヤ36の原点位置からシャッタチャージ完了位置までの負荷変動について説明する。原点位置からシャッタチャージ完了位置までは、チャージレバー復元バネ54とセットレバー復元バネ55の付勢力、及びシャッタチャージ負荷に抗して第2シャッタ制御カム42によってシャッタチャージレバー50をチャージ位置(カム軸離間位置)に押圧していくため、シャッタチャージレバー50(シャッタチャージ系)側が第2カムギヤ36に対する負荷トルクT12の作用源となる。一方、バランサーレバー70は、第2シャッタ制御カム42による押圧が徐々に解除されて、バランサーレバー付勢バネ71の付勢力によってカム軸接近位置に向けて回動していくため、バランサーレバー付勢バネ71を含むバランサーレバー70側がアシストトルクT11の作用源となる。そして、この間のアシストトルクT11と負荷トルクT12はそれぞれ次式(5)、(6)で求められる。
(5)T11=f14×r16
但し、f14=M12/r14
(6)T12=f13×r15
但し、f13=M11/r13、M11=f11×r11+f12×r12
第2カムギヤ36の原点位置(第1の中立位置)では、図17に示すように、シャッタチャージレバー50は、ストッパ部50eと揺動制限凸部13eの当接関係によってチャージ解除位置(カム軸接近位置)に保持されており、第2カムフォロア50gは第2シャッタ制御カム42の逃げカム部42cに対して若干離間して対向しているため、シャッタチャージレバー50から第2カムギヤ36に対する回転方向のトルクは作用していない。すなわちT12=0である。また、バランサーレバー70は、カムフォロア70bを第2シャッタ制御カム42の定径カム部42aに当接させてカム軸離間位置に保持されている。この定径カム部42aに対するカムフォロア70bの当接状態では、f14の作用方向が回転軸36xを中心とする第2カムギヤ36の半径方向と一致するためr16=0となり、その結果T11=f14×0=0となる。よって、第2カムギヤ36に対しては、シャッタチャージレバー50とバランサーレバー70のいずれからも、回転方向のトルクは作用していない。
第2カムギヤ36が図7及び図17の原点位置から若干量回転されて、図32の「H11」に達した状態を示したのが図25である。このとき、バランサーレバー70のカムフォロア70bは、原点位置に引き続いてミラー制御カム42の定径カム部42aに当接しており、バランサーレバー70から第2カムギヤ36に対する回転方向のトルクは作用していない。すなわちT11=0である。一方、シャッタチャージレバー50の第2カムフォロア50gは、第2シャッタ制御カム42の逃げカム部42cに対して離間した状態から、非定径カム部42b-1に当接して上方に押し込まれる状態に変化し、図14のK6またはK22に示すシャッタチャージレバー50のチャージ位置方向への回動が開始される。その結果、f13の作用方向が、回転軸36xを中心とした半径方向に一致せずr15≠0となり、シャッタチャージレバー50の回転モーメントM11が、第2カムギヤ36に対する負荷トルクT12として作用するようになる。つまり、第2カムギヤ36が原点位置から回転を開始すると、まず、アシストトルクT11は作用せずに、負荷トルクT12のみが先行して作用する状態になる(図32のQ11区間)。
第2カムギヤ36が回転を続けると、図32の「H12」の位置で、バランサーレバー70のカムフォロア70bが、第2シャッタ制御カム42に対する当接位置を定径カム部42aから非定径カム部42b-2に変化させ、カムフォロア70bによって非定径カム部42bを押しつつ、バランサーレバー付勢バネ71の付勢方向に回動する。すると、図26に示すように、f14の作用方向が変化してr16≠0となり、バランサーレバー70の回転モーメントM12が、第2カムギヤ36に対するアシストトルクT11として作用するようになる。これ以降は、第2カムギヤ36に対してアシストトルクT11と負荷トルクT12が同時に作用するようになる(図32のQ12区間)。但し、図32から分かるように、Q12区間では、常にT11<T12の関係が成立しており、第2カムギヤ36にはT12−T11の大きさの負荷トルクが作用している。換言すれば、アシストトルクT11と負荷トルクT12が同時に作用するQ12区間では必ずT11<T12になるように、非定径カム部42b-1、42b-2のカム曲線とバネ(54、71)の荷重が設定されている。なお、この実施形態ではQ12区間において常時T11<T12であるが、少なくともT11≦T12を満たせば効果が得られる。
第2カムギヤ36が図32の「H13」に達すると、バランサーレバー70のカムフォロア70bは、第2シャッタ制御カム42の非定径カム部42bへの当接状態から、逃げカム部42cに対向する状態に変わる。ここで、図27に示すように、バランサーレバー70は規制アーム70cを揺動制限凸部13bに当接させるカム軸接近位置に保持されており、カムフォロア70bを第2シャッタ制御カム42の逃げカム部42cに対して離間させている。よって、第2カムギヤ36に対するアシストトルクT11が作用しなくなる。一方、図27の状態では、第2シャッタ制御カム42の非定径カム部42b-1によるシャッタチャージレバー50のチャージ位置方向への押圧回動は継続しており、第2カムギヤ36に対する負荷トルクT12が作用し続けている(図32のQ13区間)。図27の状態から第2カムギヤ36が回転して、図32の「H14」位置に達すると、シャッタチャージレバー50の第2カムフォロア50gが第2シャッタ制御カム42の定径カム部42aに当接してシャッタチャージレバー50がチャージ位置(カム軸離間位置)に保持される。第2カムフォロア50gと定径カム部42aの当接状態ではr15=0となり、その結果、負荷トルクT12が0になる。そして、アシストトルクT11と負荷トルクT12が共に0である図32のQ14区間において、第2カムギヤ36が図8及び図18のシャッタチャージ完了位置(第2の中立位置)に達する。
つまり、ライブビューモードでの撮影シーケンスにおいて、第2カムギヤ36が原点位置(第1の中立位置)からシャッタチャージ完了位置(第2の中立位置)まで回転するとき、シャッタチャージレバー50のチャージ位置への回動の開始(図32のH11)がバランサーレバー70のカム軸接近位置への回動の開始(図32のH12)よりも早いタイミングで生じ、かつシャッタチャージレバー50のチャージ位置への回動の終了(図32のH14)がバランサーレバー70のカム軸接近位置への回動の終了(図32のH13)よりも遅いタイミングとなるように、第2シャッタ制御カム42の形状(特に非定径カム部42b-1、42b-2の形成領域)が設定されている。また、シャッタチャージレバー50とバランサーレバー70がそれぞれ第2シャッタ制御カム42の非定径カム部42b-1、42b-2に案内されて同時に回動されているとき(図32のQ12区間)には、シャッタチャージレバー50側の負荷トルクT12をバランサーレバー70側のアシストトルクT11よりも大きくさせるカム曲線が非定径カム部42b-1、42b-2に付与されており、このカム曲線は、上記式(5)、(6)を構成する諸条件に基づいて設定することができる。つまり、原点位置からチャージ完了位置まで回転される第2カムギヤ36に対して、初期段階ではシャッタチャージレバー50による負荷トルクT12のみが作用し、途中の段階では常にシャッタチャージレバー50による負荷トルクT12がバランサーレバー70によるアシストトルクT11より大きくなり、最終段階では再び負荷トルクT12のみが作用するように、シャッタチャージレバー50及びバランサーレバー70によるトルクの作用するタイミングと、トルクの大小関係が設定されている。
図8及び図18に示すシャッタチャージ完了位置(第2の中立位置)から図7及び図17に示す原点位置(第1の中立位置)まで第2カムギヤ36が回転するときには、図32のQ11〜Q13区間とは逆に、バランサーレバー付勢バネ71の付勢力に抗して第2シャッタ制御カム42によってバランサーレバー70をカム軸離間位置に押圧していくため、バランサーレバー付勢バネ71を含むバランサーレバー70側が第2カムギヤ36に対する負荷トルクT12の作用源となる。一方、シャッタチャージレバー50は、第2シャッタ制御カム42による押圧が徐々に解除されて、チャージレバー復元バネ54及びセットレバー復元バネ55の付勢力によってチャージ解除位置(カム軸接近位置)に向けて回動していくため、シャッタチャージレバー50(シャッタチャージ系)側がアシストトルクT11の作用源となる。そして、シャッタチャージ完了位置から原点位置までのアシストトルクT11と負荷トルクT12はそれぞれ次式(7)、(8)で求められる。
(7)T11=f13×r15
但し、f13=M11/r13、M11=f11×r11+f12×r12
(8)T12=f14×r16
但し、f14=M12/r14
第2カムギヤ36が図8及び図18のシャッタチャージ完了位置から若干量回転されて、図32の「H15」に達した状態を示したのが図28である。このとき、シャッタチャージレバー50の第2カムフォロア50gは、引き続き第2シャッタ制御カム42の定径カム部42aに当接しており、シャッタチャージレバー50から第2カムギヤ36に対する回転方向のトルクは作用していない。すなわちT11=0である。一方、バランサーレバー70のカムフォロア70bは、第2シャッタ制御カム42の逃げカム部42cに対して離間した状態から、非定径カム部42b-1に当接して、バランサーレバー付勢バネ71の付勢力に抗してカム軸離間位置方向へ押圧される状態に変化する。その結果、f14の作用方向が回転軸36xを中心とした半径方向に一致せずr16≠0となり、バランサーレバー70の回転モーメントM12が、第2カムギヤ36に対する負荷トルクT12として作用するようになる。つまり、第2カムギヤ36がシャッタチャージ完了位置から回転を開始すると、まず、アシストトルクT11は作用せずに、負荷トルクT12のみが先行して作用する状態になる(図32のQ15区間)。
第2カムギヤ36が回転を続けると、図32の「H16」の位置で、シャッタチャージレバー50の第2カムフォロア50gが、第2シャッタ制御カム42に対する当接位置を定径カム部42aから非定径カム部42b-2に変化させて、図14のK12またはK28に示すシャッタチャージレバー50のチャージ解除位置への回動が開始される。すると、図29に示すように、f13の作用方向が変化してr15≠0となり、シャッタチャージレバー50の回転モーメントM11が、第2カムギヤ36に対するアシストトルクT11として作用するようになる。これ以降は、第2カムギヤ36に対してアシストトルクT11と負荷トルクT12が同時に作用するようになる(図32のQ16区間)。但し、図32から分かるように、Q16区間では、先に説明したQ12区間と同じく常にT11<T12の関係が成立しており、第2カムギヤ36にはT12−T11の大きさの負荷トルクが作用している。換言すれば、アシストトルクT11と負荷トルクT12が同時に作用するQ16区間では必ずT11<T12になるように、非定径カム部42b-1、42b-2のカム曲線とバネ(54、71)の荷重が設定されている。なお、この実施形態ではQ16区間において常時T11<T12であるが、少なくともT11≦T12を満たせば効果が得られる。
第2カムギヤ36が図32の「H17」に達すると、シャッタチャージレバー50がチャージ解除位置(カム軸接近位置)に達する(図14のK15またはK31)。このとき、図30に示すように、第2カムフォロア50gは、第2シャッタ制御カム42の非定径カム部42b-2への当接状態から逃げカム部42cに対向する状態へと変化し、シャッタチャージレバー50はストッパ部50eを揺動制限凸部13eに当接させることによって保持される。よって、第2カムフォロア50gによる第2シャッタ制御カム42への押圧が解除され、第2カムギヤ36に対するアシストトルクT11が作用しなくなる。一方、第2シャッタ制御カム42の非定径カム部42b-1によるバランサーレバー70の押圧回動は継続しており、第2カムギヤ36に対する負荷トルクT12が作用し続けている(図32のQ17区間)。この図30の状態から第2カムギヤ36が若干回転して図32の「H18」位置に達すると、バランサーレバー70のカムフォロア70bが第2シャッタ制御カム42の定径カム部42aに当接してバランサーレバー70がカム軸離間位置に保持される。カムフォロア70bと定径カム部42aの当接状態ではr16=0となり、その結果、負荷トルクT12が0になる。そして、アシストトルクT11と負荷トルクT12が共に0である図32のQ18区間において、第2カムギヤ36が図7及び図17に示す原点位置(第1の中立位置)に戻る。
つまり、ライブビューモードの撮影シーケンスにおいて、第2カムギヤ36がシャッタチャージ完了位置(第2の中立位置)から原点位置(第1の中立位置)に戻るとき、バランサーレバー70カム軸離間位置への回動の開始(図32のH15)がシャッタチャージレバー50のチャージ解除位置への回動の開始(図32のH16)よりも早いタイミングで生じ、かつバランサーレバー70カム軸離間位置への回動の終了(図32のH18)がシャッタチャージレバー50のチャージ解除位置への回動の終了(図32のH17)よりも遅いタイミングとなるように、第2シャッタ制御カム42の形状(特に非定径カム部42b-1、42b-2の形成領域)が設定されている。また、シャッタチャージレバー50とバランサーレバー70がそれぞれ第2シャッタ制御カム42の非定径カム部42b-2、42b-1に案内されて同時に回動されているとき(図32のQ16区間)には、バランサーレバー70側の負荷トルクT12をシャッタチャージレバー50側のアシストトルクT11よりも大きくさせるカム曲線が非定径カム部42b-1、42b-2に付与されており、このカム曲線は、上記式(7)、(8)を構成する諸条件に基づいて設定することができる。つまり、チャージ完了位置から原点位置まで回転される第2カムギヤ36に対して、初期段階ではバランサーレバー70による負荷トルクT12のみが作用し、途中の段階では常にバランサーレバー70による負荷トルクT12がシャッタチャージレバー50によるアシストトルクT11より大きくなり、最終段階では再び負荷トルクT12のみが作用するように、シャッタチャージレバー50とバランサーレバー70によるトルクの作用するタイミングと、トルクの大小関係が設定されている。
以上の説明から分かるように、本実施形態のミラー・シャッタ駆動機構20では、遊星ギヤ機構30によって第1カムギヤ35と第2カムギヤ36を択一的に回転駆動させる際に、各レバー45、50及び70が第1カムギヤ35または第2カムギヤ36に及ぼすトルクの総和がそれぞれのカムギヤ35、36に対して回転をアシストする方向のトルクになることがないカム形状に設定したため、遊星ギヤ33をいずれのカムギヤ35、36に対しても確実に噛合させることができ、高精度な駆動を実現することができる。また、各カムギヤ35、36の周面カム(40、41、42)により制御される揺動部材(45、50、70)における負荷変動のタイミングと負荷のバランスを利用して、該カムギヤ35、36に対する回転アシスト方向のトルクを防ぐようにしているため、駆動力伝達のロスを小さくすることができる。
なお、本発明は以上の実施形態に限定されるものではない。例えば、実施形態はデジタル一眼レフカメラにおけるライブビューモードを構築するための動力伝達機構として本発明を適用しているが、これ以外の動力伝達機構としても適用が可能である。また、実施形態のように2つのカムギヤ35、36を有する場合、第1カムギヤ35と第2カムギヤ36の両方に本発明を適用するのが最も望ましい構成であるが、いずれか一方のカムギヤのみに本発明を適用することも可能である。さらに、実施形態の遊星ギヤ機構30は、遊星ギヤ33が2つのカムギヤ35、36に対して択一的に噛合するタイプであるが、遊星ギヤが噛合するカムギヤを一つのみとして、このカムギヤとの噛合を解除したとき、遊星ギヤが他の種類のギヤと噛合するように構成することも可能である。
また、実施形態では、ミラー駆動レバー45をカム軸接近位置(ミラーダウン位置)に保持させる揺動規制手段(規制ピン19、ミラーシートボス14a及びミラー押さえ部45a)と、シャッタチャージレバー50をカム軸接近位置(チャージ解除位置)に保持させる揺動規制手段(揺動制限凸部13e)と、バランサーレバー70をカム軸接近位置に保持させる揺動規制手段(揺動制限凸部13b)はいずれも、各カムギヤ35、36のカム40、41及び42とは異なる部位に設けられている。そして、これら揺動規制手段によりミラー駆動レバー45、シャッタチャージレバー50及びバランサーレバー70の回動が規制されるときには、各レバー45、50及び70のカムフォロア45b、50f、50g及び70bは、対応するカムの逃げカム部40c、41c及び42cに対して当接しない。これにより各レバー45、50及び70がカム軸接近位置にあるときには、カムギヤ35及び36に対して回転トルクを与えないようになっている。この実施形態の構成と異なり、例えば、第1シャッタ制御カム41における逃げカム部41cや第2シャッタ制御カム42における逃げカム部42cを定径カム部41aや定径カム部42aよりも小径の定径カム部として形成し、この小径の定径カム部に対してシャッタチャージレバー50のカムフォロア50f、50gやバランサーレバー70のカムフォロア70bを当接させることによって、各レバー50、70のカム軸接近位置を定めるという構成を採用することも可能である。逃げカム部41c、42cがこのような小径の定径カム部であれば、大径の定径カム部41a、42aの場合と同様に、カムフォロアを当接させてもシャッタチャージレバー50やバランサーレバー70からの回転方向のトルクが作用しない。よって、先の実施形態と同様に各カムギヤ35、36における第1と第2の中立位置を設定することができる。