JP5357403B2 - 成形性に優れたアルミニウム製内面溝付き管およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、アルミニウム製内面溝付き管およびその製造方法に係り、特に熱交換器の伝熱管用アルミニウム製内面溝付き管およびその製造方法に関するものである。
内面溝付き管は管内面の表面積の増大、熱伝導性の向上等の優れた効果があることから熱交換器の伝熱管として広く用いられるようになってきている。
これまで、アルミニウム製自動車用熱交換器、例えばラジエータ、コンデンサ等は軽量化を目的として製造、使用されてきたものの、冷却部は溝付きチューブ等が使用され、配管そのものの内面に溝加工をしたものはなかった。また、エアコンなどの空調設備においては、コストなどから銅製溝付き配管が使用されており、アルミニウム製溝付き配管の使用はなかった。
アルミニウム製内面溝付き管およびその製造方法として、アルミニウム合金シートとアルミニウムより低い電極電位を有する金属シートをクラッドしたクラッドシートに溝を切ったロールを押し付け、クラッドシート表面に複数の溝が形成された溝付きクラッドシートとする。この溝付きクラッドシートを用いて、溝形成側を内側に配置し、Znを添加したシートを犠牲材として外側に配するようにした後、シート縁面を溶接した管およびその製造方法(例えば、特許文献1参照)が知られている。
また、管内面に多数の溝が形成されたアルミニウム製内面溝付き管において、管内面に5μm以上の酸化皮膜層が形成されたものが提案されている。その製造方法として、内面に多数の溝を有したアルミニウム管を押出し成形した後、その内表面に酸化皮膜層を形成する方法、および片面に溝を有したアルミニウム条を形成した後、その溝面に酸化皮膜を形成し、そのアルミニウム条の溝面を内側にして管状に丸め、その突合せ部を接合する方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
ここでは、加工時の管内面の溝のつぶれ防止を目的としているものの、加工時の酸化皮膜剥離による摩擦抵抗の増大に注目し、酸化皮膜を一定厚み以上付けるものである。
さらに、内面および外面の耐食性に優れたチューブとして、Si、Feを特定量含有するアルミニウム合金を筒状芯材とし、その外面にZn含有アルミニウム合金が皮材として形成され、その筒状芯材の内面に亜鉛又は亜鉛合金が犠牲層として押出し前に溶射法により形成されている引抜きチューブが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
そして、その製造方法として、内面に亜鉛(合金)を溶射した筒状芯材の円筒状ビレットの外面に、皮材合金成分のスリーブ状被覆材を長さ方向に分割型に形成して複合ビレットとし、これを熱間押出しと引き抜き加工によるものである。
内面溝付き管の製造方法として、単層管内に自由回転する溝付きプラグを挿入し、管外より自由回転するロールを押し付けて遊星回転させながら管を引き抜くことにより、管内面に連続する溝を形成するロール転造法がある。さらに、生産性向上と品質の向上を指向し、転造ヘッド部をベアリング構造とするボールダイス抽伸法のようなボール転造法が知られている。
特開2000−121270号公報 特開2000−205782号公報 特開平10−46312号公報
配管材に使用されているクラッド管は、防食の観点から外皮層を形成する外皮材にAl−Zn系合金の7072などのAl合金(JIS 1000系)にZnが添加された合金が一般的である。しかし、このJIS 7072合金を外皮材として使用すると、従来の転造加工では、外皮材が柔らかく、管の外皮材にシワが寄る等の不具合が生じる。シワ寄りは、表面を覆うカブリ状になり、拡管成形時にカブリが広がるといった問題がある。また、シワが寄りやすいということは転造加工時に力が均一に充分に作用していないことを意味し、内面の溝成形性を低下させる欠点となる。
Al−Mn系合金(JIS 3003合金)を単一合金の芯材とする無垢(ベア)管では強度が低く機械拡管成形時に内面溝につぶれが生じることがある。また、転造加工時においても6000系や5000系と比べ3000系は強度の面から成形性が低いといった難点がある。
本発明はこのような観点に立って為されたものであって、その目的は転造加工時のピックアップ系の不良を招く外表面部の荒れや外皮材のシワ防止(カブリ不具合防止)を改善すること、および転造加工時の内面溝成形性や機械拡管時の内面溝つぶれを防止するものである。
そして、得られた2層クラッドのアルミニウム製内面溝付き管は優れた耐孔食性を有すると共にアルミニウム本来の軽量性と耐食性とを発揮できるアルミニウム製内面溝付き管及びアルミニウム製内面溝付き管の製造方法を提供することにある。
本発明者らは上記課題に鑑み鋭意研究した結果、内管外周側の外皮材にAl−Mn系合金(JIS 3000系合金)にZnを添加した強度の高い合金を使用した2層クラッド管とすることで、さらに内管を形成する芯材に、例えばAl−Mn合金(JIS 3000系合金)、Al−Mg−Si合金(JIS 6000系合金)、またはAl−Mg合金(JIS 5000系合金)をクラッドした2層クラッド管がさらに良いことが判明した。
すなわち本発明は、
アルミニウム合金内管が、Mn:1.0〜1.5%、Cu:0.05〜0.20%、Si:0.6%以下、Fe:0.7%以下、Zn:0.1%以下を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなるアルミニウム合金、またはSi:0.2〜0.6%、Fe:0.35%以下、Mg:0.45〜0.9%、Cu:0.1%以下、Mn:0.1%以下、Cr:0.1%以下、Zn:0.1%以下、Ti:0.1%以下を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなるアルミニウム合金、またはSi:0.25質量%以下、Fe:0.4質量%以下、Cu:0.1質量%以下、Mn:0.1質量%以下、Mg:2.2〜2.8質量%、Cr:0.15〜0.35質量%、Zn:0.1質量%以下を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなるアルミニウム合金であり、該アルミニウム合金内管の管外周側に、Mn1.0〜1.5%、Cu0.05〜0.20%、Si0.6%以下、Fe0.3〜0.7%を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなるアルミニウム合金にZnを1.0〜1.3質量%含有させたアルミニウム合金外皮層が形成されている2層クラッド管に、転造加工法により管内面に溝を形成することを特徴とする2層クラッドのアルミニウム製内面溝付き管の製造方法
を提供するものである。
本発明のアルミニウム製内面溝付き管は、転造加工時に外表面部の荒れや外皮材のシワ防止が改善でき、また、転造加工時の内面溝成形性や機械拡管時の内面溝つぶれをほとんど無くすことができる。
そして、得られた2層クラッドのアルミニウム製内面溝付き管は優れた耐孔食性を有すると共にアルミニウム本来の軽量性と耐食性とを発揮できる。
次に、本発明の2層クラッドのアルミニウム製内面溝付き管について説明する。
本発明の2層クラッドのアルミニウム製内面溝付き管の好ましい一実施態様を図1に断面図で示す。2層クラッドのアルミニウム製内面溝付き管1は、アルミニウム合金内管2の管外周側に外皮材からなるアルミニウム合金外皮層3が形成されている。そして、アルミニウム合金内管の内面には、溝4が形成されている。図2は、このアルミ製内面溝付き管1の一部拡大断面図である。
本発明の2層クラッド内面溝付き管の外皮層となる外皮材は、JIS3003合金等のAl−Mn系合金成分にZnを加えた合金である。Znはこの合金組成の中で、強度を付与して耐食性を向上させる作用効果をもつ。また、Znを含有する外皮材は、冷間加工性に優れで強度が高く、転造加工時に管表面のシワの生成を防ぐことができる。
Znの含有量は、1.0〜1.3%(質量%、以下同じ)が好ましく、1.0〜1.2%であるのがさらに好ましい。含有量が少ないと前記の効果が十分に発揮できず、また多すぎると防食の観点からも耐食性を悪化させる。
2層クラッド管のアルミニウム合金内管を形成する芯材としては、アルミニウム合金配管用に使用されているアルミニウム合金であればどのようなものでも良い。しかし、Al−Mn合金(JIS 3000系合金)、例えば3003合金のようなMn:1.0〜1.5%、Cu:0.05〜0.20%、Si:0.6%以下、Fe:0.7%以下、Zn:0.1%以下を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなるアルミニウム合金、またはAl−Mg−Si合金(JIS 6000系合金)、例えば6063合金のようなSi:0.2〜0.6%、Fe:0.35%以下、Mg:0.45〜0.9%、Cu:0.1%以下、Mn:0.1%以下、Cr:0.1%以下、Zn:0.1%以下、Ti:0.1%以下を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなるアルミニウム合金、またはAl−Mg合金(JIS 5000系合金)、例えば5052合金のようなSi:0.25%以下、Fe:0.4%以下、Cu:0.1%以下、Mn:0.1%以下、Mg:2.2〜2.8%、Cr:0.15〜0.35%、Zn:0.1%以下を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなるアルミニウム合金がさらに好ましい。
次に、本発明の2層クラッドのアルミニウム製内面溝付き管の製造方法の一実施例について説明するが、初めに、2層クラッド管の製法例を示す。
前記した例えばJIS 6063合金の円筒状芯材の外側に外皮材用スリーブを被せた組み合わせビレットを作製し、これを加熱炉により350〜600℃に均熱する。組み合わせビレットをダイスとラムノーズ間に挟持してコンテナ内に挿入し、ダイスとラムノーズを固定した状態で、芯材内径より大きな外径を持つマンドレルを圧入し、芯材を拡管して芯材と外皮材間の空気を追い出す。マンドレルを所定に位置に固定して、ホローステムを前進させダイスを通して組み合わせビレットを押し出し、継ぎ目無しの2層クラッド管を得る。
また、管状の外皮材中空ビレットを350〜600℃に加熱してその内側に、円筒状芯材中空ビレットを焼嵌めして得られる2層中空ビレットを押出し加工、または押出し加工後引抜き加工を施して、継ぎ目無しの2層クラッド管を得ることもできる。
さらに、アルミニウム合金の芯材シートの片面側に外皮材シートをクラッドした2層クラッドシートとし、このシートを管状に成形してからそのシート縁面を溶接した2層クラッドの電縫管としてもよい。
この2層クラッド管の外皮材のクラッド率は、全肉厚に対し、1.5%以上が好ましく、さらに5〜15%が好ましい。本発明の特定の外皮材のクラッド率が肉厚に対し1.5%未満では、転造加工時の外皮材のシワ防止機能が小さくなるし、ひいては内面溝の潰れを招くこととなる。
次いで、得られた2層クラッド管の素管から内面に溝を有する2層クラッドのアルミニウム製内面溝付き管の製造方法について、その一態様を図3に示す製造装置を参照しながら記載する。
素管1aの引抜き方向Lに沿って、フローティングダイス5と当該フローティングダイス5に対して独立した加工ヘッド6とが、図示されていないそれぞれ別の駆動手段により回転されるように順に設置されている。加工ヘッド6は引抜き方向の下流側へ向けてやや末広がりの円錐状の内周面を有しており、加工ヘッド6内には、前記内周面へ転接し内部を通過する素管1dの周りへ等間隔に配置された複数のボール9が配列されている。これらのボール9は、その下流側でベアリング62を介して他の部材に取り付けられたフランジ状のストッパ61により引抜き方向上流側へ向けて押圧される。加工ヘッド6よりもさらに引抜き方向下流側には、整形ダイス10が設置されている。
素管1a内にはフローティングプラグ7と当該フローティングプラグ7へプラグロッド81を介して回転自在に連結された溝付プラグ8を挿入する。前記素管1aを、前記フローティングダイス5と加工ヘッド6に通して引抜きながら、加工ヘッド6を回転させる。素管1aは、引抜きに伴って前記フローティングダイス5とフローティングプラグ7とにより縮径される。次いで、溝付プラグ8の位置で前記加工ヘッド6の回転に伴って素管dの周りを公転しつつ自転する複数のボール9により、素管1dの外周面を溝付プラグ8の表面へ押圧し、当該素管1dの内面に溝付プラグ8の周面の溝80を転写することにより、内面に多数の微細な溝4を形成する。その後下流側の整形ダイス10により整形されるとともに縮径され、内面溝付管1を製造する。
作製する内面溝付き管1はどのようなサイズでも良いが、外径φは4〜20mmが好ましく、底肉厚は0.3〜1.5tが好ましく、また、内面溝の深さHは0.1〜0.35mm、その頂角αは10〜40°が好ましい。
内面溝付き管1は、必要に応じてポンチによる機械拡管法や液圧拡管法等の手段により拡管加工を施し、例えば、内径を4.1〜25.0mmの内面溝付き管とすることができる。
次に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれに制限されるものではない。
(実施例1)
表1に示す成分組成(数値は質量%、残部はAlを表す。なお、成分組成の前に記載の番号は相当するJIS合金系の番号である。)をもつ各本発明例および比較例No.の芯材合金の円筒状芯材中空ビレット(外径400mm、内径80mm、長さ990mm)内面を切削加工して常温で148mmφとした芯材中空ビレットを得、各本発明例および比較例No.の外皮材合金の押出し管(常温:外径405mm、内径400mm、長さ990mm)を外皮材中空ビレットとして得た。外皮材中空ビレットを500℃に加熱後、常温の芯材中空ビレットを外皮材中空ビレットの内径部に挿入し、冷却することによって焼嵌めを行った。
焼嵌めされた2層クラッドの中空ビレットを450℃で間接押出しし、外径47mm、肉厚3.5mmの押出し管とし、この押出し管に引抜き加工を繰返し施して、外径10.05mm、肉厚0.65mmの2層クラッド管を得た。
引き抜き加工によって得られた2層クラッド管に、フローティングプラグ、ロッド、溝付きプラグが一体となったプラグを挿入し、フローティングダイス、加工ヘッド、整形ダイスを通過させることにより内面に溝付き加工を行った。
得られる内面溝付き管の外径φは9.46mmで、底肉厚は0.5mmであり、また、内面溝の深さは0.15mm、その頂角αは15°とした。
これらの得られた各本発明例および比較例No.の管の特性を評価するために次の試験を行った。得られた結果を表1−1、表1−2に示す。
(a)転造加工性:
各本発明例および比較例で得られた2層クラッド管から前記した方法で内面溝付き管を製造し、内溝の成形深さ(H)および頂角(α)を測定した。これらの値が設計値の±10%以内であり、目視による観察で不具合のないものを「○」と評価し、それ以外のものは「×」とした。
(b)機械拡管性:
外径8mmの内面溝付き管を鉄製ポンチで拡径し、外径8.5mmの管を得た。得られた内面溝を光学顕微鏡で観察し、溝に潰れのないものを「○」と評価し、それ以外のものは「×」とした。
(c)耐食性
各供試管の外部耐食性を評価するために、各供試管についてJIS Z8681に準じるCASS試験を1500時間行った。試験後、供試管の表面腐食生成物を除去して、管の腐食状況を評価した。評価は光学顕微鏡により最大孔食深さが外皮内にとどまっているものを「○」と評価し、それ以外のものは「×」とした。
Figure 0005357403
Figure 0005357403
Figure 0005357403
本発明の2層クラッドのアルミニウム製内面溝付き管の一実施態様を示す断面図である。 本発明の一実施態様を示すアルミニウム製内面溝付き管の一部拡大断面図である。 本発明のアルミニウム製内面溝付き管の製造に使用する装置の一例の断面図である。
符号の説明
1 内面溝付き管
2 アルミニウム合金内管
3 アルミニウム合金外皮層
4 溝
5 フローティングダイス
6 加工ヘッド
7 フローティングプラグ
8 溝付きプラグ
9 ボール
10 成形ダイス

Claims (1)

  1. アルミニウム合金内管が、Mn:1.0〜1.5質量%、Cu:0.05〜0.20質量%、Si:0.6質量%以下、Fe:0.7質量%以下、Zn:0.1質量%以下を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなるアルミニウム合金、またはSi:0.2〜0.6質量%、Fe:0.35質量%以下、Mg:0.45〜0.9質量%、Cu:0.1質量%以下、Mn:0.1質量%以下、Cr:0.1質量%以下、Zn:0.1質量%以下、Ti:0.1質量%以下を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなるアルミニウム合金、またはSi:0.25質量%以下、Fe:0.4質量%以下、Cu:0.1質量%以下、Mn:0.1質量%以下、Mg:2.2〜2.8質量%、Cr:0.15〜0.35質量%、Zn:0.1質量%以下を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなるアルミニウム合金であり、該アルミニウム合金内管の管外周側に、Mn:1.0〜1.5質量%、Cu:0.05〜0.20質量%、Si:0.6質量%以下、Fe:0.3〜0.7質量%を含有し、残部がAlと不可避的不純物からなるアルミニウム合金にZnを1.0〜1.3質量%含有させたアルミニウム合金外皮層が形成されている2層クラッド管に、転造加工法により管内面に溝を形成することを特徴とする2層クラッドのアルミニウム製内面溝付き管の製造方法。
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