JP2014109041A - レベルワウンドコイル、レベルワウンドコイルの製造方法、クロスフィンチューブ型熱交換器及びクロスフィンチューブ型熱交換器の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決課題】強度が高く且つヘアピン曲げを正常に行うことができる銅合金製の継目無管を提供すること。
【解決手段】継目無管が円筒状に整列多層巻きされているレベルワウンドコイルであり、該レベルワウンドコイルに巻かれている該継目無管の材質が、0.58〜0.72質量%のSn、0.04〜0.15質量%のZr、0.01〜0.10質量%のNi及び0.004〜0.015質量%のPを含有し、残部Cu及び不可避不純物からなる銅合金であり、該レベルワウンドコイルに巻かれている該継目無管の外径(mm)に対する肉厚(mm)の比(t/D)が0.037以下であり、該レベルワウンドコイルに巻かれている継目無管の引張強さ(σB)が310MPa以上であり、0.2%耐力(σ0.2)が205MPa以下であり、伸び(δ)が36%以上であること、を特徴とするレベルワウンドコイル。
【選択図】なし
【解決手段】継目無管が円筒状に整列多層巻きされているレベルワウンドコイルであり、該レベルワウンドコイルに巻かれている該継目無管の材質が、0.58〜0.72質量%のSn、0.04〜0.15質量%のZr、0.01〜0.10質量%のNi及び0.004〜0.015質量%のPを含有し、残部Cu及び不可避不純物からなる銅合金であり、該レベルワウンドコイルに巻かれている該継目無管の外径(mm)に対する肉厚(mm)の比(t/D)が0.037以下であり、該レベルワウンドコイルに巻かれている継目無管の引張強さ(σB)が310MPa以上であり、0.2%耐力(σ0.2)が205MPa以下であり、伸び(δ)が36%以上であること、を特徴とするレベルワウンドコイル。
【選択図】なし
Description
本発明は、空調機用熱交換器、冷凍機等の伝熱管又は冷媒配管に使用される銅合金製の継目無管が整列多層巻きされたレベルワウンドコイル及びその製造方法、並びに該レベルワウンドコイルより巻き解いた継目無管を用いるクロスフィンチューブ型熱交換器及びその製造方法に関する。
従来より、ルームエアコン、パッケージエアコン等の空調機用熱交換器、冷凍機等の伝熱管又は冷媒配管には、継目無管が多く採用されており、強度や加工性、伝熱性等の諸物性、並びに材料及び加工コストにバランスの取れたりん脱酸銅管(JIS C1220T)が使用されてきた。
近年、これらの熱交換器では、重量の低減又はコストダウンの要求により、継目無管の薄肉化が必要となってきており、例えば、国際公開第2008/041777号公報(特許文献1)や、特開2003−268467号公報(特許文献2)には、強度の高い銅合金製の継目無管が開示されている。
銅合金製の継目無管は、その製造工程において、通常、レベルワウンドコイルに巻き回されて出荷され、ルームエアコン、パッケージエアコン等の空調機用熱交換器、冷凍機等に組み付けられる際に、レベルワウンドコイルから継目無管が巻き解かれた後、ヘアピン曲げ(U曲げ)と呼ばれる強加工が施される。
しかしながら、特許文献1又は2に記載されているような銅合金製の継目無管では、最終的な継目無管の強度(引張強度)を維持し、且つ、正常なヘアピン曲げを行うことが難しかった。特に、継目無管の細径化及び薄肉化がなされ、ヘアピン曲げピッチが小さく、厳しいヘアピン曲げ条件で、ヘアピン曲げが行われている現状では、曲げの内側部分にしわが発生したり、曲げ部分が扁平化したりしてしまい、外観品質上の価値が著しく損なわれるという問題が生じる。極端な場合、破断が生じる等、正常なヘアピン曲げを行うことが、難しくなっている。
従って、本発明は、強度が高く且つヘアピン曲げを正常に行うことができる銅合金製の継目無管を提供することにある。
本発明者らは、上記従来技術における課題を解決すべく、鋭意研究を重ねた結果、継目無管の銅材質として、特定の元素を特定量添加した銅合金を用いることにより、引張強さ(σB)が高いにも関わらず、0.2%耐力(σ0.2)が低く、伸び(δ)が高い継目無管が得られること、そして、引張強さ(σB)が特定の範囲にされ且つ0.2%耐力(σ0.2)及び伸び(δ)が特定の範囲にされている継目無管は、強度が高いにも関わらず、ヘアピン曲げを正常に行うことができること等を見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明(1)は、継目無管が円筒状に整列多層巻きされているレベルワウンドコイルであり、
該レベルワウンドコイルに巻かれている該継目無管の材質が、0.58〜0.72質量%のSn、0.04〜0.15質量%のZr、0.01〜0.10質量%のNi及び0.004〜0.015質量%のPを含有し、残部Cu及び不可避不純物からなる銅合金であり、
該レベルワウンドコイルに巻かれている該継目無管の外径(mm)に対する肉厚(mm)の比(t/D)が0.037以下であり、
該レベルワウンドコイルに巻かれている継目無管の引張強さ(σB)が310MPa以上であり、0.2%耐力(σ0.2)が205MPa以下であり、伸び(δ)が36%以上であること、
を特徴とするレベルワウンドコイルを提供するものである。
該レベルワウンドコイルに巻かれている該継目無管の材質が、0.58〜0.72質量%のSn、0.04〜0.15質量%のZr、0.01〜0.10質量%のNi及び0.004〜0.015質量%のPを含有し、残部Cu及び不可避不純物からなる銅合金であり、
該レベルワウンドコイルに巻かれている該継目無管の外径(mm)に対する肉厚(mm)の比(t/D)が0.037以下であり、
該レベルワウンドコイルに巻かれている継目無管の引張強さ(σB)が310MPa以上であり、0.2%耐力(σ0.2)が205MPa以下であり、伸び(δ)が36%以上であること、
を特徴とするレベルワウンドコイルを提供するものである。
また、本発明(2)は、材質が、0.58〜0.72質量%のSn、0.04〜0.15質量%のZr、0.01〜0.10質量%のNi及び0.004〜0.015質量%のPを含有し、残部Cu及び不可避不純物からなる銅合金であり、外径(mm)に対する肉厚(mm)の比(t/D)が0.037以下であり、引張強さ(σB)が310MPa以上であり、0.2%耐力(σ0.2)が195MPa以下であり、伸び(δ)が38%以上であるレベルワウンドコイル作製用継目無管を、円筒状に整列多層巻きして、レベルワウンドコイルを作製することを特徴とするレベルワウンドコイルの製造方法を提供するものである。
また、本発明(3)は、材質が、0.58〜0.72質量%のSn、0.04〜0.15質量%のZr、0.01〜0.10質量%のNi及び0.004〜0.015質量%のPを含有し、残部Cu及び不可避不純物からなる銅合金であり、外径(mm)に対する肉厚(mm)の比(t/D)が0.037以下の継目無管を、円筒状に整列多層巻きし、次いで、熱処理をおこない、熱処理後の引張強さ(σB)が310MPa以上であり、0.2%耐力(σ0.2)が205MPa以下であり、伸び(δ)が36%以上であるレベルワウンドコイルを作製することを特徴とするレベルワウンドコイルの製造方法を提供するものである。
また、本発明(4)は、本発明(1)のレベルワウンドコイルより巻き解いた継目無管をヘアピン曲げし、アルミニウムフィンに組み付けることにより得られるクロスフィンチューブ型熱交換器を提供するものである。
また、本発明(5)は、本発明(1)のレベルワウンドコイルより巻き解いた継目無管をヘアピン曲げし、アルミニウムフィンに組み付けて、クロスフィンチューブ型熱交換器を得ることを特徴とするクロスフィンチューブ型熱交換器の製造方法を提供するものである。
本発明のレベルワウンドコイルから巻き解かれる継目無管は、強度が高く且つヘアピン曲げを正常に行うことができる銅合金製の継目無管である。よって、本発明によれば、強度が高く且つヘアピン曲げを正常に行うことができる銅合金製の継目無管を提供することができる。
本発明のレベルワウンドコイルは、継目無管が円筒状に整列多層巻きされているレベルワウンドコイルであり、
該レベルワウンドコイルに巻かれている該継目無管の材質が、0.58〜0.72質量%のSn、0.04〜0.15質量%のZr、0.01〜0.10質量%のNi及び0.004〜0.015質量%のPを含有し、残部Cu及び不可避不純物からなる銅合金であり、
該レベルワウンドコイルに巻かれている該継目無管の外径(mm)に対する肉厚(mm)の比(t/D)が0.037以下であり、
該レベルワウンドコイルに巻かれている継目無管の引張強さ(σB)が310MPa以上であり、0.2%耐力(σ0.2)が205MPa以下であり、伸び(δ)が36%以上であること、
を特徴とするレベルワウンドコイルである。
該レベルワウンドコイルに巻かれている該継目無管の材質が、0.58〜0.72質量%のSn、0.04〜0.15質量%のZr、0.01〜0.10質量%のNi及び0.004〜0.015質量%のPを含有し、残部Cu及び不可避不純物からなる銅合金であり、
該レベルワウンドコイルに巻かれている該継目無管の外径(mm)に対する肉厚(mm)の比(t/D)が0.037以下であり、
該レベルワウンドコイルに巻かれている継目無管の引張強さ(σB)が310MPa以上であり、0.2%耐力(σ0.2)が205MPa以下であり、伸び(δ)が36%以上であること、
を特徴とするレベルワウンドコイルである。
本発明のレベルワウンドコイルは、クロスフィンチューブ型熱交換器の伝熱管用の銅合金製の継目無管が、円筒状に整列多層巻きされているレベルワウンドコイルである。つまり、本発明のレベルワウンドコイルは、クロスフィンチューブ型熱交換器の伝熱管用の銅合金製の継目無管を、円筒状に巻き回して作製されたレベルワウンドコイルである。
クロスフィンチューブ型熱交換器の製造では、通常、継目無管を巻き回したコイルから、継目無管を巻き解き、巻き解いた継目無管を、ヘアピン曲げ加工に供するが、このようなコイルとしては、継目無管が円筒状に整列多層巻きされたレベルワウンドコイルであることが多い。つまり、クロスフィンチューブ型熱交換器に用いられる継目無管は、多くの場合、レベルワウンドコイルから巻き解かれた継目無管である。
レベルワウンドコイルとは、ボビンに継目無管が円筒状に整列多層巻きされたものであり、円筒形状の内面側から円筒状に巻かれた第一層、第二層、第三層・・・第n層と順に、円筒形状の外側面の最終第n層まで整列多層巻きされたものである。レベルワウンドコイルには、内面側から継目無管が巻き解かれるレベルワウンドコイルと、外面側から継目無管が巻き解かれるレベルワウンドコイルとがある。外面側から継目無管が巻き解かれるレベルワウンドコイルとしては、例えば、特開2002−370869号公報の図11等に開示されているレベルワウンドコイルが挙げられる。また、内面側から継目無管が巻き解かれるレベルワウンドコイルとしては、例えば、特開2002−370869号公報の図14等に開示されているレベルワウンドコイルが挙げられる。
そして、本発明のレベルワウンドコイルに整列多層巻きされている継目無管は、クロスフィンチューブ型熱交換器の製造のときに、レベルワウンドコイルから巻き解かれて、ヘアピン曲げ加工がなされ、フィン材に組み付けられることにより、クロスフィンチューブ型熱交換器の製造に用いられる。
本発明のレベルワウンドコイルに整列多層巻きされている継目無管の材質は、0.58〜0.72質量%のSn、0.04〜0.15質量%のZr、0.01〜0.10質量%のNi及び0.004〜0.015質量%のPを含有し、残部Cu及び不可避不純物からなる銅合金である。つまり、本発明のレベルワウンドコイルに整列多層巻きされている継目無管は、銅合金製の継目無管、すなわち、銅合金からなる継目無管である。
銅合金中のSnは、固溶強化及び結晶粒の微細化に伴う強度向上の効果を発揮させる。継目無管を形成する銅合金のSn含有量は、0.58〜0.72質量%である。銅合金のSn含有量が、上記範囲にあることにより、材料の薄肉化とヘアピン曲げの加工性の両立を図ることができる。一方、銅合金のSn含有量が、上記範囲未満だと、十分な薄肉化を図ることができず、曲げ加工に要する圧力が高くなり、ヘアピン曲げに支障を及ぼす。また、銅合金のSn含有量が、上記範囲を超えると、薄肉化しても、曲げ加工に要する圧力が高くなる等、ヘアピン曲げに支障を及ぼす。
銅合金中のZrは、析出強化により強度向上の効果を発揮させると共に、Ni化合物の析出を促進させる。継目無管を形成する銅合金のZr含有量は、0.04〜0.15質量%である。銅合金のZr含有量が、上記範囲にあることにより、材料の薄肉化とヘアピン曲げの加工性の両立を図ることができる。一方、銅合金のZr含有量が、上記範囲未満だと、下記のNiの含有量では、十分な強度が得られないために、十分な薄肉化を図ることができず、曲げ加工に要する圧力が高くなり、ヘアピン曲げに支障を及ぼす。また、銅合金のZr含有量が、上記範囲を超えると、鋳造条件によっては、鋳造以降の工程で分解不可能なZr系化合物を生成することがあり、延性が低くなる原因となり、加工性が低くなる。
銅合金中のNiは、固溶強化ならびに析出強化により強度向上の効果を発揮させる。継目無管を形成する銅合金のNi含有量は、0.01〜0.10質量%である。銅合金のNi含有量が、上記範囲にあることにより、材料の薄肉化とヘアピン曲げの加工性の両立を図ることができる。一方、銅合金のNi含有量が、上記範囲未満だと、十分な薄肉化を図ることができず、曲げ加工に要する圧力が高くなり、ヘアピン曲げに支障を及ぼす。また、銅合金のNi含有量が、上記範囲を超えると、製造条件によっては、粗大なNi系析出物が生成するため、耐食性が低くなる。
Pは、脱酸素目的で銅合金に添加される。継目無管を形成する銅合金のP含有量は、0.004〜0.015質量%である。銅合金のP含有量が、上記範囲にあることにより、材料中の脱酸素が十分となる。一方、銅合金のP含有量が、上記範囲未満だと、脱酸素が不十分となり、また、上記範囲を超えると、製造条件によってはZrと化合物を生成し、強度低下を招いたり、製造工程上冷間加工時に破断を生じたりすることがある。
本発明のレベルワウンドコイルに整列多層巻きされている継目無管の外径(mm)に対する肉厚(mm)の比(t/D)は、0.037以下、好ましくは0.019〜0.037、特に好ましくは0.028〜0.034である。t/Dが上記範囲にあることにより、継目無管として細径化及び薄肉化に十分対応したものとなる。
本発明のレベルワウンドコイルに整列多層巻きされている継目無管の外径D(mm)は、好ましくは3〜8mm、特に好ましくは4〜7mmである。また、本発明の継目無管の肉厚t(mm)は、継目無管の外径(D)と外径に対する肉厚の比(t/D)により、定められるが、通常、肉厚は0.14〜0.29mmが好ましい。
本発明のレベルワウンドコイルに整列多層巻きされている継目無管の引張強さ(σB)は、310MPa以上、好ましくは310〜345MPaである。継目無管の引張強さが上記範囲にあることにより、薄肉化をしても十分な耐圧強度を有することができる。一方、継目無管の引張強度が上記範囲未満だと、薄肉化したときに、耐圧強度が不足する。また、継目無管の引張強さが345MPaを超えると、0.2%耐力(σ0.2)を205MPa以下、且つ、伸び(δ)を36%以上とすることが困難となり易い。
本発明のレベルワウンドコイルに整列多層巻きされている継目無管の0.2%耐力(σ0.2)は、t/Dを考慮すると、205MPa以下、好ましくは100〜195MPaである。また、本発明のレベルワウンドコイルに整列多層巻きされている継目無管の伸び(δ)は、36%以上、好ましくは36〜51%である。継目無管の0.2%耐力(σ0.2)及び伸び(δ)が上記範囲にあることにより、ヘアピン曲げ加工性が良好となる。一方、継目無管の0.2%耐力が上記範囲を超え、伸びが上記範囲を下回ると、曲げピッチPが小さい強加工(例えば、図1に示す曲げピッチPが22mm以下のヘアピン曲げ加工)を行うことが困難となり、ヘアピン曲げ加工のときに、曲げ内側部分にしわが発生したり、管が扁平化したり、極端な場合には破損する。また、継目無管の0.2%耐力が100MPa未満だと、曲げ加工に供する以前に材料のたわみや曲がりの程度が増加することで、曲げ加工工程における座屈や詰まりなどの不具合が生じ易くなる。なお、曲げピッチPとは、図1に示すように、ヘアピン曲げにより略平行に並ぶ2つ継目無管の管軸(符号1)間の距離である。
本発明のレベルワウンドコイルに整列多層巻きされている継目無管の形態例としては、内面溝が形成されていない内面平滑管(ベアー管)及び内面溝が形成されている内面溝付管がある。内面平滑管の場合、継目無管の外径Dとは、継目無管を管軸方向に対して垂直な面で切ったときの断面における管の外径であり、継目無管の肉厚tとは、継目無管を管軸方向に対して垂直な面で切ったときの断面における管の肉厚である。また、内面溝付管の場合、継目無管の外径Dとは、継目無管を管軸方向に対して垂直な面で切ったときの断面における管の外径であり、継目無管の肉厚tとは、図2に示すように、継目無管を管軸方向に対して垂直な面で切ったときの断面において、内面溝の最も深い位置sの管の厚み(底肉厚)である。
レベルワウンドコイルでは、クロスフィンチューブ型熱交換器を製造するときに、レベルワウンドコイルの内面側又は外面側から継目無管が巻き解かれるが、レベルワウンドコイルから継目無管が巻き解かれるときに、継目無管には、管を伸ばすことによる加工硬化が加わるため、巻き解かれた後の継目無管の0.2%耐力が、巻き解かれる前の継目無管の0.2%耐力に比べ、増加する。そのため、レベルワウンドコイルに巻かれている継目無管(レベルワウンドコイルから巻き解かれる前の継目無管)の0.2%耐力は、クロスフィンチューブ型熱交換器を製造するときにヘアピン曲げ加工に供される継目無管(レベルワウンドコイルから巻き解かれた後の継目無管)の0.2%耐力より低くなければならない。そのため、レベルワウンドコイルは、巻かれている継目無管の0.2%耐力(σ0.2)が、巻き解かれるときの増加分を加味した範囲に設計されたものでなければならない。
本発明のレベルワウンドコイルでは、巻き解かれるときに増加する0.2%耐力の増加分を加味して、巻かれている継目無管(巻き解かれる前の継目無管)の0.2%耐力が、上記範囲に規定されているので、ヘアピン曲げに供するために巻き解いた後の継目無管の0.2%耐力が、215MPa以下、好ましくは100〜205MPaとなる。そのため、本発明のレベルワウンドコイルより巻き解いた継目無管は、ヘアピン曲げ加工性に優れる。つまり、本発明のレベルワウンドコイルによれば、ヘアピン曲げ加工性に優れる継目無管を提供することができる。
そして、本発明のレベルワウンドコイルでは、レベルワウンドコイルに巻かれている継目無管の引張強さ(σB)、0.2%耐力(σ0.2)及び伸び(δ)が上記範囲に設定されていることにより、レベルワウンドコイルから巻き解かれた後の継目無管、すなわち、ヘアピン曲げ加工に供される継目無管の引張強さ(σB)が310MPa以上、好ましくは310〜345MPaであり、0.2%耐力(σ0.2)が215MPa以下、好ましくは100〜205MPaであり、且つ、伸び(δ)が35%以上、好ましくは35〜50%となる。そのため、本発明のレベルワウンドコイルから巻き解いた継目無管は、強度が高く且つヘアピン曲げ加工を正常に行うことができる継目無管である。
本発明のレベルワウンドコイルを製造する方法としては、以下に示すレベルワウンドコイルの製造方法が挙げられる。
本発明の第一の形態のレベルワウンドコイルの製造方法(以下、レベルワウンドコイルの製造方法(1)とも記載する。)は、レベルワウンドコイル作製用継目無管を、円筒状に整列多層巻きすることにより、レベルワウンドコイルを作製することを特徴とするレベルワウンドコイルの製造方法である。以下、レベルワウンドコイルの製造方法(1)において、整列多層巻きされるレベルワウンドコイル作製用継目無管(レベルワウンドコイルに巻き回される前の継目無管)を、レベルワウンドコイル作製用継目無管(1)とも記載する。
レベルワウンドコイルの製造方法(1)に用いられるレベルワウンドコイル作製用継目無管(1)は、材質が、0.58〜0.72質量%のSn、0.04〜0.15質量%のZr、0.01〜0.10質量%のNi及び0.004〜0.015質量%のPを含有し、残部Cu及び不可避不純物からなる銅合金であり、外径(mm)に対する肉厚(mm)の比(t/D)が0.037以下であり、引張強さ(σB)が310MPa以上であり、0.2%耐力(σ0.2)が195MPa以下であり、伸び(δ)が38%以上である。
レベルワウンドコイル作製用継目無管(1)の材質は、本発明のレベルワウンドコイルに巻かれている継目無管の材質と同様であり、Sn、Zr、Ni及びPを含有し、残部Cu及び不可避不純物からなる銅合金である。レベルワウンドコイル作製用継目無管を形成している銅合金のSn含有量は、0.58〜0.72質量%であり、Zr含有量は、0.04〜0.15質量%であり、Ni含有量は、0.01〜0.10質量%であり、P含有量は、0.004〜0.015質量%である。
また、レベルワウンドコイル作製用継目無管(1)の外径D及び肉厚tは、本発明のレベルワウンドコイルに巻かれている継目無管の外径D及び肉厚tと同様である。
レベルワウンドコイル作製用継目無管(1)の外径(mm)に対する肉厚(mm)の比(t/D)は、0.037以下、好ましくは0.019〜0.037、特に好ましくは0.028〜0.034である。
レベルワウンドコイル作製用継目無管(1)の引張強さ(σB)は、310MPa以上、好ましくは310〜345MPaである。レベルワウンドコイル作製用継目無管(1)の引張強さ(σB)が上記範囲にあることにより、レベルワウンドコイルに巻き回した後の継目無管、すなわち、本発明のレベルワウンドコイルに巻かれている継目無管の引張強さ(σB)を、310MPa以上、好ましくは310〜345MPaとすることができる。
レベルワウンドコイル作製用継目無管(1)の0.2%耐力(σ0.2)は、195MPa以下、好ましくは100〜185MPaである。レベルワウンドコイル作製用継目無管(1)の0.2%耐力(σ0.2)が上記範囲にあることにより、レベルワウンドコイルに巻き回した後の継目無管、すなわち、本発明のレベルワウンドコイルに巻かれている継目無管の0.2%耐力(σ0.2)を、205MPa以下、好ましくは100〜195MPaにすることができる。
レベルワウンドコイル作製用継目無管(1)の伸び(δ)は、38%以上、好ましくは38〜53%である。レベルワウンドコイル作製用継目無管(1)の伸び(δ)が上記範囲にあることにより、レベルワウンドコイルに巻き回した後の継目無管、すなわち、本発明のレベルワウンドコイルに巻かれている継目無管の伸び(δ)を、36%以上、好ましくは36〜51%にすることができる。
レベルワウンドコイルの製造方法(1)において、レベルワウンドコイル作製用継目無管が、円筒状に整列多層巻きに巻き取られるときに、継目無管には、曲げることによる加工硬化が加わるため、レベルワウンドコイルに巻き回された後の継目無管の0.2%耐力が、レベルワウンドコイルに巻き回される前の継目無管の0.2%耐力に比べ、増加する。そのため、レベルワウンドコイル作製用継目無管(レベルワウンドコイルに巻き回される前の継目無管)の0.2%耐力は、レベルワウンドコイルに巻かれている継目無管(レベルワウンドコイルに巻き回された後の継目無管)の0.2%耐力より低くなければならない。そのため、レベルワウンドコイル作製用継目無管は、0.2%耐力(σ0.2)が、レベルワウンドコイルに巻き回されるときの増加分を加味した範囲に設計されたものでなければならない。
レベルワウンドコイル作製用継目無管(1)は、レベルワウンドコイルに巻き回されるときに増加する0.2%耐力の増加分を加味して、0.2%耐力(巻き回される前の継目無管の0.2%耐力)が、上記範囲に規定されているので、レベルワウンドコイルに巻き回した後の継目無管の0.2%耐力が、205MPa以下、好ましくは100〜195MPaとなる。
レベルワウンドコイル作製用継目無管(1)を製造する方法について述べる。レベルワウンドコイル作製用継目無管(1)の製造方法の第一の形態(以下、レベルワウンドコイル作製用継目無管(1)の製造方法(1)とも記載する。)は、継目無管が内面平滑管である場合の製造方法である。また、レベルワウンドコイル作製用継目無管(1)の製造方法の第二の形態(以下、レベルワウンドコイル作製用継目無管(1)の製造方法(2)とも記載する。)は、継目無管が内面溝付管である場合の製造方法である。
レベルワウンドコイル作製用継目無管(1)の製造方法(1)は、本発明のレベルワウンドコイルに巻かれている継目無管を形成する銅合金の化学組成を有する銅合金の鋳塊を得る鋳造工程と、熱間押出工程と、冷間加工工程と、最終熱処理と、を順に行い、熱間押出工程と最終熱処理との間には中間焼鈍処理を行わない継目無管の製造方法である。
レベルワウンドコイル作製用継目無管(1)の製造方法(1)では、鋳造工程と、熱間押出工程と、冷間加工工程と、最終熱処理と、を順に行う。なお、これらを順に行うとは、鋳造工程の直後に熱間押出工程を、熱間押出工程の直後に冷間加工工程を、冷間加工工程の直後に最終熱処理を行うということではなく、鋳造工程より後に熱間押出工程を、熱間押出工程より後に冷間加工工程を、冷間加工工程より後に最終熱処理を行うということ指す。
また、レベルワウンドコイル作製用継目無管(1)の製造方法(2)は、本発明のレベルワウンドコイルに巻かれている継目無管を形成する銅合金の化学組成を有する銅合金の鋳塊を得る鋳造工程と、熱間押出工程と、冷間加工工程と、中間焼鈍処理(A)と、転造加工工程と、最終熱処理と、を順に行い、熱間押出工程と中間焼鈍処理(A)との間には他の中間焼鈍処理を行わない継目無管の製造方法である。
レベルワウンドコイル作製用継目無管(1)の製造方法(2)では、鋳造工程と、熱間押出工程と、冷間加工工程と、中間焼鈍処理(A)と、転造加工工程と、最終熱処理と、を順に行う。なお、これらを順に行うとは、鋳造工程の直後に熱間押出工程を、熱間押出工程の直後に冷間加工工程を、冷間加工工程の直後に中間焼鈍処理(A)を、中間焼鈍処理(A)の直後に転造加工工程を、転造加工工程の直後に最終熱処理を行うということではなく、鋳造工程より後に熱間押出工程を、熱間押出工程より後に冷間加工工程を、冷間加工工程より後に中間焼鈍処理(A)を、中間焼鈍処理(A)より後に転造加工工程を、転造加工工程より後に最終熱処理を行うということ指す。
レベルワウンドコイル作製用継目無管(1)の製造方法(1)の鋳造工程から冷間加工工程までと、レベルワウンドコイル作製用継目無管の製造方法(2)の鋳造工程から冷間加工工程までとは、同様である。
レベルワウンドコイル作製用継目無管(1)の製造方法(1)及びレベルワウンドコイル作製用継目無管(1)の製造方法(2)に係る鋳造工程は、常法に従って、溶解、鋳造し、所定の元素が所定の含有量で配合されているビレットを得る工程である。ビレットのSn含有量は、0.58〜0.72質量%であり、Zr含有量は、0.04〜0.15質量%であり、Ni含有量は、0.01〜0.10質量%であり、P含有量は、0.004〜0.015質量%である。鋳造工程では、例えば、銅の地金、工程内リサイクル材、純Sn地金、Cu−Zr母合金、Cu−Ni母合金、Cu−P母合金等を配合して、Sn、Zr、Ni及びP含有量が所定の含有量となるように成分調整を行い、次いで、高周波溶解炉等を用いて、ビレットを鋳造する。
レベルワウンドコイル作製用継目無管(1)の製造方法(1)及びレベルワウンドコイル作製用継目無管(1)の製造方法(2)では、次いで、鋳造工程を行うことにより得られたビレットを熱間押出加工する熱間押出工程を行う。熱間押出工程では、熱間押出加工前にビレットを所定の温度で加熱した後、熱間押出加工を行う。熱間押出加工は、マンドレル押出によって行われる。すなわち、加熱前に、冷間で予め穿孔したビレット、あるいは、押出前に熱間で穿孔したビレットに、マンドレルを挿入した状態で、熱間押出を行なって、継目無熱間押出素管を得る。
熱間押出工程を行うことにより得られた継目無熱間押出素管を、熱間押出工程後、速やかに冷却する。冷却は、継目無熱間押出素管を水中へ押し出すこと又は熱間押出後の継目無熱間押出素管を水中へ投入することによって、行われる。
レベルワウンドコイル作製用継目無管(1)の製造方法(1)及びレベルワウンドコイル作製用継目無管(1)の製造方法(2)では、次いで、冷却後の継目無熱間押出素管の冷間加工を行い、管の外径及び肉厚を減じていく冷間加工工程を行う。冷間加工は、冷間での抽伸加工(引き抜き加工)か、あるいは、チューブレーザーによる冷間での圧延加工と冷間での抽伸加工(引き抜き加工)の組み合わせである。冷間加工工程では、圧延加工や抽伸加工等の冷間加工を、複数回行うことができる。なお、レベルワウンドコイル作製用継目無管(1)の製造方法(1)及びレベルワウンドコイル作製用継目無管(1)の製造方法(2)では、冷間加工工程とは、冷間で行う加工の全てを指す。
冷間加工工程より後は、レベルワウンドコイル作製用継目無管(1)の製造方法(1)と、レベルワウンドコイル作製用継目無管(1)の製造方法(2)とでは、異なるので、それぞれ説明する。
レベルワウンドコイル作製用継目無管(1)の製造方法(1)では、冷間加工工程に次いで、冷間加工工程を行うことにより得られた冷間加工後の継目無素管の最終熱処理を行う。最終熱処理の保持温度及び保持時間は、継目無管の引張強さ(σB)、0.2%耐力(σ0.2)及び伸び(δ)が所定の範囲となるように、適宜選択される。特に、最終熱処理の保持温度は、400〜650℃の範囲が好ましい。最終熱処理の保持温度が、上記範囲未満だと、長時間の熱処理が必要となるため、生産性が低くなり、場合によっては、焼鈍が不十分となり、また、上記範囲を超えると、著しい粒成長が生じ、強度や加工性が低くなる。
そして、レベルワウンドコイル作製用継目無管(1)の製造方法(1)では、熱間押出工程と最終熱処理との間には、中間焼鈍処理を行わず、この間の冷間加工工程の総加工度(断面減少率)を99.5%以上とする。なお、冷間加工工程の総加工度とは、冷間加工工程で最初に行う冷間加工前の継目無素管に対する冷間加工工程で行う最後の冷間加工後の継目無素管の加工度を指し、下記式(1)に示す断面減少率で表す。
断面減少率(%)=((管の加工前の断面積−管の加工後の断面積)/(管の加工前の断面積))×100 (1)
例えば、冷間加工工程で、冷間圧延を複数回行い、次いで、冷間での抽伸を複数回行う場合、「断面減少率(%)=((管の最初の冷間圧延前の断面積−管の最後の冷間抽伸後の断面積)/(管の最初の冷間圧延前の断面積))×100」となる。
断面減少率(%)=((管の加工前の断面積−管の加工後の断面積)/(管の加工前の断面積))×100 (1)
例えば、冷間加工工程で、冷間圧延を複数回行い、次いで、冷間での抽伸を複数回行う場合、「断面減少率(%)=((管の最初の冷間圧延前の断面積−管の最後の冷間抽伸後の断面積)/(管の最初の冷間圧延前の断面積))×100」となる。
レベルワウンドコイル作製用継目無管(1)の製造方法(1)では、熱間押出工程を行った後、最終熱処理を行う前までの間には、中間焼鈍処理を行わず、冷間加工工程の総加工度を上記範囲とし、且つ、最終熱処理の保持温度を上記範囲とすることにより、最終熱処理を行い得られる継目無管の引張強さ(σB)を310MPa以上、好ましくは310〜345MPa、0.2%耐力(σ0.2)を195MPa以下、好ましくは100〜185MPa、且つ、伸び(δ)を38%以上、好ましくは38〜53%とすることができる。
このように、レベルワウンドコイル作製用継目無管(1)の製造方法(1)を行うことにより、レベルワウンドコイル作製用継目無管(1)を得ることができる。
レベルワウンドコイル作製用継目無管(1)の製造方法(2)では、冷間加工工程に次いで、冷間加工工程を行うことにより得られた冷間加工後の継目無素管を、400〜700℃の保持温度で加熱する中間焼鈍処理(A)を行う。中間焼鈍処理(A)を行うことにより、転造加工工程での転造加工をし易くする。レベルワウンドコイル作製用継目無管の製造方法(2)では、中間焼鈍処理(A)を行った後、転造加工工程を行うまでは、他の熱処理を行わない。つまり、中間焼鈍処理(A)は、転造加工工程の前の熱処理である。
レベルワウンドコイル作製用継目無管(1)の製造方法(2)では、次いで、中間焼鈍処理(A)後の継目無素管を転造加工する転造加工工程を行う。転造加工は、管材料の内面に、内面溝を形成させる転造加工を行う工程であり、中間焼鈍処理(A)後の継目無素管内に、外面にらせん状の溝加工を施した転造プラグを配置して、高速回転する複数の転造ボールによって、管の外側から押圧して、管の内面に転造プラグの溝を転写することにより行われる。また、通常、中間焼鈍処理(A)を行った後、縮径加工を行ってから、転造加工工程を行う。
レベルワウンドコイル作製用継目無管(1)の製造方法(2)では、次いで、転造加工工程を行うことにより得られた転造加工後の内面溝付管の最終熱処理を行う。最終熱処理の保持温度は、400〜650℃が好ましい。また、最終熱処理の処理時間は、継目無管の引張強さ(σB)、0.2%耐力(σ0.2)及び伸び(δ)が所定の範囲となるように、適宜選択される。
そして、レベルワウンドコイル作製用継目無管(1)の製造方法(2)では、熱間押出工程と中間焼鈍処理(A)との間には他の中間焼鈍処理等の熱処理を行わず、この間の冷間加工工程の総加工度(断面減少率)を99.5%以上とし、且つ、最終熱処理の保持温度を上記範囲とすることにより、最終熱処理を行い得られる継目無管の引張強さ(σB)を310MPa以上、好ましくは310〜345MPa、0.2%耐力(σ0.2)を195MPa以下、好ましくは100〜185MPa、且つ、伸び(δ)を38%以上、好ましくは38〜53%とすることができる。なお、冷間加工工程の総加工度とは、冷間加工工程で最初に行う冷間加工前の継目無素管に対する冷間加工工程で最後に行う冷間加工後の継目無素管の加工度を指す(前記式(1))。
このように、レベルワウンドコイル作製用継目無管(1)の製造方法(2)を行うことにより、レベルワウンドコイル作製用継目無管(1)を得ることができる。
なお、継目無管が内面溝付管の場合、内面溝の寸法パラメータを以下の範囲に設定することにより、管の伝熱性能と曲げ加工性の両方を良好に維持することが可能となり、より好ましい。
・フィン高さをh(mm)、肉厚(底肉厚)をt(mm)としたとき、
h/tが、0.50〜1.2
・リード角をθ(°)、フィン頂角をα(°)としたとき、
θ/αが、0.70以上
なお、フィン高さh、肉厚(底肉厚)t、フィン頂角αは、図2中の符号h、t及びαである。また、リード角θとは、継目無管の管軸方向に対する内面溝の傾斜角である。
・フィン高さをh(mm)、肉厚(底肉厚)をt(mm)としたとき、
h/tが、0.50〜1.2
・リード角をθ(°)、フィン頂角をα(°)としたとき、
θ/αが、0.70以上
なお、フィン高さh、肉厚(底肉厚)t、フィン頂角αは、図2中の符号h、t及びαである。また、リード角θとは、継目無管の管軸方向に対する内面溝の傾斜角である。
次いで、レベルワウンドコイルの製造方法(1)では、レベルワウンドコイル作製用継目無管(1)の製造方法(1)又はレベルワウンドコイル作製用継目無管(1)の製造方法(2)を行うことにより得られたレベルワウンドコイル作製用継目無管(1)を、円筒状に整列多層巻きして、本発明のレベルワウンドコイルを製造する。
本発明の第二の形態のレベルワウンドコイルの製造方法(以下、レベルワウンドコイルの製造方法(2)とも記載する。)について述べる。ベルワウンドコイルの製造方法(2)は、材質が、0.58〜0.72質量%のSn、0.04〜0.15質量%のZr、0.01〜0.10質量%のNi及び0.004〜0.015質量%のPを含有し、残部Cu及び不可避不純物からなる銅合金であり、外径(mm)に対する肉厚(mm)の比(t/D)が0.037以下の継目無管を、円筒状に整列多層巻きし、次いで、熱処理を行い、熱処理後の継目無管の引張強さ(σB)が310MPa以上であり、0.2%耐力(σ0.2)が205MPa以下であり、伸び(δ)が36%以上であるレベルワウンドコイルを作製することを特徴とするレベルワウンドコイルの製造方法である。レベルワウンドコイルの製造方法(2)の第一形態は、継目無管が内面平滑管である場合の製造方法である。また、レベルワウンドコイルの製造方法(2)の第二形態は、継目無管が内面溝付管である場合の製造方法である。
レベルワウンドコイルの製造方法(2)の第一形態は、本発明のレベルワウンドコイルに巻かれている継目無管を形成する銅合金の化学組成を有する銅合金の鋳塊を得る鋳造工程と、熱間押出工程と、冷間加工工程と、巻き取り工程と、最終熱処理と、を順に行い、熱間押出工程と最終熱処理との間には中間焼鈍処理を行わない継目無管の製造方法である。
レベルワウンドコイルの製造方法(2)の第一形態では、鋳造工程と、熱間押出工程と、冷間加工工程と、巻き取り工程と、最終熱処理と、を順に行う。なお、これらを順に行うとは、鋳造工程の直後に熱間押出工程を、熱間押出工程の直後に冷間加工工程を、冷間加工工程の直後に巻き取り工程を、巻き取り工程の直後に最終熱処理を行うということではなく、鋳造工程より後に熱間押出工程を、熱間押出工程より後に冷間加工工程を、冷間加工工程より後に巻き取り工程を、巻き取り工程より後に最終熱処理を行うということ指す。
また、レベルワウンドコイルの製造方法(2)の第二形態は、本発明のレベルワウンドコイルに巻かれている継目無管を形成する銅合金の化学組成を有する銅合金の鋳塊を得る鋳造工程と、熱間押出工程と、冷間加工工程と、中間焼鈍処理(A)と、転造加工工程と、巻き取り工程と、最終熱処理と、を順に行い、熱間押出工程と中間焼鈍処理(A)との間には他の中間焼鈍処理を行わない継目無管の製造方法である。
レベルワウンドコイルの製造方法(2)の第二形態では、鋳造工程と、熱間押出工程と、冷間加工工程と、中間焼鈍処理(A)と、転造加工工程と、巻き取り工程と、最終熱処理と、を順に行う。なお、これらを順に行うとは、鋳造工程の直後に熱間押出工程を、熱間押出工程の直後に冷間加工工程を、冷間加工工程の直後に中間焼鈍処理(A)を、中間焼鈍処理(A)の直後に転造加工工程を、転造加工工程の直後に巻き取り工程を、巻き取り工程の直後に最終熱処理を行うということではなく、鋳造工程より後に熱間押出工程を、熱間押出工程より後に冷間加工工程を、冷間加工工程より後に中間焼鈍処理(A)を、中間焼鈍処理(A)より後に転造加工工程を、転造加工工程より後に巻き取り工程を、巻き取り工程より後に最終熱処理を行うということ指す。
レベルワウンドコイルの製造方法(2)の第一形態の鋳造工程から冷間加工工程までと、レベルワウンドコイルの製造方法(2)の第二形態の鋳造工程から冷間加工工程までとは、同様である。そして、レベルワウンドコイルの製造方法(2)の第一形態及びレベルワウンドコイルの製造方法(2)の第二形態の鋳造工程から冷間加工工程までは、レベルワウンドコイル作製用継目無管(1)の製造方法(1)の鋳造工程から冷間加工工程までと、同様である。
冷間加工工程より後は、レベルワウンドコイルの製造方法(2)の第一形態と、レベルワウンドコイルの製造方法(2)の第二形態とでは、異なるので、それぞれ説明する。
レベルワウンドコイルの製造方法(2)の第一形態では、冷間加工工程に次いで、冷間加工工程を行うことにより得られた冷間加工後の継目無素管を、円筒状に整列多層巻きする、すなわち、レベルワウンドコイルの形状に巻き取る巻き取り工程を行い、次いで、レベルワウンドコイルの形状に巻き取ったものを最終熱処理する。最終熱処理の保持温度及び保持時間は、レベルワウンドコイルに巻き取られている継目無管の引張強さ(σB)、0.2%耐力(σ0.2)及び伸び(δ)が所定の範囲となるように、適宜選択される。特に、最終熱処理の保持温度は、400〜650℃の範囲が好ましい。最終熱処理の保持温度が、上記範囲未満だと、長時間の熱処理が必要となるため、生産性が低くなり、場合によっては、焼鈍が不十分となり、また、上記範囲を超えると、著しい粒成長が生じ、強度や加工性が低くなる。
そして、レベルワウンドコイルの製造方法(2)の第一形態では、熱間押出工程と最終熱処理との間には、中間焼鈍処理を行わず、この間の冷間加工工程の総加工度(断面減少率)を99.5%以上とする。なお、冷間加工工程の総加工度とは、冷間加工工程で最初に行う冷間加工前の継目無素管に対する冷間加工工程で行う最後の冷間加工後の継目無素管の加工度を指す(前記式(1))。
レベルワウンドコイルの製造方法(2)の第一形態では、熱間押出工程を行った後、最終熱処理を行う前までの間には、中間焼鈍処理を行わず、冷間加工工程の総加工度を上記範囲とし、且つ、最終熱処理の保持温度を上記範囲とすることにより、最終熱処理を行い得られる継目無管(レベルワウンドコイルに巻かれている継目無管)の引張強さ(σB)を310MPa以上、好ましくは310〜345MPa、0.2%耐力(σ0.2)を205MPa以下、好ましくは100〜195MPa、且つ、伸び(δ)を36%以上、好ましくは36〜51%とすることができる。
このように、レベルワウンドコイルの製造方法(2)の第一形態を行うことにより、本発明のレベルワウンドコイルを得ることができる。
レベルワウンドコイルの製造方法(2)の第二形態では、冷間加工工程に次いで、冷間加工工程を行うことにより得られた冷間加工後の継目無素管を、400〜700℃の保持温度で加熱する中間焼鈍処理(A)を行う。中間焼鈍処理(A)を行うことにより、転造加工工程での転造加工をし易くする。レベルワウンドコイルの製造方法(2)の第二形態では、中間焼鈍処理(A)を行った後、転造加工工程を行うまでは、他の熱処理を行わない。つまり、中間焼鈍処理(A)は、転造加工工程の前の熱処理である。
レベルワウンドコイルの製造方法(2)の第二形態では、次いで、中間焼鈍処理(A)後の継目無素管を転造加工する転造加工工程を行う。転造加工は、管材料の内面に、内面溝を形成させる転造加工を行う工程であり、中間焼鈍処理(A)後の継目無素管内に、外面にらせん状の溝加工を施した転造プラグを配置して、高速回転する複数の転造ボールによって、管の外側から押圧して、管の内面に転造プラグの溝を転写することにより行われる。また、通常、中間焼鈍処理(A)を行った後、縮径加工を行ってから、転造加工工程を行う。
レベルワウンドコイルの製造方法(2)の第二形態では、次いで、転造加工工程を行うことにより得られた転造加工後の内面溝付管を円筒状に整列多層巻きする、すなわち、レベルワウンドコイルの形状に巻き取る巻き取り工程を行い、次いで、レベルワウンドコイルの形状に巻き取ったものを最終熱処理する。最終熱処理の保持温度は、400〜650℃が好ましい。また、最終熱処理の処理時間は、継目無管の引張強さ(σB)、0.2%耐力(σ0.2)及び伸び(δ)が所定の範囲となるように、適宜選択される。
そして、レベルワウンドコイルの製造方法(2)の第二形態では、熱間押出工程と中間焼鈍処理(A)との間には他の中間焼鈍処理等の熱処理を行わず、この間の冷間加工工程の総加工度(断面減少率)を99.5%以上とし、且つ、最終熱処理の保持温度を上記範囲とすることにより、最終熱処理を行い得られる継目無管(レベルワウンドコイルに巻かれている継目無管)の引張強さ(σB)を310MPa以上、好ましくは310〜345MPa、0.2%耐力(σ0.2)を205MPa以下、好ましくは100〜195MPa、且つ、伸び(δ)を36%以上、好ましくは36〜51%とすることができる。なお、冷間加工工程の総加工度とは、冷間加工工程で最初に行う冷間加工前の継目無素管に対する冷間加工工程で最後に行う冷間加工後の継目無素管の加工度を指す(前記式(1))。
このように、レベルワウンドコイルの製造方法(2)の第二形態を行うことにより、本発明のレベルワウンドコイルを得ることができる。
なお、継目無管が内面溝付管の場合、内面溝の寸法パラメータを以下の範囲に設定することにより、管の伝熱性能と曲げ加工性の両方を良好に維持することが可能となり、より好ましい。
・フィン高さをh(mm)、肉厚(底肉厚)をt(mm)としたとき、
h/tが、0.50〜1.2
・リード角をθ(°)、フィン頂角をα(°)としたとき、
θ/αが、0.70以上
なお、フィン高さh、肉厚(底肉厚)t、フィン頂角αは、図2中の符号h、t及びαである。また、リード角θとは、継目無管の管軸方向に対する内面溝の傾斜角である。
・フィン高さをh(mm)、肉厚(底肉厚)をt(mm)としたとき、
h/tが、0.50〜1.2
・リード角をθ(°)、フィン頂角をα(°)としたとき、
θ/αが、0.70以上
なお、フィン高さh、肉厚(底肉厚)t、フィン頂角αは、図2中の符号h、t及びαである。また、リード角θとは、継目無管の管軸方向に対する内面溝の傾斜角である。
レベルワウンドコイルの製造方法(2)の第一形態及び第二形態において、最終熱処理される前の継目無管は、材質が、Sn、Zr、のNi及びPを含有し、残部Cu及び不可避不純物からなる銅合金であり、銅合金のSn含有量は、0.58〜0.72質量%であり、Zr含有量は、0.04〜0.15質量%であり、Ni含有量は、0.01〜0.10質量%であり、P含有量は、0.004〜0.015質量%である。
レベルワウンドコイルの製造方法(2)の第一形態及び第二形態において、最終熱処理される前の継目無管の外径D及び肉厚tは、本発明のレベルワウンドコイルに巻かれている継目無管の外径D及び肉厚tと同様である。
レベルワウンドコイルの製造方法(2)の第一形態及び第二形態において、最終熱処理される前の継目無管の外径(mm)に対する肉厚(mm)の比(t/D)は、0.037以下、好ましくは0.019〜0.037、特に好ましくは0.028〜0.034である。
本発明のクロスフィンチューブ型熱交換器は、前記本発明のレベルワウンドコイルから巻き解かれた継目無管をヘアピン曲げ加工し、アルミニウムフィンに組み付けて得られるクロスフィンチューブ型熱交換器である。
また、本発明のクロスフィンチューブ型熱交換器の製造方法は、前記本発明のレベルワウンドコイルから巻き解いた継目無管をヘアピン曲げ加工し、アルミニウムフィンに組み付けて、クロスフィンチューブ型熱交換器を得ることを特徴とするクロスフィンチューブ型熱交換器の製造方法である。
次に、実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、これは単に例示であって、本発明を制限するものではない。
以下に、継目無管が内面溝付管である場合の実施例を示す。
(実施例1)
(1)表1に示す化学成分の銅合金鋳塊を溶解及び鋳造し、熱間押出用のビレットを作製した。
(2)上記ビレットを加熱し、930℃にて熱間押出を行い、押出素管を得た。次いで、熱間押出した押出素管を、水中に押出して急冷した。
・押出前に熱間で内径約75mm穿孔した。
・押出素管の外径は102mm、内径は75mmであった。
(3)上記押出素管を、ビルガーミル圧延機によって冷間圧延し、圧延素管を得た。
・圧延素管の外径は46mm、内径は39.8mmであった。
・冷間圧延での加工度(断面減少率)は、88.9%であった。
断面減少率(%)=((加工前の断面積−加工後の断面積)/加工前の断面積)×100
(4)上記の圧延素管を、冷間にて抽伸を複数回行い、抽伸素管を得た。
・抽伸素管の外径は38mm、内径は33mmであった。
・冷間抽伸全体での加工度は、断面減少率で96.6%であった。
・冷間圧延及び冷間抽伸の総加工度、すなわち、冷間加工の総加工度は、断面減少率で99.8%であった。
(5)上記の抽伸素管を中間焼鈍し、転造工程に供するための原管を得た。
・中間焼鈍条件は、表1に示す通り。
・原管の0.2%耐力(σ0.2)を、表1に示す。
(6)上記の原管を、ボール転造加工して、下記寸法諸元の内面溝付管Aを得た。
<内面溝付管Aの寸法諸元>
・外径:7.0mm
・肉厚(図2中、符号t):0.26mm
・フィン高さ(図2中、符号h):0.22mm
・フィン頂角(図2中、符号α):13°
・溝条数:44条
・リード角θ:28°
・内面溝付管の外径(mm)に対する肉厚(mm)の比(t/D):0.037
(7)上記の内面溝付管を、内側面から巻き解かれる方式の円筒状の整列多層巻きに巻き取った。次いで、下記の条件の最終熱処理を行い、レベルワウンドコイル(LWC)を得た。
・熱処理方法:ローラーハース連続焼鈍炉にて行った。
・条件:保持温度は表1に示す通りであり、昇温速度は25℃から保持温度まで5.0℃/分であり、冷却速度は保持温度から25℃まで2.2℃/分であった。
・最終熱処理後の継目無管(LWCに巻かれている継目無管、すなわち、巻き解き前の継目無管)の引張強さ(σB)、0.2%耐力(σ0.2)、伸び(δ)を表1に示す。
(8)上記のLWCの内面側から継目無管を巻き解き、ヘアピン加工供試の継目無管(巻き解き後の継目無管、すなわち、クロスフィンチューブ型熱交換器の伝熱管作製用の継目無管)を得た。
・ヘアピン加工供試の継目無管の引張強さ(σB)、0.2%耐力(σ0.2)及び伸び(δ)を表1に示す。
(9)上記のヘアピン加工供試の継目無管(巻き解き後の継目無管)を用い、下記の条件にてヘアピン曲げ加工試験を行い、加工性を評価した。その結果を表1に示す。
・ヘアピン曲げ加工試験の方法:片首振りボールマンドレルの肩部と曲げ金型の曲げ開始位置が一直線上に並んだ位置を0点とし、曲げ型R部から遠ざかる方向へマンドレル位置を2.0〜5.5mmの範囲でずらしながら、ヘアピン加工性の評価を行った。
・ヘアピン曲げ加工試験の条件:ボールマンドレル外径が5.90mm、曲げピッチが22mm
・各実施例及び比較例の継目無管について、20本ずつ試験を行った。
<評価>
(I)しわ発生
ヘアピン曲げの内側部分にしわが発生している継目無管の数を数え、下記式にて、しわ発生率を求めた。しわ発生率が0%の場合を合格とした。
しわ発生率(%)=(しわが発生した管の本数/試験した管の本数)×100
(II)扁平率
ヘアピン曲げ後の曲げ部の扁平率を下記にて算出した。
扁平率(%)=((最大外径−最小外径)/呼称外径)×100
なお、測定位置は、ヘアピン曲げ部の45°、90°、135°位置であり、呼称外径は、本例では7.0mmである。なお、ヘアピン曲げ部の45°、90°、135°とは、図1に示すように、継目無管を45°曲げた位置(符号a)、90°曲げた位置(符号b)、135°曲げた位置(符号c)である。
試験した各継目無管の扁平率を求め、扁平率の平均値が15%以下の場合を合格とした。
<引張強さ(σB)、0.2%耐力(σ0.2)、伸び(δ)>
継目無管の引張強さ(σB)、0.2%耐力(σ0.2)、伸び(δ)は、JIS Z 2241に準拠して測定した。
(実施例1)
(1)表1に示す化学成分の銅合金鋳塊を溶解及び鋳造し、熱間押出用のビレットを作製した。
(2)上記ビレットを加熱し、930℃にて熱間押出を行い、押出素管を得た。次いで、熱間押出した押出素管を、水中に押出して急冷した。
・押出前に熱間で内径約75mm穿孔した。
・押出素管の外径は102mm、内径は75mmであった。
(3)上記押出素管を、ビルガーミル圧延機によって冷間圧延し、圧延素管を得た。
・圧延素管の外径は46mm、内径は39.8mmであった。
・冷間圧延での加工度(断面減少率)は、88.9%であった。
断面減少率(%)=((加工前の断面積−加工後の断面積)/加工前の断面積)×100
(4)上記の圧延素管を、冷間にて抽伸を複数回行い、抽伸素管を得た。
・抽伸素管の外径は38mm、内径は33mmであった。
・冷間抽伸全体での加工度は、断面減少率で96.6%であった。
・冷間圧延及び冷間抽伸の総加工度、すなわち、冷間加工の総加工度は、断面減少率で99.8%であった。
(5)上記の抽伸素管を中間焼鈍し、転造工程に供するための原管を得た。
・中間焼鈍条件は、表1に示す通り。
・原管の0.2%耐力(σ0.2)を、表1に示す。
(6)上記の原管を、ボール転造加工して、下記寸法諸元の内面溝付管Aを得た。
<内面溝付管Aの寸法諸元>
・外径:7.0mm
・肉厚(図2中、符号t):0.26mm
・フィン高さ(図2中、符号h):0.22mm
・フィン頂角(図2中、符号α):13°
・溝条数:44条
・リード角θ:28°
・内面溝付管の外径(mm)に対する肉厚(mm)の比(t/D):0.037
(7)上記の内面溝付管を、内側面から巻き解かれる方式の円筒状の整列多層巻きに巻き取った。次いで、下記の条件の最終熱処理を行い、レベルワウンドコイル(LWC)を得た。
・熱処理方法:ローラーハース連続焼鈍炉にて行った。
・条件:保持温度は表1に示す通りであり、昇温速度は25℃から保持温度まで5.0℃/分であり、冷却速度は保持温度から25℃まで2.2℃/分であった。
・最終熱処理後の継目無管(LWCに巻かれている継目無管、すなわち、巻き解き前の継目無管)の引張強さ(σB)、0.2%耐力(σ0.2)、伸び(δ)を表1に示す。
(8)上記のLWCの内面側から継目無管を巻き解き、ヘアピン加工供試の継目無管(巻き解き後の継目無管、すなわち、クロスフィンチューブ型熱交換器の伝熱管作製用の継目無管)を得た。
・ヘアピン加工供試の継目無管の引張強さ(σB)、0.2%耐力(σ0.2)及び伸び(δ)を表1に示す。
(9)上記のヘアピン加工供試の継目無管(巻き解き後の継目無管)を用い、下記の条件にてヘアピン曲げ加工試験を行い、加工性を評価した。その結果を表1に示す。
・ヘアピン曲げ加工試験の方法:片首振りボールマンドレルの肩部と曲げ金型の曲げ開始位置が一直線上に並んだ位置を0点とし、曲げ型R部から遠ざかる方向へマンドレル位置を2.0〜5.5mmの範囲でずらしながら、ヘアピン加工性の評価を行った。
・ヘアピン曲げ加工試験の条件:ボールマンドレル外径が5.90mm、曲げピッチが22mm
・各実施例及び比較例の継目無管について、20本ずつ試験を行った。
<評価>
(I)しわ発生
ヘアピン曲げの内側部分にしわが発生している継目無管の数を数え、下記式にて、しわ発生率を求めた。しわ発生率が0%の場合を合格とした。
しわ発生率(%)=(しわが発生した管の本数/試験した管の本数)×100
(II)扁平率
ヘアピン曲げ後の曲げ部の扁平率を下記にて算出した。
扁平率(%)=((最大外径−最小外径)/呼称外径)×100
なお、測定位置は、ヘアピン曲げ部の45°、90°、135°位置であり、呼称外径は、本例では7.0mmである。なお、ヘアピン曲げ部の45°、90°、135°とは、図1に示すように、継目無管を45°曲げた位置(符号a)、90°曲げた位置(符号b)、135°曲げた位置(符号c)である。
試験した各継目無管の扁平率を求め、扁平率の平均値が15%以下の場合を合格とした。
<引張強さ(σB)、0.2%耐力(σ0.2)、伸び(δ)>
継目無管の引張強さ(σB)、0.2%耐力(σ0.2)、伸び(δ)は、JIS Z 2241に準拠して測定した。
(比較例1)
(1)表1に示す化学成分の銅合金鋳塊を溶解及び鋳造したこと、及び(7)表1に示す保持温度で最終熱処理をしたこと以外は、実施例1と同様の方法で行った。その結果を表1に示す。
(1)表1に示す化学成分の銅合金鋳塊を溶解及び鋳造したこと、及び(7)表1に示す保持温度で最終熱処理をしたこと以外は、実施例1と同様の方法で行った。その結果を表1に示す。
(比較例2)
(1)表1に示す化学成分の銅合金鋳塊を溶解及び鋳造したこと以外は、実施例1と同様の方法で行った。その結果を表1に示す。
(1)表1に示す化学成分の銅合金鋳塊を溶解及び鋳造したこと以外は、実施例1と同様の方法で行った。その結果を表1に示す。
(実施例2)
(1)表1に示す化学成分の銅合金鋳塊を溶解及び鋳造したこと、(4)圧延素管を、冷間にて抽伸を複数回行い、外径12.7mm、内径11.1mmの抽伸素管を得たこと、及び(6)原管を、ボール転造加工して、下記寸法諸元の内面溝付管Bを得たこと以外は、実施例1と同様の方法で行った。その結果を表1に示す。なお、冷間抽伸全体での加工度は、断面減少率で98.0%であり、冷間圧延及び冷間抽伸の総加工度、すなわち、冷間加工の総加工度は、断面減少率で99.9%である。
<内面溝付管Bの寸法諸元>
・外径:7.0mm
・肉厚(図2中、符号t):0.23mm
・フィン高さ(図2中、符号h):0.22mm
・フィン頂角(図2中、符号α):13°
・溝条数:44条
・リード角θ:28°
・内面溝付管の外径(mm)に対する肉厚(mm)の比(t/D):0.033
(1)表1に示す化学成分の銅合金鋳塊を溶解及び鋳造したこと、(4)圧延素管を、冷間にて抽伸を複数回行い、外径12.7mm、内径11.1mmの抽伸素管を得たこと、及び(6)原管を、ボール転造加工して、下記寸法諸元の内面溝付管Bを得たこと以外は、実施例1と同様の方法で行った。その結果を表1に示す。なお、冷間抽伸全体での加工度は、断面減少率で98.0%であり、冷間圧延及び冷間抽伸の総加工度、すなわち、冷間加工の総加工度は、断面減少率で99.9%である。
<内面溝付管Bの寸法諸元>
・外径:7.0mm
・肉厚(図2中、符号t):0.23mm
・フィン高さ(図2中、符号h):0.22mm
・フィン頂角(図2中、符号α):13°
・溝条数:44条
・リード角θ:28°
・内面溝付管の外径(mm)に対する肉厚(mm)の比(t/D):0.033
本発明のレベルワウンドコイルから巻き解かれた継目無管は、強度が高く且つヘアピン曲げを正常に行うことができる銅合金製の継目無管であるので、銅合金製の伝熱管の薄肉化が可能となる。
1 管軸
P 曲げピッチ
t 肉厚(底肉厚)
h フィン高さ
s 内面溝の最も深い位置
α フィン頂角
P 曲げピッチ
t 肉厚(底肉厚)
h フィン高さ
s 内面溝の最も深い位置
α フィン頂角
Claims (6)
- 継目無管が円筒状に整列多層巻きされているレベルワウンドコイルであり、
該レベルワウンドコイルに巻かれている該継目無管の材質が、0.58〜0.72質量%のSn、0.04〜0.15質量%のZr、0.01〜0.10質量%のNi及び0.004〜0.015質量%のPを含有し、残部Cu及び不可避不純物からなる銅合金であり、
該レベルワウンドコイルに巻かれている該継目無管の外径(mm)に対する肉厚(mm)の比(t/D)が0.037以下であり、
該レベルワウンドコイルに巻かれている継目無管の引張強さ(σB)が310MPa以上であり、0.2%耐力(σ0.2)が205MPa以下であり、伸び(δ)が36%以上であること、
を特徴とするレベルワウンドコイル。 - 前記レベルワウンドコイルが、コイル軸を垂直に配置して、前記コイルの円筒状の内面側から前記継目無管が巻き解かれるレベルワウンドコイルであることを特徴とする請求項1記載のレベルワウンドコイル。
- 材質が、0.58〜0.72質量%のSn、0.04〜0.15質量%のZr、0.01〜0.10質量%のNi及び0.004〜0.015質量%のPを含有し、残部Cu及び不可避不純物からなる銅合金であり、外径(mm)に対する肉厚(mm)の比(t/D)が0.037以下であり、引張強さ(σB)が310MPa以上であり、0.2%耐力(σ0.2)が195MPa以下であり、伸び(δ)が38%以上であるレベルワウンドコイル作製用継目無管を、円筒状に整列多層巻きして、レベルワウンドコイルを作製することを特徴とするレベルワウンドコイルの製造方法。
- 材質が、0.58〜0.72質量%のSn、0.04〜0.15質量%のZr、0.01〜0.10質量%のNi及び0.004〜0.015質量%のPを含有し、残部Cu及び不可避不純物からなる銅合金であり、外径(mm)に対する肉厚(mm)の比(t/D)が0.037以下の継目無管を、円筒状に整列多層巻きし、次いで、熱処理を行い、熱処理後の継目無管の引張強さ(σB)が310MPa以上であり、0.2%耐力(σ0.2)が205MPa以下であり、伸び(δ)が36%以上であるレベルワウンドコイルを作製することを特徴とするレベルワウンドコイルの製造方法。
- 請求項1又は2いずれか1項記載のレベルワウンドコイルより巻き解いた継目無管をヘアピン曲げし、アルミニウムフィンに組み付けることにより得られるクロスフィンチューブ型熱交換器。
- 請求項1又は2いずれか1項記載のレベルワウンドコイルより巻き解いた継目無管をヘアピン曲げし、アルミニウムフィンに組み付けて、クロスフィンチューブ型熱交換器を得ることを特徴とするクロスフィンチューブ型熱交換器の製造方法。
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