JP3592149B2 - 内面溝付管 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えば銅又は銅合金からなり、ルームエアコン等に組み込まれ、U字状等に湾曲加工される熱交換器用として好適の内面溝付管に関し、特に、拡管時のフィンの傾斜を防止した内面溝付管に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱交換器はルームエアコン、パッケージエアコン、冷凍ショーケース、冷蔵庫、オイルクーラ及びラジエータ等の種々の分野において利用されている。この熱交換器には、伝熱管として、管内面に溝を形成して熱伝達効率を高めた銅又は銅合金製の内面溝付管が組まれている。即ち、熱交換器においては、プレス加工で製造された複数枚のアルミニウム製フィンプレート(以下、フィンプレートという。)を相互間に適長間隔をおいて平行に配置し、各フィンプレートに設けた孔にヘアピン状にU字形に曲げた内面溝付管を挿入し、その後内面溝付管を拡管することにより、フィンプレートと内面溝付管とを密着させて一体に結合し、組み立てられる。このとき、内面溝付管は、通常マンドレルの先端に内面溝付管の内径より大きい押し広げ工具(以下、ビュレットという。)を取り付け、このビュレットを内面溝付管内に圧入することにより内面溝付管を拡管して内面溝付管とフィンプレートとの密着性を高め、これにより内面溝付管とフィンプレートとを機械的に接合している。
【0003】
このような内面溝付管の製造方法としては、先ず、素管を保持ダイス及び複数個の転圧ボールにより順次縮径加工すると共に、素管内にフローティングプラグとこのフローティングプラグに連結軸を介して相対的に回転可能に連結された溝付プラグとを配置し、管内のフローティングプラグを管肉を介して管外の保持ダイスに係合させて溝付プラグを転圧ボール配設位置に位置させる。そして、転圧ボールを溝プラグの周りに遊星回転させると、素管が溝付プラグに押圧され、素管の内面に溝付プラグの溝形状が転写される。このとき、管の長手方向に直交する断面(管軸直交断面)において、管の内面に転写された溝間に形成されたフィンの山頂部が管の中心方向に向かずにフィンが傾斜する。特に、溝の深さを深くしてフィンの高さが高いハイフィンを形成することにより伝熱性能を高めた内面溝付管においては、溝加工時のフィンの傾斜という現象が顕著におこりやすい。
【0004】
図7は、従来の内面溝付管のフィンの形状を示す模式図である。図7に示すように、管内面に管の長手方向に傾斜する方向に延びる螺旋状の複数の平行溝を形成した内面溝付管1において、管1の管軸直交断面では、図7に示すように、管1の内面の隣接する溝間に形成されているフィン3が管中心Oの方向へ向かずに傾斜している。即ち、管中心Oからフィン3までの距離が最短である点をフィン3の頂点Pとすると、フィン3の頂点Pが延びる方向Cと管1の半径方向Dとがなす角度の差が大きく、一般に頂点Pが延びる方向Cと半径方向Dとがなす角度が20゜を超える。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、フィンの傾斜の増大は、フィンの傾斜により冷媒の流れが阻害されるだけでなく、フィンが傾斜することによりフィンが低くなるためハイフィンの効果がなくなり、伝熱性能を低下させるという問題点がある。
【0006】
また、このようにフィンの傾斜が増大した内面溝付管は、フィン傾斜が増大していない内面溝付管に比べて、内面溝付管の内径が拡大する割合を示す拡管率及び拡管によって内面溝付管の長手方向の長さが縮む割合を示す管収縮率が小さくなる。
【0007】
拡管率の低下は、内面溝付管とフィンプレートとの密着性を低下させ、その結果、内面溝付管とフィンプレートとの間に隙間を生じ、その隙間に空気の層ができることにより伝熱性能が低下してしまうという問題点がある。
【0008】
また、管収縮率の低下は、内面溝付管の管長を不均一にし、リターンベンド挿入性及びろう付け性を低下させる等の拡管後の工程における不具合を生ずるという問題点がある。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、拡管時のフィンの傾斜を抑制することにより、伝熱性能の低下及び拡管後の工程で生じる不具合を防止することができる内面溝付管を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る内面溝付管は、管内面に管軸方向に傾斜する方向に延びる螺旋状の複数の平行溝を形成した内面溝付管において、長手方向に直交する断面にて、前記管内面の隣接する溝間に形成されているフィンの形状が、管中心Oから前記フィンまでの距離が最短である点Pをフィンの頂点とし、管中心Oから第1のフィンの頂点を結ぶ線と、管中心Oから前記第1のフィンに隣接する第2のフィンの頂点を結ぶ線とがなす角度を2等分する直線が前記第1のフィンと前記第2のフィンとの間で前記管内面及び管外面と交差する点を夫々Q及びRとし、管中心Oから前記点Qまでの距離を管内径、前記点Qと点Rとの間の距離を管肉厚としたとき、前記管中心Oを中心とし前記管内径を半径とする仮想円と前記第1のフィンの両端ランド部とが交わる点を結ぶ直線の線分と、前記線分の中点と前記第1のフィンの頂点とを結ぶ線分とがなす角θは70乃至80゜であることを特徴とする。
【0011】
本発明においては、管内径と同一の半径を有する仮想円とフィンの両端ランド部とが交わる点を結ぶ直線の線分と、前記線分の中点とフィンの頂点Pとを結ぶ線分とがなす角θが70乃至80゜と大きく、管内面に形成されているフィンが管内表面に対してほぼ垂直に成形されている。このため、熱交換器を組み立てるときに、内面溝付管は、ヘアピン状に曲げられた後、各フィンプレートに設けた孔に挿入され、拡管されてフィンプレートと密着されるが、拡管方向が異なるため、拡管方向によってフィンの傾斜方向が見かけ上、逆になって、一方側から拡管するとフィンが倒れ、他方側から拡管するとフィンが起きるという現象が起こり、同じ管においてもその拡管方向により拡管率が変化してしまう。しかし、角θが70乃至80゜と大きいと、拡管方向によりフィンが倒れて角θを減少させるか又はフィンが起きて角θを増加させることがない。これにより、拡管後において管内面のフィンの形状がフィンの頂点Pを中心としてほぼ対称な内面溝付管が得られ、冷媒の流れが妨げられずハイフィン効果である高い伝熱性能が保たれる。また角θが90゜に近いため、拡管する方向によっても管の長手方向に対するフィンの形状が変化しないので拡管後の拡管率及び管収縮率が一定となる。拡管率が均等であると、拡管することによる内面溝付管の長手方向における収縮率が均一になることから、フィンプレートと内面溝付管との良好な密着性を得ることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本願発明者等は拡管時のフィンの傾斜を防止する内面溝付管のフィンの形状について鋭意実験研究を重ねた結果、管内面に形成されたフィンの山頂部が管軸直交断面において、管中心Oへ向く方向から傾斜して成形された内面溝付管を拡管するとその拡管方向の違いによりフィンの傾斜角が増大することを見い出した。また、フィンの傾斜角が増大すると、拡管率及び収縮率がその拡管方向によって異なるため、内面溝付管とフィンプレートとの密着性を低下させることを見知した。
【0013】
図1は本発明の実施例に係る内面溝付管のフィンの構造を説明する模式的断面図である。この図1は管軸直交断面である。内面溝付管1の内面には管の長手方向に傾斜する方向に延びる螺旋状の複数の平行に配列された溝2が形成されている。内面溝付管1の内面の隣接する溝2間にフィン3が形成される。この図1において、管中心Oからフィン3までの距離が最短である点Pをフィンの頂点とし、管中心Oからフィン3の頂点Pを結ぶ直線をL1、管中心Oからフィン3に隣接するフィン4の頂点Pを結ぶ直線をL2とし、L1とL2とがなす角度φ1を2等分する直線をL3とする。その直線L3がフィン3とフィン4との間で管内面及び管外面と交差する点を夫々Q及びRとしたとき、管中心Oから点Qまでの距離を管内径R1、管中心Oから点Rまでの距離を管外径R2、点Qと点Rとの間の距離を管肉厚R3とする。このような管1において、半径が管内径R1の仮想円5とフィン3のランド部とが交わる点を夫々ランド部6a及びランド部6bとする。そして、ランド部6aとランド部6bとを結ぶ直線の線分をL4とし、線分L4におけるランド部6aとランド部6bとの中点7と頂点Pとを結ぶ線分をL5としたとき、線分L4と線分L5とがなす角θが70乃至90゜である。
【0014】
以下、線分L4と線分L5とがなす角θを70乃至90゜とする理由について説明する。内面溝付管は、ヘアピン状に曲げられた後、フィンプレートの孔に挿入される。この管の両端部に夫々拡管ビュレットを挿入し、ビュレットにより管を拡管することにより、管とフィンプレートとを密着させる。図2は内面溝付管の拡管前の様子を示す図であって、(a)はヘアピン状に曲げられた内面溝付管を示す模式図、(b)は(a)に示すA端から見た管内のフィンの形状を示す模式図、(c)は(a)に示すB端から見た管内のフィンの形状を示す模式図である。図2に示す内面溝付管の管内面には、図2(a)に示す管の長手方向に傾斜する方向に螺旋状に、且つ管中心Oに対して反時計回りに延びる複数の溝が平行に配列されており、これらの溝間にフィン30が形成されている。
【0015】
この場合に、後述するように、管の内面に溝を転造する際にフィンが直立せずに傾斜してしまう。即ち、図1で定義した線分L4と線分L5とがなす角θは90゜ではなく、管内面でフィン30は一方向に傾斜している。このため、図2(b)に示すように、一方の管端部Aにおいては、管軸直交断面におけるフィン30の線分L4と線分L5とがなす角(図1)θ1は鋭角である。
【0016】
一方、図2(c)に示すように、他方の端部Bにおいては、管軸直交断面においてフィン30の線分L4と線分L5とがなす角θ2はθ2=180゜−θ1であり鈍角である。このため、拡管のために端部A、Bからビュレットを挿入すると、端部Aにおいては、図2(b)に示すように、ビュレットの進行方向に立ち向かうようにフィン30が傾斜しているので、ビュレットを押し込むことによりフィン30を起こす方向にビュレットがフィン30を押圧するため、この拡管工程でフィン30が倒れてしまうことはない。このため、拡管効率が高い。一方、端部Bにおいては、管内にビュレットを押し込もうとすると、端部Aの場合と逆方向にビュレットを進行させることになり、端部Bから挿入したビュレットに対し、フィン30は逃げる方向に傾斜しているので、ビュレットを押し込むと、フィン30を寝かす方向にビュレットがフィン30を押圧する。このため、この拡管工程で、フィン30がより一層倒れてしまう。
【0017】
このように、転造後の内面溝付管のフィン形状は一方向に傾斜しているものであるため、拡管工程において、ビュレットの進行方向に対し鈍角で傾斜しているフィン(図2(c))は大きく倒れ、ビュレットの進行方向に対し鋭角で傾斜しているフィン(図2(b))は倒れず逆に起立する。熱交換器の組み立て工程において、管はU字型に曲げ加工された後、拡管加工を受けるので、常に図2(b)に示す一方的にのみビュレットを通すということができず、必ず図2(c)に示す方向にもビュレットを通す必要がある。従って、従来、拡管工程において、管の半分の部分においてフィンが倒れてしまっている。
【0018】
図3(a)乃至(c)は拡管後の内面溝付管を示す図であって、(a)は(c)に示すB端から拡管した管軸直交断面を示す断面写真をトレースしたものであり、(b)は(c)に示すA端から拡管した拡管後の管軸直交断面を示す断面写真をトレースしたものであり、(c)は、管長手方向の断面図である。図3に示す内面溝付管は、フィンの高さが0.20mm以上であり、山頂角が40゜以下のフィンを観察したものである。
【0019】
図3(c)に示すように、転造後の内面溝付管の内面には相互に平行で、管の長手方向に対してリード角φ2の溝が形成されており、隣り合う溝の間に形成されたフィンは傾斜している。このような内面溝付管は、上述したように、ヘアピン状に曲げた後拡管するため、A端から拡管する場合と、B端から拡管する場合では、フィンの傾斜方向が異なる。
【0020】
図3(b)に示すように、A端から拡管すると、拡管後にフィンの傾斜が小さくなり、フィンが起立する。一方、図3(a)に示すように、B端から拡管すると、拡管後にフィンの傾斜が大きくなる。このように、フィンが傾斜している内面溝付管を拡管すると、拡管方向によりフィンの傾斜方向が異なる。
【0021】
図2及び図3に示すA端から拡管すると、管は正常に拡管されるのに対して、B端から拡管するとフィンの傾斜が大きくなるだけでなく、拡管時のエネルギがフィンを傾斜するためにも消費されるため、拡管率が低下してしまう。従って、フィンの傾斜が大きくなりハイフィン効果を失って、内面溝付管の伝熱性能を低下させるだけでなく、管の拡管率が低下する。これにより、管とフィンプレートとの密着性が低下し、更に伝熱性能が低下する。管が拡管されると管長は収縮するが、拡管率の低下により管長の収縮率も低下し、A端側とB端側とで内面溝付管の長さが不均一なものとなる。これにより、管とフィンとを組み立てた後、管端部を熱交換器の配管に連結する際に作業が困難になる。本願発明者等は、拡管方向によって拡管率が変化せず、拡管後も高い伝熱性能を保つことができる条件として、拡管前の内面溝付管の線分L4と線分L5とがなす角θを70乃至90゜にすれば良いことを見い出した。
【0022】
次に、内面溝付管のフィンが転造加工時に傾斜する現象について説明する。上述した内面溝付管のように、管内面に形成されたフィンが傾斜するのは、溝プラグの溝形状を管に転写する際、フィンが溝プラグから離れ難く(抜け難く)なり、フィンの側面を溝プラグが押すか又は成形されたフィンが溝側面を押すようにして溝の方向に直交する断面において傾斜を生じるためである。
【0023】
図4は内面溝付管の成形時に溝間に形成されたフィンが傾斜する原理を説明する模式図である。図4において、細線で示すのが成形された転造直後の内面溝付管であり、太線で示すのが内面溝付管を成形する溝プラグである。これは、スプリングバックで外径が大きくなっている内面溝付管の管軸直交断面におけるフィン及び溝プラグの様子を示している。なお、紙面裏から表へ向かう方向を管を転造加工するときの抽伸方向とする。
【0024】
図4に示すように、管11内面には管11に挿入された溝プラグ13によりフィン12が成形されており、そのフィン12と溝プラグ13の溝14とが重なっている。ここで、例えば溝プラグ13が右回転しているとすると相対的に管11は左回転となる。転造直後、管11を形成している材料は、転造時の転圧ボールの押しつけによるスプリングバックにより管内径及び管外径が大きくなり管軸直交断面においてその断面積が大きくなる。
【0025】
一方、管の長手方向においては、単位時間当たりに転造加工されるために通過する管の通過長さは常に一定である。しかし、転造直後の管11の材料はスプリングバックにより、管軸直交方向に膨張しているため、転造直後に管が通過する単位時間当たりの長さは転造直下と比較して短くなる、即ち、長手方向に換算した転造直後の管11の抽伸速度が遅くなる。言い換えれば、転造直下の管の抽伸速度はスプリングバックで管内径及び管外径が大きくなった転造直後の抽伸速度より若干速くなる。
【0026】
溝プラグ13と転造後の管11の速度が等しければ溝プラグ13の溝14と管11内面に成形されたフィン12とは位相が合ったまま、管11が引き抜かれていく。しかしながら、フィン12が成形された後の速度、即ち転造後の管11の速度は溝プラグ13の速度より遅いため、溝プラグ13の溝14と成形されたフィン12との位相がずれ、位相のずれたところで溝プラグ13の溝14の左斜辺14aを管内面に成形されたフィン12の左斜辺12aが押圧する。即ち、溝プラグ13の速度より管11の速度の方が遅いためにフィン12の左斜辺12aが溝14の左斜辺14aを押圧することにより溝プラグ13の運動を妨げようとし、フィン12に傾斜を生じる。
【0027】
以上のことから、右回転する溝プラグ14により内面溝付管を転造加工するフィン12の左斜辺12aが溝プラグ14の左斜辺14aを押圧するため、フィン12が右方向に傾く。従って、右回転する溝プラグによりフィンの角θが大きな、即ちフィンが傾斜していない内面溝付管を転造するためには、左に傾斜した溝を有する溝プラグを使用して内面溝付管を成形することができる。
【0028】
【実施例】
以下に、本発明の実施例の効果をその特許請求の範囲から外れる比較例と比較して具体的に説明する。先ず、表1に示す形状の溝を55有する溝プラグ及び管外径が7mm、管肉厚0.25mmの素管を使用して、内面に成形されるフィンの角θが60乃至90゜である内面溝付管を成形した。図5は溝プラグの溝形状を説明する模式的断面図である。図5に示すように、溝プラグ20の左凸部21とその横の右凸部22との間の溝23の溝底部24から左凸部21と右凸部22との頂部を結ぶ直線L6までの距離を溝プラグ20の溝深さhとし、溝23の底部の最も深い部分の半径を溝底半径rとする。また、溝23の溝底部24から直線L6へ下ろした垂線である溝中心線L7と溝23の左斜辺23aの延長線とがなす角を左斜面角度φL、溝中心線L7と溝23の右斜辺23bの延長線とがなす角を右斜面角度φRとし、溝23の山頂角φ3をφ3=φL+φRとする。
【0029】
このような形状の溝プラグの山頂角φ3(=φL+φR)を、表2に示すように、左右斜面角度φL及びφRが左右対称であるものを基本として、3種類6形状使用した。カテゴリAは溝中心線L7と溝23の左斜辺23aとのなす左斜面角度φLを10゜と固定し、溝中心線L7と溝23の右斜辺23bとのなす右斜面角度φRが左斜面角度φLより5゜又は10゜大きい15゜又は20゜とした。逆に、カテゴリBは右斜面角度φRを10゜に固定し、左斜面角度φLを右斜面角度φRより5゜又は10゜大きい15゜又は20゜とした。カテゴリCは山頂角φ3を20゜と固定し、φL−φRを±6゜となるようにした。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
次に、上述の形状の溝プラグを使用して成形した内面溝付管を拡管し、拡管後の内面溝付管について評価した。その評価方法は、先ず、冷媒としてR22を使用して熱交換器における伝熱性能を測定した。図6は、熱交換器を示す模式図である。図6に示すように、プレス加工で製造された複数枚のアルミニウム製フィンプレート41を相互間に適長間隔をおいて平行に配置し、各フィンプレート41に設けた孔にヘアピン状にU字形に曲げた内面溝付管42を挿入し、その後内面溝付管42を拡管することにより、フィンプレート41と内面溝付管42とを密着させて一体に結合し、組み立てた。表3にその測定条件を、表4にその熱交換器条件を示す。測定結果はフィン傾斜のない内面溝付管の伝熱性能を100して比較評価し、95以上を良好とした。次に、2次加工不良発生率を調べた。2次加工不良発生率は、100本のヘアピン当たり、拡管後のリターンベンドの挿入及びろう付け失敗の発生率とし、発生率が5%以下を良好とした。内面溝付管の評価はこれら両者の評価が共に良好なもののみ良好とした。その結果を表5に示す。
【0033】
【表3】
【0034】
【表4】
【0035】
【表5】
【0036】
実施例1乃至4は、拡管前のフィンの角θが本発明範囲内であるため、伝熱性能に優れ、2次加工発生率が低く、判定は良好であった。
【0037】
比較例1乃至3は、拡管前のフィンの角θが本発明範囲外であるため、熱交換器における伝熱性能が不良であった。また、比較例1及び2は実施例1と比較して、内面溝付管を成形するために使用した溝プラグの山頂角が小さいにもかかわらず、伝熱性能及び2次加工不良発生率は実施例1に比べて極めて劣っている。従って、溝プラグの山頂角の角度よりも拡管前のフィンの角θの大きさが内面溝付管の性能に影響することが分かる。
【0038】
【発明の効果】
以上、詳述したように、本発明においては、管内面に管軸方向に傾斜する方向に延びる螺旋状の複数の平行溝を形成した内面溝付管において、管内面の隣接する溝間に形成されたフィンの両端ランド部を結ぶ線分と、その線分の中点とフィンの頂点Pとを結ぶ線分とがなす角θは70乃至90゜と大きいため、拡管方向によって、フィンの山頂部が向く方向の違いが少ないため、ビュレットがあたるフィンの傾斜角がほぼ等しい。従って、内面溝付管の拡管後の拡管率が一定となる。従って、長手方向における管の収縮率が均一になることから、フィンプレートと内面溝付管との良好な密着性を得ることができる。また、拡管後もフィンの傾斜は大きくならないのでフィンの形状がほぼ軸対象となり、冷媒の流れが妨げられずハイフィンの効果が得られ、熱交換器における伝熱性能が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る内面溝付管の形状を説明する模式図である。
【図2】(a)乃至(b)は内面溝付管の拡管前の様子を示す図であって、(a)はヘアピン状に曲げられた内面溝付管を示す模式図、(b)は(a)に示すA端から見た管内のフィンの形状を示す模式図、(c)は(a)に示すB端から見た管内のフィンの形状を示す模式図である。
【図3】(a)乃至(c)は拡管後の内面溝付管を示す図であって、(b)は(c)に示すA端から拡管した拡管後の管軸直交断面を示す断面写真をトレースしたものであり、(a)は(c)に示すB端から拡管した管軸直交断面を示す断面写真をトレースしたものであり、(c)は、管長手方向の断面図である。
【図4】内面溝付管の成形時に溝間のフィンが傾斜する原理を説明する模式的断面図である。
【図5】溝プラグの溝形状を説明する模式的断面図である。
【図6】熱交換器を示す模式図である。
【図7】従来の内面溝付管を示す模式図である。
【符号の説明】
1、11、42;管
2、14;溝
3、4、12、30;フィン
5;仮想円
6a、6b;ランド部
7;中点
13、20;溝プラグ
12a、14a;左斜辺
21;左凸部
22;右凸部
23;溝
24;溝底部
41;フィンプレート
L1、L2、L3、L6;直線
L4、L5;線分
L7;中心線
R1;管内径
R2;管外径
R3;管肉厚
h;溝高さ
φ1;L1とL2とがなす角度
φ2;リード角
φR;右斜面角度
φL;左斜面角度
φ3;山頂角(φL+φR)
O;管中心
P;頂点
Claims (1)
- 管内面に管軸方向に傾斜する方向に延びる螺旋状の複数の平行溝を形成した内面溝付管において、長手方向に直交する断面にて、前記管内面の隣接する溝間に形成されているフィンの形状が、管中心Oから前記フィンまでの距離が最短である点Pをフィンの頂点とし、管中心Oから第1のフィンの頂点を結ぶ線と、管中心Oから前記第1のフィンに隣接する第2のフィンの頂点を結ぶ線とがなす角度を2等分する直線が前記第1のフィンと前記第2のフィンとの間で前記管内面及び管外面と交差する点を夫々Q及びRとし、管中心Oから前記点Qまでの距離を管内径、前記点Qと点Rとの間の距離を管肉厚としたとき、前記管中心Oを中心とし前記管内径を半径とする仮想円と前記第1のフィンの両端ランド部とが交わる点を結ぶ直線の線分と、前記線分の中点と前記第1のフィンの頂点とを結ぶ線分とがなす角θは70乃至80゜であることを特徴とする内面溝付管。
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