JP5354856B2 - 水性ポリウレタン樹脂、水性ポリウレタン樹脂の製造方法およびフィルム - Google Patents
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Description
また、近年、環境負荷の観点から、有機溶剤の使用を低減することが望まれており、溶媒として有機溶剤を使用する有機溶媒系ポリウレタン樹脂から、分散媒として水を使用する水性ポリウレタン樹脂への転換が検討されている。
このような水性ポリウレタン樹脂に、親水性基を導入して、親水性を高くし、得られるフィルムの透湿性を高くすることが知られている。水性ポリウレタン樹脂に導入する親水性基の量を多くすれば、水性ポリウレタン樹脂の親水性、および、フィルムの透湿性は高くなる一方、導入する親水性基の量を多くしすぎると、水性ポリウレタン樹脂のゲル化などを生じ、安定性が低下したり、フィルムの樹脂強度が低くなる。
そのため、導入する親水性基および疎水性基の量を調節して、得られるフィルムが所望の透湿性および安定性などを有するようにする水性ポリウレタン樹脂が、検討されている。
本発明の目的は、安定な水性形態を形成しつつ、親水性および疎水性のバランスがとれ、かつ、得られるフィルムが所望の透湿性、および、良好な安定性を有する、水性ポリウレタン樹脂、その水性ポリウレタン樹脂の製造方法、および、その水性ポリウレタン樹脂より得られるフィルムを提供することにある。
また、本発明の水性ポリウレタン樹脂は、前記鎖伸長剤が、ポリアミンを含み、前記ウレア結合が、前記ポリアミンと前記ポリイソシアネートとの反応によるウレア結合であることが好適である。
また、本発明の水性ポリウレタン樹脂は、前記疎水性マクロポリオールが、その疎水性マクロポリオールを含むポリウレタン樹脂に対して、40重量%以上含まれ、かつ、前記親水性マクロポリオールのポリオキシエチレン基が、その親水性マクロポリオールを含むポリウレタン樹脂に対して、40重量%以上含まれていることが好適である。
また、本発明の水性ポリウレタン樹脂の製造方法は、第1マクロポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させて、第1ウレタンプレポリマーを得て、前記第1ウレタンプレポリマーを水分散する工程、前記第1ウレタンプレポリマーの末端イソシアネート基を、前記末端イソシアネート基に対して当量比が過剰量となる第1鎖伸長剤で伸長する工程、第2マクロポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させて、第2ウレタンプレポリマーを得る工程、前記第2ウレタンプレポリマーを、伸長後の前記第1ウレタンプレポリマーを水分散した水媒体に水分散するとともに、伸長後の前記第1ウレタンプレポリマーと前記第2ウレタンプレポリマーとを前記第1鎖伸長剤で伸長する工程、および、水分散後の前記第2ウレタンプレポリマーの末端イソシアネート基を、第2鎖伸長剤で、伸長する工程を含み、前記第1マクロポリオールおよび前記第2マクロポリオールのうち、いずれか一方が、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールおよびアルキレン基の炭素数が3〜10のポリオキシポリアルキレンポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種の疎水性マクロポリオールであり、他方が、ポリオキシエチレン基を50重量%以上有している親水性マクロポリオールであることを特徴としている。
また、本発明の水性ポリウレタン樹脂の製造方法は、前記第2ウレタンプレポリマーを、伸長後の前記第1ウレタンプレポリマーを水分散した水媒体に水分散する工程において、前記第1ウレタンプレポリマーと、前記第2ウレタンプレポリマーとは、相溶しないことが好適である。
マクロポリオールとしては、例えば、疎水性マクロポリオールや親水性マクロポリオールが挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどの多価アルコールの1種または2種以上と、例えば、マロン酸、マレイン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、酒石酸、ピメリン酸、セバチン酸、シュウ酸、テレフタル酸、イソフタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、ダイマー酸、トリメリット酸などの多価カルボン酸またはその誘導体との反応により生成するポリエステルポリオール、ε―カプロラクトンなどの開環重合により生成するポリエステルポリオールなどが挙げられる。
親水性マクロポリオールとしては、特に制限されないが、例えば、ポリオキシエチレン基を50重量%以上有しているポリオキシアルキレンポリオールが挙げられる。
このようなポリオキシアルキレンポリオールは、低分子量ポリオールを開始剤とし、エチレンオキサイドを50重量%以上含むアルキレンオキサイドの付加反応によって得られるブロック共重合体あるいはランダム共重合体が挙げられる。
このようなポリオキシアルキレンポリオールは、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。好ましくは、ポリエチレングリコールが挙げられ、さらに好ましくは、数平均分子量500〜3000のポリエチレングリコールが挙げられる。
芳香族ジイソシアネートとしては、例えば、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−または2,6−トリレンジイソシアネート、4,4'−トルイジンジイソシアネート、4,4'−ジフェニルエーテルジイソシアネートなどが挙げられる。
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−または2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエートなどが挙げられる。
さらに、ポリイソシアネートの変性体としては、例えば、上記したポリイソシアネートやポリイソシアネートの誘導体と、上述した低分子量ポリオールとを、ポリイソシアネートのイソシアネート基が、ポリオールの水酸基よりも過剰となる当量比で反応させることによって得られる、ポリオール変性体などが挙げられる。
アミン類としては、特に制限されないが、例えば、エチレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサメチレンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、3−イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジアミン)、4,4'−ジシクロヘキシルメタンジアミン、2,5(2,6)−ビス(アミノメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ヒドラジンなどのジアミン類、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなどのポリアミン類、例えば、N−(2−アミノエチル)エタノールアミンなどのアミノアルコールなどが挙げられる。なお、これらアミン類は、単独で用いてもよく、また、2種以上併用してもよい。
また、各ポリウレタン樹脂を自己乳化型のポリウレタン樹脂として調製する場合には、さらに、アニオン性基を有する活性水素基含有化合物を反応させる。
アニオン性基を有する活性水素基含有化合物としては、特に制限されないが、例えば、1つのアニオン性基を有し、かつ、2つ以上の活性水素基を有する化合物が挙げられる。より具体的には、カルボキシル基を有する活性水素基含有化合物として、例えば、2,2−ジメチロール酢酸、2,2−ジメチロール乳酸、2,2−ジメチロールプロピオン酸、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロール酪酸、2,2−ジメチロール吉草酸などのジヒドロキシルカルボン酸、例えば、リジン、アルギニンなどのジアミノカルボン酸などが挙げられる。
本発明の水性ポリウレタン樹脂において、上記したポリウレタン樹脂は、複数含まれている。例えば、2種、または、3種以上のポリウレタン樹脂が含まれており、すなわち、本発明の水性ポリウレタン樹脂は、互いに異なるマクロポリオールを含む複数のポリウレタン樹脂が含まれている。
部分的な化学結合は、上記した鎖伸長剤のポリアミンと、各水性ポリウレタン樹脂のポリイソシアネートとの反応による化学結合であって、具体的には、ポリアミンのアミノ基と、各水性ポリウレタン樹脂のイソシアネート基との反応によるウレア結合である。
この方法では、まず、疎水性マクロポリオールと、上記したポリイソシアネートとを反応して、疎水性ウレタンプレポリマーを得る。
バルク重合では、例えば、窒素気流下において、ポリイソシアネートを撹拌し、これに疎水性マクロポリオールおよび必要によりアニオン性基を有する活性水素基含有化合物を加え、反応温度75〜85℃で、1〜10時間反応させる。
なお、反応溶媒としては、活性水素基およびイソシアネート基に対して不活性であり、かつ、除去が容易な低沸点溶媒が用いられ、そのような反応溶媒として、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、アセトニトリルなどが挙げられる。
反応触媒としては、スズ系触媒や、アミン系触媒などが挙げられる。
次いで、この方法では、得られた疎水性ウレタンプレポリマーを、水分散する。
また、この反応において、自己乳化させる場合には、中和剤を用いて、pH調整する。
疎水性ウレタンプレポリマーの末端イソシアネート基を、部分的に鎖伸長するには、上記した鎖伸長剤の中でも、好ましくは、ジアミン類(例えば、イソホロンジアミンなど)などの疎水性の鎖伸長剤が用いられる。
なお、上記した部分的な鎖伸長により、疎水性マクロポリオールを含む疎水性ポリウレタン樹脂が得られる。
親水性ウレタンプレポリマーを得るには、例えば、親水性マクロポリオールと、上記したポリイソシアネートと、必要(自己乳化させる場合)により、上記したアニオン性基を有する活性水素基含有化合物とを、活性水素基に対するイソシアネート基の当量比(NCO/活性水素基)が、1を超える値、好ましくは、1.02〜20、さらに好ましくは、1.1〜4となる割合において、配合して、例えば、バルク重合や溶液重合など、公知の反応(重合)方法により、反応させる。
また、この反応においては、好ましくは、親水性マクロポリオールのポリオキシエチレン基が、親水性ポリウレタン樹脂(固形分)に対して、40重量%以上、さらには、50重量%以上含まれるように、上記した成分を配合する。
バルク重合や溶液重合では、上記と同様の方法および条件により、反応させることができる。
また、疎水性ポリウレタン樹脂と親水性ウレタンプレポリマーとの配合割合は、その目的および用途により、疎水性および親水性のバランスを考慮して適宜選択されるが、例えば、疎水性ポリウレタン樹脂100重量部に対して、親水性ウレタンプレポリマーが、10〜2000重量部、好ましくは、30〜1000重量部である。
次いで、この方法では、水分散後において、親水性ウレタンプレポリマーの末端イソシアネート基を、鎖伸長剤(第2鎖伸長剤)で鎖伸長するとともに、疎水性ポリウレタン樹脂の残余の末端イソシアネート基と、親水性ウレタンプレポリマーの末端イソシアネート基とを、鎖伸長剤(第2鎖伸長剤)を介して、互いに化学結合させる。
具体的には、上記した水分散液を攪拌しながら、鎖伸長剤を滴下して配合し、その後、1〜5時間攪拌混合する。
鎖伸長剤(第2鎖伸長剤)の配合割合は、例えば、疎水性ポリウレタン樹脂の残余の末端イソシアネート基および親水性ウレタンプレポリマーの末端イソシアネート基の合計に対する鎖伸長剤のアミノ基の当量比(アミノ基/イソシアネート基)で、0.4〜1.2、好ましくは、0.8〜1.0とする。
また、この場合において、上記した鎖伸長とともに、疎水性ポリウレタン樹脂の残余の末端イソシアネート基と、親水性ウレタンプレポリマーの末端イソシアネート基とを、鎖伸長剤を介して、互いに化学結合させるので、水性ポリウレタン樹脂の安定性を高めることができる。
なお、上記の説明では、まず、疎水性ウレタンプレポリマーを調製し、これを水分散させ、次いで、第1鎖伸長剤を配合して、疎水性ウレタンプレポリマーの末端イソシアネート基を、部分的に鎖伸長した後、親水性ウレタンプレポリマーを混合して水分散させ、第2鎖伸長剤を配合して、親水性ウレタンプレポリマーの末端イソシアネート基を鎖伸長するとともに、疎水性ポリウレタン樹脂の残余の末端イソシアネート基と、親水性ウレタンプレポリマーの末端イソシアネート基とを互いに化学結合させたが、これとは逆に、まず、親水性ウレタンプレポリマーを調製し、これを水分散させ、次いで、第1鎖伸長剤を配合して、親水性ウレタンプレポリマーの末端イソシアネート基を、部分的に鎖伸長した後、疎水性ウレタンプレポリマーを混合して水分散させ、第2鎖伸長剤を配合して、疎水性ウレタンプレポリマーの末端イソシアネート基を鎖伸長するとともに、親水性ポリウレタン樹脂の残余の末端イソシアネート基と、疎水性ウレタンプレポリマーの末端イソシアネート基とを互いに化学結合させてもよい。
次に、本発明の水性ポリウレタン樹脂の製造方法について、疎水性ポリウレタン樹脂と親水性ポリウレタン樹脂とが、鎖伸長剤を介して互いに部分的に化学結合している水性ポリウレタン樹脂の第2の製造方法を例示して説明する。
この方法では、まず、疎水性マクロポリオールと、上記したポリイソシアネートとを反応して、上記した第1の製造方法と同様にして、疎水性ウレタンプレポリマーを得る。
次いで、この方法では、疎水性ウレタンプレポリマーの末端イソシアネート基を、その末端イソシアネート基に対して当量比が過剰量となる鎖伸長剤(第1鎖伸長剤)で、鎖伸長する。
次いで、この方法では、伸長後の疎水性ウレタンプレポリマー、つまり、上記したように、過剰量となる鎖伸長剤(第1鎖伸長剤)で鎖伸長され、かつ、末端アミノ基を有している疎水性ポリウレタン樹脂中(疎水性ポリウレタン樹脂を水分散した水媒体)に、親水性ウレタンプレポリマーを混合することにより、水分散する。
疎水性ポリウレタン樹脂と親水性ウレタンプレポリマーとの配合割合は、その目的および用途により、疎水性および親水性のバランスを考慮して適宜選択されるが、例えば、疎水性ポリウレタン樹脂100重量部に対して、親水性ウレタンプレポリマーが、10〜2000重量部、好ましくは、30〜1000重量部である。
次いで、この方法では、水分散後において、親水性ウレタンプレポリマーの残余の末端イソシアネート基を、鎖伸長剤(第2鎖伸長剤)で鎖伸長する。
親水性ウレタンプレポリマーの末端イソシアネート基を、鎖伸長するための鎖伸長剤(第2鎖伸長剤)は、上記した鎖伸長剤のうち、好ましくは、第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有するアルコキシシリル化合物(例えば、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシランなど)、ポリオキシエチレン基含有ポリアミン(例えば、EDR−148(上記構造式(3)相当、ハンツマン社製)、PEG#1000ジアミン(上記構造式(1)相当、日本油脂社製))など)などの親水性の鎖伸長剤が用いられる。
具体的には、上記した水分散液を攪拌しながら、鎖伸長剤を滴下して配合し、その後、1〜5時間攪拌混合する。第1級アミノ基および第2級アミノ基を1分子内に有するポリアミンを用いる場合には、第2級アミノ基が第1級アミノ基と比べ反応性が低いので、攪拌混合する際、好ましくは、40〜60℃に加熱する。
これによって、親水性ウレタンプレポリマーの残余の末端イソシアネート基が鎖伸長剤(第2鎖伸長剤)と反応して、親水性ウレタン樹脂が得られるとともに、水分散液中に、得られた親水性ウレタン樹脂と疎水性ポリウレタン樹脂とが、それぞれ独立したブロックとなって水分散され、かつ、それらが、鎖伸長剤(第1鎖伸長剤)を介して互いに部分的に化学結合されることにより、本発明の水性ポリウレタン樹脂が得られる。
また、この場合において、上記した水分散とともに、疎水性ポリウレタン樹脂の末端アミノ基と、親水性ウレタンプレポリマーの末端イソシアネート基とを、互いに、部分的に化学結合させるので、水性ポリウレタン樹脂の安定性を高めることができる。
なお、上記の説明では、まず、疎水性ウレタンプレポリマーを調製し、これを水分散させ、次いで、過剰量となる鎖伸長剤(第1鎖伸長剤)を配合して、疎水性ウレタンプレポリマーの末端イソシアネート基を鎖伸長した後、親水性ウレタンプレポリマーを混合して、疎水性ウレタンプレポリマーと親水性ウレタンプレポリマーとを鎖伸長剤(第1鎖伸長剤)で伸長して互いに化学結合させ、これらを水分散させ、次いで、鎖伸長剤(第2鎖伸長剤)を配合して、親水性ウレタンプレポリマーの残余の末端イソシアネート基を鎖伸長したが、これとは逆に、まず、親水性ウレタンプレポリマーを調製し、これを水分散させ、次いで、過剰量となる鎖伸長剤(第1鎖伸長剤)を配合して、親水性ウレタンプレポリマーの末端イソシアネート基を鎖伸長した後、疎水性ウレタンプレポリマーを混合して、親水性ウレタンプレポリマーと疎水性ウレタンプレポリマーとを鎖伸長剤(第1鎖伸長剤)で伸長して互いに化学結合させ、これらを水分散させ、次いで、鎖伸長剤(第2鎖伸長剤)を配合して、疎水性ウレタンプレポリマーの残余の末端イソシアネート基を鎖伸長してもよい。
そして、本発明のフィルムは、上記により得られた本発明の水性ポリウレタン樹脂を、キャスティングまたはコーティングすることにより得ることができる。
水性ポリウレタン樹脂のキャスティングまたはコーティングは、公知のキャスティング法またはコーティング法が用いられる。具体的には、ラミネート法、ダイレクトコート法などが用いられ、適宜その目的および用途によって選択される。
基布としては、例えば、ポリエステル、ナイロン、綿などの繊維からなる織物、編物、不織布などが挙げられる。
そして、このようなキャスティングにより、基布の表面が水性ポリウレタン樹脂からなる透湿防水性を有する被膜からなる皮膜が形成され、この皮膜からなるフィルムを用いれば、透湿防水性を有するフィルムを得ることができる。
そして、このようなコーティングにより、基布の表面が水性ポリウレタン樹脂からなる透湿防水性を有する被膜によって被覆され、これによって基布の表面が透湿防水加工される。
なお、上記の水性ポリウレタン樹脂では、例えば、疎水性ウレタンプレポリマーを、キャスティングまたはコーティングして、硬化剤により硬化したときのフィルム(例えば、幅10mm、厚さ0.1mm)の機械強度として、引張り強度が、例えば、3MPa以上、好ましくは、4MPa以上、さらに好ましくは、6MPa以上であり、伸び率が、例えば、200%以上、好ましくは、300%以上、さらに好ましくは、400%以上であり、親水性としては、水膨潤率が、例えば、30%以下、好ましくは、26%以下、さらに好ましくは、22%以下であることが好適である。
合成例1
(疎水性ウレタンプレポリマーの調製)
還流冷却管、窒素導入管、温度計、攪拌機を備えた4つ口フラスコ中に、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(商品名デスモジュールW、バイエル社製)183gと、数平均分子量2000のポリオキシテトラメチレングリコール(商品名PTG−2000SN、保土ヶ谷化学社製)500gと、ジメチロールプロピオン酸(商品名:ニッカマーPA、日本化成社製)33.5gと、アセトニトリル318gとを仕込み、窒素雰囲気下で、反応液温度を75〜78℃に調節して、反応触媒としてオクチル酸第1錫(商品名:スタノクト、(株)APIコーポレーション製)を微量加え、5時間で反応率99%以上まで反応させた。次いで、これを40℃まで冷却し、トリエチルアミン23gを加えて、十分に撹拌して中和し、分子末端にイソシアネート基を有する疎水性ウレタンプレポリマーを得た。
(疎水性ウレタンプレポリマーの調製)
下記の表1の配合処方に基づいて、合成例1と同様の方法により、疎水性ウレタンプレポリマーを得た。なお、合成例3においては、反応液温度を53〜55℃に調節して、反応した。
H12MDI:4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、商品名デスモジュールW、バイエル社製
H6XDI:1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、商品名タケネート600、三井武田ケミカル社製
PTG−1:数平均分子量2000のポリオキシテトラメチレングリコール、商品名PTG−2000SN、保土ヶ谷化学社製
PC−1:数平均分子量2000のポリカーボネートポリオール、商品名UH−200、宇部興産社製
Ester−1:数平均分子量2000のポリエステルポリオール、商品名タケラックU−5620、三井武田ケミカル社製
DMPA:ジメチロールプロピオン酸、商品名ニッカマーPA、日本化成社製
DMBA:ジメチロールブタン酸,商品名ニッカマーBA,日本化成社製
TEA:トリエチルアミン
合成例5
(親水性ウレタンプレポリマーの調製)
還流冷却管、窒素導入管、温度計、攪拌機を備えた4つ口フラスコ中に、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(商品名デスモジュールW、バイエル社製)170gと、数平均分子量1000のポリエチレングリコール(丸善ケミカル社製)333gと、ジメチロールプロピオン酸(商品名:ニッカマーPA、日本化成社製)22.3gと、アセトニトリル233gとを仕込み、窒素雰囲気下で、反応液温度を75〜78℃に調節して、反応触媒としてオクチル酸第1錫(商品名:スタノクト、(株)APIコーポレーション製)を微量加え、6時間で反応率99%以上まで反応させた。次いで、これを40℃まで冷却し、トリエチルアミン17gを加えて、十分に撹拌して中和し、分子末端にイソシアネート基を有する親水性ウレタンプレポリマーを得た。なお、この親水性ウレタンプレポリマーは、ポリオキシエチレン基を、親水性ウレタンプレポリマー(固形分)に対して、61重量%を有している。
(親水性ウレタンプレポリマーの調製)
下記の表2の配合処方に基づいて、合成例1と同様の方法により、親水性ウレタンプレポリマーを得た。なお、この親水性ウレタンプレポリマーは、ポリオキシエチレン基を、親水性ウレタンプレポリマー(固形分)に対して、62重量%を有している。
PEG1000:数平均分子量1000のポリエチレングリコール、丸善ケミカル社製
DMEA:ジメチルエタノールアミン
合成例7
(水性ポリウレタン樹脂の調製)
高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水350gを添加して、25℃に調整して、2000(1/min)で、攪拌混合しながら、予め30℃まで冷却した、合成例1で得られた疎水性ウレタンプレポリマー205gを添加して、水分散した。次いで、イソホロンジアミン(デグサ−ヒュルス社製)5.2g(合成例1の疎水性ウレタンプレポリマーの末端イソシアネート基に対する、当量比で、0.80に相当。)と、ポリオキシエチレン基含有ポリアミン(ジェファーミンEDR−148、ハンツマン社製)1.1gを加え、3時間攪拌した。その後、減圧下で、アセトニトリルおよび水の一部を除去することにより、水性ポリウレタン樹脂を調製した。
(水性ポリウレタン樹脂の調製)
下記の表3の配合処方に基づいて、合成例7と同様の方法により、水性ポリウレタン樹脂を調製した。
IPDA:イソホロンジアミン、デグサ−ヒュルス社製
EDR148:分子量148のポリオキシアルキレンジアミン、商品名、ジェファーミンEDR−148、ハンツマン社製
PEG#1000ジアミン:数平均分子量1000のポリオキシエチレンジアミン、日本油脂社製
KBM602:N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン(アミン価544)、信越化学工業社製
実施例1
(水性ポリウレタン樹脂の調製)
高速攪拌可能なホモディスパーを備えた反応容器に、水750gを添加して、25℃に調整して、2000(1/min)で、攪拌混合しながら、予め30℃まで冷却した、合成例1で得られた疎水性ウレタンプレポリマー205gを添加して、水分散した。次いで、イソホロンジアミン(デグサ−ヒュルス社製)5.2g(合成例1の疎水性ウレタンプレポリマーの末端イソシアネート基に対して、当量比で、0.80に相当。)を加え、3分間攪拌した。
(水性ポリウレタン樹脂の調製)
表4に示す、処方に基づいて、実施例1と同様の操作により、水性ポリウレタン樹脂を調製した。
実施例8
(水性ポリウレタン樹脂の調製)
表4に示す、処方に基づいて、実施例1と同様の操作により、水性ポリウレタン樹脂を調製した。なお、3時間攪拌混合を、45℃に加熱して実施した。
アミノアルコールEA:N−(2−アミノエチル)エタノールアミン(日本乳化剤社製)
比較例1
(水性ポリウレタン樹脂の調製)
合成例7の水性ポリウレタン樹脂50gと、合成例9の水性ポリウレタン樹脂50gとを混合して攪拌し、水性ポリウレタン樹脂を調製した。
下記の表6の配合処方に基づいて、比較例1と同様の方法により、水性ポリウレタン樹脂を調製した。
1)水膨潤性試験
各実施例および各比較例の水性ポリウレタン樹脂を、キャスティングして、膜厚0.1mmの乾燥透明被膜を形成した。その後、この被膜を10cm×10cmに切断加工してサンプルとした。
2)膜強度測定
水膨潤性試験と同様の操作で、6cm×1cmに切断加工した被膜をサンプルとし、このサンプルをクロスヘッドスピード300mm/minで引張り、強度を測定した。その結果を、表5および表6に示す。
各実施例および各比較例の水性ポリウレタン樹脂を、キャスティングして、膜厚0.02mmの乾燥透明被膜を形成した。その後、この被膜を、JIS L1099−A1法に準拠して透湿性を評価した。その結果を、表5および表6に示す。
4)貯蔵安定性
透明瓶に各実施例および各比較例の水性ポリウレタン樹脂を入れ、25℃の状態に保った。この水性ポリウレタン樹脂の流動性および外観を、目視により確認した。その結果を、表5および表6に示す。なお、表中、「○」は、流動性が良好な状態を示し、「×」は、流動性が不良であり、ゲル化したり、水性ポリウレタン樹脂が分離した状態を示す。
各実施例および各比較例の水性ポリウレタン樹脂の粒子径を、粒子径測定装置(N4 Plus Submicron Particle Sizer、COULTER社製)により測定した。その結果を、表5および表6に示す。
表5および表6から明らかなように、実施例1〜8で得られた水性ポリウレタン樹脂は、比較例1〜3で得られた水性ポリウレタン樹脂よりも、良好な貯蔵安定性を有している。
また、本発明の水性ポリウレタン樹脂の製造方法は、安定な水性形態を形成しつつ、親水性および疎水性のバランスがとれた水性ポリウレタン樹脂の製造に用いられる。
また、本発明のフィルムは、衣料の透湿防水素材としてフィルム用途や加工用途に用いられる。
Claims (11)
- マクロポリオールと、ポリイソシアネートと、鎖伸長剤とを反応して得られた疎水性ポリウレタン樹脂および親水性ポリウレタン樹脂を含み、
前記鎖伸長剤は、疎水性の鎖伸長剤および親水性の鎖伸長剤を含み、
前記疎水性ポリウレタン樹脂は、前記疎水性の鎖伸長剤で鎖伸長されており、
前記親水性ポリウレタン樹脂は、前記親水性の鎖伸長剤で鎖伸長されており、
前記疎水性ポリウレタン樹脂と前記親水性ポリウレタン樹脂とは、前記疎水性の鎖伸長剤または前記親水性の鎖伸長剤を介して、互いに、部分的に化学結合しており、
前記疎水性ポリウレタン樹脂のマクロポリオールが、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールおよびアルキレン基の炭素数が3〜10のポリオキシポリアルキレンポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種の疎水性マクロポリオールを含み、かつ、
前記親水性ポリウレタン樹脂のマクロポリオールが、ポリオキシエチレン基を50重量%以上有している親水性マクロポリオールを含み、
前記親水性の鎖伸長剤は、
ポリオキシエチレン基含有ポリアミン、および/または、
第1級アミノ基、または、第1級アミノ基および第2級アミノ基を有しているアルコキシシリル化合物であり、
前記疎水性の鎖伸長剤は、前記親水性の鎖伸長剤より疎水性のジアミン類であることを特徴とする水性ポリウレタン樹脂。 - 前記化学結合が、ウレア結合であることを特徴とする、請求項1に記載の水性ポリウレタン樹脂。
- 前記鎖伸長剤が、ポリアミンを含み、
前記ウレア結合が、前記ポリアミンと前記ポリイソシアネートとの反応によるウレア結合であることを特徴とする、請求項2に記載の水性ポリウレタン樹脂。 - 前記水性ポリウレタン樹脂中のポリオキシエチレン基が、20重量%以上含まれていることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の水性ポリウレタン樹脂。
- 前記疎水性マクロポリオールが、その疎水性マクロポリオールを含むポリウレタン樹脂に対して、40重量%以上含まれ、かつ、
前記親水性マクロポリオールのポリオキシエチレン基が、その親水性マクロポリオールを含むポリウレタン樹脂に対して、40重量%以上含まれていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の水性ポリウレタン樹脂。 - 第1マクロポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させて、第1ウレタンプレポリマーを得て、前記第1ウレタンプレポリマーを水分散する工程、
前記第1ウレタンプレポリマーの末端イソシアネート基を、第1鎖伸長剤で、部分的に伸長する工程、
第2マクロポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させて、第2ウレタンプレポリマーを得る工程、
前記第2ウレタンプレポリマーを、伸長後の前記第1ウレタンプレポリマーを水分散した水媒体に水分散する工程、および、
伸長後の前記第1ウレタンプレポリマーの残余の末端イソシアネート基と、水分散後の前記第2ウレタンプレポリマーの末端イソシアネート基とを、第2鎖伸長剤で、伸長する工程を含み、
前記第1マクロポリオールおよび前記第2マクロポリオールのうち、いずれか一方が、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールおよびアルキレン基の炭素数が3〜10のポリオキシポリアルキレンポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種の疎水性マクロポリオールであり、
他方が、ポリオキシエチレン基を50重量%以上有している親水性マクロポリオールであることを特徴とする、水性ポリウレタン樹脂の製造方法。 - 前記第1ウレタンプレポリマーの末端イソシアネート基を部分的に伸長する前記第1鎖伸長剤の、前記第1ウレタンプレポリマーの末端イソシアネート基に対する当量比が、0.20〜0.98であることを特徴とする、請求項6に記載の水性ポリウレタン樹脂の製造方法。
- 第1マクロポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させて、第1ウレタンプレポリマーを得て、前記第1ウレタンプレポリマーを水分散する工程、
前記第1ウレタンプレポリマーの末端イソシアネート基を、前記末端イソシアネート基に対して当量比が過剰量となる第1鎖伸長剤で伸長する工程、
第2マクロポリオールと、ポリイソシアネートとを反応させて、第2ウレタンプレポリマーを得る工程、
前記第2ウレタンプレポリマーを、伸長後の前記第1ウレタンプレポリマーを水分散した水媒体に水分散するとともに、伸長後の前記第1ウレタンプレポリマーと前記第2ウレタンプレポリマーとを前記第1鎖伸長剤で伸長する工程、および、
水分散後の前記第2ウレタンプレポリマーの末端イソシアネート基を、第2鎖伸長剤で、伸長する工程を含み、
前記第1マクロポリオールおよび前記第2マクロポリオールのうち、いずれか一方が、ポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオールおよびアルキレン基の炭素数が3〜10のポリオキシポリアルキレンポリオールからなる群から選ばれる少なくとも1種の疎水性マクロポリオールであり、
他方が、ポリオキシエチレン基を50重量%以上有している親水性マクロポリオールであることを特徴とする、水性ポリウレタン樹脂の製造方法。 - 過剰量となる前記第1鎖伸長剤の、前記第1ウレタンプレポリマーの末端イソシアネート基に対する当量比が、1.02〜1.80であることを特徴とする、請求項8に記載の水性ポリウレタン樹脂の製造方法。
- 前記第2ウレタンプレポリマーを、伸長後の前記第1ウレタンプレポリマーを水分散した水媒体に水分散する工程において、前記第1ウレタンプレポリマーと、前記第2ウレタンプレポリマーとは、相溶しないことを特徴とする、請求項6〜9のいずれかに記載の水性ポリウレタン樹脂の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の前記水性ポリウレタン樹脂を、キャスティングまたはコーティングすることにより得られることを特徴とする、フィルム。
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