以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る計測装置を含むガス供給システムの構成図である。ガス供給システム1は、各ガス器具10に燃料ガスを供給するものであって、複数のガス器具10と、ガス供給元の調整器20と、配管31,32と、ガスメータ(計測装置)40とを備えている。なお、図1に示す例では、ガスメータ40を計測装置の一例として挙げるが、計測装置はガスメータ40に限らず、ガス流量を計測する他の装置であってもよい。
調整器20は上流からの燃料ガスを所定圧力に調整して第1配管31に流すものである。第1配管31は、調整器20とガスメータ40とを接続するものである。第2配管32はガスメータ40とガス器具10とを接続する配管である。ガスメータ40は、燃料ガスの流量を計測して積算流量を表示するものである。このようなガス供給システム1では、ガスメータ40内に第1配管31及び第2配管32とつながる流路が形成されており、調整器20を通じて流れてきた燃料ガスは第1配管31からガスメータ40、及び第2配管32を通じてガス器具10に到達し、ガス器具10において燃焼されることとなる。
また、ガス器具10は、概略的に、遮断弁12、ガバナ13、及びバーナー14を備えている。遮断弁12は、ガス器具10に設けられた弁である。ガバナ13は、ガバナ内弁13aを有し、ガス器具10のバーナー14に供給するガスの圧力をガバナ内弁13aの開度によって調整するものである。圧力調整された燃料ガスはガバナ13の先端のノズル13bを通じてバーナー14に至り、燃焼することとなる。なお、ガス器具10は、全てがガバナ13を有しているわけでなく、ガスコンロなどのようにガバナ13を有さないものもある。
図2は、図1に示したガバナ13の一例を示す側方断面図である。なお、図2では、ガバナ13の一例を示すに過ぎず、ガバナ13の構成は図2に示すものに限られない。また、図2に示すガバナ13については図1に示したノズル13bを省略して図示する。
図2に示すようにガバナ13は、外壁13cとガバナキャップ13dとによって形成される内部空間の一部をガス流路として用いるものである。このようなガバナ13は、ガバナ内弁13aに加えて、内部空間に、ダイヤフラム13e、調整スプリング13f、及び調整ネジ13gを備えている。
ダイヤフラム13eは、ガバナ13の内部空間を仕切る膜状の部材である。このダイヤフラム13eには、一方側(流路側)にガバナ内弁13aが取り付けられている。また、ダイヤフラム13eの他方側(流路として機能しない側)に調整スプリング13fが取り付けられている。調整スプリング13fは、一端にダイヤフラム13eが取り付けられ、他端に調整ネジ13gが取り付けられている。調整ネジ13gは、ねじ切り溝が形成されたガバナ13の内壁に固定される構造となっており、ねじ切り溝との固定位置を変化させることで調整スプリング13fの圧縮率を変更可能となっている。また、調整ネジ13gは外部にむき出しとなっておらず、ガバナキャップ13dによって覆われた構造となっている。
また、ガバナ13の外壁13cには、ダイヤフラム13eの他方側に通じる空気孔13hが形成されている。このため、ダイヤフラム13eの他方側は空気圧となっている。さらに、図2に示す例においてガバナ内弁13aは半球形状となっており、上下動によって通過口13iの開口割合を制御可能となっている。
このようなガバナ13では、ガス入側のガス圧が高くなると、ダイヤフラム13eが上へ押し上げられ、同時にダイヤフラム13eに取り付けられているガバナ内弁13aも上に引き上げられる。これにより、通過口13iの開口割合が小さくなって、ガス流量が減少する。一方、ガス入側のガス圧が低くなると、ダイヤフラム13eが下がり、同時にダイヤフラム13eに取り付けられているガバナ内弁13aも下がる。これにより、通過口13iの開口割合が大きくなって、ガス流量が増大する。このように、ガバナ13は上流側の圧力の変動に対して下流側の流量を一定に保つことで、下流側の圧力を調整することとなる。
図3は、本発明の実施形態に係るガスメータ40の構成図である。同図に示すガスメータ40は、流量センサ41と、圧力センサ42と、マイコン(マイコン部)47と、駆動回路48とを備えている。
流量センサ41は、ガスメータ40内の流路に設置され、流路内のガス流量に応じた電気信号を出力するためのものである。本実施形態に係るガスメータ40が超音波式のガスメータである場合、流量センサ41は、流路内に一定距離だけ離れて配置された例えば圧電式振動子からなる2つの音響トランスジューサによって構成される。また、本実施形態に係るガスメータ40がフローセンサなどの熱式センサを搭載したガスメータである場合、温度分布をつくり出すヒータと、その温度分布に応じた信号を発生させるサーモパイル等によって構成される。
圧力センサ42は、ガスメータ40内の流路内に存在するガスのガス圧を検出するためのものである。なお、圧力センサ42は、ガスメータ40内の流路に限らず、可能であればガスメータ40の外部に存在する第1配管31内や第2配管32内に設置されていてもよい。同様に、流量センサ41についても設置箇所については変更可能である。
なお、本実施形態では、図3において流量センサ41及び圧力センサ42からの信号が直接マイコン47に入力されているが、場合によっては増幅器等の他の要素が両者間に追加されていてもよい。
マイコン47は、ガスメータ40の全体を制御するものであり、流量の積算制御、表示制御、遮断弁の遮断制御等を行うものである。また、本実施形態においてマイコン47は、簡易計測モードと、正規計測モードと、高速計測モードとの3つの計測モードにおいて、第1〜第3処理をそれぞれ実行するようになっている。すなわち、マイコン47は、簡易計測モード時において第2処理を実行し、正規計測モードにおいて第1処理と第2処理とを並行して実行し、高速計測モードにおいて第3処理を実行する。
駆動回路48は、流量センサ41及び圧力センサ42の駆動を制御するものであり、簡易計測モード駆動回路48aと、高速計測モード駆動回路48bと、正規計測モード駆動回路48cとを備えている。これらの駆動回路48a〜48cは、上記した3つの各計測モードに対応している。従って、ガスメータ40を簡易計測モードで駆動させたい場合(すなわち第2処理を実行したい場合)には、簡易計測モード駆動回路48aが機能し、高速計測モードで駆動させたい場合(すなわち第3処理を実行したい場合)には、高速計測モード駆動回路48bが機能する。また、ガスメータ40を正規計測モードで駆動させたい場合(すなわち第1処理及び第2処理を並行して実行したい場合)には、正規計測モード駆動回路48cが機能する。
ここで、第1〜第3処理について説明する。第1処理とは、流量センサ41から出力される電気信号に基づいて第1所定時間(約2秒)毎に流路内のガス流量を計測する処理である。この第1処理は上記したように正規計測モードにおいて実行される。従って、正規計測モードにおいてガスメータ40はガス流量に応じてメータ本体に表示される積算流量の値を増加させていくこととなる。
また、第2処理とは、流量センサ41からの電気信号に基づいて流路内のガス流量が変化したことを判断する処理である。流路内のガス流量が変化したことを判断する判断間隔は、第2所定時間(0.1秒)毎であって、第1所定時間(2秒)よりも短い間隔となる。この第2処理は上記したように正規計測モード及び簡易計測モードにおいて実行される。なお、簡易計測モードでは、必要に応じてガス圧を検出するようになっていてもよい。
第3処理とは、第3所定時間(1ms)毎にガス流量及びガス圧の少なくとも一方を検出して、ガス流路下流側に設置されたガス器具10の使用を判断すると共に、ガス漏れが発生しているか否かを判断する処理である。この第3処理は、高速計測モードにおいて実行される。この処理においてガスメータ40は、ガス圧の変化波形をとらえて、波形の周波数や振幅から、ガス流路下流側に設置されたガス器具10の使用を判断すると共に、ガス漏れが発生しているか否かを判断することとなる。なお、ガス圧の変化とガス流量の変化とは相関関係がある。このため、第3処理においては、1msに1回の計測間隔でガス流量を計測してもよいし、1msに1回の計測間隔でガス圧とガス流量との双方を計測してもよい。また、第3処理は上記したように高速計測モードにおいて実行される。
以上のようなガス供給システム1において、ガスメータ40は以下のようにモード移行する。図4は、本実施形態に係るガスメータ40のモード移行の概略を示す状態遷移図である。図4に示すように、まず、ガスが使用されていない場合、ガスメータ40は簡易計測モードとなる。このとき、マイコン47は、第2処理を実行する。
その後、簡易計測モードにおいて流量が変化したと判断されたとする(S1)。このとき、マイコン47は、簡易計測モードから高速計測モードに移行するためのトリガ信号を発生させる。そして、駆動回路48はトリガ信号を入力して高速計測モード駆動回路48bを機能させる。これにより、ガスメータ40は、高速計測モードに移行する。
また、ガスメータ40は、高速計測モードに移行すると、第3処理を実行して、ガバナ付きガス器具10の使用、ガバナ無しガス器具10の使用、ガス漏れのいずれかの状態に該当するか否かを判断する。
また、ガスメータ40は、高速計測モードにおいて圧力の計測を特定時間(例えば2秒間)だけ行う。そして、特定時間経過後、マイコン47は、高速計測モードから正規計測モードに移行させるためのトリガ信号を発生させる。これにより、駆動回路48は正規計測モード駆動回路48cを機能させて、ガスメータ40を正規計測モードに移行させる(S2)。
なお、高速計測モードにおいてガス漏れが発生していると判断した場合、ガスメータ40は、遮断弁を動作させて流路を閉じ、ガス漏れの防止を図ることとなる。また、高速計測モードにおいて、特別な場合には特定時間経過後であっても高速計測モードを継続させる(S3)。ここで、特別な場合とは、例えば、ガス器具10が一度着火に失敗し、失敗直後に再度着火動作を開始すると予想された場合などである。
正規計測モードに移行した場合、マイコン47は、第1処理及び第2処理を並行して実行する。
そして、正規計測モードにおいて所定値(例えば1.5L/hr)を超える流量が検出されなくなったとする。すなわち、第1処理において検出される流量が1.5L/hr以下となったとする(S4)。この場合、マイコン47は、正規計測モードから簡易計測モードに移行させるためのトリガ信号を発生させる。そして、駆動回路48は簡易計測モード駆動回路48aを機能させて、ガスメータ40を簡易計測モードに移行させる。なお、正規計測モードから簡易計測モードに移行させるためのトリガ信号は、流量が1.5L/hr以下となった場合に出力されるが、これに限らず、流量1.5L/hr以下の状態が複数回連続した場合に出力されることが望ましい。これにより、脈動等によって瞬時的に流量が1.5L/hr以下となった場合に、簡易計測モードに移行させることなく、流量計測を継続することができるからである。
ところで、正規計測モードにおいて流量変化があった場合、すなわち第2処理において流量変化があったと判断された場合、マイコン47は、正規計測モードから高速計測モードに移行するためのトリガ信号を発生させる。そして、駆動回路48は、高速計測モード駆動回路48bを機能させて、ガスメータ40を高速計測モードに移行させる(S5)。この高速計測モードの移行により、ガスメータ40は、ガス使用中に新たなガス器具10が使用された場合、及び、ガス使用中に使用中のガス器具10とは別の箇所からガス漏れが発生した場合などにおいて、新たなガス器具10の使用であるか、ガス漏れであるかを判断することができる。
次に、高速計測モードにおけるガス器具10の使用、及びガス漏れについての判断方法について説明する。ガバナ付きガス器具10が使用された場合、ガバナ無しガス器具10が使用された場合、及びガス漏れが発生した場合、それぞれ異なる圧力変化を示す。具体的には圧力変化を縦軸とし、時間を横軸とした場合、圧力変化の振幅及び周波数は特徴的なものとなる。マイコン47は、高速計測モード時において、圧力変化の振幅及び周波数から、ガバナ付きガス器具10が使用されたか否か、ガバナ無しガス器具10が使用されたか否か、及びガス漏れが発生したか否かを判断する。
図5は、ガバナ付きガス器具10の使用を開始したときの圧力変化の様子を示すグラフである。なお、図5において縦軸は、圧力変化量(kPa)を示し、横軸はガバナ付きガス器具10の使用を開始してからの経過時間(秒)を示している。
ガバナ付きガス器具10の使用が開始された場合、圧力は、図5に示す所定の振幅を示した後に、安定状態となる。具体的には、ガバナ付きガス器具10の使用開始直後に、一度「−0.1」kPa弱への圧力低下を示した後(符号a1参照)、約「0.05」kPaへの圧力上昇を示す(符号a2参照)。その後、圧力は約「−0.05」kPa強への圧力低下を示した後に(符号a3参照)、約「0.05」kPa弱への圧力上昇を示す(符号a4参照)。以後、徐々に振幅が小さくなりつつも圧力は振動を繰り返し、最終的には圧力変化がない安定状態となる。
このような圧力の振動が発生する理由は、ガバナ13内に調整スプリング13fが設けられているからである。すなわち、ガバナ付きガス器具10の使用が開始されると、調整スプリング13fが振動すると共に、ガバナ内弁13aについても振動し、通過口13iの開口割合についても小刻みに大きくなったり小さくなったりと変化するからである。
特に、ガバナ付きガス器具10の使用開始時においては、圧力振動の周波数や振幅に特徴が見られる。具体的には調整スプリング13fが小刻みに振動することから、圧力について細かな振動を示すこととなる。この結果、圧力波形は比較的高い周波数成分を多く含むこととなる。また、ガバナ付きガス器具10の使用開始時に調整スプリング13fの振動によって通過口13iが大きくなったり小さくなったりすることから、圧力波形は、大きな振幅を示す。
なお、圧力Pは、
なる演算式で表すことができる。ここで、Cは振幅を示し、kは摩擦力(減衰定数)を示し、ωは復元力を示し、αは初期位置を示している。この式は多くの周波数f
i=ω
i/2πの振動の重ね合わせであることを示している。
図6は、ガバナ無しガス器具10の使用を開始したときの圧力変化の様子を示すグラフである。なお、図6において縦軸は、圧力変化量(kPa)を示し、横軸はガバナ無しガス器具10の使用を開始してからの経過時間(秒)を示している。
ガバナ無しガス器具10の使用が開始された場合、圧力は、図6に示す所定の振幅を示した後に、安定状態となる。具体的には、ガバナ付きガス器具10の使用開始直後に、一度「−0.1」kPa弱への圧力低下を示した後(符号b1参照)、約「0.01」kPaへの圧力上昇を示す(符号b2参照)。その後、圧力は約「−0.05」kPa強への圧力低下を示す(符号b3参照)。以後、圧力上昇が無い状態のまま、圧力は振動を繰り返す。そして、振幅が徐々に振幅が小さくなり、最終的には圧力変化がない安定状態となる。このような圧力の振動が発生する理由は、以下による。
図7は、ガバナ無しガス器具10での燃料ガスの供給の様子を示す概略図である。図7に示すように、ガバナ無しガス器具10が使用された場合、燃料ガスは第2配管32からノズルホルダ100を通じてバーナー14等に至る。ここで、ノズルホルダ100にある流速を持った気体が流入したときはその慣性力で急には流速が小さくならずに一端ガスが圧縮され圧力が上昇する。その後上昇した圧力により流入流速が小さく(場合によっては逆流)なって圧力が下がる。これを繰り返すことで圧縮膨張の振動が発生する。
以上のように、ガバナ付きガス器具10の使用時と、ガバナ無しガス器具10の使用時とでは、圧力は振動することとなる。しかしながら、図6に示す圧力波形を図5に示す圧力波形と比較すると、以下のような差異がある。
まず、ガバナ付きガス器具10の場合、調整スプリング13fのように細かく振動する物質を有しているのに対し、ガバナ無しガス器具10の場合、そのような物質を有していない。このため、図6に示す圧力波形は、図5に示す圧力波形と同様に振動を示しているものの、全体として振動周波数が図5に示す圧力波形よりも低くなる。
さらに、ガバナ付きガス器具10の場合、調整スプリング13fの振動によって振幅が大きくなっているが、ガバナ付きガス器具10の場合、調整スプリング13fが無く、ノズルホルダ100の圧縮性による振動が発生しているのみである。このため、図6に示す圧力波形は、図5に示す圧力波形よりも振幅が小さくなる。
このような特徴から、マイコン47は、ガバナ付きガス器具10の使用であるか、ガバナ無しガス器具10の使用であるか否かを判断できることとなる。
図8は、ガス漏れ時の圧力変化の様子を示すグラフである。なお、図8において縦軸は、圧力変化量(kPa)を示し、横軸はガス漏れが発生してからの経過時間(秒)を示している。
図8に示すように、ガス漏れが発生した場合、圧力は明確な振動を示すことなく緩やかに低下していくこととなる。このように、ガス漏れの場合、調整スプリング13fの振動、及び、ノズルホルダ100の圧縮性による振動の双方が発生しないため、圧力波形には明確な振動が見られない。
以上のように、ガバナ付きガス器具10の使用開始時と、ガバナ無しガス器具10の使用開始時と、ガス漏れ発生時とでは、圧力波形の周波数や振幅に特徴的な差異がある。マイコン47は、上記の特徴から、ガバナ付きガス器具10の使用であるか、ガバナ無しガス器具10の使用であるか、ガス漏れであるかを判断することができる。なお、ガバナ付きガス器具10の使用であるかなどを判断するにあたり、マイコン47は、周波数や振幅の値を用いても良いし、周波数や振幅を示す演算結果(例えばフーリエ変換により得られるスペクトルデータ)を用いるようにしてもよい。
以上のようなガスメータ40において、正規計測モードでは第1処理と第2処理とが並行して実行されている。次に、第1処理における流量計測と、第2処理における流量変化判断について説明する。
ガスメータ40が超音波式ガスメータである場合、超音波式ガスメータは、第2処理を以下のようにして実行する。超音波式ガスメータでは、直線ガス流路の上流と下流に超音波の発振と受信を行うセンサが設置されている。上流から超音波を発振して下流で受信しその伝搬時間を計測し、時間を変えて下流からも超音波を発振して上流で受信しその伝搬時間も計測する。その往復を複数回計測してその平均をとり精度の良い流量計測を行う。具体的に、第2処理では8回の超音波の発振を行い、伝搬時間を求めて流量を算出することとなる。そして、第2処理では、この流量が前回の流量(又は過去の流量の平均値)から変化したか否かを判断することとなる。
なお、上記において第2処理では、伝搬時間を求め、求めた伝搬時間から流量を算出する例を説明したが、これに限らず、超音波の伝搬時間が過去の伝搬時間と比較して変化したか否かに基づいて、流路内のガス流量が変化したか否かを判断するようにしてもよい。例えば、今回の伝搬時間が前回の伝搬時間と比較して変化した場合、少なくとも流量に変化があったことがわかるからである。これにより、不要な演算を省略して一層消費電力を抑えることができる。
一方、第1処理においては、8回の超音波発振を行って第2所定時間毎に得られた伝搬時間のデータを利用して流路内の流量を求める。具体的に第2処理では、0.1秒毎に伝搬時間を求めて流路内の流量が変化したか否かを判断している。このため、第1処理では、0.1秒×20=2秒、すなわち第1処理における20回分の伝搬時間のデータを利用して流路内の流量を求める。この際、マイコン47は、例えば、20回分の伝搬時間のデータの平均値を算出し、平均値に基づいて流路内の流量を求める。
なお、第1処理では、20回分の伝搬時間のデータを利用せず、20回分の伝搬時間のデータの元となる8×20=160回の超音波発振のデータを利用して、流路内の流量を求めるようにしてもよい。
このように、第2処理では8回の超音波発振を行って流量の変化を判断すると共に、第1処理では第2処理におけるデータを利用して、流量を算出することとなる。よって、第2処理におけるガス流量変化判断のために流量センサ41を駆動して電気信号を取得しておけば、第1処理におけるガス流量の計測のために流量センサ41を駆動して電気信号を取得する必要が無くなっており、双方別々に電気信号を取得する場合と比較して、消費電力を抑えることができる。
図9は、本実施形態に係るガスメータ40が第1処理と第2処理とを並行して実行した場合の様子を示すタイミングチャートである。図9に示すように、第2処理では、0.1秒に1回の計測間隔で、8回の超音波発振を行い、伝搬時間を求めて流量を算出する。従って、2秒間では、8×20=160回の超音波発振を行うこととなる。一方、第1処理では、この160回の超音波発振によって得られる伝搬時間データ、又は、8回の超音波発振によって得られる20回分の伝搬時間データを用いて流量を算出する。
なお、上記では、超音波式ガスメータについて説明したが、熱式のガスメータであっても、第2処理におけるデータを第1処理に利用することによって、同様の効果を得ることができる。
次に、フローチャートを参照して、本実施形態に係るガスメータ40による計測方法を説明する。図10は、本実施形態に係るガスメータ40の計測方法の詳細を示すフローチャートであり、簡易計測モードにおける動作を示している。すなわち、図10は、第2処理のみを実行する際のガスメータ40の動作を示している。
簡易計測モードにおいて、まずマイコン47は、第2所定時間(具体的には0.1秒)経過したか否かを判断する(S11)。第2所定時間経過していないと判断した場合(S11:NO)、経過したと判断されるまで、この処理が繰り返される。第2所定時間経過したと判断した場合(S11:YES)、マイコン47は計時した時間をリセットする(S12)。そして、マイコン47は、8回分の超音波発振のデータを取得して伝搬時間を算出する(S13)。
次いで、マイコン47は、今回算出した伝搬時間を前回算出した伝搬時間と比較して変化したか否かを判断する(S14)。なお、ステップS14の処理では、今回の伝搬時間と前回の伝搬時間とを比較する場合のみならず、今回の伝搬時間と過去数回分の伝搬時間の平均値とを比較するようにしてもよい。そして、伝搬時間に変化がなかったと判断した場合(S14:NO)、処理はステップS11に移行する。
一方、伝搬時間に変化があったと判断した場合(S14:YES)、マイコン47は、トリガ信号を発生させる(S15)。これにより、駆動回路48の高速計測モード駆動回路48bが機能することとなり、計測モードは、簡易計測モードから高速計測モードに移行する(S16)。その後、図10に示す処理は終了する。
図11は、本実施形態に係るガスメータ40の計測方法の詳細を示すフローチャートであり、高速計測モードにおける動作を示している。すなわち、図11は、第3処理を実行する際のガスメータ40の動作を示している。
図11に示すように、高速計測モードにおいて、マイコン47は、第3所定時間(具体的には0.001秒)経過したか否かを判断する(S21)。第3所定時間経過していないと判断した場合(S21:NO)、経過したと判断されるまで、この処理が繰り返される。第3所定時間経過したと判断した場合(S21:YES)、マイコン47は計時した時間をリセットする(S22)。そして、マイコン47は、圧力センサ42からの信号に基づいて、流路内のガス圧を検出すると共に、検出したガス圧を記憶する(S23)。
その後、マイコン47は、特定時間(具体的には2秒)経過したか否かを判断する(S24)。この処理においてマイコン47は、圧力データが所定個数(例えば300〜1000個)溜まったか否かによって特定時間経過したか否かを判断することとなる。特定時間を経過していないと判断した場合(S24:NO)、処理はステップS21に移行する。
一方、特定時間経過したと判断した場合(S24:YES)、マイコン47は、特定時間中にステップS23において計測及び記憶したガス圧のデータに基づいて、ガス器具10の使用やガス漏れを判断する(S25)。その後、マイコン47は、ステップS25の処理においてガス漏れ無しと判断されたか否かを判断する(S26)。
ガス漏れ無しと判断されていた場合(S26:YES)、マイコン47は、トリガ信号を発生させる(S27)。これにより、駆動回路48の正規計測モード駆動回路48cが機能することとなり、計測モードは、高速計測モードから正規計測モードに移行する(S28)。その後、図11に示す処理は終了する。
一方、ガス漏れ無しと判断されていなかった場合(S26:NO)、すなわち、ガス漏れがあったと判断されていた場合、マイコン47は、遮断弁を遮断すると共に、警報等を行う(S29)。その後、図11に示す処理は終了する。
図12は、本実施形態に係るガスメータ40の計測方法の詳細を示すフローチャートであり、正規計測モードにおける動作を示している。すなわち、図12は、第3処理を実行する際のガスメータ40の動作を示している。
図12に示すように、正規計測モードにおいて、まずマイコン47は、第1所定時間(具体的には2秒)経過したか否かを判断する(S31)。第1所定時間経過したと判断した場合(S31:YES)、第2処理において20回分の伝搬時間のデータが得られているはずである。このため、マイコン47は、第1所定時間に関する計時時間をリセットした後に(S32)、20回分の伝搬時間のデータから流量を算出する(S33)。その後、マイコン47は、所定値(例えば1.5L/hr)を超える流量であるか否かを判断する(S34)。
所定値を超える流量であると判断した場合(S34:YES)、マイコン47は、ステップS32において計測された流量を積算し(S35)、処理はステップS31に移行する。
一方、所定値を超える流量でないと判断した場合(S34:NO)、マイコン47は、トリガ信号を発生させる(S36)。これにより、駆動回路48の簡易計測モード駆動回路48aが機能することとなり、計測モードは、正規計測モードから簡易計測モードに移行する(S37)。その後、図12に示す処理は終了する。なお、ステップS34の処理では、1回だけ「NO」と判断された場合に、ステップS36の処理に進むが、これに限らず、ステップS34において複数回連続して「NO」と判断された場合に、ステップS36の処理に進むことが望ましい。これにより、脈動により瞬間的に流量が所定値を超えなかった場合に簡易計測モードに移行することを防止できるからである。
ところで、第1所定時間経過していないと判断した場合(S31:NO)、マイコン47は、第2所定時間(具体的には0.1秒)経過したか否かを判断する(S38)。第2所定時間経過していないと判断した場合(S38:NO)、処理はステップS31に移行する。
第2所定時間経過したと判断した場合(S38:YES)、マイコン47は、8回分の超音波発振に関するデータから、伝搬時間を算出する(S38)。そして、マイコン47は、第2所定時間に関する計時時間をリセットした後に(S32)、8回分の超音波発振に関するデータから伝搬時間を算出する(S40)。
次いで、マイコン47は、今回算出した伝搬時間を前回算出した伝搬時間と比較して変化したか否かを判断する(S41)。なお、ステップS41の処理では、ステップS14の処理と同様に、今回の伝搬時間と前回の伝搬時間とを比較する場合のみならず、今回の伝搬時間と過去数回分の伝搬時間の平均値とを比較するようにしてもよい。そして、伝搬時間に変化がなかったと判断した場合(S41:NO)、処理はステップS31に移行する。
一方、伝搬時間に変化があったと判断した場合(S41:YES)、マイコン47は、トリガ信号を発生させる(S42)。これにより、駆動回路48の高速計測モード駆動回路48bが機能することとなり、計測モードは、簡易計測モードから高速計測モードに移行する(S43)。その後、図12に示す処理は終了する。
図13は、図11に示したステップS25の詳細を示すフローチャートであり、ガス器具10の使用及びガス漏れ判断に関する処理を示している。図13に示すように、まず、マイコン47は、図11のステップS23において記憶したガス圧の波形の周波数を分析すると共に(S51)、振幅を分析する(S52)。
その後、マイコン47は、ステップS51の分析結果に基づいて、波形内に判別値以上の周波数成分が規定値以上含まれるか否かを判断する(S53)。判別値以上の周波数成分が規定値以上含まれると判断した場合(S53:YES)、すなわち図5に示した圧力波形のようにある程度高い周波数成分を多く含む場合、マイコン47は、ガバナ付きガス器具10の使用であると判断する(S54)。そして、図13に示す処理は終了し、処理は図10のステップS26に移行する。
また、波形内に判別値以上の周波数成分が規定値以上含まれないと判断した場合(S53:NO)、マイコン47は、第1の山の振幅値(すなわち圧力が変化してから最初に振幅が正方向に大きくなったときの最大値、又は、全体を通して最も振幅が正方向に大きくなったときの値)が元圧(図5等の縦軸で「0」の圧力)に所定量を加えた値以上であるか否かを判断する(S55)。第1の山の振幅値が元圧に所定量を加えた値以上であると判断した場合(S55:YES)、マイコン47は、ガバナ付きガス器具10の使用であると判断する(S54)。そして、図13に示す処理は終了し、処理は図10のステップS26に移行する。
一方、第1の山の振幅値が元圧に所定量を加えた値以上でないと判断した場合(S55:NO)、マイコン47は、第1の山の振幅値が元圧とほぼ同等の値(具体的には元圧±規定の値)であるか否かを判断する(S56)。第1の山の振幅値が元圧とほぼ同等の値であると判断した場合(S56:YES)、マイコン47は、ガバナ無しガス器具10の使用であると判断する(S57)。そして、図12に示す処理は終了し、処理は図10のステップS26に移行する。
また、第1の山の振幅値が元圧とほぼ同等の値でないと判断した場合(S56:NO)、マイコン47は、第1の山の振幅値が元圧に所定量を減算した値以下であるか否かを判断する(S58)。第1の山の振幅値が元圧に所定量を減算した値以下であると判断した場合(S58:YES)、マイコン47は、流量センサ41からの信号に基づいて規定量以上の流量が検出されるか否かを判断する(S59)。
規定量以上の流量が検出されると判断した場合(S59:YES)、すなわち、ガス器具10の使用による周波数及び振幅の特徴が得られず、流路内のガス圧が低下し、しかも規定量以上の流量が検出された場合、マイコン47は、ガス漏れであると判断する(S60)。そして、図13に示す処理は終了し、処理は図10のステップS26に移行する。
ところで、第1の山の振幅値が元圧に所定量を減算した値以下でないと判断した場合(S58:NO)、及び、規定量以上の流量が検出されないと判断した場合(S59:NO)、マイコン47は、ガス器具10の使用及びガス漏れのいずれにも該当しないと判断する(S61)。そして、図13に示す処理は終了し、処理は図10のステップS26に移行する。
なお、ガス器具10の使用及びガス漏れについては、図13に示すものに限らず、例えば、他の方法によって判断されてもよい。例えば、マイコン47は、ステップS53又はステップS55において「YES」と判断した場合、ガバナ付きガス器具10の使用であると判断するが、これに限らず、ステップS53及びステップS55の双方において「YES」と判断した場合、ガバナ付きガス器具10の使用であると判断してもよい。
また、マイコン47は、圧力波形の減衰係数が予め定められた値以下である場合に、ガバナ付きガス器具10の使用であると判断してもよい。さらに、マイコン47は、第1の山の振幅値が、第1の谷の振幅値(すなわち圧力が変化してから最初に振幅が負方向に大きくなったときの最小値、又は、全体を通して最も振幅が負方向に大きくなったときの値)よりも小さい場合に、ガバナ付きガス器具10の使用であると判断してもよい。さらには、上記した内容を各種組み合わせて、ガバナ付きガス器具10の使用を判断してもよい。
このようにして、本実施形態に係るガスメータ40及び計測方法によれば、第1処理と第2処理とを並行して実行すると共に、第2処理において流量センサ41から得られた電気信号を、第1処理におけるガス流量の計測に用いる。このため、第2処理におけるガス流量変化判断のために流量センサ41を駆動して電気信号を取得しておけば、第1処理におけるガス流量の計測のために流量センサ41を駆動して電気信号を取得する必要が無く、双方別々に電気信号を取得する場合と比較して、消費電力を抑えることができる。
また、第3処理を実行するため、ガス器具10の使用を判断すると共にガス漏れを判断することができる。
また、第1処理と第2処理とを並行して実行する際の第2処理において流路内のガス流量が変化したと判断した場合、判断後に第3処理を特定時間だけ実行し、この実行後に第1処理と第2処理とを再度並行して実行する。このため、ガス流量が変化した場合に、第3処理が実行されてガス器具の使用及びガス漏れが判断されて、再度第1処理と第2処理とが並行して実行される。すなわち、第3処理におけるガス漏れ等の判断が行われた後に、第1処理におけるガス流量の計測が行われることとなり、安全確認を行った上で通常のガス流量の計測を行うことができる。
また、第1処理と第2処理とを並行して実行する際の第1処理において流路内のガス流量が複数回連続して所定値を超えない場合、第2処理のみを実行するため、流量が所定値(例えば1.5L/hr)を超えず、ガスの流れが無いような場合、すなわち流量の積算、並びにガス器具の使用やガス漏れの判断の必要性が無い場合には第1処理を行わず第2処理のみを行うこととなり、一層消費電力量を低減することができる。
また、第3所定時間毎にガス流量及びガス圧の少なくとも一方を検出して得られた波形から、波形の周波数及び振幅の少なくとも一方を求めて得られた値、又は波形の周波数及び振幅の少なくとも一方の状態を示す演算結果に基づいて、ガス漏れ又はガス器具10のうちガバナ13を有したガス器具10の使用であるか、ガバナ13を有さないガス器具10の使用であるかを判断する。ここで、ガス漏れ発生時と、ガバナ13を有するガス器具10の使用開始時と、ガバナ13を有しないガス器具10の使用開始時とでは、圧力や流量の波形の周波数や振幅に特徴的な差がある。よって、この特徴的な差によってガス漏れ又はガス器具10のうちガバナ13を有したガス器具10の使用であるか、ガバナ13を有さないガス器具10の使用であるかを判断して、ガス漏れ判断の誤検出防止につなげることができる。
また、流量センサ41が超音波センサであり、マイコン47は、第2処理の実行時に、超音波の伝搬時間が変化したか否かに基づいて、流路内のガス流量が変化したか否かを判断する。ここで、ガス流量は伝搬時間から求められるが、第2処理のように流量の変化のみを検知するのであれば、流量を求めることなく、伝搬時間の変化のみを監視すればよい。これにより、不要な演算を省略することとなり、一層消費電力量を低減させることができる。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。例えば、本実施形態において高速計測モードは、0.001秒に1回の計測間隔となっていたが、これに限らず、より短い計測間隔であってもよい。
また、本実施形態において高速計測モードからは、正規計測モードに移行するのみとなっているが、これに限らず、高速計測モードにおいてマイコン47にて検出された流量が所定値を超えない場合、高速計測モードから簡易計測モードに移行させるようにしてもよい。
さらに、本実施形態では、正規計測モードにおいて2秒に1回の計測間隔で流量を計測しているが、これに限らず、以下のような場合には、計測間隔を4秒や10秒など長くすることが望ましい。すなわち、マイコン47に検出された流量が過去に検出された流量と一定値以内の変化で収まる場合が、複数回連続するとき、正規計測モードの計測間隔は長くされることが望ましい。これにより、長時間一定のガス使用量にガスが使用される場合、例えばガスコンロを使用して長時間の煮込みを行う場合などに、計測間隔を長くすることとなり、流量変化がない場合において一層消費電力を低減することができる。なお、過去に検出された流量とは、前回検出された流量であってもよいし、過去複数回分の流量の平均値であってもよい。