JP2011164036A - 膜式ガスメータ - Google Patents

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Abstract

【課題】流量の算出時間を短縮することが可能な膜式ガスメータを提供する。
【解決手段】膜式ガスメータ40は、燃料ガスの流量の発生により膜を前後運動させ、その膜の前後運動から流量パルスを発生させ、この流量パルスに基づいて発生した流量を算出するものである。また、膜式ガスメータ40は、燃料ガスの圧力に応じた計測信号を出力する圧力センサ42と、流量と圧力との相関関係を記憶した相関データ記憶部45aと、圧力センサ42からの計測信号と相関データ記憶部45aにより記憶された流量と圧力との相関関係とに基づいて、流量を算出する圧力/流量換算部44bとを備える。
【選択図】図2

Description

本発明は、膜式ガスメータに関する。
従来、ガス圧力に基づいてガバナ付きガス器具が使用されたか、ガバナ無しガス器具が使用されたか、及び、ガス漏れが発生しているか否かを判断するガスメータが提案されている。このガスメータでは、超音波センサやフローセンサなどの流量センサが用いられ、これらのセンサにより瞬時流量を算出している。例えば超音波センサでは、約2秒間隔で瞬時流量を算出でき、瞬時流量の算出時間を短くすることができる(例えば特許文献1参照)。
特開2009−257738号公報
ガスメータには、超音波センサやフローセンサなどの流量センサが用いられるもののみならず、膜式の流量センサを備えたものがある。この膜式の流量センサを備えたガスメータ(以下、膜式ガスメータという)では、流量の発生によりのう膜が前後運動し、この前後運動をリンク機構により回転運動に変換する。そして、その回転運動からリードスイッチと磁石とによって接点信号を生成し、その接点信号をマイコンが検知して演算することにより流量を算出している。
しかし、従来の膜式ガスメータでは、超音波センサやフローセンサなどの流量センサのように流量の算出時間を短くすることができない。具体的に説明すると、膜式ガスメータにおいて接点信号は0.7Lに1回出力されるように設計されている。また、ガスストーブが使用された場合の流量は、例えば100L/hである。このため、接点信号が1回出力されるためには、約25秒の時間を要する。流量を算出するためには、少なくとも2回の接点信号の周期が必要であるため、最大で約50秒最小でも約25秒の時間を要する。このため、従来の膜式ガスメータでは、流量の算出時間が長くなってしまう。
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その発明の目的とするところは、流量の算出時間を短縮することが可能な膜式ガスメータを提供することにある。
本発明の膜式ガスメータは、燃料ガスの流量の発生により膜を前後運動させ、その膜の前後運動から流量パルスを発生させ、この流量パルスに基づいて発生した流量を算出する膜式ガスメータであって、燃料ガスの圧力に応じた計測信号を出力する圧力センサと、流量と圧力との相関関係を記憶した相関関係記憶手段と、前記圧力センサからの計測信号と前記相関関係記憶手段により記憶された流量と圧力との相関関係とに基づいて、流量を算出する流量算出手段と、を備えることを特徴とする。
この膜式ガスメータによれば、流量と圧力との相関関係を記憶し、圧力センサからの計測信号と記憶された流量と圧力との相関関係とに基づいて、流量を算出する。ここで、圧力と流量とには一定の相関があるため、圧力センサからの計測信号が得られれば、少なくとも2回の流量パルスを待つことなく、流量を算出することができる。従って、流量の算出時間を短縮することが可能な膜式ガスメータを提供することができる。
また、本発明の膜式ガスメータにおいて、前記圧力センサにより出力された計測信号の所定以上の変化時からの微小時間中に得られる振動波形から、ガス漏れを判断する判断手段をさらに備え、前記判断手段は、前記振動波形に加えて、前記流量算出手段により算出された流量が所定値以上であるか否かに基づいて、ガス漏れを判断することが好ましい。
この膜式ガスメータによれば、圧力センサにより出力された計測信号の所定以上の変化時からの微小時間中に得られる振動波形から、ガス漏れを判断する。ここで、本件出願人らは、ガス漏れが発生した場合、計測信号の所定以上の変化時から微小時間経過するまでの波形に、ガス漏れ固有の振動を示すことを見出した。このため、所定以上の変化時からの微小時間中に得られる振動波形からガス漏れを判断することができる。また、圧力についてはGHPの脈動等により振動が発生することがあり、これをガス漏れと誤認してしまう可能性があるが、圧力センサからの計測信号と記憶された流量と圧力との相関関係とに基づいて、流量を算出し、この流量が所定値以上であるか否かに基づいてガス漏れを判断することで、GHPの脈動等により振動が発生したとしても流量値が所定値以上とならない場合には、ガス漏れと判断しなくすることができる。従って、ガス漏れ判断精度を向上させることができる。
本発明によれば、流量の算出時間を短縮することが可能な膜式ガスメータを提供することができる。
本発明の実施形態に係るガス供給システムの構成図である。 図1に示したガスメータの詳細を示す構成図である。 ガス器具の使用過程における流量推移の一例を示す図である。 ガスストーブ使用開始時における流量波形と圧力波形とを示すグラフである。 流量と圧力差との相関関係を示すグラフである。 図2に示した生成部により生成されるガス漏れ振動波形の概略を示す図である。 ガス漏れ時における圧力変化を示す図である。 ガス漏れ時における連続NCCを示すグラフである。 ガス器具使用開始時における圧力変化を示すグラフであって、(a)はガステーブル使用開始時における圧力変化を示し、(b)は小型湯沸器使用開始時における圧力変化を示し、(c)は給湯器使用開始時における圧力変化を示している。 図2に示した類似度推移算出部により算出される連続NCCを示すグラフであって、(a)はガステーブル使用開始時における連続NCCを示し、(b)は小型湯沸器使用開始時における連続NCCを示し、(c)は給湯器使用開始時における連続NCCを示している。 ガス器具使用終了時における圧力変化を示すグラフであって、(a)はガステーブル使用終了時における圧力変化を示し、(b)は小型湯沸器使用終了時における圧力変化を示し、(c)は給湯器使用終了時における圧力変化を示している。 図2に示した類似度推移算出部により算出される連続NCCを示すグラフであって、(a)はガステーブル使用終了時における連続NCCを示し、(b)は小型湯沸器使用終了時における連続NCCを示し、(c)は給湯器使用終了時における連続NCCを示している。 本実施形態に係る膜式ガスメータの動作の一例を示すフローチャートである。 図13に示したガス漏れ/開始ガス器具判断処理(S5)の詳細を示すフローチャートである。 図13に示した終了ガス器具判断処理(S9)の詳細を示すフローチャートである。 第2実施形態に係る膜式ガスメータの詳細を示す構成図である。 図16に示した解析部により算出されるスペクトルデータを示すグラフであって、ガス漏れが発生したときの圧力波形をフーリエ変換して得られるスペクトルデータを示すグラフである。 図16に示した解析部により算出されるスペクトルデータを示すグラフであって、(a)はガステーブル使用開始時におけるスペクトルデータを示し、(b)は小型湯沸器使用開始時におけるスペクトルデータを示し、(c)は給湯器使用開始時におけるスペクトルデータを示している。 図16に示した解析部により算出されるスペクトルデータを示すグラフであって、(a)はガステーブル使用終了時におけるスペクトルデータを示し、(b)は小型湯沸器使用終了時におけるスペクトルデータを示し、(c)は給湯器使用終了時におけるスペクトルデータを示している。 図13に示したガス漏れ/開始ガス器具判断処理(S5)の詳細を示す第2のフローチャートである。 図13に示した終了ガス器具判断処理(S9)の詳細を示す第2のフローチャートである。
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係るガス供給システムの構成図である。ガス供給システム1は、ガスストーブ、ファンヒータ、小型湯沸器、給湯器、床暖房及びガステーブルなどの各ガス器具10に燃料ガスを供給するものであって、複数のガス器具10と、ガス供給元の調整器20と、配管31,32と、膜式ガスメータ40とを備えている。
調整器20は上流からの燃料ガスを所定圧力に調整して第1配管31に流すものである。第1配管31は、調整器20と膜式ガスメータ40とを接続するものである。第2配管32は膜式ガスメータ40とガス器具10とを接続する配管である。膜式ガスメータ40は、各家庭に設置され、少なくともガス流量を計測して積算流量を表示するものである。このようなガス供給システム1では、膜式ガスメータ40内に第1配管31及び第2配管32とつながる流路が形成されており、調整器20を通じて流れてきた燃料ガスは第1配管31から膜式ガスメータ40、及び第2配管32を通じてガス器具10に到達し、ガス器具10において燃焼されることとなる。
図2は、図1に示した膜式ガスメータ40の詳細を示す構成図である。図2に示すように膜式ガスメータ40は、流量センサ41と、圧力センサ42と、トリガ信号発生部43と、制御部44と、記憶部45とを有している。
流量センサ41は、膜式ガスメータ40に供給されるガス流量に応じた数の流量パルスを出力するものであって、円盤41a、複数の磁石41b及び磁気抵抗素子41cを備えている。この流量センサ41は、流量の発生によって膜を前後運動させ、その膜の前後運動を回転運動に変換する。そして、流量センサ41は回転運動により円盤41aを回転させる。複数の磁石41bは円盤41aの円周上に等間隔に配置されており、円周上41aに配置された磁石41bが磁気抵抗素子41cに近接することによって、流量パルスを発生させる。制御部44は、この流量パルスが入力される間隔に基づいて流量値を算出することとなる。
また、圧力センサ42は、膜式ガスメータ40に供給されるガス圧力に応じた計測値の信号を出力するものであって、ピエゾ抵抗式や静電容量式などのセンサによって構成される。
トリガ信号発生部43は、圧力センサ42により出力された信号の所定以上の変化時にトリガ信号を発生させるものである。このトリガ信号は、制御部44及び圧力センサ42に送信される。このようなトリガ信号発生部43は、例えば微分回路を含んで構成されており、微分回路により所定以上の変化を検出する。
具体的にトリガ信号発生部43は、ガス器具10が使用を開始され又はガス漏れが発生したときに、流量が流れ且つ圧力が低下するときの変化を所定以上の変化としてとらえ、第1トリガ信号を出力する。さらに、トリガ信号発生部43は、ガス器具10の使用が終了したときに、流量が低下し且つ圧力が上昇するときの変化を所定以上の変化としてとらえ、第2トリガ信号を出力する。なお、トリガ信号発生部43は、上記2種類のトリガ信号を区別可能に発生させる。
図3は、ガス器具の使用過程における流量推移の一例を示す図である。ガス器具10の使用過程においては例えば図3に示すような流量が流れる。まず、時刻t1において第1のガス器具10(例えばガステーブル)が使用開始されたとする。このとき、流量値はF1を示す。そして、時刻t2において第2のガス器具10(例えば給湯器)が使用開始されたとすると、流量値はF3(=F1+F2)を示す。
その後、時刻t3において第1のガス器具10の使用が終了したとすると、流量値は第2のガス器具10のみの流量であるF2を示す。次いで、時刻t4において第2のガス器具10についても使用が終了したとすると、流量値は「0」を示す。
トリガ信号発生部43は、図3で示す時刻t1及び時刻t2のタイミングで第1トリガ信号を発生させる。また、時刻t3及び時刻t4のタイミングで第2トリガ信号を発生させる。
再度、図2を参照する。制御部44は、マイコンによって構成され、サンプリング時間調整部44a、及び、圧力/流量換算部(流量算出手段)44bを備えている。サンプリング時間調整部44aは、トリガ信号発生部43によりトリガ信号が発生された場合に、圧力センサ42のサンプリング時間を通常のサンプリング時間(例えば10秒)よりも短縮するものである。この際、サンプリング時間調整部44aはサンプリング時間を1マイクロ秒に短縮する。
圧力/流量換算部44bは、圧力センサ42からの計測信号に基づいて流量を算出するものである。また、記憶部45は、流量と圧力との相関関係を記憶した相関データ記憶部(相関関係記憶手段)45aを備えている。
図4は、ガスストーブ使用開始時における流量波形と圧力波形とを示すグラフである。図4に示すように、時刻18s以前のガスストーブ使用前において圧力は約3kPaを示し、流量は0L/hを示している。次いで、時刻18sにおいてガスストーブが使用されたとする。このとき、流量は時刻24sに110L/h程度を示す。また、圧力は2.85kPaとなり0.15kPa程度低下する。ここで、流量の上昇量と圧力の降下量とには一定の相関があり、図4に示すようなデータをガス器具10毎に計測することによって、図5に示すような相関関係が得られる。
図5は、流量と圧力差との相関関係を示すグラフである。相関データ記憶部45aは、図5に示したような相関関係を記憶している。図5に示すように、例えばガス器具10の使用開始により圧力が約200Pa低下した場合、流量は約527L/hを示す傾向がある。同様に、ガス器具10の使用開始により圧力が約400Pa低下した場合、流量は約1170L/hを示す傾向がある。
このように、相関データ記憶部45aは、図5に示したような相関関係を記憶している。図2に示す圧力/流量換算部44bは、圧力センサ42からの計測信号により圧力差が確認されると、相関データ記憶部45aに記憶される相関関係のデータを読み出し、これらから流量を算出する。特に、圧力センサ42は、電子式のセンサであるため、膜式の流量センサ41に比較して信号が短時間で入力され易い。よって、制御部44は、流量センサ41の流量パルスを待つことなく、瞬時に流量を算出することができる。
さらに、本実施形態に係る膜式ガスメータ40は、制御部44が判断部(判断手段)44c、生成部44d及び類似度推移算出部44eを備えると共に、記憶部45が類似度推移パターン記憶部45bを備え、ガス漏れ及び使用ガス器具10を判断する機能を備えている。
判断部44cは、トリガ信号が発生してから微小時間経過するまでに得られる振動波形から、ガス漏れ及び使用ガス器具10の少なくとも一方を判断するものである。ここで、本件発明者らは、ガス漏れ発生直後の微小時間、ガス器具10の使用開始直後の微小時間、及びガス器具10の使用終了直後の微小時間において圧力の計測値に振動が発生することについて見出した。しかも、本件発明者らは、ガス漏れや使用開始又は使用終了したガス器具10毎に、振動が固有のものであることを見出した。よって、判断部44cは、圧力の所定以上の変化後における微小時間の圧力振動波形から、ガス漏れが発生したか否か、及び、どのガス器具10が使用開始され又は使用終了したか否かを判断することができる。この判断部44cは、生成部44d及び類似度推移算出部44eの演算結果に基づいて、判断を実行する。なお、以下の本実施形態において判断部44cは、ガス漏れ及び使用ガス器具10の双方を判断するものとするが、いずれか一方のみを判断するものであってもよい。
生成部44dは、所定の振動波形を生成するものである。この生成部44dによって生成される所定の振動波形は、後の処理において、圧力センサ42からの計測値データからなる振動波形と比較される。
類似度推移算出部44eは、圧力センサ42からの計測値データからなる振動波形と、生成部44dによって生成された所定の振動波形との類似度推移を算出するものである。そして、判断部44cは、類似度推移算出部44eによって算出された類似度推移に基づいて、ガス漏れ及び使用ガス器具10を判断することとなる。
判断の概略を説明すると、例えば生成された所定の振動波形がガス漏れ発生時の振動波形であって、実際にガス漏れが発生したとする。この場合、実際に圧力センサ42によって計測される振動波形と生成された振動波形とは、類似度が高くなり、類似度推移についても高くなる。このため、判断部44cは、ガス漏れが発生したと判断できる。
また、生成された所定の振動波形がガス漏れ発生時の振動波形であって、実際にガステーブルの使用が開始されたとする。この場合、実際に圧力センサ42によって計測される振動波形と生成された振動波形とは、類似度が高くならず、類似度推移についても高くならない。このため、判断部44cは、ガス漏れの発生でないと判断する。この際、類似度推移には、ガス漏れ発生時とガステーブルの使用開始時との相違が生じる。この相違は、ガス器具10毎に異なる。例えば、ガス漏れ発生時とガステーブルの使用開始時との相違と、ガス漏れ発生時と給湯器の使用開始時との相違とは異なっており、判断部44cは、相違の状態からガステーブルの使用が開始したと判断できる。使用が終了したガス器具10の判断も同様である。
なお、上記は、生成部44dが所定の振動波形としてガス漏れ発生時の振動波形を生成した場合を例に説明したが、これに限らず、生成部44dは、特定のガス器具10の使用が開始されたときの振動波形を生成するようにしてもよいし、他のガス器具10の使用が終了したときの振動波形を生成するようにしてもよい。すなわち、生成部44dは、基準となる振動波形を生成すればよく、その振動波形は何の振動波形であってもよい。
加えて、生成部44dは、全ガス器具10の振動波形(複数の振動波形)を生成し、類似度推移算出部44eは、生成された全ガス器具10の振動波形と、圧力センサ42からの計測信号に基づく振動波形との類似度推移を算出して、類似度推移が最も高いガス器具10を使用ガス器具10と判断してもよい。また、この場合において、全ガス器具10の振動波形と、圧力センサ42からの計測信号に基づく振動波形との類似度推移がいずれも高くないときには、ガス漏れの発生と判断してもよい。
次に、ガス漏れ及び使用ガス器具10の判断についてより詳細に説明する。まず、判断部44cは、時刻t1及び時刻t2に示したようなガス流量の増加時には、ガス漏れが発生しているか否かを判断し、ガス漏れが発生していないと判断できる場合に、使用が開始されたガス器具10を判断する。また、判断部44cは、時刻t3及び時刻t4に示したようなガス流量の減少時には、ガス漏れの判断を行わず、使用が終了したガス器具10を判断する。
なお、以下の実施形態において生成部44dは、基準となる所定の振動波形として、ガス漏れ時における振動波形を生成する場合を例に説明する。
図6は、図2に示した生成部44dにより生成されるガス漏れ振動波形の概略を示す図である。図6に示すように、生成部44dは、圧力が時間の経過と共に低下しながら振動するガス漏れ振動波形を生成する。このガス漏れ振動波形は、減衰振動の周波数、ゲイン、及び減衰比を含む2次遅れのステップ応答の式に基づいて生成された波形である。上記したように、本件発明者らは、ガス漏れ発生直後の微小時間において圧力や流量の計測値に振動が発生することについて見出した。このため、生成部44dは、2次遅れのステップ応答の式に基づいてガス漏れ振動波形を生成する。
再度、図2を参照する。類似度推移算出部44eは、圧力センサ42の計測値データに基づく微小時間中の振動波形と、生成部44dに生成されたガス漏れ振動波形との類似度推移を算出するものである。なお、類似度推移とは、本実施形態において連続的な正規相互相関(NCC:Normalized Cross Correlation)をいう。より具体的には、以下の式(1)により類似度RNCCが求められる。類似度推移算出部44eは、この式(1)による類似度RNCCの算出を連続的に行うことにより、類似度推移(以下、連続NCCという)を求める。
Figure 2011164036
次に、図7を参照してガス漏れ時における圧力変化を説明する。図7は、ガス漏れ時における圧力変化を示す図である。図7に示すように、ガス漏れ発生時には、圧力が低下しつつ振動する波形を示すこととなる。この波形は、図6に示したように生成部44dにより生成されたガス漏れ振動波形と相関が高い。このため、類似度推移の代表値は高い値を示すこととなり、判断部44cはガス漏れが発生したと判断することとなる。
図8は、ガス漏れ時における連続NCCを示すグラフである。なお、図8において実線と破線は、各家庭における配管状態の相違、ガス漏れ箇所の相違、及び、ガス漏れ流量の相違などの条件が異なる場合の連続NCCを示している。
図8に示すように、ガス漏れ時において圧力変化の発生直後(時刻0秒付近)における連続NCCは、「0.7」から「0.8」程度の値を示す。しかし、時刻0.025秒以降について連続NCCは「0.9」以上の値を示す。
このように、ガス漏れ発生時において連続NCCは「0.9」以上の値を示すことから、判断部44cは、類似度推移算出部44eにより算出された類似度推移の代表値が閾値(例えば「0.9」)以上である場合に、ガス漏れが発生していると判断する。ここで、代表値とは、類似度全体又は類似度全体のうち特定期間の平均値であってもよいし、圧力や流量の変化が発生してから、ある特定の時刻における類似度であってもよいし、他の値であってもよい。
なお、類似度推移パターン記憶部45bに、図8に示したような連続NCCのパターンを記憶しておき、判断部44cは、記憶された連続NCCのパターンと、算出された連続NCCとを比較し、両者が近い場合にガス漏れと判断してもよい。
一方、図9に示すようにガス器具使用時には、ガス漏れ時と異なる振動波形を示すこととなる。図9は、ガス器具使用開始時における圧力変化を示すグラフであって、(a)はガステーブル使用開始時における圧力変化を示し、(b)は小型湯沸器使用開始時における圧力変化を示し、(c)は給湯器使用開始時における圧力変化を示している。
図9(a)に示すように、ガステーブルの使用開始時には圧力が2.9kPa程度で滑らかに振動する圧力波形が得られる。また、図9(b)に示すように、小型湯沸器の使用終了時には圧力が2.93kPaを基準にして0.1kPa強振動する圧力波形が得られる。さらに、図9(c)に示すように、給湯器の使用終了時には圧力が2.93kPaを基準にして小型湯沸器よりもやや粗い振動を示す圧力波形が得られる。
図10は、図2に示した類似度推移算出部44eにより算出される連続NCCを示すグラフであって、(a)はガステーブル使用開始時における連続NCCを示し、(b)は小型湯沸器使用開始時における連続NCCを示し、(c)は給湯器使用開始時における連続NCCを示している。
ガステーブルの使用が開始した場合、図9(a)の振動波形が得られ、類似度推移算出部44eにより算出される連続NCCは図10(a)に示すようになる。すなわち、連続NCCは、初期的に「1.0」程度を示し、その後「0.2」を下回り、約0.04秒において「0.95」まで復帰する。そして、連続NCCは、約0.1秒において「0.5」程度となり、その後「0.65」付近までゆっくりと上昇する。
また、小型湯沸器の使用が開始した場合、図9(b)の振動波形が得られ、類似度推移算出部44eにより算出される連続NCCは図10(b)に示すようになる。すなわち、連続NCCは、初期的に「1.0」程度を示し、その後「0.2」を下回り、約0.04秒において「0.9」まで復帰する。そして、連続NCCは、再度「0.4」程度まで低下し、その後、「0.7」付近までゆっくりと上昇する。
また、給湯器の使用が開始した場合、図9(c)の振動波形が得られ、類似度推移算出部44eにより算出される連続NCCは図10(c)に示すようになる。すなわち、連続NCCは、初期的に「0.8」弱を示し、その後「0.2」を下回り、約0.02秒において「0.7」まで復帰する。そして、連続NCCは、「0.6」程度まで低下し、次いで「0.7」程度まで復帰する。その後、連続NCCは再び「0.5」程度まで低下した後に、約0.1秒において「0.6」弱となる。以後、連続NCCは「0.65」付近までゆっくりと上昇していく。
このようにガス器具10の使用開始時において、連続NCCは大半の期間で「0.9」以上を示さない。このため、判断部44cは、連続NCCの代表値が閾値以上でない場合、ガス器具10の使用開始であると判断する。
また、連続NCCはガス器具10毎に異なっている。このため、判断部44cは、このような連続NCCのパターンから使用が開始したガス器具10を判断する。具体的には図2に示す類似度推移パターン記憶部45bに、各ガス器具10の連続NCCのパターンを記憶させておく。すなわち、類似度推移パターン記憶部45bは、ガステーブルについて図10(a)に示したような連続NCCのパターンを記憶し、小型湯沸器について図10(b)に示したような連続NCCのパターンを記憶し、給湯器について図10(c)に示したような連続NCCのパターンを記憶している。そして、判断部44cは、類似度推移パターン記憶部45bにより記憶された連続NCCデータのうち、算出された連続NCCと最も近い連続NCCデータが示すガス器具10の使用が開始したと判断する。
図11は、ガス器具使用終了時における圧力変化を示すグラフであって、(a)はガステーブル使用終了時における圧力変化を示し、(b)は小型湯沸器使用終了時における圧力変化を示し、(c)は給湯器使用終了時における圧力変化を示している。
図11(a)に示すように、ガステーブルの使用終了時には圧力が2.85kPa程度で滑らかに振動する圧力波形が得られる。また、図11(b)に示すように、小型湯沸器の使用終了時には圧力が2.85kPaを基準にして0.1kPa程度振動する圧力波形が得られる。さらに、図11(c)に示すように、給湯器の使用終了時には圧力が2.88kPaを基準にしてガステーブルよりもやや粗い振動を示す圧力波形が得られる。
図12は、図2に示した類似度推移算出部44eにより算出される連続NCCを示すグラフであって、(a)はガステーブル使用終了時における連続NCCを示し、(b)は小型湯沸器使用終了時における連続NCCを示し、(c)は給湯器使用終了時における連続NCCを示している。
ガステーブルの使用が終了した場合、図11(a)の振動波形が得られ、類似度推移算出部44eにより算出される連続NCCは図12(a)に示すようになる。すなわち、連続NCCは、初期的に「0.9」程度を示し、その後「0.2」を下回り、約0.03秒において「0.8」まで復帰する。そして、連続NCCは、約0.1秒において「0.6」程度となり、その後「0.6」付近を維持する。
また、小型湯沸器の使用が終了した場合、図11(b)の振動波形が得られ、類似度推移算出部44eにより算出される連続NCCは図12(b)に示すようになる。すなわち、連続NCCは、初期的に「0.9」程度を示し、その後「0.2」を下回り、約0.01秒において「0.8」まで復帰する。そして、連続NCCは、再度「0.3」程度まで低下し、次いで「0.6」程度まで復帰する。その後、連続NCCは小さな振動を繰り返しながら約0.1秒において「0.6」程度となる。次に、連続NCCは「0.7」付近までゆっくりと上昇する。
また、給湯器の使用が終了した場合、図11(c)の振動波形が得られ、類似度推移算出部44eにより算出される連続NCCは図12(c)に示すようになる。すなわち、連続NCCは、初期的に「0.9」程度を示し、その後「0.2」を下回り、約0.02秒において「0.6」まで復帰する。そして、連続NCCは、再度「0.45」程度まで低下し、次いで「0.6」程度まで復帰する。その後、連続NCCは再び「0.45」程度まで低下した後に、約0.1秒において「0.6」程度となる。次に、連続NCCは「0.7」付近までゆっくりと上昇する。
このように、ガス器具10の使用終了時においても連続NCCはガス器具10毎に異なり、判断部44cは、このような連続NCCのパターンから使用が終了したガス器具10を判断する。具体的には図2に示す類似度推移パターン記憶部45bに、各ガス器具10の連続NCCのパターンを記憶させておく。すなわち、類似度推移パターン記憶部45bは、ガステーブルについて図12(a)に示したような連続NCCのパターンを記憶し、小型湯沸器について図12(b)に示したような連続NCCのパターンを記憶し、給湯器について図12(c)に示したような連続NCCのパターンを記憶している。そして、判断部44cは、類似度推移パターン記憶部45bにより記憶された連続NCCデータのうち、算出された連続NCCと最も近い連続NCCデータが示すガス器具10の使用が終了したと判断する。
次に、生成部44dによって生成される所定の振動波形の生成手法について説明する。生成部44dは、以下のようにしてガス漏れ振動波形を生成する。まず、生成部44dは以下の式(2)を記憶している。
Figure 2011164036
ここで、y(t)は圧力の変化量を示し、Kはゲインを示し、ωは減衰振動の周波数を示し、ζは減衰比を示している。特に、ゲインK、減衰振動の周波数ω、及び減衰比ζは、圧力センサ42によって実際に計測された波形から求められるものである。次に、これらの算出方法について図7を参照して説明する。
生成部44dは、以下の式(3)から、減衰振動の周波数ωを算出する。
Figure 2011164036
ここで、Tpは行き過ぎ時間であり、図7で示すように、圧力変化発生時から最初の極値V1(極小値V1)までの時間をいう。生成部44dは、計測値データから最初の極値V1が確認されると、行き過ぎ時間Tpを求め、式(3)から減衰振動の周波数ωを算出する。
なお、減衰振動の周波数ωは、式(3)から求める場合に限らず、圧力変化発生時から2つ目の極値M(極大点M)や、3つ目の極値V2(極小点V2)に基づいて算出してもよい。
次に、生成部44dは、以下の式(4)から、ゲインKを算出する。
Figure 2011164036
このような式であるため、生成部44dは、計測値データから極値V1,M,V2が確認されると、式(4)からゲインKを算出する。
なお、図7から明らかなように、ゲインKは圧力変化発生前の圧力値と圧力変化発生後の圧力値との差分によっても求めることができる。従って、生成部44dは、圧力変化が発生して圧力値が略一定値となったとき(図7では時刻0.4秒)に、差分からゲインKを求めてもよい。さらに、類似度推移算出部44eは、圧力変化発生時から4つ目以降の極値を加味してゲインKを算出してもよい。
次いで、生成部44dは、以下の式(5)から、減衰比ζを算出する。
Figure 2011164036
ここで、δは対数減衰率であり、mは周期数である。式(5)の場合、周期数mは「0.5」となる。
このような式であるため、生成部44dは、計測値データから極値V1,Mが確認されると、式(5)から減衰比ζを算出する。
以上のように、生成部44dは、ゲインK、減衰振動の周波数ω、及び減衰比ζを算出し、式(2)より振動波形の式を求める。そして、類似度推移算出部44eは、求めた式と、計測値データ(圧力波形)とから、式(1)に従って連続NCCを求めることとなる。
ここで、生成部44dは、減衰振動の周波数ω、及び減衰比ζを以下のようにして算出するようにしてもよい。すなわち、図7に示す振動波形は、ガス漏れ時の流量に依存する傾向にある。このため、生成部44dは、流量値のみを変数に含む式を予め記憶し、この式に流量値を代入して、減衰振動の周波数ω、及び減衰比ζを求めるようにしてもよい。
具体的に生成部44dは、以下の式(6)から減衰振動の周波数ω、及び減衰比ζを求める。
Figure 2011164036
ここで、Lは流量値であり、a,a,b,bは定数である。このように、式(6)から求めることで演算量を減らして、算出処理の簡素化を図るようにしてもよい。なお、流量と圧力には一定の相関がある。このため、式(6)に代えて圧力値のみを変数に含む式を記憶し、この式から減衰振動の周波数ω、及び減衰比ζを求めるようにしてもよい。
さらに、この場合、生成部44dは、ゲインKについて式(4)から算出することなく、圧力変化発生前の圧力値と圧力変化発生後の圧力値との差分によっても求めることが望ましい。これにより、一層演算量を減らすことができるからである。
次に、フローチャートを参照して、本実施形態に係る膜式ガスメータ40の動作を説明する。図13は、本実施形態に係る膜式ガスメータ40の動作の一例を示すフローチャートである。
まず、図13に示すように、制御部44は第1トリガ信号が発生したか否かを判断する(S1)。一方、トリガ信号が発生したと判断した場合(S1:YES)、サンプリング時間調整部44aは、サンプリング時間を通常のサンプリング時間よりも短縮し、短縮されたサンプリング時間で圧力を計測する(S2)。その後、制御部44は、微小時間経過したか否かを判断する(S3)。微小時間経過していないと判断した場合(S3:NO)、処理はステップS2に移行する。
微小時間経過したと判断した場合(S3:YES)、制御部44は、ガス漏れ/開始ガス器具判断処理を実行する(S4)。ここで、ステップS1において「YES」と判断され、第1トリガ信号が発生したということは、ガス流量が増加したりガス圧力が減少したりした場合であり、ガス漏れの発生かガス器具10の使用であると判断できるため、制御部44は、ガス漏れ/開始ガス器具判断処理を実行する。
その後、制御部44は、ステップS4の処理においてガス漏れが発生していたか否かを判断する(S5)。ガス漏れが発生していたと判断した場合(S5:YES)、制御部44は遮断弁を弁閉するなどの保安処理を実行し(S6)、図13に示す処理は終了する。また、ガス漏れが発生していなかったと判断した場合(S5:NO)、制御部44は、保安処理を実行することなく、図13に示す処理は終了する。
一方、トリガ信号が発生していないと判断した場合(S1:NO)、制御部44は、第2トリガ信号が発生したか否かを判断する(S7)第2トリガ信号が発生されていなかったと判断した場合(S7:NO)、処理はステップS1に移行する。
一方、第2トリガ信号が発生したと判断した場合(S7:YES)、制御部44は、ステップS8,S9においてステップS2,S3と同様の処理を実行する。そして、制御部44は、終了ガス器具判断処理を実行する(S10)。ここで、ステップS7において「YES」と判断され、第2トリガ信号が発生したということは、ガス流量が減少したりガス圧力が上昇したりした場合であり、ガス器具10の使用終了時であると判断できるため、ガス漏れの発生ではないといえる。よって、制御部44は、終了ガス器具判断処理を実行する。その後、図13に示す処理は終了する。
図14は、図13に示したガス漏れ/開始ガス器具判断処理(S5)の詳細を示すフローチャートである。図14に示すように、まず、生成部44dは、微小時間中に得られた振動波形から、減衰振動の周波数ω、ゲインK、及び減衰比ζを決定する(S11)。このとき、生成部44dは、減衰振動の周波数ω、ゲインK、及び減衰比ζを式(3)〜式(5)に基づいて算出してもよいし、式(6)から求めてもよい。
次に、生成部44dは、ステップS11により決定された減衰振動の周波数ω、ゲインK、及び減衰比ζから、2次遅れのステップ応答の式に基づいてガス漏れ振動波形を生成する(S12)。このとき、生成部44dは、ステップS11により決定された減衰振動の周波数ω、ゲインK、及び減衰比ζを式(2)に代入することにより、ガス漏れ振動波形を生成する。
そして、判断部44cは、ステップS12において生成されたガス漏れ振動波形と、微小時間中に得られた振動波形とに基づいて、式(1)から連続NCCを算出する(S13)。
次に、判断部44cは、連続NCCの代表値を決定し、代表値が閾値以上であるか否かを判断する(S14)。代表値が閾値以上であると判断した場合(S14:YES)、制御部44は、ステップS15〜S18の処理においてノイズにより代表値が閾値以上となったか否かの確認を行う。ここで、一般に代表値が閾値以上の場合にはガス漏れと判断できる。しかし、ガス圧力は、GHP(ガスヒートポンプ)の脈動によって振動する傾向にある。このため、この振動が偶然にガス漏れ時の振動と似てしまい、判断部44cがガス漏れと誤判断してしまう場合がある。このため、制御部44は、ステップS15〜S18の処理を実行し、ガス漏れであるか否かの判断精度を向上させることとしている。
まず、ステップS15において制御部44は圧力センサ42からの計測信号が安定したか否か、すなわち圧力が安定したか否かを判断する(S15)。圧力が安定していないと判断した場合(S15:NO)、安定したと判断されるまで、この処理が繰り返される。一方、圧力が安定したと判断した場合(S15:YES)、制御部44は圧力降下量を算出する(S16)。その後、圧力/流量換算部44bは、相関データ記憶部45aに記憶される相関関係のデータと、ステップS16において算出した圧力降下量とに基づいて、流量を算出する(S17)。
次に、判断部44cは、ステップS17において算出された換算流量が所定値以上であるか否かを判断する(S18)。ここで、GHP等の脈動が発生した場合には、脈動のみであるため、圧力降下が殆ど生じず、換算流量は所定値以上となり難い傾向にある。一方、脈動でなくガス漏れである場合、ガス漏れにより所定値以上の流量が発生する傾向にある。このため、ステップS17において算出された換算流量が所定値以上であると判断した場合(S18:YES)、判断部44cはガス漏れであると判断する(S19)。そして、図14に示す処理は終了する。
また、ステップS17において算出された換算流量が所定値以上でないと判断した場合(S18:YES)、判断部44cは脈動である可能性が高いと判断し、ガス漏れであると判断せず、図14に示す処理は終了する。
ところで、ステップS14において代表値が閾値以上でないと判断した場合(S14:NO)、判断部44cは、類似度推移パターン記憶部45bからガス器具10毎の類似度推移データを読み出す(S20)。次いで、判断部44cは、ステップS20にて読み出したガス器具10毎の連続NCCデータのうち、ステップS13において算出した連続NCCと最も近いものを特定し、使用が開始したガス器具10を判断する(S21)。その後、図14に示す処理は終了する。
図15は、図13に示した終了ガス器具判断処理(S9)の詳細を示すフローチャートである。図15に示すステップS31〜S33において、図14に示したステップS11〜S13と同様の処理が実行される。
その後、図15に示すステップS34,S35において、図14に示したステップS20,S21と同様の処理が実行される。そして、図15に示す処理は終了する。
このようにして、本実施形態に係る膜式ガスメータ40によれば、流量と圧力との相関関係を記憶し、圧力センサ42からの計測信号と記憶された流量と圧力との相関関係とに基づいて、流量を算出する。ここで、圧力と流量とには一定の相関があるため、圧力センサ42からの計測信号が得られれば、少なくとも2回の流量パルスを待つことなく、流量を算出することができる。従って、流量の算出時間を短縮することが可能な膜式ガスメータ40を提供することができる。
また、圧力センサ42により出力された計測信号の所定以上の変化時からの微小時間中に得られる振動波形から、ガス漏れを判断する。ここで、本件出願人らは、ガス漏れが発生した場合、計測信号の所定以上の変化時から微小時間経過するまでの波形に、ガス漏れ固有の振動を示すことを見出した。このため、所定以上の変化時からの微小時間中に得られる振動波形からガス漏れを判断することができる。また、圧力についてはGHPの脈動等により振動が発生することがあり、これをガス漏れと誤認してしまう可能性があるが、圧力センサ42からの計測信号と記憶された流量と圧力との相関関係とに基づいて、流量を算出し、この流量が所定値以上であるか否かに基づいてガス漏れを判断することで、GHPの脈動等により振動が発生したとしても流量値が所定値以上とならない場合には、ガス漏れと判断しなくすることができる。従って、ガス漏れ判断精度を向上させることができる。
次に、本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態に係る膜式ガスメータ40は、第1実施形態のものと同様であるが、構成及び処理内容が一部異なっている。以下、第1実施形態との相違点を説明する。
図16は、第2実施形態に係る膜式ガスメータ40の詳細を示す構成図である。図16に示すように、第2実施形態に係る膜式ガスメータ40は、生成部44d及び類似度推移算出部44eに代えて、解析部44fを備えている。
解析部44fは、圧力センサ42からの計測信号に基づく振動波形を解析して、周波数と振幅との相関を示すスペクトルデータを算出するものである。具体的に本実施形態に係る解析部44fは、振動波形をフーリエ変換することにより、スペクトルデータを算出する。なお、解析部44fはフーリエ変換によりスペクトルデータを算出する場合に限らず、他の方法によってスペクトルデータを算出するようにしてもよい。
図17は、図16に示した解析部44fにより算出されるスペクトルデータを示すグラフであって、ガス漏れが発生したときの圧力波形をフーリエ変換して得られるスペクトルデータを示すグラフである。図17に示すように、ガス漏れが発生した場合、得られる圧力波形には20Hz以上の周波数成分が殆ど含まれていない。なお、60Hz付近において存在するピークは、商用電源によるノイズであると考えられる。
図18は、図16に示した解析部44fにより算出されるスペクトルデータを示すグラフであって、(a)はガステーブル使用開始時におけるスペクトルデータを示し、(b)は小型湯沸器使用開始時におけるスペクトルデータを示し、(c)は給湯器使用開始時におけるスペクトルデータを示している。
図18(a)に示すように、ガステーブルの使用が開始した場合、得られる圧力波形には30Hz以下の周波数成分が多く、特に10〜20Hz付近において大きな振幅を示す傾向がある。また、図18(b)に示すように、小型湯沸器の使用が開始した場合、圧力波形は150Hzまでの圧力成分を含んでおり、特に30Hz程度では非常に大きな振幅を示す傾向がある。さらに、図18(c)に示すように、給湯器の使用が開始した場合、圧力波形は180Hzまでの圧力成分を含んでおり、特に20Hz程度では非常に大きな振幅を示す傾向がある。
図19は、図16に示した解析部44fにより算出されるスペクトルデータを示すグラフであって、(a)はガステーブル使用終了時におけるスペクトルデータを示し、(b)は小型湯沸器使用終了時におけるスペクトルデータを示し、(c)は給湯器使用終了時におけるスペクトルデータを示している。
図19(a)に示すように、ガステーブルの使用が終了した場合、得られる圧力波形には30Hz以下の周波数成分が多く、特に10〜20Hz付近において大きな振幅を示す傾向がある。また、図19(b)に示すように、小型湯沸器の使用が終了した場合、圧力波形は150Hzまでの圧力成分を含んでおり、特に90Hz程度で大きな振幅を示す傾向がある。さらに、図19(c)に示すように、給湯器の使用が終了した場合、30Hz程度でやや大きな振幅を示す程度であり、その他の周波数成分を殆ど含まない傾向がある、なお、50Hz付近において存在するピークは、商用電源によるノイズであると考えられる。
再度、図16を参照する。記憶部45は、類似度推移パターン記憶部45bに代えて、スペクトルデータ記憶部45cを記憶している。このスペクトルデータ記憶部45cは、図17〜図19に示したようなスペクトルデータを記憶している。そして、判断部44cは、このスペクトルデータに基づいて、ガス漏れ及び使用ガス器具10を判断する。
すなわち、解析部44fは計測値データに基づく振動波形をフーリエ変換してスペクトルデータを算出する。判断部44cは、解析部44fにより算出されたスペクトルデータと、スペクトルデータ記憶部45cにより記憶されたスペクトルデータとを比較し、類似度が最も高いスペクトルデータを特定し、ガス漏れの発生や使用ガス器具10について判断する。ここで、類似度とは、上記したNCCであってもよいし、他の手法により算出された類似度であってもよい。
次に、フローチャートを参照して、第2実施形態に係る膜式ガスメータ40の動作を説明する。なお、第2実施形態において膜式ガスメータ40のフロー及び管理センター50のメインフローは第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
図20は、図13に示したガス漏れ/開始ガス器具判断処理(S5)の詳細を示す第2のフローチャートである。図20に示すように、まず、解析部44fは、圧力センサ42からの計測信号に基づく振動波形をフーリエ変換し、スペクトルデータを算出する(S41)。その後、判断部44cは、ガス漏れのスペクトルデータを読み出し(S42)、読み出したガス漏れのスペクトルデータと、ステップS41にて算出したスペクトルデータとの類似度を算出する(S43)。
次に、判断部44cは、ステップS43にて算出した類似度が特定値以上であるか否かを判断する(S44)。ステップS43にて算出した類似度が特定値以上であると判断した場合(S44:YES)、制御部44は、ステップS45〜S48の処理においてノイズにより類似度が特定値以上となったかどうかの確認を行う。ここで、ここで、一般に類似度が特定値以上の場合にはガス漏れと判断できる。しかし、ガス圧力は、GHP(ガスヒートポンプ)の脈動によって振動する傾向にある。このため、この振動が偶然にガス漏れ時の振動と似てしまい、判断部44cがガス漏れと誤判断してしまう場合がある。このため、制御部44は、ステップS15〜S18の処理を実行し、ガス漏れであるか否かの判断精度を向上させることとしている。
そして、ステップS45〜S48において図14に示したステップS15〜S18と同様の処理を実行し、ステップS48において「YES」と判断された場合(S48:YES)、判断部44cはガス漏れが発生したと判断する(S49)。そして、図20に示す処理は終了する。一方、ステップS48において「NO」と判断された場合(S48:NO)、判断部44cはガス漏れが発生したと判断せず、図20に示す処理は終了する。
ところで、ステップS43にて算出した類似度が特定値以上でないと判断した場合(S44:NO)、判断部44cは、ガス器具10毎のスペクトルデータを読み出し(S50)、読み出したガス器具10毎のスペクトルデータと、ステップS41にて算出したスペクトルデータとの類似度を算出する(S51)。
その後、判断部44cは、類似度が最大となったスペクトルデータが示す種類のガス器具10の使用が開始したと判断する(S52)。そして、図20に示す処理は終了する。
図21は、図13に示した終了ガス器具判断処理(S9)の詳細を示す第2のフローチャートである。図21に示すステップS61において、図20に示したステップS41と同様の処理が実行される。
その後、図21に示すステップS62〜S64において、図20に示したステップS50〜S52と同様の処理が実行される。そして、図21に示す処理は終了する。
このようにして、第2実施形態に係るガス供給システム1及びガス使用状況判断方法によれば、第1実施形態と同様に、流量の算出時間を短縮することが可能な膜式ガスメータ40を提供することができ、ガス漏れ判断精度を向上させることができる。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。
例えば第1実施形態において類似度推移を式(1)により算出しているが、これに限らず、他の方法で類似度推移を算出するようにしてもよい。
また、第1実施形態において判断部44cは、類似度推移パターン記憶部45bに記憶された連続NCCデータのうち、判断部44cにより算出された連続NCCと近いものが存在しない場合、類似度推移パターン記憶部45bに記憶された連続NCCデータが示すガス器具10に不足があると判断してもよい。
また、本実施形態では燃料ガスをLPガスとする場合の例について説明したが、これに限らず、都市ガスの場合にも適用可能である。
また、本実施形態において微小時間を最大で2秒(望ましくは1秒以内)としているが、2秒よりも長い時間であってもよい。
また、本実施形態において類似度推移パターン記憶部45bは、ガス器具10毎の連続NCCデータを記憶している。この連続NCCデータは、1つのガス器具10に対して1つだけ記憶されていてもよいし、1つのガス器具10に対して複数記憶されていてもよい。例えば、給湯器では給湯器内の水温によって連続NCCが異なってくる。この場合、類似度推移パターン記憶部45bに記憶される連続NCCデータが1つだけであると、給湯器の水温に応じて使用ガス器具10の判断を誤ってしまう可能性がある。そこで、このようなガス器具10に対しては複数の連続NCCデータを記憶しておくことが望ましい。これにより、より精度良く使用ガス器具10を判断することができるからである。
また、第2実施形態において解析部44fは、スペクトルデータの全周波数域で類似度を算出しているが、これに限らず一部の周波数域のみで類似度を算出してもよい。例えば、給湯器の使用終了時では100Hz以上の周波数域においてもスペクトルデータに大きな振幅が得られるという特徴があるため、100Hz以上の周波数域についてスペクトルデータの類似度を算出することによっても使用が終了したガス器具10を特定することができる。このように、一部の周波数域のみで類似度を算出して演算量を減らすこともできる。
また、上記実施形態では、使用が開始したガス器具10、使用が終了したガス器具10、及び、ガス漏れについて、連続NCCを求めたり、スペクトルデータを求めたりすることで、判断している。しかし、これに限らず、例えば、図7、図9及び図11に示すような微小時間における波形を直接記憶しておき、波形同士の類似度などから、使用が開始したガス器具10、使用が終了したガス器具10、及び、ガス漏れを判断するようにしてもよい。さらには、波形の特定点など波形の直接の特徴から使用が開始したガス器具10、使用が終了したガス器具10、及び、ガス漏れを判断するようにしてもよい。
1…ガス供給システム
10…ガス器具
20…調整器
31…第1配管
32…第2配管
40…膜式ガスメータ
41…流量センサ
42…圧力センサ
43…トリガ信号発生部
44…制御部
44a…サンプリング時間調整部
44b…圧力/流量換算部(流量算出手段)
44c…判断部(判断手段)
44d…生成部
44e…類似度推移算出部
44f…解析部
45…記憶部
45a…相関データ記憶部(相関関係記憶手段)
45b…類似度推移パターン記憶部
45c…スペクトルデータ記憶部

Claims (2)

  1. 燃料ガスの流量の発生により膜を前後運動させ、その膜の前後運動から流量パルスを発生させ、この流量パルスに基づいて発生した流量を算出する膜式ガスメータであって、
    燃料ガスの圧力に応じた計測信号を出力する圧力センサと、
    流量と圧力との相関関係を記憶した相関関係記憶手段と、
    前記圧力センサからの計測信号と前記相関関係記憶手段により記憶された流量と圧力との相関関係とに基づいて、流量を算出する流量算出手段と、
    を備えることを特徴とする膜式ガスメータ。
  2. 前記圧力センサにより出力された計測信号の所定以上の変化時からの微小時間中に得られる振動波形から、ガス漏れを判断する判断手段をさらに備え、
    前記判断手段は、前記振動波形に加えて、前記流量算出手段により算出された流量が所定値以上であるか否かに基づいて、ガス漏れを判断する
    ことを特徴とする請求項1に記載の膜式ガスメータ。
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