しかし、特許文献1〜3に記載の装置では、約2秒に1回の流量計測を行うと共に、流量の大きさ、及び、流量と圧力と温度との相関関係に基づいてポイント加算を行い、ポイントに基づいてガス漏れを判断している。このため、ポイント加算が終了するまで比較的長期の計測が必要となり、ガス漏れ判断の迅速性に欠けるものであった。
また、特許文献4の装置では、ガス器具を判別した後に継続使用時間に基づいてガス漏れを判断することとなる。このため、継続使用時間の監視が必要となり、ガス漏れ判断の迅速性に欠けるものであった。
また、特許文献5の装置においても、出力抵抗が一定時間変化しないことを検出しなければ、ガス漏れを判断できず、一定時間中における出力抵抗の監視が必要となり、ガス漏れ判断の迅速性に欠けるものであった。
さらに、特許文献6の装置においても、ガス漏れを判断するために、ガス流路内にガスを再充填させる必要があり、しかも特性を得るために再充填期間中にガス流量や圧力を例えば5秒程度計測する必要がある。このため、ガス漏れ判断の迅速性に欠けるものであった。
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その発明の目的とするところは、ガス漏れ判断についての迅速性を向上させることが可能なガス漏れ判断装置及びガス漏れ判断方法を提供することにある。
本発明のガス漏れ判断装置は、流路内のガス圧力に応じた計測値の信号を出力する圧力センサ、及び、流路内のガス流量に応じた計測値の信号を出力する流量センサの少なくとも一方の計測センサから信号を入力する入力手段と、前記入力手段により入力された前記計測センサからの信号に基づいて、ガス漏れと仮定された場合のガス漏れ振動波形を生成する生成手段と、前記入力手段により入力された前記計測センサからの当該信号の波形と前記生成手段により生成されたガス漏れ振動波形との類似度推移を算出する類似度推移算出手段と、前記類似度推移算出手段により算出された類似度推移に基づいて、ガス漏れの発生を判断する判断手段と、を備えることを特徴とする。
このガス漏れ判断装置によれば、計測センサからの信号の波形と生成されたガス漏れ振動波形との類似度推移を算出し、算出した類似度推移に基づいて、ガス漏れの発生を判断する。ここで、本件発明者らは、ガス漏れ発生直後の微小時間において圧力や流量の計測値に振動が発生することを見出した。このため、計測センサからの信号の波形と生成されたガス漏れ振動波形との類似度は高くなる傾向にあり、類似度推移についても全体的に高い値を示す傾向にある。よって、この特徴から、ガス漏れを判断することができる。しかも、この判断において必要なデータは微小時間分のデータであるため、僅かな時間でガス漏れを判断することができる。従って、ガス漏れ判断についての迅速性を向上させることができる。
また、本発明のガス漏れ判断装置において、前記生成手段により生成されたガス漏れ振動波形は、減衰振動の周波数、ゲイン、及び減衰比を含む2次遅れのステップ応答の式に基づいて生成されることが好ましい。
このガス漏れ判断装置によれば、生成されたガス漏れ振動波形は、減衰振動の周波数、ゲイン、及び減衰比を含む2次遅れのステップ応答の式に基づいて生成される。ここで、ガス漏れ時には、ガス漏れ発生前の流量値や圧力値からガス漏れ発生後の流量値や圧力値に値が遷移する。このため、単純減衰振動の式から決定された振動波形を記憶しておくよりも、2次遅れのステップ応答の式に基づいて生成されたガス漏れ振動波形を記憶している方が、現実に沿った適切なガス漏れ振動波形を記憶させることができる。
また、本発明のガス漏れ判断装置において、減衰振動の周波数は、変数に計測値のみを含む式から算出されることが好ましい。
このガス漏れ判断装置によれば、減衰振動の周波数は変数に計測値のみを含む式から算出される。ここで、減衰振動の周波数を算出するためには、行き過ぎ時間の計測が必要となるが、変数に計測値のみを含む式から算出されるため、行き過ぎ時間の計測が不要となり、減衰振動の周波数の算出について簡素化を図ることができる。
また、本発明のガス漏れ判断装置において、減衰比は、変数に計測値のみを含む式から算出されることが好ましい。
このガス漏れ判断装置によれば、減衰比は変数に計測値のみを含む式から算出される。ここで、減衰比を算出するためには、振動波形の極値等が必要となるが、変数に計測値のみを含む式から算出されるため、極値算出が不要となり、減衰比の算出について簡素化を図ることができる。
また、本発明のガス漏れ判断装置において、前記2次遅れのステップ応答の式においてゲインをKとし、前記計測センサからの信号の波形における最初の極値をV1とし、2番目の極値をMとし、3番目の極値をV2とした場合、ゲインKは、K=(V1+2M+V2)/4なる演算式から算出されることが好ましい。
このガス漏れ判断装置によれば、2次遅れのステップ応答の式においてゲインをKとし、計測センサからの信号の波形における最初の極値をV1とし、2番目の極値をMとし、3番目の極値をV2とした場合、ゲインKは、K=(V1+2M+V2)/4なる演算式から算出される。このように、ゲインKの算出にあたり1番目から3番目の極値を用いることで、振動収束までの計測値を監視することなくゲインKの算出が可能となり、早期にゲインKを算出することができる。特に、LPガスを使用する家庭等においては、調整器が設けられており、ガス漏れ時には調整器による圧力調整によってガス漏れ以外の要因による計測値の振動も加わってしまう。このため、1番目から3番目の極値という調整器による圧力調整前の振動波形の極値からゲインKを算出することで、ゲイン算出の精度向上を図ることができる。
また、本発明のガス漏れ判断装置において、前記2次遅れのステップ応答の式において減衰比をζとし、最初の極値V1から2番目の極値Mまでの周期数をmとした場合、減衰比ζは、δ=[(1/m)Ln{(V1−K)/(M−K)}]/2πなる演算式から算出されることが好ましい。
このガス漏れ判断装置によれば、2次遅れのステップ応答の式において減衰比をζとし、最初の極値V1から2番目の極値Mまでの周期数をmとした場合、減衰比ζは、δ=[(1/m)Ln{(V1−K)/(M−K)}]/2πなる演算式から算出される。このように、減衰比ζの算出にあたり1番目と2番目の極値を用いることで、振動収束までの計測値を監視することなく減衰比ζの算出が可能となり、早期に減衰比ζを算出することができる。特に、LPガスを使用する家庭等においては、調整器が設けられており、ガス漏れ時には調整器による圧力調整によってガス漏れ以外の要因による計測値の振動も加わってしまう。このため、1番目と2番目の極値という調整器による圧力調整前の振動波形の極値から減衰比ζを算出することで、ゲイン算出の精度向上を図ることができる。
また、本発明のガス漏れ判断装置において、ガス器具それぞれが使用された場合における計測値と、前記生成手段により生成されたガス漏れ振動波形との類似度推移データを予め記憶した記憶手段をさらに備え、前記判断手段は、前記類似度推移算出手段により算出された類似度推移に基づいてガス漏れが発生していないと判断した場合、ガス器具のいずれかが使用されたと判断すると共に、前記記憶手段により記憶された類似度推移データのうち、算出された類似度推移と最も近い類似度推移データが示すガス器具が使用されたと判断することが好ましい。
このガス漏れ判断装置によれば、算出された類似度推移に基づいてガス漏れが発生していないと判断した場合、ガス器具のいずれかが使用されたと判断する。ここで、類似度推移が算出される場合とは、ガスの流れが発生した場合であり、ガス漏れ時かガス器具使用時である場合が殆どである。このため、ガス漏れが発生していないと判断した場合、ガス器具のいずれかが使用されたと判断する。
また、ガス器具それぞれが使用された場合における計測値と、生成されたガス漏れ振動波形との類似度推移データを予め記憶している。ここで、ガス漏れ振動波形とガス器具使用時の計測値の信号との類似度は決して高いとはいえないが、類似度推移を観察するとガス器具毎の特徴が表れる傾向がある。記憶手段は、このような特徴を有したガス器具毎の類似度推移データを記憶している。
加えて、ガス漏れが発生していないと判断した場合、記憶された類似度推移データのうち、算出された類似度推移と最も近い類似度推移データが示すガス器具が使用されたと判断する。このように、判断手段は、類似度推移という特徴に着目し、たとえガス漏れが発生していない場合であっても、類似度の推移から使用されたガス器具を判断することができる。従って、使用されたガス器具を判断して、保安やサービスの充実を図ることができる。
また、本発明のガス漏れ判断装置において、前記類似度推移算出手段により算出された各類似度から、類似度推移全体の平均値を差し引いて補正類似度推移を算出する補正手段をさらに備え、前記記憶手段は、前記補正手段により補正された補正類似度推移に基づいて、予め記憶された類似度推移データを更新することが好ましい。
このガス漏れ判断装置によれば、算出された各類似度から、類似度推移全体の平均値を差し引いて補正類似度推移を算出し、補正類似度推移に基づいて、予め記憶された類似度推移データを更新する。ここで、各家庭では配管状態が相違している場合が多い。このような配管状態の相違から算出された類似度推移に関しても、各家庭等において相違が発生する。特に、この相違は類似度の高さに影響を及ぼすものであり、類似度推移全体の平均値にて減算することにより、軽減できるものである。従って、補正類似度推移に基づいて、予め記憶された類似度推移データを更新することで、記憶された類似度推移データを各家庭等にあわせて、ガス器具の判定精度の向上を図ることができる。
また、本発明のガス漏れ判断装置において、ガス器具それぞれが使用された場合における計測値と、前記生成手段により生成されたガス漏れ振動波形との類似度推移データを予め記憶した第1記憶手段と、ガス漏れがあったと仮定されたときの計測値と、前記生成手段により生成されたガス漏れ振動波形との類似度推移データを予め記憶した第2記憶手段と、をさらに備え、前記判断手段は、前記第1及び第2記憶手段により記憶された類似度推移データのうち、算出された類似度推移と最も近い類似度推移データが前記第2記憶手段に記憶される類似度推移データである場合、ガス漏れが発生していると判断し、前記最も近い類似度推移データが前記第1記憶手段に記憶される類似度推移データである場合、その類似度推移データが示すガス器具が使用されていると判断することが好ましい。
ここで、ガス漏れ振動波形とガス器具使用時の計測値の信号との類似度は決して高いとはいえないが、類似度推移を観察するとガス器具毎の特徴が表れる傾向がある。第1記憶手段は、このような特徴を有したガス器具毎の類似度推移データを記憶している。また、ガス漏れ振動波形とガス漏れ時の計測値の信号との類似度は高く、類似度推移を観察すると類似度推移全体として一致する傾向にある。第1記憶手段は、このような全体として一致する類似度推移データを記憶している。
加えて、記憶された類似度推移データのうち、算出された類似度推移と最も近い類似度推移データが第1記憶手段に記憶される類似度推移データである場合、その類似度推移データが示すガス器具が使用されたと判断する。このように、判断手段は、類似度推移という特徴に着目し類似度の推移から使用されたガス器具を判断することができる。同様に、最も近い類似度推移データが第2記憶手段に記憶される類似度推移データである場合、ガス漏れと判断する。このように、判断手段は、類似度推移全体として一致する場合にはガス漏れと判断する。
従って、使用されたガス器具を判断して、保安やサービスの充実を図ることができる。さらには、ガス漏れと使用ガス器具の特定とを同時的に行うことができる。
また、本発明のガス漏れ判断装置において、前記類似度推移算出手段により算出された各類似度から、類似度推移全体の平均値を差し引いて補正類似度推移を算出する補正手段をさらに備え、前記第2記憶手段は、前記補正手段により補正された補正類似度推移に基づいて、予め記憶された類似度推移データを更新することが好ましい。
このガス漏れ判断装置によれば、算出された各類似度から、類似度推移全体の平均値を差し引いて補正類似度推移を算出し、補正類似度推移に基づいて、予め記憶された類似度推移データを更新する。ここで、各家庭では配管状態が相違している場合が多い。このような配管状態の相違から算出された類似度推移に関しても、各家庭等において相違が発生する。特に、この相違は類似度の高さに影響を及ぼすものであり、類似度推移全体の平均値にて減算することにより、軽減できるものである。従って、補正類似度推移に基づいて、予め記憶された類似度推移データを更新することで、記憶された類似度推移データを各家庭等にあわせて、ガス器具の判定精度の向上を図ることができる。
また、本発明のガス漏れ判断装置において、前記入力手段により入力された計測値の信号に基づいて、計測値が変動したと判断した場合に、前記計測センサからの信号のサンプリング時間を計測値変動前よりも短縮するサンプリング時間調整手段をさらに備えることが好ましい。
このガス漏れ判断装置によれば、計測値が変動したと判断した場合に、計測センサからの信号のサンプリング時間を計測値変動前よりも短縮するサンプリング時間調整手段をさらに備えるため、微小時間内に発生する振動波形を適切に計測することができる。
本発明のガス漏れ判断方法は、流路内のガス圧力に応じた計測値の信号を出力する圧力センサ、及び、流路内のガス流量に応じた計測値の信号を出力する流量センサの少なくとも一方の計測センサから信号を入力する入力工程と、前記入力工程において入力された前記計測センサからの信号に基づいて、ガス漏れと仮定された場合のガス漏れ振動波形を生成する生成工程と、前記入力工程において入力された前記計測センサからの当該信号の波形と前記生成工程において生成されたガス漏れ振動波形との類似度推移を算出する類似度推移算出工程と、前記類似度推移算出工程において算出された類似度推移に基づいて、ガス漏れの発生を判断する判断工程と、を有することを特徴とする。
このガス漏れ判断方法によれば、計測センサからの信号の波形と生成されたガス漏れ振動波形との類似度推移を算出し、算出した類似度推移に基づいて、ガス漏れの発生を判断する。ここで、本件発明者らは、ガス漏れ発生直後の微小時間において圧力や流量の計測値に振動が発生することを見出した。このため、計測センサからの信号の波形と生成されたガス漏れ振動波形との類似度は高くなる傾向にあり、類似度推移についても全体的に高い値を示す傾向にある。よって、この特徴から、ガス漏れを判断することができる。しかも、この判断において必要なデータは微小時間分のデータであるため、僅かな時間でガス漏れを判断することができる。従って、ガス漏れ判断についての迅速性を向上させることができる。
本発明によれば、ガス漏れ判断についての迅速性を向上させることが可能なガス漏れ判断装置、及びガス漏れ判断方法を提供することができる。
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係るガス漏れ判断装置を含むガス供給システムの構成図である。ガス供給システム1は、ガスストーブ、ファンヒータ、給湯器、床暖房及びテーブルコンロなどの各ガス器具10に燃料ガスを供給するものであって、複数のガス器具10と、ガス供給元の調整器20と、配管31,32と、ガスメータ(ガス漏れ判断装置)40とを備えている。なお、図1に示す例では、ガスメータ40をガス漏れ判断装置の一例として挙げるが、ガス漏れ判断装置はガスメータ40に限るものではない。
調整器20は上流からの燃料ガスを所定圧力に調整して第1配管31に流すものである。第1配管31は、調整器20とガスメータ40とを接続するものである。第2配管32はガスメータ40とガス器具10とを接続する配管である。ガスメータ40は、燃料ガスの流量を測定して積算流量を表示するものである。このようなガス供給システム1では、ガスメータ40内に第1配管31及び第2配管32とつながる流路が形成されており、調整器20を通じて流れてきた燃料ガスは第1配管31からガスメータ40、及び第2配管32を通じてガス器具10に到達し、ガス器具10において燃焼されることとなる。
図2は、図1に示したガスメータ40の詳細を示す構成図である。図2に示すようにガスメータ40は、圧力センサ(計測センサ)41と、流量センサ(計測センサ)42と、制御部43とを有している。圧力センサ41は、ガスメータ40の流路内におけるガス圧力に応じた計測値の信号を出力するものである。流量センサ42は、ガスメータ40の流路内におけるガス流量に応じた計測値の信号を出力するものである。
制御部43は、ガス漏れ判断等を行うものであって、入力部(入力手段)43a、生成部(生成手段)43b、類似度推移算出部(類似度推移算出手段)43c、判断部(判断手段)43dを備えている。
入力部43aは、圧力センサ41及び流量センサ42からの信号を入力する入力インターフェースとして機能するものである。また、生成部43bは、ガス漏れと仮定された場合のガス漏れ振動波形を生成するものである。
図3は、図2に示した生成部43bにより生成されるガス漏れ振動波形の概略を示す図である。図3に示すように、生成部43bは、圧力が時間の経過と共に低下しながら振動するガス漏れ振動波形を生成する。このガス漏れ振動波形は、減衰振動の周波数、ゲイン、及び減衰比を含む2次遅れのステップ応答の式に基づいて生成された波形である。ここで、本件発明者らは、ガス漏れ発生直後の微小時間(1秒以内の時間)において圧力や流量の計測値に振動が発生することを見出した。このため、生成部43bは、漏れ判断にあたり必要となる情報として、2次遅れのステップ応答の式に基づいてガス漏れ振動波形を生成し、類似度推移算出部43c及び判断部43dは、生成部43bに生成されたガス漏れ振動波形に基づいてガス漏れの発生を判断することとなる。
図4は、単純減衰振動の波形を示す図である。図4に示すように、単純減衰振動の波形は、図3に示すガス漏れ振動波形とは異なっている。現実的にガス漏れが発生した場合、ガス圧力は低下し、ガス流量は増加する。このように、圧力値や流量値はガス漏れ発生前の値からガス漏れ発生後の値に遷移する。よって、生成部43bに生成されるガス漏れ振動波形としては、ガス漏れ発生前からガス漏れ発生後に値が遷移しない単純減衰振動に基づいて決定された波形でなく、2次遅れのステップ応答の式に基づいて決定された波形であることが望ましいといえる。
なお、図3に示す例において生成部43bは、圧力のガス漏れ振動波形を生成するが、これに限らず、流量が時間の経過と共に上昇しながら振動するガス漏れ振動波形を生成していてもよい。さらに、この波形も2次遅れのステップ応答の式に基づいて決定されることが望ましい。
再度、図2を参照する。類似度推移算出部43cは、入力部41aに入力されたセンサ41,42からの信号の波形と、生成部43bに生成されたガス漏れ振動波形との類似度推移を算出するものである。なお、類似度推移とは、本実施形態において連続的な正規相互相関(NCC:Normalized Cross Correlation)をいう。より具体的には、以下の式(1)により類似度RNCCが求められる。類似度推移算出部43cは、この式(1)による類似度RNCCの算出を連続的に行うことにより、類似度推移(以下、連続NCCという)を求める。
判断部43dは、類似度推移算出部43cにより算出された類似度推移に基づいて、ガス漏れの発生を判断するものである。特に、この実施形態においては、その一例として、類似度推移算出部43cにより算出された類似度推移の代表値が閾値以上である場合に、ガス漏れが発生していると判断する。ここで、代表値とは、類似度全体又は類似度全体のうち特定期間の平均値であってもよいし、圧力や流量の変化が発生してから、ある特定の時刻における類似度であってもよいし、他の値であってもよい。
次に、図5を参照してガス漏れ時及びガス器具使用時における圧力変化を説明する。図5は、圧力変動の様子を示す図であって、(a)はガス漏れ時における圧力変化を示し、(b)はガス器具使用時における圧力変化を示している。図5(a)に示すように、ガス漏れ発生時には、圧力が低下しつつ振動する波形を示すこととなる。この波形は、図3に示したように生成部43bにより生成されたガス漏れ振動波形と相関が高い。このため、類似度推移の代表値は高い値を示すこととなり、判断部43dはガス漏れが発生したと判断することとなる。
図6は、ガス漏れ時における連続NCCを示すグラフである。なお、図6において実線と破線は、各家庭における配管状態の相違、ガス漏れ箇所の相違、及び、ガス漏れ流量の相違などの条件が異なる場合の連続NCCを示している。
図6に示すように、ガス漏れ時において圧力変化の発生直後(時刻0秒付近)における連続NCCは、「0.7」から「0.8」程度の値を示す。しかし、時刻0.025秒以降について連続NCCは「0.9」以上の値を示す。よって、判断部43dは、類似度推移算出部43cにより算出された類似度推移の代表値が「0.9」以上である場合に、ガス漏れが発生していると判断する。
一方、図5(b)に示すようにガス器具使用時には、ガス漏れ時と異なる振動波形を示すこととなる。このため、この波形は、図3に示したように生成部43bにより生成されたガス漏れ振動波形と相関が高いとはいえず、類似度推移の代表値は高い値を示さない。よって、判断部43dはガス漏れが発生していないと判断することとなる。
図7は、給湯器使用時における連続NCCを示すグラフであり、図8は、床暖房使用時における連続NCCを示すグラフである。図7及び図8に示すように、ガス器具使用時において圧力変化の発生直後(時刻0秒付近)における連続NCCは、「1.0」付近の値を示す。しかし、時刻0.02秒以降について連続NCCは「0.9」を下回る値を示し、それ以降については「0.8」すら大きく下回る値を示す。よって、判断部43dは、類似度推移算出部43cにより算出された類似度推移の代表値が「0.9」以上でない場合に、ガス漏れが発生していないと判断する。
なお、圧力や流量の変化が発生する場合とは、ガス漏れ発生時かガス器具使用時が殆どである。よって、判断部43dは、類似度推移算出部43cにより算出された類似度推移の代表値が「0.9」以上でない場合に、ガス器具10の使用であると判断することが望ましい。
また、図5〜図8については、圧力の振動波形及び圧力の振動波形に基づく連続NCCを示しているが、流量についても同様にしてガス漏れ判断を行うことができる。なお、以下の説明では、圧力の振動波形に基づくガス漏れ判断について説明するが、流量についても同様であることは言うまでもない。
次に、ガス漏れ判断の詳細について説明する。より詳細に説明すると、生成部43bは、以下のようにしてガス漏れ振動波形を生成する。まず、生成部43bは以下の式(2)を記憶している。
ここで、y(t)は圧力の変化量を示し、Kはゲインを示し、ωdは減衰振動の周波数を示し、ζは減衰比を示している。特に、ゲインK、減衰振動の周波数ωd、及び減衰比ζは、圧力センサ41によって実際に計測された波形から求められるものである。次に、これらの算出方法について図5(a)を参照して説明する。
生成部43bは、以下の式(3)から、減衰振動の周波数ωdを算出する。
ここで、Tpは行き過ぎ時間であり、図5(a)で示すように、圧力変化発生時から最初の極値V1(極小値V1)までの時間をいう。生成部43bは、入力部43aにより入力された信号から最初の極値V1が確認されると、行き過ぎ時間Tpを求め、式(3)から減衰振動の周波数ωdを算出する。
なお、減衰振動の周波数ωdは、式(3)から求める場合に限らず、圧力変化発生時から2つ目の極値M(極大点M)や、3つ目の極値V2(極小点V2)に基づいて算出してもよい。
次に、生成部43bは、以下の式(4)から、ゲインKを算出する。
このような式であるため、生成部43bは、入力部43aにより入力された信号から極値V1,M,V2が確認されると、式(4)からゲインKを算出する。
なお、図5(a)から明らかなように、ゲインKは圧力変化発生前の圧力値と圧力変化発生後の圧力値との差分によっても求めることができる。従って、生成部43bは、圧力変化が発生して圧力値が略一定値となったとき(図5(a)では時刻0.4秒)に、差分からゲインKを求めてもよい。さらに、類似度推移算出部43cは、圧力変化発生時から4つ目以降の極値を加味してゲインKを算出してもよい。
次いで、生成部43bは、以下の式(5)から、減衰比ζを算出する。
ここで、δは対数減衰率であり、mは周期数である。式(5)の場合、周期数mは「0.5」となる。
このような式であるため、生成部43bは、入力部43aにより入力された信号から極値V1,Mが確認されると、式(5)から減衰比ζを算出する。
以上のように、生成部43bは、ゲインK、減衰振動の周波数ωd、及び減衰比ζを算出し、式(2)より振動波形の式を求める。そして、類似度推移算出部43cは、求めた式と、入力部43aにより入力された圧力波形とから、式(1)に従って連続NCCを求めることとなる。
ここで、生成部43bは、減衰振動の周波数ωd、及び減衰比ζを以下のようにして算出するようにしてもよい。すなわち、図5(a)に示す振動波形は、ガス漏れ時の流量に依存する傾向にある。このため、生成部43bは、流量値のみを変数に含む式を予め記憶し、この式に流量センサ42によって計測された流量値を代入して、減衰振動の周波数ωd、及び減衰比ζを求めるようにしてもよい。
具体的に生成部43bは、以下の式(6)から減衰振動の周波数ωd、及び減衰比ζを求める。
ここで、Lは流量値であり、a1,a2,b1,b2は定数である。このように、式(6)から求めることで演算量を減らして、算出処理の簡素化を図るようにしてもよい。なお、流量と圧力には一定の相関がある。このため、式(6)に代えて圧力値のみを変数に含む式を記憶し、この式から減衰振動の周波数ωd、及び減衰比ζを求めるようにしてもよい。
さらに、この場合、生成部43bは、ゲインKについて式(4)から算出することなく、圧力変化発生前の圧力値と圧力変化発生後の圧力値との差分によっても求めることが望ましい。これにより、一層演算量を減らすことができるからである。
再度、図2を参照する。判断部43dは、上記したガス漏れ判断機能に加えて、ガス器具判断機能を備えている。次に、ガス器具判断機能について説明する。
図7及び図8に示したように、給湯器と床暖房とでは連続NCCが異なっている。すなわち、連続NCCはガス器具10毎に異なり、ガス器具10毎の特徴を表わしたものとなる。本実施形態において制御部43は、記憶部(記憶手段)43eを備えており、記憶部43eは、ガス器具10それぞれが使用された場合における計測値とガス漏れ振動波形との連続NCCデータを予め記憶している。すなわち、記憶部43eは、給湯器について図7に示すものと近似した連続NCCデータを記憶しており、床暖房については図8に示すものと近似した連続NCCデータを記憶している。他のガス器具10についても記憶部43eは、連続NCCデータを記憶している。
そして、判断部43dは、ガス漏れが発生していないと判断した場合、使用されたガス器具10を判断する。このとき、判断部43dは、記憶部43eにより記憶された連続NCCデータのうち、算出された連続NCCと最も近い連続NCCデータが示すガス器具10が使用されたと判断する。
再度、図2を参照する。図2に示すように、制御部43は補正部(補正手段)43fを備えている。補正部43fは、記憶部43eに記憶される連続NCCデータを更新するためのものである。上記したように記憶部43eは、使用されたガス器具10を判断するために、予めガス器具10毎の連続NCCデータを記憶している。しかし、各家庭等では配管状態が異なっている。このため、異なる家庭で全く同じガス器具10を使用したとしても、入力部43aに入力される信号は若干の相違がある。これにより、全く同じガス器具10を使用したとしても、類似度推移算出部43cによって算出される連続NCCについても各家庭で若干の相違が出てしまう。そして、この相違が原因となり、ある家庭では給湯器が使用されたにも拘わらず、床暖房が使用されたと判断されることもあり得る。そこで、本実施形態に係る制御部43は補正部43fを備えている。次に、補正部43fの機能について説明する。
まず、補正部43fは、判断部43dによりガス漏れでなくガス器具10の使用であると判断された場合、類似度推移算出部43cにより算出された連続NCCを読み込む。次いで、補正部43fは、連続NCCが示す各類似度から、連続NCC全体の平均値を差し引く。これにより、補正部43fは補正連続NCCを算出する。
図9は、給湯器の補正連続NCCを示すグラフであり、図10は、床暖房の補正連続NCCを示すグラフである。図9及び図10に示すように、補正連続NCCは実線と破線とで似たようなものとなっている。従って、各家庭間の相違が解消されているといえる。
そして、制御部43は、この補正連続NCCと最も近い連続NCCデータを補正連続NCCで更新する。詳細に説明すると、制御部43は、補正部43fによって得られた補正連続NCCと、記憶部43eに記憶されている連続NCCデータとを比較し、更新すべき連続NCCデータを特定する。そして、制御部43は、特定された連続NCCデータを補正連続NCCによって更新する。更新にあたり、制御部43は、補正連続NCCが得られる毎に、記憶部43eに記憶される連続NCCデータを補正連続NCCに近づけてもよいし、補正連続NCCが複数個得られる毎に記憶部43eに記憶される連続NCCデータを補正連続NCCに近づけてもよい。さらに、制御部43は、補正連続NCCを所定数蓄積し、蓄積された補正連続NCCの平均を求め、求められた平均と更新すべき連続NCCデータを置き換えるようにしてもよい。
これにより、記憶部43eに記憶される連続NCCデータを各家庭にあったものとでき、ガス器具10の判定精度を向上させることができる。
再度、図2を参照する。図2に示すように、制御部43は後処理部43gとサンプリング時間調整部(サンプリング時間調整手段)43hとを備えている。後処理部43gは、判断部43eの判断結果に基づいて各種の処理を実行するものである。具体的に後処理部43gは、判断部43dによりガス漏れと判断された場合、遮断弁を弁閉させたり、警報を発したりする。また、ガス管理センターに通報してもよい。一方、後処理部43gは、判断部43dによりガス器具10が使用されたと判断され、使用されたガス器具10が特定された場合、そのガス器具10について連続使用時間を監視したり、ガス使用量について割引をしたりする。
サンプリング時間調整部43hは、圧力センサ41及び流量センサ42のサンプリング時間を調整するものである。本実施形態に係るガスメータ40では、図5に示すように、微小時間において詳細に計測値を計測する必要がある。一般的に圧力センサ41は10秒に1回の計測間隔であり、流量センサ42は2秒に1回の計測間隔である。このため、サンプリング時間調整部43hは、この間隔を短縮する。具体的には計測値が変動したと判断できる場合に、サンプリング時間を計測値変動前よりも短縮して、例えば1マイクロ秒程度とする。これにより、微小時間における詳細な計測を可能とする。
次に、フローチャートを参照して、本実施形態に係るガスメータ40の動作を説明する。図11は、本実施形態に係るガスメータ40の動作の一例を示すフローチャートである。
まず、制御部43は入力部43aにより入力された信号に基づいて流量があったか否かを判断する(S1)。流量がなかったと判断された場合(S1:NO)、流量があったと判断されるまで、この処理が繰り返される。一方、流量があったと判断された場合(S1:YES)、処理はステップS2に移行する。なお、ステップS1においては、流量の有無を判断することに代えて、圧力が変化したか否かを判断してもよい。
ステップS2においてサンプリング時間調整部43hは、サンプリング時間を短縮し、短縮されたサンプリング時間で圧力を計測する(S2)。このとき、サンプリング時間調整部43hは、約1マイクロ秒間隔で圧力を計測するように調整する。なお、計測時間は1秒未満であることが望ましい。1秒を超える時間では振動波形が観測されない時間帯に入っているからである。また、圧力のサンプリング時間に代えて、流量のサンプリング時間を短縮するようにしてもよい。
そして、圧力計測後、生成部43bは、減衰振動の周波数ωd、ゲインK、及び減衰比ζを決定する(S3)。このとき、類似度推移算出部43cは、減衰振動の周波数ωd、ゲインK、及び減衰比ζを式(3)〜式(5)に基づいて算出してもよいし、式(6)から求めてもよい。
次に、生成部43bは、ステップS3により決定された減衰振動の周波数ωd、ゲインK、及び減衰比ζから、2次遅れのステップ応答の式に基づいてガス漏れ振動波形を生成する(S4)。このとき、生成部43bは、ステップS3により決定された減衰振動の周波数ωd、ゲインK、及び減衰比ζを式(2)に代入することにより、ガス漏れ振動波形を生成する。
そして、類似度推移算出部43cは、ステップS4により決定されたガス漏れ振動波形と、ステップS2において計測された計測値からなる波形とに基づいて、式(1)から連続NCCを算出する(S5)。次に、判断部43dは、連続NCCの代表値を決定し、代表値が閾値以上であるか否かを判断する(S6)。
代表値が閾値以上であると判断した場合(S6:YES)、判断部43dは、ガス漏れが発生していると判断する(S7)。そして、後処理部43gは、警報を行ったり、遮断弁を弁閉したりする(S8)。その後、図11に示す処理は終了する。
一方、代表値が閾値以上でないと判断した場合(S6:NO)、判断部43dは、ガス器具10が使用されたと判断する(S9)。そして、補正部43fは、ステップS5にて算出された連続NCCの各類似度から、連続NCC全体の平均値を差し引いて補正連続NCCを算出する(S10)。その後、記憶部43eは、補正部43fにより補正された補正連続NCCを蓄積し、記憶された連続NCCデータを更新する(S11)。
そして、類似度推移算出部43cは再度連続NCCを算出する(S12)。このとき、類似度推移算出部43cは、ステップS4により生成されたガス漏れ振動波形と、ステップS2において計測された計測値からなる波形とに基づいて、式(1)から連続NCCを算出する。なお、ステップS5において算出された連続NCCを記憶部43eに一時記憶している場合には、ステップS12の処理を省略することもできる。
次に、判断部43dは、記憶部43eに記憶された連続NCCデータのうち、ステップS12において算出された連続NCCに最も近い連続NCCデータが示すガス器具10が使用されていると判断する(S13)。その後、後処理部43gは、使用されているガス器具10について連続使用時間を監視するなどの保安処理を実行したり、使用されているガス器具10のガス使用量に基づく料金を割り引いたりする(S14)。そして、図11に示す処理は終了する。
このようにして、本実施形態に係るガスメータ40及びガス漏れ判断方法によれば、センサ41,42からの信号の波形と生成されたガス漏れ振動波形との類似度推移を算出し、算出した類似度推移に基づいて、ガス漏れの発生を判断する。ここで、本件発明者らは、ガス漏れ発生直後の微小時間において圧力や流量の計測値に振動が発生することを見出した。このため、センサ41,42からの信号の波形と生成されたガス漏れ振動波形との類似度は高くなる傾向にあり、類似度推移についても全体的に高い値を示す傾向にある。よって、この特徴から、ガス漏れを判断することができる。しかも、この判断において必要なデータは微小時間分のデータであるため、僅かな時間でガス漏れを判断することができる。従って、ガス漏れ判断についての迅速性を向上させることができる。
また、生成されたガス漏れ振動波形は、減衰振動の周波数ωd、ゲインK、及び減衰比ζを含む2次遅れのステップ応答の式に基づいて生成される。ここで、ガス漏れ時には、ガス漏れ発生前の流量値や圧力値からガス漏れ発生後の流量値や圧力値に値が遷移する。このため、単純減衰振動の式から決定された振動波形を記憶しておくよりも、2次遅れのステップ応答の式に基づいて生成されたガス漏れ振動波形を記憶している方が、現実に沿った適切なガス漏れ振動波形を記憶させることができる。
また、減衰振動の周波数ωdは変数に計測値のみを含む式から算出される。ここで、減衰振動の周波数ωdを算出するためには、行き過ぎ時間Tpの計測が必要となるが、変数に計測値のみを含む式から算出されるため、行き過ぎ時間Tpの計測が不要となり、減衰振動の周波数ωdの算出について簡素化を図ることができる。
また、減衰比ζは変数に計測値のみを含む式から算出される。ここで、減衰比ζを算出するためには、振動波形の極値等が必要となるが、変数に計測値のみを含む式から算出されるため、極値算出が不要となり、減衰比ζの算出について簡素化を図ることができる。
また、2次遅れのステップ応答の式においてゲインをKとし、センサ41,42からの信号の波形における最初の極値をV1とし、2番目の極値をMとし、3番目の極値をV2とした場合、ゲインKは、K=(V1+2M+V2)/4なる演算式から算出される。このように、ゲインKの算出にあたり1番目から3番目の極値V1,M,V2を用いることで、振動収束までの計測値を監視することなくゲインKの算出が可能となり、早期にゲインKを算出することができる。特に、LPガスを使用する家庭等においては、調整器20が設けられており、ガス漏れ時には調整器20による圧力調整によってガス漏れ以外の要因による計測値の振動も加わってしまう。このため、1番目から3番目の極値V1,M,V2という調整器20による圧力調整前の振動波形の極値V1,M,V2からゲインKを算出することで、ゲイン算出の精度向上を図ることができる。
また、2次遅れのステップ応答の式において減衰比をζとし、最初の極値V1から2番目の極値Mまでの周期数をmとした場合、減衰比ζは、δ=[(1/m)Ln{(V1−K)/(M−K)}]/2πなる演算式から算出される。このように、減衰比ζの算出にあたり1番目と2番目の極値を用いることで、振動収束までの計測値を監視することなく減衰比ζの算出が可能となり、早期に減衰比ζを算出することができる。特に、LPガスを使用する家庭等においては、調整器が設けられており、ガス漏れ時には調整器による圧力調整によってガス漏れ以外の要因による計測値の振動も加わってしまう。このため、1番目と2番目の極値という調整器による圧力調整前の振動波形の極値から減衰比ζを算出することで、ゲイン算出の精度向上を図ることができる。
また、算出された類似度推移に基づいてガス漏れが発生していないと判断した場合、ガス器具10のいずれかが使用されたと判断する。ここで、類似度推移が算出される場合とは、ガスの流れが発生した場合であり、ガス漏れ時かガス器具使用時である場合が殆どである。このため、ガス漏れが発生していないと判断した場合、ガス器具10のいずれかが使用されたと判断する。
また、ガス器具10それぞれが使用された場合における計測値と、生成されたガス漏れ振動波形との類似度推移データを予め記憶している。ここで、ガス漏れ振動波形とガス器具使用時の計測値の信号との類似度は決して高いとはいえないが、類似度推移を観察するとガス器具毎の特徴が表れる傾向がある。記憶部43eは、このような特徴を有したガス器具毎の類似度推移データを記憶している。
加えて、ガス漏れが発生していないと判断した場合、記憶された類似度推移データのうち、算出された類似度推移と最も近い類似度推移データが示すガス器具10が使用されたと判断する。このように、判断部43dは、類似度推移という特徴に着目し、たとえガス漏れが発生していない場合であっても、類似度の推移から使用されたガス器具10を判断することができる。従って、使用されたガス器具を判断して、保安やサービスの充実を図ることができる。
また、算出された各類似度から、連続NCC全体の平均値を差し引いて補正連続NCCを算出し、補正連続NCCに基づいて、予め記憶された連続NCCデータを更新する。ここで、各家庭では配管状態が相違している場合が多い。このような配管状態の相違から算出された連続NCCに関しても、各家庭等において相違が発生する。特に、この相違は類似度の高さに影響を及ぼすものであり、連続NCC全体の平均値にて減算することにより、軽減できるものである。従って、補正連続NCCに基づいて、予め記憶された連続NCCデータを更新することで、記憶された連続NCCデータを各家庭等にあわせて、ガス器具10の判定精度の向上を図ることができる。
また、計測値が変動したと判断した場合に、センサ41,42からの信号のサンプリング時間を計測値変動前よりも短縮するサンプリング時間調整部43hをさらに備えるため、微小時間内に発生する振動波形を適切に計測することができる。
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第2実施形態においてガスメータ40は第1実施形態のものと同様であるが、構成及び処理が一部異なっている。以下、第1実施形態との相違点について説明する。
図12は、第2実施形態に係るガスメータ40の詳細を示す構成図である。図12に示すように、第2実施形態では記憶部43eが第1記憶部(第1記憶手段)43e1と、第2記憶部(第2記憶手段)43e2とを備えている。
第1記憶部43e1は、ガス器具10それぞれが使用された場合における計測値と、生成部43bにより生成されたガス漏れ振動波形との連続NCCデータを予め記憶したものである。すなわち、第1記憶部43e1は、第1実施形態に示した記憶部43e1と同様にガス器具毎の連続NCCデータを記憶している。
第2記憶部43e2は、ガス漏れがあったと仮定されたときの計測値と、生成部43bにより生成されたガス漏れ振動波形との連続NCCデータを予め記憶したものである。すなわち、第2記憶部43e2は、第1実施形態では記憶していなかったガス漏れ時における連続NCCデータを記憶している。
このような構成であるため、判断部43dは、以下のようにしてガス漏れ及び使用されたガス器具10を判断する。まず、入力部41aにセンサ41,42からの信号の波形が入力されると、生成部43bはガス漏れ振動波形を生成し、類似度推移算出部43cは連続NCCを算出する。次に、判断部43dは、第1及び第2記憶部43e1,43e2に記憶された連続NCCデータのうち、類似度推移算出部43cにより算出された連続NCCと最も近いものを特定する。
そして、判断部43dは、最も近い連続NCCデータが第1記憶部43e1に記憶されている場合、その最も近い連続NCCデータが示すガス器具10が使用されていると判断する。一方、判断部43dは、最も近い連続NCCデータが第2記憶部43e2に記憶されている場合、ガス漏れが発生したと判断する。このように、第2実施形態では、ガス漏れと使用ガス器具10とを一体的に判断することができる。
なお、第2実施形態においても補正部43fは機能しており、第1記憶部43e1に記憶される連続NCCデータを更新するようになっている。
次に、第2実施形態に係るガスメータ40の動作を説明する。図13は、第2実施形態に係るガスメータ40の動作の一例を示すフローチャートである。まず、第2実施形態ではステップS21〜S25において、図11に示したステップS1〜S5と同様の動作が行われる。
その後、ステップS26において判断部43dは、ステップS25において算出された連続NCCと最も近い連続NCCデータが第2記憶部43e2に記憶されたもの、すなわちガス漏れのものか否かを判断する(S26)。ガス漏れのものであると判断した場合(S26:YES)、判断部43dは、ガス漏れが発生していると判断する(S27)。そして、後処理部43gは、警報を行ったり、遮断弁を弁閉したりする(S28)。その後、図13に示す処理は終了する。
一方、最も近い連続NCCデータがガス漏れのものでないと判断した場合(S26:NO)、判断部43dは、最も近い連続NCCデータが示すガス器具10が使用されていると判断する(S29)。その後、ステップS30,S31において図11に示したステップS10,S11と同様の処理が実行される。
その後、後処理部43gは、使用されているガス器具10について連続使用時間を監視するなどの保安処理を実行したり、使用されているガス器具10のガス使用量に基づく料金を割り引いたりする(S32)。そして、図13に示す処理は終了する。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。
また、本実施形態においてガス漏れ判断装置はガスメータ40であるが、これに限らず、ガス漏れ判断装置をガスメータ40とは別に構成してもよい。
さらに、上記実施形態において類似度推移を式(1)により算出しているが、これに限らず、他の方法で類似度推移を算出するようにしてもよい。
さらに、本実施形態において圧力や流量の変動直後から正確に圧力や流量を計測できるように、サンプリング時間調整部43hは予めサンプリング時間を短縮しておいてもよいし、圧力や流量の変動を迅速に検出できる別構成を追加してもよい。
また、判断部43dは、記憶部43eに記憶された連続NCCデータのうち、類似度推移算出部43cにより算出された連続NCCと近いものが存在しない場合、記憶部43eに記憶された連続NCCデータが示すガス器具10に不足があると判断してもよい。
また、本実施形態では燃料ガスをLPガスとする場合の例について説明したが、これに限らず、都市ガスの場合にも適用可能である。
また、本実施形態では1秒以内の微小時間におけるガス漏れ振動波形に基づいて、ガス漏れ及び使用ガス器具10を判断している。特に、本実施形態では、圧力や流量を計測する時間は1秒以内で充分であるが、予備的に1秒よりも長い時間の計測を行ってもよい。
また、本実施形態において記憶部43e(第1記憶部43e1を含む)は、ガス器具10毎の連続NCCデータを記憶している。この連続NCCデータは、1つのガス器具10に対して1つだけ記憶されていてもよいし、1つのガス器具10に対して複数記憶されていてもよい。
図14は、給湯器の補正連続NCCデータを示すグラフである。なお、図14において実線は、給湯器内の水温がある程度低い場合に使用された時の補正連続NCCデータを示し、破線は、給湯器内の水温がある程度高い場合に使用された時の補正連続NCCデータを示し、一点鎖線は、給湯器内の水温が高い場合に使用された時の補正連続NCCデータを示している。
図14に示すように、給湯器では給湯器内の水温によって連続NCCが異なってくる。この場合、記憶部43e(第1記憶部43e1を含む)に記憶される連続NCCデータが1つだけであると、給湯器の水温に応じて使用ガス器具10の判断を誤ってしまう可能性がある。そこで、このようなガス器具10に対しては複数の連続NCCデータを記憶しておくことが望ましい。これにより、より精度良く使用ガス器具10を判断することができるからである。