以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係るガス使用状況判断システムの構成図である。ガス使用状況判断システム1は、ガスストーブ、ファンヒータ、小型湯沸器、給湯器、床暖房及びガステーブルなどの各ガス器具10に燃料ガスを供給するものであって、複数のガス器具10と、ガス供給元の調整器20と、配管31,32と、ガスメータ(計測装置)40と、管理センター(センター)50とを備えている。なお、図1に示す例では、ガスメータ40を計測装置の一例として挙げるが、計測装置はガスメータ40に限るものではない。
調整器20は上流からの燃料ガスを所定圧力に調整して第1配管31に流すものである。第1配管31は、調整器20とガスメータ40とを接続するものである。第2配管32はガスメータ40とガス器具10とを接続する配管である。ガスメータ40は、各家庭に設置され、少なくともガス流量を計測して積算流量を表示するものである。このようなガス供給システム1では、ガスメータ40内に第1配管31及び第2配管32とつながる流路が形成されており、調整器20を通じて流れてきた燃料ガスは第1配管31からガスメータ40、及び第2配管32を通じてガス器具10に到達し、ガス器具10において燃焼されることとなる。
管理センター50は、ガスメータ40からデータを受信するものであって、受信したデータに基づいて、ガス漏れや各家庭において使用ガス器具10を判断するものである。なお、本実施形態においてガスメータ40は家庭に設置されるものとして説明しているが、ガスメータ40は一般の家庭に設置されるものに限らず、料理を行う店舗など、ガス使用を必要とする需要者であれば、他の場所に設置されていてもよい。
このようなシステム1では、ガスメータ40で計測された圧力や流量のデータを管理センター50側に送信し、管理センター50側においてガス漏れ及び使用ガス器具10の少なくとも一方を判断するようになっている。このとき、管理センター50では、圧力や流量の所定以上の変化時から微小時間(最大で2秒)中に得られた圧力や流量のデータに基づいて、ガス漏れ及び使用ガス器具10の少なくとも一方を判断する。使用ガス器具10とは、使用が開始したガス器具10、及び使用が終了したガス器具10の少なくとも一方を含む概念である。
ここで、本件出願人らは、ガス器具10の使用開始時や終了時、及びガス漏れ発生時など、圧力や流量の所定以上の変化時から微小時間経過するまでの波形に、ガス漏れやガス器具10毎に固有の振動を示すことを見出した。このため、管理センター50は、所定以上の変化時からの微小時間中に得られる振動波形に基づいて、ガス漏れ及び使用ガス器具の少なくとも一方を判断する。特に、本実施形態では管理センター50側で判断を行うこととなり、ガスメータ40での演算量を減らして、ガスメータ40における消費電力を抑えている。
図2は、図1に示したガスメータ40の詳細を示す構成図である。図2に示すようにガスメータ40は、圧力センサ(計測センサ)41と、流量センサ(計測センサ)42と、制御部43と、送受信部(送信手段)44と、トリガ信号発生部(トリガ信号発生手段)45とを有している。
圧力センサ41は、ガスメータ40の流路内におけるガス圧力に応じた計測値の信号を出力するものであって、ピエゾ抵抗式や静電容量式などのセンサによって構成される。流量センサ42は、ガスメータ40の流路内におけるガス流量に応じた計測値の信号を出力するものであって、超音波センサやフローセンサなどで構成される。
制御部43は、ガスメータ40の全体を制御するものであって、センサ41,42により出力された信号に基づいて圧力値や流量値を算出したり、流量の積算表示の制御を実行したりするものである。この制御部43はマイコンによって構成される。
送受信部44は、計測値データを送信するものである。ここで、計測値データとは、制御部43によって算出された圧力値や流量値の情報であってもよいし、センサ41,42によって出力されたそのままの信号の情報であってもよい。また、送受信部44は、管理センター50から遮断弁を遮断したり復帰させたりするデータを受信する。このような送受信部44は例えば通信インターフェイスにより構成される。
トリガ信号発生部45は、センサ41,42により出力された信号の所定以上の変化時にトリガ信号を発生させるものである。このトリガ信号は、制御部43及び各センサ41,42に送信される。このようなトリガ信号発生部45は、例えば微分回路を含んで構成されており、微分回路により所定以上の変化を検出する。
具体的にトリガ信号発生部45は、ガス器具10が使用を開始され又はガス漏れが発生したときに、流量が流れ且つ圧力が低下するときの変化を所定以上の変化としてとらえ、第1トリガ信号を出力する。さらに、トリガ信号発生部45は、ガス器具10の使用が終了したときに、流量が低下し且つ圧力が上昇するときの変化を所定以上の変化としてとらえ、第2トリガ信号を出力する。なお、トリガ信号発生部45は、上記2種類のトリガ信号を区別可能に発生させる。
図3は、ガス器具の使用過程における流量推移の一例を示す図である。ガス器具10の使用過程においては例えば図3に示すような流量が流れる。まず、時刻t1において第1のガス器具10(例えばガステーブル)が使用開始されたとする。このとき、流量値はF1を示す。そして、時刻t2において第2のガス器具10(例えば給湯器)が使用開始されたとすると、流量値はF3(=F1+F2)を示す。
その後、時刻t3において第1のガス器具10の使用が終了したとすると、流量値は第2のガス器具10のみの流量であるF2を示す。次いで、時刻t4において第2のガス器具10についても使用が終了したとすると、流量値は「0」を示す。
トリガ信号発生部45は、図3で示す時刻t1及び時刻t2のタイミングで第1トリガ信号を発生させる。また、時刻t3及び時刻t4のタイミングで第2トリガ信号を発生させる。
再度、図2を参照する。制御部43は、サンプリング時間調整部(サンプリング時間調整手段)43aを備えている。サンプリング時調整部43aは、トリガ信号発生部45によりトリガ信号が発生された場合に、センサ41,42のサンプリング時間を通常のサンプリング時間(例えば流量では2秒、圧力では10秒)よりも短縮するものである。この際、サンプリング時間調整部43aはサンプリング時間を1マイクロ秒に短縮する。これにより、ガスメータ40は、微小時間における波形の振動を適切にとらえるようにしている。
また、各センサ41,42は、トリガ信号が入力されると、高速サンプリングにあわせて信号を出力することとなる。加えて、トリガ信号発生前においてセンサ41,42の駆動電流を通常電流よりも小さくしておき、トリガ信号発生後に駆動電流を通常電流に戻すようにしてもよい。
また、サンプリング時間調整部43aは、微小時間だけサンプリング時間を短縮した後に、サンプリング時間の短縮状態を解除する。ガス漏れや使用ガス器具10の判断には、微小時間中の振動波形が必要であり、その後の波形は必要がない。このため、微小時間経過後には通常のサンプリング時間の短縮状態を解除することで、消費電力を抑えるようにしている。
さらに、サンプリング時間調整部43aは、トリガ信号発生部45によりトリガ信号が発生されるまでは、センサ41,42のサンプリング時間を通常のサンプリング時間よりも長くしておく。例えば、サンプリング時間調整部43aは、流量について10秒程度に長くし、圧力について30秒程度に長くする。ここで、トリガ信号が発生していない場合とは、流量や圧力に所定以上の変化がなく、流量や圧力が安定している場合といえる。すなわち、計測の必要性が少ない場合といえる。よって、このような場合に、サンプリング時間調整部43aは、サンプリング時間を長くしておくことで、消費電力を軽減させるようにしている。
また、送受信部44は、微小時間の経過後に、微小時間分一括して計測値データを送信する。これにより、送信回数を抑えて一層消費電力を抑えるようにしている。なお、送信部44は、微小時間の経過後に、微小時間分一括して計測値データを送信する場合に限らず、微小時間中に1回、微小時間経過後に残りデータを1回など、複数回の送信を行ってもよい。加えて、送受信部44は、常時送信を行うようになっていてもよい。
さらに、送受信部44は、第1トリガ信号と第2トリガ信号とのいずれのトリガ信号が発生したかを示す情報についても送信する。これにより、管理センター50側にいずれのタイミングのデータかを示し、管理センター50側でのガス漏れ判断、及び、使用ガス器具10の判断について処理負担の軽減を図るようにしている。
図4は、図1に示した管理センター50の詳細を示す構成図である。図4に示すように管理センター50は、送受信部(受信手段)51と、制御部52と、記憶部53とを有している。
送受信部51は、ガスメータ40の送受信部44から送信された計測値データを受信するものである。記憶部53は、各種判断処理に必要となる情報を記憶したものであって、類似度推移パターン記憶部53aと、リコール器具記憶部53bとを備えている。類似度推移パターン記憶部53aはガス漏れ及び使用ガス器具10の判断に必要となる類似度推移のパターンを記憶しており、リコール器具記憶部53bはリコール対象となるガス器具10の情報(後述のメーカ名及び型番など)を記憶している。なお、類似度推移とは、類似度を連続的に求めて得られるものである。
制御部52は、送受信部51により受信された計測値データに基づいて各種処理を実行するものであって、判断部(判断手段)52aと、生成部52bと、類似度推移算出部(類似度推移算出手段)52cと、保安部(保安手段)52dとを備えている。
判断部52aは、送受信部51により受信された計測値データの所定以上の変化時から微小時間中に得られる振動波形から、ガス漏れ及び使用ガス器具10の少なくとも一方を判断するものである。この判断部52aは、生成部52b及び類似度推移算出部52cの演算結果に基づいて、判断を実行する。なお、以下の本実施形態において判断部52aは、ガス漏れ及び使用ガス器具10の双方を判断するものとするが、いずれか一方のみを判断するものであってもよい。
生成部52bは、所定の振動波形を生成するものである。この生成部52bによって生成される所定の振動波形は、後の処理において、ガスメータ40からの計測値データからなる振動波形と比較される。
類似度推移算出部52cは、ガスメータ40からの計測値データからなる振動波形と、生成部52bによって生成された所定の振動波形との類似度推移を算出するものである。そして、判断部52aは、類似度推移算出部52cによって算出された類似度推移に基づいて、ガス漏れ及び使用ガス器具10を判断することとなる。
判断の概略を説明すると、例えば生成された所定の振動波形がガス漏れ発生時の振動波形であって、実際にガス漏れが発生したとする。この場合、実際にセンサ41,42によって計測される振動波形と生成された振動波形とは、類似度が高くなり、類似度推移についても高くなる。このため、判断部52aは、ガス漏れが発生したと判断できる。
また、生成された所定の振動波形がガス漏れ発生時の振動波形であって、実際にガステーブルの使用が開始されたとする。この場合、実際にセンサ41,42によって計測される振動波形と生成された振動波形とは、類似度が高くならず、類似度推移についても高くならない。このため、判断部52aは、ガス漏れの発生でないと判断する。この際、類似度推移には、ガス漏れ発生時とガステーブルの使用開始時との相違が生じる。この相違は、ガス器具10毎に異なる。例えば、ガス漏れ発生時とガステーブルの使用開始時との相違と、ガス漏れ発生時と給湯器の使用開始時との相違とは異なっており、判断部52aは、相違の状態からガステーブルの使用が開始したと判断できる。
なお、上記は、生成部52bが所定の振動波形としてガス漏れ発生時の振動波形を生成した場合を例に説明したが、これに限らず、生成部52bは、特定のガス器具10の使用が開始されたときの振動波形を生成するようにしてもよいし、他のガス器具10の使用が終了したときの振動波形を生成するようにしてもよい。すなわち、生成部52bは、基準となる振動波形を生成すればよく、その振動波形は何の振動波形であってもよい。
加えて、生成部52bは、全ガス器具10の振動波形(複数の振動波形)を生成し、類似度推移算出部52cは、生成された全ガス器具10の振動波形と、ガスメータ40からの計測値データに基づく振動波形との類似度推移を算出して、類似度推移が最も高いガス器具10を使用ガス器具10と判断してもよい。また、どの類似度推移についても高くない場合には、ガス漏れの発生と判断してもよい。
次に、ガス漏れ及び使用ガス器具10の判断についてより詳細に説明する。まず、判断部52aは、時刻t1及び時刻t2に示したようなガス流量の増加時には、ガス漏れが発生しているか否かを判断し、ガス漏れが発生していないと判断できる場合に、使用が開始されたガス器具10を判断する。また、判断部52aは、時刻t3及び時刻t4に示したようなガス流量の減少時には、ガス漏れの判断を行わず、使用が終了したガス器具10を判断する。
なお、以下の実施形態において生成部52bは、基準となる所定の振動波形として、ガス漏れ時における振動波形を生成する場合を例に説明する。さらに、以下の実施形態では、ガス圧力の振動波形に基づいてガス漏れ及び使用ガス器具10を判断する場合について説明するが、圧力と流量とには一定の相関があるため、流量に基づいてガス漏れ及び使用ガス器具10を判断してもよい。
図5は、図4に示した生成部52bにより生成されるガス漏れ振動波形の概略を示す図である。図5に示すように、生成部52bは、圧力が時間の経過と共に低下しながら振動するガス漏れ振動波形を生成する。このガス漏れ振動波形は、減衰振動の周波数、ゲイン、及び減衰比を含む2次遅れのステップ応答の式に基づいて生成された波形である。上記したように、本件発明者らは、ガス漏れ発生直後の微小時間において圧力や流量の計測値に振動が発生することについて見出した。このため、生成部52bは、2次遅れのステップ応答の式に基づいてガス漏れ振動波形を生成する。
再度、図4を参照する。類似度推移算出部52cは、受信した計測値データに基づく微小時間中の振動波形と、生成部52bに生成されたガス漏れ振動波形との類似度推移を算出するものである。なお、類似度推移とは、本実施形態において連続的な正規相互相関(NCC:Normalized Cross Correlation)をいう。より具体的には、以下の式(1)により類似度R
NCCが求められる。類似度推移算出部52cは、この式(1)による類似度R
NCCの算出を連続的に行うことにより、類似度推移(以下、連続NCCという)を求める。
次に、図6を参照してガス漏れ時における圧力変化を説明する。図6は、ガス漏れ時における圧力変化を示す図である。図6に示すように、ガス漏れ発生時には、圧力が低下しつつ振動する波形を示すこととなる。この波形は、図5に示したように生成部52bにより生成されたガス漏れ振動波形と相関が高い。このため、類似度推移の代表値は高い値を示すこととなり、判断部52aはガス漏れが発生したと判断することとなる。
図7は、ガス漏れ時における連続NCCを示すグラフである。なお、図7において実線と破線は、各家庭における配管状態の相違、ガス漏れ箇所の相違、及び、ガス漏れ流量の相違などの条件が異なる場合の連続NCCを示している。
図7に示すように、ガス漏れ時において圧力変化の発生直後(時刻0秒付近)における連続NCCは、「0.7」から「0.8」程度の値を示す。しかし、時刻0.025秒以降について連続NCCは「0.9」以上の値を示す。
このように、ガス漏れ発生時において連続NCCは「0.9」以上の値を示すことから、判断部52aは、類似度推移算出部52cにより算出された類似度推移の代表値が閾値(例えば「0.9」)以上である場合に、ガス漏れが発生していると判断する。ここで、代表値とは、類似度全体又は類似度全体のうち特定期間の平均値であってもよいし、圧力や流量の変化が発生してから、ある特定の時刻における類似度であってもよいし、他の値であってもよい。
なお、類似度推移パターン記憶部53aに、図7に示したような連続NCCのパターンを記憶しておき、判断部52aは、記憶された連続NCCのパターンと、算出された連続NCCとを比較し、両者が近い場合にガス漏れと判断してもよい。
一方、図8に示すようにガス器具使用時には、ガス漏れ時と異なる振動波形を示すこととなる。図8は、ガス器具使用開始時における圧力変化を示すグラフであって、(a)はガステーブル使用開始時における圧力変化を示し、(b)は小型湯沸器使用開始時における圧力変化を示し、(c)は給湯器使用開始時における圧力変化を示している。
図8(a)に示すように、ガステーブルの使用開始時には圧力が2.9kPa程度で滑らかに振動する圧力波形が得られる。また、図8(b)に示すように、小型湯沸器の使用終了時には圧力が2.93kPaを基準にして0.1kPa強振動する圧力波形が得られる。さらに、図8(c)に示すように、給湯器の使用終了時には圧力が2.93kPaを基準にして小型湯沸器よりもやや粗い振動を示す圧力波形が得られる。
図9は、図4に示した類似度推移算出部52cにより算出される連続NCCを示すグラフであって、(a)はガステーブル使用開始時における連続NCCを示し、(b)は小型湯沸器使用開始時における連続NCCを示し、(c)は給湯器使用開始時における連続NCCを示している。
ガステーブルの使用が開始した場合、図8(a)の振動波形が得られ、類似度推移算出部52cにより算出される連続NCCは図9(a)に示すようになる。すなわち、連続NCCは、初期的に「1.0」程度を示し、その後「0.2」を下回り、約0.04秒において「0.95」まで復帰する。そして、連続NCCは、約0.1秒において「0.5」程度となり、その後「0.65」付近までゆっくりと上昇する。
また、小型湯沸器の使用が開始した場合、図8(b)の振動波形が得られ、類似度推移算出部52cにより算出される連続NCCは図9(b)に示すようになる。すなわち、連続NCCは、初期的に「1.0」程度を示し、その後「0.2」を下回り、約0.04秒において「0.9」まで復帰する。そして、連続NCCは、再度「0.4」程度まで低下し、その後、「0.7」付近までゆっくりと上昇する。
また、給湯器の使用が開始した場合、図8(c)の振動波形が得られ、類似度推移算出部52cにより算出される連続NCCは図9(c)に示すようになる。すなわち、連続NCCは、初期的に「0.8」弱を示し、その後「0.2」を下回り、約0.02秒において「0.7」まで復帰する。そして、連続NCCは、「0.6」程度まで低下し、次いで「0.7」程度まで復帰する。その後、連続NCCは再び「0.5」程度まで低下した後に、約0.1秒において「0.6」弱となる。以後、連続NCCは「0.65」付近までゆっくりと上昇していく。
このようにガス器具10の使用開始時において、連続NCCは大半の期間で「0.9」以上を示さない。このため、判断部52aは、連続NCCの代表値が閾値以上でない場合、ガス器具10の使用開始であると判断する。
また、連続NCCはガス器具10毎に異なっている。このため、判断部52aは、このような連続NCCのパターンから使用が開始したガス器具10を判断する。具体的には図4に示す類似度推移パターン記憶部53aに、各ガス器具10の連続NCCのパターンを記憶させておく。すなわち、類似度推移パターン記憶部53aは、ガステーブルについて図9(a)に示したような連続NCCのパターンを記憶し、小型湯沸器について図9(b)に示したような連続NCCのパターンを記憶し、給湯器について図9(c)に示したような連続NCCのパターンを記憶している。そして、判断部52aは、類似度推移パターン記憶部53aにより記憶された連続NCCデータのうち、算出された連続NCCと最も近い連続NCCデータが示すガス器具10の使用が開始したと判断する。
図10は、ガス器具使用終了時における圧力変化を示すグラフであって、(a)はガステーブル使用終了時における圧力変化を示し、(b)は小型湯沸器使用終了時における圧力変化を示し、(c)は給湯器使用終了時における圧力変化を示している。
図10(a)に示すように、ガステーブルの使用終了時には圧力が2.85kPa程度で滑らかに振動する圧力波形が得られる。また、図10(b)に示すように、小型湯沸器の使用終了時には圧力が2.85kPaを基準にして0.1kPa程度振動する圧力波形が得られる。さらに、図10(c)に示すように、給湯器の使用終了時には圧力が2.88kPaを基準にしてガステーブルよりもやや粗い振動を示す圧力波形が得られる。
図11は、図4に示した類似度推移算出部52cにより算出される連続NCCを示すグラフであって、(a)はガステーブル使用終了時における連続NCCを示し、(b)は小型湯沸器使用終了時における連続NCCを示し、(c)は給湯器使用終了時における連続NCCを示している。
ガステーブルの使用が終了した場合、図10(a)の振動波形が得られ、類似度推移算出部52cにより算出される連続NCCは図11(a)に示すようになる。すなわち、連続NCCは、初期的に「0.9」程度を示し、その後「0.2」を下回り、約0.03秒において「0.8」まで復帰する。そして、連続NCCは、約0.1秒において「0.6」程度となり、その後「0.6」付近を維持する。
また、小型湯沸器の使用が終了した場合、図10(b)の振動波形が得られ、類似度推移算出部52cにより算出される連続NCCは図11(b)に示すようになる。すなわち、連続NCCは、初期的に「0.9」程度を示し、その後「0.2」を下回り、約0.01秒において「0.8」まで復帰する。そして、連続NCCは、再度「0.3」程度まで低下し、次いで「0.6」程度まで復帰する。その後、連続NCCは小さな振動を繰り返しながら約0.1秒において「0.6」程度となる。次に、連続NCCは「0.7」付近までゆっくりと上昇する。
また、給湯器の使用が終了した場合、図10(c)の振動波形が得られ、類似度推移算出部52cにより算出される連続NCCは図11(c)に示すようになる。すなわち、連続NCCは、初期的に「0.9」程度を示し、その後「0.2」を下回り、約0.02秒において「0.6」まで復帰する。そして、連続NCCは、再度「0.45」程度まで低下し、次いで「0.6」程度まで復帰する。その後、連続NCCは再び「0.45」程度まで低下した後に、約0.1秒において「0.6」程度となる。次に、連続NCCは「0.7」付近までゆっくりと上昇する。
このように、ガス器具10の使用終了時においても連続NCCはガス器具10毎に異なり、判断部52aは、このような連続NCCのパターンから使用が終了したガス器具10を判断する。具体的には図4に示す類似度推移パターン記憶部53aに、各ガス器具10の連続NCCのパターンを記憶させておく。すなわち、類似度推移パターン記憶部53aは、ガステーブルについて図11(a)に示したような連続NCCのパターンを記憶し、小型湯沸器について図11(b)に示したような連続NCCのパターンを記憶し、給湯器について図11(c)に示したような連続NCCのパターンを記憶している。そして、判断部52aは、類似度推移パターン記憶部53aにより記憶された連続NCCデータのうち、算出された連続NCCと最も近い連続NCCデータが示すガス器具10の使用が終了したと判断する。
次に、生成部52bによって生成される所定の振動波形の生成手法について説明する。生成部52bは、以下のようにしてガス漏れ振動波形を生成する。まず、生成部52bは以下の式(2)を記憶している。
ここで、y(t)は圧力の変化量を示し、Kはゲインを示し、ωdは減衰振動の周波数を示し、ζは減衰比を示している。特に、ゲインK、減衰振動の周波数ωd、及び減衰比ζは、圧力センサ41によって実際に計測された波形から求められるものである。次に、これらの算出方法について図6を参照して説明する。
生成部52bは、以下の式(3)から、減衰振動の周波数ω
dを算出する。
ここで、Tpは行き過ぎ時間であり、図6で示すように、圧力変化発生時から最初の極値V1(極小値V1)までの時間をいう。生成部52bは、計測値データから最初の極値V1が確認されると、行き過ぎ時間Tpを求め、式(3)から減衰振動の周波数ωdを算出する。
なお、減衰振動の周波数ωdは、式(3)から求める場合に限らず、圧力変化発生時から2つ目の極値M(極大点M)や、3つ目の極値V2(極小点V2)に基づいて算出してもよい。
次に、生成部52bは、以下の式(4)から、ゲインKを算出する。
このような式であるため、生成部52bは、計測値データから極値V1,M,V2が確認されると、式(4)からゲインKを算出する。
なお、図6から明らかなように、ゲインKは圧力変化発生前の圧力値と圧力変化発生後の圧力値との差分によっても求めることができる。従って、生成部52bは、圧力変化が発生して圧力値が略一定値となったとき(図6では時刻0.4秒)に、差分からゲインKを求めてもよい。さらに、類似度推移算出部52cは、圧力変化発生時から4つ目以降の極値を加味してゲインKを算出してもよい。
次いで、生成部52bは、以下の式(5)から、減衰比ζを算出する。
ここで、δは対数減衰率であり、mは周期数である。式(5)の場合、周期数mは「0.5」となる。
このような式であるため、生成部52bは、計測値データから極値V1,Mが確認されると、式(5)から減衰比ζを算出する。
以上のように、生成部52bは、ゲインK、減衰振動の周波数ωd、及び減衰比ζを算出し、式(2)より振動波形の式を求める。そして、類似度推移算出部52cは、求めた式と、計測値データ(圧力波形)とから、式(1)に従って連続NCCを求めることとなる。
ここで、生成部52bは、減衰振動の周波数ωd、及び減衰比ζを以下のようにして算出するようにしてもよい。すなわち、図6に示す振動波形は、ガス漏れ時の流量に依存する傾向にある。このため、生成部52bは、流量値のみを変数に含む式を予め記憶し、この式に流量値を代入して、減衰振動の周波数ωd、及び減衰比ζを求めるようにしてもよい。
具体的に生成部52bは、以下の式(6)から減衰振動の周波数ω
d、及び減衰比ζを求める。
ここで、Lは流量値であり、a1,a2,b1,b2は定数である。このように、式(6)から求めることで演算量を減らして、算出処理の簡素化を図るようにしてもよい。なお、流量と圧力には一定の相関がある。このため、式(6)に代えて圧力値のみを変数に含む式を記憶し、この式から減衰振動の周波数ωd、及び減衰比ζを求めるようにしてもよい。
さらに、この場合、生成部52bは、ゲインKについて式(4)から算出することなく、圧力変化発生前の圧力値と圧力変化発生後の圧力値との差分によっても求めることが望ましい。これにより、一層演算量を減らすことができるからである。
再度、図4を参照する。保安部52dは、リコール対象となるガス器具10に対する保安処理を実行するものである。ここで、上記した判断部52aでは、連続NCCに基づくことにより、ガステーブルや給湯器などのガス器具10の種類のみならず、メーカ名や型番についても判断することができる。よって、リコール器具記憶部53bにリコール対象となるガス器具10のメーカ名及び型番などを記憶させ、使用ガス器具10が判断されたときにリコール器具記憶部53bの記憶内容を参照することにより、リコール対象となるガス器具10であるか否かを判断することができる。
なお、保安部52dによる保安処理とは、ガスメータ40側に遮断弁を弁閉する信号を送信してガスの使用を禁止したり、外部業者に連絡を行い作業員を派遣したりする処理である。また、保安部52gは、ガス漏れ発生時においてガスメータ40側に遮断弁を弁閉する信号を送信してガスの使用を禁止してもよい。
なお、リコール器具記憶部53bは、リコール対象となるガス器具10のメーカ名及び型番のみを記憶する場合に限らず、さらに、リコール対象となるガス器具10の波形データ、類似度推移を記憶しておき、メーカ名、型番、波形データ及び類似度推移を1グループとしてまとめて記憶していてもよい。また、判断部52aは、リコール対象となるガス器具10を判断するにあたり、メーカ名、型番、波形データ及び類似度推移のうち、どの項目をインデックス(ID)として呼び出してもよい。特に、波形データや類似度推移を呼び出した場合、判断部52aは、波形データ同士や類似度推移同士を比較し、リコール対象となるガス器具10を判断することで、使用ガス器具10のメーカ名や型番を判断しなくともよい。
次に、フローチャートを参照して、本実施形態に係るガスメータ40の動作を説明する。図12は、本実施形態に係るガスメータ40の動作の一例を示すフローチャートである。
まず、図12に示すように、制御部43はトリガ信号が発生したか否かを判断する(S1)。トリガ信号が発生していないと判断した場合(S1:NO)、発生したと判断されるまで、この処理が繰り返される。一方、トリガ信号が発生したと判断した場合(S1:YES)、サンプリング時間調整部43aは、サンプリング時間を通常のサンプリング時間よりも短縮し、短縮されたサンプリング時間で圧力を計測する(S2)。その後、制御部43は、微小時間経過したか否かを判断する(S3)。微小時間経過していないと判断した場合(S3:NO)、処理はステップS2に移行する。なお、ステップS2では、圧力のサンプリング時間を短縮しているが、圧力のサンプリング時間に代えて、流量のサンプリング時間を短縮するようにしてもよい。
微小時間経過したと判断した場合(S3:YES)、送受信部44は、ステップS2において計測された計測値データと、第1,第2トリガ信号のいずれの信号が発生されたかを示す情報とを一括で送信する(S4)。その後、図12に示す処理は終了する。
なお、図12に示す処理の終了時においてサンプリング時間調整部43aは、サンプリング時間を通常のサンプリング時間に戻したり、通常のサンプリング時間よりも長く設定したりする。例えば、ステップS1において第1トリガ信号が発生された場合、流量等の計測の必要があることから、サンプリング時間調整部43aは、サンプリング時間を通常のサンプリング時間にする。一方、ステップS1において第2トリガ信号が発生された場合、流量値がゼロになっていれば、サンプリング時間を通常のサンプリング時間よりも長く設定し、流量値がゼロを超える値であれば、サンプリング時間を通常のサンプリング時間にする。このように、サンプリング時間調整部43aは、微小時間経過後に、サンプリング時間の短縮状態を解除する。
図13は、本実施形態に係る管理センター50の動作の一例を示すメインフローチャートである。図13に示すように、制御部52は計測値データを受信したか否かを判断する(S11)。計測値データを受信していないと判断した場合(S11:NO)、受信したと判断されるまで、この処理が繰り返される。
計測値データを受信したと判断した場合(S11:YES)、制御部52は、計測値データと共に一括送信されたトリガ信号を示す情報に従って、第1トリガ信号が発生されていたか否かを判断する(S12)。第1トリガ信号が発生されていなかったと判断した場合(S12:NO)、第1トリガ信号が発生されていたと判断されるまで、この処理が繰り返される。
一方、第1トリガ信号が発生されていたと判断した場合(S12:YES)、制御部52は、ガス漏れ/開始ガス器具判断処理を実行する(S13)。第1トリガ信号が発生したということは、ガス流量が増加したりガス圧力が減少したりした場合であり、ガス漏れの発生かガス器具10の使用であると判断できるため、制御部52は、ガス漏れ/開始ガス器具判断処理を実行する。
その後、保安部52dは、ステップS13の処理においてガス漏れが発生していたか否かを判断する(S14)。ガス漏れが発生していたと判断した場合(S14:YES)、保安部52dは保安処理を実行し(S15)、図13に示す処理は終了する。
また、ガス漏れが発生していなかったと判断した場合(S14:NO)、制御部52は、計測値データと共に一括送信されたトリガ信号を示す情報に従って、第2トリガ信号が発生されていたか否かを判断する(S16)。第2トリガ信号が発生されていなかったと判断した場合(S16:NO)、処理はステップS14に移行する。
一方、第2トリガ信号が発生されていたと判断した場合(S16:YES)、制御部52は、終了ガス器具判断処理を実行する(S17)。第2トリガ信号が発生したということは、ガス流量が減少したりガス圧力が上昇したりした場合であり、ガス器具10の使用終了時であると判断できるため、ガス漏れの発生ではないといえる。よって、制御部52は、終了ガス器具判断処理を実行する。
そして、保安部52dは、リコールガス器具10の使用があったか否かを判断する(S18)。このとき、保安部52dは、ステップS13におけるガス漏れ/開始ガス器具判断処理、及び、ステップS17における終了ガス器具判断処理の少なくとも一方においてリコールガス器具10の使用があったか否かを判断する。リコールガス器具10の使用があったと判断した場合(S18:YES)、保安部52dは保安処理を実行し(S15)、図13に示す処理は終了する。一方、リコールガス器具10の使用でなかったと判断した場合(S18:NO)、保安部52dは保安処理を実行せず、図13に示す処理は終了する。
図14は、図13に示したガス漏れ/開始ガス器具判断処理(S13)の詳細を示すフローチャートである。図14に示すように、まず、生成部52bは、微小時間中に得られた振動波形から、減衰振動の周波数ωd、ゲインK、及び減衰比ζを決定する(S21)。このとき、生成部52bは、減衰振動の周波数ωd、ゲインK、及び減衰比ζを式(3)〜式(5)に基づいて算出してもよいし、式(6)から求めてもよい。
次に、生成部52bは、ステップS21により決定された減衰振動の周波数ωd、ゲインK、及び減衰比ζから、2次遅れのステップ応答の式に基づいてガス漏れ振動波形を生成する(S22)。このとき、生成部52bは、ステップS21により決定された減衰振動の周波数ωd、ゲインK、及び減衰比ζを式(2)に代入することにより、ガス漏れ振動波形を生成する。
そして、判断部52aは、ステップS22において生成されたガス漏れ振動波形と、受信した計測値データからなる振動波形とに基づいて、式(1)から連続NCCを算出する(S23)。
次に、判断部52は、連続NCCの代表値を決定し、代表値が閾値以上であるか否かを判断する(S24)。代表値が閾値以上であると判断した場合(S24:YES)、判断部52は、ガス漏れが発生していると判断する(S26)。その後、図14に示す処理は終了する。
代表値が閾値以上でないと判断した場合(S24:NO)、判断部52aは、類似度推移パターン記憶部53aからガス器具10毎の類似度推移データを読み出す(S26)。次いで、判断部52aは、ステップS26にて読み出したガス器具10毎の連続NCCデータのうち、ステップS23において算出した連続NCCと最も近いものを特定し、使用が開始したガス器具10を判断する(S27)。その後、図14に示す処理は終了する。
なお、図14に示す処理では、ステップS27において使用が開始したガス器具10を判断するのに先立って、ステップS24においてガス漏れを判断することにより、迅速性を必要とするガス漏れの判断を優先し、安全性の向上を図っている。
図15は、図13に示した終了ガス器具判断処理(S17)の詳細を示すフローチャートである。図15に示すステップS31〜S33において、図14に示したステップS21〜S23と同様の処理が実行される。
その後、図15に示すステップS34,S35において、図14に示したステップS26,S27と同様の処理が実行される。そして、図15に示す処理は終了する。
このようにして、本実施形態に係るガス使用状況判断システム1及びガス使用状況判断方法によれば、ガスメータ40は計測値データを送信し、管理センター50は、受信した計測値データの所定以上の変化時からの微小時間中に得られる振動波形からガス漏れ及び使用ガス器具10の少なくとも一方を判断する。ここで、本件出願人らは、ガス漏れ発生時や、ガス器具10の使用開始時及び終了時など、計測値データの所定以上の変化時から微小時間経過するまでの波形に、ガス漏れやガス器具10毎に固有の振動を示すことを見出した。このため、所定以上の変化時からの微小時間中に得られる振動波形からガス漏れ及び使用ガス器具10の少なくとも一方を判断することができる。特に、ガスメータ40はセンサ41,42により出力された信号に基づく計測値データを送信するだけでよく、判断についての演算を行う必要がない。このため、基本的に電池駆動となるガスメータ40の消費電力を抑えることができる。従って、消費電力を抑えつつ、ガス漏れ及び使用ガス器具10の少なくとも一方を判断することができる。
また、センサ41,42により出力された信号の所定以上の変化時にトリガ信号を発生し、トリガ信号が発生された場合に、センサ41,42のサンプリング時間を通常のサンプリング時間よりも短縮する。このため、微小時間における波形の振動を適切にとらえることができ、適切に計測することができる。
また、微小時間経過後に、センサ41,42により出力された信号に基づく計測値データを、微小時間分一括して送信するため、計測の都度に送信する場合と比較してガスメータ40による送信回数の増加を抑えることができ、一層消費電力を抑えることができる。
また、微小時間だけサンプリング時間を短縮した後、サンプリング時間の短縮状態を解除するため、ガス漏れや使用ガス器具10の判断に必要なる振動波形が得られた後は、詳細なサンプリングを必要とせず、そのような場合にサンプリング時間の短縮状態を解除することで、一層消費電力を抑えることができる。
また、トリガ信号が発生されるまでは、センサ41,42のサンプリング時間を通常のサンプリング時間よりも長くする。ここで、トリガ信号が発生していない場合とは、流量や圧力に所定以上の変化がなく、流量や圧力が安定している場合といえる。すなわち、計測の必要性が少ない場合といえる。よって、このような場合に、サンプリング時間を長くしておくことで、一層消費電力を軽減させることができる。
また、計測値データに基づく振動波形と所定の振動波形との類似度推移を算出し、算出された類似度推移に基づいて、ガス漏れ及び使用ガス器具10の少なくとも一方を判断する。ここで、所定の振動波形が特定のガス器具10の振動波形であるとする。そして、センサ41,42から得られた信号に基づく振動波形が特定のガス器具10の振動波形である場合、算出される類似度は高くなる傾向にあり、類似度推移についても全体的に高い値を示す傾向にある。また、センサ41,42から得られた信号に基づく振動波形が他のガス器具10の振動波形である場合には、類似度は高くならず、類似度推移についても高くならないが、類似度推移はそのガス器具10特有の推移を示す。ガス漏れ時も同様にガス漏れ特有の推移を示す。従って、上記のように類似度推移に基づいて判断を実行することで、振動波形の特徴をとらえて、ガス漏れ及び使用ガス器具10の少なくとも一方を判断することができる。なお、上記実施形態では所定の振動波形を生成しているが、これに限らず、予め管理センター50のハードディスクなどにデータテーブルとして記憶されていてもよい。また、これらの組み合わせであってもよい。
また、ガス漏れ及び使用が開始されたガス器具10の双方を判断可能であって、使用が開始されたガス器具10を判断するのに先立って、ガス漏れ判断の処理を実行する。このため、緊急性の高いガス漏れ判断を優先して行うこととなり、安全性の向上を図ることができる。
また、管理センター50はリコール対象となるガス器具10の情報を記憶し、使用ガス器具10がリコール対象のガス器具10である場合、当該リコール対象のガス器具10に対する保安処理を実行させる。このため、リコール品の回収や使用禁止を行うことができ、安全性を向上させることができる。加えて、リコール品を管理センター50側で登録しておけばよく、各需要者側において登録等する必要がないことから、リコール品に対する保安処理についての工数を低減することができる。
次に、本発明の第2実施形態を説明する。第2実施形態に係るガス使用状況判断システム1及びガス使用状況判断方法は、第1実施形態のものと同様であるが、構成及び処理内容が一部異なっている。以下、第1実施形態との相違点を説明する。
図16は、第2実施形態に係る管理センター50の詳細を示す構成図である。図16に示すように、第2実施形態に係る管理センター50は、生成部52b及び類似度推移算出部52cに代えて、解析部(解析手段)52eを備えている。
解析部52eは、計測値データに基づく振動波形を解析して、周波数と振幅との相関を示すスペクトルデータを算出するものである。具体的に本実施形態に係る解析部52eは、振動波形をフーリエ変換することにより、スペクトルデータを算出する。なお、解析部52eはフーリエ変換によりスペクトルデータを算出する場合に限らず、他の方法によってスペクトルデータを算出するようにしてもよい。
図17は、図16に示した解析部52eにより算出されるスペクトルデータを示すグラフであって、ガス漏れが発生したときの圧力波形をフーリエ変換して得られるスペクトルデータを示すグラフである。図17に示すように、ガス漏れが発生した場合、得られる圧力波形には20Hz以上の周波数成分が殆ど含まれていない。なお、60Hz付近において存在するピークは、商用電源によるノイズであると考えられる。
図18は、図16に示した解析部52eにより算出されるスペクトルデータを示すグラフであって、(a)はガステーブル使用開始時におけるスペクトルデータを示し、(b)は小型湯沸器使用開始時におけるスペクトルデータを示し、(c)は給湯器使用開始時におけるスペクトルデータを示している。
図18(a)に示すように、ガステーブルの使用が開始した場合、得られる圧力波形には30Hz以下の周波数成分が多く、特に10〜20Hz付近において大きな振幅を示す傾向がある。また、図18(b)に示すように、小型湯沸器の使用が開始した場合、圧力波形は150Hzまでの圧力成分を含んでおり、特に30Hz程度では非常に大きな振幅を示す傾向がある。さらに、図18(c)に示すように、給湯器の使用が開始した場合、圧力波形は180Hzまでの圧力成分を含んでおり、特に20Hz程度では非常に大きな振幅を示す傾向がある。
図19は、図16に示した解析部52eにより算出されるスペクトルデータを示すグラフであって、(a)はガステーブル使用終了時におけるスペクトルデータを示し、(b)は小型湯沸器使用終了時におけるスペクトルデータを示し、(c)は給湯器使用終了時におけるスペクトルデータを示している。
図19(a)に示すように、ガステーブルの使用が終了した場合、得られる圧力波形には30Hz以下の周波数成分が多く、特に10〜20Hz付近において大きな振幅を示す傾向がある。また、図19(b)に示すように、小型湯沸器の使用が終了した場合、圧力波形は150Hzまでの圧力成分を含んでおり、特に90Hz程度で大きな振幅を示す傾向がある。さらに、図19(c)に示すように、給湯器の使用が終了した場合、30Hz程度でやや大きな振幅を示す程度であり、その他の周波数成分を殆ど含まない傾向がある、なお、50Hz付近において存在するピークは、商用電源によるノイズであると考えられる。
再度、図16を参照する。記憶部53は、類似度推移パターン記憶部53aに代えて、スペクトルデータ記憶部53cを記憶している。このスペクトルデータ記憶部53cは、図17〜図19に示したようなスペクトルデータを記憶している。そして、判断部52aは、このスペクトルデータに基づいて、ガス漏れ及び使用ガス器具10を判断する。
すなわち、解析部52eは計測値データに基づく振動波形をフーリエ変換してスペクトルデータを算出する。判断部52aは、解析部52eにより算出されたスペクトルデータと、スペクトルデータ記憶部53cにより記憶されたスペクトルデータとを比較し、類似度が最も高いスペクトルデータを特定し、ガス漏れの発生や使用ガス器具10について判断する。ここで、類似度とは、上記したNCCであってもよいし、他の手法により算出された類似度であってもよい。
なお、第1実施形態においてリコール器具記憶部53bは、少なくともリコール対象となるガス器具10のメーカ名及び型番を記憶し、望ましくは波形データ及び類似度推移を記憶していた。第2実施形態ではスペクトルデータによりガス器具10を判断するため、リコール器具記憶部53bは、類似度推移に代えてスペクトルデータを記憶することとなる。
次に、フローチャートを参照して、第2実施形態に係るガスメータ40の動作を説明する。なお、第2実施形態においてガスメータ40のフロー及び管理センター50のメインフローは第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
図20は、図13に示したガス漏れ/開始ガス器具判断処理(S13)の詳細を示す第2のフローチャートである。図20に示すように、まず、解析部52eは、ガスメータ40から受信した計測値データに基づく振動波形をフーリエ変換し、スペクトルデータを算出する(S41)。その後、判断部52aは、ガス漏れのスペクトルデータを読み出し(S42)、読み出したガス漏れのスペクトルデータと、ステップS41にて算出したスペクトルデータとの類似度を算出する(S43)。
次に、判断部52aは、ステップS43にて算出した類似度が特定値以上であるか否かを判断する(S44)。ステップS43にて算出した類似度が特定値以上であると判断した場合(S44:YES)、判断部52aはガス漏れが発生したと判断する(S45)。そして、図20に示す処理は終了する。
ところで、ステップS43にて算出した類似度が特定値以上でないと判断した場合(S44:NO)、判断部52aは、ガス器具10毎のスペクトルデータを読み出し(S46)、読み出したガス器具10毎のスペクトルデータと、ステップS41にて算出したスペクトルデータとの類似度を算出する(S47)。
その後、判断部52aは、類似度が最大となったスペクトルデータが示す種類のガス器具10の使用が開始したと判断する(S48)。そして、図20に示す処理は終了する。
図21は、図13に示した終了ガス器具判断処理(S17)の詳細を示す第2のフローチャートである。図21に示すステップS51において、図20に示したステップS41と同様の処理が実行される。
その後、図21に示すステップS52〜S54において、図20に示したステップS46〜S48と同様の処理が実行される。そして、図21に示す処理は終了する。
このようにして、第2実施形態に係るガス使用状況判断システム1及びガス使用状況判断方法によれば、第1実施形態と同様に、消費電力を抑えつつ、ガス漏れ及び使用ガス器具10の少なくとも一方を判断することができる。
さらに、第2実施形態によれば、計測値データに基づく振動波形を解析して、周波数と振幅との相関を示すスペクトルデータを算出し、算出されたスペクトルデータに基づいて、ガス漏れ及び使用ガス器具10の少なくとも一方を判断する。ここで、ガス器具使用時及び終了時やガス漏れ時における振動波形それぞれには、圧力や流量の波形の周波数及び振幅に特徴があらわれる。よって、波形を解析して周波数と振幅との相関を示すスペクトルデータを得ると共に、このスペクトルデータに基づいて判断を実行することで、ガス漏れ及び使用ガス器具の少なくとも一方を判断することができる。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。
また、本実施形態においてガスメータ40を計測装置の一例としているが、これに限らず、計測装置はガスメータ40でなくともよい。さらには、既存のガスメータに送信機など機能を追加して、計測装置を構成してもよい。
さらに、第1実施形態において類似度推移を式(1)により算出しているが、これに限らず、他の方法で類似度推移を算出するようにしてもよい。
また、第1実施形態において判断部52aは、類似度推移パターン記憶部53aに記憶された連続NCCデータのうち、判断部52aにより算出された連続NCCと近いものが存在しない場合、類似度推移パターン記憶部53aに記憶された連続NCCデータが示すガス器具10に不足があると判断してもよい。
また、本実施形態では燃料ガスをLPガスとする場合の例について説明したが、これに限らず、都市ガスの場合にも適用可能である。
また、本実施形態において微小時間を最大で2秒(望ましくは1秒以内)としているが、2秒よりも長い時間であってもよい。
また、本実施形態において類似度推移パターン記憶部53aは、ガス器具10毎の連続NCCデータを記憶している。この連続NCCデータは、1つのガス器具10に対して1つだけ記憶されていてもよいし、1つのガス器具10に対して複数記憶されていてもよい。例えば、給湯器では給湯器内の水温によって連続NCCが異なってくる。この場合、類似度推移パターン記憶部53aに記憶される連続NCCデータが1つだけであると、給湯器の水温に応じて使用ガス器具10の判断を誤ってしまう可能性がある。そこで、このようなガス器具10に対しては複数の連続NCCデータを記憶しておくことが望ましい。これにより、より精度良く使用ガス器具10を判断することができるからである。
また、第2実施形態において解析部52eは、スペクトルデータの全周波数域で類似度を算出しているが、これに限らず一部の周波数域のみで類似度を算出してもよい。例えば、給湯器の使用終了時では100Hz以上の周波数域においてもスペクトルデータに大きな振幅が得られるという特徴があるため、100Hz以上の周波数域についてスペクトルデータの類似度を算出することによっても使用が終了したガス器具10を特定することができる。このように、一部の周波数域のみで類似度を算出して演算量を減らすこともできる。
また、上記実施形態では、使用が開始したガス器具10、使用が終了したガス器具10、及び、ガス漏れについて、連続NCCを求めたり、スペクトルデータを求めたりすることで、判断している。しかし、これに限らず、例えば、図6、図8及び図10に示すような微小時間における波形を直接記憶しておき、波形同士の類似度などから、使用が開始したガス器具10、使用が終了したガス器具10、及び、ガス漏れを判断するようにしてもよい。さらには、波形の特定点など波形の直接の特徴から使用が開始したガス器具10、使用が終了したガス器具10、及び、ガス漏れを判断するようにしてもよい。
また、上記実施形態において送受信部44は圧力と流量との双方の計測値データを送信しているが、これに限らず、いずれか一方のみの計測値データを送信するようにしてもよい。
さらに、上記実施形態においてセンターは、所定の振動波形を生成しているが、これに限らず、予めデータテーブルとして所定の振動波形を記憶しておいてもよいし、これらを組み合わせてもよい。