以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る漏洩箇所特定システムを含むガス供給システム1の構成図である。なお、以下では、LPガスを燃料ガスとして供給するガス供給システム1を例に説明するが、これに限らず、ガス供給システム1は都市ガスを供給するものであってもよい。
ガス供給システム1は、ガスボンベ(ガス供給元)110から複数の住宅2に燃料ガスを供給する住宅設備である。このガス供給システム1は、供給側設備100と、住宅側設備200と、ガス管理センター300とからなっている。供給側設備100は、ガスボンベ110と、ガス流路120と、第1〜第3圧力調整器130〜150と、微少漏洩判断装置160とを備えている。
ガス流路120は、ガスボンベからの燃料ガスを複数の住宅2側に供給するガス配管である。このガス流路120は、ガスボンベから複数の住宅2側まで連続するメイン流路121と、両端がメイン流路121に接続されてメイン流路122をバイパスするバイパス流路122とを備えている。
第1〜第3圧力調整器130〜150は、ガス流路120上に設けられ、閉塞状態と開放状態との2状態により下流側のガス圧力を調整するものである。このうち、第1圧力調整器130はガスボンベ110側に設けられ、第3圧力調整器150は第1圧力調整器130の下流側のバイパス流路122に設けられている。また、第2圧力調整器140は、第1圧力調整器130の下流側であって、メイン流路121のうちバイパス流路122によってバイパスされる部分に設けられている。
微少漏洩判断装置160は、ガス流路120のうちバイパス流路122上に設けられ、ガス流路120における微少漏洩を判断するものである。この微少漏洩判断装置160は、微少流量が微少漏洩によるものか、ガス器具の使用によるものかを判断する機能を有している。このため、微少漏洩判断装置160は、微少流量を検出した場合、微少流量がガス器具の使用による流量か判断し、ガス器具の使用による流量でないと判断した場合に、微少流量が微少漏洩による流量であると判断する。
住宅側設備200は、複数の個別ガス流路210と、複数のバルブ220と、複数のガスメータ(複数の個別微少漏洩判断装置)230と、複数のガス器具240とを備えている。複数の個別ガス流路210は、ガス流路120を通じて流れてきた燃料ガスを複数の住宅2に供給するものである。これら複数の個別ガス流路210は、ガス流路120から分岐するようにして、複数の住宅2にそれぞれに燃料ガスを供給する。
バルブ220は、各個別ガス流路210の上流部位に設けられている。このバルブ220を開閉することにより、各住宅2の住居者は燃料ガスを家庭内に引き込むことができる。
ガスメータ230は、燃料ガスの流量を測定して積算流量を表示するものである。また、ガスメータ230は、複数の個別ガス流路210上にそれぞれ設けられ、各個別ガス流路210における微少漏洩を判断する機能を有している。また、これら複数のガスメータ230は、微少漏洩判断装置160と同様に、微少流量を検出した場合、微少流量がガス器具240の使用による流量か判断し、ガス器具240の使用による流量でないと判断した場合に、微少流量が微少漏洩による流量であると判断する。
複数のガス器具240は、ガスストーブ、ファンヒータ、給湯器、床暖房、ガステーブル、及び、ガスBF風呂釜などである。ここで、ガステーブルは、とろ火を伴うガス器具240である。とろ火とは、勢いが弱い最小域の火であって、ぬる火、とろとろ火ということもあり、具体的にテーブルコンロにあっては煮豆やおかゆなどを長時間煮込むときの火加減をいう。なお、とろ火を伴うガス器具240は、ガステーブルに限らず、又はガスコンロやテーブルコンロなど他のものも存在する。
また、ガスBF風呂釜は、パイロットバーナを有するガス器具240であって、パイロットバーナ点火後にメインバーナに点火されることによって本体器具が使用開始されるものである。なお、パイロットバーナを有するガス器具240は、ガスBF風呂釜に限らず、CF風呂釜や旧式の小型湯沸器など多種存在する。
なお、図1に示す例では、ガスメータ230を個別微少漏洩判断装置の一例として挙げるが、個別微少漏洩判断装置はガスメータ230に限るものではない。同様に、微少漏洩判断装置160はガスメータであってもよいし、微少漏洩のみを判断する機器であってもよい。
ガス管理センター300は、ガスメータ230と通信することにより、住宅2におけるガス漏れ(微少漏洩を含む)発生時に、ガスメータ230内の遮断弁を閉じる制御信号を発したり、ガス事業者の派遣要請を行ったりするものである。また、ガス管理センター300は、微少漏洩判断装置160とも通信可能となっている。
このようなガス供給システム1では、微少漏洩判断装置160及び複数のガスメータ230の少なくとも1つから微小漏洩があった旨の信号を受信すると、ガス事業者の派遣要請を行う。これにより、ガス事業者は、ガス供給システム1のどの箇所に微少漏洩の発生箇所があるかを検査することとなる。この際、本実施形態においては、例えば複数のガスメータ230のうちいずれか1つにおいて漏洩が判断された場合、その住宅2の個別ガス流路230に漏洩が発生していると判断できる。また、複数のガスメータ230において漏洩なしと判断され、微少漏洩判断装置160において漏洩ありと判断された場合には、個別ガス流路210でなくガス流路120に漏洩が発生していると判断できる。このように、本実施形態では、各装置160,230の漏洩判断の結果から、大凡の漏洩箇所を特定でき、漏洩箇所の特定について簡素化を図ることができる。
なお、この場合、ガス流路120、微少漏洩判断装置160、複数の個別ガス流路210、及び複数のガスメータ230が、微少漏洩の発生箇所を特定する漏洩箇所特定システムとして機能することとなる。
さらに、本実施形態ではガス管理センター300を備えることから、複数のガスメータ230及び微少漏洩判断装置160からの微少漏洩の判断結果を取得した場合、ガス管理センター300において漏洩箇所を特定するようにしてもよい。これにより、ガス事業者の確認作業を要することなく、大凡の漏洩箇所を特定でき、漏洩箇所の特定について一層簡素化を図ることができるからである。
なお、この場合、ガス管理センター300が漏洩箇所特定手段として機能し、ガス流路120、微少漏洩判断装置160、複数の個別ガス流路210、複数のガスメータ230、及びガス管理センター300が、微少漏洩の発生箇所を特定する漏洩箇所特定システムとして機能することとなる。
図2は、図1に示した微少漏洩判断装置160の詳細を示すブロック図である。図2に示すように、微少漏洩判断装置160は、流量センサ161と、圧力センサ162と、判断部163と、トリガ信号発生部164と、生成部165と、類似度推移記憶部166と、流量値記憶部167と、スペクトルデータ記憶部168とを備えている。
また、判断部163は、パイロット着火判断部163aと、とろ火判断部163bと、微少漏洩判断部163cと、ガス漏れ/ガス器具判断部(ガス器具判断手段)163dと、サンプリング時間調整部163eとを備えている。
図3は、図1に示したガスメータ230の詳細を示すブロック図である。図3に示すように、ガスメータ230は、流量センサ231と、圧力センサ232と、判断部233と、トリガ信号発生部234と、生成部235と、類似度推移記憶部236と、スペクトルデータ記憶部237と、流量値記憶部238とを備えている。
また、判断部233は、パイロット着火判断部233aと、とろ火判断部233bと、微少漏洩判断部233cと、ガス漏れ/ガス器具判断部(ガス器具判断手段)233dと、サンプリング時間調整部233eとを備えている。
ここで、図2及び図3に示す同一名称の要素は、構成及び機能が基本的に同じであるため、両者を一括して説明するものとする。
流路センサ161,231は、微少漏洩判断装置160やガスメータ230の流路内におけるガス流量に応じた計測値の信号を出力するものであって、超音波センサやフローセンサなどで構成される。圧力センサ162,232は、微少漏洩判断装置160やガスメータ230の流路内におけるガス圧力に応じた計測値の信号を出力するものであって、ピエゾ抵抗式や静電容量式などのセンサによって構成される。
判断部163,233は、微少漏洩判断装置160やガスメータ230における各種判断を行うものであって、例えば、流路センサ161,231からの信号及び圧力センサ162,232からの信号に基づいて、ガス漏れ及び使用ガス器具240を判断するものである。
パイロット着火判断部163a,233aは、パイロット着火による流量を判断するものである。具体的にパイロット着火判断部163a,233aは、図4に示す流量推移に基づいてパイロット着火による流量を判断する。
図4は、パイロット着火機能付きガス器具240の流量波形の一例を示す図である。図4に示すように、まず、パイロット着火機能付きガス器具240が時刻t41において使用開始されたとする。この際、パイロットバーナのみが点火され、流量値は10〜20L/hを示す。すなわち、微少流量F41が流れる。
その後、時刻t42においてメインバーナに点火され、本体器具が使用開始されたとする。これにより、大流量F42が流れ出す。このときの流量値は、少なくとも50L/hであり、多くの場合には100L/h以上を示す。なお、ユーザがパイロット着火を行ってから本体器具の使用を開始するまでは、大抵の場合、数十秒以内(第1所定時間の一例)である。
次に、時刻t43において本体器具の使用が終了したとする。これにより、本体器具の着火状態から消火状態に移行し、10〜20L/hの微少流量F41が流れることとなる。その後、パイロットバーナについて消火状態となり、流量値は0L/hとなる。
このように、パイロット着火機能付きガス器具240の使用時には、微少流量F41、大流量F42、及び微少流量F41の順に流量が流れることとなる。しかも、1回目の微少流量F41の流れ出し(時刻t41)から、大流量F42の流れ出し(時刻t42)までは、第1所定時間以内となる。
なお、図4の説明においては、1回目の微少流量F41と、復帰後の微少流量F41との流量値が同じであるが、同じでなくともよい。すなわち、両者の流量F41は、特定値の範囲内に収まっていればよい。
再度、図2及び図3を参照する。パイロット着火判断部163a,233aは、図4に示したような流量推移を捉えて、パイロット着火による流量を判断する。すなわち、パイロット着火判断部163a,233aは、微少流量F41が検出されてから第1所定時間以内に微少流量F41を超える流量F42が検出され、その後流量が微少流量F41に復帰した場合、微少流量F41がパイロット着火による流量と判断する。
とろ火判断部163b,233bは、とろ火による流量を判断するものである。具体的にとろ火判断部163b,233bは、図5に示す流量推移に基づいてとろ火による流量を判断する。
図5は、とろ火を伴うガス器具240の流量波形の一例を示す図である。図5に示すように、まず、とろ火を伴うガス器具240が時刻t51において使用開始されたとする。この際、初期的には着火のため、微少流量を超える流量が流れることとなり、流量値はF52を示す。
その後、ユーザがガス器具240の火力をとろ火にすべく、ガステーブルにあっては回転つまみを徐々に回転させていく。これにより、時刻t52〜時刻t53にかけて流量は徐々に低下し、時刻t53において微少流量F51を示す。なお、時刻t51の着火から時刻t53のとろ火となるまでの時間は、大抵の場合、数十分以内(第2所定時間の一例)である。
次に、時刻t53〜時刻t54において、とろ火による煮込み等が行われ、その後、とろ火を伴うガス器具240の使用が終了する。これにより、ガス器具240はとろ火状態から消火状態に移行し、流量値は0L/hとなる。
このように、とろ火を伴うガス器具240の使用時には、微少流量F51を超える流量F52の後に、微少流量F51が流れることとなる。しかも、流量F52の流れ出し(時刻t51)から、微少流量F51に至る(時刻t52)までの時間は、第2所定時間以内となる。
再度、図2及び図3を参照する。とろ火判断部163b,233bは、図5に示したような流量推移を捉えて、とろ火による流量を判断する。すなわち、とろ火判断部163b,233bは、微少流量F51を超える流量F52が検出されてから第2所定時間以内に微少流量F51を検出した場合、微少流量F51がとろ火による流量と判断する。
微少漏洩判断部163c,233cは、微少流量F41,F51が微少漏洩による流量かを判断するものである。この微少漏洩判断部163c,233cは、パイロット着火判断部163a,233aによりパイロット着火による流量が判断された場合、微少流量F41が微少漏洩による流量でない判断する。すなわち、微少漏洩判断部163c,233cは、図4に示したような流量推移が観察され、パイロット着火機能付きガス器具240が使用されていると推察できる場合に、微少流量F41が微少漏洩によるものでないと判断することとなる。
同様に、微少漏洩判断部163c,233cは、とろ火判断部163b,233bによりとろ火による流量が判断された場合、微少流量F51が微少漏洩による流量でない判断する。すなわち、微少漏洩判断部163c,233cは、図5に示したような流量推移が観察され、とろ火を伴うガス器具240が使用されていると推察できる場合に、微少流量F51が微少漏洩によるものでないと判断することとなる。
ガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dは、ガス漏れが発生したか否かを判断すると共に、使用されたガス器具240を判断するものである。特に、ガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dは、パイロット着火を伴うガス器具240が使用されたか否かを判断すると共に、とろ火を伴うガス器具240が使用されたか否かを判断する。この判断により、微少漏洩判断部163c,233cは、一層微少漏洩と、パイロット着火による流量と、とろ火による流量とを区別するようになっている。
詳細にガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dは、生成部165,235及び類似度推移記憶部166,236と協働して、ガス漏れ(微少漏洩を除く)を判断し、ガス漏れが発生していないと判断できる場合に、使用中のガス器具240を判断する(第1手法)。さらに、ガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dは、スペクトルデータ記憶部167,237と協働して、ガス漏れ(微少漏洩を除く)を判断し、ガス漏れが発生していないと判断できる場合に、使用中のガス器具240を判断する(第2手法)。いずれの手法においても、ガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dは、ガス流量及びガス圧力の少なくとも一方の所定以上の変化時からの微小時間(最大で2秒)中に計測された波形に基づいて、ガス漏れ及び使用ガス器具240を判断することとなる。
まず、第1手法について説明する。生成部165,235は、ガス漏れが発生したと仮定したときのガス漏れ振動波形を生成するものである。ガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dは、生成部165,235により生成されたガス漏れ振動波形に基づいて、ガス漏れを判断することとなる。
図6は、図2及び図3に示した生成部165,235により生成されるガス漏れ振動波形の概略を示す図である。図6に示すように、生成部165,235は、圧力が時間の経過と共に低下しながら振動するガス漏れ振動波形を生成する。このガス漏れ振動波形は、減衰振動の周波数、ゲイン、及び減衰比を含む2次遅れのステップ応答の式に基づいて生成された波形である。ここで、本件発明者らは、ガス漏れ発生直後の微小時間(最大で2秒)において圧力や流量の計測値に振動が発生することを見出した。このため、生成部165,235は、ガス漏れ判断にあたり必要となる情報として、2次遅れのステップ応答の式に基づいてガス漏れ振動波形を生成し、ガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dは、生成部165,235に生成されたガス漏れ振動波形に基づいてガス漏れの発生を判断することとなる。
なお、図6に示すように、生成部165,235は圧力のガス漏れ振動波形を生成するが、これに限らず、流量が時間の経過と共に上昇しながら振動するガス漏れ振動波形を生成していてもよい。さらに、この波形も2次遅れのステップ応答の式に基づいて決定されることが望ましい。
再度、図2及び図3を参照する。ガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dは、入力されたセンサ161,162,231,232からの微小時間における信号の波形と、生成部165,235に生成されたガス漏れ振動波形との類似度推移を算出する。なお、類似度推移とは、本実施形態において連続的な正規相互相関(NCC:Normalized Cross Correlation)をいう。より具体的には、以下の式(1)により類似度R
NCCが求められる。ガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dは、この式(1)による類似度R
NCCの算出を連続的に行うことにより、類似度推移(以下、連続NCCという)を求める。
そして、ガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dは、算出した類似度推移に基づいて、ガス漏れの発生を判断する。特に、この実施形態においては、その一例として、ガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dにより算出された類似度推移の代表値が閾値以上である場合に、ガス漏れが発生していると判断する。ここで、代表値とは、類似度全体又は類似度全体のうち特定期間の平均値であってもよいし、圧力や流量の変化が発生してから、ある特定の時刻における類似度であってもよいし、他の値であってもよい。
次に、図7を参照してガス漏れ時における圧力変化を説明する。図7は、ガス漏れ時における圧力変化を示す図である。図7に示すように、ガス漏れ発生時には、圧力が低下しつつ振動する波形を示すこととなる。この波形は、図6に示したように生成部165,235により生成されたガス漏れ振動波形と相関が高い。このため、類似度推移の代表値は高い値を示すこととなり、ガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dはガス漏れが発生したと判断することとなる。
図8は、ガス漏れ時における連続NCCを示すグラフである。なお、図8において実線と破線は、各家庭における配管状態の相違、ガス漏れ箇所の相違、及び、ガス漏れ流量の相違などの条件が異なる場合の連続NCCを示している。
図8に示すように、ガス漏れ時において圧力変化の発生直後(時刻0秒付近)における連続NCCは、「0.7」から「0.8」程度の値を示す。しかし、時刻0.025秒以降について連続NCCは「0.9」以上の値を示す。よって、ガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dは、類似度推移ガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dにより算出された類似度推移の代表値が「0.9」以上である場合に、ガス漏れが発生していると判断する。
一方、図9に示すようにガス器具使用時には、ガス漏れ時と異なる振動波形を示すこととなる。図9は、ガス器具使用開始時における圧力変化を示すグラフであって、(a)はガステーブル使用開始時における圧力変化を示し、(b)はガスBF風呂釜使用開始時における圧力変化を示し、(c)は給湯器使用開始時における圧力変化を示している。
図9(a)に示すように、ガステーブルの使用開始時には圧力が2.9kPa程度で滑らかに振動する圧力波形が得られる。また、図9(b)に示すように、ガスBF風呂釜の使用終了時には圧力が2.93kPaを基準にして0.1kPa強振動する圧力波形が得られる。さらに、図9(c)に示すように、給湯器の使用終了時には圧力が2.93kPaを基準にして小型湯沸器よりもやや粗い振動を示す圧力波形が得られる。
図10は、図2及び図3に示したガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dにより算出される連続NCCを示すグラフであって、(a)はガステーブル使用開始時における連続NCCを示し、(b)はガスBF風呂釜使用開始時における連続NCCを示し、(c)は給湯器使用開始時における連続NCCを示している。
ガステーブルの使用が開始した場合、図9(a)の振動波形が得られ、ガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dにより算出される連続NCCは図10(a)に示すようになる。すなわち、連続NCCは、初期的に「1.0」程度を示し、その後「0.2」を下回り、約0.04秒において「0.95」まで復帰する。そして、連続NCCは、約0.1秒において「0.5」程度となり、その後「0.65」付近までゆっくりと上昇する。
また、小型湯沸器の使用が開始した場合、図9(b)の振動波形が得られ、ガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dにより算出される連続NCCは図10(b)に示すようになる。すなわち、連続NCCは、初期的に「1.0」程度を示し、その後「0.2」を下回り、約0.04秒において「0.9」まで復帰する。そして、連続NCCは、再度「0.4」程度まで低下し、その後、「0.7」付近までゆっくりと上昇する。
また、給湯器の使用が開始した場合、図9(c)の振動波形が得られ、ガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dにより算出される連続NCCは図10(c)に示すようになる。すなわち、連続NCCは、初期的に「0.8」弱を示し、その後「0.2」を下回り、約0.02秒において「0.7」まで復帰する。そして、連続NCCは、「0.6」程度まで低下し、次いで「0.7」程度まで復帰する。その後、連続NCCは再び「0.5」程度まで低下した後に、約0.1秒において「0.6」弱となる。以後、連続NCCは「0.65」付近までゆっくりと上昇していく。
このようにガス器具240の使用開始時において、連続NCCは大半の期間で「0.9」以上を示さない。このため、ガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dは、連続NCCの代表値が閾値以上でない場合、ガス器具240が使用されたと判断する。
また、連続NCCはガス器具240毎に異なっている。このため、ガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dは、このような連続NCCのパターンから使用されたガス器具240を判断する。具体的には図2及び図3に示す類似度推移記憶部166,236に、各ガス器具240の連続NCCのパターンを記憶させておく。すなわち、類似度推移記憶部166,236は、ガステーブルについて図10(a)に示したような連続NCCのパターンを記憶し、小型湯沸器について図10(b)に示したような連続NCCのパターンを記憶し、給湯器について図10(c)に示したような連続NCCのパターンを記憶している。そして、ガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dは、類似度推移記憶部166,236により記憶された連続NCCデータのうち、算出された連続NCCと最も近い連続NCCデータが示すガス器具240が使用されたと判断する。特に、ガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dは、最も近い連続NCCデータが示すガス器具240がガスBF風呂釜である場合には、パイロット着火を伴うガス器具240が使用されたと判断する。さらに、ガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dは、最も近い連続NCCデータが示すガス器具240がガステーブルである場合には、とろ火を伴うガス器具240が使用されたと判断する。
なお、図7〜図10については、圧力の振動波形及び圧力の振動波形に基づく連続NCCを示しているが、流量についても同様にしてガス漏れ判断を行うことができる。なお、以下の説明では、圧力の振動波形に基づくガス漏れ判断について説明するが、流量についても同様であることは言うまでもない。
次に、ガス漏れ振動波形の詳細について説明する。より詳細に説明すると、生成部165,235は、以下のようにしてガス漏れ振動波形を生成する。まず、生成部165,235は以下の式(2)を記憶している。
ここで、y(t)は圧力の変化量を示し、Kはゲインを示し、ωdは減衰振動の周波数を示し、ζは減衰比を示している。特に、ゲインK、減衰振動の周波数ωd、及び減衰比ζは、圧力センサ42によって実際に計測された波形から求められるものである。次に、これらの算出方法について図7を参照して説明する。
生成部165,235は、以下の式(3)から、減衰振動の周波数ω
dを算出する。
ここで、Tpは行き過ぎ時間であり、図7で示すように、圧力変化発生時から最初の極値V1(極小値V1)までの時間をいう。生成部165,235は、入力された信号から最初の極値V1が確認されると、行き過ぎ時間Tpを求め、式(3)から減衰振動の周波数ωdを算出する。
なお、減衰振動の周波数ωdは、式(3)から求める場合に限らず、圧力変化発生時から2つ目の極値M(極大点M)や、3つ目の極値V2(極小点V2)に基づいて算出してもよい。
次に、生成部165,235は、以下の式(4)から、ゲインKを算出する。
このような式であるため、生成部165,235は、入力された信号から極値V1,M,V2が確認されると、式(4)からゲインKを算出する。
なお、図7から明らかなように、ゲインKは圧力変化発生前の圧力値と圧力変化発生後の圧力値との差分によっても求めることができる。従って、生成部165,235は、圧力変化が発生して圧力値が略一定値となったとき(図7では時刻0.4秒)に、差分からゲインKを求めてもよい。さらに、生成部165,235は、圧力変化発生時から4つ目以降の極値を加味してゲインKを算出してもよい。
次いで、生成部165,235は、以下の式(5)から、減衰比ζを算出する。
ここで、δは対数減衰率であり、mは周期数である。式(5)の場合、周期数mは「0.5」となる。
このような式であるため、生成部165,235は、入力された信号から極値V1,Mが確認されると、式(5)から減衰比ζを算出する。
以上のように、生成部165,235は、ゲインK、減衰振動の周波数ωd、及び減衰比ζを算出し、式(2)より振動波形の式を求める。そして、ガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dは、求めた式と、入力された圧力波形とから、式(1)に従って連続NCCを求めることとなる。
ここで、生成部165,235は、減衰振動の周波数ωd、及び減衰比ζを算出するようにしてもよい。すなわち、図7に示す振動波形は、ガス漏れ時の流量に依存する傾向にある。このため、生成部165,235は、流量値のみを変数に含む式を予め記憶し、この式に流量センサ161,231によって計測された流量値を代入して、減衰振動の周波数ωd、及び減衰比ζを求めるようにしてもよい。
具体的に生成部165,235は、以下の式(6)から減衰振動の周波数ω
d、及び減衰比ζを求める。
ここで、Lは流量値であり、a1,a2,b1,b2は定数である。このように、式(6)から求めることで演算量を減らして、算出処理の簡素化を図るようにしてもよい。なお、流量と圧力には一定の相関がある。このため、式(6)に代えて圧力値のみを変数に含む式を記憶し、この式から減衰振動の周波数ωd、及び減衰比ζを求めるようにしてもよい。
さらに、この場合、生成部165,235は、ゲインKについて式(4)から算出することなく、圧力変化発生前の圧力値と圧力変化発生後の圧力値との差分によっても求めることが望ましい。これにより、一層演算量を減らすことができるからである。
次に、第2手法によるガス漏れ及び使用ガス器具240の判断について詳細に説明する。図2に示すスペクトルデータ記憶部167,237は、ガス漏れ発生直後の微小時間に得られると予測される波形をフーリエ変換したスペクトルデータ、及び、各ガス器具240の使用直後の微小時間に得られると予想される波形をフーリエ変換したスペクトルデータを記憶している。
図11は、ガス漏れが発生したときの圧力波形をフーリエ変換して得られるスペクトルデータを示すグラフであり、図12は、ガステーブルが使用されたときの圧力波形をフーリエ変換して得られるスペクトルデータを示すグラフである。また、図13は、ガスBF風呂釜が使用されたときの圧力波形をフーリエ変換して得られるスペクトルデータを示すグラフである。
図11に示すように、ガス漏れが発生した場合、得られる圧力波形には20Hz以上の周波数成分が殆ど含まれていない。また、図12に示すように、ガステーブルが使用された場合、得られる圧力波形には20Hz以上の周波数成分が殆ど含まれていないが、約10Hz付近の周波数成分において大きな振幅を示す傾向がある。また、図13に示すように、ガスBF風呂釜が使用された場合、得られる圧力波形には70Hz〜100Hzの周波数成分においてやや大きな振幅を示す傾向がある。なお、図11〜図13において60Hz付近に存在するピークは、商用電源によるノイズである。
再度、図2を参照する。スペクトルデータ記憶部167,237は、図11〜図13に示したようなスペクトルデータを記憶している。そして、ガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dは、このスペクトルデータに基づいて、ガス漏れ及び使用ガス器具240を判断する。具体的にガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dは、微小時間における圧力波形を得た後に、この波形をフーリエ変換してスペクトルデータを生成する。スペクトルデータを生成後、ガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dは、スペクトルデータ記憶部167,237の記憶内容を読み出し、記憶されたスペクトルデータのうち、生成したスペクトルデータに最も近いものを特定する。特定されたスペクトルデータがガス漏れを示すものである場合、ガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dは、ガス漏れが発生したと判断する。また、特定されたスペクトルデータがガス漏れのものでない場合、ガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dは、特定されたスペクトルデータが示すガス器具240が使用されたと判断する。特に、ガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dは、特定されたスペクトルデータが示すガス器具240がガステーブルである場合には、とろ火を伴うガス器具240が使用されたと判断する。
再度、図2及び図3を参照する。トリガ信号発生部164,234は、ガス流量やガス圧力の変化時を検出し、トリガ信号を出力するものである。例えばトリガ信号発生部164,234は、微分回路を含んで構成されており、微分回路により所定以上の変化を検出する。
トリガ信号は各センサ161,162,231,232及びサンプリング時間調整部163e,233eに入力される。サンプリング時間調整部163e,233eは、トリガ信号が入力されると予め定められた通常のサンプリング時間(例えば流量では2秒、圧力では10秒)よりもサンプリング時間を短縮する。このとき、判断部163,233は、微小時間だけサンプリング時間を短縮する。これにより、判断部163,233は、微小時間における波形を詳細に計測する。すなわち、ガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dによる判断を正確ならしめるために高速サンプリング実施する。また、各センサ161,162,231,232は、トリガ信号が入力されると、高速サンプリングにあわせて信号を出力することとなる。加えて、通常状態におけるセンサ161,162,231,232の駆動電流を小さくしておき、トリガ信号入力後に駆動電流を通常電流に大きくするようにしてもよい。
また、サンプリング時間調整部163e,233eは、トリガ信号発生部164,234によりトリガ信号が発生されるまで、ガス流量及びガス圧力の少なくとも一方のサンプリング時間を、通常のサンプリング時間よりも長くし、例えば流量について10秒としておく。ここで、トリガ信号が発生しておらず、流量や圧力に所定以上の変化がない場合とは、流量や圧力が安定しており、計測の必要性が少ない場合といえる。よって、本実施形態では、このような場合にサンプリング時間を長くしておくことで、消費電力を軽減させる。
流量値記憶部168,238は、パイロット着火判断部163a,233aにより微少流量F41がパイロット着火による流量と判断された場合、パイロット着火による流量値を記憶するものである。このため、パイロット着火判断部163a,233aは、流量値記憶部168,238にパイロット着火の流量値が記憶された後に、この流量値と規定範囲以内の流量値が検出された場合、その規定範囲以内の流量がパイロット着火による流量と判断する。これにより、図4に示したような流量推移を観察しなくとも迅速にパイロット着火を判断できることとなる。
流量値記憶部168,238は、とろ火判断部163b,233bにより微少流量F51がとろ火による流量と判断された場合、とろ火による流量値を記憶するものである。このため、とろ火判断部163b,233bは、流量値記憶部168,238にとろ火の流量値が記憶された後に、この流量値と規定範囲以内の流量値が検出された場合、その規定範囲以内の流量がとろ火による流量と判断する。これにより、図5に示したような流量推移を観察しなくとも迅速にとろ火を判断できることとなる。
次に、本実施形態に係る微少漏洩判断方法について説明する。図14は、本実施形態に係る微少漏洩判断方法の一例を示すフローチャートであって、パイロット着火を伴うガス器具240の使用と微少漏洩と判断するための処理を示している。図14に示すように、まず、判断部163,233は、流量センサ161,231からの信号に基づいて微少流量F41があったか否かを判断する(S1)。微少流量F41がなかったと判断した場合(S1:NO)、微少流量F41があったと判断されるまで、この処理が繰り返される。
微少流量F41があったと判断した場合(S1:YES)、パイロット着火判断部163a,233aは、流量値記憶部168,238にパイロット着火時における流量値が記憶されているか否かを判断する(S2)。記憶されていないと判断した場合(S2:NO)、処理はステップS4に移行する。
記憶されていると判断した場合(S2:YES)、パイロット着火判断部163a,233aは、微少流量F41が流量値記憶部168,238に記憶された流量値の規定範囲以内であるか否かを判断する(S3)。規定範囲以内であると判断した場合(S3:YES)、処理はステップS5に移行する。
一方、規定範囲以内でないと判断した場合(S3:NO)、パイロット着火判断部163a,233aは、図3に示したような流量推移があったか否かを判断する(S4)。流量推移があったと判断した場合(S4:YES)、処理はステップS5に移行する。
また、流量推移がなかったと判断した場合(S4:NO)、ガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dは、パイロット機能付きガス器具240が使用されたか否かを判断する(S6)。パイロット機能付きガス器具240が使用されたと判断した場合(S6:YES)、処理はステップS5に移行する。
一方、パイロット機能付きガス器具240が使用されていないと判断した場合(S6:NO)、微少漏洩判断部163cは、微少流量F41が微少漏洩によるものであると判断する(S7)。その後、図14に示す処理は終了する。
また、ステップS5においてパイロット着火判断部163a,233aは、微少流量F41がパイロット着火による流量であると判断する(S5)。そして、パイロット着火判断部163a,233aは、流量値記憶部168,238にパイロット着火時における流量値が記憶されているか否かを再度判断する(S8)。記憶されていると判断した場合(S8:YES)、図14に示す処理は終了する。一方、記憶されていないと判断した場合(S8:NO)、流量値記憶部168,238は、微少流量F1を記憶し(S9)、図14に示す処理は終了する。
図15は、本実施形態に係る微少漏洩判断方法の一例を示すフローチャートであって、とろ火を伴うガス器具240の使用と微少漏洩と判断するための処理を示している。図15に示すように、まず、判断部163,233は、流量センサ161,231からの信号に基づいて微少流量F51があったか否かを判断する(S11)。微少流量F51がなかったと判断した場合(S11:NO)、微少流量F51があったと判断されるまで、この処理が繰り返される。
微少流量F51があったと判断した場合(S11:YES)、とろ火判断部163b,233bは、流量値記憶部168,238にとろ火時における流量値が記憶されているか否かを判断する(S12)。記憶されていないと判断した場合(S12:NO)、処理はステップS14に移行する。
記憶されていると判断した場合(S12:YES)、とろ火判断部163b,233bは、微少流量F51が流量値記憶部168,238に記憶された流量値の規定範囲以内であるか否かを判断する(S13)。規定範囲以内であると判断した場合(S13:YES)、処理はステップS15に移行する。
一方、規定範囲以内でないと判断した場合(S13:NO)、とろ火判断部163b,233bは、図3に示したような流量推移があったか否かを判断する(S14)。流量推移があったと判断した場合(S14:YES)、処理はステップS15に移行する。
また、流量推移がなかったと判断した場合(S14:NO)、ガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dは、とろ火を伴うガス器具240が使用されたか否かを判断する(S16)。とろ火を伴うガス器具240が使用されたと判断した場合(S16:YES)、処理はステップS15に移行する。
一方、とろ火を伴うガス器具240が使用されていないと判断した場合(S16:NO)、微少漏洩判断部163c,233cは、微少流量F51が微少漏洩によるものであると判断する(S17)。その後、図15に示す処理は終了する。
また、ステップS15においてとろ火判断部163b,233bは、微少流量F51がとろ火による流量であると判断する(S15)。そして、とろ火判断部163b,233bは、流量値記憶部168,238にとろ火時における流量値が記憶されているか否かを再度判断する(S18)。記憶されていると判断した場合(S18:YES)、図15に示す処理は終了する。一方、記憶されていないと判断した場合(S18:NO)、流量値記憶部168,238は、微少流量F51を記憶し(S9)、図15に示す処理は終了する。
なお、ステップS6,S16に示した処理、すなわちパイロット着火機能付きガス器具10が使用されたか否か、及び、とろ火を伴うガス器具240が使用されたか否かは、図16〜図18に示すようにして判断される。このとき、本実施形態に係る微少漏洩判断装置160及びガスメータ230では、パイロット着火機能付きガス器具240が使用されたか否か、及び、とろ火を伴うガス器具240が使用されたか否かのみならず、ガス漏れ(微少漏洩を除く)及び使用ガス器具240の判断が行われる。
図16は、ガス漏れ/ガス器具判断の基本フローチャートである。まず、ガス漏れやガス器具240が使用された場合、ガス流量及びガス圧力に所定以上の変化が発生する。このため、判断部163,233は、図16に示すように、トリガ信号が入力されたか否かを判断する(S21)。トリガ信号が入力されなかったと判断した場合(S21:NO)、トリガ信号が入力されたと判断されるまで、この処理が繰り返される。
一方、トリガ信号が入力された判断した場合(S21:YES)、サンプリング時間調整部163e,233eは、サンプリング時間を通常のサンプリング時間よりも短縮し、短縮されたサンプリング時間で圧力を計測する(S22)。具体的には、サンプリング時間を10秒から1マイクロ秒に短縮する。
その後、ガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dは、微小時間経過したか否かを判断する(S23)。微小時間経過していないと判断した場合(S23:NO)、処理はステップS22に移行する。なお、ステップS22では、圧力のサンプリング時間を短縮しているが、圧力のサンプリング時間に代えて、流量のサンプリング時間を短縮するようにしてもよい。
微小時間経過したと判断した場合(S23:YES)、判断部163,233はガス漏れ/ガス器具判断を実行する(S24)。このガス漏れ/ガス器具判断によって、ガス漏れ及び使用ガス器具240が判断され、とろ火を伴うガス器具240が使用されたか否かが判断されることとなる。そして、図16に示す処理は終了する。
図17は、図16のステップS24に示したガス漏れ/ガス器具判断の詳細を示す第1フローチャートであって、第1手法を示している。まず、生成部165,235は、減衰振動の周波数ωd、ゲインK、及び減衰比ζを決定する(S31)。このとき、生成部165,235は、減衰振動の周波数ωd、ゲインK、及び減衰比ζを式(3)〜式(5)に基づいて算出してもよいし、式(6)から求めてもよい。
次に、生成部165,235は、ステップS31により決定された減衰振動の周波数ωd、ゲインK、及び減衰比ζから、2次遅れのステップ応答の式に基づいてガス漏れ振動波形を生成する(S32)。このとき、生成部165,235は、ステップS31により決定された減衰振動の周波数ωd、ゲインK、及び減衰比ζを式(2)に代入することにより、ガス漏れ振動波形を生成する。
そして、ガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dは、ステップS32により決定されたガス漏れ振動波形と、図16のステップS12において計測された計測値からなる波形とに基づいて、式(1)から連続NCCを算出する(S33)。次に、ガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dは、連続NCCの代表値を決定し、代表値が閾値以上であるか否かを判断する(S34)。
代表値が閾値以上であると判断した場合(S34:YES)、ガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dは、ガス漏れが発生していると判断する(S35)。その後、図17に示す処理は終了する。
代表値が閾値以上でないと判断した場合(S34:NO)、ガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dは、類似度推移記憶部166,236からガス器具毎の類似度推移データを読み出す(S36)。次いで、ガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dは、ステップS36にて読み出したガス器具毎の連続NCCデータのうち、ステップS33において算出した連続NCCと最も近いものを特定し、使用ガス器具240を判断する(S37)。このステップS37の処理においてパイロット着火を伴うガス器具240が使用されたと判断した場合、図14のステップS6では「YES」と判断されることとなる。そして、図17に示す処理は終了する。また、ステップS37の処理においてとろ火を伴うガス器具240が使用されたと判断した場合には、図15のステップS16において「YES」と判断されることとなる。そして、図17に示す処理は終了する。
図18は、図16のステップS24に示したガス漏れ/ガス器具判断の詳細を示す第2フローチャートであって、第2手法を示している。図18に示すように、まず、ガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dは、図16のステップS22において計測したガス圧力の波形をフーリエ変換する(S41)。
その後、ガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dは、スペクトルデータ記憶部167,237に記憶されたガス漏れ発生時のスペクトルデータを読み出す(S42)。そして、ガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dは、ステップS41のフーリエ変換により得られたスペクトルデータと、ステップS42において読み出したスペクトルデータとの類似度を算出する(S43)。この類似度は上記NCCであってもよいし、他の算出方法により算出されてもよい。次いで、ガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dは、ステップS33にて算出した類似度が特定値以上であるか否かを判断する(S44)。
ステップS43にて算出した類似度が特定値以上であると判断した場合(S44:YES)、ガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dはガス漏れが発生したと判断する(S45)。そして、図18示す処理は終了する。
ところで、ステップS43にて算出した類似度が特定値以上でないと判断した場合(S44:NO)、ガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dは、ガス器具240毎のスペクトルデータを読み出し(S46)、それぞれのスペクトルデータとの類似度を算出する(S47)。そして、ガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dは、類似度が最大となったスペクトルデータが示す種類のガス器具240が使用されたと判断する(S48)。このステップS48の処理においてパイロット着火を伴うガス器具240が使用されたと判断した場合、図14のステップS6では「YES」と判断されることとなる。そして、図18に示す処理は終了する。また、ステップS48の処理においてとろ火を伴うガス器具240が使用されたと判断した場合には、図15のステップS16において「YES」と判断されることとなる。そして、図18に示す処理は終了する。
なお、図18に示すステップS37,S38の処理では、記憶されたガス器具240毎の全スペクトルデータとの類似度を求めて最も高いスペクトルデータが示すガス器具240が使用されたと判断している。しかし、これに限らず、記憶されたガス器具240毎のスペクトルデータとの類似度を順次求めていき、類似度が予め定められた値以上となった時点でそのスペクトルデータが示すガス器具240が使用されたと判断し、その後類似度の算出を中止するようにしてもよい。このようにすることで、類似度の算出数が減り、消費電力の低下につなげることができるからである。
さらに、本実施形態では圧力センサ162,232からの電気信号によって得られる波形をフーリエ変換して、ガス器具240の種類を判断すると共にガス漏れを判断している。しかし、圧力と流量とには一定の相関があるため、流量センサ161,231からの電気信号によって得られる波形をフーリエ変換して、ガス器具240の種類を判断すると共にガス漏れを判断するようにしてもよい。
このようにして、本実施形態に係る漏洩箇所特定システム及び漏洩箇所特定方法によれば、ガス流路120における微少漏洩を判断する微少漏洩判断装置160と、各個別ガス流路210における微少漏洩を判断する複数のガスメータ230とを備えるため、例えば複数のガスメータ230のうちいずれか1つにおいて漏洩が判断された場合、その住宅2の個別ガス流路210に漏洩が発生していると判断できる。特に、複数のガスメータ230において漏洩なしと判断され、微少漏洩判断装置160において漏洩ありと判断された場合には、個別ガス流路210でなくガス流路120に漏洩が発生していると判断できる。このように、各装置160,230の漏洩判断の結果から、大凡の漏洩箇所を特定でき、漏洩箇所の特定について簡素化を図ることができる。
また、複数のガスメータ230及び微少漏洩判断装置160からの微少漏洩の判断結果を取得し、漏洩箇所を特定するガス管理センター300を備えるため、ガス事業者の確認作業を要することなく、大凡の漏洩箇所を特定でき、漏洩箇所の特定について一層簡素化を図ることができる。
また、微少流量を超える流量(例えば少なくとも50L/h以上の流量であって、望ましくは100L/h以上の流量)F52が検出されてから第1所定時間以内に微少流量F51を検出した場合、微少流量F51が微少漏洩による流量でないと判断する。ここで、とろ火を伴うガス器具(例えばガスコンロやガステーブル)240では、まず着火時に大流量F52が流れ、その後火力を調整することによりとろ火となって微少流量F51が流れる傾向にある。このように、とろ火を伴うガス器具240では流量が上記の推移を示す。このため、この流量推移が得られた場合、微少流量F51については微少漏洩によるものではなく、とろ火によるものと推察できる。よって、このような流量推移が観察されたときに、微少流量F51が微少漏洩によるものでないと判断することで、微少漏洩の判断精度を向上させることができる。
また、微少流量F41が検出されてから第2所定時間以内に微少流量を超える流量(例えば少なくとも50L/h以上の流量であって、望ましくは100L/h以上の流量)F42が検出され、その後流量が微少流量F41に復帰した場合、微少流量F41がパイロット着火による流量と判断する。ここで、パイロット着火を伴うガス器具240では、まずパイロット着火により微少流量F41が流れ、その後本体器具の着火により大流量F42が流れる傾向にある。また、器具使用が終了すると本体器具の着火状態から消火状態に移行することにより、再び微少流量F41に復帰する傾向にある。このように、パイロット着火を伴うガス器具240では流量が上記の推移を示す。このため、この流量推移が得られた場合、微少流量F41については微少漏洩によるものではなく、パイロット着火によるものと推察できる。よって、このような流量推移が観察されたときに、微少流量F41が微少漏洩によるものでないと判断することで、微少漏洩の判断精度を向上させることができる。
また、パイロット着火を伴うガス器具240が使用されたと判断された場合、及び、に、とろ火を伴うガス器具240が使用されたと判断された場合の少なくとも一方の場合に、発生した微少流量が微少漏洩による流量でないと判断する。このため、パイロット着火又はとろ火を伴うガス器具240の使用が判断された場合には、一層微少漏洩が発生している可能性を否定できる。従って、一層微少漏洩の判断精度を向上させることができる。
また、流量及び圧力の少なくとも一方の所定以上の変化時からの微小時間中に計測された波形に基づいて、使用されたガス器具240を判断する。ここで、ガス器具240が使用開始された場合、開始直後の微小時間(例えば最大で2秒など)においてガス器具特有の波形を示す傾向にある。このため、この微小時間における波形に基づいてガス器具240を判断することで、短時間でガス器具240を判断することができる。
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。
例えば、本実施形態において類似度推移を式(1)により算出しているが、これに限らず、他の方法で類似度推移を算出するようにしてもよい。
また、本実施形態においてガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dは、類似度推移記憶部166,236に記憶された連続NCCデータのうち、算出した連続NCCと近いものが存在しない場合、類似度推移記憶部166,236に記憶された連続NCCデータが示すガス器具240に不足があると判断してもよい。スペクトルデータについても同様にして、ガス器具240に不足があると判断してもよい。
また、本実施形態では燃料ガスをLPガスとする場合の例について説明したが、これに限らず、都市ガスの場合にも適用可能である。
また、本実施形態では微小時間を最大で2秒としているが、これに限らず、数十秒などのより長い時間であってもよい。
また、本実施形態においてガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dは、スペクトルデータの全周波数域で類似度を算出しているが、これに限らず一部の周波数域のみで類似度を算出してもよい。例えば、給湯器では100Hz以上の周波数域においてもスペクトルデータに大きな振幅が得られるという特徴があるため、100Hz以上の周波数域についてスペクトルデータの類似度を算出することによっても使用ガス器具240を特定することができる。このように、一部の周波数域のみで類似度を算出して演算量を減らすこともできる。
また、ガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dは、類似度推移(連続NCC)とスペクトルデータとから、ガス漏れ及び使用ガス器具240を判断しているが、これに限らず、例えば、図7や図9に示すような微小時間における波形を直接記憶しておき、波形同士の類似度などから、ガス漏れ及び使用ガス器具240を判断するようにしてもよい。さらには、波形の特定点など波形の直接の特徴からガス漏れ及び使用ガス器具240を判断するようにしてもよい。
さらに、本実施形態においてガス漏れ/ガス器具判断部163d,233dは、図3でいうところの時刻t41,t51から微小時間中に得られる波形に基づいて、使用されたガス器具240を判断している。これは、上記したように、ガス器具240が使用開始直後の微小時間においてガス器具240毎の特有の振動波形を示すからである。しかし、これに限らず、時刻t44,t54から微小時間中に得られた波形に基づいて、使用されたガス器具240を判断してもよい。使用開始時と同じように、ガス器具240は、使用終了直後の微小時間においてもガス器具240毎の特有の振動波形を示すからである。
また、使用終了直後の微小時間中に得られる振動波形からガス器具240を判断する場合、サンプリング時間調整部163e,233eは、使用終了直後の微小時間だけ、サンプリング時間を通常のサンプリング時間よりも短縮することが望ましい。これにより、使用終了直後の微小時間中に得られる振動波形の取得もれを防止できるからである。