JP5349887B2 - 雨水利用システム - Google Patents

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本発明は、雨水を貯留して利用する雨水利用システムに関するものである。
近年、都市化が急激に進んだことで、舗装の面積が増加したため、雨水が地中に浸み込まずに、一気に河川に流れ込むようになっている。
このため、都市型の洪水が起こる反面、普段は河川の流量が少なく、水質が悪化し、地下水が枯れるなどの問題が生じている。
また、地下水の低下によって渇水の危険性が高まり、緑地や街路樹などの潤いが失われ、気温の上昇や地中の乾燥化などが生じて、都市の気候変化をもたらすことも明らかになってきている。
このような問題を解決するために、雨水を貯留させる技術や雨水を地中に浸透させる技術が開発されている。
例えば、特許文献1には、宅地内の末端に位置する雨水マスに、オーバーフロー部材を設けて雨水を貯留可能な住宅用雨水貯留システムが開示されている。
この構成によれば、雨水マスや配管内に雨水を一時的に貯留することができるため、豪雨の際にも下水施設や河川の急激な増水による洪水の発生を抑制できる。
特開2006−63761号公報
しかしながら、前記した特許文献1では、貯留された雨水を下水施設へ排水する手段は提案されているものの、貯留された雨水を利用する手段は提案されていなかった。
そこで、本発明は、貯留された雨水を利用するための雨水利用システムを提供することを目的としている。
前記目的を達成するために、本発明の雨水利用システムは、雨水が流入する流入管が接続されるとともに、前記流入管の管頂より上方に開口して貯留された雨水を越流させて排水する越流管を備える雨水マスが設置される雨水利用システムであって、前記雨水マスには貯留された雨水を取水するための取水管が接続されるとともに、前記取水管の管頂の位置は前記流入管の管底よりも低くなるように配置されることを特徴とする。
また、雨水を利用する場所付近には、前記取水管によって前記雨水マスと接続されて貯留された雨水を地表から取水できる取水マスが設けられることを特徴とする
さらに、前記取水管には、前記雨水マスから前記取水マスへ向けて、貯留された雨水が流下する勾配が設けられることを特徴とする
そして、前記取水マスには、雨水内に混入している濁質を沈殿させる泥溜部が設けられることを特徴とする
また、前記取水マスには、前記泥溜部の上方に、泥溜部を覆う網目部材によって区分された貯留部が設けられ、前記貯留部には取水手段が配置されていることを特徴とする。
さらに、前記取水マスには、貯留された雨水を取水する取水手段としての手動ポンプが格納されていることを特徴とする
このように、本発明の雨水利用システムは、雨水マスには貯留された雨水を取水するための取水管が接続されるとともに、取水管の管頂の位置は流入管の管底よりも低くなるように配置されることを特徴としている。
したがって、流入管より低く配置された取水管によって雨水を確実に取水できるうえに、取水管内にも雨水を貯留することができるようになる。
また、雨水を利用する場所付近には、取水管によって雨水マスと接続されて貯留された雨水を地表から取水できる取水マスが設けられることで、取水マスを通じて簡易な設備によって容易に雨水を利用できる。
さらに、取水管には、雨水マスから取水マスへ向けて、貯留された雨水が流下する勾配が設けられることで、取水管の略全長にわたって雨水を貯留できるようになる。
そして、取水マスには、雨水内に混入している濁質を沈殿させる泥溜部が設けられることで、濁質が除去されて清浄な状態になった雨水を利用できるようになる。
また、取水マスには、泥溜部の上方に、泥溜部を覆う網目部材によって区分された貯留部が設けられ、貯留部には取水手段が配置されていることで、濁質が除去されて清浄な状態になった雨水を取水できるようになる。
さらに、取水マスには、貯留された雨水を取水する取水手段としての手動ポンプが格納されていることで、人や物の移動の際に手動ポンプが障害となることがなくなる。
以下、本発明の最良の実施の形態について図面を参照して説明する。
まず、図2を用いて本発明の雨水利用システムSの全体構成を説明する。
本発明の雨水利用システムSは、図2に示すように、住宅13の宅地14内に、雨水を受ける屋根15と、屋根15に降った雨水の飛散を防止しつつ雨水マス16まで誘導する縦樋19と、縦樋19から雨水を受け入れる中間に位置する雨水マス16,・・・と、雨水マス16,・・・間を接続する配管18,・・・と、宅地14内においてこの配管18,・・・の下水道本管22に近い最も下流側(末端)に接続される雨水マス17と、を備えている。
また、この末端に位置する雨水マス17の下流側には、複数の住宅(不図示)の雨水をまとめて受け入れる大型の公共用雨水マス21が配管23を介して接続されている。
さらに、この公共用雨水マス21のさらに下流側には、配管24を介して大口径の下水道本管22が接続されており、雨水を下水処理施設や河川等まで誘導している。
そして、宅地14内において下流側(末端)に位置する最終の雨水マス17には、図2,3に示すように、雨水が流入する流入管としての配管18と、この配管18の管頂より上方に開口することで雨水マス17内に貯留された雨水を越流させて排水する越流管としての配管23と、貯留された雨水を利用できるように取水するための取水管31と、が接続されている。
この流入管としての配管18は、図1に示すように、長尺の円筒状に形成されるもので、円筒容器状の雨水マス17の本体の側面の中間位置に設けた円孔にパッキンゴムを介して挿入されて固定されている。
また、越流管としての配管23は、図1に示すように、長尺の円筒状に形成されるもので、雨水マス17の流入管としての配管18の円周方向に対峙する反対側の側面の中間位置に設けた円孔にパッキンゴムを介して挿入されて固定されている。
加えて、この配管23の雨水マス17の内側に突出した先端には、エルボ174が嵌め合わされており、このエルボ174には貯留水位WLに合わせて長さ調整可能な円筒状の越流口部174aが嵌め合わされている。
そして、本実施の形態の雨水マス17の取水管31は、図1に示すように、長尺の円筒状に形成されるもので、雨水マス17の側面において配管18,23に直交する平面位置に設置されており、管頂位置L1は流入管としての配管18の管底位置L2よりも低くなるように配置されている。
さらに、この取水管31には、図3に示すように、貯留された雨水が自然流下するように、配設方向(軸方向)に沿って勾配が設けられており、流下した先端側には取水マス32が接続されている。
この取水マス32は、図2,3,4に示すように、細長い円筒容器状に形成されるもので、宅地14内において草花を栽培するためのプランタ34の近傍の地中に立設されている。
また、取水マス32には、図4に示すように、側面の中間位置に雨水マス17から雨水を自然流下させる上記の取水管31が接続され、この取水管31から雨水とともに流下した夾雑物などを貯留する泥溜部325が、泥溜部325を覆う網目部材324を介して最下部に設けられている。
したがって、この網目部材324の上部には、泥溜部325と区分けされて清浄な水を貯留する貯留部326が形成されており、後述するようにこの貯留部326には取水手段が配置されている。
さらに、取水マス32には、取水手段としての手動ポンプ33の直立管部331が挿入されており、上端に取り付けられたハンドル部332を上下させることで貯留された雨水をピストン構造によって吸い上げるように構成されている。
この手動ポンプ33の直立管部331は、内径が小さく細長い取水マス32に挿入されているため、支持するための特別な構造がなくても手動ポンプ33を自立させている。
したがって、草花に水をやるような場合に、利用者はこの手動ポンプ33のハンドル部332を上昇させることで雨水を吸い上げてジョウロ35などに汲み取り、その場所からほとんど移動しないでジョウロ35を使ってプランタ34に散水することができるようになっている。
なお、この取水手段として、図5(a)(b)に示すような格納型の手動ポンプ33Aや、図6(a)に示すような水中ポンプ33B、図6(b)に示すような浅井戸ポンプ33Cなどを用いることもできる。
この格納型の手動ポンプ33Aは、図5(a)に示すように、本体中間部に固定された保持板321に固定された下部吸上管322と、保持板321に設けた係止孔に係止された上部吸上管323と、を備えている。
そして、図5(b)に示すように、利用する際には、保持板321に係止された上部吸上管323を持ち上げ、下端を下部吸上管322の上端の挿口に挿入することで自立・固定させて使用する。
また、水中ポンプ33Bは、防水型のポンプ自体が水中に投入されて設置されるもので、網目部材324の上に載置されることで、泥溜部325に溜まった濁質を吸い込まないようにされている。
同様に、浅井戸ポンプ33Cは、ポンプ自体は陸上に設置されるもので、網目部材324の上に吸込口が配置されることで、泥溜部325に溜まった濁質を吸い込まないようにされている。
次に、本実施の形態の雨水利用システムSの作用について説明する。
このように、本発明の雨水利用システムSは、雨水マス17には貯留された雨水を取水するための取水管31が接続されるとともに、取水管31の管頂位置L1は流入管としての配管18の管底位置L2よりも低くなるように配置されることを特徴としている。
したがって、流入管としての配管18の管底位置L2より低く配置された取水管によって雨水を確実に取水できるうえに、取水管31内にも雨水を貯留することができるようになる。
つまり、雨水利用システムSでは、流入管としての配管18の内部にも雨水を貯留できるように、雨水マス17において流入管よりも上方に越流管を開口させて貯留水位WLを維持している。
そして、取水管31が流入管としての配管18よりも上に位置していると、先に配管18内部に貯留されてしまい、取水管31内部に貯留することができなくなり、結果として雨水を取水して利用できなくなる。
そこで、この流入管としての配管18よりも下方に取水管31を位置させることで、取水管31内に確実に雨水を貯留させることで、雨水を確実に利用できるようになる。
この場合、取水管31の管頂位置L1を、流入管としての配管18の管底位置L2よりも低くすることで、水位が低いときにも配管18内部に雨水を貯留せずに、取水管31内部に効率よく雨水を貯留できるようになる。
また、雨水を利用する場所付近には、取水管31によって雨水マス17と接続されて貯留された雨水を地表から取水できる取水マス32が設けられることで、取水マス32を通じて簡易な設備によって容易に雨水を利用できる。
すなわち、取水マス32が雨水の利用場所の近くにあれば、雨水を長い距離配水する必要がなくなるため、取水設備を後述する手動ポンプ33のような簡易なものにすることができる。
さらに、このように取水マス32を雨水の利用場所の近くに配置することで、所定の長さの取水管31を配置することになるため、雨水に混入した夾雑物・濁質を沈殿させる部分が多く、きれいな水のみを取水することができるようになるという効果もある。
特に、本実施の形態のように最終の雨水マス17に取水マス32を接続することで、取水までの経路が長くなれば、より沈殿させる部分の長さが長くなるため、よりきれいな水を取水できる。
さらに、取水管31には、雨水マス17から取水マス32へ向けて、貯留された雨水が流下する勾配が設けられることで、取水管31の略全長にわたって雨水を貯留できるようになる。
つまり、取水管31に、雨水マス17側を上流にして下り勾配がついていれば、下流の取水マス32から順に雨水が貯留されるため、雨水を利用する場所の近くに効率よく雨水を貯留できることになる。
加えて、この場合にはポンプなどの配水設備がなくても、自然流下によって雨水を利用場所まで配水できるようになる。
そして、取水マス32には、雨水内に混入している濁質を沈殿させる泥溜部325が設けられることで、濁質が除去されて清浄な状態になった雨水を利用できるようになる。
特に、上述のように取水管31に雨水を自然流下させるための勾配が設けられている場合には、雨水が取水管31内を自然流下する際に、取水管31内に沈殿した夾雑物や濁質を水の勢いで洗い流すことで、泥溜部325に夾雑物や濁質を貯留して除去することができる。
また、取水マス32には、泥溜部325の上方に、泥溜部325を覆う網目部材324によって区分された貯留部326が設けられ、貯留部326には取水手段としての手動ポンプ33が配置されていることで、濁質が除去されて清浄な状態になった雨水を取水できるようになる。
つまり、濁質は一般に水よりも重いため、取水マス32内の底近くに溜まることになるが、網目部材324を設置せずにポンプなどで取水した場合、ポンプの吸込口は底近くに位置するため底近くの濁質を吸い込んでしまうことになる。
そこで、網目部材324を設置することで、ポンプの吸込口を濁質から離すことで底近くに溜まった濁質を吸い込まないようにしつつ、吸い込む際の水の勢いを弱めて清浄な水のみを取水できるようになる。
加えて、このように簡易に雨水を利用できれば、雨水の利用頻度が増加し、合流式下水道の場合の下水施設への排水量が減って、処理施設の付加が減少する。
さらに、取水マス32には、貯留された雨水を取水する取水手段としての格納型の手動ポンプ33Aが格納されていることで、人や物の移動の際に手動ポンプ33Aが障害となることがなくなる。
このように、手動ポンプ33Aが格納されていることは、人が通ることが多い雨水の利用場所付近では、特に効果が大きいといえる。
以上、図面を参照して、本発明の最良の実施の形態を詳述してきたが、具体的な構成は、この実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない程度の設計的変更は、本発明に含まれる。
例えば、前記実施の形態では、雨水マス17に1つの取水管31のみが接続されている場合について説明したが、これに限定されるものではなく、複数の取水管31が接続されるものであってもよい。
また、前記実施の形態では、取水管31に一定の勾配が設けられている場合について説明したが、これに限定されるものではなく、略水平に設けられるものであってもよいし、雨水マス17からみて全体として下り勾配であれば逆勾配の部分がある構成であってもよい。
さらに、前記実施の形態では、雨水を利用する例として、プランタ34に植えられた草花に水をやる場合について説明したが、これに限定されるものではなく、地震などの非常時に水洗トイレに水を流すことや、ろ過装置を設けて飲料用として利用することなども可能である。
本発明の最良の実施の形態の雨水利用システムが備える雨水マスの構成を説明する断面図である。 本発明の最良の実施の形態の雨水利用システムの全体構成を説明する斜視図である。 雨水利用システムの位置関係を説明する断面図である。 取水マスと取水手段の構成を説明する断面図である。 取水手段としての格納型の手動ポンプの断面図である。 取水手段の断面図である。(a)は水中ポンプであり、(b)は浅井戸ポンプである。
符号の説明
S 雨水利用システム
WL 貯留水位
L1 管頂位置
L2 管底位置
16 雨水マス
17 雨水マス
174 エルボ
174a 越流口部
18 配管(流入管)
23 配管(越流管)
31 取水管
32 取水マス
321 保持板
322 下部吸上管
323 上部吸上管
324 網目部材
325 泥溜部
33 手動ポンプ(取水手段)
33A 手動ポンプ(取水手段)
33B 水中ポンプ(取水手段)
33C 浅井戸ポンプ(取水手段)
34 プランタ

Claims (1)

  1. 雨水が流入する流入管が接続されるとともに、前記流入管の管頂より上方に開口して貯留された雨水を越流させて排水する越流管を備える雨水マスが設置される雨水利用システムであって、
    前記雨水マスには貯留された雨水を取水するための取水管が接続されるとともに、前記取水管の管頂の位置は前記流入管の管底よりも低くなるように配置され、
    雨水を利用する場所付近には、前記取水管によって前記雨水マスと接続されて貯留された雨水を地表から取水できる取水マスが設けられ、
    前記取水管には、前記雨水マスから前記取水マスへ向けて、貯留された雨水が流下する勾配が設けられ、
    前記取水マスには、雨水内に混入している濁質を沈殿させる泥溜部が設けられ、 前記取水マスには、前記泥溜部の上方に、泥溜部を覆う網目部材によって区分された貯留部が設けられ、前記貯留部には取水手段が配置され、
    前記取水マスには、貯留された雨水を取水する取水手段としての手動ポンプが格納されていることを特徴とする雨水利用システム。
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