JP5343517B2 - 追記型光記録媒体 - Google Patents

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本発明は、追記型(WORM:Write Once Read Many)光記録媒体に関する。
Bi及び/又はBi酸化物を主成分とする記録層を有する追記型光記録媒体は公知である(特許文献1〜2など)。
また、本出願人は上記公知技術を改良し、先願(特許文献3参照)において、Bi、O、FeあるいはBで構成される記録層の未記録部と記録マーク部が共にアモルファスである追記型光記録媒体を発明し、安定性の良い記録マークの形成を実現した。しかし、Bi、OにFeあるいはBが添加物として含まれる先願発明の記録層は、スパッタプロセスの影響を受けやすいという問題点があるため、添加物を含まない構成で安定した記録特性や保存性を実現することが望ましい。
特開2006−192885号公報 特開2006−116948号公報 特開2008−055273号公報
本発明は、BiとOで構成される記録層を有し、青色レーザ波長領域で高密度記録が可能な追記型光記録媒体の提供を目的とする。
上記課題は、次の1)〜)の発明によって解決される。
1) 基板上に、BiとOで構成される記録層とこれに隣接する保護層をこの順に有し、記録層中のBi金属とBi酸化物の分散状態の変化により記録が行われる追記型光記録媒体であって、記録層の厚さ方向全体において、未記録部、記録マーク部共にBi酸化物(β)とBi金属(α)の組成比γ{Norm.}(=β/α)が8≦γ≦12の範囲にあり、未記録時には、記録層の保護層との界面近傍に、記録層の他の部分よりも多くのBi金属が存在し、記録を行うと、前記界面近傍のBi金属が、記録層の厚さ方向全体にほぼ均一に分散することによって記録状態が作り出されることを特徴とする追記型光記録媒体。
) 記録層が、BiOx(1≦x≦1.5)で表される複数のBi酸化物を含有することを特徴とする1)に記載の追記型光記録媒体。
) 記録層が2価及び3価のBiを含むことを特徴とする1)又は2)に記載の追記型光記録媒体。
) 基板上に少なくとも記録層とこれに隣接する保護層を有し、該保護層が、元素Q(QはTi、Zn、Mo、Zr、Nb、Wのうち少なくとも一つ)を含み、記録時に保護層中の元素Qが記録マーク部に混入することを特徴とする1)〜)の何れかに記載の追記型光記録媒体。
以下、上記本発明について詳しく説明する。
本発明の追記型光記録媒体は、BiとOで構成される記録層を有し、記録層に存在するBi金属とBi酸化物の分散状態の変化により記録が行われる点に特徴がある。
記録層にはBi金属とBi酸化物が存在するが、未記録時には、記録層の保護層との界面近傍に記録層の他の部分よりも多くのBi金属が存在し(即ち、相対的にBi酸化物が少ない状態にあり)、記録を行うと、前記界面近傍のBi金属が、記録層の厚さ方向全体にほぼ均一に分散することにより、前記界面近傍を含めた記録層の厚さ方向全体のBi金属とBi酸化物の組成比が均一になるため、記録マークが形成される。
Bi金属は融点が低く(271.3℃)、一方、Bi酸化物は光の反射率を下げる機能を有する。そこで記録層にレーザを照射して書き込みを行うと、前記界面近傍のBi金属が溶けてBi酸化物と混ざり合いながら分散し、その結果、前記界面近傍のBi金属が減少することにより、記録マーク部の光の反射率が変化して記録状態が作り出される。
また、未記録時には、前記界面近傍においてBi酸化物がBi金属の2〜4倍の範囲で存在し、前記界面近傍を含めた記録層の厚さ方向全体において、Bi酸化物がBi金属の8〜12倍の範囲で存在することが望ましい。このような記録層に記録を行うと、前記界面近傍のBi金属が記録層の厚さ方向全体にほぼ均一に拡散するため、記録マーク部では、前記界面近傍及び前記界面近傍を含めた記録層の厚さ方向全体において、Bi酸化物がBi金属の8〜12倍の範囲で存在する状態に変化する。
記録層中のBi酸化物は、完全な酸化物であるBiの他に、酸素欠損状態のBi酸化物であるBiOx(1≦x≦1.5)の状態で存在する。このような準安定な状態は、スパッタリングで製膜することによって実現できる。
xが1.5を超えると記録感度が悪くなり、記録層と保護層の界面近傍でもBi酸化物が多い状態になるので、好ましくない。
また、記録層には2価と3価のBiが存在するが、2価のBiは情報の記録に不可欠な酸素欠損状態のBi酸化物を構成し、酸化数が最も安定な3価のBiは、Biとして記録マークの酸化に対する安定性向上に寄与する。
記録層の膜厚は、通常、7〜25nm程度とする。
本発明の追記型光記録媒体は、記録層の表面から酸素が抜けるような製膜方法を採用することにより作成することができ、例えば次のような手段がある。
(1)記録層に隣接する保護層を製膜するときに、RFスパッタのパワーを通常の2kWから5kWと高くすると、最適記録パワーが6.0mWから5.4mWと小さくなり感度が向上する。このときの記録層は本発明の要件を満たしている。
(2)記録層に隣接する保護層を製膜するときに、ZnS−DC3ターゲット(日鉱金属社製)を用いて、直流スパッタ及び高周波スパッタで成膜すると、高周波スパッタの方が感度がよくなる。このときの記録層は本発明の要件を満たしている。
(3)記録層に隣接する保護層を製膜するときに、スパッタガス中に窒素を、N:Ar=5:40(体積比)で添加する。このときの記録層は本発明の要件を満たしている。
本発明では、Bi酸化物(β)とBi金属(α)の組成比γ{Norm.}(=β/α)が8より小さいと保存性が悪くなる傾向にある。また、12より大きいと感度が悪くなる傾向にある。
本発明では、基板上に記録層とこれに隣接する保護層をこの順に設けるが、更に基板と記録層の間に保護層を設けてもよい。
保護層の材料としては、遷移金属であるZnを含むZnS−SiOが最も好ましく、ZnSを75〜85モル%程度含有することが望ましい。
また、上記記録層に隣接する保護層に元素Q(Qは、Ti、Zn、Mo、Zr、Nb、Wのうち少なくとも一つ)を含有させると、保護層の成膜時に元素Qが記録層に入り込み、この金属が一部酸化されることによりBiの完全な酸化を阻害して、記録層内の界面近傍でBi金属のBi酸化物に対する比率を高めることに寄与する。元素Qを導入するための材料としては、TiNbO、AlZnO、TiZrO、TiWO、InMoOなどが挙げられる。
保護層の膜厚は、光入射側からみて記録層よりも手前の場合、5〜30nm程度、記録層よりも後の場合、20〜80nm程度とする。
本発明では、必要に応じて反射層を設けてもよい。反射層の材料としてはAg、Alの単体又は合金などが挙げられる。また、反射層の膜厚は、通常、30〜150nm程度とする。
基板材料としては、ポリカーボネート(帝人バイエルポリテック社製:ST3000)などが挙げられる。基板の厚さは、通常1.1mmを用いる。
更に、媒体の保護、光学特性の調整のためカバー層を設けてもよい。カバー層は、例えば紫外線硬化樹脂(日本化薬社製:DVD003)を用いて厚さ75μmポリカーボネートシート(帝人化成ピュアエース)を貼り合わせて形成する。カバー層の膜厚は、100nm程度が好ましい。
本発明によれば、BiとOで構成される記録層を有し、青色レーザ波長領域で高密度記録が可能な追記型光記録媒体を提供できる。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
実施例1
案内溝(溝深さ21nm、トラックピッチ0.32μm)を有する厚さ1.1mmのポリカーボネート基板上に、RFスパッタ法で、AgBi合金からなる膜厚60nmの反射層、ZnS−SiO(80:20モル%)からなる膜厚20nmの下部保護層、ターゲットにBiOを用いた膜厚14nmの記録層、ZnS−SiO(80:20モル%)からなる膜厚8nmの上部保護層を順に設け、更にカバー層を設けて、本発明の追記型光記録媒体〔いわゆるBlu−ray(ブルーレイ)ディスク規格対応の追記型光記録媒体〕を作成した。なお、保護層を製膜するときのRFスパッタのパワーは5kWとし、スパッタガスには、N:Ar=5:40(体積比)のArとNの混合ガスを用いた。
この追記型光記録媒体に対し、パルステック工業(株)製の光ディスク評価装置ODU−1000(波長:405nm、NA:0.85)を用いて、追記型BD−Rディスクの規格に合わせた条件で記録を行い、記録特性を評価したところ、良好な記録再生特性を有することが確認できた。
次に、記録マーク部の化学状態を確認するためカバー層を剥がし、カーボンコーターを用いて上部保護層の上に厚さおよそ6nmのカーボン膜をコーティングした後、記録層の厚さ方向全体について、硬X線を用いたX線光電子分光法(XPS)の通常測定による分析を行った。XPSの分析条件を以下に示す。
<XPS測定条件>
・装置:GAMMADATA−SCIENTA製R−4000
・光源:放射光(SR)(hν=7940eV)@SPring−8
BL47XU(課題番号2007A1927)
・Pass Energy:200eV
・Energy Step:0.05eV
・中和銃:使用
・通常測定:試料表面からの光電子検出角θ=80°、検出深さはおよそ46nm
図1に未記録部と記録マーク部で通常測定を行ったXPSの結果を示す。実線で示したスペクトルが未記録部で、点線で示したスペクトルが記録マーク部の結果である。ピークの位置は元素の化学結合状態に対応し、面積(=強度)は存在比に対応する。
図のように、Biの4f5/2と4f7/2が観測され、それぞれ、Bi金属(α)とBi酸化物(β)のピークに分離している。記録層の厚さ方向全体でのBi酸化物とBi金属の組成比γ{Norm.}(=β/α)をとると、未記録部ではγ{Norm.}=9.68、記録マーク部ではγ{Norm.}=9.64であった。この結果から、記録層の厚さ方向全体では、未記録部も記録マーク部もBi酸化物とBi金属の組成比はほぼ同じであることが分かる。
実施例2
実施例1と同様にして作成した追記型光記録媒体に対し、記録マーク部の化学状態を確認するためカバー層を剥がし、カーボンコーターを用いて、上部保護層の上に厚さおよそ6nmのカーボン膜をコーティングした後、記録層の上部保護層との界面近傍について、硬X線を用いたX線光電子分光法(XPS)の角度分解測定による分析を行った。XPSの分析条件を以下に示す。
<XPS測定条件>
・装置:GAMMADATA−SCIENTA製R−4000
・光源:放射光(SR)(hν=7940eV)@SPring−8
BL47XU(課題番号2007A1927)
・Pass Energy:200eV
・Energy Step:0.05eV
・中和銃:使用
・角度分解測定:試料表面からの光電子検出角θ=18°、80°、検出深さはおよそ14nm
図2に、(a)未記録部と(b)記録マーク部についてXPSの角度分解測定を行った結果を示す。図2をみると、θ=80°では(a)と(b)のスペクトルがほぼ同じであるのに対し、θ=18°では(a)の方に明瞭なBi金属のピークが現れている。即ち、試料表面からの光電子検出角θを18°とすると、XPSの検出深さがおよそ14nmとなり、記録層の上部保護層との界面近傍までの情報が得られることが分かる。
未記録部における記録層の上部保護層との界面近傍のBi酸化物(β)とBi金属(α)の組成比γ{AR}(=β/α)は2.98であり、記録層の厚さ方向全体の組成比γ{Norm.}=9.68(実施例1参照)と比べて、明らかにBi金属が多いことが分かる。
一方、記録マーク部における記録層の上部保護層との界面近傍のγ{AR}は9.42であり、記録層の厚さ方向全体の組成比γ{Norm.}=9.64(実施例1参照)とほぼ同じ値であることが分かる。
以上の結果から、記録前後で記録層の厚さ方向全体でのBi金属とBi酸化物の組成は同じであるが、未記録時には記録層の上部保護層との界面近傍にBi金属が多く存在していること、記録によって該界面近傍のBi金属が記録層全体にほぼ均一に分散することが分かる。
実施例1の追記型光記録媒体の記録層の厚さ方向全体について、XPS通常測定法によりBi4fナロースキャン測定を行った結果を示す図。 実施例2の追記型光記録媒体の記録層の上部保護層との界面近傍について、XPS角度分解測定法によりBi4fナロースキャン測定を行った結果を示す図。 (a)未記録部、(b)記録マーク部。

Claims (4)

  1. 基板上に、BiとOで構成される記録層とこれに隣接する保護層をこの順に有し、記録層中のBi金属とBi酸化物の分散状態の変化により記録が行われる追記型光記録媒体であって、記録層の厚さ方向全体において、未記録部、記録マーク部共にBi酸化物(β)とBi金属(α)の組成比γ{Norm.}(=β/α)が8≦γ≦12の範囲にあり、未記録時には、記録層の保護層との界面近傍に、記録層の他の部分よりも多くのBi金属が存在し、記録を行うと、前記界面近傍のBi金属が、記録層の厚さ方向全体にほぼ均一に分散することによって記録状態が作り出されることを特徴とする追記型光記録媒体。
  2. 記録層が、BiOx(1≦x≦1.5)で表される複数のBi酸化物を含有することを特徴とする請求項1に記載の追記型光記録媒体。
  3. 記録層が2価及び3価のBiを含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の追記型光記録媒体。
  4. 基板上に少なくとも記録層とこれに隣接する保護層を有し、該保護層が、元素Q(QはTi、Zn、Mo、Zr、Nb、Wのうち少なくとも一つ)を含み、記録時に保護層中の元素Qが記録マーク部に混入することを特徴とする請求項1〜の何れかに記載の追記型光記録媒体。
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