以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、フィルム表面に微細な凹凸パターンを備えたフィルム構造体であって、該微細な凹凸パターンを備えたフィルム構造体は、外周面に微細な凹凸パターンを備えた転写ロールから被転写基材上に転写物を転写して形成されたものであり、該転写ロール表面は、1)気相成長法によって形成された膜厚が5nm以上、500nm以下の金属酸化物層、及び2)シランカップリング剤によって形成された離型剤層が順次積層された構成であり、前記転写物は、オキセタン環を有する化合物、下記一般式(1)または(2)で表されるエポキシ化合物、及びビニルエーテル化合物から選ばれる少なくとも1種のカチオン重合系の活性エネルギー線硬化材料を含有することによって、転写ロール母材とシランカップリング材の付着耐久性が大幅に向上する結果、有用な微細な凹凸パターンを生産性の高い方法でフィルム構造体に形成できることを見出し、本発明に至った次第である。
以下、本発明の詳細について説明する。
まず、微細な凹凸パターンを備えたフィルム構造体を得るプロセスの例について説明する。
《微細な凹凸パターンを備えたフィルム構造体の形成方法》
本発明において、被転写基材上に微細な凹凸パターンを有するフィルム構造体を形成する方法は、活性エネルギー線硬化材料を含有する転写物を、外周面に微細な凹凸パターンを備えた転写ロールの外周部に塗工した後、被転写基材と圧着し、活性エネルギー線硬化材料に活性エネルギー線を照射して硬化した後、被転写基材上に転写して凹凸パターンを形成する方法である。
図1は、被転写基材上に、転写物を用いて微細な凹凸パターンを形成する方法の一例を示す模式図である。
図1のa)に記載の方法では、活性エネルギー線硬化材料を含有する転写物51′を転写物供給タンク51から、外周面に微細な凹凸パターンを備えた転写ロール50に供給した後、転写ロール50と密着した位置に配置した平板状の被転写基材52上に転写物51′を転写して、被転写基材52上に微細な凹凸パターン54を形成して、微細な凹凸パターンを備えたフィルム構造体を形成する。この時、転写ロール50に供給した転写物51′と被転写基材52が会合する位置Bあるいは、被転写基材52の背面である位置Aより、活性エネルギー線照射光源53より活性エネルギー線を転写物51′に照射して硬化させる。
図1のb)に記載の方法では、転写物の付与方法として、転写ロール50に供給せずに、直接被転写基材52上に転写物を薄層の形態で付与した後、外周面に微細な凹凸パターンを備えた転写ロール50により、被転写基材52上に凹凸パターンを形成する方法であり、図1のb)の例では、活性エネルギー線照射光源53を転写ロール50内部に配置して、活性エネルギー線を転写物に照射して硬化させる。
図1のc)は、被転写基材52として、可とう性基材、例えば、樹脂フィルム等を用いてその上に微細な凹凸パターンを形成する方法を示したものであり、サポートロール55と転写ロール50で保持し、被転写基材52を連続搬送しながら、転写ロール50の上流側で転写物供給タンク51から被転写基材52上に転写物を薄層の形態で付与した後、外周面に微細な凹凸パターンを備えた転写ロール50により、被転写基材52上に凹凸パターンを形成する方法である。この時、被転写基材52が活性エネルギー線(例えば、紫外線)の透過能を備えた樹脂フィルムである場合には、被転写基材52の背面より活性エネルギー線照射光源53より活性エネルギー線を転写物51′に照射して硬化させ、表面に微細な凹凸パターンを形成したフィルム構造体を作成する方法である。
図1のd)〜f)に示した微細な凹凸パターンを形成方法は、例えば、被転写基材52が活性エネルギー線の透過性を有していない場合の転写物51′の硬化方法を示したものであり、図1のd)、e)では、紫外線透過性基材より作製された転写ロール50の内部に活性エネルギー線照射光源53を設置し、転写ロール50の円周部より転写物51′に活性エネルギー線を照射する方法であり、図1のf)では、被転写基材52及び転写ロール50のいずれもが活性エネルギー線の透過能を有していない場合には、転写ロール50と被転写基材52とを会合するA部及び転写ロール50と被転写基材52とが離間するB部に活性エネルギー線照射光源53を設置し、転写物51′に照射して硬化させる方法である。
以下、このようなプロセスを実現するための各構成要素について説明する。
《転写ロール》
本発明のフィルム構造体の形成方法においては、外周面に微細な凹凸パターンを備えた転写ロールを用いて、被転写基材上に転写物を転写して微細な凹凸パターンを形成することを特徴とし、該転写ロールは、表面に金属酸化物層及び離型剤層とが積層された構成をとる。
〔微細な凹凸パターンを有するロールモールドの作製〕
本発明に係る転写ロールとしては、第1ステップとして微細な凹凸パターンを有するロールモールドを作製した後、このロールモールドの外周部に金属酸化物層及び離型剤層とを形成することが好ましい。
本発明のフィルム構造体の形成方法においては、微細な凹凸パターンを有するロールロールモールドの作製方法としては、例えば、レジストに光描画(マスク露光、縮小投影露光、干渉露光など)、電子線描画、X線描画などの手法で潜像を形成し、現像することで凹凸パターンを形成することで作製することができる。特に、大面積の凹凸構造を生産性よく作製する方法としては、2光束干渉露光などの光描画手法が優れている。出来たレジストの凹凸構造から電鋳技術で型を作製してもよいし、レジストをマスクとしてエッチングすることによりシリコン、石英ガラス、金属などに形状を転写し、そのままロールやベルト状に加工して型とすることができる。また、いずれかの手法で作製された型から樹脂シートに形状を転写してそのままロールやベルト状の型とし、樹脂シートから電鋳により転写してロールやベルト状の型とすることができる。
〈具体的なモールド作製手法:レーザー干渉露光方式〉
紫外線レーザー(波長266nm)を使用して、法線方向に対する傾き35度で液浸2光束干渉露光を行い、レジストに干渉縞を形成する。レーザー光源としては「コヒーレント社製MBD266」が用いられる。露光部分にレジストが残存するネガ型レジストを使用する。レジスト材料としては「東京応化製TDUR−009P」が用いられる。液浸露光光学系としては、ビーム直径80mm、露光エリア以外をマスクして未露光部とする。現像後、ドライエッチングで石英ガラス(70mm角、厚み1.2mm)に描画サイズ50mm角の微細な溝構造を形成する。
1000mm角の樹脂基板(アクリル樹脂、厚み300μm)にナノインプリント(熱インプリント)で描画面積50mm角(基板サイズ70mm角)の石英硝子の母型からステップ&リピートで凹凸形状を全面に転写する。出来た樹脂基板を、凹凸面を内側にして円筒状に加工し、内側面の凹凸上にNi電鋳することで、直径30cmのロール形状のニッケル金型(1000mm角、厚み300μm)を作製する。
別の方法として、1000mm角の樹脂基板(アクリル樹脂、厚み300μm)にUV硬化樹脂を塗布し、描画面積50mm角(基板サイズ70mm角)の石英硝子の母型押し付け描画面積50mm角へのUV光照射による硬化をステップ&リピートで凹凸形状を全面に転写する。出来た樹脂基板を、凹凸面を内側にして円筒状に加工し、内側面の凹凸上にNi電鋳することで、直径30cmのロール形状のニッケル金型(1000mm角、厚み300μm)を作製する。
また、別の方法として、1000mm角の石英基板(厚み500μm)にレジストを塗布して紫外線レーザー(波長266nm)を使用して、液浸2光束干渉露光を行い、レジストに干渉縞を形成する。液浸露光光学系としては、ビーム直径80mm、露光エリア以外をマスクして未露光部とする。1000mm角の石英基板を露光エリア大きさに相当する分送ることで、ステップ&リピートで全面露光を行う。1000mm角の石英基板を現像し、Ni電鋳で大面積のニッケル金型(1000mm角、厚み500μm)を作製する。ニッケル金型を円柱型のロール支持体に巻いて接着し、直径約30cmのロール金型とする。
また、別の手法として、フッ素樹脂に熱インプリントで凹凸構造を形成し、フッ素樹脂をロール状に形成することで、ロール金型とする。
また、別の方法として、ロール状の石英ガラスの表面にレジストを塗布してレーザー走査により描画し、エッチングで石英ガラスに形状を転写することで、ロール金型とする。
また以下に例示するように、非常に薄く湾曲可能なガラス(膜厚20〜200μm)等上に、上記と同様のフォトリソグラフィー工程でパターンを形成した後、石英ロール上に巻きつけることでロール金型としてもよい。
モールドの素材としては、シリコン、ガラス、ニッケルなどの材料を用いることができる。ここでは、石英ガラスを例に説明する。石英ガラスのモールドを製作するには、石英ガラス基板上に感光性のレジスト材料を均一に塗布し、レーザーでパターン露光する。現像後にエッチングを施し、石英ガラス上に凹凸が設けられたモールドが作製される。
〔金属酸化物層〕
本発明においては、上記方法で作製した凹凸構造を有する転写ロール基材上に、厚さが5nm以上、500nm以下の金属酸化物層を気相成長法により形成することを特徴とする。
気相成長で作製した金属酸化物膜は、シランカップリング剤に対する活性が高く、非常に強固な結合を形成する。また、モールド母材とも均一かつ強固な結合を形成するため、このような層を設けることで非常に耐久性の高いモールドとすることができる。
本発明に係る金属酸化物層を構成する金属酸化物としては、特に制限はなく、例えば、酸化珪素、酸化窒化珪素、窒化珪素、酸化チタン、酸化窒化チタン、窒化チタン、酸化ホウ素又は酸化アルミニウム等の金属酸化物膜が挙げられるが、これらの中でも、高い硬度を備えた金属酸化物層が得られる点、モールド母材およびシランカップリング剤との付着強度、および透明性の観点から酸化珪素膜であることが、特に好ましい。
なお、モールド母材が石英である場合、石英も素材としては酸化珪素であるが、石英はシランカップリング材が付着できるシラノール基が非常に少なく、シランカップリング材とは強固な結合を形成することができない。他方で気相成長膜の酸化珪素は、一度微小な酸化珪素微粒子となってから再堆積するといったプロセスを経ることから非常に活性化され、シラノール基の密度が大きく向上し、シランカップリング剤との付着密度が大きく向上するといった効果を有するため、モールド母材と同様の素材の層であっても、気相成長膜をモールド母材に堆積させることは、モールドの耐久性向上に大きな効果がある。
本発明に係る金属酸化物層は、気相成長法により形成することを特徴とし、スパッタリング法、イオンアシスト法、プラズマCVD法、大気圧または大気圧近傍の圧力下での大気圧プラズマCVD法等を適用して形成することができる。
本発明に係る転写ロールにおいては、金属酸化物層の形成方法としては、プラズマCVD法を適用することが好ましく、特に、大気圧または大気圧近傍の圧力下での大気圧プラズマCVD法が好ましい。大気圧プラズマCVD法は、大気圧という非常に高圧の環境下でプラズマが発生するため、プラズマ密度が高く、その結果としてモールド母材と非常に強固な結合を形成する。また、堆積した金属酸化物層の表面もシランカップリング剤との反応活性が高く、シランカップリング材とも非常に強固な結合を形成可能であるためである。また、大気圧プラズマCVD法は、減圧チャンバー等が不要で、高速製膜ができ生産性の高い製膜方法である点からも好ましい。
本発明に係る金属酸化物層を大気圧プラズマCVD法で形成することにより、均一かつ表面の平滑性を有する膜を比較的容易に形成することが可能となるからである。尚、大気圧プラズマCVD法の層形成条件の詳細については、後述する。
プラズマCVD法、大気圧または大気圧近傍の圧力下でのプラズマCVD法により得られる金属酸化物層は、原材料(原料ともいう)である有機金属化合物、分解ガス、分解温度、投入電力などの条件を選ぶことで、様々な特性を備えた各種金属酸化物を生成することができるため好ましい。例えば、珪素化合物を原料化合物として用い、分解ガスに酸素を用いれば、珪素酸化物が生成する。
このような無機物の原料としては、典型または遷移金属元素を有していれば、常温常圧下で気体、液体、固体いずれの状態であっても構わない。気体の場合にはそのまま放電空間に導入できるが、液体、固体の場合は、加熱、バブリング、減圧、超音波照射等の手段により気化させて使用する。又、溶媒によって希釈して使用してもよく、溶媒は、メタノール,エタノール,n−ヘキサンなどの有機溶媒及びこれらの混合溶媒が使用できる。尚、これらの希釈溶媒は、プラズマ放電処理中において、分子状、原子状に分解されるため、影響は殆ど無視することができる。
本発明においては、金属酸化物の形成に用いる有機金属化合物は、
珪素化合物としては、例えば、シラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン(TEOS)、テトラn−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラn−ブトキシシラン、テトラt−ブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、(3,3,3−トリフルオロプロピル)トリメトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン、ビス(ジメチルアミノ)メチルビニルシラン、ビス(エチルアミノ)ジメチルシラン、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド、ビス(トリメチルシリル)カルボジイミド、ジエチルアミノトリメチルシラン、ジメチルアミノジメチルシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン、ヘプタメチルジシラザン、ノナメチルトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン、テトラキスジメチルアミノシラン、テトライソシアナートシラン、テトラメチルジシラザン、トリス(ジメチルアミノ)シラン、トリエトキシフルオロシラン、アリルジメチルシラン、アリルトリメチルシラン、ベンジルトリメチルシラン、ビス(トリメチルシリル)アセチレン、1,4−ビストリメチルシリル−1,3−ブタジイン、ジ−t−ブチルシラン、1,3−ジシラブタン、ビス(トリメチルシリル)メタン、シクロペンタジエニルトリメチルシラン、フェニルジメチルシラン、フェニルトリメチルシラン、プロパルギルトリメチルシラン、テトラメチルシラン、トリメチルシリルアセチレン、1−(トリメチルシリル)−1−プロピン、トリス(トリメチルシリル)メタン、トリス(トリメチルシリル)シラン、ビニルトリメチルシラン、ヘキサメチルジシラン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、テトラメチルシクロテトラシロキサン、ヘキサメチルシクロテトラシロキサン、Mシリケート51等が挙げられる。
チタン化合物としては、例えば、チタンメトキシド、チタンエトキシド、チタンイソプロポキシド、チタンテトライソポロポキシド、チタンn−ブトキシド、チタンジイソプロポキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタンジイソプロポキシド(ビス−2,4−エチルアセトアセテート)、チタンジ−n−ブトキシド(ビス−2,4−ペンタンジオネート)、チタンアセチルアセトネート、ブチルチタネートダイマー等が挙げられる。
ジルコニウム化合物としては、ジルコニウムn−プロポキシド、ジルコニウムn−ブトキシド、ジルコニウムt−ブトキシド、ジルコニウムトリ−n−ブトキシドアセチルアセトネート、ジルコニウムジ−n−ブトキシドビスアセチルアセトネート、ジルコニウムアセチルアセトネート、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムヘキサフルオロペンタンジオネート等が挙げられる。
アルミニウム化合物としては、アルミニウムエトキシド、アルミニウムトリイソプロポキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムn−ブトキシド、アルミニウムs−ブトキシド、アルミニウムt−ブトキシド、アルミニウムアセチルアセトナート、トリエチルジアルミニウムトリ−s−ブトキシド等が挙げられる。
硼素化合物としては、ジボラン、テトラボラン、フッ化硼素、塩化硼素、臭化硼素、ボラン−ジエチルエーテル錯体、ボラン−THF錯体、ボラン−ジメチルスルフィド錯体、三フッ化硼素ジエチルエーテル錯体、トリエチルボラン、トリメトキシボラン、トリエトキシボラン、トリ(イソプロポキシ)ボラン、ボラゾール、トリメチルボラゾール、トリエチルボラゾール、トリイソプロピルボラゾール、等が挙げられる。
錫化合物としては、テトラエチル錫、テトラメチル錫、二酢酸ジ−n−ブチル錫、テトラブチル錫、テトラオクチル錫、テトラエトキシ錫、メチルトリエトキシ錫、ジエチルジエトキシ錫、トリイソプロピルエトキシ錫、ジエチル錫、ジメチル錫、ジイソプロピル錫、ジブチル錫、ジエトキシ錫、ジメトキシ錫、ジイソプロポキシ錫、ジブトキシ錫、錫ジブチラート、錫ジアセトアセトナート、エチル錫アセトアセトナート、エトキシ錫アセトアセトナート、ジメチル錫ジアセトアセトナート等、錫水素化合物等、ハロゲン化錫としては、二塩化錫、四塩化錫等が挙げられる。
また、その他の有機金属化合物としては、例えば、アンチモンエトキシド、ヒ素トリエトキシド、バリウム2,2,6,6−テトラメチルヘプタンジオネート、ベリリウムアセチルアセトナート、ビスマスヘキサフルオロペンタンジオネート、ジメチルカドミウム、カルシウム2,2,6,6−テトラメチルヘプタンジオネート、クロムトリフルオロペンタンジオネート、コバルトアセチルアセトナート、銅ヘキサフルオロペンタンジオネート、マグネシウムヘキサフルオロペンタンジオネート−ジメチルエーテル錯体、ガリウムエトキシド、テトラエトキシゲルマン、テトラメトキシゲルマン、ハフニウムt−ブドキシド、ハフニウムエトキシド、インジウムアセチルアセトナート、インジウム2,6−ジメチルアミノヘプタンジオネート、フェロセン、ランタンイソプロポキシド、酢酸鉛、テトラエチル鉛、ネオジウムアセチルアセトナート、白金ヘキサフルオロペンタンジオネート、トリメチルシクロペンタジエニル白金、ロジウムジカルボニルアセチルアセトナート、ストロンチウム2,2,6,6−テトラメチルヘプタンジオネート、タンタルメトキシド、タンタルトリフルオロエトキシド、テルルエトキシド、タングステンエトキシド、バナジウムトリイソプロポキシドオキシド、マグネシウムヘキサフルオロアセチルアセトナート、亜鉛アセチルアセトナート、ジエチル亜鉛、などが挙げられる。
また、これらの金属を含む原料ガスを分解して金属酸化物を得るための分解ガスとしては、水素ガス、メタンガス、アセチレンガス、一酸化炭素ガス、二酸化炭素ガス、窒素ガス、などが挙げられる。
金属元素を含む原料ガスと、分解ガスを適宜選択することで、各種の金属酸化物を得ることができる。
これらの反応性ガスに対して、主にプラズマ状態になりやすい放電ガスを混合し、プラズマ放電発生装置にガスを送りこむ。
このような放電ガスとしては、窒素ガスおよび/または周期表の第18属原子、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等が用いられる。これらの中でも窒素、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられ、特に窒素がコストも安く好ましい。
上記放電ガスと反応性ガスを混合し、混合ガスとしてプラズマ放電発生装置(プラズマ発生装置)に供給することで膜形成を行う。放電ガスと反応性ガスの割合は、得ようとする膜の性質によって異なるが、混合ガス全体に対し、放電ガスの割合を50%以上として反応性ガスを供給する。
以上のように、上記のような原料ガスを放電ガスと共に使用することにより様々な金属酸化物層を形成することができる。
次いで、本発明に係る金属酸物層の形成に好適に用いることのできるプラズマCVD法及び大気圧プラズマCVD法について、更に詳細に説明する。
本発明に係るプラズマCVD法について説明する。
プラズマCVD法(化学的気相成長法)は、揮発・昇華した有機金属化合物が高温の基材表面に付着し、熱により分解反応が起き、熱的に安定な無機物の薄膜が生成されるというものである。このような通常のCVD法(熱CVD法とも称する)では、通常500℃以上の基板温度が必要であるため、プラスチック基材への製膜には使用することが難しい。
一方、プラズマCVD法は、基材近傍の空間に電界を印加し、プラズマ状態となった気体が存在する空間(プラズマ空間)を発生させ、揮発・昇華した有機金属化合物がこのプラズマ空間に導入されて分解反応が起きた後に基材上に吹きつけられることにより、金属酸化物の薄膜を形成するというものである。プラズマ空間内では、数%の高い割合の気体がイオンと電子に電離しており、ガスの温度は低く保たれるものの、電子温度は非常な高温のため、この高温の電子、あるいは低温ではあるがイオン・ラジカルなどの励起状態のガスと接するために無機膜の原料である有機金属化合物は低温でも分解することができる。したがって、金属酸化物を製膜する樹脂基材についても低温化することができ、樹脂基材上へも十分製膜することが可能な製膜方法である。
しかしながら、プラズマCVD法においては、ガスに電界を印加して電離させ、プラズマ状態とする必要があるため、通常は、0.10kPa〜10kPa程度の減圧空間で製膜していたため、大面積のフィルムを製膜する際には設備が大きく操作が複雑であり、生産性の課題を抱えている方法である。
これに対し、大気圧近傍でのプラズマCVD法では、真空下のプラズマCVD法に比べ、減圧にする必要がなく生産性が高いだけでなく、プラズマ密度が高密度であるために製膜速度が速く、更にはCVD法の通常の条件に比較して、大気圧下という高圧力条件では、ガスの平均自由工程が非常に短いため、極めて平坦な膜が得られ、そのような平坦な膜は、光学特性が良好である。以上のことから、本発明においては、大気圧プラズマCVD法を適用することが、真空下のプラズマCVD法よりも好ましい。
以下に、本発明に係る金属酸化物層の形成に好適に用いられる大気圧プラズマCVD装置について説明する。
図2は、本発明に係る金属酸化物層無機層の形成に好適に用いられる大気圧プラズマCVD装置の第1の形態の1例の説明図である。
図2において、第1の形態である大気圧プラズマCVD装置10は、電極間(放電空間)8でプラズマ放電を行わせ薄膜形成ガスと放電ガスを混合した混合ガスGを励起させ、励起した混合ガスG′を放電空間外9に放出し、放電空間外9で被薄膜形成物に励起した混合ガスG′を晒し、被薄膜形成物表面に薄膜を堆積・形成するもので、本発明に係る金属酸化物層の形成においては、電極間(放電空間)8でプラズマ放電を行わせ、少なくとも金属酸化物層4を形成する薄膜形成ガスと放電ガスを混合した混合ガスGを励起させ、励起した混合ガスG′を放電空間外9に放出し、放出たれた励起した混合ガスG′に、表面に微細な凹凸構造を有する転写ロール7表面を晒すことにより、転写ロール7表面に金属酸化物層4を堆積、形成するものである。
大気圧プラズマCVD装置10は、放電空間外9に放出されと励起した混合ガスG′に微細な凹凸構造を有する転写ロール7の外周面を晒すため、転写ロール7を所定の周速度で矢印方向に回転させる転写ロール回転手段11と、プラズマによりガスを励起するプラズマ放電処理手段12と、2つの高周波電源を有する電界印加手段13と、少なくとも薄膜形成ガスと放電ガスの混合ガスを供給するガス供給手段14とを有している。
なお転写ロール7を固定して、その外周面にプラズマ放電処理手段12等を回転させる方法を用いても良い。
プラズマ放電処理手段12は、第1電極121と第2電極122から構成されている対向電極を有しており、該対向電極間に、第1電極121からは第1電源131からの周波数ω1、電界強度V1、電流I1の第1の高周波電界が印加され、また第2電極122からは第2電源132からの周波数ω2、電界強度V2、電流I2の第2の高周波電界が印加されるようになっている。
ここで、前記第1の高周波電界の周波数ω1より前記第2の高周波電界の周波数ω2が高く、前記第1の高周波電界の強さV1前記第2の高周波電界の強さV2および放電開始電界の強さIVとの関係が、V1≧IV>V2、または、V1>IV≧V2を満たし、前記第2の高周波電界の出力密度が1W/cm2以上となっている。
また、上述した本発明の大気圧プラズマCVD放電処理装置に利用可能な第1電源131(高周波電源)としては、
印加電源記号 メーカー 周波数 製品名
A1 神鋼電機 3kHz SPG3−4500
A2 神鋼電機 5kHz SPG5−4500
A3 春日電機 15kHz AGI−023
A4 神鋼電機 50kHz SPG50−4500
A5 ハイデン研究所 100kHz* PHF−6k
A6 パール工業 200kHz CF−2000−200k
A7 パール工業 400kHz CF−2000−400k
等の市販のものを挙げることが出来、何れも使用することができる。
また、第2電源132(高周波電源)としては、
印加電源記号 メーカー 周波数 製品名
B1 パール工業 800kHz CF−2000−800k
B2 パール工業 2MHz CF−2000−2M
B3 パール工業 13.56MHz CF−5000−13M
B4 パール工業 27MHz CF−2000−27M
B5 パール工業 150MHz CF−2000−150M
等の市販のものを挙げることが出来、何れも使用することができる。
なお、上記電源のうち、*印はハイデン研究所インパルス高周波電源(連続モードで100kHz)である。それ以外は連続サイン波のみ印加可能な高周波電源である。
本発明において、第1及び第2電源から対向する電極間に供給する電力は、第2電極122に1W/cm2以上の電力(出力密度)を供給し、放電ガスを励起してプラズマを発生させ、薄膜を形成する。第2電極122に供給する電力の上限値としては、好ましくは50W/cm2、より好ましくは20W/cm2である。下限値は、好ましくは1.2W/cm2である。なお、放電面積(cm2)は、電極において放電が起こる範囲の面積のことを指す。
また、第1電極121にも、1W/cm2以上の電力(出力密度)を供給することにより、第2の高周波電界の均一性を維持したまま、出力密度を向上させることができる。これにより、更なる均一高密度プラズマを生成出来、更なる製膜速度の向上と膜質の向上が両立できる。好ましくは5W/cm2以上である。第1電極121に供給する電力の上限値は、好ましくは50W/cm2である。
ここで高周波電界の波形としては、特に限定されない。連続モードと呼ばれる連続サイン波状の連続発振モードと、パルスモードと呼ばれるON/OFFを断続的に行う断続発振モード等があり、そのどちらを採用してもよいが、少なくとも第2電極122に供給する高周波は連続サイン波の方がより緻密で良質な膜が得られるので好ましい。
また、第1電極121と第1電源131との間には、第1フィルター134が設置されており、第1電源131から第1電極121への電流を通過しやすくし、第2電源132からの電流をアースして、第2電源132から第1電源131への電流が通過しにくくなるように設計されており、第2電極122と第2電源132との間には、第2フィルター135が設置されており、第2電源132から第2電極への電流を通過しやすくし、第1電源131からの電流をアースして、第1電源131から第2電源132への電流を通過しにくくするように設計されている。
電極には前述したような強い電界を印加して、均一で安定な放電状態を保つことができる電極を採用することが好ましく、第1電極121と第2電極122には強い電界による放電に耐えるため少なくとも一方の電極表面には後述する誘電体が被覆されている。
所定の間隙を隔てた第1電極121と第2電極122との電極間(放電空間)8に、ガス供給手段14から所定の薄膜(例えば無機層4)を形成するための薄膜形成ガスと放電ガスを混合した混合ガスGを導入し、第1電極121と第2電極122からそれぞれ上述した異なる周波数の高周波電界を印加して放電を発生させ、混合ガスGをプラズマ状態にしながら対向電極の下側(紙面下側)にジェット状に吹き出させて、放電空間外9である対向電極下面と微細な凹凸構造を有する転写ロール7とで形成する処理空間15をプラズマ状態のガスG°で満たし、所定の間隙を隔てて回転する微細な凹凸構造を有する転写ロール7の表面に、金属酸化物層4を形成させる。
ここで、金属酸化物層4は5〜500nmの厚さを有している。
厚さが厚く1回の薄膜形成では所定の厚さとならない場合は、1の大気圧プラズマCVD装置10に微細な凹凸構造を有する転写ロール7を複数回回転させ回転毎に順次薄膜形成を行わせて所定の厚さとするか、大気圧プラズマCVD装置10を直列に複数設け、各大気圧プラズマCVD装置10で1層ごと順次複数層の薄膜形成を行わせ所定の厚さとすることにより可能となる。また、プラズマ放電処理手段12と、2つの高周波電源を有する電界印加手段13と、少なくとも薄膜形成ガスと放電ガスの混合ガスを供給するガス供給手段14とを微細な凹凸構造を有する転写ロール7を囲むように同心円上に複数設け、複数層の薄膜を順次設け所定の厚さとするようにしても良い。
図3は、金属酸化物層の形成に好適に用いられる大気圧プラズマCVD装置の第2の形態の他の1例を示す説明図である。
大気圧プラズマCVD装置30は、電極間(放電空間)20でプラズマ放電を行わせ薄膜形成ガスと放電ガスを混合した混合ガスGを励起させ、放電空間20で微細な凹凸構造を有する転写ロール7に励起した混合ガスG′を晒し、微細な凹凸構造を有する転写ロール7の表面に金属酸化物層を堆積・形成するもので、金属酸化物層の形成においては、電極間(放電空間)20でプラズマ放電を行わせ、少なくとも金属酸化物層4を形成する薄膜形成ガスと放電ガスを混合した混合ガスGを励起させ、励起した混合ガスG′に微細な凹凸構造を有する転写ロール7の表面を晒すことにより、微細な凹凸構造を有する転写ロール7表面に金属酸化物層を堆積・形成するものである。
大気圧プラズマCVD装置30は、微細な凹凸構造を有する転写ロール7と第2電源32との放電空間20で励起した混合ガスG′に、微細な凹凸構造を有する転写ロール7を晒すため、微細な凹凸構造を有する転写ロール7を円筒状の第2電極32内部に矢印方向に挿抜する基材挿抜手段(不図示)と、プラズマによりガスを励起するプラズマ放電処理手段31と、2つの高周波電源を有する電界印加手段13と、少なくとも薄膜形成ガスと放電ガスの混合ガスを供給するガス供給手段14とを有している。
なお、微細な凹凸構造を有する転写ロール7の表面に励起した混合ガスG′を均一に晒すため、微細な凹凸構造を有する転写ロール7を第2電源32内に挿入した状態で回転させても良い。
プラズマ放電処理手段31は、図2の第1電極121に相当する微細な凹凸構造を有する転写ロール7と第2電極32から構成される対向電極構造を有しており、該対向電極構造である。
微細な凹凸構造を有する転写ロール7からは第1電源131からの周波数ω1、電界強度V1、電流I1の第1の高周波電界が印加され、また第2電極32からは第2電源132からの周波数ω2、電界強度V2、電流I2の第2の高周波電界が印加されるようになっている。
所定の間隙を隔てた微細な凹凸構造を有する転写ロール7と第2電極32との電極間(放電空間)20に、ガス供給手段14から所定の金属酸化物層4を形成するための薄膜形成ガスと放電ガスを混合した混合ガスGを導入し、微細な凹凸構造を有する転写ロール7と第2電極122との間に上述した異なる周波数が重畳された高周波電界を印加して放電を発生させ、混合ガスGをプラズマ状態にして、放電空間外20である微細な凹凸構造を有する転写ロール7外周面と第2電極122の内周面とで作る放電空間20をプラズマ状態のガスG0で満たし、微細な凹凸構造を有する転写ロール7の表面に金属酸化物層4を形成させる。
放電に係る対向する電極間距離は、電極の一方に誘電体を設けた場合、該誘電体表面ともう一方の電極の導電性の金属質母材表面との最短距離のことを言い、また、双方の電極に誘電体を設けた場合、誘電体表面同士の距離の最短距離のことを言う。
電極間距離は、導電性の金属質母材に設けた誘電体の厚さ、印加電界強度の大きさ、プラズマを利用する目的等を考慮して決定されるが、いずれの場合も均一な放電を行う観点から第1電極11と第2電極12との間隙、及び、微細な凹凸構造を有する転写ロール7と第2電源32との間隙は0.2〜2mmが良く、第1電極11と第2電極12と微細な凹凸構造を有する転写ロール7との対向面の間隙は0.2〜2mmが良い。
〔離型剤層〕
本発明に係る転写ロールにおいては、微細な凹凸構造を有する表面に金属酸化物層を有し、更にその上にシランカップリング剤により形成された離型剤層を有していることを特徴とする。
本発明に係る離型剤層を形成するのに適用可能なシランカップリング剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリアセトキシシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(β−グリシジルオキシエトキシ)プロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポシシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン及びβ−シアノエチルトリエトキシシランが挙げられる。
また、珪素に対して2置換のアルキル基を持つシランカップリング剤の例として、ジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシジルオキシプロピルフェニルジエトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン及びメチルビニルジエトキシシランが挙げられる。
これらのうち、分子内に二重結合を有するビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン及びγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、珪素に対して2置換のアルキル基を持つものとしてγ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン及びメチルビニルジエトキシシランが好ましく、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン及びγ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン及びγ−メタクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシランが挙げられる。
更に、本発明に係る離型性層が、フッ素系シランカップリング剤により形成されていることが好ましい。
本発明に係る離型剤層としては、フルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を有するシラン化合物溶液をコーティングして形成することが好ましい。特に、フッ素含有シラン化合物がシラザンもしくはアルコキシシランであることが好ましい。
また、フルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を有するシランカップリング剤のなかでも、シラン化合物中のフルオロアルキル基が、Si原子1つに対し、1つ以下の割合でSi原子と結合されており、残りは加水分解性基もしくはシロキサン結合基であるシラン化合物が好ましい。
本発明において好ましく用いられるフルオロアルキル基またはフルオロアルキルエーテル基を有するシランカップリング剤としては、CF3(CH2)2Si(OCH3)3、CF3(CH2)2Si(OC2H5)3、CF3(CH2)2Si(OC3H7)3、CF3(CH2)2Si(OC4H9)3、CF3(CF2)5(CH2)2Si(OCH3)3、CF3(CF2)5(CH2)2Si(OC2H5)3、CF3(CF2)5(CH2)2Si(OC3H7)3、CF3(CF2)7(CH2)2Si(OCH3)3、CF3(CF2)7(CH2)2Si(OC2H5)3、CF3(CF2)7(CH2)2Si(OC3H7)3、CF3(CF2)7(CH2)2Si(OCH3)(OC3H7)2、CF3(CF2)7(CH2)2Si(OCH3)2OC3H7、CF3(CF2)7(CH2)2SiCH3(OCH3)2、CF3(CF2)7(CH2)2SiCH3(OC2H5)2、CF3(CF2)7(CH2)2SiCH3(OC3H7)2、(CF3)2CF(CF2)8(CH2)2Si(OCH3)3、C7F15CONH(CH2)3Si(OC2H5)3、C8F17SO2NH(CH2)3Si(OC2H5)3、C8F17(CH2)2OCONH(CH2)3Si(OCH3)3、CF3(CF2)7(CH2)2Si(CH3)(OCH3)2、CF3(CF2)7(CH2)2Si(CH3)(OC2H5)2、CF3(CF2)7(CH2)2Si(CH3)(OC3H7)2、CF3(CF2)7(CH2)2Si(C2H5)(OCH3)2、CF3(CF2)7(CH2)2Si(C2H5)(OC3H7)2、CF3(CH2)2Si(CH3)(OCH3)2、CF3(CH2)2Si(CH3)(OC2H5)2、CF3(CH2)2Si(CH3)(OC3H7)2、CF3(CF2)5(CH2)2Si(CH3)(OCH3)2、CF3(CF2)5(CH2)2Si(CH3)(OC3H7)2、CF3(CF2)2O(CF2)3(CH2)2Si(OC3H7)、C7F15CH2O(CH2)3Si(OC2H5)3、C8F17SO2O(CH2)3Si(OC2H5)3、C8F17(CH2)2OCHO(CH2)3Si(OCH3)3などが挙げられるが、この限りでない。
上記フッ素系シランカップリング剤としては、例えば、信越化学工業株式会社製KP801M、X−24−9146、ジーイー東芝シリコン株式会社XC98−A5382、XC98−B2472、ダイキン工業(株)オプツールDSX、株式会社フロロテクノロジー製FG5010などが挙げられ、表面処理のための化合物としては、パーフルオロアルキルシラザン、パーフルオロアルキルシラン、もしくはパーフルオロポリエーテル基含有シラン化合物、特にパーフルオロアルキルトリアルコキシシラン、パーフルオロポリエーテルトリアルコキシシラン、パーフルオロポリエーテルジトリアルコキシシランが挙げられる。
これらのシラン化合物を用いる際には、フッ素を含まない有機溶媒で0.01〜10質量%、好ましくは0.03〜5質量%、更に好ましくは0.05〜2質量%に希釈された状態で用いることが好ましい。
本発明に係る離型剤層の形成方法としては、特に制限はなく、シランカップリング剤等を溶媒等に溶解した液を、湿式塗布方式で付与する方法や、金属酸化物層の形成で用いたのと同様の大気圧プラズマCVD法等の気相形成法を用いて形成することもできる。
本発明において、シランカップリング剤を含む塗布液を調製するため、フッ素を含まない有機溶媒が好ましく用いられるが、以下のものが挙げられる。
本発明に用いられる離型剤層の塗布組成物の溶媒としては、プロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテル及び/またはプロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテルエステル、プロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテルとしては具体的にはプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノイソプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテルなど。又、プロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテルエステルとしては、特に、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート、具体的にはプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどが挙げられる。プロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテル及び/またはプロピレングリコールモノ(C1〜C4)アルキルエーテルエステルなど、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、t−ブタノール、シクロヘキサノールなどのアルコール類、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸メチル、乳酸エチル、酢酸イソプロピル、酢酸アミル、酪酸エチルなどのエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類、ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミドその他の溶媒などが挙げられる。或いは、これらの溶媒が、適宜混合されて用いられる。混合される溶媒としては、特にこれらに限定されるものではない。
特に好ましい溶媒としては、エタノール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルから選ばれる1種類以上の有機溶媒である。
《転写物》
本発明のフィルム構造体の形成方法においては、上記方法に従って作製した微細な凹凸構造と金属酸化物層及び離型剤層とを有する転写ロールを用いて、被転写基材上に転写物を転写して形成することを特徴とするものであり、微細な凹凸パターンの形成に用いる転写物の詳細な構成について説明する。
本発明に係る転写物の形成方法としては、具体的には、活性エネルギー線硬化材料を含有し、活性エネルギー線硬化材料を活性エネルギー線によって硬化したのちに、被転写基材上に転写して凹凸パターンを形成するものであり、更には、前記の微細な凹凸パターンを備えた転写ロールの外周面に塗工した後、被転写基材と圧着して、活性エネルギー線を照射して硬化した後に被転写基材上に転写して凹凸パターンを形成する方法が好ましい。
〔活性エネルギー線硬化材料〕
本発明に係る転写物においては、活性エネルギー線硬化材料を用いることで、光によって高速に硬化、形状付与及び転写可能とすることができる。
本発明に適用可能な活性エネルギー線硬化材料としては、大きく分けてラジカル重合系材料とカチオン重合系の活性エネルギー線硬化材料を挙げることができ、どちらでも制限なく用いることができる。しかしながら、ラジカル重合系材料は大気中の酸素によって硬化阻害を受けて重合速度が遅くなり、転写不良を起こすことがあるため、そのような硬化阻害のないカチオン重合系の活性エネルギー線硬化材料を用いることが好ましい。
以下、本発明に係る転写物に適用する活性エネルギー線硬化材料について説明する。
〈カチオン重合系化合物〉
カチオン重合は重合反応の形式の一種であり、カチオンを反応中心としてポリマー鎖が伸張していく反応である。したがって、カチオン重合が進行する化合物であれば際限なく転写物の原料として用いることができる。
カチオン重合が進行する具体的な化合物として、本発明に係る転写物においては、含有するカチオン重合系の活性エネルギー線硬化材料が、オキセタン環を有する化合物、下記一般式(1)または(2)で表されるエポキシ化合物、及びビニルエーテル化合物から選ばれる少なくとも1種を含有する。
(オキセタン環を有する化合物)
オキセタン化合物は、分子内に1以上のオキセタン(トリメチレンオキシド)環を有する化合物である。具体的には3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン(東亞合成社製:OXT101等)、1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン(同OXT121等)、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン(同OXT211等)、ジ(1−エチル−3−オキセタニル)メチルエーテル(同OXT221等)、3−エチル−3−(2−エチルヘキシロキシメチル)オキセタン(同OXT212等)、ジ(1−メチル−3−オキセタニル)メチルエーテル等を好ましく用いることができ、特に3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、ジ(1−エチル−3−オキセタニル)メチルエーテルが好ましい。これらは単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
(ビニルエーテル化合物)
本発明において適用可能なビニルエーテル化合物としては、あらゆる公知のビニルエーテル化合物を用いてもよい。具体的なビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジビニルエーテル、ブタンジオールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のジまたはトリビニルエーテル化合物、エチルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、イソプロペニルエーテル−O−プロピレンカーボネート、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル等のモノビニルエーテル化合物等が挙げられる。
上記以外にも、これまでに開示されている種々のビニルエーテル化合物を適用することが可能である。例えば、特許第3461501号公報に開示されている分子内に(メタ)アクリロイル基とビニルエーテル基を含む化合物、特許第4037856号公報に開示されている少なくとも酸素原子を含む脂環骨格を持つビニルエーテル化合物、特開2005−015396号公報に開示されている脂環式骨格を有するビニルエーテル、特開2008−137974号公報に開示されている1−インダニルビニルエーテル、特開2008−150341号公報に開示されている4−アセトキシシクロヘキシルビニルエーテル等を挙げることができる。
これらのビニルエーテル化合物のうち、硬化性、被転写基材との密着性、表面硬度を考慮すると、ジまたはトリビニルエーテル化合物が好ましく、特にジビニルエーテル化合物が好ましい。本発明では、上記ビニルエーテル化合物の1種を単独で使用してもよいが、2種以上を適宜組み合わせて使用してもよい。
(エポキシ化合物)
エポキシ化合物としては、通常、エポキシ樹脂として用いられるモノマー、オリゴマーまたはポリマーの何れも使用可能である。具体的には、従来公知の芳香族エポキシド、脂環族エポキシド及び脂肪族エポキシドが挙げられる。尚、以下、エポキシドとは、モノマーまたはそのオリゴマーを意味する。これらの化合物は1種または必要に応じて2種以上用いてもよい。
芳香族エポキシドとしては、少なくとも1個の芳香族核を有する多価フェノールまたはそのアルキレンオキサイド付加体とエピクロルヒドリンとの反応によって製造されるジまたはポリグリシジルエーテルが挙げられ、例えば、ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、水素添加ビスフェノールAあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル、並びにノボラック型エポキシ樹脂等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
脂環式エポキシドとしては、少なくとも1個のシクロヘキセンまたはシクロペンテン環等のシクロアルカン環を有する化合物を、過酸化水素、過酸等の適当な酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイドまたはシクロペンテンオキサイド含有化合物が挙げられ、具体例としては、例えば、ダイセル化学工業社製のセロキサイド2021、セロキサイド2021A、セロキサイド2021P、セロキサイド2080、セロキサイド2000、エポリードGT301、エポリードGT302、エポリードGT401、エポリードGT403、EHPE−3150、EHPEL3150CE;ユニオン・カーバイド社製のUVR−6105、UVR−6110、UVR−6128、UVR−6100、UVR−6216、UVR−6000等を挙げることができる。
脂肪族エポキシドとしては、例えば、脂肪族多価アルコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはポリグリシジルエーテル等があり、その代表例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテルまたは1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等のアルキレングリコールのジグリシジルエーテル、グリセリンあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジまたはトリグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールあるいはそのアルキレンオキサイド付加体のジグリシジルエーテル等のポリアルキレングリコールのジグリシジルエーテル等が挙げられる。ここでアルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド等が挙げられる。
更に、これらの化合物の他に、脂肪族高級アルコールのモノグリシジルエーテル及びフェノール、クレゾールのモノグリシジルエーテル等も用いることができる。これらのエポキシドの内、速硬化性を考慮すると、芳香族エポキシド及び脂環式エポキシドを用いることができ、その中でも脂環式エポキシドが好ましい。
〈一般式(1)または(2)で表されるエポキシ化合物〉
本発明においては、活性エネルギー線硬化材料として、前記一般式(1)または(2)で表されるエポキシ化合物を用いることが好ましい。
以下、一般式(1)または(2)で表されるエポキシ化合物の詳細について説明する。
前記一般式(1)において、R1は置換基を表し、m1は0または1を表す。R2は置換あるいは無置換のアルキル基またはシクロアルキル基を表す。Y1はOまたはSを表し、n1は0または1を表す。
また、前記一般式(2)において、R3は置換基を表し、m2は0または1を表す。R4、R5は各々置換あるいは無置換のアルキル基またはシクロアルキル基を表す。Y2はOまたはSを表し、n2は0または1を表す。
上記一般式(1)または(2)において、R1、R3、R4は各々置換基を表す。該置換基の例としては、例えば、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、等)、炭素数1〜20個のアルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、等)、炭素数1〜20個のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、等)、アシル基(例えば、アセチル基、プロピオニル基、トリフルオロアセチル基、等)、炭素数1〜20個のアシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、トリフルオロアセトキシ基、等)、炭素数1〜20個のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、等)、炭素数2〜20のアルキルチオカルボニル基(例えば、メチルチオカルボニル基、エチルチオカルボニル基、tert−ブチルチオカルボニル基、等)、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、シアノ基、ニトロ基、等が挙げられる。置換基として好ましいのは、アルキル基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基である。
Y1、Y2は各々OまたはSを表し、Oが好ましい。
m1、m2は各々0または1を表す。n1、n2は各々0または1を表す。
R2、R5は置換あるいは無置換のアルキル基、シクロアルキル基を表す。置換基の例としては、ハロゲン原子(例えば、塩素原子、臭素原子、フッ素原子、等)、炭素数1〜20個のアルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、iso−プロポキシ基、n−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、等)、アシル基(例えばアセチル基、プロピオニル基、トリフルオロアセチル基、等)、炭素数1〜20個のアシルオキシ基(例えば、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基、トリフルオロアセトキシ基、等)、炭素数1〜20個のアルコキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、tert−ブトキシカルボニル基、等)、炭素数2〜20のアルキルチオカルボニル基(例えば、メチルチオカルボニル基、エチルチオカルボニル基、tert−ブチルチオカルボニル基、等)、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、シアノ基、ニトロ基、等が挙げられる。置換基として好ましいのは、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基である。
以下に、一般式(1)または(2)で表される単官能エポキシ化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明に係る一般式(1)または(2)で表される単官能エポキシ化合物は、その製法は問わないが、例えば、丸善KK出版、第四版実験化学講座20有機合成II、213〜、平成4年、Ed. by Alfred Hasfner, The chemistry of heterocyclic compounds−Small Ring Heterocycles part3 Oxiranes, John & Wiley and Sons, An Interscience Publication, New York, 1985、吉村、接着、29巻12号、32、1985、吉村、接着、30巻5号、42、1986、吉村、接着、30巻7号、42、1986、特開平11−100378号、特開平4−36263号、特開平4−69360号公報等の文献を参考にして合成できる。
〈ラジカル重合系化合物〉
ラジカル重合は重合反応の形式の一種であり、ラジカルを反応中心としてポリマー鎖が伸張していく反応である。したがって、ラジカル重合が進行する化合物であれば際限なく転写物の原料として用いることができる。
ラジカル重合が進行する具体的な化合物としては、ビニル基を有する化合物(CH2=CH−)、アセチレン基(CH≡C−)を有する化合物などのような、一方が置換されていない不飽和結合を有する化合物が挙げられる。
より具体的には、アクリル酸メチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸−2ヒドロキシエチル、ペンタエリスリトールペンタアクリレート等のアクリル基で置換された化合物、メタクリル酸メチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸−2ヒドロキシエチル、ペンタエリスリトールペンタメタクリレート等のメタクリル基で置換された化合物、スチレン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレン、4−ビニルベンゼンスルホン酸等のスチレン系化合物、あるいは前述のビニルエーテル系化合物を、ラジカル重合系開始材を用いてラジカル重合系化合物として用いることもできる。
(光重合開始剤)
本発明に係る転写物においては、活性エネルギー線硬化材料の硬化を行う際に、光重合開始剤を用いても良い。光重合開始剤としては、ラジカル重合系の場合は公知の光ラジカル発生剤を、カチオン重合の場合には公知の光酸発生剤を用いることができる。
具体的な光酸発生剤としては、アリールスルホニウム塩誘導体(例えば、ユニオン・カーバイド社製のサイラキュアUVI−6990、サイラキュアUVI−6974;旭電化工業社製のアデカオプトマーSP−150、アデカオプトマーSP−152、アデカオプトマーSP−170、アデカオプトマーSP−172、サン・アプロ社製のCPI−100、CPI−110P、CPI−110A、三和ケミカル社製のTS−91、Lamberti社製のEsacure1187、Esacure1188等)、アリルヨードニウム塩誘導体(ローディア社製のRP−2074、チバガイギー社製のイルガキュア250等)、アレン−イオン錯体誘導体(チバガイギー社製のイルガキュア250等)、ジアゾニウム塩誘導体、トリアジン系開始剤及びその他のハロゲン化物等の酸発生剤が挙げられる。
光ラジカル発生剤としては、フェニルケトン系の化合物、αヒドロキシケトン系の化合物、αアミノケトン系の化合物、ホスフィンオキシド系の化合物、メタロセン系化合物等が挙げられ、イルガキュアR651、イルガキュアR184、イルガキュアR500、イルガキュアR1000、イルガキュアR1300、イルガキュアR2959、イルガキュアR907、イルガキュアR369、イルガキュアR1700、イルガキュアR1800、イルガキュアR1850、イルガキュアR819、イルガキュアR784(以上、チバ・ジャパン社製)、ダロキュアR1173(メルク社製)等を挙げることができる。
光重合開始剤としては、活性エネルギー線硬化材料100質量部に対して0.2〜10質量部の比率、更に0.5〜5質量部で含有させるのが好ましい。開始剤の含有量が0.2質量部以上であれば、所望の硬化物を得ることができ、10質量部以下であれば、光重合開始剤自体が紫外線吸収剤となって転写物中の遮蔽効果を抑制することができ、良好な硬化性向上効果が得られると共に、低温および高温における転写物の保存安定性を維持することができる。これら開始剤は、1種又は2種以上を選択して使用することができる。
光重合開始剤の増感剤を用いることもでき、例えば、スルホニウム塩を開始剤とした場合には、アントラセン、アントラセン誘導体(例えば、旭電化工業社製のアデカオプトマーSP−100、ジエトキシアントラセン、ジブトキシアントラセン等)が挙げられる。ヨードニウム塩を開始剤とした場合には、チオキサントン類などが使用できる。これらの増感剤は1種又は複数を組み合わせて使用することができる。その添加量はカチオン重合性化合物100質量部に対して0.2〜5質量部の比率、更に好ましくは0.5〜4質量部で含有させるのが好ましい。0.2質量部以上であれば増感効果を得ることができ、5質量部以下であれば、増感剤自体による着色や増感剤分解物による着色を抑制することができる。
また、酸発生剤については、WO2005/116038号明細書において、オニウムフッ素化アルキルフルオロリン酸塩が開示されている。これに記載されている化合物を用いることで、カチオン重合性化合物に対する溶解性が向上し、活性エネルギー線照射による硬化性に優れていることが示されている。本発明者らの検討の結果、上述の効果を確認することができたが、これに加え、活性エネルギー線照射時の湿度による感度変動が小さく、加えて、硬化後の臭気や着色が少ないことが判明し、好ましい酸発生剤の1つである。
(その他の添加剤)
〈カチオン重合禁止剤〉
本発明に係る転写物においては、カチオン重合禁止剤を添加することができる。ビニルエーテル化合物は反応性が高く、残留酸や、保存時に僅かに重合開始剤から発生する酸によって、暗反応が進行しやすいので、重合禁止剤は意図的に添加することが好ましい。重合禁止剤としては、アルカリ金属化合物および/またはアルカリ土類金属化合物もしくは、アミン類を挙げることができる。アルカリ金属イオン類は後述のするようにできるだけ添加しない方が好ましいので、アミン類が適している。
アミン類として好ましくは、アルカノールアミン類、N,N−ジメチルアルキルアミン類、N,N−ジメチルアケニルアミン類、N,N−ジメチルアルキニルアミン類などであり、具体的には、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、トリブタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、プロパノールアミン、n−ブチルアミン、sec−ブチルアミン、2−アミノエタノール、2−メチルアミノエタノール、3−メチルアミノ−1−プロパノール、3−メチルアミノ−1,2−プロパンジオール、2−エチルアミノエタノール、4−エチルアミノ−1−ブタノール、4−(n−ブチルアミノ)−1−ブタノール、2−(t−ブチルアミノ)エタノール、N,N−ジメチルウンデカノール、N,N−ジメチルドデカノールアミン、N,N−ジメチルトリデカノールアミン、N,N−ジメチルテトラデカノールアミン、N,N−ジメチルペンタデカノールアミン、N,N−ジメチルノナデシルアミン、N,N−ジメチルイコシルアミン、N,N−ジメチルエイコシルアミン、N,N−ジメチルヘンイコシルアミン、N,N−ジメチルドコシルアミン、N,N−ジメチルトリコシルアミン、N,N−ジメチルテトラコシルアミン、N,N−ジメチルペンタコシルアミン、N,N−ジメチルペンタノールアミン、N,N−ジメチルヘキサノールアミン、N,N−ジメチルヘプタノールアミン、N,N−ジメチルオクタノールアミン、N,N−ジメチルノナノールアミン、N,N−ジメチルデカノールアミン、N,N−ジメチルノニルアミン、N,N−ジメチルデシルアミン、N,N−ジメチルウンデシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、N,N−ジメチルトリデシルアミン、N,N−ジメチルテトラデシルアミン、N,N−ジメチルペンタデシルアミン、N,N−ジメチルヘキサデシルアミン、N,N−ジメチルヘプタデシルアミン、N,N−ジメチルオクタデシルアミンが挙げられる。これらの他にも、4級アンモニウム塩なども使用することができる。
カチオン重合禁止剤の添加量は、10〜5000ppmであることが好ましい。10ppm以上であれば、十分な保存安定性が得られ、5000ppm以下であれば十分な硬化感度を得ることができる。
〈その他の添加剤〉
本発明に係る転写物には、必要に応じて界面活性剤、滑剤、充填剤、防錆剤、消泡剤、増粘剤、ゲル化剤、ポリマー類など各種の添加剤を含有させることができる。
また、必要に応じてエステル系溶剤、エーテル系溶剤、エーテルエステル系溶剤、ケトン系溶剤、芳香族炭化水素溶剤、含窒素系有機溶剤など少量の溶剤を添加することもできる。
〔活性エネルギー線及びその照射方法〕
本発明のフィルム構造体の形成方法においては、活性エネルギー線硬化材料を含有する転写物に活性エネルギー線を照射して硬化した後、被転写基材上に転写して凹凸パターンを形成すること、あるいは活性エネルギー線硬化材料を含有する転写物を、微細な凹凸パターンを備えた転写ロールの外周面に塗工された後、被転写基材と圧着し、活性エネルギー線を照射して硬化した後に被転写基材上に転写して凹凸パターンを形成することが好ましい。
以下、転写物への活性エネルギー線照射方法について説明する。
〈活性エネルギー線〉
本発明でいう活性エネルギー線としては、例えば、電子線、紫外線、α線、β線、γ線、エックス線等が挙げられるが、人体への危険性や、取り扱いが容易で、工業的にもその利用が普及している電子線や紫外線が好ましい。本発明では特に紫外線が好ましい。
電子線を用いる場合には、照射する電子線の量は0.1〜30Mradの範囲が望ましい。0.1Mrad未満では十分な照射効果が得られず、30Mradを越えると支持体等を劣化させる可能性があるため、好ましくない。
紫外線を用いる場合は、光源として、例えば、数100Paから1MPaまでの動作圧力を有する低圧、中圧、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプや紫外域の発光波長を持つキセノンランプ、冷陰極管、熱陰極管、LED等従来公知の物が用いられる。
〈活性エネルギー線の照射方法〉
活性エネルギー線の照射方法として、その基本的な方法が特開昭60−132767号に開示されている。米国特許第6,145,979号では、照射方法として、光ファイバーを用いた方法や、コリメートされた光源をヘッドユニット側面に設けた鏡面に当て、記録部へ紫外線を照射する方法が開示されている。
《被転写基材》
本発明において、微細な凹凸パターンを形成する被転写基材としては、特に制限はないが、プラスチック(樹脂)基材を用いることが好ましい。本発明に適用可能なプラスチック(樹脂)基材としては、特に限定はなく、具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類又はそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリスルホン類、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリル或いはポリアリレート類、あるいはこれらの樹脂とシリカなどとの有機無機ハイブリッド樹脂等を挙げることができる。
本発明に係る被転写基材は、365nmの波長の光線透過率が5%未満であることが好ましい。これは、主たる用途として想定している太陽エネルギー収集用プリズムシート及び立体視ディスプレイ用光学フィルムにおいて、ともに基材内部に365nm以下の波長で分解が進行する材料があるためで、基材が365nm以下の波長をカットできるような光線透過率を有していることが好ましいためである。
本発明で規定する365nmの波長の光線透過率が5%未満の被転写基材を得る方法としては、紫外部領域に光吸収能を有する紫外線吸収剤を用いることが好ましい。
本発明に適用可能な紫外線吸収剤としては、特に限定されないが、例えば、サリチル酸系紫外線吸収剤(フェニルサリシレート、p−tert−ブチルサリシレート等)あるいはベンゾフェノン系紫外線吸収剤(2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4,4′−ジメトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等)、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(2−(2′−ヒドロキシ−3′−tert−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−アミル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(5−メチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2−ヒドロキシ−3,5−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール等)、シアノアクリレート系紫外線吸収剤(2′−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3−(3′,4′−メチレンジオキシフェニル)−アクリレート等)、トリアジン系紫外線吸収剤、あるいは特開昭58−185677号、同59−149350号記載の化合物、ニッケル錯塩系化合物、無機粉体等が挙げられる。
市販品として、チヌビン(TINUVIN)326、チヌビン(TINUVIN)109、チヌビン(TINUVIN)171、チヌビン(TINUVIN)900、チヌビン(TINUVIN)928、チヌビン(TINUVIN)360(以上、チバ・ジャパン社製)、Sumisorb250(住友化学社製)が挙げられる。
本発明に係る被転写基材としては、立体視ディスプレイ用光学フィルムとしての用途に適用する場合は、光学的に二分の一波長の面内位相差を有する波長板、あるいは四分の一波長の面内位相差を有するセルロースエステルを含有するフィルム、すなわち位相差フィルムであることが好ましい。
本発明で言う位相差フィルムとは、面内の位相差値が、広い波長領域でλ/4またはλ/2を示すようなフィルムを指す。より詳細には、波長550nmで測定した位相差値Ro(550)は、所謂λ/4板の場合、108nm〜168nmであることが好ましく、128nm〜148nmであることが更に好ましく、138±5nmであることが最も好ましい。また、λ/2板の場合は、245〜305nmであることが好ましく、265〜285nmであることが更に好ましく、275±5nmであることが最も好ましい。ここで、面内位相差値Roは、下記式に従って算出する。
Ro=(nx−ny)×d
(式中、nxは、位相差フィルム面内の遅相軸方向の屈折率(面内の最大屈折率)であり、nyは、位相差フィルム面内の遅相軸に垂直な方向の屈折率であり、dは、位相差フィルムの厚み(nm)である。)
本発明に係る位相差フィルムは、透明樹脂からなる長尺の基材フィルム上に、フィルムの厚み方向に配向する液晶分子を塗工し固定化した層を設けることで得られるが、本発明の基材フィルムを構成する透明樹脂の透明とは、可視光の透過率60%以上であることをさし、好ましくは80%以上であり、特に好ましくは90%以上である。従って透明樹脂とは、所望な波長の光に対して上記透過率を有する樹脂であり、特に、熱可塑性樹脂であることが好ましい。また、本発明に用いる透明樹脂は、固有複屈折値が正である樹脂からなることが好ましい。透明樹脂としては、例えばセルロースエステル、ポリオレフィン、ポリスルホン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエステル、ポリビニルアルコール等が挙げられる。特に、光弾性係数の小さい樹脂を用いることが、熱歪みによる位相差ムラを抑制できるので好ましく、セルロースエステルやポリオレフィンなどが好ましく用いられる。最も好ましいのはセルロースエステルである。延伸前の基材フィルムは、溶液流延法あるいは溶融流延法等で製膜することができるが、選択する樹脂の特性に応じて最適な方法をとることが好ましい。
本発明に係る位相差フィルムは、面内に位相差を有する基材フィルムと、その基材フィルム上にフィルムの厚み方向に配向する液晶分子を塗工し固定化して得られる層(以下、垂直配向液晶層と略す)とからなる。該基材フィルム面内の遅相軸と、垂直配向液晶層形成の際の液晶分子の塗工方向とのなす角度は、10°〜80°であることが特徴である。その際、液晶分子の塗工方向は、基材フィルムの長手方向と一致していることが好ましい。従って、基材フィルムの長手方向を0°とした時に、基材フィルムの面内の遅相軸は10°〜80°傾いた方向にあることが好ましいことになる。これにより、長手方向に吸収軸を有する長尺の偏光フィルムと、該位相差フィルムの長手方向を揃えて積層させることで、生産性よく長尺の円偏光フィルムを得ることができる。上記位相差フィルムを構成する、基材フィルム面内の遅相軸と液晶分子の塗工方向との傾きは、20°〜70°の範囲、更には30°〜60°の範囲であることが好ましく、特に好ましいのは40°〜50°の範囲であり、最も好ましいのは実質的に45°である。実質的に45°とは45°±2°の範囲をいう。
本発明の光学的に二分の一波長の面内位相差を有する波長板、あるいは四分の一波長の面内位相差を有するセルロースエステルを含有するフィルムに適用可能なフィルム基材の詳細については、例えば、特開2005−331915号公報に記載のロール状の位相差フィルムの製造方法、特開2006−182020号公報、特開2006−192888号公報、特開2006−256064号公報、特開2007−3918号公報等に記載の光学フィルムの製造方法、特開2007−65451号公報、特開2009−75471号公報等に記載の偏光板の製造方法、WO07/43385号明細書、WO07/46228号明細書、WO07/66514号明細書、WO07/66538号明細書、WO07/69474号明細書等に記載の位相差フィルム、光学フィルムの製造方法、特開2009−122663号公報、特開2009−128411号公報、特開2009−134121号公報、特開2009−134136号公報等に記載の偏光板、光学表示パネル、光学フィルムの製造方法等の記載を参照することができる。
《太陽エネルギー収集用プリズムシート》
本発明のフィルム構造体の形成方法により形成されたフィルム表面に微細な凹凸パターンを備えたフィルム構造体は、太陽電池等の用いられている太陽エネルギー収集用プリズムシートに適用することができる。
前述のように、太陽電池の発電効率は、入射角が60度以下になると急速に低下してしまうことが知られており、そのため太陽電池の主たる設置場所は、住宅の屋根に制限されている。例えば、住宅の壁などに太陽電池を設置しても、日中の太陽光の入射角度が低くなり十分な発電量が得られないため、現状では設置することができない。このような制約に対し、本発明の微細な凹凸パターンを備えたフィルム構造体を太陽電池の太陽エネルギー収集用プリズムシートとして用いることにより、太陽電池に太陽光が入射する角度を適正化するプリズムシートとして適用することができ、壁に太陽電池を設置しても十分な発電量が得られると期待され、屋根以外にも太陽電池を設置することが可能となる。
なお、太陽電池、あるいは太陽エネルギー収集用プリズムシートの詳細に関しては、例えば、特開2000−31515号公報に記載の太陽電池モジュール、特開2007−218540号公報に記載の太陽集光器とこれを用いた太陽電池や、特開2007−317360号公報、特開2008−38495号公報、特開2008−218582号公報等に記載されており、それらを参考とすることができる。
《立体視ディスプレイ用光学フィルム》
本発明のフィルム構造体の形成方法により形成されたフィルム表面に微細な凹凸パターンを備えたフィルム構造体は、立体視ディスプレイ用の光学フィルムとして適用することができる。
前述のように、立体視ディスプレイ用の光学部材としては、右目用の画素と左目用の画素を分割するマイクロ波長板が挙げられる。この光学部材においては、視聴者は右目用には右回りの円偏光が透過可能なレンズを、左目用には左回りの円偏光のみ透過可能なレンズをかけることとし、ディスプレイからは右目用の画素からは右回りの円偏光を、左目用には左回りの円偏光を出射させれば、視聴者には右目と左目にそれぞれ異なる画像が得られ、立体視を得ることができるといった原理であるが、ディスプレイの画素と円偏光に変換する二分の一波長板との間の距離が長いほど左右逆視が起こりやすくなり、視聴者が立体画像として認識しにくくなるといった課題を有していた。したがって、ディスプレイの画素と二分の一波長板はなるべく距離が短いほど良く、そのためには偏光フィルムのすぐ上に二分の一波長板を形成することが有効であり、本発明のフィルム表面に微細な凹凸パターンを備えたフィルム構造体を、光学的に二分の一波長の面内位相差を有する波長板として適用することにより、上記課題を解決したものである。
なお、立体視ディスプレイ用光学フィルムの構成等に関する詳細は、例えば、特開2004−29781号公報、特開2006−47635号公報、特開2007−334348号公報、特開2008−20933号公報、特表2008−527440号公報、特開2008−309963号公報、特開2009−512896号公報に記載されており、それらを参考とすることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
参考例1
《転写ロールの作製》
〔ロールモールドの作製:転写ロール1の作製〕
厚さ約100μmの可とう性ガラス基板を用意し、これをリジッドな支持基板上に張り合わせた状態で、以下のフォトリソグラフィー工程を行った。
はじめに、Crを厚さ100nmとなる条件でスパッタして、Cr層を形成した。次いで、Cr層上にフォトレジストをスピンコートし、公知のフォトリソグラフィー工程により、レジストパターンを形成した。
次に、ICPドライエッチング装置を用いたCrエッチングと、バレル式アッシング装置を用いた酸素ガスプラズマアッシングによって、Cr層をエッチングし、Cr層をパターニングした。Crエッチングの条件は、塩素ガス流量を20sccm、酸素ガス流量を10sccm、ヘリウムガス流量を30sccm、圧力3Pa、ICPパワー500W、RIEパワー50W、エッチング時間40秒とし、酸素ガスプラズマアッシングの条件は、酸素ガス流量を500sccm、圧力30Pa、RFパワー1000Wとした。
次に、ICPドライエッチング装置を用いて、パターニングされたCr層をエッチングマスクとして、ガラス基板をエッチングして凹凸パターンを形成した。このとき、ガラスのエッチング条件を、C4F8ガス流量を10sccm、酸素ガス流量を10〜25sccm、アルゴンガス流量を75sccm、圧力1〜2Pa、ICPパワー200W、RIEパワー550W、エッチング時間を10分とした。このような操作により、可とう性ガラス基板上の所望の位置に幅200μm、長さ200μm、深さ3μmのパターンを形成した。
次に、Cr層のウェット剥離洗浄を行い、凹凸パターンおよび凹凸パターン領域外に設けられた補助パターンを形成し、インプリントモールドを製造した。
上記操作により得られたインプリントモールドを、支持基板から取り外し、石英からなるφ316mmの円筒形モールド母材上に接着剤で貼合することにより、外周面に微細な凹凸パターンを備えたロールモールドを作製し、これを転写ロール1とした。
〔転写ロール2の作製〕
上記作製した転写ロール1の表面を、界面活性剤を用いた超音波洗浄した。次いで、フッ素系シランカップリング剤であるダイキン工業社製のオプツールHD1100溶液に1分間浸漬した後、60℃、90%RH環境下で1時間放置、乾燥し、次いで超音波洗浄を行って、凹凸パターン上に離型剤層を形成した転写ロール2を作製した。
〔転写ロール3の作製〕
上記作製した凹凸パターンを有する転写ロール1の外周面を、下記の方法に従って、金属酸化物層及び離型剤層を順次形成して、本発明で規定する構成からなる転写ロール3を作製した。
(金属酸化物層の形成)
図2に記載の大気圧プラズマ放電処理装置を用いて、転写ロールの凹凸構造上に、下記のガス条件、電源条件で厚さ30nmの酸化珪素からなる金属酸化物層を形成した。
図2に示す大気圧プラズマ放電処理装置を使用し、2個の電極121、122を電極間隙を0.51mmとして平行に対向させ、高周波電圧と放電開始電圧との関係に適した第1電源131及び第2電源132を設置した。両電極を80℃になるように調節保温した。尚、いずれもフィルターは各電極からの電流が逆流しないようなものを設置した。
〈第1電極側〉
周波数:100kHz(応用電機社製高周波電源)
出力密度:6W/cm2
電界強度(1/2Vp−p):10kV/mm
〈第2電極側〉
周波数:13.56MHz(パール工業社製高周波電源)
出力密度:4W/cm2
電界強度(1/2Vp−p):0.8kV/mm
〈酸化珪素層形成用反応性ガス〉
窒素ガス:300L/min
酸素ガス:15L/min
テトラエトキシシラン(蒸気):0.3g/min
(リンテック社製気化器にて気化させた)
ガス温度:90〜100℃
(離型剤層の形成)
上記形成した金属酸化物層上に、転写ロール2の作製と同様の方法で離型剤層を形成して、転写ロール3を作製した。
《被転写基材の作製:四分の一波長の面内位相差を有するトリアセチルセルロースフィルムの作製》
〔セルロースエステルフィルムの作製〕
下記の方法に従って、セルロースエステルフィルムを作製した。
(微粒子分散液の調製)
シリカ微粒子:AEROSIL R972V(日本アエロジル社製、一次平均粒子径16nm) 11.0質量部
エタノール 89質量部
以上の各添加剤をディゾルバーで50分間攪拌、混合した後、マントンゴーリン分散機で分散を行って、微粒子分散液を調製した。
(微粒子添加液の調製)
メチレンクロライドを入れた溶解タンクに、セルロースエステルA(アセチル基置換度:1.6、プロピオニル基置換度:0.9、数平均分子量:40000、重量平均分子量/数平均分子量=2.5)を添加し、加熱して完全に溶解させてセルロースエステル溶液を調製した後、これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過した。濾過後のセルロースエステル溶液を充分に攪拌しながら、ここに上記調製した微粒子分散液を下記の量ゆっくりと添加した。更に、二次粒子の粒径が所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過し、微粒子添加液を調製した。
メチレンクロライド 99質量部
セルロースエステルA 4質量部
微粒子分散液 11質量部
(主ドープ液の調製)
下記組成からなる主ドープ液を調製した。はじめに、加圧溶解タンクに、溶剤としてメチレンクロライドとエタノールを添加した。次いで、溶剤の入った加圧溶解タンクにセルロースエステルAを攪拌しながら投入した。これを加熱し、攪拌しながら、完全に溶解し、更に可塑剤及び紫外線吸収剤を添加、溶解させた。これを安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、主ドープ液を調製した。
〈主ドープ液の組成〉
メチレンクロライド 300質量部
エタノール 57質量部
セルロースエステルA 100質量部
可塑剤(A)、(B)、(C)=1:1:1の比 5.5質量部
可塑剤(D) 5.5質量部
紫外線吸収剤(A) 0.4質量部
紫外線吸収剤(B) 0.7質量部
紫外線吸収剤(C) 0.6質量部
主ドープ液の調製用いた各添加剤の詳細は、以下の通りである。
可塑剤(D):トリメチロールプロパントリベンゾエート
紫外線吸収剤(A):チヌビン326(チバ・ジャパン社製)
紫外線吸収剤(B):チヌビン109(チバ・ジャパン社製)
紫外線吸収剤(C):チヌビン171(チバ・ジャパン社製)
セルロースエステルA:アセチル基置換度:1.6、プロピオニル基置換度:0.9、数平均分子量40000、分散度2.5
(基材フィルムの作製)
上記調製した主ドープ液100質量部と微粒子添加液の2質量部を、インラインミキサー(東レ社製 静止型管内混合機 Hi−Mixer、SWJ)で十分に混合し、次いでベルト流延装置を用い、幅2mのステンレスバンド支持体上に均一に流延した。ステンレスバンド支持体上で、残留溶媒量が110%になるまで溶媒を蒸発させ、ステンレスバンド支持体から剥離した。
次いで、特開2007−94007号公報に記載の装置を用い、温度170℃、倍率2.0倍で、遅相軸がフィルム幅方向と角度45°をなす様に斜め方向に行い、乾燥させて基材フィルムを得た。
(液晶層の形成)
上記基材フィルム上に、下記塗工液Aを塗工し、温風を当てて乾燥した後、UV照射して層全体を硬化させ垂直配向液晶層を設けた長尺の位相差フィルムを得た。硬化後の垂直配向液晶層の厚みは0.60μmとなるよう調整した。この際、垂直配向液晶塗工液の塗工方向は、基材フィルムの長手方向と一致させた(延伸方向とは45°)。
〈塗工液Aの調製〉
垂直配向液晶化合物:大日本インキ化学工業株式会社製UCL−018 16質量部
メチルエチルケトン 16.8質量部
プロピレングリコールモノメチルエーテル 67.2質量部
〈リターデーション値の測定〉
得られた基材フィルム(セルロースエステルフィルム)のリターデーション値の測定には、自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長が550nmにおいて、試料の幅手方向に1cm間隔で3次元複屈折率測定を行い、測定値を次式に代入して求めた。
リターデーション値Ro=(nx−ny)×d
リターデーション値Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
上記各式中、nxは、位相差フィルム面内の遅相軸方向の屈折率(面内の最大屈折率)であり、nyは、位相差フィルム面内の遅相軸に垂直な方向の屈折率であり、nzはフィルムの厚み方向の屈折率であり、dは位相差フィルムの厚み(nm)である。
測定の結果、基材フィルムの550nmでのRoは138nm、Rthは1nmであった。また、吸収スペクトルを市販分光光度計を用いて測定した結果、365nmの透過率は0%であった。
(配向膜の形成)
次に、上記基材フィルム上に、1質量%のポリビニルアルコール(日本合成化学製 NH−18)水溶液を塗布し、90℃で乾燥し、膜厚約0.01μmの皮膜を形成した。その表面を、フィルムの長手方向に対して45°の方向にラビング処理し、配向膜を形成して、被転写基材を作製した。
《フィルム構造体の作製》
〔フィルム構造体1の作製〕
上記作製した被転写基材(セルロースエステルフィルム)に、前記作製した転写ロール1を用いて、図1のd)に記載のパターンに従って、ロールインプリントによる凹凸構造からなる二分の一波長板パターンの形成を行って、フィルム構造体1を作製した。
図1のd)に記載のように、被転写基材として上記作製した被転写基材(セルロースエステルフィルム)を用い、転写ロールとしては表面に金属酸化物層及び離型剤層を有していない石英製のロールモールドのみで構成された転写ロール1を用い、その内部に高圧水銀灯からなる活性エネルギー線照射光源を配置した。
転写ロール1の上流位置で、転写物供給タンクから転写物として下記の構造の反応性棒状ネマティック液晶と光重合開始剤の混合物から構成される転写物を、湿潤膜厚が3.0μmとなる条件で被転写基材上に付与させた後、外周面に微細な凹凸パターンを備えた転写ロール1と密着させた後、転写ロール1の内部に設置した活性エネルギー線照射光源より、波長365nm、紫外線露光量40mJ/cm2、搬送速度10m/分で、転写物に対し活性エネルギー線を照射して硬化させた。このような条件で100mの被転写基材に対して転写を行って、微細な凹凸パターンを有するフィルム構造体1を作製した。
〔フィルム構造体2の作製〕
上記フィルム構造体1の作製において、転写ロール1に代えて、外周部に離型剤層のみを有する転写ロール2に変更した以外は同様にして、フィルム構造体2を作製した。
〔フィルム構造体3の作製〕
上記フィルム構造体1の作製において、転写ロール1に代えて、外周部に金属酸化物層及び離型剤層をこの順で積層した転写ロール3に変更した以外は同様にして、フィルム構造体3を作製した。
《フィルム構造体の評価》
上記作製した各フィルム構造体について、下記の各評価を行った。
〔転写性の評価〕
上記各方法に従って100mの被転写基材への転写を行った後、各フィルムの末端部1mの構造体上の微細な凹凸構造の転写パターンの精度をAFMで観察し、下記の基準に従って転写性を評価した。
◎:凹凸構造の転写パターンのうち、99%以上で所定のパターンが得られている
○:凹凸構造の転写パターンのうち、90%以上、99%未満で所定のパターンが得られている
△:凹凸構造の転写パターンのうち、50%以上、90%未満で所定のパターンが得られている
×:凹凸構造の転写パターンのうち、所定のパターンが得られているのは50%未満である
〔面内位相差の評価:リターデーションの評価〕
二分の一波長板が転写される設定の位置の面内位相差の値と、転写されない設定の位置の面内位相差の値とを、それぞれ10点について自動複屈折計KOBRA−21ADH(王子計測器(株)製)を用いて、23℃、55%RHの環境下で、波長550nmで測定し、両者の面内リターデーションの差分を測定し、下記の基準に従って面内位相差の平均値を評価した。
◎:面内リターデーションの差が、275nmを基準として0〜±5nmの範囲である
○:面内リターデーションの差が、275nmを基準として±6nm以上、±10nm以下である
△:面内リターデーションの差が、275nmを基準としてから±11nm以上、±30nm以下である
×:面内リターデーションの差が、275nmを基準として、±31nm以上である
以上により得られた結果を、表1に示す。
表1に記載の結果より明らかなように、本発明のフィルム構造体の形成方法により作製したフィルム構造体は、比較例に対し、高い生産性で得ることができ、形成した凹凸構造パターンの精度が高く、面内位相差性に優れたフィルム構造体を得ることができた。
実施例2
《転写ロールの作製》
〔転写ロール11の作製〕
石英製の円筒を用い、ピッチ25μm、頂角70°、底辺の角度55°の二等辺三角形の凹凸構造となるように研削、研磨してロールモールドを作製し、これを転写ロール11とした。また、石英製の円筒内部には、図1のd)に示すように、高圧水銀灯からなり、波長365nm、紫外線露光量40mJ/cm2、活性エネルギー線照射光源53を配置した。
〔転写ロール12の作製〕
上記作製した転写ロール11である石英製ロールモールドを、真空中で回転させながらダイキン工業社製のオプツールHD1100を真空蒸着し、大気下に取り出した後、60℃、90%RHの環境下で1時間放置し、次いで、超音波洗浄を行って離型剤層を形成して、比較の転写ロール12を得た。
〔転写ロール13の作製〕
上記作製した転写ロール11である石英製ロールモールドを用い、その外周部に、実施例1に記載の転写ロール3の作製と同様にして、転写ロール11の外周面に、大気圧プラズマ放電処理装置を用いて、転写ロール11の凹凸構造上に、厚さ20nmの酸化珪素からなる金属酸化物層を形成した。
次いで、金属酸化物層上に転写ロール12の作製と同様にして、離型剤層を形成して、転写ロール13を得た。
《被転写基材2の作製》
被転写基材2としては、帝人デュポン社製の耐候性ポリエチレンテレフタレートフィルムHB3を用いた。
《フィルム構造体の作製:太陽電池用のプリズムシートの作製》
〔フィルム構造体11(プリズムシート11)の作製〕
上記被転写基材2(ポリエチレンテレフタレートフィルム)に、転写ロール11を用いて、図1のd)に記載のパターンに従って、凹凸パターンの形成を行って、フィルム構造体11を作製した。
図1のd)に記載のように、上記被転写基材(ポリエチレンテレフタレートフィルム)を用い、転写ロールとしては表面に金属酸化物層及び離型剤層を有していない石英製のロールモールドのみで構成された転写ロール11を用い、その内部に高圧水銀灯からなる活性エネルギー線照射光源53を配置した。
転写ロール11の上流位置で、転写物供給タンクから転写物として東洋合成工業社製の紫外線硬化性樹脂であるPAK−02をウェット膜厚として20μmとなる条件で被転写基材上に付与させた後、外周面に微細な凹凸パターンを備えた転写ロール11と密着させた後、転写ロール11の内部に設置した活性エネルギー線照射光源より、波長365nm、紫外線露光量40mJ/cm2、搬送速度10m/分で、転写物に対し活性エネルギー線を照射して硬化させた。このような条件で100mの被転写基材に対して転写を行って、微細な凹凸パターンを有するフィルム構造体11を作製した。
〔フィルム構造体12の作製〕
上記フィルム構造体11の作製において、転写ロール11に代えて、外周部に離型剤層のみを有する転写ロール12に変更した以外は同様にして、フィルム構造体12を作製した。
〔フィルム構造体13の作製〕
上記フィルム構造体11の作製において、転写ロール11に代えて、外周部に金属酸化物層及び離型剤層をこの順で積層した転写ロール13に変更した以外は同様にして、フィルム構造体13を作製した。
〔フィルム構造体14の作製〕
上記フィルム構造体13の作製において、転写物として紫外線硬化性樹脂(PAK−02)に代えて、下記の構成からなる紫外線硬化型カチオン重合性組成物に変更した以外は同様にして、フィルム構造体14を作製した。
(紫外線硬化型カチオン重合性組成物の調製)
下記に示す各添加剤を順次混合、溶解して、紫外線硬化型カチオン重合性組成物を調製した。
オキセタン化合物:OXT−221(3−エチル−3−(フェノキシメチル)オキセタン、東亞合成社製) 80.0質量部
エポキシ化合物:例示化合物(9) 10.0質量部
カチオン重合開始剤:アデカオプトマーSP−152(トリフェニルスルホニウム塩、旭電化社製) 5.0質量部
重合禁止剤:トリイソプロパノールアミン 0.5質量%
《フィルム構造体の評価》
上記作製した各フィルム構造体について、下記の各評価を行った。
〔転写性の評価〕
上記各方法に従って100mの被転写基材への転写を行った後、各フィルムの末端部1mの構造体上の微細な凹凸構造の転写パターンの精度をAFMで観察し、下記の基準に従って転写性を評価した。
◎:凹凸構造の転写パターンのうち、99%以上で所定のパターンが得られている
○:凹凸構造の転写パターンのうち、90%以上、99%未満で所定のパターンが得られている
△:凹凸構造の転写パターンのうち、50%以上、90%未満で所定のパターンが得られている
×:凹凸構造の転写パターンのうち、所定のパターンが得られているのは50%未満である
以上により得られた結果を、表2に示す。
《有機薄膜太陽電池》
上記によって得られた微細な凹凸パターンを備えたフィルム構造体(プリズムシート)11〜14を用いて、有機薄膜太陽電池10〜14を作製した。
〔有機薄膜太陽電池10の作製〕
常法に従ってパターン形成した透明電極基板を、界面活性剤と超純水を用いて超音波洗浄及び超純水による超音波洗浄をこの順で行った後、窒素ブローで乾燥させ、最後に紫外線オゾン洗浄を行った。
この透明電極基板上に、導電性高分子としてBaytron P4083(スタルクヴィテック社製)を30nmの膜厚でスピンコートした後、140℃の大気中で10分間加熱乾燥した。
次いで、透明電極基板をグローブボックス内に移動し、窒素雰囲気下で作業した。はじめに、窒素雰囲気下で上記透明電極基板を140℃で3分間加熱処理した。
クロロベンゼンに、p型半導体材料としてプレクストロニクス社製のプレックスコアOS2100を1.0質量%と、n型半導体材料としてフロンティアカーボン社製のE100(PCBM)を1.0質量%溶解した液を調製し、0.45μmのフィルターでろ過をかけながら、透明電極基板上に500rpmで60秒、次いで2200rpmで1秒間のスピンコートを行い、室温で30分した。
次に、上記一連の有機層を成膜した透明電極基板を真空蒸着装置内に設置した。1cm幅のシャドウマスクが透明電極と直交するように素子をセットし、10−3Pa以下にまでに真空蒸着装置内を減圧した後、フッ化リチウムを5nm、Alを80nmの厚さで蒸着した。最後に、120℃で30分間の加熱を行い、有機光電変換素子を得た。なお、蒸着速度はいずれも2nm/秒で蒸着し、1cm角のサイズとした。
得られた有機光電変換素子を、窒素雰囲気下でアルミニウムキャップとUV硬化樹脂(ナガセケムテックス株式会社製、UV RESIN XNR5570−B1)を用いて封止を行った後に大気下に取り出し、有機薄膜太陽電池10とした。
〔有機薄膜太陽電池11〜14の作製〕
上記作製した有機薄膜太陽電池10の表面に、前記作製したフィルム構造体(プリズムシート)11〜14を接着し、有機薄膜太陽電池11〜14とした。
《有機薄膜太陽電池の評価》
上記作製した有機薄膜太陽電池について、下記の方法に従って、1日の総発電量の評価を行った。
〔1日の総発電量の評価〕
上記作製した有機薄膜太陽電池10〜14を、東京(北緯35度)の南向きの建物の壁に設置し、3月の1日中晴天である日を選び、1日の総発電量を評価した。なお、総発電量は、有機薄膜太陽電池10の総発電量を100とした相対値で評価した。
以上により得られた結果を、表2に示す。
表2に記載の結果より明らかなように、本発明のフィルム構造体の形成方法により作製したフィルム構造体は、比較例に対し、高い生産性で得ることができ、形成した凹凸構造パターンの精度が高く、それをプリズムシートとして用いた有機薄膜太陽電池は、比較例に対し、総発電量が高いことが分かる。