JP5337364B2 - 薄肉有底円筒金属部材の製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、従来では、冷却穴が形成されたコアピンの肉厚は、1mm以上とされており、薄肉化によって冷却穴の穴径を増大することについての検討が十分になされていなかった。なぜなら、コアピンは長尺状とされているため、肉厚が1mm未満の薄肉化の加工は困難であると考えられていたからである。
本発明の薄肉有底円筒金属部材の製造方法は、基端部側に位置する大径部と、先端側に位置するとともに前記大径部よりも小径とされた小径部を有し、ダイカスト用金型に用いられるコアピンとされた薄肉有底円筒金属部材の製造方法であって、略一定の外径を有しかつ長尺状の金属製中実丸棒とされたワークの中心軸線に沿って切削加工により中心穴を冷却穴として形成し、該ワークの前記小径部の先端にて底部を有するように有底穴を形成する穴形成工程を行い、次に、前記穴形成工程にて形成した前記有底穴に充填部材を挿入することなく、前記ワークの先端側の前記小径部の全体にわたって外径が小さくなるように切削加工して1.5mm未満まで薄肉化する薄肉化工程を行うことにより、該薄肉化工程にて薄肉化された先端の直径に対して10倍以上の長さとされた長尺状の薄肉有底円筒金属部材とすることを特徴とする。
薄肉化工程によって薄肉化される寸法は、ワーク長さが200mm〜350mm程度の場合には、例えば1.0mm未満、好ましくは0.7mm以下、ワーク長さが400mm程度の場合には、例えば1.5mm未満、好ましくは1.3mm以下とされる。
薄肉有底円筒金属部材の材質としては、SKD(例えばSKD61)等の合金工具鋼、快削鋼、真鍮、銅、ステンレス(SUS)等が挙げられる。
なお、「長尺状」とは、例えば、薄肉化された先端の直径に対して10倍以上の長さを有するものを意味する。
本発明は、特に、後述するダイカスト用金型に用いられるコアピンの製造に用いられる。
本実施形態では、ダイカスト金型に用いるコアピン(中子ピン)を薄肉有底円筒金属部材の一例として、その製造方法について説明する。先ず、コアピンの使用形態およびコアピンの形状を説明した後に、コアピンの製造方法について説明する。
コアピン1は、基端部1b側に位置する大径部12と、先端部1a側に位置するとともに大径部12よりも小径とされた小径テーパ部14と、大径部12と小径テーパ部14との間に位置するとともに小径テーパ部14に対して連続的に接続された小径直線部16とを有している。
コアピン1の長さは、250mmとされている。大径部12の長さは25mm、小径直線部16の長さは203mm、小径テーパ部14の長さは22mmとされている。
コアピン1の小径テーパ部14の先端では直径が小さくなっているので、この位置における肉厚が最も薄くなる。図2に示したコアピンでは、0.7mm程度の肉厚となっている。
先ず、図3(a)に示すように、素材となる金属製中実丸棒から、製品となるコアピン1の長さに所定長さを加えた寸法だけ切断して、ワークWを得る。切断寸法としては、例えば300mm程度である。素材の材料としては、用途によって決まるが、例えば、SKD(例えばSKD61)等の合金工具鋼、快削鋼、真鍮、銅、ステンレス(SUS)等が挙げられる。
次に、図3(b)に示すように、ガンドリル(又はドリル)によって、基端部1b側から切削加工を行い、先端部1aに底部1dを残すように冷却穴1cの加工を行う(穴形成工程)。
次に、図3(c)に示すように、スイス型自動旋盤に図3(b)のように加工したワークWを設置し、ワークWの外形状の切削加工を行う。具体的には、図2に示した小径直線部16および小径テーパ部14となるように、ワークWの外形を加工する。これにより、先端部1a側の小径直線部16および小径テーパ部14に薄肉部が形成される(薄肉化工程)。
冷却穴を有するコアピンよりも先に、冷却穴を有しないコアピンが多く流通していたため、図4に示したように、先ず冷却穴を有さないコアピンを形成し、その後に冷却穴を加工するのが一般的と考えられ、このように実施されてきた。今までコアピンの薄肉化の要請がなかったため、図4に示した製造方法で対処できてきたというのが実情である。
図4に示した比較例としての製造方法では、冷却穴1cを加工する前に小径部を形成してしまうので、冷却穴1cを加工するときにワークWの剛性が小さくなり、精度良くガンドリル(又はドリル)にて切削加工することが困難となる。また、小径部では肉厚が薄いので、ガンドリル(又はドリル)によって加工する際に生じる加工熱によって容易に熱変形してしまい、精度良く加工することができない。
これに対して、図3に示した本実施形態にかかる製造方法では、ワークWの先端部1a側の外径が小さくなるように切削加工する薄肉化工程の前に、略一定の外径を有する中実丸棒とされたワークWに対して冷却穴1cを形成することとしたので、高い剛性を有するワークWに対して冷却穴1cを精度良く形成することができる。また、高い剛性を有するワークWに対して切削加工するので、加工熱による熱変形を小さくすることができ、冷却穴1cを精度良く形成することができる。
外径寸法: φ5.0×350
冷却穴寸法: φ3.1×347
肉厚: 0.95mm
使用刃物: ガンドリルまたはドリル
振れ規格精度:0.347(100mmで0.1)
測定方法: 超音波測定
図4に示した比較例としての製造方法では、冷却穴を形成する前にワークWの外形の曲がり確認が必要となり、曲がりがある場合には修正が必要となった。また、冷却穴を加工した際に、刃物がワークWを突き破ってしまうこともあった。ワークWを突き破らずに冷却穴を加工できた場合であっても、冷却穴の振れ精度が悪かった。具体的には、10本加工して1〜3本が合格品となる程度だった。
これに対して、図3に示した本実施形態にかかる製造方法では、薄肉化工程は穴形成工程の後に行うので、比較例のようにワークWの外形の曲がり検査が不要となる。剛性が高いワークWに対して冷却穴を形成するので、殆どの加工品が規格内に収まる。仮に規格外となった加工品に対しては、後の薄肉化工程を行わないので、製造負荷を抑えることができる。
また、本発明の製造方法によれば、高い精度で加工でき、外形:φ4×350,冷却穴寸法:φ3.1×347,肉厚:0.45mm、冷却穴の振れ精度:0.05の加工も可能であることを確認した。さらに、超音波測定によって形状を測定して穴加工を行えば、肉厚0.2mmの加工も可能である。
図5に示した薄肉化工程では、ワークWの一端を延長する冶具20を用いて加工を行う点が特徴となっている。
図5(a)に示すように、穴形成工程(図3(b)参照)を終えたワークWの一端に対して、雄ねじ部22および嵌合部24を形成する。これら雄ねじ部22および嵌合部24は、後にコアピンの基端部1bとなる側に形成される。
一方、冶具20は、ワークWと略同一の外形を有した丸棒形状とされている。冶具20の一端(図において右方)には、ワークWの雄ねじ部22が螺合される雌ねじ部26と、嵌合部24が嵌合される嵌合穴28が形成されている。
薄肉化工程が終了した後は、例えば嵌合部24の直近に位置するワークWの大径部を切断することによって、ワークWの雄ねじ部22及び嵌合部24を除去し、所定の加工を施して製品(コアピン)とする。
あるいは、図7に示すように、ワークWについては接続のための加工を行わずに、冶具20の一端に設けた締め付けナット36によって締め付け固定することとしても良い。
また、絞りプレスによって量産される製品の試作品を製造する際に本発明の参考例として用いることができる。絞りプレスでは、金型を数台用いて製作することが一般とされ、試作のために金型を製作することはコストがかかり好ましくない。本発明の製造方法を用いれば、薄肉の有底円筒金属部材を切削加工にて製作できるので、少ない投資で試作品を製作し、製品確認をすることができる。また、絞りプレスでは製作が困難な材料であっても、本発明の製造方法は切削加工なので、材料に依存せずに製造することができるという有利点を有する。
1a 先端部
1b 基端部
1c 冷却穴
20 冶具
Claims (2)
- 基端部側に位置する大径部と、先端側に位置するとともに前記大径部よりも小径とされた小径部を有し、ダイカスト用金型に用いられるコアピンとされた薄肉有底円筒金属部材の製造方法であって、
略一定の外径を有しかつ長尺状の金属製中実丸棒とされたワークの中心軸線に沿って切削加工により中心穴を冷却穴として形成し、該ワークの前記小径部の先端にて底部を有するように有底穴を形成する穴形成工程を行い、
次に、前記穴形成工程にて形成した前記有底穴に充填部材を挿入することなく、前記ワークの先端側の前記小径部の全体にわたって外径が小さくなるように切削加工して1.5mm未満まで薄肉化する薄肉化工程を行うことにより、該薄肉化工程にて薄肉化された先端の直径に対して10倍以上の長さとされた長尺状の薄肉有底円筒金属部材とすることを特徴とする薄肉有底円筒金属部材の製造方法。 - 前記薄肉化工程の際に、前記ワークの一端側を延長する冶具を該ワークに対して固定し、該冶具を旋盤のチャックに取り付ける取付工程を有することを特徴とする請求項1に記載の薄肉有底円筒金属部材の製造方法。
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