JP5335177B2 - 屋根の断熱構造 - Google Patents
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また、屋根の断熱工法として、野地板と断熱材を一体化した断熱パネルを使用する工法も知られている。例えば、特許文献1には、野地板と断熱材とを両者間に垂木を介在させた状態で一体化した屋根下地用断熱パネルが記載されている。この屋根下地用断熱パネルは、桁や垂木等の建物躯体に並べて取り付けることにより、屋根部に通気層を設けることができる。しかし、このような複合断熱ボードは一般に高価である上に、屋根の配置箇所等に応じて加工が必要となった場合に該加工に手間がかかり、また、該加工により、材料に無駄が生じやすいという問題がある。
棟木の部分において相対向する断熱ボードの端部間に小断面の断熱材が配されていることによって、棟木の一方の側から他方の側に亘って連続する断熱層が形成されており、前記断熱ボードと、垂木の上フランジ上に配設された屋根下地材との間に通気層が形成され、棟木の両側に形成された通気層が、棟木の部分に設けられた棟部換気構造と連通しており、前記垂木は、棟木側の端部における下フランジが該棟木上に位置しており、前記小断面の断熱材は、前記垂木に遮断されずに、前記棟木の長手方向の略全長に亘って実質的に連続するように配置されており、且つ前記棟木の上面から離間した位置に、前記両断熱ボードの端部に支持された状態に配されており、前記垂木は、相互に別体であった、上フランジ、下フランジ及びウエブを断面I字状に結合して形成されている屋根の断熱構造を提供することにより、上記目的を達成したものである。
本発明の一実施形態に係る屋根の断熱構造は、本発明を木造住宅の切妻屋根又は寄棟屋根に適用したものである。
本実施形態の屋根の断熱構造は、図1〜図3に示すように、棟木1の両側(図1の左右両側)それぞれに、上フランジ21、下フランジ22及び上下のフランジ21,22間に位置するウエブ23からなる断面I字状の垂木2が複数配設されており、棟木1の両側それぞれにおける、相隣接する垂木2,2のウエブ23,23間に、断熱ボード3が、その両端部31,31を垂木2の下フランジ22上に載せた状態に配置されており、棟木1の部分において相対向する断熱ボード3の端部32,32間に断面三角形状の小断面の断熱材34が配されていることによって、棟木1の一方の側から他方の側に亘って連続する断熱層が形成されており、該断熱ボード3と、垂木2の上フランジ21上に配設された野地板(屋根下地材)4との間に通気層5が形成され、棟木1の両側に形成された通気層5が、棟木1の部分に設けられた棟部換気構造9と連通している。
上下のフランジ21,22とウエブ23とは、フランジ21,22に形成された溝及び/又はウエブ23の上下端部に接着剤を塗工し、フランジ21,22の溝にウエブ23の上下端部を嵌合しプレス加工することにより結合されている。
上フランジ21及び/又は下フランジ22を単板積層材から構成する場合、各単板の面がウエブ23の面と垂直となるように用いることが好ましく、また、各単板の繊維が垂木2の長さ方向に配向するように用いることが好ましい。
また、ウエブ23を、配向性ボードから構成する場合、ストランドが垂木2の長さ方向に配向するように用いることが好ましい。
断熱ボード3は、所定の間隔(例えば下フランジ間の間隔が25〜80cm)を開けて相隣接する一対の垂木2,2間に掛け渡されても大きく撓んだり折れたりすることなく、その状態が安定に維持されるものが用いられる。垂木間に架設された状態が長時間(例えば10年以上)安定に維持されるようにする観点から、断熱ボード3は、繊維系のものではなく、発泡プラスティック系の断熱ボードであることが好ましい。
断熱ボード3の厚みは、目的とする断熱性や材料の熱伝導率等に応じて適宜に決定できるが、例えば上述した発泡プラスティック系のボード(特にフェノールフォーム)の場合、20〜200mmであることが好ましく、80〜100mmであることがより好ましい。断熱ボードは、比較的薄厚の2枚の断熱ボードを積層状態として配置しても良く、その場合の厚みは、2枚の合計厚みである。
また、棟木1の両側それぞれにおいて、棟木1の長さ方向の一端部に結合された垂木と他端部に固定された垂木との間においては、相隣接する垂木間に配置された断熱ボード3は、何れも棟木1と軒桁6との間に亘って配されている。より具体的には、図3に示すように、棟木1から、軒先部に位置する垂木2の先端24よりやや手前の位置までに亘って配されている。軒先側から見て、垂木2の先端24に達しない位置、例えば、先端24からの距離が20〜100mmの位置に、断熱ボード3の端部33を位置させることで、軒裏7からの通気経路を確保することができる。軒裏7からの通気経路を確保することで、通気層5への空気の流入を促進でき、また、軒裏7を介して、通気層5を外壁部通気層8と連通させることもできる。図2に示す外壁部通気層8は、建物の躯体(軒桁6や柱又は間柱81等)の室外側に固定したパネル材82に、縦胴縁84を介してサイディング材等の仕上げ材83を固定することにより、パネル材82と仕上げ材83との間に形成されたものである。
そして、垂木2の長手方向における棟木1側とは反対側の端部24側から、相隣接する垂木のウエブ23,23間に、断熱ボード3を差し込み、断熱ボード3の端部32が、棟木1の位置に達するまで挿入する。押し込む前の断熱ボード3は、一対の垂木2,2のウエブ23,23間の距離よりもやや広いこと(例えば、ウエブ間距離の100〜105%)が、押し込むだけで断熱ボード3が所定位置に保持されることから好ましい。断熱ボード3を、所定位置まで押し込んだ状態がより安定的に維持されるようにするために、断熱ボード3を、接着剤等の固定手段で垂木等に固定することもできる。図2中の符号71及び72は、鼻隠し下地材及び鼻隠し材であり、断熱ボード3を、垂木2のウエブ23,23間に軒先側から挿入する場合は、その挿入後に垂木の先端部に固定する。
そして、棟木1の部分において相対向した両断熱ボード3の端部32,32間に、別に用意した断面三角形状の小断面の断熱材34を配置する。これにより、棟木1の一方の側から他方の側に亘って連続する断熱層が形成される。断熱材34としては、連続する断熱層を形成できる限り特に制限されず、各種公知の断熱材を用いることができる。例えば、断熱ボード3の材料として上述した各種のフォーム等を断面3角形状に切断したものを用いることができる。断熱材34は、断熱ボード3に用いた材料と同じ材料のものを用いることが好ましい。
断熱材34は、垂木2に遮断されずに、棟木1の長手方向の略全長に亘って実質的に連続するように配置されていること(複数の断熱ボード3を棟木1の長手方向に隙間なく並べてある場合を含む)が好ましい。その場合の断熱材34は、棟木1の長手方向の略全長に亘って連続しているものが好ましい。
そして、従来の屋根の施工方法と同様にして、垂木2上に野地板4を固定し、その野地板4上に、防水シート41や屋根材42を固定する。これにより、断熱ボード3と、垂木2の上フランジ21上に配設された野地板4との間に通気層5が形成される。このようにして形成された、棟木1の両側の通気層5は、それぞれ棟部通気空間5Aと連通している。断熱ボード3と野地板4との間に形成される通気層の高さ(H−T3)は、例えば20〜150mmとすることができ、空気の粘性抵抗を考慮すると、32mm以上であることが好ましい。
図1に示す棟部換気構造9は、図1及び図4に示すように、棟木1の上方に位置する野地板4及び屋根材42に貫通孔43を形成し、該貫通孔43を、多数の貫通孔91を有する換気棟(カバー)92で覆ってなる。換気棟(カバー)9は、棟包93,93に重ねた両端部を、ビス止めすることによって固定されている。棟部換気構造9は、通気層5を流通した空気を棟部から排気し得るものであれば良く、棟部換気構造としては、図1に示すものに代えて、従来公知の各種の棟部換気構造を用いることができる。図1中、符号92は捨て水切である。
例えば、厚み22.5mmのLVL製の上下フランジが厚み9mmのOSB製のウエブで連結された構成の断面I字状の垂木、及び熱伝導率が0.034W/m・℃の厚さ80mmのフェノールフォームを用いて、屋根の断熱構造を構築し、小屋裏空間の温度を通年計測したところ、一般的な天井断熱を行った建物の小屋裏空間では夏場の最高温度が60℃以上にも達したのに対して、本発明の実施例の構造では、夏場の最高温度を40℃以下に抑えることができ、また、一般的な天井断熱を行った建物の小屋裏空間では冬場の最低温度が零下7℃に達したのに対して、本発明の実施例の構造では、冬場の最低温度を5℃以上に抑えることができた。
また、小屋裏空間とその下の部屋(居室等)とを、常時、空気が流通可能なように連通しておき、下の部屋の温度制御により小屋裏空間の温度を一体的に制御することも可能である。このような制御により、温度制御のコストを抑えつつ、小屋裏空間を気軽に利用可能な空間とすることができる。
そして、隅木上通気空間又は谷木上通気空間を、上述した棟部通気空間5Aに連通させることで、垂木2,2間に形成された通気層(断熱ボードと屋根下地材との間に形成された通気層)と、上述した棟部換気構造9と連通させることができる。
例えば、棟木1の部分において相対向する断熱ボード3の端部32,32間に配置する小断面の断熱材34は、断面三角形状以外のものであっても良い。図6(a)に、断面台形状の断熱材34を配置した例を示した。また、断面三角形状や断面台形状の断熱材34は、高さ方向に複数の断熱板が積層接着してなる構造のものであっても良い。
また、小断面の断熱材34を配置するのに代えて、図6(b)に示すように、棟木1の部分において相対向する断熱ボード3の端部32’,32’同士を直接当接させることによって、棟木1の一方の側から他方の側に亘って連続する断熱層が形成することもできる。
これらの場合も、上述した実施形態と同様の効果が奏される。
2 断面I字状の垂木
21 上フランジ
22 下フランジ
23 ウエブ
3 断熱ボード
32 棟木の部分において相対向する断熱ボードの端部
34 小断面の断熱材
4 野地板(屋根下地材)
5 通気層
6 軒桁(他の横架材)
7 軒裏
8 外壁部通気層
9 棟部換気構造
Claims (6)
- 棟木の両側それぞれに、上フランジ、下フランジ及び上下のフランジ間に位置するウエブからなる断面I字状の垂木が複数配設されており、棟木の両側それぞれにおける、相隣接する垂木のウエブ間に、断熱ボードが、その両端部を垂木の下フランジ上に載せた状態に配置されており、
棟木の部分において相対向する断熱ボードの端部間に小断面の断熱材が配されていることによって、棟木の一方の側から他方の側に亘って連続する断熱層が形成されており、前記断熱ボードと、垂木の上フランジ上に配設された屋根下地材との間に通気層が形成され、棟木の両側に形成された通気層が、棟木の部分に設けられた棟部換気構造と連通しており、
前記垂木は、棟木側の端部における下フランジが該棟木上に位置しており、
前記小断面の断熱材は、前記垂木に遮断されずに、前記棟木の長手方向の略全長に亘って実質的に連続するように配置されており、且つ前記棟木の上面から離間した位置に、前記両断熱ボードの端部に支持された状態に配されており、
前記垂木は、相互に別体であった、上フランジ、下フランジ及びウエブを断面I字状に結合して形成されている屋根の断熱構造。 - 前記ウエブの厚み(T)が6〜12mmであり、前記下フランジにおける該ウエブの両面から張り出した張り出し部の幅(W)が13〜20mmである請求項1記載の屋根の断熱構造。
- 前記棟木の部分において相対向する断熱ボードの端部間に、断面三角形状又は断面台形状の前記小断面の断熱材が配されている請求項1又は2記載の屋根の断熱構造。
- 前記下フランジが単板積層材からなり、該単板積層材を構成する単板の面が前記ウエブの面と垂直である請求項1ないし3のいずれか1項記載の屋根の断熱構造。
- 前記断熱ボードが、発泡プラスティック系の断熱ボードである請求項1ないし4のいずれか1項記載の屋根の断熱構造。
- 請求項1ないし5のいずれか1項記載の屋根の断熱構造の施工方法であって、相隣接する垂木のウエブ間に、屋根の軒先側から前記断熱ボードを挿入する工程を具備する屋根の断熱構造の施工方法。
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