JP5330037B2 - シール材用焼き付き防止スプレー - Google Patents
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しかし、これらのガスケットは、高温高圧環境下で使用されることにより配管接合部のフランジ面に対して焼き付き(固着)を生じる場合があった。焼き付きが生じると簡単には剥がれず、剥がれたとしてもガスケット表面の一部又は全部が剥離してフランジ表面に残存するために、定期交換や修理等の際にガスケットを剥がして清掃するのに多大な労力を要していた。
焼き付き防止処理が施されたガスケットとしては、例えば、表面に黒鉛粉を付着させたものや、スクリーン印刷により表面に焼き付き防止剤を塗布した後に熱処理を施したもの等がある。
また、焼き付き防止機能に優れたガスケットとして、例えば本願出願人が下記特許文献1にて提案したような、表面がフッ素樹脂で被覆されたガスケットも存在している。
また、これらのガスケットは焼き付き防止効果を有するとしても充分であるとは言えず、実際の使用において焼き付きが生じる場合があった。更に、表面に黒鉛粉を付着させたものは粉落ちによるコンタミネーションの問題があった。
また、定着用高分子物質により、無機質粒子をシール材表面又は当接対象面に対して良好に定着させることができるため、無機質粒子の脱落によるコンタミネーションの問題が生じることがない。
本発明に係るシール材用焼き付き防止スプレーは、ガスケット又はパッキンからなるシール材の表面と、該シール材が当接するフランジ面等の当接対象面の一方又は両方に塗布することにより、該シール材の当接対象面への焼き付き(固着)を防止するために用いられる。
具体的には、シリカ、アルミナ、ガラス、アルミノシリケート、シラスバルーン、カオリン、クレー、タルク、炭酸カルシウム、黒鉛、雲母、窒化ホウ素、二硫化モリブデン、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、チタン酸カリウム、珪藻土、バーミキュライトのうちの1種又は2種以上を選択して使用することが好ましい。
これらの無機質粒子は入手が比較的容易であり、汎用性・価格・取扱い性の点で優れたものとなるからである。
配合量が0.1重量%未満であると焼き付き防止効果が充分に得られず、30重量%を超えるとシール材表面又は当接対象面に形成される焼き付き防止層が厚くなりすぎてシール材本来の機能であるシール性が損なわれる虞があり、いずれの場合も好ましくない。
粒径が0.1μm未満であると粒子の凝集現象の発生や配合時の飛散現象等の発生により取扱い性が低下するとともに製造コストが高くなり、30μmを超えると粒子間の空隙が大きくなってシール材本来の機能であるシール性が損なわれる虞があり、いずれの場合も好ましくない。
セルロース系高分子物質としては、具体的にはエチルメチルセルロース、酢酸セルロース、メチルセルロース、エチルセルロースが好適に使用される。
配合量が0.01重量%未満であると、シール材表面又はフランジ等の当接対象面に塗布した無機質粒子の定着が悪くなって脱落し易くなり、焼き付き防止機能が低下する虞があり、10重量%を超えると定着用高分子物質の割合が多くなって当接対象面への焼き付きが生じ易くなり、特にシール材が膨張黒鉛製ガスケットの場合には、膨張黒鉛同士の厚み方向の結合がファンデルワールス力のみの弱い結合のために層間剥離現象である焼き付き現象が発生する虞があり、いずれの場合も好ましくない。
ただし、300℃以上の高温領域にて使用する場合は、定着用高分子物質の配合量はスプレー組成物全量に対して、10重量%を超えて含有していても良好な焼付き防止性能が得られる。その理由として、たいていの定着用高分子物質は300℃以上で燃焼して消滅してしまい、当接対象面とシール材表面の間には無機質粒子しか残らず、焼付き現象が発生しないためである。
無機質粒子を1としたときの定着用高分子物質の比率が0.01未満であるとシール材表面又は当接対象面に塗布した無機質粒子の定着が悪くなって脱落し易くなり、焼き付き防止機能が低下する虞があり、2.0を超えると焼き付き防止効果が充分に得られないため、いずれの場合も好ましくない。
ただし、300℃以上の高温領域にて使用する場合は、定着用高分子物質の配合比(重量比)は無機質粒子を1とした時に定着用高分子物質が2.0を超えても良好な焼付き防止性能が得られる。その理由として、たいていの定着用高分子物質は300℃以上で燃焼して消滅してしまい、当接対象面とシール材表面の間には無機質粒子しか残らず、焼付き現象が発生しないためである。
溶媒としては、メタノール、水等の極性溶媒と酢酸エチル、トルエン等の非極性溶媒等が好適に使用される。
図1は、ガスケット(1)に対してスプレー缶(2)に充填されたスプレー組成物(3)を噴射することにより塗布している様子を示している。
このように本発明に係るシール材用焼き付き防止スプレーを使用することにより、現場において焼き付き防止処理が施されていないガスケットやパッキンに対して焼き付き防止機能を簡単に付与することができる。
膨張黒鉛製ガスケット(ジャパンマテックス社製、M/#8131)に上記配合例の本発明に係るスプレーを塗布(噴射)し、これを一対のフランジ(JIS 10K−50A)間に装着し、締付面圧30MPaで締め付け、100℃、200℃、300℃、400℃に夫々昇温した電気炉内で1ヶ月間放置した後、24時間かけて放冷した。放冷後、フランジを分解し、ガスケットのフランジ面への焼き付き(固着)具合を確認した。
ジョイントシート製ガスケット(A社製)に上記配合例の本発明に係るスプレーを塗布(噴射)した後、ガスケットペースト(A社製)を塗布し、これを一対のフランジ(JIS 10K−50A)間に装着し、締付面圧30MPaで締め付け、50℃、100℃に夫々昇温した電気炉内で1ヶ月間放置した後、24時間かけて放冷した。放冷後、フランジを分解し、ガスケットのフランジ面への焼き付き(固着)具合を確認した。
ジョイントシート製ガスケット(B社製)に上記配合例の本発明に係るスプレーを塗布(噴射)した後、ガスケットペースト(A社製)を塗布し、これを一対のフランジ(JIS 10K−50A)間に装着し、締付面圧30MPaで締め付け、50℃、100℃に夫々昇温した電気炉内で1ヶ月間放置した後、24時間かけて放冷した。放冷後、フランジを分解し、ガスケットのフランジ面への焼き付き(固着)具合を確認した。
実施例1において、本発明に係るスプレーを塗布しなかったこと以外は実施例1と同一条件で試験を行った。
実施例2において、本発明に係るスプレーを塗布しなかったこと以外は実施例2と同一条件で試験を行った。
実施例3において、本発明に係るスプレーを塗布しなかったこと以外は実施例3と同一条件で試験を行った。
試験後のガスケットのフランジ面への焼き付き具合を以下の評価基準で評価した。
○:焼き付きがなく、ガスケットの取り外しが容易であった。
△:一部焼き付きがあり、ガスケットの取り外しが困難であった。
×:全面焼き付きがあり、ガスケットの取り外しが非常に困難であった。
実施例1及び比較例1の試験結果を表2に示し、実施例2,3及び比較例2,3の試験結果を表3に示す。尚、実施例及び比較例で使用したガスケットはいずれも予め焼き付き防止処理が施されていない製品である。
表2、3に示すように、本発明に係るスプレーを塗布したガスケット(実施例1〜3)ではいずれも焼き付きが生じなかったのに対して、本発明に係るスプレーを塗布しなかったガスケット(比較例1〜3)では全て焼き付きが生じた。
この結果より、本発明に係るスプレーは、焼き付き防止処理が施されていないガスケットに対して塗布した場合に、優れた焼き付き防止効果を得ることができることが確認された。
2 スプレー缶
3 スプレー組成物
Claims (7)
- ガスケット又はパッキンからなるシール材の表面と、該シール材が当接するフランジ等の当接対象面の一方又は両方に塗布することにより、該シール材の当接対象面への焼き付きを防止するためのスプレーであって、
無機質粒子と、該無機質粒子を前記シール材又は当接対象面に定着させるための定着用高分子物質と、噴射剤とを含むスプレー組成物を、スプレー缶内に充填してなることを特徴とするシール材用焼き付き防止スプレー。 - 前記無機質粒子が、シリカ、アルミナ、ガラス、アルミノシリケート、シラスバルーン、カオリン、クレー、タルク、炭酸カルシウム、黒鉛、雲母、窒化ホウ素、二硫化モリブデン、硫酸アルミニウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、チタン酸カリウム、珪藻土、バーミキュライトからなる群から選択される少なくとも1種以上からなることを特徴とする請求項1記載のシール材用焼き付き防止スプレー。
- 前記無機質粒子が、シリカ、アルミナ、タルク、カオリン、クレー、黒鉛から選択される少なくとも1種以上からなることを特徴とする請求項2記載のシール材用焼き付き防止スプレー。
- 前記無機質粒子の配合量が、スプレー組成物全量に対して0.1〜30重量%であることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載のシール材用焼き付き防止スプレー。
- 前記無機質粒子の粒径が0.1〜30μmであることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載のシール材用焼き付き防止スプレー。
- 前記定着用高分子物質がセルロース系高分子物質であることを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載のシール材用焼き付き防止スプレー。
- 前記定着用高分子物質の配合量が、スプレー組成物全量に対して0.01〜10重量%であることを特徴とする請求項1乃至6いずれかに記載のシール材用焼き付き防止スプレー。
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