JP5329108B2 - 光ファイバケーブル - Google Patents

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Description

この発明は、光ファイバケーブルに関し、特に光ファイバをスロットコアの内部に収納する1つの溝を備えたスロットコアの周囲をシースで被覆している1溝スロットコア型の光ファイバケーブルであって、中間後分岐の際に前記溝内の光ファイバを傷つけることなく、光ファイバの口出し作業を容易に行える光ファイバケーブルに関する。
従来の光ファイバケーブルとしては、特許文献1に示されているように、光ファイバを内部に収納する1つのスロット溝を備えたスロットコアの周囲をシースで被覆し、このシースの内部にリップコード(引裂紐)を縦添えしている1溝スロットコア型の光ファイバケーブルであって、前記スロット溝の開口部側のシース厚がスロット溝の開口部側と反対側のシース厚よりも相対的に薄くした偏心シース構造であり、かつスロット溝の開口部側のシースの内側にリップコードを配設した構造である。
また、特許文献2の光ファイバケーブルは、光ファイバを内部に収納する1つの溝を備えたスロットコアの周囲をシースで被覆している1溝スロットコア型の光ファイバケーブルであって、2本の抗張力体が溝の深さ方向に対して直交する方向で溝を挟んで両側に配置しているので、ケーブル曲げ中立線は溝の深さ方向に対して直交する方向であり、光ファイバが溝の内部のケーブル中心に位置してケーブル曲げ中立線に配設された構造である。
また、特許文献3の光ファイバケーブルは、光ファイバテープ心線の歪みを緩和する1溝スロットコア型光ファイバケーブルであり、2本の抗張力体が溝の深さ方向に対して直交する方向で溝を挟んで両側に配置しているので、ケーブル曲げ中立線は溝の深さ方向に対して直交する方向であり、光ファイバが溝のケーブル中心付近に配設された構造である。
特開昭62−291608号公報 実開平6−50009号公報 特開平8−211261号公報
ところで、従来の特許文献1の光ファイバケーブルにおいては、スロット溝の開口部側のシース厚が薄いために、この部分のシースの機械的強度が劣化するという問題点があった。逆に、シースの機械的強度を確保するためには、スロット溝の開口部側のシース厚をある程度厚くすることが必要となるので、スロット溝部分に実装されているリップコードの取り出しや開口部側のシースの引き裂きを行い難くなるという問題点があった。
さらには、スロット溝の開口部側のシースの機械的強度を最低限確保しながらシースの偏肉を施すと、光ファイバケーブルの外径が大きくならざるを得ないという問題点があった。
特許文献2及び特許文献3の光ファイバケーブルにおいては、ケーブル曲げ中立線が溝の深さ方向に対して直交する方向であり、光ファイバが溝のケーブル中心に位置し、ケーブル曲げ中立線に配設した構造であるので、溝の深さはケーブル中心より深くする必要があるため、スロットコアの強度が低下する。また、光ファイバは溝の深さ方向に自由度があるので、光ファイバを溝の深さ方向でケーブル中心に配置することが必ずしも容易ではなく、光ファイバがケーブル曲げ中立線から外れることがある。この場合、光ファイバに伸び歪みがかかったり、逆に光ファイバが溝の内部で蛇行したりするために、伝送損失特性の劣化を生じさせるという問題点があった。
この発明は、ケーブルの曲げや捻れ等による伝送損失特性の劣化を防止し、中間後分岐の際にスロットコアの溝内の光ファイバを傷つけることなく、光ファイバの口出し作業を容易に行うことを目的とする。
上記発明の課題を解決するために、この発明の光ファイバケーブルは、光ファイバを内部に収納する1つの溝を備えたスロットコアと、このスロットコアの周囲を被覆するシースと、を備えると共に、前記シースが前記溝の開口部側のシース厚を前記溝の開口部側と反対側の薄肉部のシース厚よりも相対的に厚くした厚肉部を有する偏心シース構造である光ファイバケーブルにおいて、
シースの長さ方向に垂直な断面においてシース中心を通り前記溝の開口部の中央を結ぶ方向をY軸とし、前記シース中心を通り前記Y軸に直交する方向をX軸としたとき、前記Y軸がケーブル曲げ中立線となるように前記スロットコアの内部と前記シースの厚肉部にそれぞれ少なくとも1本の線状体又は帯状体をY軸及び/又はその近傍に配設し、かつ、前記溝内に収納する光ファイバの位置が前記Y軸にほぼ一致するように配設し、
前記スロットコアの溝の開口部を覆い、かつ、前記スロットコアの全周は覆わない幅を有する縦添えテープを縦添えすると共に、前記縦添えテープで覆われていない部分の前記スロットコアと前記シースを部分的に固着した固着部を有し
前記固着部は、前記縦添えテープの長さ方向に、前記スロットコアの溝内の1本以上の光ファイバを間欠的に固定すべく、予め間欠的に間欠固定材を固着してなることを特徴とするものである。
また、この発明の光ファイバケーブルは、前記光ファイバケーブルにおいて、前記間欠固定材が、ヤング率が800Mpa以下で、かつ、常温の粘度が500cps以上からなる紫外線硬化型樹脂で構成されると共に、前記間欠固定材の間欠充填の間隔が100mm〜2000mmの範囲にあり、かつ、前記スロットコアの溝内に実装されている光ファイバの引抜力が5N/10m以上を有していることが好ましい。
また、この発明の光ファイバケーブルは、前記光ファイバケーブルにおいて、シースの長さ方向に垂直な断面において、ケーブルの中心点をOとし、前記スロットコアの溝の開口部の幅の点をL,L’とし、∠LOL’の角度をθとしたとき、30°≦θ≦90°であり、
かつ、前記縦添えテープの幅のエッジ点をT、T’とし、∠TOT’ の角度をγとしたとき、θ<γ<4×θであることが好ましい。
また、この発明の光ファイバケーブルは、前記光ファイバケーブルにおいて、前記シースの厚肉部のシース厚が薄肉部のシース厚の少なくとも1.5倍以上あることが好ましい。
また、この発明の光ファイバケーブルは、前記光ファイバケーブルにおいて、前記固着部を設けた箇所のシース表面に、少なくとも1個の突起部、識別用色帯又はへこみ部を設けたことが好ましい。
以上のごとき課題を解決するための手段から理解されるように、この発明の光ファイバケーブルによれば、スロットコア内に少なくとも1本の線状体又は帯状体をY軸及び/又はその近傍に実装し、さらに、溝を挟んで対向位置のシース内に少なくとも1本の線状体又は帯状体をY軸及び/又はその近傍に実装している構造であるので、ケーブルの曲げ方向をY軸上がケーブル曲げ中立線となるように頑強に規定することができるため、ケーブルの曲げ、捻れ等の敷設環境に対しても伝送損失特性の劣化を防止することができる。
さらに、細幅の縦添えテープでスロットコアの全周を覆わないで開口部を部分的に縦添えして押さえ、さらに、縦添えテープで覆われていない部分のスロットコアの一部がシースと部分的に固着した固着部を有する構造としたことで、スロットコアの突き出し不良を防止でき、かつ中間後分岐作業性を向上させることができる。その結果、光ファイバケーブルで構成された加入者側線路において加入者対応としての中間後分岐作業が容易となるので、加入者回線開通までの工期短縮が可能となる。
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1を参照するに、第1の実施の形態に係る光ファイバケーブル1は1溝スロット型の光ファイバケーブルであり、基本的には、光ファイバ3を内部に収納するための1つの溝5を備えたスロットコア7と、このスロットコア7の周囲を被覆するシース9と、を備えており、上記のシース9は例えばポリエチレン樹脂などの樹脂からなり、溝5の開口部11の側のシース厚が溝5の開口部11の側と反対側のシース厚よりも相対的に厚くした厚肉部13を有する偏心シース構造としている。言い換えれば、溝5の開口部11の側と反対側のシース9は前記厚肉部13より薄肉部15となっている。
より詳しくは、光ファイバケーブル1の長さ方向に垂直な断面において、前記溝5の開口部11の側のシース厚が最大シース厚(厚肉部13)となると共に前記溝5の開口部11の側と反対側のシース厚が最小シース厚(薄肉部15)となる。
上記構成の1溝スロット型の光ファイバケーブル1にあって、当該シース9の長さ方向に垂直な断面においてシース(ケーブル)中心Cを通り前記溝5の開口部11の中央を結ぶ方向をY軸とし、シース(ケーブル)中心Cを通り前記Y軸に直交する方向をX軸としたとき、前記Y軸がケーブル曲げ中立線となるように、少なくとも1本の線状体又は帯状体としての例えば抗張力体17を前記溝5の開口部11の側と反対側の位置でスロットコア7の内部にY軸上及び/又はその近傍に配設し、かつ、少なくとも1本の線状体又は帯状体としての例えば抗張力体19を前記溝5の開口部11の側のシース9の厚肉部13の内部にY軸上及び/又はその近傍に配設している。
すなわち、上記の抗張力体17と抗張力体19とからなる2本以上の複数の線状体がY軸上及び/又はその近傍に図1において上下に配置されることにより、必然的にY軸がケーブル曲げ中立線となる。ちなみに、2本以上の線状体を実装するとしても、これらの線状体の実装位置が互いに接近しすぎると、ケーブルの曲げ方向が安定せず、伝送特性を劣化させる可能性が懸念されるが、この実施の形態では上述したように抗張力体17と抗張力体19がY軸上で前記溝5を挟んで対向位置に配置されているので、ケーブルの曲げ方向を頑強に規定できる。
なお、上述したY軸の近傍とは、例えば一対の線状体がY軸を挟んでその近傍に対向するように配置することで、Y軸がケーブル曲げ中立線となる。
また、抗張力体17と抗張力体19としては、前述した線状体に限らず、帯状体であっても良く、材質は鋼線やFRPなどを用いることができる。上記の帯状体とは、断面が偏平形状、楕円形状、あるいは長方形などの矩形状で、長尺の帯状のものをいう。
また、第1の実施の形態ではスロットコア7の溝5が断面円形であるが、溝5の断面形状は断面円形に限定されるものではない。この溝5の内部に1本以上の光ファイバ3が収納されるもので、図1では光ファイバ3としては、合計10枚の光ファイバテープ心線が収納されている。なお、光ファイバ3が溝5の内部に収納されるとき、光ファイバ3の周囲は空隙であっても、あるいは緩衝材が介在されていても良い。このいずれの場合でも、溝5内に収納する光ファイバ3の位置は前記Y軸にほぼ一致するように配設されていることが望ましい。
なお、光ファイバ3としては、光ファイバ素線、光ファイバ心線又は光ファイバテープ心線などが用いられる。
また、前記スロットコア7の溝5の開口部11を覆い、かつ、スロットコア7の全周は覆わない幅を有する縦添えテープ21が縦添えされている。なお、縦添えテープ21には粗巻き等で押さえ巻きをすることなく、直にシース9が施されている。なお、縦添えテープ21の材質としては、不織布、PETテープなどのプラスチックテープなどが挙げられる。
また、前記縦添えテープ21で覆われていない部分の前記スロットコア7は、シース9と部分的に固着した固着部23を有している。例えば、この固着部23は、スロットコア7の周方向の一部がケーブルの長さ方向に連続的または間欠的にシース9と固着している。より具体的には、前記固着部23は、図1に示されているように、縦添えテープ21で覆われていない部分のスロットコア7の一部に、この第1の実施の形態では薄肉部15に突起部25を設け、この突起部25でシース9と熱融着している。なお、前記突起部25はシース9の外表面までは突き出されていない。
上記構成により、この第1の実施の形態の光ファイバケーブル1の作用、効果を説明する。
光ファイバケーブル1の曲げ方向が規定されることについて説明すると、抗張力体17と抗張力体19との2本の線状体の関係で、抗張力体17と抗張力体19を結ぶY軸上をケーブル曲げ中立線にしてX軸上の曲げ中心から任意の曲率半径でX軸方向の曲がり(図1において横曲げ)となる。
ちなみに、例えばケーブル中心Cを通るX軸をケーブル曲げ中立線にして、Y軸上の曲げ中心から曲率半径でY軸方向に曲げ(図1において縦曲げ)ようとしても、実際には2本の抗張力体17と抗張力体19との関係で上記の縦曲げは生じ難いものである。
したがって、光ファイバケーブル1は、ケーブル曲げ方向が溝5の深さ方向のY軸に対して90°の角度をなす方向にのみ規制されるので、光ファイバ3の実装位置はケーブル曲げ中立線の位置(Y軸)にほぼ一致させることができる。
一般的に、光ファイバケーブル1の断面方向では、曲げの曲率半径の大きい側(曲げの外側)の光ファイバ3は伸び、逆に曲げの曲率半径の小さい側(曲げの外側)の光ファイバ3は縮むので、マクロベンドが発生し、伝送損失の増加が生じるのであるが、この第1の実施の形態では、光ファイバケーブル1がX軸方向に曲げられても、光ファイバ3がケーブル曲げ中立線となるY軸上にほぼ一致しているので、光ファイバ3には伸縮が生じないことになる。
その結果、光ファイバ3に伸び歪を印加することや、光ファイバ3の余りによる蛇行を防ぐことが可能となるので、光ファイバ3の伸び歪の低減のために溝5の内部に光ファイバ3の余長を確保したり、また、光ファイバ3の蛇行による損失増加を防ぐためにクリアランスを大きく設計したりする必要がないことから、良好な伝送特性のある細径ケーブル設計を達成することができる。
以上のことを簡単にまとめると、この第1の実施の形態では、スロットコア7内に1本の線状体としての例えば抗張力体17を実装し、さらに、溝5を挟んで対向位置のシース9内にもう1本の線状体としての例えば抗張力体19を実装している構造であるので、ケーブルの曲げ方向をY軸上がケーブル曲げ中立線となるように頑強に規定することができるため、ケーブルの曲げ、捻れ等の敷設環境に対しても伝送損失特性の劣化を防止することができる。
また、溝5の開口部11の側の厚肉部13のシース厚が溝5の開口部11の側と反対側の薄肉部15のシース厚より相対的に厚いので、この部分の機械的強度が補填されているため、外力が作用しても溝5の内部の光ファイバ3の損傷を防ぐことができる。しかも、溝5の開口部11の側と反対側の薄肉部15の機械的強度は、溝5の開口部11の側と反対側のスロットコア7の底部で補填されることになる。上記のことから、前記シース9の厚肉部13のシース厚は薄肉部15のシース厚の少なくとも1.5倍以上であることが望ましい。
また、スロットコア7は固着部23でシース9と一体化しているので、光ファイバケーブル1の端末におけるスロットコア7の突き出し等の問題を防ぐことができる。
より詳しく説明すると、スロットコア7が上記の固着部23でシース9に固着されていないケーブル構造では、ケーブルを敷設した後の気温の変化等によりシース9が収縮し、相対的にスロットコア7がケーブルの端末から大きく突き出すという問題が認められる場合がある。また、ケーブルの長さ方向に垂直な断面で視た場合、ケーブルの曲げ、しごき等の外的要因によりスロットコア7がシース9の内側で自転し、スロットコア7の溝5の開口部11の位置とシース9の厚い箇所(厚肉部13)の位置が部分的にずれてしまうために、機械的強度を損ねることも懸念される。
さらに、上記の問題を解決するために、ケーブル製造時にシース9とスロットコア7を接着させることができるが、安易にシース9とスロットコア7を接着させてしまうと、中間後分岐作業の際にシース9をスロットコア7から剥がしにくくなり、中間後分岐作業性が著しく劣るという問題が生じてくる。
しかし、この第1の実施の形態ではスロットコア7が固着部23でシース9と部分的に一体化しているので、ケーブル端末におけるスロットコア7の突き出しや中間後分岐作業性の低下等の問題点を解消することができる。
さらに加えて、中間後分岐作業においては、シース9にカッタ刃を入れる位置と固着部23を一致させるならば、固着部23を削ってしまうので、スロットコア7とシース9を容易に分離することが可能となり、中間後分岐作業を劣化させる要因がなくなる。
以上のことから、この第1の実施の形態の光ファイバケーブル1で構成された加入者側線路において加入者対応としての中間後分岐作業が容易となるので、加入者回線開通までの工期短縮が可能となる。
次に、この第1の実施の形態の光ファイバケーブル1における中間後分岐作業の手順について説明する。
中間後分岐作業で、光ファイバケーブル1から光ファイバ3の口出しを行うときは、図2(A)に示されているように、ナイフなどの切裂き工具27の刃先を光ファイバケーブル1の両側面のシース9に当てて、図2(B)に示されているように切り裂いてシース9を上下に2分割する。このとき、特に、切裂き工具27の刃先はスロットコア7の溝5に対して両側に位置するシース9に当てることで、切裂き工具27の刃先がスロットコア7の側面に当たるので溝5の内部の光ファイバ3を傷つけることを防止できる。
さらには、図示しないリップコード(引裂き紐)が、スロットコア7の両側面とシース9との間でケーブルの長さ方向に埋設されているときは、上述したように切裂き工具27の刃先で前記リップコードを取り出してからこのリップコードを引っ張ることで容易にシース9を引き裂くことができる。
次いで、図2(C)に示されているようにシース9を上下に分離させて引き裂き方向の際部をニッパ等の切断工具27で上下に分離したシース9と共に抗張力体19もを切断することで、図2(D)に示されているようにスロットコア7の溝5の開口部11が開放されるので、図2(E)に示されているように、溝5の開口部11から所望の光ファイバ3を容易に取り出すことができる。
次に、第1の実施の形態を試作した実施例1の試験ケーブル29と、この実施例1と比較するために試作した比較構造の比較例1〜比較例5の試験ケーブル29におけるスロットコア7の引抜力、スロットコア7の突き出し量、中間後分岐作業性、伝送損失特性について比較検討した。その評価結果は表1に示されている通りである。
なお、スロットコア7の引抜力を試験するためのスロットコア7の引き抜き試験方法は、図3に示されているように、シース(ケーブル)長Lが400mmの試験ケーブル29に対して当該試験ケーブル29の左端のシース9のみを固定し、右端から突出させたスロットコア7だけを引き抜き速度100mm/minで矢印方向に引っ張り、その引張り強度(引抜力)の最大値を計測する。
また、中間後分岐作業性の判定基準は、問題なく良好に作業を行うことができ、既存のケーブルより容易に作業を行うことができたときを「良好」の○とし、作業は可能であるが手間がかかり、既存のケーブル構造との有意差が認められなかったときを「普通」の△とし、中間後分岐作業ができないときは「不良」の×とした。
Figure 0005329108
表1から分かるように、実施例1では、スロットコア7の引抜力が98N以上であり、スロットコア7の突き出し量が1mm以下で殆ど無しであった。中間後分岐作業性が○の良好であり、伝送損失特性は0.21dB/km@1.55μmで良好であった。
比較例1では、スロットコア7とシース9の全面を固着したもので、他のデータは実施例1と同じであったが、中間後分岐作業性が不良であった。
比較例2では、スロットコア7とシース9が固着されていないために、スロットコア7の引抜力は10N以下であり、スロットコア7の突き出し量は55mmもあった。他は実施例1と同じであった。
比較例3では、単にスロットコア7をシース圧力で押さえつけるものである。その結果は、スロットコア7の突き出し量は5mmであり、中間後分岐作業性が△であった。また、伝送損失特性は0.45dB/km@1.55μmで、良好ではなかった。
比較例4では、スロットコア7とシース9が固着されていないが、スロットコア7の外周にテープを螺旋状にラップ巻きしたので、スロットコア7の引抜力は85Nであったが、スロットコア7の突き出し量は5mmであり、中間後分岐作業性が押巻きテープの剥がし作業に手間がかかるために△であった。伝送損失特性は0.23dB/km@1.55μmで、ほぼ良好であった。
比較例5では、スロットコア7とシース9が固着されておらず、スロットコア7の外周全体をテープで縦添えし、その外周に粗巻き糸で粗巻きしたが、スロットコア7の引抜力は20Nであった。しかも、スロットコア7の突き出し量は36mmであり、中間後分岐作業性は粗巻き糸の除去作業に手間がかかるために△であった。伝送損失特性は0.21dB/km@1.55μmで、良好であった。
以上のことから、実施例1は、スロットコア7の引抜力、スロットコア7の突き出し量、中間後分岐作業性、伝送損失特性のすべてについて優れた効果があることが判明した。
なお、表1から分かるように、第1の実施の形態の光ファイバケーブル1の固着部23の固着力は、400mmのシース(ケーブル)長に対するスロットコア7の引抜力で示すとき、98N以上であることが望ましい。
次に、前述した第1の実施の形態の光ファイバケーブル1を基本にして、他の実施の形態について説明する。その際、第1の実施の形態の光ファイバケーブル1と異なる点を説明し、同様の部材は同符号を付して詳しい説明は省略する。
第2の実施の形態では、図4に示されているように、前記固着部23は、スロットコア7の周方向又は長さ方向の一部の表面が予めざらつかせて形成され、このざらついた表面とシース9を熱融着して設けた熱融着部31で構成することができる。その他は、前述した第1の実施の形態と同様である。
また、第3の実施の形態では、前記固着部23は、スロットコア7の周方向又は長さ方向の一部の表面を予めシース9の温度と同程度以上で予熱して軟化させ、この軟化した表面とシース9を熱融着して構成することができる。その他は、前述した第1の実施の形態と同様である。
また、第4の実施の形態では、図5に示されているように、前記固着部23は、スロットコア7の周方向又は長さ方向の一部とシース9を接着剤等の固着材33で固着して構成することができる。その他は、前述した第1の実施の形態と同様である。
また、第5の実施の形態では、図6に示されているように、前記固着部23は、スロットコア7の周方向又は長さ方向の一部に凹部35を設け、この凹部35に凸状のシース9を充填することで前記凹部35と記シース9を熱融着して構成することができる。その他は、前述した第1の実施の形態と同様である。
また、第6の実施の形態では、図7に示されているように、前記固着部23は、縦添えテープ21で覆われていない部分のスロットコア7とシース9の間の例えば縦添えテープ21の両端に、予め接着剤などの固着材を塗布した固着材付きリップコード37(引裂き紐)を実装することで、この固着材付きリップコード37の固着材によりシース9とスロットコア7とを固着して構成することができる。その他は、前述した第1の実施の形態と同様である。
この第6の実施の形態の場合は、中間後分岐作業のときに、上記の固着材付きリップコード37を引っ張るとシース9を分割できると同時に、引っ張られた固着材付きリップコード37の固着部分がなくなるので、スロットコア7とシース9を容易に分離することが可能となり、中間後分岐作業を向上させることができる。
また、第7の実施の形態では、図8に示されているように、スロットコア7の溝5内には、少なくとも1本以上の吸水性ヤーン39を実装することができる。これにより、防水性能を有する光ファイバケーブル1とすることができる。その他は、前述した第1の実施の形態と同様である。
また、第8の実施の形態では、前述した第1の実施の形態の光ファイバケーブル1における縦添えテープ21に換えて図1に示されているように例えば吸水性不織布などの吸水テープ41とすることで、防水性能を有する光ファイバケーブル1とすることができる。その他は、前述した第1の実施の形態と同様である。
また、第9の実施の形態では、図8に示されているように、第7の実施の形態と同様に、スロットコア7の溝5内には、少なくとも1本以上の吸水性ヤーン39を実装すると共に、縦添えテープ21に換えて例えば吸水性不織布などの吸水テープ41とすることで、より一層高い防水性能を有する光ファイバケーブル1とすることができる。その他は、前述した光ファイバケーブル1と同様である。
また、第10の実施の形態では、図9及び図10に示されているように、縦添えテープ21の長さ方向に予め間欠的に間欠固定材43を固着することで、前記間欠固定材43によりスロットコア7の溝5内の1本以上の光ファイバ3を間欠的に固定するように構成することができる。その他は、前述した第1の実施の形態と同様である。
より詳しく説明すると、上記の間欠固定材43としては、損失特性が劣化するような側圧を与えず、かつ光ファイバ3の移動を抑制できるソフトな材料、つまりヤング率が800Mpa以下で、かつ、常温の粘度が500cps以上の紫外線硬化型樹脂(UV樹脂)で構成されることが望ましい。ヤング率が800Mpaを越えたものでは、損失特性が劣化するような側圧を与える可能性が生じるから望ましくない。
さらに、前記間欠固定材43の間欠充填の間隔(充填ピッチ)が100mm〜2000mmの範囲にあり、かつ、前記スロットコア7の溝5内に実装されている光ファイバ3の引抜力が5N/10m以上を有していることが望ましい。
なお、上記の間欠固定材43を装着する方法について簡単に説明すると、1本以上の光ファイバ3が1溝スロットコア7の溝5の内部に開口部11から収納される。一方、縦添えテープ21はスロットコア7と接する面をあらかじめ反転させ、スロットコア7と接する面が上面になるように送り出される。この縦添えテープ21には、上方から間欠固定材43としての例えばUV樹脂が間欠的に噴射、供給される。UV樹脂は縦添えテープ21の上に幅方向でほぼ中央に乗るように、且つ前記縦添えテープ21の長手方向において間欠的に塗布される。その直後に、縦添えテープ21上の各UV樹脂は、縦添えテープ21の送り方向の前方に備えたUVランプから照射される紫外線により硬化して縦添えテープ21に固着することになる。
次いで、前記縦添えテープ21は走行途中で反転されることで、縦添えテープ21に固着されたUV樹脂が下向きになる。この反転した縦添えテープ21がスロットコア7の溝5の開口部11を覆うようにして縦添えされる。このとき、縦添えテープ21に塗布されたUV樹脂がスロットコア7の溝5の内部に押し込まれる。
次に、上記のスロットコア7は、溝5の開口部11が縦添えテープ21で覆うように縦添えされた状態で図示しない押出成形機で前記縦添えテープ21とスロットコア7の周囲を偏心した偏肉シース9で被覆されて押出成形されることにより図9及び図10の光ファイバケーブル1が成形される。
次に、上記の第10の実施の形態に係る試験例1〜試験例8の光ファイバケーブル1を試作し、それぞれの光ファイバ3の移動、間欠固定材43、充填ピッチ、伝送損失特性、光ファイバ3の引抜力、中間後分岐作業性について比較検討した。その評価結果は表2に示されている通りである。
なお、中間後分岐作業性の判定基準は、表1の場合と同様であり、問題なく良好に作業を行うことができ、既存のケーブルより容易に作業を行うことができたときを「良好」の○とし、作業は可能であるが手間がかかり、既存のケーブル構造との有意差が認められなかったときを「普通」の△とし、中間後分岐作業ができないときは「不良」の×とした。
Figure 0005329108
表2から分かるように、伝送損失特性の目標値(0.25dB/km以下)と光ファイバ3の引抜力の目標値(5N/10m以上)と中間後分岐作業性を満たしているのは、試験例3、試験例4、試験例6でいずれも間欠固定材43がUV樹脂である。なお、間欠固定材43がホットメルトである試験例7と、間欠固定材43がヤーン充填である試験例8は、上記の目標値を満たしていない。
より詳しく表2を観ると、間欠固定材43のヤング率が1000Mpaである試験例2と試験例5と試験例8は、いずれも伝送損失特性の目標値を満たしておらず、ヤング率が800Mpa以下である試験例1と試験例3と試験例4と試験例6は、いずれも伝送損失特性の目標値を満たしている。したがって、伝送損失特性に影響を与える間欠固定材43のヤング率は、800Mpa以下であることが望ましいと言える。
また、間欠固定材43の粘度が300cpsである試験例1と試験例2は、いずれも光ファイバ3の引抜力の目標値を満たしておらず、間欠固定材43の粘度が500cps以上である試験例3と試験例4と試験例5と試験例6は、いずれも光ファイバ3の引抜力の目標値を満たしている。したがって、光ファイバ3の引抜力に影響を与える間欠固定材43の粘度は、500cps以上であることが望ましいと言える。
また、第11の実施の形態では、図11に示されているように、ケーブルの長さ方向に垂直な断面において、ケーブルの中心点をOとし、スロットコア7の溝5の開口部11の幅の点をL,L’とし、∠LOL’の角度をθとしたとき、30°≦θ≦90°であることが望ましい。しかも、前記縦添えテープ21の幅のエッジ点をT、T’とし、∠TOT’ の角度をγとしたとき、θ<γ<4×θであることが望ましい。前記θが90°を越えると、シース9が溝内部に落ちこみやすくなり、伝送特性が悪くなるの理由でよくない。また、γが4×θをを越えると、縦添えテープ21がスロットコア7を覆う面積が大きくなり、スロットコア7の密着力低下につながるの理由でよくない。その他は、前述した第1の実施の形態と同様である。
また、第12の実施の形態では、前記固着部23を設けた箇所のシース9の表面には、図12(A)に示されているように、少なくとも1個の突起部45を固着部識別手段として設けることができる。これにより、固着部23の位置が光ファイバケーブル1の外観から認識することができる。これと同様にして、図12(B)に示されているように前記固着部23を設けた箇所のシース9の表面に識別用色帯47を設けることができる。あるいは図12(C)に示されているように、前記固着部23を設けた箇所のシース9の表面にへこみ部49を設けることができる。
なお、前述した第2の実施の形態〜第12の実施の形態は、第1の実施の形態の光ファイバケーブル1に基づいているが、相互に組み合わせて用いることができる。さらに、これらの実施の形態を相互に組み合わせたものも含めた光ファイバケーブル1には、中間後分岐作業性を向上するために、リップコード(引裂き紐)がスロットコア7の両側面とシース9との間でケーブルの長さ方向に埋設されるように構成しても良い。
図13は図1に代わる実施の形態が示されている。図13において、図1における抗張力体17、19の代わりに帯状体20を、スロットコア7とシース9にY軸上に設けたものであり、それ以外の構成は全く同じであるので、詳細な説明は省略する。
この発明の第1の実施の形態の光ファイバケーブルの断面図である。 (A)〜(E)は、図1の光ファイバケーブルの口出しを行うときの動作説明図である。 スロットコアの引き抜き試験方法を示す概略説明図である。 この発明の第2の実施の形態の光ファイバケーブルの断面図である。 この発明の第4の実施の形態の光ファイバケーブルの断面図である。 この発明の第5の実施の形態の光ファイバケーブルの断面図である。 この発明の第6の実施の形態の光ファイバケーブルの断面図である。 この発明の第8及び第9の実施の形態の光ファイバケーブルの断面図である。 この発明の第10の実施の形態の光ファイバケーブルの断面図である。 図9のY軸を通過する縦断面図である。 この発明の第11の実施の形態の光ファイバケーブルの断面図である。 (A)〜(C)は、固着部を設けた位置を外観で認識するための固着部識別手段を示す部分的な断面図である。 図1に代わる実施の形態の光ファイバケーブルの断面図である。
符号の説明
1 光ファイバケーブル
3 光ファイバ
5 溝
7 スロットコア
9 シース
11 開口部
13 厚肉部
15 薄肉部
17、19 抗張力体(線状体)
20 帯状体
21 縦添えテープ
23 固着部
25 突起部(固着部23)
31 熱融着部(固着部23)
33 固着材(固着部23)
35 凹部(固着部23)
37 固着材付きリップコード(引裂き紐、固着部23)
39 吸水性ヤーン
41 吸水テープ
43 間欠固定材

Claims (5)

  1. 光ファイバを内部に収納する1つの溝を備えたスロットコアと、このスロットコアの周囲を被覆するシースと、を備えると共に、前記シースが前記溝の開口部側のシース厚を前記溝の開口部側と反対側の薄肉部のシース厚よりも相対的に厚くした厚肉部を有する偏心シース構造である光ファイバケーブルにおいて、
    シースの長さ方向に垂直な断面においてシース中心を通り前記溝の開口部の中央を結ぶ方向をY軸とし、前記シース中心を通り前記Y軸に直交する方向をX軸としたとき、前記Y軸がケーブル曲げ中立線となるように前記スロットコアの内部と前記シースの厚肉部にそれぞれ少なくとも1本の線状体又は帯状体をY軸及び/又はその近傍に配設し、かつ、前記溝内に収納する光ファイバの位置が前記Y軸にほぼ一致するように配設し、
    前記スロットコアの溝の開口部を覆い、かつ、前記スロットコアの全周は覆わない幅を有する縦添えテープを縦添えすると共に、前記縦添えテープで覆われていない部分の前記スロットコアと前記シースを部分的に固着した固着部を有し
    前記固着部は、前記縦添えテープの長さ方向に、前記スロットコアの溝内の1本以上の光ファイバを間欠的に固定すべく、予め間欠的に間欠固定材を固着してなることを特徴とする光ファイバケーブル。
  2. 前記間欠固定材が、ヤング率が800Mpa以下で、かつ、常温の粘度が500cps以上からなる紫外線硬化型樹脂で構成されると共に、前記間欠固定材の間欠充填の間隔が100mm〜2000mmの範囲にあり、かつ、前記スロットコアの溝内に実装されている光ファイバの引抜力が5N/10m以上を有していることを特徴とする請求項1記載の光ファイバケーブル。
  3. シースの長さ方向に垂直な断面において、シースの中心点をOとし、前記スロットコアの溝の開口部の幅の点をL,L’とし、∠LOL’の角度をθとしたとき、30°≦θ≦90°であり、
    かつ、前記縦添えテープの幅のエッジ点をT、T’とし、∠TOT’ の角度をγとしたとき、θ<γ<4×θであることを特徴とする請求項1または2に記載の光ファイバケーブル。
  4. 前記シースの厚肉部のシース厚が薄肉部のシース厚の少なくとも1.5倍以上あることを特徴とする請求項1から3のいずれか1つに記載の光ファイバケーブル。
  5. 前記固着部を設けた箇所のシース表面に、少なくとも1個の突起部、識別用色帯又はへこみ部を設けたことを特徴とする請求項1から4のいずれか1つに記載の光ファイバケーブル。
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