以下、本発明のいくつかの実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。本発明は、感光体温度の安定を待つことなく感光体の部分的な露光量を補正して画像形成を開始する限りにおいて、実施形態の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施形態でも実施できる。
従って、感光体から記録材へトナー像を転写する実施形態の方式には限定されず、記録材搬送体に担持させた記録材へトナー像を転写する直接転写方式、中間転写体に担持させたトナー像を記録材へ転写する中間転写方式でも実施できる。
本実施形態では、トナー像の形成/転写に係る主要部のみを説明するが、本発明は、必要な機器、装備、筐体構造を加えて、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機等、種々の用途で実施できる。
なお、特許文献1、2に示される画像形成装置の一般的な構成及び制御については、図示を省略して重複する説明を省略する。また、請求項で用いた構成名に括弧を付して示した参照記号は、発明の理解を助けるための例示であって、実施形態中の該当する部材等に構成を限定する趣旨のものではない。
<第1実施形態>
図1は第1実施形態の画像形成装置の構成の説明図である。
図1に示すように、第1実施形態の画像形成装置100は、感光ドラム1に形成したブラックトナー像を記録材Sに転写して、定着装置13により定着させる高速モノクロ画像形成装置である。
感光ドラム1を囲んで、帯電装置2、露光装置3、電位センサ4、現像装置5、転写装置7、分離装置8、温度センサ11、クリーニング装置9、及び帯電前露光装置10が配置されている。
感光ドラム1は、アルミニウム製シリンダの外周面に帯電極性が正極性の感光層を形成されて回転自在に支持され、矢印R1方向に回転する。
帯電装置2は、一次電流発生装置106から正極性の直流電圧を印加されてコロナ放電を発生し、荷電粒子を照射して感光ドラム1の表面を一様な正極性の暗部電位VDに帯電させる。
露光装置3は、画像データを展開した走査線画像データをON−OFF変調したレーザービームを不図示の回転ミラーで走査して、帯電した感光ドラム1の表面電位を明部電位VLに低下させた静電像を形成する。
現像装置5は、磁性トナーを含むブラックの一成分現像剤を帯電させ、固定磁極の周囲で感光ドラム1とカウンタ方向に回転する現像スリーブ15に担持させて感光ドラム1を摺擦する。感光ドラム1と現像スリーブ15との間には微小な間隔があいており、この両者の間隔で現像が行われる。
現像バイアス発生装置109は、正極性の直流電圧に交流電圧を重畳した現像電圧を現像スリーブ15に印加して、感光ドラム1の明部電位VLの部分へトナーを付着させて、静電像を反転現像する。交流電圧を重畳することで、現像効率を向上させ、濃度が高く、鮮明なトナー像を形成できる。
転写装置7は、転写電流発生装置110から負極性の電圧を印加されてコロナ放電を発生し、荷電粒子を照射して記録材Sを負極性の電位に帯電させる。これにより、正極性に帯電して感光ドラム1に担持されたトナー像は、搬送用レジストローラ6によって感光ドラム1に重ねて転写装置7との間隔を搬送される記録材Sへ静電的に転写される。
分離装置8は、交流電圧を印加されて、荷電粒子を照射して、記録材Sの余分な電荷を除電して、感光ドラム1から曲率分離させる。感光ドラム1から分離された記録材Sは、搬送部12によって定着装置13へ搬送される。
定着装置13は、トナー像を担持した記録材Sを加熱加圧して、トナー像を記録材Sに定着する。トナー像が定着された記録材Sは、不図示の排紙装置によって画像形成装置100の外部へ排出される。
クリーニング装置9は、クリーニングブレードを感光ドラム1に摺擦して、感光ドラム1に担持されたまま転写装置7、分離装置8との対向面を通過した転写残トナーを除去する。
帯電前露光装置10は、感光ドラム1の表面を一様に露光して前回のトナー像形成で書き込まれた静電像を消去する。
電位センサ4は、帯電装置2によって帯電された感光ドラム1の表面電位(暗部電位VD)を検出する。電位制御装置108は、電位センサ4の出力を検出して、本体制御装置101を経由して一次電流発生装置106による帯電装置2の制御にフィードバックする。
本体制御装置101は、電位センサ4の出力を検出して、帯電後に露光を受けて低下した表面電位(明部電位VL)を測定する。
画像読取装置102は、原稿画像を読み取って画像データを生成する。また、所定濃度のベタ画像の測定用画像を読み取って濃度分布のデータを生成する。
本体制御装置101は、画像処理装置103を制御して画像データを展開して走査線に沿った露光信号を発生する。レーザー駆動回路107は、露光信号を用いて露光装置3を制御して感光ドラム1の表面を走査露光する。
画像処理装置103は、一様な階調の静電像が書き込まれた際の感光ドラム1の明部電位VLの分布が均されるように、感光ドラム1の主走査方向と副走査方向の組み合わせ位置ごとに露光装置3による露光強度を調整する。
<反転現像方式>
図2は反転現像方式の説明図である。
図1を参照して図2に示すように、画像形成装置100では、正極性に帯電する感光ドラム1と正極性に帯電するトナーとを用いて、反転現像方式によりトナー像を形成する。このとき、感光ドラム1上のトナーが付着しない部分の暗部電位VDは、500V程度であり、トナーが付着する部分の明部電位VLは50V程度である。また、現像スリーブ15に印加される現像電圧の直流電圧Vdcは250V程度である。
トナー像が形成されるのは、帯電装置2で帯電された後、露光装置3で露光された明部電位VLの部分である。明部電位VLと直流電圧Vdcとの差電位が現像コントラストVcontとなって、現像装置5で現像する際にトナーの電荷によって埋め合わせられる。従って、明部電位VLには、現像コントラストVcontを相殺するだけのトナー量が付着して画像濃度を形成する。
一方、帯電装置2で帯電された後、露光装置3で露光されなかった暗部電位VDの部分は、直流電圧Vdcとの差電位が現像装置5で現像する際にカブリ取り電位Vbackとなる。カブリ取り電位Vbackは、不足してトナーが付着する場合を除けば、基本的にトナーが付着しないので、画像濃度には影響しない。つまり、感光ドラム1の帯電電位にムラがあっても、十分なカブリ取り電位Vbackを確保できるようなムラであれば、画像濃度に影響が無い。
従って、画像形成装置100では、画像形成時の感光ドラム1の電位ムラが現像装置5で現像されたトナー像のトナー量ムラを経て画像の濃度ムラとなる明部電位VLのムラを補正する。感光ドラム1の表面の部分ごとの電位特性差を露光量差に置き換える補正を加えて画像データをデジタル露光することにより、一様な濃度階調に露光された際の感光ドラム1の表面の明部電位VLを一様に均している。
<温度検出手段>
図3は画像形成装置を起動した際の感光ドラムの温度変化の説明図である。
図1を参照して図3に示すように、温度センサ11は、感光ドラム1の表面温度を検出し、ドラムヒータ14(加熱手段)は、感光ドラム1の内周面を加熱する。温度制御装置111は、温度センサ11の出力をフィードバックしてドラムヒータ14を制御して、感光ドラム1の表面温度を一定に保って雰囲気中の絶対水分量を調整し、結露を避けた安定的な静電像の形成を可能にする。
本体制御装置101は、画像形成時には、電源投入と同時にドラムヒータ14に対する通電を開始し、最終的には、温度センサ11とドラムヒータ14とにより、感光ドラム1の表面温度を所定温度の50度C±1度Cの範囲で温調する。このときの温調温度は、感光ドラム1の光半導体特性と現像装置5に充填されるトナーへの熱影響等を含めて総合的に判断される。
図3は、室温25度Cで、感光ドラム1の表面温度も25度Cの状態から画像形成装置100に電源投入した際の昇温曲線である。ドラムヒータ14による加熱動作はスタンバイ時に停止されるので、電源投入時からの感光ドラム1の温度推移によって、感光ドラム1の表面全体が画像形成に最適な温調温度50度C±1度Cになるためには10分弱が必要である。
しかし、最近における省エネルギー化の流れのなかで、画像形成装置100は、電源投入から画像形成開始までの時間が数十秒である。画像形成装置100では、感光ドラム1が最適温度に温調される前に画像形成が開始されるので、過渡的な温度上昇の過程で最適な画像形成を行う必要がある。
<明部電位ムラの測定>
図4は一様に露光した感光ドラムの明部電位ムラの説明図、図5は昇温後に測定された明部電位分布データの説明図、図6は帯電電流量及び基準露光量の設定のフローチャートである。図4中、(a)は感光ドラム全周の明部電位分布、(b)は主走査方向の明部電位分布である。
図1に示すように、本体制御装置101は、感光ドラム1の電位特性のムラを補正するために、感光ドラム1の平面的な電位特性のムラのデータを測定する。本体制御装置101は、感光ドラム1の温度が温調温度50度C±1度Cに保持されている状態で、電位センサ4を用いて、感光ドラム1の明部電位VLの分布を測定して像担持体電位特性ムラデータメモリ105に取り込む。
電位センサ4は、電位制御装置108に駆動されて、感光ドラム1の主走査方向の30mmごとの位置へ移動して位置決められる。電位センサ4は、主走査方向位置の各位置において、感光ドラム1の副走査方向位置の回転角度10度ごとの各位置で明部電位VLを測定する。感光ドラム1の副走査方向位置の各位置は、感光ドラム1の周面に設けた原点指標からの回転角度で識別される。
現像電圧をOFFしてトナー付着を回避した状態で、感光ドラム1を回転させて所定の暗部電位VDに帯電し、露光装置3を出力一定にしてベタ黒の静電像を書き込み、電位センサ4の出力を連続的に検出する。そして、原点指標の検出タイミングを起点とする所定時間間隔で電位センサの出力を取り込んで電位検出し、図4の(a)に示すような、感光ドラム1の表面の二次元的な明部電位VLの分布の検出結果を取得する。
明部電位VLの電位検出における物理的な取り込み間隔は、感光ドラム1の電位特性のムラが持つ周期性と電位特性ムラ補正の要求精度、像担持体電位特性ムラデータメモリ105の容量に応じて決定される。
図5に示すように、第1実施形態では、感光ドラム1の電位特性を画像形成装置100内で測定して、電位特性のムラの補正マップを自動的に適時更新している。そして、最新の補正マップに従って感光ドラム1の平面的な各部における露光強度を補正している。感光ドラム1の温度が所定温度のときに、像担持体電位特性ムラデータメモリ105に記憶された露光条件下で露光された露光部電位(VL)に基づいて像担持体電位特性ムラデータメモリ105に記憶されている露光条件を更新する。像担持体電位特性ムラデータメモリ105には、感光体の周方向における位置情報に関連付けて感光体の主走査方向及び副走査方向の画像形成可能な全領域に亘る露光条件が明部電位VLの分布という形式で記憶されている。
しかし、感光ドラム1の製造工程において、感光ドラム1の電位特性を主走査方向位置と副走査方向位置との組み合わせの各位置で測定して電位特性のムラの補正マップを作製してもよい。このような補正マップを画像形成装置100の組み立て時に像担持体電位特性ムラデータメモリに付加してもよい。
また、実施例1では、記憶手段(105)に、感光体の温度が所定温度のとき感光体の露光部電位とそのばらつきを修正するための露光条件とを記憶させて、感光体の露光部電位が実質一様となる露光条件を記憶させた。しかし、感光体の温度が所定温度のとき感光体の露光部電位が実質一様となるように設定された主走査方向及び副操作方向の各位置における露光強度のマップを記憶させてもよい。
感光ドラム1は、周方向のホームポジションを示す不図示の指標を持つ。識別装置112は、光学的に指標を検出して、ホームポジションを基準にして、露光装置3の副走査方向における感光ドラム1上の位置を特定する。レーザー駆動回路107は、露光装置3の主走査方向における感光ドラム1上の位置を、その中央を基準に特定する。
さらに、電位特性データを取り込む際には、温度センサ11及びドラムヒータ14により、感光ドラム1を温調温度に保つ。そして、温調温度から2度C以上離れた温度を温度センサ11が検出した場合にはデータの取り込みを不可能として、操作部104にその旨を表示する。
ところで、感光ドラム1の電位特性データを取り込む場合、まず始めに、電位特性データの基準となる帯電装置2の帯電電流量と、露光装置3の露光量とを決める必要がある。
電位センサ4を用いて、回転する感光ドラム1の主走査方向の中央部における副走査方向1周分の平均電位を測定する。最初に、現像装置5の対向位置において帯電後の暗部電位VDの平均電位が500Vになるように、帯電装置2の帯電電流量を設定する。その後、現像装置5の対向位置において帯電・露光後の明部電位VLが50Vになるように、露光装置3の露光量を設定する。
電位センサ4から現像装置5の対向位置までの移動時間に相当した暗減衰によって、このとき電位センサ4で測定されるべき暗部電位VLは520V、明部電位VLは65Vである。
図1を参照して図6に示すように、始めに、一次電流発生装置106により帯電装置2に帯電電流をかけて感光ドラム1を帯電する(S11)。このとき、電位センサ4は、感光ドラム1の主走査方向の中央部に位置して、そのときの感光ドラム1上の電位を測定する(S12)。ここで、電位センサ4の測定値が周方向の平均で520V±2Vになるように(S13のYES)、電位制御装置108、本体制御装置101を介して一次電流発生装置106の出力が決定される(S21〜S23)。
このとき決定された一次電流発生装置106の出力は、基準帯電電流量として本体制御装置101内のメモリに記憶される(S14)。
基準帯電電流量が決定された後、基準帯電電流量で感光ドラム1を帯電装置2で帯電しながら、露光装置3で露光する(S15)。ここで、電位センサ4の測定値が周方向の平均で65V±2Vになるように(S17のYES)、本体制御装置101を介してレーザー駆動回路107の出力が決定される(S26〜S28)。
このときに決定されたレーザー駆動回路107の出力は、基準露光量として本体制御装置101内のメモリに記憶される(S18)。
そののち、基準帯電量および基準露光量を用いて、感光ドラム1を帯電装置2で帯電し、露光装置3で露光しながら、電位センサ4は、感光ドラム1の主走査方向に30mm間隔で移動し、そのときの各主走査位置での周方向1周分の電位特性データ測定する。そのときの電位特性データが、図5に示すように、像担持体電位特性ムラデータメモリ105に保存される。このようにして、図4の(a)に示すような電位特性のムラを補正するために必要となる感光ドラム1の平面的な電位特性データが更新される。
感光ドラム1の温度が所定温度のときに像担持体電位特性ムラデータメモリ(記憶手段)105に記憶された露光条件下で露光された露光部電位(VL)に基づいて像担持体電位特性ムラデータメモリ(記憶手段)105に記憶されている露光条件を更新する。
図5に示すように、像担持体電位特性ムラデータメモリ105内の電位特性データは、露光装置3の主走査方向座標i、副走査方向座標jを付してEijで示される。主走査方向座標iは、感光ドラム1の中央部からの距離で規定され、副走査方向座標jは、感光ドラム1の回転方向におけるホームポジションからの角度で規定される。
<露光量補正>
図7は一様に帯電露光した感光ドラムの電位分布の説明図、図8は一様に帯電露光した感光ドラムの主走査方向の電位分布の説明図、図9は露光量と明部電位の関係の説明図である。
本体制御装置101は、感光ドラム1の電位特性のムラに起因する画像の濃度ムラを補正するために、感光ドラム1にベタ画像の静電像を形成した際の明部電位ムラを、電位データ又は濃度データとして取り込む。そして、露光装置3で画像データを露光するときに、露光場所ごとの露光量を調整して、感光ドラム1の電位特性のムラを相殺させる。
図7に示すように、感光ドラム1の表面を一様に帯電させて一様な露光量で露光したとき、感光ドラム1には明部電位VLのムラが形成される。このような明部電位VLのムラは、感光ドラム1が帯電されるときの帯電のされ易さの面内ムラと、一定の露光量で電位が落ちる量のムラに起因する。
図8に示すように、感光ドラム1の主走査方向で明部電位VLがばらついて分布している場合を考える。このとき、画像形成に最適な帯電・露光後の明部電位VLが50Vであるため、一様に帯電・露光した場合の電位特性から、明部電位VLが50Vより高いところでは露光量を上げ、50Vより低いところでは露光量を下げる。これにより、明部電位VLのムラの均一化が行われる。
そして、露光装置3の各主走査において、このような露光量の補正を行うことにより、感光ドラム1の表面全体の電位特性のムラを相殺して、一様な明部電位VLの分布を形成する。さらに、一様に帯電・露光して画像形成をした画像の濃度分布を測定して、感光ドラム1の電位特性のムラを算出して露光量で補正することも可能である。
本体制御装置101は、画像処理装置103を制御して、感光ドラム1の電位特性のムラを露光装置3の露光量に変換する。
図1を参照して図9に示すように、露光装置3は、レーザー駆動回路107によってデジタル的に256段階にレーザー出力および露光動作が制御される。露光量が0のとき、帯電装置2によって帯電されて電位センサ4に検出される感光ドラム1の暗部電位VDは520Vである。露光量が180〜200の範囲で、感光ドラム1の明部電位VLは50V付近となる。
本体制御装置101は、電位センサ4の位置で520Vになるように帯電装置2で帯電した感光ドラム1に対して、レーザー駆動回路107で露光装置3の露光量を変化させて露光動作を実行させることにより、露光量と明部電位VLの関係を予め取得している。画像形成装置100では、データの取得の付加を考えて、感光ドラム1の主走査方向の中心において、周方向1周分の電位を測定して平均することで、図9のデータを取得する。
なお、露光量と明部電位VDの関係を取得する感光ドラム1上の位置は、平面的に測定位置をずらせてすべての位置を網羅してもよいし、主走査方向に複数個、副走査一周分の平均を取得してもよい。このようにして、像担持体電位特性ムラデータメモリ105には、感光ドラム1の周方向における位置情報に関連付けて感光ドラム1の主走査方向及び副走査方向の画像形成可能な全領域に亘る露光条件が実質的に記憶される。
トナー像が形成される明部電位VLの50V付近(具体的には100V〜30V領域)において、露光装置3の露光量と感光ドラム1の明部電位VLの関係は比較的に線形性が良い。露光量と明部電位VLの近似直線は、感光ドラム1の電位をY(V)、露光装置3のレーザー出力値をXとすると、次式となって相関係数99%以上であった。
Y(V)=−2.363X+511.61
感光ドラム1が温調温度50度C±1度Cにあるとき、感光ドラム1の電位特性のムラを補正するために必要な、座標位置ijごとの露光量Tijは下式となる。
Tij=K+Dij/(−2.363)
ここで、iは主走査方向の位置座標、jは副走査方向の位置座標、Dijは、先ほど取得した感光ドラム1における電位特性のムラのデータから求めた各測定位置における理想電位50Vからのズレ量を正負の記号を含めて示す。Kは、上述のデジタル値による基準露光量である。
このようにして、感光ドラム1が温調温度にあるとき、画像形成の静電潜像の形成時、露光装置3の主走査方向の走査にあわせて帯電・露光後の電位測定点ごとに露光量を変化させる。これにより、感光ドラム1における電位特性のムラに起因するトナー像の濃度ムラを少なくする。
また、画像形成時の温度湿度変化等によって、画像形成装置100内で帯電性能や露光性能が変化する場合がある。このとき、図6に示した制御を実行して、感光ドラム1の主走査方向の中央部で電位を測定して、基準帯電電流量及び基準露光量を更新する。
しかし、このときも、感光ドラム1における電位特性のムラは一定温度50度C±1度Cに温調されていれば、その平面的な傾向は変わらない。このため、予め測定した感光ドラム1における電位特性のムラのデータは使用可能である。
<実施例1>
図10は感光ドラムの温度が異なる場合の明部電位ムラの説明図、図11は感光ドラムの昇温過程における明部電位ムラの変化の説明図である。図12は感光ドラムの昇温過程における露光量補正制御のフローチャート、図13は露光量補正制御した際の明部電位ムラの説明図である。
感光ドラム1は、一般的に光に反応する光半導体で形成されるため、感光ドラム1の電位特性は、感光ドラム1の温度に依存する。
図10に示すように、感光ドラム1が一定温度50度C±1度Cに温調されている場合と、感光ドラム1が室温にある場合とでは、一様に帯電・露光した際に、感光ドラム1の電位特性の分布が違ってくる。感光ドラム1の電位特性のムラは、表面の局所的な半導体特性の差によるものと、感光ドラム1の製造時にアルミ素管に半導体塗膜を形成した際の膜厚ムラ等に起因するものとがある。
局所的な半導体特性の差に起因する部分的な電位特性は、感光ドラム1の温度により異なるため、感光ドラム1は、最適な半導体特性が期待できる一定温度50度C±1度Cに温調される。あるいは、各温度における感光ドラム1の明部電位VLの分布データを取得して、感光ドラム1の温度特性による差分までを含めて電位特性のムラを露光量で補正するように、画像形成条件にフィードバックする。
しかし、感光ドラム1を温度50度C±1度Cにて温調する方法は、画像形成時に感光ドラム1が温度50度C±1度Cに達して安定するのを待つ必要があり、画像形成装置100の生産性が十分に発揮されない。
このため、十分な生産性を確保しようとすれば、画像形成時以外においても感光ドラム1を一定温度50度C±1度Cに温調し続ける必要があり、エネルギーの消費効率が著しく悪くなる。
さらに、昇温過程の各温度における感光ドラム1の電位特性のムラを取得する方法は、取り扱うデータ量が多くなって画像形成装置100の画像処理回路103に過大な負荷をかける。昇温過程の各温度で実行される感光ドラム1の明部電位VL分布の取り込みに要する時間が画像形成装置100の生産性を低下させ、測定やデータ処理の演算負荷も大きい。
また、半導体特性が温度に対して一方向に変化しても、感光ドラム1は、電位センサ4を用いて平均的に一定の明部電位VLが付与されている。このため、各部分の温度上昇の遅れ進みに応じて、感光ドラム1の部分ごとの明部電位VLは、ばらついてそれぞれ独立に変化する。
このため、一定温度50度C±1度Cで取得した電位特性の分布データで、すべての温度における感光ドラム1の電位特性を補正する場合、感光ドラム1の表面の各部での補正誤差が大きくなる。実際の画像形成時の温度とは異なる温度での電位特性データを感光ドラム1の電位特性の補正に用いるため、露光量を調整した結果、却って感光ドラム1の部分的な明部電位VLのムラを大きくしてしまうと言う過補正の問題が発生する。
そこで、実施例1では、温調温度以外の場合、温調温度で取得した電位特性データを、温調温度との温度差に応じて補正して用いる。これにより、感光体の温度が所定温度に上昇する前に画像形成動作を開始可能にした。
画像形成装置100では、感光ドラム1が外気温よりも高い温度で温調されるため、電源投入直後等で感光ドラム1が温調温度よりも低い場合を説明する。しかし、ドラムヒータ14を搭載しない温調の無い画像形成装置において、画像形成の累積に伴って感光ドラムが昇温するような場合でも、基本的に実施例1の制御は活用できる。
図1を参照して図11に示すように、画像形成装置100が電源投入されると、感光ドラム1は、ほぼ10分間を要して、室温25度Cから温調温度50度C±1度Cに達する。図11は、25度C、40度C、50度Cで測定した主走査方向の電位特性の分布である。
感光ドラム1の電位特性のムラは、温調温度の50度Cを基準に考えると、感光ドラム1の温度が50度Cから離れるに従って、そのときの感光ドラム1における電位特性の分布も50度Cの状態から離れる。このとき、温調温度の50度Cで取得した電位特性分布のデータを用いて露光量を補正すると、感光ドラム1の温度が温調温度と離れている25度の場合に、明部電位VLを補正することで逆に明部電位VLのムラが大きくなる過補正が発生する。
そこで、実施例1では、温調温度との温度差が大きい場合には、温調温度で測定した感光ドラム1の電位特性のムラを100%相殺するような補正は行わない。温調温度との温度差が小さいほど100%に近い補正とする一方、25度C以上の温度差があれば、温調温度で測定した感光ドラム1の電位特性のムラを50%だけ相殺するような補正をかける。
温調温度で測定した感光ドラム1の電位特性のムラを何割補正するかを示す補正係数の概念を導入し、補正係数を、温度センサ11で測定される感光ドラム1の温度と温調温度との温度差によって変化させる。温調温度での電位特性ムラを50%補正する補正係数が0.5の場合でも、感光ドラム1の明部電位VLのムラを半分にできるので、温度差が25度C以上の場合に適用される最も低い補正係数を0.5とした。
図1を参照して図12に示すように、本体制御装置101は、温度センサ11で感光ドラム1の温度を測定し(S31)、温調温度との温度差が2度C以下の場合(S32のYES)、補正係数を1とする(S34)。温調温度との温度差が2度Cを越えて(S32のNO)25度C以下の場合(S33のYES)、補正係数を温度差に応じて補正する(S35)。温調温度との温度差が25度C以上の場合(S33のNO)、補正係数を0.5とする(S36)。
温調温度50度C±1度Cから実測温度を差し引いた温度差をΔtとして、感光ドラム1の電位特性のムラを補正するために必要となる露光量Tijは下式のように設定される。ここで、温調温度50度C±1度Cで取得した電位特性分布から求めた各測定点での理想電位50Vからのずれ量を正負の記号を含めてDijとし、ずれ量を補正するための基準露光量をK(デジタル信号値)とする。
Δt≦2 : Tij=K+Dij/(−2.363)
2<Δt≦25: Tij=K+(1−0.5×Δt/25)×Dij/(−2.363)
25<Δt : Tij=K+0.5×Dij/(−2.363)
図13は、感光ドラム1の温度が25度Cのときの電位特性のムラを補正係数1と補正係数0.5とで露光量補正した際の主走査方向の明部電位VLの分布の測定結果である。
図13に示すように、補正係数が1の場合、主走査方向の50mm〜150mmの範囲で露光量が過補正されてしまい、最大9Vの明部電位VLのムラ(補正残差)が形成される。しかし、補正係数が0.5の場合、同じ範囲で過補正となるが、補正残差は最大5Vに収まって、補正係数が1の場合よりも明部電位VLのムラが小さくなり、過補正の問題が抑制される。
実施例1の制御によれば、感光ドラム1の電位特性のムラをより少ない電位特性分布のデータ量で温度特性分も含めて補正可能となり、感光ドラム1を常に温調する必要もなくなる。また、温調温度で取得した電位特性分布のデータを用いて、温調温度とかけ離れた温度で露光量の補正を行っても、補正係数を小さくしているので過補正が起こり難い。補正された明部電位VDのムラを小さくして、画像形成時の最終画像の濃度ムラを許容可能なレベル内で抑えられる。
言い換えれば、像担持体の電位特性の面内ムラをより少ないデータ量で温度特性による変化の対応も含めて補正可能となり、像担持体を常に温調する必要もなくなる。像担持体が特定温度以外の場合においては、像担持体を製造時にアルミ等の素管に半導体を形成する際の形成された膜圧ムラ等に起因する像担持体の温度に比較的依存しない電位ムラを補正できる。像担持体の電位特性の面内ムラに対する補正動作が逆に補正対象のムラを大きくしてしまうと言った過補正の問題も起きにくくなる。さらに、像担持体が特定温度のときには、像担持体の温度特性に依存する半導体の局所的な特性をも含めて像担持体の電位ムラの補正が可能となる。
<実施例2>
図14は実施例2の制御のフローチャートである。
実施例1では、感光ドラム1の実測温度に基づいて補正係数を変更したが、実施例2では、昇温開始後の経過時間に基づいて補正係数を変更する。それ以外の装置構成及び制御については実施例1と同一であるので、図示及び重複する説明を省略する。
実施例2では、画像形成装置100に温度センサ11が設置されておらず、ドラムヒータ14にサーミスタ等の温調装置を内蔵して、感光ドラム1は、温調装置に制御されたドラムヒータ14によって温調される。
本体制御装置101は、ドラムヒータ14の電源投入による通電開始からの経過時間ΔTで補正係数を切り替える制御を行う。感光ドラム1の温調開始から温調温度50度C±1度Cに達するまでの温度変化は、ドラムヒータ14の加熱量と感光ドラム1の熱容量とに依存して再現されるからである。
図1を参照して図14に示すように、本体制御装置101は、電源投入からの経過時間ΔTを測定して(S41)、電源投入から10分が経過するまで(S42のNO)は、補正係数を経過時間ΔTに応じて補正する(S45)。しかし、電源投入から10分が経過すると(S42のYES)、補正係数を1とする(S44)。ドラムヒータ14の通電開始から約10分で感光ドラム1は温調温度50度C±1度Cに達するからである。
電源投入からの経過時間をΔTとして、感光ドラム1の電位特性のムラを補正するために必要となる露光量Tijは、下式のように設定される。ここで、温調温度50度C±1度Cで取得した電位特性分布から求めた各測定点での理想電位50Vからのずれ量を正負の記号を含めてDijとし、ずれ量を補正するための基準露光量をK(デジタル信号値)とする。
ΔT>10分 : Tij=K+Dij/(−2.363)
ΔT≦10分 : Tij=K+(1−0.5×ΔT/10)×Dij/(−2.363)
実施例2の制御によれば、感光ドラム1の電位特性のムラをより少ない電位特性分布のデータ量で温度特性分も含めて補正可能となり、感光ドラム1を常に温調する必要もなくなる。また、温調温度で取得した電位特性分布のデータを用いて、温調温度とかけ離れた温度で露光量の補正を行っても、補正係数を小さくしているので過補正が起こり難い。補正された明部電位VDのムラを小さくして、画像形成時の最終画像の濃度ムラを許容可能なレベル内で抑えられる。
<実施例3>
図15は実施例3の制御のフローチャート、図16は温調温度で取得した感光ドラムの電位特性分布の説明図である。図17は副走査方向の平均値を用いて補正した電位特性分布の説明図、図18は副走査方向及び主走査方向の平均値を用いて補正した電位特性分布の説明図である。
実施例3の制御は、感光ドラム1の実測温度と温調温度の温度差が大きい場合の制御の一部が異なる以外は第1実施形態の画像形成装置100を用いて実施例1、2と同様に制御される。従って、実施例1、2と重複する部分の説明を省略する。
実施例3の制御では、感光ドラム1の実測温度と温調温度との温度差の段階に応じて、露光量の補正量を求めるための感光ドラム1の電位特性分布のデータを変更する。温度差Δtが2度C以下の場合には、実施例1と同様に、温調温度で実測した電位特性分布のデータをそのまま使用する。しかし、温度差Δtが2度C〜25度Cの場合には、温調温度で実測した電位特性分布のデータを副走査方向の平均値を用いて補正した電位特性分布のデータを使用する。そして、温度差Δtが25度C以上の場合には、温調温度で実測した電位特性分布のデータを主走査方向及び副走査方向のそれぞれの平均値を用いて補正した電位特性分布のデータを使用する。
感光ドラム1の電位特性のムラは、感光ドラム1の製造上のムラによるものと、光半導体層の現在温度によるものとがある。感光ドラム1の製造上のムラは、感光ドラム1の製造方法が十分に精密であれば、ムラの周期は、光半導体層の現在温度によるムラよりも長周期である。
そこで、感光ドラム1の実測温度が温調温度から離れている場合、電位特性分布の補正に平均値を用いて、長周期の製造上のムラを積極的に補正して、光半導体層の現在温度による過補正を少なくする。
以下、感光ドラム1の温調温度と画像形成時の実測温度との温度差をΔtとし、感光ドラム1の電位特性のムラを補正するために必要となる露光量(デジタル信号値)をTijとする。また、温調温度で取得した感光ドラム1の電位特性分布のデータから求めた各測定点の理想電位50Vからのズレ量を正負の記号を含めてDij(V)とし、基準露光量(デジタル信号値)をKとする。
図1を参照して図15に示すように、本体制御装置101は、温度センサ11により感光ドラム1の温度を測定する(S31)。そして、感光ドラム1の温調温度との温度差Δtが2度C以下の場合(S32のYES)、実施例1と同様に制御する。感光ドラム1における電位特性分布の各測定点のデータに応じて露光量を設定し(S54)、露光装置3は、電位特性分布の各測定点を含む領域範囲をそれぞれの露光量で露光する。
Δt≦2 : Tij=K+Dij/(−2.363)
しかし、温度差Δtが2度C〜25度Cの場合(S33のYES)、温調温度で取得した電位特性分布のデータを、副走査方向の平均値を用いて補正する。そして、補正された電位特性分布のデータを使用して、感光ドラム1の電位特性のムラを露光量によって補正する(S55)。
また、温度差Δtが25度C以上の場合(S33のNO)、温調温度で取得した電位特性分布のデータを、副走査方向の平均値を用いて補正した後に主走査方向の平均値を用いて補正する。そして、補正された電位特性分布のデータを使用して、感光ドラム1の電位特性のムラを露光量によって補正する(S56)。
<温度差Δtが2度C〜25度Cの場合の制御>
図16は温調温度で実測して電位特性ムラデータメモリに保存した感光ドラムの電位特性分布のデータの説明図、図17は副走査方向の平均値を用いて補正した電位特性分布のデータの説明図である。
実施例3の制御では、温調温度で取得した電位特性分布のデータを補正して、感光ドラム1の電位特性のムラを露光量で補正するために必要な電位特性分布のデータを作成する。温度差Δtが2度C〜25度Cの場合に用いる電位特性分布のデータは、感光ドラム1の一周に渡る平均値を用いて個別位置で取得したデータを補正している。これにより、理想電位50Vとのズレ量が大きい個別位置ほど露光量で補正すべきズレ量が小さくなるようにして、部分的な過補正の発生を減らしている。
図16に示すように、温調温度で実測した感光ドラムの電位特性分布は起伏が大きいため、感光ドラム1の部分的な温度のばらつきが大きくなる昇温過程でそのまま用いると部分的に過補正となる可能性が高まる。
このため、温度差Δtが2度C〜25度Cの過渡状態では、感光ドラム1の個別位置で取得した電位特性のデータを、主走査方向の各位置における副走査方向の平均値に近付けるように補正している。
電位特性ムラデータメモリ105に保存された個別位置のデータを、行列成分を用いてEij(iは主走査方向の位置座標、jは副走査方向の位置座標)と表す。そして、主走査方向の個別位置のデータEijを、副走査方向の一周に渡って平均したデータをaveEi(iは主走査方向の位置座標)とし、感光ドラム1全体のデータEijの平均値をAEとする。このとき、露光量補正に用いる個別位置のデータは、行列成分を用いてE’ijと表され、次式により計算される。
E’ij=Eij−(aveEi−AE)
図16の電位特性分布のデータEijをデータE’ijに補正した電位特性分布を図17に示す。補正後のデータE’ijは、電位特性ムラデータメモリ105に保存された電位特性分布のデータEijを、副走査方向の平均値が持つ全体平均値からの偏差によって補正されている。
この後、図17のデータE’ijと理想電位50Vとのズレ量を相殺するように、データE’ijを付与された個別領域の露光量を補正して、感光ドラム1の電位特性のムラを補正する。
補正後の電位特性データE’ijから求められる露光量の補正量D1ij(V)は、次式により計算される。
D1ij=Eij−E’ij
補正量D1ijを相殺するために必要となる露光装置3の露光量T1ij(デジタル信号値)は次式により計算される。
T1ij=K+D1ij/(−2.363)
<温度差Δtが25度Cを越える場合の制御>
図18は主走査方向の平均値を用いて補正した電位特性分布のデータの説明図である。
温度差Δtが25度Cを越える場合、温度差Δtが25度Cまでの場合よりも個別位置の温度差が大きくなるので、図17で示される補正した電位特性分布のデータを用いても部分的な過補正が発生する可能性が高くなる。
このため、副走査方向の平均値を用いて補正した電位特性分布のデータを、さらに主走査方向の平均値を用いて補正している。これにより、個別位置で露光量により補正すべき理想電位50Vとのズレ量を小さくして、部分的な過補正の発生を減らしている。
温度差Δtが25度Cまでで用いる個別位置のデータE’ijを、主走査方向の一列に渡って平均したデータをaveE’j(jは副走査方向の位置座標)とする。このとき、温度差Δtが25度Cを越える場合の露光量補正に用いる個別位置のデータは、行列成分を用いてFijと表され、次式により計算される。
Fij=E’ij−(aveE’j−AE)
図18に示す電位特性分布は、図17の電位特性分布のデータE’ijを、データFijに補正しており、補正後のデータFijは、データE’ijを、主走査方向の平均値が持つ全体平均値からの偏差によって補正されている。
この後、図18のデータFijと理想電位50Vとのズレ量を相殺するように、データFijを付与された個別領域の露光量を補正して、感光ドラム1の電位特性のムラを補正する。
補正後の電位特性分布のデータFijから求められる露光量の補正量D2ij(V)は、次式により計算される。
D2ij=Eij−Fij
補正量D2ijを相殺するために必要となる露光装置3の露光量T2ij(デジタル信号値)は次式により計算される。
T2ij=K+D1ij/(−2.363)
<補正係数>
図19は補正係数と明部電位ムラの関係の説明図である。
図19に示すように、補正係数を異ならせて露光量を補正する制御を行った場合の感光ドラムの明部電位VLの最大偏差を、画像形成時の実測温度と温調温度の温度差Δtが1度Cの場合と20度Cの場合とについて実験した。図中、縦軸が帯電・露光後の感光ドラム1の明部電位VLの最大値と最小値の差分、横軸が補正係数である。
温度差Δtが20度Cのとき、補正係数が0.8以上の場合には、温度差Δtが1度Cのときと比べて補正量の変化が小さい。このことは、感光ドラム1における電位特性のムラが感光ドラム1の製造時にアルミ等の素管に光半導体層を形成する際の膜圧ムラ等に起因する電位特性ムラと、感光ドラム1の局所的な現在温度ムラに起因する電位特性ムラとを含むことを示している。
そのため、実施例2又は3の制御のように、感光ドラム1の温調温度と画像形成時の測定温度の温度差Δtに応じて、感光ドラム1における電位特性のムラの補正方法を変更することが有効である。感光ドラム1の電位特性のムラを、より振幅が小さい電位特性分布のデータを用いて、現在温度のばらつき分も含めて補正可能となり、感光ドラム1を常に温調する必要がなくなる。
このとき、感光ドラム1が温調温度以外の場合、感光ドラム1の製造時にアルミ等の素管に光半導体層を形成する際の膜圧ムラ等に起因する電位ムラを重点的に補正することが望ましい。そして、感光ドラム1が温調温度に達した以降は、感光ドラム1の局所的な現在温度差に起因する電位特性のムラも含めて補正をすることで、温調温度での特殊状況にのみ合致する補正を除いて、過補正を回避できる。
<実施例4>
図20は第2実施形態の画像形成装置の構成の説明図である。
図20に示すように、第2実施形態の画像形成装置200は、感光ドラム1の加熱装置(ドラムヒータ14)を持たない以外は第1実施形態の画像形成装置100と同様に構成される。従って、図20中、第1実施形態の画像形成装置100と共通する構成には図1と共通の符号を付して重複する説明を省略する。
図20に示すように、画像形成装置200は、ドラムヒータ(14:図1)を持たない。従って、画像形成装置200における感光ドラム1が温度変化する要因は、画像形成の累積に伴う感光ドラム1の昇温である。このため、電位特性ムラデータメモリ105に予め取り込まれる感光ドラム1における電位特性分布のデータは、感光ドラム1が昇温していない状態、すなわち感光ドラム1の温度が室温とほぼ同等温度の時である。
実施例4の制御では、画像形成装置200において、感光ドラム1の温度が25度C±2度Cのときに電位特性分布を測定して、電位特性分布のデータを電位特性ムラデータメモリ105に取り込む。
本体制御装置101は、画像形成時、温度センサ11によって測定した温度と、電位特性分布の測定時の温度との温度差Δtに応じて、電位特性分布のデータに基づく露光量の設定を補正する。温度差Δtが大きい場合には過補正を回避すべく補正係数を小さくし、温度差Δtが小さい場合には補正係数を1として、電位特性のムラが100%補正されるような露光量補正を設定する。なお、温度差Δtと補正係数の関係は実施例1〜実施例3と同様に定めている。
なお、実施例2と同様に、画像形成装置200においても、昇温過程で画像形成を行う際に、温度センサ14を用いないで、感光ドラム1の温度に応じた露光量補正を行う制御が可能である。画像形成の開始からの感光ドラム1の回転時間ΔSを測定して、感光ドラム1の温度を見積もることが可能である。このとき、感光ドラム1の温度の見積もり方法は、一般的に用いられる様々な方法が利用可能である。
画像形成時の感光ドラム1の回転時間をΔS(sec)とするとき、感光ドラム1の温度P(度C)は次式となる。
0<ΔS<600 : P=25+25×(S/600)
ΔS≧600 : P=50
これにより、感光ドラム1の温度を推定して、感光ドラム1における電位特性のムラのデータを取り込んだ時の感光ドラム1の温度(25度C)との温度差Δtが計算される。
<実施例5>
図1に示すように、実施例5では、感光ドラム1を一様に帯電及び露光して形成した測定用画像を記録材Sに転写・定着した最終画像の画像濃度分布を画像読取装置102で読み取って、測定用画像の濃度分布を測定可能である。
本体制御装置101は、感光ドラム1が所定温度に達した後に、所定濃度のベタ画像として測定用画像を形成する。そして、画像読取装置102による測定用画像の濃度分布の測定結果に基いて、基準となる所定温度での部分的な露光量を設定する。これ以後の制御は実施例1〜4と同様に、所定温度差との温度差に応じて露光量の補正量を設定する。