JP5327562B2 - 水性インクジェットインク用記録媒体、水性インクジェット印刷物及びその製造方法 - Google Patents

水性インクジェットインク用記録媒体、水性インクジェット印刷物及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、プラスチック基板上であってもインクジェット記録を可能とする水性インクジェット記録媒体に関するものであり、詳しくは、水性インクジェットインクとプラスチック基板の密着性が優れ、印刷後の印刷面の剥がれ等が無い水性インクジェット記録媒体とその印刷物に関するものである。
近年、マルチメディアの技術進歩に伴い、インクジェット方式のプリンターが業務用、民生用を問わず広く普及している。インクジェット方式のプリンターは、マルチカラー化および画像の大型化が容易であることや、平滑面だけでなく凹凸面への印刷が可能であったり、オンデマンド印刷が可能である等の多くの特徴を有している。また、油性インクに比べて環境面や安全面で問題を生じにくい水性インクを利用したインクジェット印刷は、最近の主流となっている。
インクジェット被記録材として紙を支持体としているものは、水に触れた際に支持体が波打つコックリングと呼ばれる現象が発生したり、あるいは破けたりすることにより見栄えが悪くなる問題があった。このような問題を解決するために、プラスチックフィルム自体を支持体とし、この上にインク受理層を設けたインクジェット記録媒体を用い、これに印刷を施すことが提案されている(例えば、特許文献1〜4参照。)。このような媒体は、耐水性にも優れ、屋外広告やポスター、ラベル、壁紙等としても使用されうるものである。しかしながら、プラスチックフィルムの表面はインクジェットインクとの密着性が悪く、通常アンカー層、プライマー層、下引き層、接着層等と称される層を当該フィルム表面に形成させた上にポリウレタンやポリアクリル等を主成分とするインク受容層を設ける工程が必須であった。この様な表面処理工程は、コストアップに繋がるだけでなく、工程が増えることから生産に掛かる時間も多く必要となる。更には、表面処理を溶剤を含む塗料の塗布によって行なう場合には、含有する溶剤を除去する工程が必要であり、溶剤が有機溶剤である場合には環境への負荷も大きくなる。一方、インク受理剤を塗工する替わりにフィルム表面に微多孔を設け、該微多孔がインクを吸収することにより固着させるインクジェット記録媒体も報告されている(例えば、特許文献5参照。)。しかし、延伸工程が必要であることや、微多孔が光を乱反射するため、通常、フィルムが白色となり透明性が求められる分野によっては用途が制限される場合があった。
特開平10−119428号公報 特開2001−150612号公報 特開2002−103802号公報 特開2007−130780号公報 特開2001−181424号公報
本発明の課題は、上記のような問題に鑑みなされたものであり、従来のプラスチックフィルムを基材として用いる際に必須の表面処理や延伸工程を行なわずとも水性インクとの密着性が良好で、インクジェット印刷後の剥がれ等の問題が生じない水性インクジェット記録媒体とその印刷物を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、環状ポリオレフィン系樹脂を主成分とする層を表面層に有するプラスチックフィルムをインクジェット記録媒体として用いることによって、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、環状ポリオレフィン系樹脂(a1)を主成分とする層(A)を有する単層または多層のフィルムであって、層(A)表面を40mN/m以上に処理したことを特徴とする水性インクジェットインク用記録媒体、および当該記録媒体における処理面上に水性インクを用いたインクジェット印刷を施してなることを特徴とする印刷物並びにそれらの製造方法を提供するものである。
本発明によって得られる水性インクジェット印刷物は、単層または多層のフィルム上に直接インクジェット印刷を施すことにより簡便に得られるものである。目的とする性能(透明性、剛性、加工性等)や用途(包装材、ポスター、ラベル等)に応じて当該多層フィルムの層構成を選択することで容易に設計変更が可能であり、汎用性に優れる。得られる印刷物は、水性インクと多層フィルムとの密着性が良好であることにより、長期で保存しても印刷部分の剥がれ等が生じず、そのまま使用しても、又この印刷物を二次加工し、袋状等にすることも可能である。
本発明の水性インクジェット印刷物の支持体として機能するプラスチックフィルムは、少なくとも環状ポリオレフィン系樹脂(a1)を主成分とする層(A)を有する、単層または多層フィルム(I)である。この層(A)は支持体としての機能と同時に、水性インクとの易接着層としても機能を有する。尚、本発明において「主成分とする」とは、当該特定の樹脂を、層を形成する樹脂組成物全量に対して50質量%以上含有する事を言うものであり、好ましくは55質量%以上が特定の樹脂であることを言う。
前記環状ポリオレフィン系樹脂(a1)としては、例えば、ノルボルネン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、環状共役ジエン重合体等が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体が好ましい。また、ノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体(以下、「COP」という。)、ノルボルネン系単量体とエチレン等のオレフィンを共重合したノルボルネン系共重合体(以下、「COC」という。)等が挙げられる。さらに、COP及びCOCの水素添加物は、特に好ましい。また、環状オレフィン系樹脂の重量平均分子量は5,000〜500,000が好ましく、より好ましくは7,000〜300,000である。
前記ノルボルネン系重合体と原料となるノルボルネン系単量体は、ノルボルネン環を有する脂環族系単量体である。このようなノルボルネン系単量体としては、例えば、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、エチリデンテトラシクロドデセン、ジシクロペンタジエン、ジメタノテトラヒドロフルオレン、フェニルノルボルネン、メトキシカルボニルノルボルネン、メトキシカルボニルテトラシクロドデセン等が挙げられる。これらのノルボルネン系単量体は、単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
前記ノルボルネン系共重合体は、前記ノルボルネン系単量体と共重合可能なオレフィンとを共重合したものであり、このようなオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン等の炭素原子数2〜20個を有するオレフィン;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン等のシクロオレフィン;1,4−ヘキサジエン等の非共役ジエンなどが挙げられる。これらのオレフィンは、それぞれ単独でも、2種類以上を併用することもできる。
前記環状ポリオレフィン系樹脂(a1)として用いることができる市販品として、ノルボルネン系モノマーの開環重合体(COP)としては、例えば、日本ゼオン株式会社製「ゼオノア(ZEONOR)」等が挙げられ、ノルボルネン系共重合体(COC)としては、例えば、三井化学株式会社製「アペル」、ポリプラスチックス社製「トパス(TOPAS)」等が挙げられる。
前記のように、環状ポリオレフィン系樹脂(a1)の樹脂層(A)を形成する樹脂成分に対する含有率は、得られる単層または多層フィルム(記録媒体)(I)の表面処理度を容易に高められる点、並びに水性インクジェットインクとの密着性の観点から50質量%以上であることを必須とするものである。これよりも低い含有率では、目的とする性能を有するフィルムが得られにくい。特に好ましいのは80質量%以上である。
また、前記環状ポリオレフィン樹脂(a1)のガラス転移点(Tg)は、得られるフィルム(I)の剛性の観点からは60℃以上であることが好ましい。後述するような、更にイージーピール性等を発現させるためにその他の樹脂層(B)を積層させた多層のフィルム(I)とする場合、共押出積層法による製造が可能である点と、工業的原料入手容易性の観点から、Tgが200℃以下であることが好ましい。特に望ましくは70℃〜180℃である。この様なTgを有する環状ポリオレフィン系樹脂(a1)としては、ノルボルネン系単量体の含有比率が30〜90質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは40〜90質量%、更に好ましくは50〜85質量%である。含有比率がこの範囲にあれば、フィルムの剛性、加工安定性が向上する。尚、本発明におけるガラス転移点、融点は示差走査熱量測定(DSC)にて測定したものである。
一方、高ガラス転移点(Tg)のノルボルネン系共重合体は引っ張り強度が低く、極端に切れやすく、裂けやすい場合もあるため、成膜性時・スリット時の引き取りや巻き取り適性やヒートシール強度とのバランスを考慮し、高Tg品と100℃未満のガラス転移点を有する低Tg品とをブレンドすることも好ましいものである。また包装機械特性(製袋及び物品充填時にシール面にシワや収縮が起こらない、ヒートシール部からピンホール等発生しない観点)から、後述するようなポリオレフィン系樹脂(b)を主成分とする樹脂層(B)を積層した多層フィルムとすることが好ましい。
特に剛性が高すぎて、輸送時の落下により簡単に裂ける・破袋するあるいは包装体として用いる際のシール開始温度が高くなりすぎるあるいはヒートシール直後の強度維持(ホットタック性)等の改善は、Tg100℃未満のCOCを配合することにより、落袋強度や包装機械適性をも向上できる。またCOCと相溶性の良い、環状構造を含有しないポリオレフィン系樹脂(a2)、酸変性オレフィン系樹脂(a3)、あるいは低融点や低Tgを有するゴム系エラストマー樹脂等を配合することも有効である。
樹脂層(A)において、環状ポリオレフィン樹脂(a1)と併用できるポリオレフィン系樹脂(a2)としては、炭素数2〜6のα−オレフィンの単独重合体又は共重合体が挙げられる。共重合形式は、ブロック共重合体であってもランダム共重合体であってもよい。ポリオレフィン系樹脂(a2)としては、例えば、ポリエチレン系樹脂(a2−1)やポリプロピレン系樹脂(a2−2)等が挙げられる。
前記ポリエチレン系樹脂(a2−1)としては、包装材として使用する際の高ヒートシール強度が容易に発現され、また耐ピンホール性や、後述する樹脂層(B)を積層させた際の層間強度の維持のために、密度が0.900〜0.950g/cmであるものが好ましく、より好ましくは密度が0.905〜0.945g/cmのものである。
前記ポリエチレン系樹脂(a2−1)としては、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)等のポリエチレン樹脂や、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等が挙げられ、単独でも、2種以上を混合して使用しても良い。これらの中でもシール性、剛性、インクとの密着性のバランスが良好なことからVLDPE、LDPE、LLDPE、MLDPEが好ましい。
LDPEとしては高圧ラジカル重合法で得られる分岐状低密度ポリエチレンであれば良く、好ましくは高圧ラジカル重合法によりエチレンを単独重合した分岐状低密度ポリエチレンである。
LLDPE、MLDPEとしては、シングルサイト触媒を用いた低圧ラジカル重合法により、エチレン単量体を主成分として、これにコモノマーとしてブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン等のα−オレフィンを共重合したものである。LLDPE中のコモノマー含有率としては、0.5〜20モル%の範囲であることが好ましく、1〜18モル%の範囲であることがより好ましい。
前記シングルサイト触媒としては、周期律表第IV又はV族遷移金属のメタロセン化合物と、有機アルミニウム化合物及び/又はイオン性化合物の組合せ等のメタロセン触媒系などの種々のシングルサイト触媒が挙げられる。また、シングルサイト触媒は活性点が均一であるため、活性点が不均一なマルチサイト触媒と比較して、得られる樹脂の分子量分布がシャープになるため、フィルムに成膜した際に低分子量成分の析出が少なく、シール強度の安定性や耐ブロッキング適性に優れた物性の樹脂が得られるので好ましい。
前述のようにポリエチレン系樹脂(a2−1)の密度は0.900〜0.950g/cmであることが好ましい。密度がこの範囲であれば、適度な剛性を有し、ヒートシール強度や耐ピンホール性等の機械強度も優れ、フィルム成膜性、押出適性が向上する。また、融点は、一般的には60〜130℃の範囲であることが好ましく、70〜125℃がより好ましい。融点がこの範囲であれば、加工安定性や前記環状ポリオレフィン系樹脂(a1)と混合して用いた際の押出加工性が向上する。また、前記ポリエチレン系樹脂(a2−1)のMFR(190℃、21.18N)は2〜20g/10分であることが好ましく、3〜10g/10分であることがより好ましい。MFRがこの範囲であれば、フィルムの押出成形性が向上する。
このようなポリエチレン系樹脂(a2−1)は前記環状ポリオレフィン系樹脂(a1)との相溶性も良いため、フィルムとしての透明性も維持することができる。また接着性樹脂等を使用することなく、樹脂層(A)と後述する樹脂層(B)との層間接着強度も保持でき、柔軟性も有しているため、耐ピンホール性も良好となる。さらに、耐ピンホール性を向上させる場合はLLDPE、MLDPEを用いることが好ましい。
又、前記ポリプロピレン系樹脂(a2−2)としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、たとえばプロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、メタロセン触媒系ポリプロピレンなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用してもよいし、併用してもよい。望ましくはプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体であり、特にメタロセン触媒を用いて重合されたプロピレン・α−オレフィンランダム重合体が好ましい。これらのポリプロピレン系樹脂を用いた場合には、フィルムの耐熱性が向上し、軟化温度を高くすることができるため、100℃以下のボイル、あるいはホット充填、または100℃以上のレトルト殺菌等の蒸気・高圧加熱殺菌特性に優れた包装材としても用いることが出来る。
また、これらのポリプロピレン系樹脂(a2−2)は、MFR(230℃)が0.5〜30.0g/10分で、融点が110〜165℃であるものが好ましく、より好ましくは、MFR(230℃)が2.0〜15.0g/10分で、融点が115〜162℃のものである。MFR及び融点がこの範囲であれば、ヒートシール時のフィルムの収縮が少なく、更にフィルムの成膜性も向上する。
さらに、環状ポリオレフィン系樹脂(a1)と併用することができる樹脂としては、酸変性オレフィン系樹脂(a3)が挙げられる。酸変性オレフィン系樹脂(a3)を併用すると、さらに水性インクジェットインクとの密着性が向上し、印刷物としての長期保存安定性が向上する。
前記酸変性オレフィン系樹脂(a3)の主成分であるオレフィン成分は特に限定されないが、エチレン、プロピレン、イソブチレン、2−ブテン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等の炭素数2〜6のアルケンが好ましく、これらの混合物を用いてもよい。この中で、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン等の炭素数2〜4のアルケンがより好ましく、エチレン、プロピレンがさらに好ましく、エチレンが最も好ましい。また、酸変性ポリオレフィン系樹脂(a3)は、(メタ)アクリル酸エステル成分を含有している必要がある。(メタ)アクリル酸エステル成分としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。入手の容易さとインクとの密着性の点から、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシルがより好ましく、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルがより好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル成分は、前記オレフィン成分と共重合されていればよく、その形態は限定されず、共重合の状態としては、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合(グラフト変性)などが挙げられる。(なお、「(メタ)アクリル酸〜」とは、「アクリル酸〜またはメタクリル酸〜」を意味する。)具体的には例えば、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、エルバロイ(商品名:三井・デュポンポリケミカル株式会社製)、アクリフト(商品名:住友化学株式会社製)等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
また、酸変性ポリオレフィン樹脂(a3)は、不飽和カルボン酸成分により酸変性されたものでもよい。不飽和カルボン酸成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等が挙げられる。中でもアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましく、特にアクリル酸、無水マレイン酸が好ましい。また、不飽和カルボン酸成分は、前記オレフィン成分と共重合されていればよく、その形態は限定されず、共重合の状態としては、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合(グラフト変性)などが挙げられる。具体的には例えば、エチレン−アクリル酸共重合体としては、ニュクレル(商品名:三井・デュポンポリケミカル株式会社製)等が挙げられる。エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体としては、ボンダイン(商品名:東京材料株式会社製)等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
前記酸変性オレフィン系樹脂(a3)の酸変性率としては、水性インクジェットインクとの密着性と、フィルム(I)を巻き取って保管する場合のブロッキングの抑制、印刷後のシワ等の外観不良の抑制等のバランスに優れる点から0.5〜40%のものを用いることが好ましく、0.5〜35%であることが更に好ましく、0.5〜30%であることが特に好ましい。
又、前述のように、本発明の印刷物を包装材として使用する際、ヒートシール性の向上や、更には易開封性を付与させる等のために、環状ポリオレフィン系樹脂(a1)を主成分とする樹脂層(A)に、更にポリオレフィン系樹脂(b)を主成分とする樹脂層(B)を積層させてなる多層のフィルム(I)とすることもできる。
多層構成のフィルム(I)に水性インクジェット印刷した後、これを蓋材等として使用する場合、容器の最外層と密着させ、所望の部位に温度をかけることによって、接着させることは一つの目的であるが、更に引剥がした際に凝集破壊又は界面剥離されることによる易開封性を容易に発現させることができる点などの観点により、前記ポリオレフィン系樹脂(b)がポリエチレン系樹脂(b1)とポリプロピレン系樹脂(b2)との混合物であることが好ましい。
前記ポリエチレン系樹脂(b1)としては、例えば、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)等のポリエチレン樹脂や、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体(EMMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート(EMA)共重合体、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体(E−EA−MAH)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)等のエチレン系共重合体;更にはエチレン−アクリル酸共重合体のアイオノマー、エチレン−メタクリル酸共重合体のアイオノマー等が挙げられる。これらの中でも、後述するポリプロピレン系樹脂(b2)と併用した際の相溶性の観点と、容易に凝集破壊可能であること、並びに剥がれた後の表面外観性等の観点から、密度が0.91〜0.93g/cmの低密度ポリエチレン、又は密度が0.94〜0.96g/cmの高密度ポリエチレンを用いることが好ましい。更に、メルトフローレート(190℃、21.18N)が1g/10分以上であることが成膜性の観点からは好ましいものである。
前記ポリプロピレン系樹脂(b2)としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体、たとえばプロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、メタロセン触媒系ポリプロピレンなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用してもよいし、併用してもよい。得られる多層フィルム(I)に印刷した後、これを包装材とした際の易開封性が良好である点、シール強度の調整が容易である点等の観点から、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1三元共重合体又はシングルサイト触媒を用いて重合されたエチレン−プロピレン共重合体を用いることが好ましい。
また、これらのポリプロピレン系樹脂(b2)は、MFR(230℃)が0.5〜30.0g/10分で、融点が120〜165℃であるものが好ましく、より好ましくは、MFR(230℃)が2.0〜15.0g/10分で、融点が125〜162℃のものである。MFR及び融点がこの範囲であれば、シール時のフィルムの収縮が少なく、更にフィルムの成膜性も向上する。
更に、前記ポリエチレン系樹脂(b1)と前記ポリプロピレン系樹脂(b2)との使用割合としては、(b1)/(b2)で表される質量比として10〜40/60〜90の範囲であることが容易に易開封性を発現できる点から好ましく、特に15〜30/70〜85の範囲であることが好ましい。
又、樹脂層(B)には、更に易開封性を容易にしたり、シール強度を調整したりする観点から、ポリブテン系樹脂等のその他のオレフィン系樹脂や、前述の環状ポリオレフィン系樹脂を併用しても良い。このとき、易開封性を損なわない観点から、前記ポリエチレン系樹脂(b1)と前記ポリプロピレン系樹脂(b2)との合計質量が樹脂層(B)中の樹脂成分中に85質量%以上で含まれていることが好ましい。
又、多層構成のフィルム(I)において、樹脂層(B)は単層であっても、2層以上の多層であってもよい。特にフィルムの剛性の維持の観点からは、2層以上を積層させることが好ましく、樹脂層(A)と最外層の間の中間層として、特にメタロセン触媒を用いて合成されたポリプロピレン系樹脂や直鎖状低密度ポリエチレンを用いることがフィルムの機械的強度を維持する観点から好ましいものである。
また、特に、樹脂層(A)の反対面の最外層にプロピレン−エチレンブロック共重合体を用いる場合、表面が梨地状に改質され、多層構成のフィルム(I)をロール状に巻き取る際のシワの発生を抑制することができ、また、ロール状で保管した際のブロッキングを軽減できる。ここでプロピレン−エチレンブロック共重合体は、プロピレンとエチレンとをブロック重合した樹脂であり、例えば、プロピレン単独重合体の存在下で、エチレンの重合、又はエチレン及びプロピレンの重合を行って得られるプロピレン−エチレンブロック共重合体等が挙げられる。
また、樹脂層(A)の反対面の最外層に結晶性プロピレン系樹脂とエチレン・プロピレンゴム(以下、「EPR」という。)との混合樹脂を用いると、表面を梨地状に容易に改質することができる。このとき用いる結晶性プロピレン系樹脂としては、汎用性の高いプロピレン単独重合体が好ましい。一方、このとき用いるEPRとしては、重量平均分子量が40万〜100万の範囲であるものがフィルム表面に凹凸を形成させて、表面を梨地状に改質できる点で好ましく、50〜80万の範囲であることがより好ましい。また、混合樹脂中のEPRの含有率は、5〜35質量%の範囲であることがフィルム表面を均質に梨地状に改質できる点で好ましい。この結晶性プロピレン系重合体とEPRとの混合樹脂のMFR(230℃)は、0.5〜15g/10分の範囲であることが押出加工しやすい点で好ましい。なお、前記EPRの重量平均分子量は、該混合樹脂を、オルソジクロルベンゼンを溶媒として使用し、40℃においてクロス分別法によって抽出した成分をGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって算出して求めたものである。また、前記混合樹脂中のEPRの含有率は、該混合樹脂を、オルソジクロルベンゼンを溶媒として使用し、40℃においてクロス分別法によって抽出されたEPRの抽出量より求めたものである。
前記結晶性プロピレン系樹脂とEPRとの混合樹脂の製造方法は、特に制限はなく、具体例として例えば、プロピレン単独重合体とエチレン・プロピレンゴムとを、それぞれ別々にチーグラー型触媒を用いて溶液重合法、スラリー重合法、気相重合法等により製造した後、両者を混合機にて混合する方法や、2段重合法により、1段目でプロピレン単独重合体を生成させた後、2段目においてこの重合体の存在下でEPRを生成させる方法等が挙げられる。
前記チーグラー型触媒は、所謂チーグラー・ナッタ触媒であり、チタン含有化合物などの遷移金属化合物、またはマグネシウム化合物などの担体に遷移金属化合物を担持させることによって、得られる担体担持触媒と有機アルミニウム化合物などの有機金属化合物の助触媒とを組み合わせたもの等が挙げられる。
又、例えば、印刷物を包装体として用いる場合には、印刷面の反対の面の最表層を特開2006−213065号公報に記載のような1−ブテンとプロピレンとを必須成分としてなる1−ブテン系共重合体およびプロピレンとエチレンとを必須成分としてなる共重合体を含有してなるヒートシール層とすることで、易開封性の袋とすることができる。又、同様に蓋材として用いる場合には、特開2004−75181号公報や特開2008−80543号公報に記載のような多層構成とすることによって、易開封性を有するものとすることが可能である。更に特開2010−234660号公報に記載のような環状ポリオレフィン系樹脂を多層構成の中の中間層としても使用すると、易引き裂き性を有する印刷物とすることも可能であり、印刷物の用途に応じて種々の多層構成を採用することが好ましい。
また、層(A)の処理層と反対面、または多層構成のフィルムの場合の樹脂層(A)の反対面にある樹脂層(B)上に粘着剤層を設けることにより看板、車両等に貼り付け可能な水性インクジェット印刷物(ラベル)とすることもできる。粘着剤の種類は特に限定されるものではなく、例えば、天然ゴム系、合成ゴム系、アクリル系、ウレタン系、ビニルエーテル系、シリコーン系、アミド系及びスチレン系粘着剤、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー等が挙げられる。前記粘着剤層には、粘着特性の制御等を目的として必要に応じて、例えばα−ピネンやβ−ピネン重合体、ジテルペン重合体、α−ピネン・フェノール共重合体等のテルペン系樹脂、脂肪族系や芳香族系、脂肪族・芳香族共重合体系等の炭化水素系樹脂、その他ロジン系樹脂やクマロンインデン系樹脂、(アルキル)フェノール系樹脂やキシレン系樹脂など適当な粘着付与剤を配合できる。粘着剤層の形成は、樹脂層(A)の押出し成形時、あるいは必要に応じて積層される樹脂層(B)とを共押出法で積層する際に、同時に粘着層を共押出で積層させる方法が製造サイクル上好ましい。
前記の各層(A)、(B)には、必要に応じて、防曇剤、帯電防止剤、熱安定剤、造核剤、酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、離型剤、紫外線吸収剤、着色剤等の成分を本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。特に、フィルム成形時の加工適性や印刷物を包装材とする場合の包装適性を付与するため、表面の摩擦係数は1.5以下、中でも1.0以下であることが好ましいので、多層フィルムの表面層に相当する樹脂層には、滑剤やアンチブロッキング剤や帯電防止剤を適宜添加することが好ましい。
前記の各層(A)、(B)の合計厚さとしては、印刷物の用途に応じて適宜設定できるものであるが、例えば、包装材(袋や蓋材)とする場合には、20〜50μmであり、ラベルやポスターとする場合には70〜1000μmの範囲であることが好ましい。又、層(A)、(B)の合計厚さに対する層(B)の厚みの割合としては、後述する水性インクとの密着性を確保できる観点から5〜40%の範囲であることが好ましく、層(A)の厚みとしては、2〜30μmの範囲であることが好ましい。
前述の層(A)と層(B)とを積層する方法としては、層(A)と層(B)とが隣接して積層される共押出積層成形法であることが好ましく、例えば、2台以上の押出機を用いて溶融押出する、共押出多層ダイス法、フィードブロック法等の種々の共押出法により溶融状態で層(A)と層(B)を積層した後、インフレーション、Tダイ・チルロール法等の方法で長尺巻フィルムに加工する方法が好ましく、Tダイを用いた共押出法がより好ましい。
本発明においては、単層または多層のフィルム(I)の樹脂層(A)表面を40mN/m以上に処理することが必須である。処理方法としては、特に限定されないが、層(A)表面を、加熱下または不活性ガスの雰囲気下でコロナ放電もしくはプラズマ放電等を用いて連続的に表面処理を施すことが望ましい。
コロナ処理の方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、特公昭39−12838号、特開昭47−19824号、特開昭48−28067号、特開昭52−42114号の各公報に記載等の処理方法によって行うことができる。コロナ放電処理装置は、Pillar社製ソリッドステートコロナ処理機、LEPEL型表面処理機、VETAPHON型処理機等を用いることができる。処理は空気中での常圧にて行うことができる。処理時の放電周波数は、5kV〜40kV、より好ましくは10kV〜30kVであり、波形は交流正弦波が好ましい。電極と誘電体ロールのギャップ透明ランスは0.1mm〜10mm、より好ましくは1.0mm〜2.0mmである。放電は、放電帯域に設けられた誘電サポートローラーの上方で処理し、処理量は、0.34kV・A・分/m〜0.4kV・A・分/m、より好ましくは0.344kV・A・分/m〜0.38kV・A・分/mである。
本発明において、フィルム(I)の樹脂層(A)に環状ポリオレフィン系樹脂(a)を50質量%以上で含有させたことにより、この様なコロナ処理における処理度が、環状構造を有さないポリオレフィン系樹脂を処理した場合よりも向上する。処理度については、例えば濡れ試薬による表面張力の測定によってその高低を判断することが可能であり、フィルム(I)を用いた場合は、40mN/m以上にすることが容易であり、50mN/m以上にすることもできる。この様なコロナ処理度が高いことが水性インクジェットインキとの密着性の発現に寄与すると共に、印刷面のはがれを抑制するものであると推定される。一方、通常のポリプロピレンフィルムで同様のコロナ処理を行なった場合は、38mN/m程度にしかできず、ポリエステルフィルムでも45mN/m程度であり、さらにその経時劣化が大きく、長期にわたって表面処理度を高く維持することが困難である。フィルム(I)の表面はコロナ処理からの経時劣化が非常に少なく、フィルム(I)として数ヶ月程度保存してから、水性インクジェット印刷を施すことも可能である点も、本発明で用いるフィルム(I)における特徴である。
本発明によって得られる水性インクジェット印刷物は、前記で得られた前記で得られた単層または多層のフィルム(I)の処理面上に水性インクジェット印刷したものである。
(水性インク)
本発明で使用する水性インクは、色材と、極性基を有する樹脂と、水または水溶性有機溶媒とを含んでなり、25℃における表面張力が15mN/m〜30mN/mの範囲であり、且つ粘度が5mPa・s以下である水性インクである。
(色材)
水性インクに使用される色材は、通常顔料や染料が使用されるが、印刷物の耐久性の点から顔料を使用することが好ましい。染料としては、直接染料、酸性染料、食用染料、塩基性染料、反応性染料、分散染料、建染染料、可溶性建染染料、反応分散染料、など通常インクジェット記録に使用される各種染料が挙げられる。また、顔料としては、硫酸バリウム、硫酸鉛、酸化チタン、黄色鉛、ベンガラ、酸化クロム、カーボンブラック等の無機顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、ジスアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、イソインドリン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、ペリノン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料等が挙げられる。これらを単独または混合して用いることができる。汎用のカラー印刷においては、黒色顔料、シアン顔料、マゼンタ顔料、及びイエロー顔料を使用した黒インク、シアンインク、マゼンタインク、及びイエローインクが使用される。
黒色顔料としては、耐光性に優れ、隠蔽力の高いファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラックなどのカーボンブラック、チタンブラック等を使用するのが好ましい。
さらに、色の三原色である、シアン、マゼンタ、およびイエローの代表的な有機顔料の中で、本発明において好適に使用できる顔料を以下に例示する。
シアンの顔料としては、たとえば、C.I.ピグメント ブルー 1、C.I.ピグメント ブルー 2、C.I.ピグメント ブルー 3、C.I.ピグメント ブルー 15、C.I.ピグメント ブルー 15:1、C.I.ピグメント ブルー 15:3、C.I.ピグメント ブルー 15:4、C.I.ピグメント ブルー 16、C.I.ピグメント ブルー 22、C.I.ピグメント ブルー 60、などが挙げられる。
マゼンタの顔料としては、たとえば、C.I.ピグメント レッド 5、C.I.ピグメント レッド 7、C.I.ピグメント レッド 12、C.I.ピグメント レッド 48、C.I.ピグメント レッド 48:1、C.I.ピグメント レッド 57、C.I.ピグメント レッド 112、C.I.ピグメント レッド 122、C.I.ピグメント レッド 123、C.I.ピグメント レッド 146、C.I.ピグメント レッド 168、C.I.ピグメント レッド 184、C.I.ピグメント レッド 202、C.I.ピグメント バイオレッド19、などが挙げられる。
イエローの顔料としては、たとえば、C.I.ピグメント イエロー 1、C.I.ピグメント イエロー 2、C.I.ピグメント イエロー 3、C.I.ピグメント イエロー 12、C.I.ピグメント イエロー 13、C.I.ピグメント イエロー 14、C.I.ピグメント イエロー 16、C.I.ピグメント イエロー 17、C.I.ピグメント イエロー 73、C.I.ピグメント イエロー 74、C.I.ピグメント イエロー 75、C.I.ピグメント イエロー 83、C.I.ピグメント イエロー 93、C.I.ピグメント イエロー 95、C.I.ピグメント イエロー 97、C.I.ピグメント イエロー 98、C.I.ピグメント イエロー 109、C.I.ピグメント イエロー 114、C.I.ピグメント イエロー 128、C.I.ピグメント イエロー 129、C.I.ピグメント イエロー 138、C.I.ピグメント イエロー 151、C.I.ピグメント イエロー 154、C.I.ピグメント イエロー 155、などが挙げられる。
前記顔料の粒子径は、一次粒子径が1〜500nmの範囲にあるのが好ましく、さらに好ましいのは20〜200nmの範囲である。また、媒体中に分散した後の顔料の粒子径は、10〜300nmの範囲にあるのが好ましく、さらに好ましいのは、50〜150nmの範囲である。顔料の一次粒子径の測定は、電子顕微鏡や、ガスまたは溶質による吸着法、空気流通法、X線小角散乱法などで行うことができる。分散後の顔料粒子径の測定は、種々の方式、例えば、遠心沈降方式、レーザー回折方式(光散乱方式)、ESA方式、キャピラリー方式、電子顕微鏡方式などで行うことができる。
(極性基を有する樹脂)
本発明で使用する極性基を有する樹脂は、例えば、にかわ、ゼラチン、ガゼイン、アルブミンなどのタンパク質類;アラビアゴム、トラガントゴムなどの天然ゴム類;サボニンなどのグルコシド類;アルギン酸およびアルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸トリエタノールアミン、アルギン酸アンモニウムなどのアルギン酸誘導体;メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロースなどのセルロース誘導体等の天然高分子や、ポリビニルアルコール類;ポリビニルピロリドン類;ポリアクリル酸、アクリル酸−アクリロニトリル共重合体、アクリル酸カリウム−アクリロニトリル共重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体、アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合などのアクリル系樹脂;スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−α−メチルスチレン−アクリル酸−アクリル酸アルキルエステル共重合体などのスチレン−アクリル酸樹脂;スチレン−マレイン酸;スチレン−無水マレイン酸;ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体;ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体;酢酸ビニル−エチレン共重合体、酢酸ビニル−脂肪酸ビニルエチレン共重合体、酢酸ビニルマレイン酸エステル共重合体、酢酸ビニルクロトン酸共重合体、酢酸ビニルアクリル酸共重合などの酢酸ビニル系共重合体およびこれらの塩等、合成高分子が挙げられる。
これらのなかで特に、カルボキシル基(塩の形態であることが好ましい)を有する高分子化合物(例えば、上記スチレン−アクリル酸樹脂、スチレン−マレイン酸、スチレン−無水マレイン酸、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、酢酸ビニルアクリル酸共重合体)、疎水性基を持つモノマーと親水性基を持つモノマーとの共重合体、および、疎水性基と親水性基とを合わせ持ったモノマーからなる重合体上記の塩としては、アルカリ金属、ジエチルアミン、アンモニア、エチルアミン、トリエチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、イソブチルアミン、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、アミノメチルプロパノール、モルホリンなどとの塩が好ましい。これらの共重合体は、重量平均分子量が3,000〜300,000であることが好ましく、より好ましくは10,000〜250,000である。
また、前記高分子が微粒子状となって水に分散してなる水分散体を使用するのも好ましい。これらの水分散体は、アクリル酸やメタクリル酸等の前記酸モノマーを含む合成高分子を適宜中和して得ることができる。酸モノマーの含有量は、全モノマーの1重量%〜15重量%とすることが好ましく、比較的長期間にわたって比較的安定で、凝集に対し耐性を有するインクジェットインクを与えることができる。
またこれらの微粒子は架橋していてもよい。例えば、全モノマーの0.1質量%〜3質量%を2官能以上の架橋性モノマーとすることで、架橋構造を有する微粒子とすることができる。架橋性モノマーはあまり大量に使用するとゲル化を生じさせるおそれがあるので、3重量%を超えないように使用することがこのましい。
このような水分散体の好ましい例は、例えば、スチレン、炭素原子数1〜8の(メタ)クリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリル酸等を使用した合成高分子を適宜中和してなる水分散体が挙げられる。
前記極性基を有する樹脂の分子量は、重量平均分子量に換算して10,000〜2,000,000の範囲がこのましく、より好ましくは、20,000〜250,000の範囲である。重量平均分子量が20,000より低いとインクの保存安定性が悪くなることがある。250,000より高いとインク吐出性に影響し、目詰まり等発生し易くなることがある。またガラス転移温度は−20℃〜+30℃の範囲が好ましい。また前記微粒子の粒径は、粒径が20nm〜500nmの範囲であり、より好ましくは、100nm〜300nmの範囲であり、吐出性に問題のないインクを得ることができる。
ここで粒子径の測定は、遠心沈降方式、レーザー回折方式(光散乱方式)、ESA方式、キャピラリー方式、電子顕微鏡方式などで行うことができる。好ましいのは、動的光散乱法を利用したマイクロトラックUPAによる測定である。
(水または水溶性有機溶媒)
水性インクに使用される水は、イオン交換、蒸留等の精製工程を経た純水または超純水が望ましい。また水溶性有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、等のケトン類;メタノール、エタノール、2−プロパノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ブタノール、2−メトキシエタノール、等のアルコール類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、2−ピロリドン、LEG−1、グリセロール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、及び/又はその類を使用することができる。
(界面活性剤または低表面張力有機溶媒)
水性インクには表面張力を適宜調整するため、界面活性剤または低表面張力有機溶媒を添加することができる。界面活性剤は特に限定されるものではなく、各種のアニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられ、これらの中では、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤が好ましい。
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩及びスルホン酸塩、高級アルキルスルホコハク酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩等が挙げられ、これらの具体例として、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、イソプロピルナフタレンスルホン酸塩、モノブチルフェニルフェノールモノスルホン酸塩、モノブチルビフェニルスルホン酸塩、ジブチルフェニルフェノールジスルホン酸塩などを挙げることができる。
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、脂肪酸アルキロールアミド、アルキルアルカノールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー、アルキルフェノールエトキシレート類、等を挙げることができ、これらの中では、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、アセチレングリコール、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールブロックコポリマー、アルキルフェノールエトキシレート類が好ましい。
その他の界面活性剤として、ポリシロキサンオキシエチレン付加物のようなシリコン系界面活性剤;パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、オキシエチレンパーフルオロアルキルエーテルのようなフッ素系界面活性剤;スピクリスポール酸、ラムノリピド、リゾレシチンのようなバイオサーファクタント等も使用することができる。
これらの界面活性剤は、単独で用いることもでき、又2種類以上を混合して用いることもできる。また、界面活性剤の溶解安定性等を考慮すると、そのHLBは、7〜20の範囲であることが好ましい。
市販のフッ素系界面活性剤として、ノベックFC−4430、FC−4432(以上、住友スリーエム製)、ゾニールFSO−100、FSN−100、FS−300、FSO(以上、デュポン製)、エフトップEF−122A、EF−351,352801、802(ジェムコ製)、メガファックF−470、F−1405、F474、F−444(DIC製)、サーフロンS−111、S−112、S−113、S121、S131、S132、S−141、S−145(旭硝子製)、フタージェントシリーズ(ネオス製)、フルオラッド(Fluorad)FCシリーズ(ミネソタ・マイニング・アンド・マニファクチュアリング・カンパニー製)、モンフロール(Monflor)(インペリアル・ケミカル・インダストリー製)、リコベット(Licowet)VPFシリーズ(ファルベベルケ・ヘキスト製)が挙げられる。
シリコン系界面活性剤として、KF−351A、KF−642、オルフィンPD−501、オルフィンPD−502、オルフィンPD−570(信越化学工業製)、BYK347、BYK348(ビックケミー・ジャパン製)などが挙げられる。
ポリオキシエチレンアルキルエーテル系活性剤としては、BTシリーズ(日光ケミカルズ)、ノニポールシリーズ(三洋化成)、D-,P-シリーズ(竹本油脂)、EMALEX DAPEシリーズ(日本エマルジョン)、ペグノールシリーズ(東邦化学工業)が挙げられる。ポリエチレングリコールアルキルエステル系として、ペグノール(東邦化学工業)が挙げられる。
アセチレングリコール系界面活性剤としては、オルフィンE1010、STG、Y(以上、日信化学社製)、サーフィノール104、82、420、440、465、485、TG(Air Products and Chemicals Inc.製)が挙げられる。
また、低表面張力有機溶媒を使用することもできる。例えばグリコールエーテル化合物としては、ジエチレングリコールモノ(炭素数1〜8のアルキル)エーテル、トリエチレングリコールモノ(炭素数1〜8のアルキル)エーテル、プロピレングリコールモノ(炭素数1〜6のアルキル)エーテル、ジプロピレングリコールモノ(炭素数1〜6のアルキル)エーテルを挙げることができ、これらを1種または2種以上の混合物として使用することができる。
具体的には、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノペンチルエーテル、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノヘプチルエーテル、ジエチレングリコールモノオクチルチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノペンチルエーテル、トリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、トリエチレングリコールモノヘプチルエーテル、トリエチレングリコールモノオクチルチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノペンチルエーテル、プロピレングリコールモノヘキシルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノペンチルエーテル、ジプロピレングリコールモノヘキシルエーテルなどを挙げることができる。
グリコールエーテルや界面活性剤等は、インクの表面張力を調整するのに使用することができる。具体的にはインクの表面張力が15mN/m〜30mN/m以下になるよう適宜添加でき、界面活性剤の添加量は、インク組成物に対して0.1〜10質量%程度の範囲が好ましく、より好ましくは0.3〜2質量%である。表面張力は16〜28の範囲とすることがなお好ましく、18〜25の範囲が最も好ましい。
(湿潤剤)
さらに水性インクには、インクの乾燥防止を目的として、湿潤剤を同様に添加することができる。乾燥防止を目的とする湿潤剤のインク中の含有量は3〜50質量%であることが好ましい。前記湿潤剤としては特に限定はないが、水との混和性がありインクジェットプリンターのヘッドの目詰まり防止効果が得られるものが好ましい。例えば、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、分子量2000以下のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−メチルペンタン−2,4−ジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−ノナンジオール、1,2−オクタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−ヘプタンジオール、1,2−ノナンジオール、1,2−オクタンジオール等のジオール化合物、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、メソエリスリトール、ペンタエリスリトール、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、ε−カプロラクタム等の含窒素複素環化合物等が挙げられる。中でも、プロピレングリコール、1,3−ブチルグリコールを含むことが安全性を有し、かつインク乾燥性、吐出性能に優れた効果が見られる。
(浸透剤)
さらに水性インクは、被記録媒体であるフィルムへの浸透性改良や記録媒体上でのドット径調整を目的として浸透剤を添加することができる。浸透剤としては、例えばエタノール、イソプロピルアルコール等の低級アルコール、エチレングリコールヘキシルエーテルやジエチレングリコールブチルエーテル等のアルキルアルコールのエチレンオキシド付加物やプロピレングリコールプロピルエーテル等のアルキルアルコールのプロピレンオキシド付加物等が挙げられる。インク中の浸透剤の含有量は0.01〜10質量%であることが好ましい。
その他必要に応じて防腐剤、粘度調整剤、pH調整剤、キレート化剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を添加することができる。
(製造方法)
本発明で使用する水性インクの製造方法には何ら限定されるものではない。前記顔料等の色材と、前記極性基を有する樹脂と、水または水溶性有機溶媒と、必要に応じて界面活性剤等の添加剤と仕込み分散させて水性インクとしてもよいし、予め顔料等色材の濃度の高いミルベースを作成し、希釈・適宜添加剤を添加して水性インクとしてもよい。以下、後者のミルベースを作成した後水性インクとする方法について述べる。
ミルベースの製造方法としては、
(1)顔料分散剤及び水を含有する水性媒体に色材を添加した後、攪拌・分散装置を用いて色材を該水性媒体中に分散させることにより、水性顔料分散液を調製する方法。
(2)色材、及び顔料分散剤を2本ロール、ミキサー等の混練機を用いて混練し、得られた混練物を水を含む水性媒体中に添加し、攪拌・分散装置を用いて水性顔料分散液を調製する方法。
(3)メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン等のような水と相溶性を有する有機溶剤中に顔料分散剤を溶解して得られた溶液に色材を添加した後、攪拌・分散装置を用いて白色顔料を有機溶液中に分散させ、次いで水性媒体を用いて転相乳化させた後、前記有機溶剤を留去し水性顔料分散液を調製する方法。
などが挙げられる。
攪拌・分散装置としては、例えば、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ボールミル、ロールミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、ナノマイザー等を挙げることができ、これらのうちの1つを単独で用いてもよく、2種類以上装置を組み合わせて用いてもよい。
印刷方法についてはインクジェット印刷であることが好ましいが、オフセット印刷、活版印刷、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷等他の印刷方法によって印刷しても、またこれらの2種以上の印刷方法を組み合わせて印刷しても構わない。
以下に実施例と比較例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、例中の部及び%は特に断りの無い限り質量基準である。
〔インクの塗工適性評価〕
バーコーター(No.6)でA4サイズのフィルムに水性インクを塗工し、目視にてはじきの数を計測した。
○:はじきが無い。
×:はじきが一箇所以上ある。
〔フィルムの耐熱性評価〕
印刷後、90℃で1分間乾燥させた時のフィルムの外観について目視にて評価した。
○:よれ、皺、フィルムの変形等の外観不良がほとんど無い。
△:若干のよれ、皺、フィルムの変形等の外観不良が見られる。
×:著しいよれ、皺、フィルムの変形等の外観不良が見られる。
〔被印刷適性評価〕
記録媒体の(A)面に対して安定したインク転移(印刷)が行われたか否かを目視にて評価した。
○:印刷がかすれたり、印字できない部分等が無く、良好に印刷された。
×:印刷がかすれたり、印字できない部分等が有り、印刷不良がある。
〔印刷後のインク密着性評価〕
セロハンテープ(ニチバン製)剥離試験を行い、目視にて評価した。
○:剥離無し。
×:剥離有り。
〔水性インクの調製例〕
水性インクは、市販のシアン色インク(ヒューレッドパッカード社製、HP DESIGNJET L25500)を用い、インク塗工適性評価を行った。インクを表面張力計(協和界面科学製:CBVP−A3)を用いて、白金プレート法により温度25℃における表面張力を測定した結果、18.2mN/mであった。同様に、粘度計(東亜ディーケーケー製:TVE−25Lを用いて、25℃における粘度測定した結果、3.22mPa・sであった。
水性インクを用いた印刷物の調整に関しては記録媒体の(A2)面に対して、インクジェット印刷機「HP DESIGNJET L25500」(ヒューレッドパッカード製)を用い、インクジェット印刷を行った。
実施例1
実施例1
(A)層用樹脂として、ノルボルネン系モノマーの開環重合体〔三井化学株式会社製「アペル APL6015T」、MFR:10g/10分(260℃、21.18N)、ガラス転移点:145℃;以下、「COC(1)」という。〕20部及びノルボルネン系モノマーの開環重合体〔三井化学株式会社製「アペル APL8008T」、MFR:15g/10分(260℃、21.18N)、ガラス転移点:70℃;以下、「COC(3)」という。〕80部との樹脂混合物を用いた。この樹脂を、(A)層用押出機(口径50mm)に供給して200〜230℃で溶融し、その溶融した樹脂をフィードブロックを有するTダイ・チルロール法の共押出多層フィルム製造装置(フィードブロック及びTダイ温度:250℃)に供給して溶融押出を行って、フィルムの層構成が(A)の単層構成で、全層の厚さが70μmであるフィルムを得た後、(A)層表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬(和光純薬工業株式会社製、ぬれ張力試験用混合液)による表面張力は45mN/mであった。
実施例2
(A)層用樹脂として、COC(1)50部及びCOC(3)50部の樹脂混合物を用いた。実施例1と同様にして、フィルムの層構成が(A)の単層構成で、全層の厚さが30μmであるフィルムを得た後、(A)層表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による表面張力は45mN/mであった。
実施例3
(A)層用樹脂として、COC(1)60部及びCOC(3)30部及び直鎖状中密度ポリエチレン〔密度:0.930g/cm、融点125℃、MFR:5g/10分(190℃、21.18N);以下、「LMDPE」という。〕10部との樹脂混合物を用いた。実施例1と同様に溶融押出を行って、フィルムの層構成が(A)の単層構成で、全層の厚さが30μmであるフィルムを得た後、(A)層表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による表面張力は45mN/mであった。
実施例4
(A)層用樹脂として、COC(1)60部及びCOC(3)30部及びメタロセン触媒を用いて重合されたプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体〔密度:0.900g/cm、融点135℃、MFR:4g/10分(230℃、21.18N)、;以下、「MRCP」という。)10部との樹脂混合物を用いた。実施例1と同様に溶融押出を行って、フィルムの層構成が(A)の単層構成で、全層の厚さが20μmであるフィルムを得た後、(A)層表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による表面張力は45mN/mであった。
実施例5
(A)層用樹脂として、COC(1)40部及びCOC(3)40部及びLMDPE20部との樹脂混合物を用いた。実施例1と同様に溶融押出を行って、フィルムの層構成が(A)の単層構成で、全層の厚さが50μmであるフィルムを得た後、(A)層表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による表面張力は45mN/mであった。
実施例6
(A)層用樹脂として、ノルボルネン系モノマーの開環重合体〔三井化学株式会社製「アペル AP6013T」、MFR:15g/10分(260℃、21.18N)、ガラス転移温度:125℃;以下、「COC(2)」という。〕60部及び高密度ポリエチレン〔密度:0.960g/cm、融点128℃、MFR:10g/10分(190℃、21.18N);以下、「HDPE」という。〕を40部の樹脂混合物を用いた。実施例1と同様に溶融押出を行って、フィルムの層構成が(A)の単層構成で、全層の厚さが40μmであるフィルムを得た後、(A)層表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による表面張力は43mN/mであった。
実施例7
(A)層用樹脂として、COC(1)70部及びCOC(3)10部、LMDPE10部及びMRCP10部の樹脂混合物を用いた。また、樹脂層(B)用樹脂として、MRCPを用いた。これらの樹脂を、(A)層用押出機(口径50mm)、(B)層用押出機(口径50mm)に供給して200〜230℃で溶融し、その溶融した樹脂をフィードブロックを有するTダイ・チルロール法の共押出多層フィルム製造装置(フィードブロック及びTダイ温度:250℃)にそれぞれ供給して共溶融押出を行って、フィルムの層構成が(A)/(B)=20μm/20μmの多層構成で、全層の厚さが40μmである共押出多層フィルムを得た。層(A)表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による表面張力は40mN/mであった。
実施例8
(A)層用樹脂として、COC(1)50部及びCOC(3)50部の樹脂混合物を用いた。中間層(B)用樹脂としてMRCPを用い、更に、最外層用樹脂として、COC(1)50部及びCOC(3)50部の樹脂混合物を用いた。これらの樹脂を、(A)層用押出機(口径50mm)、(B)層用押出機(口径50mm)、最外層用押出機(口径50mm)に供給して230〜250℃で溶融し、その溶融した樹脂をフィードブロックを有するTダイ・チルロール法の共押出多層フィルム製造装置(フィードブロック及びTダイ温度:250℃)にそれぞれ供給して共溶融押出を行って、フィルムの層構成が10μm/30μm/10μmの多層構成で、全層の厚さが50μmである共押出多層フィルムを得た。実施例1と同様にして、片方の表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による表面張力は42mN/mであった。
実施例9
(A)層用樹脂として、COC(1)40部及びCOC(3)60部の樹脂混合物を用いた。層(B)用樹脂としてLMDPEを用い、更に、最外層用樹脂として、COC(1)40部及びCOC(3)60部の樹脂混合物を用いて、フィルムの層の厚さが10μm/30μm/10μm(合計50μm)となるように実施例8と同様にして、共押出多層フィルムを得た後、片方の表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による表面張力は43mN/mであった。
実施例10
(A)層用樹脂として、COC(1)70部及び酸変性オレフィン系樹脂脂として、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体〔密度:0.940g/cm、MA含有量18%;以下、「MA1」と記載〕30部の樹脂混合物を用いた。層(B)用樹脂としてLMDPE80部及びCOC(3)20部の樹脂混合物を用いた。更に、最外層用樹脂として、COC(1)70部及びLMDPE20部及びHDPE10部の樹脂混合物を用いて、フィルムの層の厚さが20μm/30μm/20μm(合計70μm)となるように実施例8と同様にして、共押出多層フィルムを得た後、層(A)の表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による表面張力は43mN/mであった。
実施例11
(A)層用樹脂として、COC(1)60部及びCOC(3)20部及び酸変性オレフィン系樹脂脂として、エチレン−アクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体〔密度:1.00g/cm、コポリマー含有量15%;以下、「MA2」と記載〕20部の樹脂混合物を用いた。層(B)用樹脂としてMRCP80部及びCOC(3)20部の樹脂混合物を用いた。更に、最外層用樹脂として、COC(3)70部及びLMDPE30部の樹脂混合物を用いて、フィルムの層の厚さが20μm/30μm/20μm(合計70μm)となるように実施例8と同様にして、共押出多層フィルムを得た後、層(A)の表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による表面張力は43mN/mであった。
実施例12
(A)層用樹脂として、COC(1)50部及びCOC(3)50部の樹脂混合物を用いた。層(B)用樹脂としてLMDPE50部及びMRCP50部の樹脂混合物を用いた。更に、最外層用樹脂として、COC(1)20部及びCOC(2)60部及びLMDPE20部の樹脂混合物を用いて、フィルムの層の厚さが20μm/30μm/20μm(合計70μm)となるように実施例8と同様にして、共押出多層フィルムを得た後、層(A)の表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による表面張力は43mN/mであった。
比較例1
(A)層用樹脂として、ホモプロピレン〔密度:0.900g/cm、融点160℃、MFR:7g/10分(230℃、21.18N)、;以下、「HOPP」という。)を用いて、30μmの単層フィルムを得た後、片方の表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による表面張力は43mN/mであった。
比較例2
(A)層用樹脂として、直鎖状低密度ポリエチレン〔密度:0.905g/cm、融点90℃、MFR:5g/10分(190℃、21.18N);以下、「LLDPE」という。〕を用いて、30μmの単層フィルムを得た後、片方の表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による表面張力は40mN/mであった。
以上で得られた印刷物に対しての評価結果を表1〜2に示す。
Figure 0005327562
Figure 0005327562
本発明の水性インクジェット印刷物は、例えば、屋外広告(ポスター、のぼり等)、ラベル、壁紙、包装用フィルム、葉書、OHPシート、インジェット紙、くじ券、帳票等、種々の目的に用いることができる。

Claims (8)

  1. ガラス転移温度が70〜180℃のノルボルネン系単量体と、エチレン、プロピレン、1−ブテン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン及び1,4−ヘキサジエンからなる群から選ばれる1種以上のオレフィンとを共重合したノルボルネン系共重合体である環状ポリオレフィン系樹脂(a1)を主成分とする層(A)を有し、層(A)の表面処理度が40mN/m以上である単層又は多層フィルム(I)における層(A)の処理面に、
    少なくとも、色材と、極性基を有する樹脂と、水または水溶性有機溶媒とを含んでなり、25℃における表面張力が15mN/m〜30mN/mの範囲であり、且つ粘度が5mPa・s以下である水性インクを用い、インクジェット記録方式で印字することを特徴とする水性インクジェット印刷物の製造方法。
  2. 前記樹脂層(A)が、更にポリオレフィン系樹脂(a2)及び/又は酸変性オレフィン系樹脂(a3)を含有するものである請求項1記載の水性インクジェット印刷物の製造方法。
  3. 前記フィルム(I)が、更にポリオレフィン系樹脂(b)を主成分とする樹脂層(B)を有する多層フィルムである請求項1〜2の何れか1項記載の水性インクジェット印刷物の製造方法。
  4. 前記ポリオレフィン系樹脂(b)がポリエチレン系樹脂(b1)とポリプロピレン系樹脂(b2)との混合物である請求項3記載の水性インクジェット印刷物の製造方法。
  5. 前記水性インクが界面活性剤または低表面張力有機溶媒を含むものである請求項1〜4の何れか1項記載の水性インクジェット印刷物の製造方法。
  6. 前記前記フィルム(I)を加熱しながら印字するか、または印字後の当該前記フィルム(I)を加熱する請求項1〜5の何れか1項記載の水性インクジェット印刷物の製造方法。
  7. ガラス転移温度が70〜180℃の、ノルボルネン系単量体と、エチレン、プロピレン、1−ブテン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン及び1,4−ヘキサジエンからなる群から選ばれる1種以上のオレフィンを共重合したノルボルネン系共重合体である環状ポリオレフィン系樹脂(a1)を主成分とする層(A)と、ポリオレフィン系樹脂(b)を含有する層(B)とが積層され、前記層(A)と前記層(B)との合計厚みに対する層(B)の比率が5〜70%であり、かつ層(A)表面が40mN/m以上であって、層(A)表面に水性インクを用いてインクジェット印刷するものであることを特徴とする水性インクジェットインク用記録媒体。
  8. 請求項7記載の水性インクジェットインク用記録媒体の層(A)表面に水性インクを用いてインクジェット印刷したものであることを特徴とする水性インクジェット印刷物。
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