JP5327561B2 - インクジェットインク用記録媒体、インクジェット印刷物及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は、プラスチック基板上であってもインクジェット記録を可能とするインクジェット記録媒体に関するものであり、詳しくは、インクジェットインクとプラスチック基板との密着性が優れ、印刷後の印刷面の剥がれ等が無いインクジェット記録媒体とその印刷物に関するものである。
近年、マルチメディアの技術進歩に伴い、インクジェット方式のプリンターが業務用、民生用を問わず広く普及している。インクジェット方式のプリンターは、マルチカラー化および画像の大型化が容易であることや、平滑面だけでなく凹凸面への印刷が可能であったり、オンデマンド印刷が可能である等の多くの特徴を有している。
インクジェット記録媒体として紙を支持体としているものは、水に触れた際に支持体が波打つコックリングと呼ばれる現象が発生したり、あるいは破けたりすることにより見栄えが悪くなる問題があった。このような問題を解決するために、プラスチックフィルム自体を支持体とし、この上にインク受理層を設けたインクジェット記録媒体を用い、これに印刷を施すことが提案されている(例えば、特許文献1〜4参照。)。このような媒体は、耐水性に優れ、屋外広告やポスター、ラベル、壁紙等としても使用されうるものである。しかしながら、プラスチックフィルムの表面はインクジェットインクとの密着性が悪く、通常アンカー層、プライマー層、下引き層、接着層等と称される層を当該フィルム表面に形成させた上にポリウレタンやポリアクリル等を主成分とするインク受容層を設ける工程が必須であった。この様な表面処理工程は、コストアップに繋がるだけでなく、工程が増えることから生産に掛かる時間も多く必要となる。更には、表面処理を溶剤を含む塗料の塗布によって行なう場合には、含有する溶剤を除去する工程が必要であり、溶剤が有機溶剤である場合には環境への負荷も大きくなる。一方、インク受理剤を塗工する替わりにフィルム表面に微多孔を設け、該微多孔がインクを吸収することにより固着させるインクジェット記録媒体も報告されている(例えば、特許文献5参照。)。しかし、延伸工程が必要であることや、微多孔が光を乱反射するため、通常、フィルムが白色となり透明性が求められる分野によっては用途が制限される場合があった。
特開平10−119428号公報 特開2001−150612号公報 特開2002−103802号公報 特開2007−130780号公報 特開2001−181424号公報
本発明の課題は、上記のような問題に鑑みなされたものであり、従来のプラスチックフィルムを基材として用いる際に必須の表面処理や延伸工程を行なわずともインクとの密着性が良好で、インクジェット印刷後の剥がれ等の問題が生じないインクジェット記録媒体とその印刷物およびその製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、環状ポリオレフィン系樹脂を主成分とする層を表面層に有するプラスチックフィルムをインクジェット記録媒体として用いることによって、上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成した。
即ち、本発明は、環状ポリオレフィン系樹脂(a1)を主成分とする層(A)を有する単層または多層のフィルムであって、層(A)表面を40dyne/cm以上に処理したことを特徴とするインクジェットインク用記録媒体、および当該記録媒体における処理面にインクジェット印刷を施してなることを特徴とする印刷物並びにそれらの製造方法を提供するものである。
本発明によって得られるインクジェット印刷物は、単層または多層のフィルム上に直接インクジェット印刷を施すことにより簡便に得られるものである。目的とする性能(透明性、剛性、加工性等)や用途(包装材、ポスター、ラベル等)に応じて多層フィルムの層構成を選択することで容易に設計変更が可能であり、汎用性に優れる。得られる印刷物は、印刷層と基材とするフィルムとの密着性が良好であることにより、長期で保存しても印刷部分の剥がれ等が生じず、そのまま使用しても、又この印刷物を二次加工し、袋状等にすることも可能である。
本発明のインクジェット印刷物の支持体として機能するプラスチックフィルムは、少なくとも環状ポリオレフィン系樹脂(a1)を主成分とする層(A)を有する、単層フィルムまたは多層フィルム(I)である。この層(A)は支持体としての機能と同時に、インクとの易接着層としても機能を有する。尚、本発明において「主成分とする」とは、当該特定の樹脂を、層を形成する樹脂組成物全量に対して50質量%以上含有する事を言うものであり、好ましくは55質量%以上が特定の樹脂であることを言う。
前記環状ポリオレフィン系樹脂(a1)としては、例えば、ノルボルネン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、環状共役ジエン重合体等が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体が好ましい。また、ノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体(以下、「COP」という。)、ノルボルネン系単量体とエチレン等のオレフィンを共重合したノルボルネン系共重合体(以下、「COC」という。)等が挙げられる。さらに、COP及びCOCの水素添加物は、特に好ましい。また、環状オレフィン系樹脂の重量平均分子量は5,000〜500,000が好ましく、より好ましくは7,000〜300,000である。
前記ノルボルネン系重合体と原料となるノルボルネン系単量体は、ノルボルネン環を有する脂環族系単量体である。このようなノルボルネン系単量体としては、例えば、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、エチリデンノルボルネン、ビニルノルボルネン、エチリデンテトラシクロドデセン、ジシクロペンタジエン、ジメタノテトラヒドロフルオレン、フェニルノルボルネン、メトキシカルボニルノルボルネン、メトキシカルボニルテトラシクロドデセン等が挙げられる。これらのノルボルネン系単量体は、単独で用いても、2種以上を併用しても良い。
前記ノルボルネン系共重合体は、前記ノルボルネン系単量体と共重合可能なオレフィンとを共重合したものであり、このようなオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン等の炭素原子数2〜20個を有するオレフィン;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン等のシクロオレフィン;1,4−ヘキサジエン等の非共役ジエンなどが挙げられる。これらのオレフィンは、それぞれ単独でも、2種類以上を併用することもできる。
前記環状ポリオレフィン系樹脂(a1)として用いることができる市販品として、ノルボルネン系モノマーの開環重合体(COP)としては、例えば、日本ゼオン株式会社製「ゼオノア(ZEONOR)」等が挙げられ、ノルボルネン系共重合体(COC)としては、例えば、三井化学株式会社製「アペル」、ポリプラスチックス社製「トパス(TOPAS)」等が挙げられる。
前記のように、環状ポリオレフィン系樹脂(a1)の樹脂層(A)を形成する樹脂成分に対する含有率は、得られる単層または多層フィルム(記録媒体)(I)の表面処理度を容易に高められる点、並びにインクジェットインクとの密着性の観点から50質量%以上であることを必須とするものである。これよりも低い含有率では、目的とする性能を有するフィルムが得られにくい。特に好ましいのは80質量%以上である。
また、前記環状ポリオレフィン樹脂(a1)のガラス転移点(Tg)は、得られるフィルム(I)の剛性の観点からは60℃以上であることが好ましい。後述するような、更にイージーピール性等を発現させるためにその他の樹脂層(B)を積層させた多層のフィルム(I)とする場合、共押出積層法による製造が可能である点と、工業的原料入手容易性の観点から、Tgが200℃以下であることが好ましい。特に望ましくは70℃〜180℃である。この様なTgを有する環状ポリオレフィン系樹脂(a1)としては、ノルボルネン系単量体の含有比率が30〜90質量%の範囲であることが好ましく、より好ましくは40〜90質量%、更に好ましくは50〜85質量%である。含有比率がこの範囲にあれば、フィルムの剛性、加工安定性が向上する。尚、本発明におけるガラス転移点、融点は示差走査熱量測定(DSC)にて測定したものである。
一方、高ガラス転移点(Tg)のノルボルネン系共重合体は引っ張り強度が低く、極端に切れやすく、裂けやすい場合もあるため、成膜性時・スリット時の引き取りや巻き取り適性やヒートシール強度とのバランスを考慮し、高Tg品と100℃未満のガラス転移点を有する低Tg品とをブレンドすることも好ましいものである。また包装機械特性(製袋及び物品充填時にシール面にシワや収縮が起こらない、ヒートシール部からピンホール等発生しない観点)から、後述するようなポリオレフィン系樹脂(b)を主成分とする樹脂層(B)を積層した多層フィルムとすることが好ましい。
特に剛性が高すぎて、輸送時の落下により簡単に裂ける・破袋するあるいは包装体として用いる際のシール開始温度が高くなりすぎるあるいはヒートシール直後の強度維持(ホットタック性)等の改善は、Tg100℃未満のCOCを配合することにより、落袋強度や包装機械適性をも向上できる。またCOCと相溶性の良い、環状構造を含有しないポリオレフィン系樹脂(a2)、酸変性オレフィン系樹脂(a3)、あるいは低融点や低Tgを有するゴム系エラストマー樹脂等を配合することも有効である。
樹脂層(A)において、環状ポリオレフィン樹脂(a1)と併用できるポリオレフィン系樹脂(a2)としては、炭素数2〜6のα−オレフィンの単独重合体又は共重合体が挙げられる。共重合形式は、ブロック共重合体であってもランダム共重合体であってもよい。ポリオレフィン系樹脂(a2)としては、例えば、ポリエチレン系樹脂(a2−1)やポリプロピレン系樹脂(a2−2)等が挙げられる。
前記ポリエチレン系樹脂(a2−1)としては、包装材として使用する際の高ヒートシール強度が容易に発現され、また耐ピンホール性や、後述する樹脂層(B)を積層させた際の層間強度の維持のために、密度が0.900〜0.950g/cmであるものが好ましく、より好ましくは密度が0.905〜0.945g/cmのものである。
前記ポリエチレン系樹脂(a2−1)としては、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)等のポリエチレン樹脂や、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)等が挙げられ、単独でも、2種以上を混合して使用しても良い。これらの中でもシール性、剛性、インクとの密着性のバランスが良好なことからVLDPE、LDPE、LLDPE、MLDPEが好ましい。
LDPEとしては高圧ラジカル重合法で得られる分岐状低密度ポリエチレンであれば良く、好ましくは高圧ラジカル重合法によりエチレンを単独重合した分岐状低密度ポリエチレンである。
LLDPE、MLDPEとしては、シングルサイト触媒を用いた低圧ラジカル重合法により、エチレン単量体を主成分として、これにコモノマーとしてブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1、4−メチルペンテン等のα−オレフィンを共重合したものである。LLDPE中のコモノマー含有率としては、0.5〜20モル%の範囲であることが好ましく、1〜18モル%の範囲であることがより好ましい。
前記シングルサイト触媒としては、周期律表第IV又はV族遷移金属のメタロセン化合物と、有機アルミニウム化合物及び/又はイオン性化合物の組合せ等のメタロセン触媒系などの種々のシングルサイト触媒が挙げられる。また、シングルサイト触媒は活性点が均一であるため、活性点が不均一なマルチサイト触媒と比較して、得られる樹脂の分子量分布がシャープになるため、フィルムに成膜した際に低分子量成分の析出が少なく、シール強度の安定性や耐ブロッキング適性に優れた物性の樹脂が得られるので好ましい。
前述のようにポリエチレン系樹脂(a2−1)の密度は0.900〜0.950g/cmであることが好ましい。密度がこの範囲であれば、適度な剛性を有し、ヒートシール強度や耐ピンホール性等の機械強度も優れ、フィルム成膜性、押出適性が向上する。また、融点は、一般的には60〜130℃の範囲であることが好ましく、70〜125℃がより好ましい。融点がこの範囲であれば、加工安定性や前記環状ポリオレフィン系樹脂(a1)と混合して用いた際の押出加工性が向上する。また、前記ポリエチレン系樹脂(a2−1)のMFR(190℃、21.18N)は2〜20g/10分であることが好ましく、3〜10g/10分であることがより好ましい。MFRがこの範囲であれば、フィルムの押出成形性が向上する。
このようなポリエチレン系樹脂(a2−1)は前記環状ポリオレフィン系樹脂(a1)との相溶性も良いため、フィルムとしての透明性も維持することができる。また接着性樹脂等を使用することなく、樹脂層(A)と後述する樹脂層(B)との層間接着強度も保持でき、柔軟性も有しているため、耐ピンホール性も良好となる。さらに、耐ピンホール性を向上させる場合はLLDPE、MLDPEを用いることが好ましい。
又、前記ポリプロピレン系樹脂(a2−2)としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン・α−オレフィンランダム共重合体、たとえばプロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、メタロセン触媒系ポリプロピレンなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用してもよいし、併用してもよい。望ましくはプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体であり、特にメタロセン触媒を用いて重合されたプロピレン・α−オレフィンランダム重合体が好ましい。これらのポリプロピレン系樹脂を用いた場合には、フィルムの耐熱性が向上し、軟化温度を高くすることができるため、100℃以下のボイル、あるいはホット充填、または100℃以上のレトルト殺菌等の蒸気・高圧加熱殺菌特性に優れた包装材としても用いることが出来る。
また、これらのポリプロピレン系樹脂(a2−2)は、MFR(230℃)が0.5〜30.0g/10分で、融点が110〜165℃であるものが好ましく、より好ましくは、MFR(230℃)が2.0〜15.0g/10分で、融点が115〜162℃のものである。MFR及び融点がこの範囲であれば、ヒートシール時のフィルムの収縮が少なく、更にフィルムの成膜性も向上する。
さらに、環状ポリオレフィン系樹脂(a1)と併用することができる樹脂としては、酸変性オレフィン系樹脂(a3)が挙げられる。酸変性オレフィン系樹脂(a3)を併用すると、さらにインクジェットインクとの密着性が向上し、印刷物としての長期保存安定性が向上する。
前記酸変性オレフィン系樹脂(a3)の主成分であるオレフィン成分は特に限定されないが、エチレン、プロピレン、イソブチレン、2−ブテン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等の炭素数2〜6のアルケンが好ましく、これらの混合物を用いてもよい。この中で、エチレン、プロピレン、イソブチレン、1−ブテン等の炭素数2〜4のアルケンがより好ましく、エチレン、プロピレンがさらに好ましく、エチレンが最も好ましい。また、酸変性ポリオレフィン系樹脂(a3)は、(メタ)アクリル酸エステル成分を含有している必要がある。(メタ)アクリル酸エステル成分としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。入手の容易さとインクとの密着性の点から、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシルがより好ましく、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルがより好ましい。また、(メタ)アクリル酸エステル成分は、前記オレフィン成分と共重合されていればよく、その形態は限定されず、共重合の状態としては、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合(グラフト変性)などが挙げられる。(なお、「(メタ)アクリル酸〜」とは、「アクリル酸〜またはメタクリル酸〜」を意味する。)具体的には例えば、エチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、エルバロイ(商品名:三井・デュポンポリケミカル株式会社製)、アクリフト(商品名:住友化学株式会社製)等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
また、酸変性ポリオレフィン樹脂(a3)は、不飽和カルボン酸成分により酸変性されたものでもよい。不飽和カルボン酸成分としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等が挙げられる。中でもアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸が好ましく、特にアクリル酸、無水マレイン酸が好ましい。また、不飽和カルボン酸成分は、前記オレフィン成分と共重合されていればよく、その形態は限定されず、共重合の状態としては、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合(グラフト変性)などが挙げられる。具体的には例えば、エチレン−アクリル酸共重合体としては、ニュクレル(商品名:三井・デュポンポリケミカル株式会社製)等が挙げられる。エチレン−(メタ)アクリル酸エステル−無水マレイン酸共重合体としては、ボンダイン(商品名:東京材料株式会社製)等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
前記酸変性オレフィン系樹脂(a3)の酸変性率としては、インクジェットインクとの密着性と、フィルム(I)を巻き取って保管する場合のブロッキングの抑制、印刷後のシワ等の外観不良の抑制等のバランスに優れる点から0.5〜40%のものを用いることが好ましく、0.5〜35%であることが更に好ましく、0.5〜30%であることが特に好ましい。
又、前述のように、本発明の印刷物を包装材として使用する際、ヒートシール性の向上や、更には易開封性を付与させる等のために、環状ポリオレフィン系樹脂(a1)を主成分とする樹脂層(A)に、更にポリオレフィン系樹脂(b)を主成分とする樹脂層(B)を積層させてなる多層のフィルム(I)とすることもできる。
多層構成のフィルム(I)にインクジェット印刷した後、これを蓋材等として使用する場合、容器の最外層と密着させ、所望の部位に温度をかけることによって、接着させることは一つの目的であるが、更に引剥がした際に凝集破壊又は界面剥離されることによる易開封性を容易に発現させることができる点などの観点により、前記ポリオレフィン系樹脂(b)がポリエチレン系樹脂(b1)とポリプロピレン系樹脂(b2)との混合物であることが好ましい。
前記ポリエチレン系樹脂(b1)としては、例えば、超低密度ポリエチレン(VLDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)等のポリエチレン樹脂や、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−メチルメタアクリレート共重合体(EMMA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート(EMA)共重合体、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体(E−EA−MAH)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、エチレン−メタクリル酸共重合体(EMAA)等のエチレン系共重合体;更にはエチレン−アクリル酸共重合体のアイオノマー、エチレン−メタクリル酸共重合体のアイオノマー等が挙げられる。これらの中でも、後述するポリプロピレン系樹脂(b2)と併用した際の相溶性の観点と、容易に凝集破壊可能であること、並びに剥がれた後の表面外観性等の観点から、密度が0.91〜0.93g/cmの低密度ポリエチレン、又は密度が0.94〜0.96g/cmの高密度ポリエチレンを用いることが好ましい。更に、メルトフローレート(190℃、21.18N)が1g/10分以上であることが成膜性の観点からは好ましいものである。
前記ポリプロピレン系樹脂(b2)としては、例えば、プロピレン単独重合体、プロピレン−α−オレフィン共重合体、たとえばプロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体、プロピレン−エチレン−ブテン−1共重合体、メタロセン触媒系ポリプロピレンなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で使用してもよいし、併用してもよい。得られる多層フィルム(I)に印刷した後、これを包装材とした際の易開封性が良好である点、シール強度の調整が容易である点等の観点から、エチレン−プロピレンランダム共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン−1三元共重合体又はシングルサイト触媒を用いて重合されたエチレン−プロピレン共重合体を用いることが好ましい。
また、これらのポリプロピレン系樹脂(b2)は、MFR(230℃)が0.5〜30.0g/10分で、融点が120〜165℃であるものが好ましく、より好ましくは、MFR(230℃)が2.0〜15.0g/10分で、融点が125〜162℃のものである。MFR及び融点がこの範囲であれば、シール時のフィルムの収縮が少なく、更にフィルムの成膜性も向上する。
更に、前記ポリエチレン系樹脂(b1)と前記ポリプロピレン系樹脂(b2)との使用割合としては、(b1)/(b2)で表される質量比として10〜40/60〜90の範囲であることが容易に易開封性を発現できる点から好ましく、特に15〜30/70〜85の範囲であることが好ましい。
又、樹脂層(B)には、更に易開封性を容易にしたり、シール強度を調整したりする観点から、ポリブテン系樹脂等のその他のオレフィン系樹脂や、前述の環状ポリオレフィン系樹脂を併用しても良い。このとき、易開封性を損なわない観点から、前記ポリエチレン系樹脂(b1)と前記ポリプロピレン系樹脂(b2)との合計質量が樹脂層(B)中の樹脂成分中に85質量%以上で含まれていることが好ましい。
又、多層構成のフィルム(I)において、樹脂層(B)は単層であっても、2層以上の多層であってもよい。特にフィルムの剛性の維持の観点からは、2層以上を積層させることが好ましく、樹脂層(A)と最外層の間の中間層として、特にメタロセン触媒を用いて合成されたポリプロピレン系樹脂や直鎖状低密度ポリエチレンを用いることがフィルムの機械的強度を維持する観点から好ましいものである。
また、特に、樹脂層(A)の反対面の最外層にプロピレン−エチレンブロック共重合体を用いる場合、表面が梨地状に改質され、多層構成のフィルム(I)をロール状に巻き取る際のシワの発生を抑制することができ、また、ロール状で保管した際のブロッキングを軽減できる。ここでプロピレン−エチレンブロック共重合体は、プロピレンとエチレンとをブロック重合した樹脂であり、例えば、プロピレン単独重合体の存在下で、エチレンの重合、又はエチレン及びプロピレンの重合を行って得られるプロピレン−エチレンブロック共重合体等が挙げられる。
また、樹脂層(A)の反対面の最外層に結晶性プロピレン系樹脂とエチレン・プロピレンゴム(以下、「EPR」という。)との混合樹脂を用いると、表面を梨地状に容易に改質することができる。このとき用いる結晶性プロピレン系樹脂としては、汎用性の高いプロピレン単独重合体が好ましい。一方、このとき用いるEPRとしては、重量平均分子量が40万〜100万の範囲であるものがフィルム表面に凹凸を形成させて、表面を梨地状に改質できる点で好ましく、50〜80万の範囲であることがより好ましい。また、混合樹脂中のEPRの含有率は、5〜35質量%の範囲であることがフィルム表面を均質に梨地状に改質できる点で好ましい。この結晶性プロピレン系重合体とEPRとの混合樹脂のMFR(230℃)は、0.5〜15g/10分の範囲であることが押出加工しやすい点で好ましい。なお、前記EPRの重量平均分子量は、該混合樹脂を、オルソジクロルベンゼンを溶媒として使用し、40℃においてクロス分別法によって抽出した成分をGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)によって算出して求めたものである。また、前記混合樹脂中のEPRの含有率は、該混合樹脂を、オルソジクロルベンゼンを溶媒として使用し、40℃においてクロス分別法によって抽出されたEPRの抽出量より求めたものである。
前記結晶性プロピレン系樹脂とEPRとの混合樹脂の製造方法は、特に制限はなく、具体例として例えば、プロピレン単独重合体とエチレン・プロピレンゴムとを、それぞれ別々にチーグラー型触媒を用いて溶液重合法、スラリー重合法、気相重合法等により製造した後、両者を混合機にて混合する方法や、2段重合法により、1段目でプロピレン単独重合体を生成させた後、2段目においてこの重合体の存在下でEPRを生成させる方法等が挙げられる。
前記チーグラー型触媒は、所謂チーグラー・ナッタ触媒であり、チタン含有化合物などの遷移金属化合物、またはマグネシウム化合物などの担体に遷移金属化合物を担持させることによって、得られる担体担持触媒と有機アルミニウム化合物などの有機金属化合物の助触媒とを組み合わせたもの等が挙げられる。
又、例えば、印刷物を包装体として用いる場合には、印刷面の反対の面の最表層を特開2006−213065号公報に記載のような1−ブテンとプロピレンとを必須成分としてなる1−ブテン系共重合体およびプロピレンとエチレンとを必須成分としてなる共重合体を含有してなるヒートシール層とすることで、易開封性の袋とすることができる。又、同様に蓋材として用いる場合には、特開2004−75181号公報や特開2008−80543号公報に記載のような多層構成とすることによって、易開封性を有するものとすることが可能である。更に特開2010−234660号公報に記載のような環状ポリオレフィン系樹脂を多層構成の中の中間層としても使用すると、易引き裂き性を有する印刷物とすることも可能であり、印刷物の用途に応じて種々の多層構成を採用することが好ましい。
また、層(A)の処理層と反対面、または多層構成のフィルムの場合の樹脂層(A)の反対面にある樹脂層(B)上に粘着剤層を設けることにより看板、車両等に貼り付け可能なインクジェット印刷物(ラベル)とすることもできる。粘着剤の種類は特に限定されるものではなく、例えば、天然ゴム系、合成ゴム系、アクリル系、ウレタン系、ビニルエーテル系、シリコーン系、アミド系及びスチレン系粘着剤、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー等が挙げられる。前記粘着剤層には、粘着特性の制御等を目的として必要に応じて、例えばα−ピネンやβ−ピネン重合体、ジテルペン重合体、α−ピネン・フェノール共重合体等のテルペン系樹脂、脂肪族系や芳香族系、脂肪族・芳香族共重合体系等の炭化水素系樹脂、その他ロジン系樹脂やクマロンインデン系樹脂、(アルキル)フェノール系樹脂やキシレン系樹脂など適当な粘着付与剤を配合できる。粘着剤層の形成は、樹脂層(A)の押出し成形時、あるいは必要に応じて積層される樹脂層(B)とを共押出法で積層する際に、同時に粘着層を共押出で積層させる方法が製造サイクル上好ましい。
前記の各層(A)、(B)には、必要に応じて、防曇剤、帯電防止剤、熱安定剤、造核剤、酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、離型剤、紫外線吸収剤、着色剤等の成分を本発明の目的を損なわない範囲で添加することができる。特に、フィルム成形時の加工適性や印刷物を包装材とする場合の包装適性を付与するため、表面の摩擦係数は1.5以下、中でも1.0以下であることが好ましいので、多層フィルムの表面層に相当する樹脂層には、滑剤やアンチブロッキング剤や帯電防止剤を適宜添加することが好ましい。
前記の各層(A)、(B)の合計厚さとしては、印刷物の用途に応じて適宜設定できるものであるが、例えば、包装材(袋や蓋材)とする場合には、20〜50μmであり、ラベルやポスターとする場合には70〜1000μmの範囲であることが好ましい。又、層(A)、(B)の合計厚さに対する層(B)の厚みの割合としては、後述するインクとの密着性を確保できる観点から5〜70%の範囲であることが好ましく、層(A)の厚みとしては、2〜30μmの範囲であることが好ましい。
前述の層(A)と層(B)とを積層する方法としては、層(A)と層(B)とが隣接して積層される共押出積層成形法であることが好ましく、例えば、2台以上の押出機を用いて溶融押出する、共押出多層ダイス法、フィードブロック法等の種々の共押出法により溶融状態で層(A)と層(B)を積層した後、インフレーション、Tダイ・チルロール法等の方法で長尺巻フィルムに加工する方法が好ましく、Tダイを用いた共押出法がより好ましい。
本発明においては、単層または多層のフィルム(I)の樹脂層(A)表面を40dyne/cm以上に処理することが必須である。処理方法としては、特に限定されないが、層(A)表面を、加熱下または不活性ガスの雰囲気下でコロナ放電もしくはプラズマ放電等を用いて連続的に表面処理を施すことが望ましい。
コロナ処理の方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、特公昭39−12838号、特開昭47−19824号、特開昭48−28067号、特開昭52−42114号の各公報に記載等の処理方法によって行うことができる。コロナ放電処理装置は、Pillar社製ソリッドステートコロナ処理機、LEPEL型表面処理機、VETAPHON型処理機等を用いることができる。処理は空気中での常圧にて行うことができる。処理時の放電周波数は、5kV〜40kV、より好ましくは10kV〜30kVであり、波形は交流正弦波が好ましい。電極と誘電体ロールのギャップ透明ランスは0.1mm〜10mm、より好ましくは1.0mm〜2.0mmである。放電は、放電帯域に設けられた誘電サポートローラーの上方で処理し、処理量は、0.34kV・A・分/m〜0.4kV・A・分/m、より好ましくは0.344kV・A・分/m〜0.38kV・A・分/mである。
本発明において、フィルム(I)の樹脂層(A)に環状ポリオレフィン系樹脂(a)を50質量%以上で含有させたことにより、この様なコロナ処理における処理度が、環状構造を有さないポリオレフィン系樹脂を処理した場合よりも向上する。処理度については、例えば濡れ試薬による表面張力の測定によってその高低を判断することが可能であり、フィルム(I)を用いた場合は、40dyne/cm以上にすることが容易であり、50dyne/cm以上にすることもできる。この様なコロナ処理度が高いことがインクジェットインキとの密着性の発現に寄与すると共に、印刷面のはがれを抑制するものであると推定される。一方、通常のポリプロピレンフィルムで同様のコロナ処理を行なった場合は、38dyne/cm程度にしかできず、ポリエステルフィルムでも45dyne/cm程度であり、さらにその経時劣化が大きく、長期にわたって表面処理度を高く維持することが困難である。フィルム(I)の表面はコロナ処理からの経時劣化が非常に少なく、フィルム(I)として数ヶ月程度保存してから、インクジェット印刷を施すことも可能である点も、本発明で用いるフィルム(I)における特徴である。
本発明によって得られるインクジェット印刷物は、前記で得られた単層または多層のフィルム(I)の処理面上にインクジェット印刷したものである。
(インクジェット記録用インク)
本発明で使用するインクジェットインクは、特に限定なく種々のものを使用することができる。インクジェットインクには、主溶剤として水または水と水溶性有機溶剤の混合溶媒を用いた水性インク、主溶剤として有機溶剤を用いた非水系(油性)インク、あるいは、これら溶剤を使用しなUV硬化型インク等が知られているが、本発明で使用するフィルムは、プラスチックフィルムへの密着性の良好な油性インク、UV硬化型インクは勿論、通常はじき等の問題が生じる水性インクであっても良好な密着性を示すので問題なく使用することができる。
(色材)
これらのインクジェットインクに使用される色材は、通常顔料や染料が使用されるが、印刷物の耐久性の点から顔料を使用することが好ましい。染料としては、直接染料、酸性染料、食用染料、塩基性染料、反応性染料、分散染料、建染染料、可溶性建染染料、反応分散染料、など通常インクジェット記録に使用される各種染料が挙げられる。また、顔料としては、硫酸バリウム、硫酸鉛、酸化チタン、黄色鉛、ベンガラ、酸化クロム、カーボンブラック等の無機顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン系顔料、ジスアゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、イソインドリン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、ペリノン系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料等が挙げられる。これらを単独または混合して用いることができる。汎用のカラー印刷においては、黒色顔料、シアン顔料、マゼンタ顔料、及びイエロー顔料を使用した黒インク、シアンインク、マゼンタインク、及びイエローインクが使用される。
黒色顔料としては、耐光性に優れ、隠蔽力の高いファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラックなどのカーボンブラック、チタンブラック等を使用するのが好ましい。
さらに、色の三原色である、シアン、マゼンタ、およびイエローの代表的な有機顔料の中で、本発明において好適に使用できる顔料を以下に例示する。
シアンの顔料としては、たとえば、C.I.ピグメント ブルー 1、C.I.ピグメント ブルー 2、C.I.ピグメント ブルー 3、C.I.ピグメント ブルー 15、C.I.ピグメント ブルー 15:1、C.I.ピグメント ブルー 15:3、C.I.ピグメント ブルー 15:4、C.I.ピグメント ブルー 16、C.I.ピグメント ブルー 22、C.I.ピグメント ブルー 60、などが挙げられる。
マゼンタの顔料としては、たとえば、C.I.ピグメント レッド 5、C.I.ピグメント レッド 7、C.I.ピグメント レッド 12、C.I.ピグメント レッド 48、C.I.ピグメント レッド 48:1、C.I.ピグメント レッド 57、C.I.ピグメント レッド 112、C.I.ピグメント レッド 122、C.I.ピグメント レッド 123、C.I.ピグメント レッド 146、C.I.ピグメント レッド 168、C.I.ピグメント レッド 184、C.I.ピグメント レッド 202、C.I.ピグメント バイオレッド19、などが挙げられる。
イエローの顔料としては、たとえば、C.I.ピグメント イエロー 1、C.I.ピグメント イエロー 2、C.I.ピグメント イエロー 3、C.I.ピグメント イエロー 12、C.I.ピグメント イエロー 13、C.I.ピグメント イエロー 14、C.I.ピグメント イエロー 16、C.I.ピグメント イエロー 17、C.I.ピグメント イエロー 73、C.I.ピグメント イエロー 74、C.I.ピグメント イエロー 75、C.I.ピグメント イエロー 83、C.I.ピグメント イエロー 93、C.I.ピグメント イエロー 95、C.I.ピグメント イエロー 97、C.I.ピグメント イエロー 98、C.I.ピグメント イエロー 109、C.I.ピグメント イエロー 114、C.I.ピグメント イエロー 128、C.I.ピグメント イエロー 129、C.I.ピグメント イエロー 138、C.I.ピグメント イエロー 151、C.I.ピグメント イエロー 154、C.I.ピグメント イエロー 155、などが挙げられる。
前記顔料の粒子径は、一次粒子径が1〜500nmの範囲にあるのが好ましく、さらに好ましいのは20〜200nmの範囲である。また、媒体中に分散した後の顔料の粒子径は、10〜300nmの範囲にあるのが好ましく、さらに好ましいのは、50〜150nmの範囲である。顔料の一次粒子径の測定は、電子顕微鏡や、ガスまたは溶質による吸着法、空気流通法、X線小角散乱法などで行うことができる。分散後の顔料粒子径の測定は、種々な方式、例えば、遠心沈降方式、レーザー回折方式(光散乱方式)、ESA方式、キャピラリー方式、電子顕微鏡方式などで行うことができる。
(水性インク)
水性インクに使用される水は、イオン交換、蒸留等の精製工程を経た純水または超純水が望ましい。また水溶性有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、等のケトン類;メタノール、エタノール、2−プロパノール、2−メチル−1−プロパノール、1−ブタノール、2−メトキシエタノール、等のアルコール類;テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,2−ジメトキシエタン、等のエーテル類;ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、等のアミド類が挙げられる。中でも、炭素数が3〜6のケトン及び炭素数が1〜5のアルコールからなる群から選ばれる化合物を用いるのが好ましい。
水性インクは、前記水または水と水溶性有機溶剤の混合溶媒に、前記顔料等の色材を分散させて得るが、通常は分散用樹脂を使用して顔料を分散させる。顔料を分散させるための攪拌・分散装置としては、たとえば、超音波ホモジナイザー、高圧ホモジナイザー、ペイントシェーカー、ボールミル、ビーズミル、ロールミル、サンドミル、サンドグラインダー、ダイノーミル、ディスパーマット、SCミル、ナノマイザーなどの各種分散機を使用することができる。また皮膜形成やフィルムとの接着性を目的としてバインダー樹脂を使用することもできる。前記分散用樹脂とバインダー樹脂は同じものを使用してもよく数種類を併用してもよい。一般には、水溶性または水分散性のウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等が使用される。また必要に応じて、乾燥抑止剤、浸透剤、界面活性剤あるいはその他の添加剤を添加して調製する。予め、高濃度の顔料分散液(ミルベース)を作製後、適宜希釈、添加剤を添加して調製することもできる。
(油性インク)
油性インクはヘッドのつまり等を防ぐために高沸点の溶媒をベースとしたものが好ましく用いられる。非極性な溶剤としては、長鎖脂肪酸エステル、植物油エステル類、高級脂肪酸、植物油、炭化水素類、高級アルコール類などが挙げられる。極性の高い溶剤として、低級アルコール、グリコール類、グリコールエーテル類、グリコールエステル類、低級アルコールエステル、ピロリドン類などが挙げられる。
非極性な溶剤としては、例えば、オレイン酸メチル、オレイン酸エチル、オレイン酸イソプロピル、オレイン酸イソブチル、リノール酸メチル、リノール酸イソブチル、リノール酸エチル、大豆油メチル、大豆油イソブチル、アマニ油ブチル、大豆油、アマニ油、ひまし油、新日本石油社製「日石ナフテゾールH、0号ソルベントH、アイソゾール300、アイソゾール400、AF−5、AF−6、AF−7」、エクソンモービル社製「Exxol D80、Exxol D110、Exxol D130、Exxol D140」(いずれも商品名)、イソミリスチルアルコール、イソパルミチルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール、イソノナン酸、イソミリスチン酸、ヘキサデカン酸、イソパルミチン酸、オレイン酸、イソステアリン酸などが挙げられる。
極性の高い溶剤としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、キシリトール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルモノアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、イソプロピルアセテート、ピロリドン、N−メチルピロリドンなどが挙げられる。
また、速乾性を重視する場合にはより揮発性の高い溶剤、例えば、エタノール、2−プロパノールとなどのアルキルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;酢酸エチルなどのエステル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエ一テル類などを上記の溶媒と混合して、或いは単独で用いることができる。
また、近年の安全性を配慮した、シクロヘキサノンを含まないいわゆるエコソルベントインキに適した溶剤としては、例えば、γ−ブチロラクトン等の環状エステル、ジオキサン、トリオキサン、フラン、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、メチルフラン、テトラヒドロピラン、フルフラート等の環状エーテル、蟻酸ブチル、蟻酸イソアミル、蟻酸イソブチル、蟻酸ヘキシル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸イソブチル、酢酸イソアミル、酢酸ペンチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸イソプロピル、プロピオン酸ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸プロピル、酪酸イソプロピル、イソ酪酸メチル、マロン酸ジエチル、シュウ酸ジエチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、マロン酸ジメチル等が炭素数5〜7の鎖状エステル、ジエチルケトン、メチルイソアミルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルペンチルケトン、エチルプロピルケトン、エチルブチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソプロピルケトン、t−ブチルメチルケトン、メチルイソプロピルケトン、アセチルケトン、アセトニトリルアセトン等の鎖状ケトン等があげられる。これらの溶剤は前記溶剤を混合して、あるいは単独で使用することができる。
油性インクも水性インクと同様に、有機溶媒に、前記顔料等の色材を分散させて得る。油性インクの場合であっても、通常分散用樹脂を使用して顔料を分散させる。顔料を分散させるための攪拌・分散装置は、前記水性インクと同様の装置を使用することができる。また皮膜形成やフィルムとの接着性を目的としてバインダー樹脂を使用することもできる。前記分散用樹脂とバインダー樹脂は同じものを使用してもよく数種類を併用してもよい。一般には、油溶性のウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂等が使用される。
また必要に応じて、酸化防止剤・紫外線吸収剤などの安定剤、界面活性剤、バインダーレジン等を加えることができる。そのような酸化防止剤として例えばBHA(2,3−ブチル−4−オキシアニソール)、BIT(2,6−ジ−tert−ブチル−P−クレゾール)等;紫外線吸収剤としてベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系等の化合物が挙げられ、界面活性剤としてアニオン系、カチオン系両性、非イオン系のいずれも使用できる。
バインダーレジンとして使用し得る樹脂には、具体的には、アクリル樹脂、スチレンアクリル樹脂、ロジン変性樹脂、フェノール樹脂、テルペン系樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
(UV硬化型インク)
UV硬化型インクは、紫外線等で印刷被膜を硬化させることから、紫外線硬化性化合物や光重合開始剤等を使用する。これらはいずれも種々のものを使用することができるが、あまり高粘度では吐出性に支障がでるおそれがあることから、低粘度の紫外線硬化性化合物を適宜選択することが好ましい。また、その反応機構によりラジカル重合型とカチオン重合型がある。硬化乾燥速度の速いインクを得るためには、紫外線硬化性化合物として(メタ)アクリレート等のエチレン性二重結合を有する化合物を使用することが好ましい。
前記エチレン性二重結合を有する化合物としては、具体的には、エチレン性二重結合を1個有する1官能モノマー、エチレン性二重結合を2個以上有する多官能モノマーが挙げられ、2種類以上併用して用いる事ができる。さらに(メタ)アクリレートオリゴマーや三官能以上の多官能アクリレートを含有させることが好ましいが、これらは粘度が高く、特に(メタ)アクリレートオリゴマーはモノマーに比較して高粘度であるため、エチレン性二重結合を有する化合物の総量に対して、2〜20質量%の範囲で用いることが好ましい。
前記1官能モノマーとしては、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、アミル、2−エチルヘキシル、イソオクチル、ノニル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、シクロヘキシル、ベンジル、メトキシエチル、ブトキシエチル、フェノキシエチル、ノニルフェノキシエチル、グリシジル、ジメチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル、イソボルニル、ジシクロペンタニル、ジシクロペンテニル、ジシクロペンテニロキシエチル等の置換基を有する(メタ)アクリレート、ビニルカプロラクタム、ビニルピロリドン、N−ビニルホルムアミド等が挙げられる。これらは2種類以上併用して用いることができる。
また、多官能モノマーとしては、例えば、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、トリシクロデカンジメタノール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のジ(メタ)アクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートのジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに2モルのエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン1モルに3モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たトリオールのジまたはトリ(メタ)アクリレート、ビスフェノールA1モルに4モル以上のエチレンオキサイドもしくはプロピレンオキサイドを付加して得たジオールのジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート,ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート,ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性アルキルリン酸(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは2種類以上併用して用いることができる。
また、(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリエステル(メタ)アクリレートオリゴマー等が挙げられ、2種類以上併用して用いることができる。
光重合開始剤としては、ベンゾインイソブチルエーテル、2,4−ジエチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、ベンジル2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキシド等が好適に用いられ、さらにこれら以外の分子開裂型のものとして、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインエチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オンおよび2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン等を併用しても良いし、さらに水素引き抜き型光重合開始剤である、ベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン、イソフタルフェノン、4−ベンゾイル−4’−メチル−ジフェニルスルフィド等も併用できる。
また上記光重合開始剤に対し、増感剤として例えば、トリメチルアミン、メチルジメタノールアミン、トリエタノールアミン、p−ジエチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、N,N−ジメチルベンジルアミンおよび4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等の、前述重合性成分と付加反応を起こさないアミン類を併用することもできる。もちろん、上記光重合開始剤や増感剤は、紫外線硬化性化合物への溶解性に優れ、紫外線透過性を阻害しないものを選択して用いることが好ましい。
インクジェットインクには、インクの保存安定性を高めるため、ハイドロキノン、メトキノン、ジ−t−ブチルハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ブチルヒドロキシトルエン、ニトロソアミン塩等の重合禁止剤をインク中に0.01〜2質量%の範囲で添加しても良い。
また、顔料の分散安定性を高める目的で分散剤を使用してもよい。分散剤としては、味の素ファインテクノ社製のアジスパーPB821、PB822、PB817、アビシア社製のソルスパーズ24000GR、32000、33000、39000、楠本化成社製のディスパロンDA−703−50、DA−705、DA−725等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また分散剤の使用量は、顔料に対して10〜80質量%の範囲が好ましく、特に20〜60質量%の範囲が好ましい。使用量が10質量%未満の場合には分散安定性が不十分となる傾向にあり、80質量%を超える場合にはインクの粘度が高くなる傾向にあり、吐出安定性が低下しやすい。
その他、記録媒体であるフィルム(I)に対する接着性の向上等を目的に、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、テルペンフェノール樹脂、ロジンエステル等の非反応性樹脂等を配合することができる。
UV硬化型インクは、例えば、顔料、紫外線硬化性化合物を含有し、必要に応じ高分子分散剤、樹脂を加えた混合物をビーズミル等のシェアのかかりにくい攪拌・分散装置を用いて顔料を分散した後、光重合開始剤を加え、さらに必要に応じ表面張力調整剤等の添加剤を加えて攪拌、溶解することで調製できる。予め、高濃度の顔料分散液(ミルベース)を作製後、適宜希釈、添加剤を添加して調製することもできる。
印刷方法についてはインクジェット印刷であることが好ましいが、オフセット印刷、活版印刷、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷等他の印刷方法によって印刷しても、またこれらの2種以上の印刷方法を組み合わせて印刷しても構わない。
以下に実施例と比較例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。尚、例中の部及び%は特に断りの無い限り質量基準である。
〔インクの塗工適性評価〕
バーコーターでA4サイズのフィルムに溶剤型インク及びUV硬化型インクを塗工し、目視にてはじきの数を計測した。
○:はじきが無い。
×:はじきが一箇所以上ある。
〔フィルムの耐熱性評価〕
印刷後、90℃で1分間乾燥させた時のフィルムの外観について目視にて評価した。
○:よれ、皺、フィルムの変形等の外観不良がほとんど無い。
△:若干のよれ、皺、フィルムの変形等の外観不良が見られる。
×:著しいよれ、皺、フィルムの変形等の外観不良が見られる。
〔被印刷適性評価〕
フィルム(I)の処理後の樹脂層(A)面に対して安定したインク転移(印刷)が行われたか否かを目視にて評価した。
○:印刷がかすれたり、印字できない部分等が無く、良好に印刷された。
×:印刷がかすれたり、印字できない部分等が有り、印刷不良がある。
〔印刷後の印刷面密着性評価〕
セロハンテープ(ニチバン製)剥離試験を行い、目視にて評価した。
○:剥離無し。
×:剥離有り。
〔溶剤型インク1の調製例〕
シアン顔料Fastogen Blue TGR(C.I.ピグメント ブルー15:3、DIC株式会社製)20部、分散剤アジスパーPB821(味の素ファインテクノ株式会社製)6部、ジエチレングリコールジエチルエーテル74部を、ジルコニアビーズとともにポリエチレン容器に入れ、ペイントコンディショナーで2時間震盪し、顔料濃度20%のシアン顔料分散液Aを得た。この分散液Aを12.5部、樹脂VROH(ダウ・ケミカル日本株式会社製)6.5部、エポサイザーW100EL(DIC株式会社製)0.5部、KF54(信越シリコーン株式会社製)0.5部、溶剤としてジエチレングリコールジエチルエーテル46部、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル15部、γ−ブチルラクトン20部を撹拌しながら、60℃に加熱した。均一に溶解・混合後、室温まで冷却し、1.2μmのメンブレンフィルターでろ過し溶剤型インク1を作製した。このインクを用い、インクの塗工適性評価を行った。
〔溶剤型インク2の調製例〕
溶剤型インク1の調整例 において、溶剤をエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート41部、シクロヘキサン40部とする以外はインク1の調整例と同様にして、溶剤型インク2を作製した。このインクを用い、インクの塗工適性評価を行った。
〔UV硬化型インクの調製例〕
UV硬化型インクは、市販シアン色インク(ミマキエンジニアリング株式会社製、UFJ−605C)を用い、インクの塗工適性評価を行った。
溶剤型インクを用いた印刷物の調製に関しては記録媒体の(A)面に対して、インクジェット印刷機「VJ−1608HSJ」(武藤工業株式会社製)と「ラミレスIII:PJ−1634NX」(武藤工業株式会社製)を用い、インクジェット印刷を行った。UV硬化型インクを用いた印刷物の調製に関しては記録媒体の(A)面に対して、インクジェット印刷機「UFJ−605C」(ミマキエンジニアリング株式会社製)を用い、インクジェット印刷を行った。
実施例1
(A)層用樹脂として、ノルボルネン系モノマーの開環重合体〔三井化学株式会社製「アペル APL6015T」、MFR:10g/10分(260℃、21.18N)、ガラス転移点:145℃;以下、「COC(1)」という。〕20部及びノルボルネン系モノマーの開環重合体〔三井化学株式会社製「アペル APL8008T」、MFR:15g/10分(260℃、21.18N)、ガラス転移点:70℃;以下、「COC(3)」という。〕80部との樹脂混合物を用いた。この樹脂を、(A)層用押出機(口径50mm)に供給して200〜230℃で溶融し、その溶融した樹脂をフィードブロックを有するTダイ・チルロール法の共押出多層フィルム製造装置(フィードブロック及びTダイ温度:250℃)に供給して溶融押出を行って、フィルムの層構成が(A)の単層構成で、全層の厚さが70μmであるフィルムを得た後、(A)層表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬(和光純薬工業株式会社製、ぬれ張力試験用混合液)による表面張力は45dyne/cmであった。
実施例2
(A)層用樹脂として、COC(1)50部及びCOC(3)50部の樹脂混合物を用いた。実施例1と同様にして、フィルムの層構成が(A)の単層構成で、全層の厚さが30μmであるフィルムを得た後、(A)層表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による表面張力は45dyne/cmであった。
実施例3
(A)層用樹脂として、COC(1)60部及びCOC(3)30部及び直鎖状中密度ポリエチレン〔密度:0.930g/cm、融点125℃、MFR:5g/10分(190℃、21.18N);以下、「LMDPE」という。〕10部との樹脂混合物を用いた。実施例1と同様に溶融押出を行って、フィルムの層構成が(A)の単層構成で、全層の厚さが30μmであるフィルムを得た後、(A)層表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による表面張力は45dyne/cmであった。
実施例4
(A)層用樹脂として、COC(1)60部及びCOC(3)30部及びメタロセン触媒を用いて重合されたプロピレン−α−オレフィンランダム共重合体〔密度:0.900g/cm、融点135℃、MFR:4g/10分(230℃、21.18N)、;以下、「MRCP」という。)10部との樹脂混合物を用いた。実施例1と同様に溶融押出を行って、フィルムの層構成が(A)の単層構成で、全層の厚さが20μmであるフィルムを得た後、(A)層表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による表面張力は45dyne/cmであった。
実施例5
(A)層用樹脂として、COC(1)40部及びCOC(3)40部及びLMDPE20部との樹脂混合物を用いた。実施例1と同様に溶融押出を行って、フィルムの層構成が(A)の単層構成で、全層の厚さが50μmであるフィルムを得た後、(A)層表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による表面張力は45dyne/cmであった。
実施例6
(A)層用樹脂として、ノルボルネン系モノマーの開環重合体〔三井化学株式会社製「アペル AP6013T」、MFR:15g/10分(260℃、21.18N)、ガラス転移温度:125℃;以下、「COC(2)」という。〕60部及び高密度ポリエチレン〔密度:0.960g/cm、融点128℃、MFR:10g/10分(190℃、21.18N);以下、「HDPE」という。〕を40部の樹脂混合物を用いた。実施例1と同様に溶融押出を行って、フィルムの層構成が(A)の単層構成で、全層の厚さが40μmであるフィルムを得た後、(A)層表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による表面張力は43dyne/cmであった。
実施例7
(A)層用樹脂として、COC(1)70部及びCOC(3)10部、LMDPE10部及びMRCP10部の樹脂混合物を用いた。また、樹脂層(B)用樹脂として、MRCPを用いた。これらの樹脂を、(A)層用押出機(口径50mm)、(B)層用押出機(口径50mm)に供給して200〜230℃で溶融し、その溶融した樹脂をフィードブロックを有するTダイ・チルロール法の共押出多層フィルム製造装置(フィードブロック及びTダイ温度:250℃)にそれぞれ供給して共溶融押出を行って、フィルムの層構成が(A)/(B)=20μm/20μmの多層構成で、全層の厚さが40μmである共押出多層フィルムを得た。層(A)表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による表面張力は40dyne/cmであった。
実施例8
(A)層用樹脂として、COC(1)50部及びCOC(3)50部の樹脂混合物を用いた。中間層(B)用樹脂としてMRCPを用い、更に、最外層用樹脂として、COC(1)50部及びCOC(3)50部の樹脂混合物を用いた。これらの樹脂を、(A)層用押出機(口径50mm)、(B)層用押出機(口径50mm)、最外層用押出機(口径50mm)に供給して230〜250℃で溶融し、その溶融した樹脂をフィードブロックを有するTダイ・チルロール法の共押出多層フィルム製造装置(フィードブロック及びTダイ温度:250℃)にそれぞれ供給して共溶融押出を行って、フィルムの層構成が(A)/(B)/最外層=10μm/30μm/10μmの多層構成で、全層の厚さが50μmである共押出多層フィルムを得た。実施例1と同様にして、片方の表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による表面張力は42dyne/cmであった。
実施例9
(A)層用樹脂として、COC(1)40部及びCOC(3)60部の樹脂混合物を用いた。層(B)用樹脂としてLMDPEを用い、更に、最外層用樹脂として、COC(1)40部及びCOC(3)60部の樹脂混合物を用いて、フィルムの層の厚さが10μm/30μm/10μm(合計50μm)となるように実施例8と同様にして、共押出多層フィルムを得た後、片方の表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による表面張力は43dyne/cmであった。
実施例10
(A)層用樹脂として、COC(1)70部及び酸変性オレフィン系樹脂脂として、エチレン−(メタ)アクリル酸メチル共重合体〔密度:0.940g/cm、MA含有量18%;以下、「MA1」と記載〕30部の樹脂混合物を用いた。層(B)用樹脂としてLMDPE80部及びCOC(3)20部の樹脂混合物を用いた。更に、最外層用樹脂として、COC(1)70部及びLMDPE20部及びHDPE10部の樹脂混合物を用いて、フィルムの層の厚さが20μm/30μm/20μm(合計70μm)となるように実施例8と同様にして、共押出多層フィルムを得た後、層(A)の表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による表面張力は43dyne/cmであった。
実施例11
(A)層用樹脂として、COC(1)60部及びCOC(3)20部及び酸変性オレフィン系樹脂脂として、エチレン−アクリル酸メチル−無水マレイン酸共重合体〔密度:1.00g/cm、コポリマー含有量15%;以下、「MA2」と記載〕20部の樹脂混合物を用いた。層(B)用樹脂としてMRCP80部及びCOC(3)20部の樹脂混合物を用いた。更に、最外層用樹脂として、COC(3)70部及びLMDPE30部の樹脂混合物を用いて、フィルムの層の厚さが20μm/30μm/20μm(合計70μm)となるように実施例8と同様にして、共押出多層フィルムを得た後、層(A)の表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による表面張力は43dyne/cmであった。
実施例12
(A)層用樹脂として、COC(1)50部及びCOC(3)50部の樹脂混合物を用いた。層(B)用樹脂としてLMDPE50部及びMRCP50部の樹脂混合物を用いた。更に、最外層用樹脂として、COC(1)20部及びCOC(2)60部及びLMDPE20部の樹脂混合物を用いて、フィルムの層の厚さが20μm/30μm/20μm(合計70μm)となるように実施例8と同様にして、共押出多層フィルムを得た後、層(A)の表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による表面張力は43dyne/cmであった。
比較例1
(A)層用樹脂として、ホモプロピレン〔密度:0.900g/cm、融点160℃、MFR:7g/10分(230℃、21.18N)、;以下、「HOPP」という。)を用いて、30μmの単層フィルムを得た後、片方の表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による表面張力は43dyne/cmであった。
比較例2
(A)層用樹脂として、LMDPEを用いて、30μmの単層フィルムを得た後、片方の表面にコロナ処理を施した。濡れ試薬による表面張力は40dyne/cmであった。
以上で得られた印刷物に対しての評価結果を表1〜2に示す。
Figure 0005327561
Figure 0005327561
本発明のインクジェット印刷物は、例えば、屋外広告(ポスター、のぼり等)、ラベル、壁紙、包装用フィルム、葉書、OHPシート、インジェット紙、くじ券、帳票等、種々の目的に用いることができる。

Claims (6)

  1. ガラス転移温度が70〜180℃のノルボルネン系単量体と、エチレン、プロピレン、1−ブテン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン及び1,4−ヘキサジエンからなる群から選ばれる1種以上のオレフィンとを共重合したノルボルネン系共重合体である環状ポリオレフィン系樹脂(a1)を主成分とする層(A)を有し、層(A)の表面処理度が40mN/m以上である単層又は多層フィルム(I)における層(A)の処理面にインクジェット印刷を行なうことを特徴とするインクジェット印刷物の製造方法。
  2. 前記樹脂層(A)が、更にポリオレフィン系樹脂(a2)及び/又は酸変性オレフィン系樹脂(a3)を含有するものである請求項1記載のインクジェット印刷物の製造方法。
  3. 前記フィルム(I)が、更にポリオレフィン系樹脂(b)を主成分とする樹脂層(B)を有する多層フィルムである請求項1〜2の何れか1項記載のインクジェット印刷物の製造方法。
  4. 前記ポリオレフィン系樹脂(b)がポリエチレン系樹脂(b1)とポリプロピレン系樹脂(b2)との混合物である請求項3記載のインクジェット印刷物の製造方法。
  5. ガラス転移温度が70〜180℃のノルボルネン系単量体と、エチレン、プロピレン、1−ブテン、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン及び1,4−ヘキサジエンからなる群から選ばれる1種以上のオレフィンとを共重合したノルボルネン系共重合体である環状ポリオレフィン系樹脂(a1)を主成分とする層(A)と、ポリオレフィン系樹脂(b)を含有する層(B)とが積層され、前記層(A)と前記層(B)との合計厚みに対する層(B)の比率が5〜70%であり、かつ層(A)表面が40dyne/cm以上であって、層(A)表面にインクジェット印刷するものであることを特徴とするインクジェットインク用記録媒体。
  6. 請求項5記載のインクジェットインク用記録媒体の層(A)表面にインクジェット印刷したものであることを特徴とするインクジェット印刷物。
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