JP5326699B2 - 誘電体素子及びその製造方法 - Google Patents

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本発明は誘電体素子及びその製造方法に関する。
誘電体素子である薄膜コンデンサとして、銅箔、ニッケル箔等の金属箔上に誘電体膜を形成したものが知られている(特許文献1)。また、PbZrxTiyz(PZT)のようなセラミックス誘電体材料の薄膜をゾルゲル法、スパッタリング法等により形成し、これを熱処理して膜の結晶化度を高めることにより誘電率等の誘電特性が向上することが知られている(特許文献2、非特許文献1)。さらに、Siウェハ上において、(Ba1−xSrTiO(BST)の配向性の制御を行い、温度特性の良好な薄膜コンデンサを作製することが知られている(特許文献3)。
ところで、安価で電気抵抗が低く、パターニングが容易であること等の理由から、薄膜コンデンサのような誘電体素子の電極膜は、銅、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛又はこれらを含む合金によって形成することが望ましい場合が多い。
特開2000−164460号公報 特開2003−526880号公報 特開2006−128657号公報
Appl. Phy. Lett.、2002年、81号、p.3028
両方の電極膜が銅、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛又はこれらを含む合金から構成された誘電体素子の場合、従来の方法では、誘電体膜の誘電率を高めるために、これらの金属材料から構成された電極膜上で誘電体膜を加熱する工程を経て製造することが必要である。ところが、これらの金属材料は融点が比較的低く、また酸化され易いことから、高温や酸化雰囲気下で加熱して誘電体膜の誘電体率を高めるのに限界があった。そのため、両方の電極膜がこれらの金属材料から構成された誘電体素子の製造において、近年の電子部品の小型化にともなう更なる高誘電率化の要求を満足することは実際には困難な状況であった。したがって、特に高いレベルの誘電率が求められる場合、少なくともいずれか一方の電極膜は白金、ニッケル等の上記金属材料以外の金属又はその合金によって形成されるのが一般的である。
そこで、本発明の目的は、1対の電極膜の両方が銅、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛又はこれらを含む合金から構成され、それら電極膜の間にセラミックス誘電体材料から構成された誘電体膜が設けられた誘電体素子において、誘電体膜の誘電率の更なる向上を図ることにある。
本発明に係る誘電体素子の製造方法は、セラミックス誘電体材料及び/又はその前駆体を含み金属膜上に形成された膜を加熱して、セラミックス誘電体材料から構成された誘電体膜を形成する工程と、誘電体膜の金属膜とは反対側の面上に、銅、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛又はこれらを含む合金から構成された第1の電極膜を形成する工程と、金属膜を除去する工程と、誘電体膜の第1の電極膜とは反対側の面上に、銅、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛又はこれらを含む合金から構成された第2の電極膜を形成する工程とをこの順に備える。
上記本発明に係る製造方法によれば、誘電体膜を形成するための加熱を銅、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛又はこれらを含む合金(以下「銅等」という。)の膜上で行わないため、高融点の金属膜を用い、高温で加熱して誘電体膜の誘電率を十分に高めることが可能である。セラミックス誘電体材料から構成された誘電体膜を十分に高温で加熱することにより、典型的には、作製時に高温処理が必要であるが、高誘電率且つ高い分極性を発現する(001)配向の誘電体膜を得ることができる。なお、これらの配向は、一般に、成膜条件を変更することによって制御することが可能なものである。上述したようなPZTやBSTの誘電体膜は、固定分極を有する強誘電性を利用したFeRAM等のメモリ分野への応用が期待されているが、その場合、基板等に対して誘電体膜が単一配向(001)を有していると、強い固定分極が得られるため、有利となる。
また、本発明により得られる誘電体素子においては、両方の電極膜が銅、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛又はこれらを含む合金のような特定の金属材料から構成されることから、1対の電極膜の一方がこれら金属材料以外の金属から構成される場合と比較して、仕事関数の差に起因するリーク電流の非対称性が生じにくい。金属膜としては、具体的にはニッケル又はその合金の膜が好ましく用いられる。
本発明に係る製造方法は、第2の電極膜を形成する工程の後、第1の電極膜及び第2の電極膜を加熱する工程を更に備えることが好ましい。特に、この加熱の工程では、第1の電極膜及び第2の電極膜が(111)配向となるように加熱することが好ましい。
第1の電極膜及び第2の電極膜を加熱することにより、これらの膜の誘電率を向上させることが可能である。また、このような加熱により、第1の電極膜及び第2の電極膜の配向度も高めることができ、好ましくは(111)配向とすることが可能である。金属膜の仕事関数は結晶方位にも依存して変化することから、加熱により両電極膜の結晶方位が揃うことにより、リーク電流の対称性を改善する効果がより一層顕著に奏される。また、電極膜は、(111)配向を有することで、高いエレクトロマイグレーション耐性を有するものともなり得る。さらに、結晶方位の違いは、電極膜をパターニングする際等にエッチングレートの違いも引き起こす場合があり、その場合、パターニング形状にばらつきが生じるおそれもあるが、配向度を高く、好ましくは結晶方位を同一方向とすることで、このようなばらつきの低減も可能となる。
さらにまた、第1の電極膜及び第2の電極膜を加熱することによって、これらの電極膜には、膜厚方向(すなわち、誘電体膜に対して垂直な方向)に、電極膜を構成している金属の粒界が形成されていない構造が少なくとも一部に形成され得る。このような電極膜における金属粒界がない単一層の部分は、金属粒界におけるキャリアの散乱が生じないため、低い抵抗値を有することができる。したがって、かかる単一層の部分を含む電極膜によれば、高いQ値が得られるようになる。
上記本発明に係る製造方法においては、化学機械研磨、イオンミリング、ウェットエッチングまたはこれらの組み合わせにより効率的に金属箔を除去することができる。
特に高い比誘電率を得る観点から、上記セラミックス誘電体材料はBa及びTiを含む酸化物である場合、本発明に係る製造方法は特に有用なものである。
また、本発明による誘電体素子は、互いに対向して配置された第1の電極膜及び第2の電極膜と、それらの間に設けられた誘電体膜とを備え、第1の電極膜及び第2の電極膜が、銅、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛又はこれらを含む合金から構成された(111)配向を有する膜であり、誘電体膜が、セラミックス誘電体材料から構成された(001)配向を有する膜である。
上記本発明に係る誘電体素子は、上記本発明の誘電体素子の製造方法によって好適に製造されるものである。この誘電体素子においては、誘電体膜がセラミックス誘電体材料から構成された(001)配向の膜であることから、十分に高い誘電率が得られる。また、第1及び第2の電極膜の両方が、銅、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛又はこれらを含む合金から構成された(111)配向の膜であることから、リーク電流の非対称性が十分に抑制され、エレクトロマイグレーション耐性の高い電極膜である。
本発明に係る誘電体素子は、第1の電極膜及び第2の電極膜が、誘電体膜に対して垂直な方向(電極膜の膜厚方向)に粒界が形成されていない構造を少なくとも一部に含むものであると好ましい。このように、電極層の一部が電極を構成する金属の粒界を含まない単一層になることで、抵抗値が低いものとなり、高いQ値を得ることが可能である。
また、特に高い比誘電率を得る観点からは、上記セラミックス誘電体材料はBa及びTiを含む酸化物であると好適である。
本発明によれば、1対の電極膜の両方が銅、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛又はこれらを含む合金から構成され、それら電極膜の間にセラミックス誘電体材料から構成された誘電体膜が設けられた誘電体素子において、誘電体膜の誘電率の更なる向上が可能である。また、本発明によれば、誘電体素子のリーク電流の非対称性を抑制することもできる。銅、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛又はこれらを含む合金から構成された電極膜は、安価で電気抵抗が低く、パターニングが容易であるという利点を有する。
誘電体素子の製造方法の一実施形態を示す断面図である。 実施例で作製した薄膜コンデンサのXRDパターンである。 実施例で作製した薄膜コンデンサのXRDパターンである。
以下、誘電体素子である薄膜コンデンサを例にして本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
図1は、本実施形態に係る薄膜コンデンサの製造方法を示す断面図である。本実施形態に係る製造方法は、金属膜30を準備する工程(図1(a))と、金属膜30上に誘電体膜20を形成する工程(図1(b))と、誘電体膜20の金属膜30とは反対側の面上に第1の電極膜11を形成する工程(図1(c))と、金属膜30を除去する工程(図1(d))と、誘電体膜20の第1の電極膜11とは反対側の面上に第2の電極膜12を形成する工程とを備える。係る製造方法により、対向配置された第1の電極膜11及び第2の電極膜12と、それらの間に設けられた誘電体膜20とを備える誘電体素子である薄膜コンデンサ100が得られる。
金属膜30としては、第1の電極膜11及び第2の電極膜12を構成する金属材料よりも高い融点を有する金属から構成されたものが好適である。高い融点を有する金属から構成された金属膜(好ましくは金属箔)を用いることにより、十分に高い加熱温度で誘電体膜20の結晶化を進行させることが可能になる。具体的には、金属膜30はニッケル、白金、パラジウム又はケイ素から構成された膜であることが好ましい。これらの中でも、ニッケル箔が、高い融点を有し、高誘電率の誘電体膜20を形成するために有利であるとともに、比較的安価である点から好ましい。
誘電体膜20は、セラミックス誘電体材料であるBa及びTiを含む酸化物を主成分として含有する膜である。係る酸化物の具体例としては、チタン酸バリウム及びチタン酸バリウムストロンチウムが挙げられる。
セラミックス誘電体材料の結晶化が十分に進行した誘電体膜20は、下記(a)又は(b)の方法により形成することができる。
(a)セラミックス誘電体材料を含む膜を物理的気相成長法によって金属膜30上に形成し、形成された膜を加熱して、セラミックス誘電体材料の結晶化を進行させる。
(b)セラミックス誘電体材料の前駆体及び溶媒を含む溶液の膜を金属箔30上に形成し、形成された膜を加熱することにより前駆体からセラミックス誘電体材料を生成させるとともにその結晶化を進行させる。
(a)の方法では、チタン酸バリウム等のセラミックス誘電体材料をスパッタリング法等の物理的気相成長法によって成膜する。物理的気相成長法により形成された膜は、そのままでは十分に結晶化されていないため、加熱により結晶化を進行させて高い誘電率の誘電体膜を得る。十分に結晶化を進行させるため、加熱の温度は好ましくは600〜900℃である。また、より高い誘電率を達成するために、係る加熱を減圧雰囲気下で行うことが好ましい。具体的には、2×10−3〜8×10−1Paの減圧雰囲気下で加熱することが好ましい。このように減圧雰囲気下で高温に加熱する場合であっても、金属膜30をニッケル等の高融点の金属で形成することにより、金属膜30の蒸発や酸化が防止される。
(b)の方法では、加熱によりチタン酸バリウム等のセラミックス誘電体材料を生成する金属化合物を前駆体として用いる。金属化合物としては金属塩及び金属アルコキシドが好ましい。金属塩としては、2−エチルヘキサン酸塩、トリフルオロ酢酸塩等の有機酸塩や、無機塩を用いることができる。
これら金属化合物を溶媒に溶解又は分散して調製した溶液を金属膜30上に塗布する。その後、溶媒の除去(乾燥)、セラミックス誘電体材料の前駆体の生成(仮焼成)、及びセラミックス誘電体材料の結晶化(本焼成)の各ステップを経て、高誘電率の誘電体膜20が得られる。なお、これら各ステップは個別に行ってもよいし、各ステップ同士を明確に分離することなく連続的に行ってもよい。
(b)の方法においても、(a)の方法と同様に、本焼成において減圧雰囲気下で加熱することによりセラミックス誘電体材料の結晶化を進行させることが好ましい。加熱温度及び圧力の好ましい範囲は(a)の方法と同様である。
そして、セラミックス誘電体材料(例えば、ペロブスカイト型構造を有するセラミックス誘電体材料)から構成された膜を、上記のように減圧雰囲気下で加熱してその結晶化を進行させることで、配向度が高い誘電体膜20が得られ、特に上記の好適条件を満たすようにすることで、高誘電率を有する(001)配向の誘電体膜20を形成させることができる。
ここで、本明細書において、「(001)配向の膜」とは、必ずしも膜中の結晶が厳密に単一配向していることを意味するのではなく、膜の主面に対して優先的に(001)配向している状態を意味する。具体的には、X線回折(XRD)により測定されるピーク強度比(P={ΣI(001)/ΣI(hkl)}、I:ピーク強度)から下記式によって算出される配向度Fに基づいて結晶方位の状態を評価することができる。
すなわち、配向度FはロードゲーリングファクターFを示し、以下の式で表される。
F=(Px−P)/(1−P
ここで、Pは無配向なバルク状態でのピーク強度比を、Pxは実測されたXRDパターンにおけるピーク強度比を示す。例えば、Pの値はJCPDF(Joint Committee on Powder Diffraction Standards)のデータを参照して得ることができる。JCPDF及び試料のX線回折測定によって得られたピーク強度Iに基づいて、(001)配向のピーク強度比PおよびPXは以下の式で表される。
=ΣI(001)/ΣI(hkl)}、I:ピーク強度)
=ΣI(001)/ΣI(hkl)}、I:ピーク強度)
上記のように導き出された配向度Fにおいて、配向度F=0は完全にランダム配向であることに相当し、配向度F=1は完全に(001)配向であることに相当する。そして、このFの値が、好ましくは0.48以上、より好ましくは0.75以上であると、(001)配向による効果が良好に得られるようになる。
誘電体膜20の形成の後、銅、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛又はこれらを含む合金を主成分として含む第1の電極膜11が誘電体膜20上に形成される。第1の電極膜11は、例えば誘電体膜20に物理気相成長法、メッキ法等の方法により銅等を成膜して形成することができる。
第1の電極膜11の形成の後、金属膜20が除去される。除去の方法としては、化学機械研磨、イオンミリング、ウェットエッチング又はこれらの組み合わせが好適である。ウェットエッチングは、金属膜20のみを選択に溶解する公知のエッチング液を用いて行うことができる。例えば金属膜20がニッケル箔である場合、塩化鉄水溶液がエッチング液として好適である。
金属膜20を除去した後、第1の電極膜11と同様の方法により、銅等を主成分として含む第2の電極膜12を形成する。
第2の電極膜12の形成の後、第1の電極膜11及び第2の電極膜12をこれらが(111)配向となるように加熱することが好ましい。例えば、2×10−1〜5×10−0Paの減圧雰囲気下、200〜450℃で1〜2時間の加熱により、電気特性に優れた電極膜を得ることができる。
第1の電極膜11及び第2の電極膜12の両方が銅、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛又はこれらを含む合金から構成されることにより、薄膜コンデンサ100におけるリーク電流の非対称性、すなわち、電圧の印加方向に依存したリーク電流の大きな変化が顕著に防止される。また、両電極膜の結晶方位が揃うことにより、パターニングの際の加工速度(エッチングレート等)が均一になって、高精度な加工が可能になるという利点も得られる。ニッケル等の高融点の金属から構成された金属膜の場合、微細なパターンを高精度で形成することは銅と比較して一般に困難である。特に、リーク電流の対称性向上及び低電気抵抗化の観点から、第1の電極膜及び第2の電極膜が同種の金属材料(好ましくは銅)から構成されることが好ましい。
なお、第1の電極膜11及び第2の電極膜12のような「(111)配向の膜」も、「(001)配向の膜」と同様に、必ずしも膜中の結晶が厳密に単一配向していることを意味するのではなく、膜の主面に対して優先的に(111)配向している状態を意味する。具体的には、(001)配向を(111)配向に置き換えて上記と同様にして得られるピーク強度比(P={ΣI(111)/ΣI(hkl)})から求められる配向度Fが、好ましくは0.48以上、より好ましくは0.75以上であると、(111)配向による効果が良好に得られるようになる。
さらに、第1の電極膜11及び第2の電極膜12は、誘電体膜に対して垂直な方向(電極膜の膜厚方向)に粒界が形成されていない構造(単一層)を少なくとも一部に含むものであると好ましい。このような単一層の部分も、第1の電極膜11及び第2の電極膜に対して上述した条件で加熱を行うことによって形成することができる。これらの電極膜に単一層の部分が形成されているか否かは、断面SEMによる観察によって確認することができる。
以下、実施例を挙げて本発明についてより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1
表面を鏡面研磨したニッケル箔(厚さ25μm)上に、下記条件のスパッタリング法によりチタン酸バリウムストロンチウム(BST、Ba0.7Sr0.3TiO)の薄膜を形成した。
・ニッケル箔温度:24℃
・膜厚(目標値):400nm
・入力電力:1.8W/cm
・雰囲気:Ar+O(33容積%)
・成膜時間:120分
形成された薄膜(誘電体膜)を、1×10−2Paの減圧下で850℃で0.5時間の加熱により焼成した。焼成された誘電体膜上に、スパッタリング法によりシード層を形成し、更にその上にめっき法により銅めっき層(厚さ35μm)を形成して、シード層及び銅めっき層からなる第1の電極膜を形成した。
その後、ニッケル箔、誘電体膜及び第1の電極膜からなる積層体を、ガラス基板に対して、第1の電極膜がガラス基板側に位置する向きで熱圧着シートを介して固定した。その状態で積層体を重ボーメ度40(比重1.38)の塩化鉄水溶液に3分間浸漬して、ニッケル箔を除去した。除去速度は6μm/分であった。
ニッケル箔の除去により露出した誘電体膜上に、第1の電極膜と同様の方法で第2の電極膜を形成した。次いで、第1の電極膜、誘電体膜及び第2の電極膜からなる積層体を400℃で1時間加熱して、薄膜コンデンサを得た。得られた薄膜コンデンサについて、XRD、電気特性及び膜密度の測定を行った。
XRD
得られた薄膜コンデンサから切り出した10mm角の試験片を、ガラス板に両面テープを用いて貼り付け、以下の条件でXRDを測定した。
・XRD装置:X’Pert PRO(PANalytical)
・線源:Cuα
・発散スリット:1deg.
・サンプリング幅:0.033deg.
・X線出力設定:管電流10mA、管電圧40kV、又は管電流40mA、管電圧45kV
測定されたXRDパターンを図2及び3に示す。図2は管電流10mA、管電圧40kV、図3は管電流40mA、管電圧45kVの条件で測定されたパターンである。得られたXRDパターンにスムージング及びバックグラウンド除去の処理を施して、ピーク強度比及び配向度Fを求めた。誘電体膜の(001)配向に関する配向度Fは0.80であり、電極膜の(111)配向に関する配向度Fは0.80であった。このことから、誘電体膜は(001)配向、電極膜は(111)配向に優先配向を有することが分った。
電気特性
誘電体膜の比誘電率、薄膜コンデンサのtanδ、電極膜間に+2V又は−2Vの電圧を印加したときのリーク電流を測定した。測定装置は比誘電率、薄膜コンデンサのtanδに関しては、HEWLETT PACKARD社のインピーダンスアナライザー4194Aを、リーク電流測定に関しては、東陽テクニカ社製の強誘電体特性測定評価装置(FCE)を用いた。比誘電率及びtanδはCp−Dモード(OCS:1.0V)、周波数1kHzで4点測定し、リーク電流はI−V測定モードで±6V、0.1Vステップで3点測定し、それらの平均値を求めた。
膜密度
誘電体膜の単位面積当りの質量(質量膜厚)を蛍光X銭分析法により定量し、得られた質量膜厚の値を、断面SEM観察により実測した膜厚の値で割ることにより、誘電体膜の膜密度を求めた。
評価結果を下記に示す。
・比誘電率:3325
・tanδ(%):11
・リーク電流密度(A/cm):1.4×10−9(+2V)、1.4×10−9(−2
V)
・膜密度(%):90
上記結果に示されるように、十分に高い誘電率を有する誘電体膜が形成された。また、+2Vと−2Vとでリーク電流は差異が実質的に認められず、リーク電流の対称性の点でも優れていることが確認された。
実施例2
第1の電極膜形成までは実施例1と同様の操作で行い、ニッケル箔、誘電体膜及び第1の電極膜からなる積層体を、ガラス基板に対して第1の電極膜がガラス基板側に位置する向きで熱圧着シートを介して固定した。その状態で化学機械研磨(CMP)により1〜2μm厚となるまでニッケル箔を研磨した。次いで、以下の条件のイオンミリングによってニッケル箔を完全に除去した。
・ミリング装置:Commonwealth Scietific
・ビーム電圧:750W
・電流値:150mA
・除去速度:20nm/分
以上の実験から、本発明によれば、1対の電極膜の両方が銅から構成され、それら電極膜の間にセラミックス誘電体材料から構成された誘電体膜が設けられた誘電体素子において、誘電体膜の誘電率の更なる向上が可能であることが確認された。併せて、ウェットエッチング、CMP、イオンミリング又はこれらの組合わせによって、銅から構成された電極膜、誘電体膜及びニッケル箔からなる積層体からニッケル箔を選択的に除去できることも確認された。
リーク電流の対称性の検討
Ni箔上に、実施例1と同様の条件のスパッタリング法によりチタン酸バリウム(BT、BaTiO)の薄膜を形成した。その他は実施例1と同様にNi箔の除去等を経て、Cu/BaTiO/Cuの積層構成を有するコンデンサを作製した。また、銅により第1の電極膜を形成して得られたCu/BaTiO/Niの積層構成を有する積層体を、Ni箔を除去することなくそのまま、比較のためのコンデンサとして用いた。得られたコンデンサのリーク電流密度(J)を実施例1と同様にして測定した結果を下記表1に示す。
Figure 0005326699
表1から明らかなように、一方の電極膜がニッケル箔である場合はリーク電流の非対称性が大きかったのに対して、両方の電極膜が銅から構成されたコンデンサは良好なリーク電流の対称性を示した。
銅箔上への誘電体膜の形成
銅箔上に、実施例1と同様の条件のスパッタリング法によりチタン酸バリウム(BT、BaTiO)の薄膜を形成した後、下記表2に示す各種の真空度を有する減圧雰囲気中にて750℃で加熱(アニール)した誘電体膜を形成した。各条件で得られた誘電体膜、及びこれを用いたCu/BaTiO/Cuの積層構成を有するコンデンサの電気特性(比誘電率、tanδ、リーク電流)を、上記と同様にして評価した。得られた結果を下記表2に示す。
Figure 0005326699
表2より、10-2[Pa]以下の減圧下では、リーク電流密度が大きく、また、低圧雰囲気では比誘電率は低かった。また、更に高温でアニール処理を行ったところ、リーク電流密度の増加が激しく、測定が不可能となった。これらの結果から、銅箔上で熱処理して誘電体膜の結晶化を十分に進行させ、高比誘電率を得ることは困難であることが確認された。特に、10−2Pa以下の減圧雰囲気下で正常に加熱処理することは事実上不可能であると考えられる。
銅箔の耐性の検討
焼成に対する銅箔の耐性を検討するため、銅箔(厚み100μm)のみを下記表3に示す各種の条件で加熱処理した。減圧雰囲気下での熱処理は、100K/分の昇温速度で行った。加熱処理による銅箔の状態変化を観察した結果を表3に示す。下記表3中、「酸化」の欄は、銅箔が酸化しなかった場合をA、酸化した場合をBと表し、「蒸発」の欄は、銅箔が蒸発しなかった場合をA、一部でも蒸発した場合をBと表し、「配向性」の欄は、銅箔の(111)配向に関する配向度Fの値を示し、「単一層」の欄は、銅箔の厚さ方向に粒界が形成されていない部位(単一層)が形成されていた場合をA、形成されていなかった場合をBと表した。なお、単一層が形成されているか否かは、断面SEMによる観察により確認した。
Figure 0005326699
窒素フロー中では300℃でも銅箔表面の酸化が確認された。これは、Cuの酸化反応によると考えられる。また、10−2Pa以下の減圧雰囲気下では、400℃で試料上に設置された石英ガラスの変色が確認され、蛍光X線の分析によってCuであることが確認された。このことから、400℃以上にてCuの激しい蒸発があると考えられる。これらの結果から、銅箔上で熱処理して誘電体膜の結晶化を十分に進行させることは困難であることが確認された。特に、10−2Pa以下の減圧雰囲気下で正常に加熱処理することは事実上不可能であると考えられる。
11…第1の電極膜、12…第1の電極膜、20…誘電体膜、30…金属膜、100…誘電体素子(薄膜コンデンサ)。

Claims (7)

  1. セラミックス誘電体材料及び/又はその前駆体を含み、ニッケルの膜である金属膜上に形成された膜を600〜900℃で加熱して、前記セラミックス誘電体材料から構成された誘電体膜を形成する工程と、
    前記誘電体膜の前記金属膜とは反対側の面上に、銅、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛又はこれらを含む合金から構成された第1の電極膜を形成する工程と、
    前記金属膜を除去する工程と、
    前記誘電体膜の前記第1の電極膜とは反対側の面上に、銅、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛又はこれらを含む合金から構成された第2の電極膜を形成する工程と、
    をこの順に備える、誘電体素子の製造方法。
  2. 前記第2の電極膜を形成する工程の後、前記第1の電極膜及び前記第2の電極膜を加熱する工程を更に備える、請求項1記載の製造方法。
  3. 前記第2の電極膜を形成する工程の後、前記第1の電極膜及び前記第2の電極膜を、これらが(111)配向となるように加熱する工程を更に備える、請求項1記載の製造方法。
  4. 前記セラミックス誘電体材料がBa及びTiを含む酸化物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の製造方法。
  5. 化学機械研磨、イオンミリング、ウェットエッチング又はこれらの組み合わせにより前記金属膜を除去する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の製造方法。
  6. 請求項3記載の方法によって得られる誘電体素子であって、
    互いに対向して配置された第1の電極膜及び第2の電極膜と、それらの間に設けられた誘電体膜とを備え、
    前記第1の電極膜及び前記第2の電極膜が、銅、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛又はこれらを含む合金から構成された(111)配向を有する膜であり、
    前記誘電体膜が、セラミックス誘電体材料から構成された(001)配向を有する膜である、
    誘電体素子。
  7. 前記セラミックス誘電体材料がBa及びTiを含む酸化物である、請求項記載の誘電体素子。
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