JP5326604B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、空気入りタイヤに関し、更に詳しくは、ランフラット走行を可能にするサイド補強部材を備えた空気入りタイヤにおいて、乗り心地性を改善するようにした空気入りタイヤに関する。
従来、タイヤ内の空気がパンク等により抜けてしまった後も車両の走行を可能にするランフラット走行性能を備えた空気入りタイヤとして、サイドウォール部にランフラット走行を可能にする断面三日月形状のサイド補強部材を配置し、そのサイド補強部材を熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂成分とエラストマー成分とをブレンドした熱可塑性エラストマー組成物から構成したタイヤが知られている(例えば、特許文献1参照)。
このようにサイド補強部材を高硬度ゴムに代えて熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物から構成することにより、サイドウォール部の剛性を増加させてランフラット耐久性を高めることができる利点がある。しかしながら、その反面、サイドウォール部の剛性増大により通常走行時の乗り心地性が大きく低下するという問題がある。
特開平10−35232号公報
本発明の目的は、ランフラット走行を可能にするサイド補強部材を熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物から構成した空気入りタイヤにおいて、ランフラット走行時の耐久性を従来と同じレベル以上に維持しながら、乗り心地性を改善することが可能な空気入りタイヤを提供することにある。
上記目的を達成する本発明の空気入りタイヤは、サイドウォール部にランフラット走行を可能にする断面三日月形状のサイド補強部材を配置し、該サイド補強部材を熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂成分とエラストマー成分とをブレンドした熱可塑性エラストマー組成物から構成した空気入りタイヤにおいて、前記サイド補強部材の貯蔵弾性率をタイヤ径方向外側及び内側をタイヤ径方向中央側より低くしたことを特徴とする。
上述した本発明によれば、サイド補強部材の貯蔵弾性率を部分的に下げることで、サイドウォール部を撓み易くすることができるため、通常走行時の乗り心地性を改善することができる。他方、熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマー組成物からなる断面三日月形状のサイド補強部材において、厚さが次第に薄くなりランフラット走行時の繰り返し変形により破壊され易い端部側に位置するタイヤ径方向外側及び内側の貯蔵弾性率を低下させることで、その破壊の発生を抑制することができるので、ランフラット走行時の耐久性を従来と同じレベル以上に維持することができる。
本発明の空気入りタイヤの一実施形態を示す部分断面図である。 サイド補強部材の他の例を示す拡大断面図である。
以下、本発明の実施の形態について添付の図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の空気入りタイヤの一実施形態を示し、1はトレッド部、2はビード部、3はサイドウォール部である。左右のビード部3からタイヤ径方向外側に左右のサイドウォール部2が延設され、この左右のサイドウォール部2間にトレッド部1が設けられている。
タイヤ内側には左右のビード部3間に2層のカーカス層4が延設され、その両端部がビード部3に埋設したビードコア5の周りにビードフィラー6を挟み込むようにしてタイヤ軸方向内側から外側に折り返されている。トレッド部1のカーカス層4の外周側には2層のベルト層7が設けられている。このベルト層7の外周側には、ベルト層7を保護するための複数のベルトカバー層8が配置されている。
カーカス4の内側には、空気透過防止層として作用するインナーライナー層9が配設されている。両サイドウォール部2には、内側のカーカス層4とインナーライナー層9との間に、ランフラット走行を可能にするためのタイヤ子午線断面形状が略三日月状に形成されたサイド補強部材10が設けられている。このサイド補強部材10はタイヤ周方向に沿って環状に延設され、その外周端部がベルト層7の内周側まで延在し、内周端部は側面視でビードフィラー6の内周側部と重複する位置まで延在している。
サイド補強部材10は、熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂成分とエラストマー成分とをブレンドした熱可塑性エラストマー組成物から構成され、外周端側に位置するタイヤ径方向外側部10Aと内周端側に位置するタイヤ径方向内側部10Bの貯蔵弾性率と、その間に位置するタイヤ径方向中央側部10Cの貯蔵弾性率が異なり、タイヤ径方向外側部10Aと内側部10Bの貯蔵弾性率をタイヤ径方向中央側部10Cより低くしている。
このような構成のサイド補強部材10は、ストリップ材Sをタイヤ周方向に巻回した構成になっている。例えば、サイド補強部材10を熱可塑性エラストマー組成物から構成する場合、貯蔵弾性率が異なる2種類の熱可塑性エラストマー組成物からなるストリップ材Sを使用する。貯蔵弾性率の調整は、同じ熱可塑性樹脂成分を含有する場合、エラストマー成分の量を調整すればよく、その量を多くすることにより貯蔵弾性率を低く、少なくすることにより高くするができる。貯蔵弾性率が高い方(エラストマー成分が低い方)のストリップ材をタイヤ周方向に巻回してタイヤ径方向中央側部10Cを構成し、貯蔵弾性率が低い方(エラストマー成分が多い方)のストリップ材Sをタイヤ周方向に巻回してタイヤ径方向外側部10Aと内側部10Bをそれぞれ構成する。
或いは、貯蔵弾性率が同じ熱可塑性エラストマー組成物からなる3本のストリップ材Sを使用し、1本のストリップ材Sをタイヤ周方向に巻回してタイヤ径方向中央側部10Cを構成し、残りの各1本のストリップ材Sをゴム層を介在させるようにしてタイヤ周方向に巻回してタイヤ径方向外側部10Aと内側部10Bをそれぞれ構成するようにしてもよい。残りの各1本のストリップ材Sを熱可塑性エラストマー組成物に代えて熱可塑性樹脂から構成し、それをゴム層を介在させるようにしてタイヤ周方向に巻回し、タイヤ径方向中央側部10Cより貯蔵弾性率が低くなるタイヤ径方向外側部10Aと内側部10Bを形成してもよい。
介在させるゴム層のゴムとしては、20℃の貯蔵弾性率が0.03〜0.90MPaのゴムが特に乗り心地性の点からよい。そのようなゴム組成物の配合としては、原料ゴム100重量部に対して、エポキシ化天然ゴム(エポキシ化率50mol%)を20重量部以上配合したジエン系ゴムコンパウンドを好ましく挙げることができる。耐発熱性を重視する場合には、60℃のtanδが0.03〜0.20のゴムがよい。
サイド補強部材10を熱可塑性樹脂から構成する場合、貯蔵弾性率が異なる2種類の熱可塑性樹脂からなるストリップ材Sを使用し、貯蔵弾性率が高い方の熱可塑性樹脂からなるストリップ材をタイヤ周方向に巻回してタイヤ径方向中央側部10Cを構成し、貯蔵弾性率が低い方の熱可塑性樹脂からなるストリップ材をタイヤ周方向に巻回してタイヤ径方向外側部10Aと内側部10Bをそれぞれ構成する。
或いは、熱可塑性樹脂からなるストリップ材Sとそれよりも貯蔵弾性率が低い熱可塑性エラストマー組成物からなるストリップ材Sを使用し、熱可塑性樹脂からなるストリップ材をタイヤ周方向に巻回してタイヤ径方向中央側部10Cを構成し、熱可塑性エラストマー組成物からなるストリップ材をタイヤ周方向に巻回してタイヤ径方向外側部10Aと内側部10Bをそれぞれ構成するようにしてもよい。
上述した本発明によれば、断面三日月形状のサイド補強部材10の貯蔵弾性率を部分的に下げることにより、サイドウォール部2を撓み易くすることができるので、通常走行時の乗り心地性の改善が可能になる。他方、熱可塑性樹脂や熱可塑性エラストマー組成物からなるサイド補強部材10において、厚さが次第に薄くなりランフラット走行時の繰り返し変形により壊れ易い端部側に位置するタイヤ径方向外側部10Aと内側部10Bの貯蔵弾性率を低下させることで、壊れ易い端部側が従来より変形に追従し易くなるので破壊の抑制が可能になり、ランフラット走行時の耐久性を改善することもできる。
本発明において、タイヤ径方向外側部10Aとタイヤ径方向中央側部10Cの貯蔵弾性率の比(タイヤ径方向外側部10Aの貯蔵弾性率/タイヤ径方向中央側部10Cの貯蔵弾性率)及びタイヤ径方向内側部10Bとタイヤ径方向中央側部10Cの貯蔵弾性率の比(タイヤ径方向内側部10Bの貯蔵弾性率/タイヤ径方向中央側部10Cの貯蔵弾性率)としては、それぞれ0.25〜0.75の範囲にするのがよい。貯蔵弾性率の比が0.25より小さいと、十分なランフラット耐久性を確保することができない。貯蔵弾性率の比が0.75より大きいと、十分な破壊の抑制効果が得られない。
サイド補強部材10に用いられる熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物の貯蔵弾性率としては、5〜1200MPaの範囲にすることができる。貯蔵弾性率が5MPaより低いと、十分なランフラット耐久性を確保することができない。貯蔵弾性率が1200MPaより高いと、サイド補強部材10の剛性が高くなりすぎるため、壊れ易くなり、タイヤ故障の原因となる。好ましくは、15〜500MPaの範囲にするのがよい。
サイド補強部材10を構成する熱可塑性樹脂及び熱可塑性エラストマー組成物の60℃のtanδとしては、それぞれ0.04〜0.3の範囲にするのが、耐発熱性の点からよい。
タイヤ径方向中央側部10Cの範囲としては、サイド補強部材10の外周端10xと内周端10yを結ぶ直線SAの中点C1から直線延在方向両側にそれぞれサイド補強部材10の全長(直線SAの全長)ELの少なくとも15%の点C2,C3から直線SAに引いた垂線X1,X2で挟まれる範囲にすることができる。最大で、中点C1から直線延在方向両側にそれぞれサイド補強部材10の全長(直線SAの全長)ELの35%の点C4,C5から直線SAに引いた垂線X3,X4で挟まれる範囲にすることができる。タイヤ径方向外側部10Aの範囲は、外周端10xからサイド補強部材10の全長ELの少なくとも15%の点C4までの範囲にすることができる。最大で、外周端10xからサイド補強部材10の全長ELの35%の点C2までの範囲にすることができる。タイヤ径方向内側部10Bの範囲は、内周端10yからサイド補強部材10の全長ELの少なくとも15%の点C5までの範囲にすることができる。最大で、内周端10yからサイド補強部材10の全長ELの35%の点C3までの範囲にすることができる。垂線X1,X3で挟まれる領域は、タイヤ径方向中央側部10Cとタイヤ径方向外側部10Aの貯蔵弾性率が混在する構成であってもよい。また、垂線X2,X4で挟まれる領域は、タイヤ径方向中央側部10Cとタイヤ径方向内側部10Bの貯蔵弾性率が混在する構成であってもよい。
サイド補強部材10は、好ましくは、貯蔵弾性率をタイヤ径方向外側及び内側に向けて次第に低くなるようにするのがよい。その好ましい一例を図2に示す。図2のサイド補強部材10は、タイヤ径方向中央側部10Cをセンター部10C1とそのタイヤ径方向両側でセンター部10C1より弾性が低いサイド部10C2とから構成し、タイヤ径方向外側部10A及び内側部10Bをそれぞれタイヤ径方向に3分割した第1部分10A1,10B1と第2部分10A2,10B2と第3部分10A3,10B3から構成している。タイヤ径方向中央側部10Cに隣接する第1部分10A1,10B1は、サイド部10C2より貯蔵弾性率は低いが、隣接する第2部分10A2,10B2より貯蔵弾性率が高く、最も端に位置する第3部分10A3,10B3の貯蔵弾性率が最も低くなっており、サイド補強部材10は貯蔵弾性率がセンター部10C1、サイド部10C2、第1部分10A1,10B1、第2部分10A2,10B2、第3部分10A3,10B3の順で段階的に次第に低くなっている。このように貯蔵弾性率を次第に低くすることで、貯蔵弾性率が変化する境界部分での応力集中を緩和し、ランフラット走行時の耐久性をより高めることができる。
なお、サイド補強部材10において、タイヤ径方向中央側部10Cとタイヤ径方向外側部10Aの境界線、及びタイヤ径方向中央側部10Cとタイヤ径方向内側部10Bの境界線は、図2に示す状態に代えて、斜め(図2に示す直線状境界線に対して斜め)に延在するようにしてもよい。また、図示するサイド補強部材10は、厚さが最大となる位置が長手方向の中央に位置するが、それから上下にずれた位置に最大厚さがあるものであってもよい。
上記のようなサイド補強部材10を有する空気入りタイヤは、予め薄膜状のストリップ材Sによりサイド補強部材10を成形しておき、それをグリーンタイヤ成形時に取り付けるのがよい。好ましくは、ストリップ材Sを巻回して予め成形したサイド補強部材10を最終部材形状となるよう型付け可能な型に入れて型付けし、それを更に加熱するのが、形状をより安定させる上でよい。
ストリップ材Sを巻回する際は、その巻き付け張力を適宜選択(径方向外側ほど巻き付け張力を低減)するのがよく、また巻回したストリップ材S同士の接着は、加硫接着や予めストリップ材Sの表面に接着剤を塗布しておき、接着剤による接着させるようにしてもよい。
上述したストリップ材Sは、その幅としては5〜30mm、厚さとしては0.5〜3.0mmの範囲にすることができる。
本発明では、サイド補強部材10に用いられる熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリアミド系樹脂〔例えば、ナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン46(N46)、ナイロン11(N11)、ナイロン12(N12)、ナイロン610(N610)、ナイロン612(N612)、ナイロン6/66共重合体(N6/66)、ナイロン6/66/610共重合体(N6/66/610)、ナイロンMXD6(MXD6)、ナイロン6T、ナイロン6/6T共重合体、ナイロン66/PP共重合体、ナイロン66/PPS共重合体〕及びそれらのN−アルコキシアルキル化物、例えば、ナイロン6のメトキシメチル化物、ナイロン6/610共重合体のメトキシメチル化物、ナイロン612のメトキシメチル化物、ポリエステル系樹脂〔例えば、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、PET/PEI共重合体、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、液晶ポリエステル、ポリオキシアルキレンジイミドジ酸/ポリブチレンテレフタレート共重合体などの芳香族ポリエステル〕、ポリニトリル系樹脂〔例えば、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、(メタ)アクリロニトリル/スチレン共重合体、(メタ)アクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体〕、ポリメタクリレート系樹脂〔例えば、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル〕、ポリビニル系樹脂〔例えば、酢酸ビニル、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルアルコール/エチレン共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PDVC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体、塩化ビニリデン/アクリロニトリル共重合体(ETFE)〕、セルロース系樹脂〔例えば、酢酸セルロース、酢酸酪酸セルロース〕、フッ素系樹脂〔例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリクロルフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフロロエチレン/エチレン共重合体〕、イミド系樹脂〔例えば、芳香族ポリイミド(PI)〕等を好ましく用いることができる。
熱可塑性エラストマー組成物は、上述した熱可塑性樹脂の成分にエラストマー成分を混合して構成することができる。使用されるエラストマーとしては、例えば、ジエン系ゴム及びその水添物〔例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、エポキシ化天然ゴム、スチレンブラジエンゴム(SBR)、ブラジエンゴム(BR、高シスBR及び低シスBR)、ニトリルゴム(NBR)、水素化NBR、水素化SBR〕、オレフィン系ゴム〔例えば、エチレンプロピレンゴム(EPDM、EPM)、マレイン酸変性エチレンプロピレンゴム(M−EPM)、ブチルゴム(IIR)、イソブチレンと芳香族ビニル又はジエン系モノマー共重合体、アクリルゴム(ACM)、アイオノマー〕、含ハロゲンゴム〔例えば、Br−IIR、CI−IIR、イソブチレンパラメチルスチレン共重合体の臭素化物(Br−IPMS)、クロロプレンゴム(CR)、ヒドリンゴム(CHR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、塩素化ポリエチレンゴム(CM)、マレイン酸変性塩素化ポリエチレンゴム(M−CM)〕、シリコンゴム〔例えば、メチルビニルシリコンゴム、ジメチルシリコンゴム、メチルフェニルビニルシリコンゴム〕、含イオウゴム〔例えば、ポリスルフィドゴム〕、フッ素ゴム〔例えば、ビニリデンフルオライド系ゴム、含フッ素ビニルエーテル系ゴム、テトラフルオロエチレン−プロピレン系ゴム、含フッ素シリコン系ゴム、含フッ素ホスファゼン系ゴム〕、熱可塑性エラストマー〔例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、エステル系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ボリアミド系エラストマー)等を好ましく使用することができる。
上記した特定の熱可塑性樹脂成分とエラストマー成分との相溶性が異なる場合は、第3成分として適当な相溶化剤を用いて両者を相溶化させることができる。ブレンド系に相溶化剤を混合することにより、熱可塑性樹脂とエラストマー成分との界面張力が低下し、その結果、分散層を形成しているゴム粒子径が微細になることから両成分の特性はより有効に発現されることになる。そのような相溶化剤としては、一般的に熱可塑性樹脂及びエラストマー成分の両方又は片方の構造を有する共重合体、或いは熱可塑性樹脂又はエラストマー成分と反応可能なエポキシ基、カルボニル基、ハロゲン基、アミノ基、オキサゾリン基、水酸基等を有した共重合体の構造をとるものとすることができる。これらは混合される熱可塑性樹脂とエラストマー成分の種類によって選定すればよいが、通常使用されるものには、スチレン/エチレン・ブチレンブロック共重合体(SEBS)及びそのマレイン酸変性物、EPDM、EPM、EPDM/スチレン又はEPDM/アクリロニトリルグラフト共重合体及びそのマレイン酸変性物、スチレン/マレイン酸共重合体、反応性フェノキシン等を挙げることができる。かかる相溶化剤の配合量には特に限定はないが、好ましくは、ポリマー成分(熱可塑性樹脂とエラストマー成分との合計)100重量部に対して、0.5〜10重量部がよい。
熱可塑性樹脂とエラストマーとをブレンドする場合の特定の熱可塑性樹脂成分(A)とエラストマー成分(B)との組成比は、特に限定はなく、貯蔵弾性率、ストリップ材の断面積により適宜決めればよいが、好ましい範囲は重量比90/10〜30/70である。
本発明に係るポリマー組成物には、上記必須ポリマー成分に加えて、本発明のタイヤ用ポリマー組成物の必要特性を損なわない範囲で前記した相溶化剤ポリマーなどの他のポリマーを混合することができる。他のポリマーを混合する目的は、熱可塑性樹脂とエラストマー成分との相溶性を改良するため、材料の成型加工性をよくするため、耐熱性向上のため、コストダウンのため等があり、これに用いられる材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ABS、SBS、ポリカーボネート(PC)等を例示することができる。本発明に係るポリマー組成物には、更に一般的にポリマー配合物に配合される充填剤(炭酸カルシウム、酸化チタン、アルミナ等)、カーボンブラック、ホワイトカーボン等の補強剤、軟化剤、可塑剤、加工助剤、顔料、染料、老化防止剤等を上記ヤング率の要件を損なわない限り任意に配合することもできる。
また、上記エラストマー成分は熱可塑性樹脂との混合の際、動的に加硫することもできる。動的に加硫する場合の加硫剤、加硫助剤、加硫条件(温度、時間)等は、添加するエラストマー成分の組成に応じて適宜決定すればよく、特に限定されるものではない。
加硫剤としては、一般的なゴム加硫剤(架橋剤)を用いることができる。具体的には、イオウ系加硫剤としては粉末イオウ、沈降性イオウ、高分散性イオウ、表面処理イオウ、不溶性イオウ、ジモルフォリンジサルファイド、アルキルフェノールジサルファイド等を例示でき、例えば、0.5〜4phr〔phr:ゴム成分(ポリマー)100重量部あたりの重量部〕程度用いることができる。
また、有機過酸化物系の加硫剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジ(パーオキシルベンゾエート)等が例示され、例えば、1〜20phr 程度用いることができる。
更に、フェノール樹脂系の加硫剤としては、アルキルフェノール樹脂の臭素化物や、塩化スズ、クロロプレン等のハロゲンドナーとアルキルフェノール樹脂とを含有する混合架橋系等が例示でき、例えば、1〜20phr 程度用いることができる。その他として、亜鉛華(5phr 程度)、酸化マグネシウム(4phr 程度) 、リサージ(10〜20phr 程度) 、p−キノンジオキシム、p−ジベンゾイルキノンジオキシム、テトラクロロ−p−ベンゾキノン、ポリ−p−ジニトロソベンゼン(2〜10phr 程度) 、メチレンジアニリン(0.2〜10phr 程度) が例示できる。
また、必要に応じて、加硫促進剤を添加してもよい。加硫促進剤としては、アルデヒド・アンモニア系、グアニジン系、チアゾール系、スルフェンアミド系、チウラム系、ジチオ酸塩系、チオウレア系等の一般的な加硫促進剤を、例えば、0.5〜2phr 程度用いることができる。具体的には、アルデヒド・アンモニア系加硫促進剤としては、ヘキサメチレンテトラミン等、グアジニン系加硫促進剤としては、ジフェニルグアジニン等、チアゾール系加硫促進剤としては、ジベンゾチアジルジサルファイド(DM)、2−メルカプトベンゾチアゾール及びそのZn塩、シクロヘキシルアミン塩等、スルフェンアミド系加硫促進剤としては、シクロヘキシルベンゾチアジルスルフェンアマイド(CBS)、N−オキシジエチレンベンゾチアジル−2−スルフェンアマイド、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアマイド、2−(チモルポリニルジチオ)ベンゾチアゾール等、チウラム系加硫促進剤としては、テトラメチルチウラムジサルファイド(TMTD)、テトラエチルチウラムジサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド(TMTM)、ジペンタメチレンチウラムテトラサルファイド等、ジチオ酸塩系加硫促進剤としては、Zn−ジメチルジチオカーバメート、Zn−ジエチルジチオカーバメート、Zn−ジ−n−ブチルジチオカーバメート、Zn−エチルフェニルジチオカーバメート、Te−ジエチルジチオカーバメート、Cu−ジメチルジチオカーバメート、Fe−ジメチルジチオカーバメート、ピペコリンピペコリルジチオカーバメート等、チオウレア系加硫促進剤としては、エチレンチオウレア、ジエチルチオウレア等を挙げることができる。
また、加硫促進助剤としては、一般的なゴム用助剤を併せて用いることができ、例えば、亜鉛華(5phr 程度)、ステアリン酸やオレイン酸及びこれらのZn塩(2〜4phr 程度)等が使用できる。熱可塑性エラストマー組成物の製造方法は、予め熱可塑性樹脂成分とエラストマー成分(ゴムの場合は未加硫物)とを2軸混練押出機等で溶融混練し、連続相(マトリックス)を形成する熱可塑性樹脂中に分散相(ドメイン)としてエラストマー成分を分散させることによる。エラストマー成分を加硫する場合には、混練下で加硫剤を添加し、エラストマー成分を動的加硫させてもよい。また、熱可塑性樹脂またはエラストマー成分への各種配合剤(加硫剤を除く)は、上記混練中に添加してもよいが、混練の前に予め混合しておくことが好ましい。熱可塑性樹脂とエラストマー成分の混練に使用する混練機としては、特に限定はなく、スクリュー押出機、ニーダ、バンバリミキサー、2軸混練押出機等が使用できる。中でも熱可塑性樹脂とエラストマー成分の混練およびエラストマー成分の動的加硫には、2軸混練押出機を使用するのが好ましい。更に、2種類以上の混練機を使用し、順次混練してもよい。溶融混練の条件として、温度は熱可塑性樹脂が溶融する温度以上であればよい。また、混練時の剪断速度は1000〜7500Sec -1であるのが好ましい。混練全体の時間は30秒から10分、また加硫剤を添加した場合には、添加後の加硫時間は15秒から5分であるのが好ましい。上記方法で作製されたポリマー組成物は、射出成形、押出し成形等、通常の熱可塑性樹脂の成形方法によって所望のストリップ形状にすればよい。
このようにして得られるストリップ材Sは、熱可塑性樹脂(A)のマトリクス中にエラストマー成分(B)が不連続相として分散した構造をとる。かかる構造をとることにより、サイド補強部材10に十分な柔軟性と連続相としての樹脂層の効果により十分な剛性を併せ付与することができると共に、エラストマー成分の多少によらず、成形に際し、熱可塑性樹脂と同等の成形加工性を得ることができる。
サイド補強部材10に隣接するタイヤ構成部材との接着は、通常のゴム系、フェノール樹脂系、アクリル共重合体系、イソシアネート系等のポリマーと架橋剤を溶剤に溶かした接着剤をビードフィラーに塗布し、加硫成形時の熱と圧力により接着させる方法、または、スチレンブタジエンスチレン共重合体(SBS)、エチレンエチルアクリレート(EEA)、スチレンエチレンブチレンブロック共重合体(SEBS)等の接着用樹脂をストリップ材と共に共押出、或いはラミネートして多層積層体を作製しておき、加硫時に隣接するタイヤ構成部材と接着させる方法がある。溶剤系接着剤としては、例えば、フェノール樹脂系(ケムロック220・ロード社)、塩化ゴム系(ケムロック205、ケムロック234B)、イソシアネート系(ケムロック402)等を例示することができる。
本発明は、上述した実施形態のように、サイド補強部材10のタイヤ径方向外側部10A及び内側部10Bの貯蔵弾性率を低くするが、それによりランフラット走行時の耐久性を従来と同じレベル以上に維持しながら、乗り心地性を改善することができる。
なお、本発明でいう貯蔵弾性率とは、粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所製)を使用し、温度20℃、周波数20Hz、静歪10%、動歪±2%の条件で測定する。また、本発明で言う60℃のtanδは、上記と同じ粘弾性スペクトロメーター(東洋精機製作所製)を使用し、温度60℃、周波数20Hz、静歪10%、動歪±2%の条件で測定する。
タイヤサイズを255/40R17、タイヤ構造を図1で共通にし、サイド補強部材の構成を異ならせた本発明タイヤ1〜3と従来タイヤを作製した。
本発明タイヤ1におけるサイド補強部材は、熱可塑性エラストマー組成物(熱可塑性樹脂成分としてナイロン11[アトケム社・リルサンBMNO TL]、エラストマー成分としてBr-IPMS[エクソン社・EXXPRO 89-4]を使用)から構成され、タイヤ径方向中央側部における熱可塑性樹脂成分とエラストマー成分との比率が55:45(貯蔵弾性率100MPa)、タイヤ径方向外側部及び内側部における熱可塑性樹脂成分とエラストマー成分との比率が40:60(貯蔵弾性率50MPa)である。
本発明タイヤ2におけるサイド補強部材は、タイヤ径方向中央側部が熱可塑性エラストマー組成物(熱可塑性樹脂成分としてナイロン11[アトケム社・リルサンBMNO TL]、エラストマー成分としてBr-IPMS[エクソン社・EXXPRO 89-4]を使用し、その比率は55:45(貯蔵弾性率100MPa))から構成され、タイヤ径方向外側部及び内側部が同じ熱可塑性エラストマー組成物からなる層にゴム層(60℃のtanδが0.20)を介在させて構成(貯蔵弾性率4.9MPa)した。
本発明タイヤ3におけるサイド補強部材は、タイヤ径方向中央側部を熱可塑性樹脂(ナイロン11[アトケム社・リルサンBMNO TL](貯蔵弾性率200MPa))から構成し、タイヤ径方向外側部及び内側部を熱可塑性エラストマー組成物(ナイロン11/Br−IPMS=40:60(貯蔵弾性率50MPa))から構成した。
従来タイヤにおけるサイド補強部材は、熱可塑性エラストマー組成物(熱可塑性樹脂成分としてナイロン11[アトケム社・リルサンBMNO TL]、エラストマー成分としてBr-IPMS[エクソン社・EXXPRO 89-4]を使用し、その比率が55:45(貯蔵弾性率100MPa)から構成した。
これら各試験タイヤを以下に示す測定条件により、通常走行時の乗り心地性とランフラット走行時の耐久性の評価試験を行ったところ、表1に示す結果を得た。
乗り心地性
各試験タイヤをリムサイズ17×9−JJのリムに装着し、空気圧を230kPaにして排気量3000ccの車両に取付け、テストコースにおいて、テストドライバーによる官能評価試験を実施し、その評価結果を従来タイヤを100とする指数値で示した。この値が大きい程、通常走行時の乗り心地性が優れている。
耐久性
各試験タイヤをリムサイズ17×9−JJのリムに装着し、空気圧を0にして3000ccの車両の前輪右側に取付け、テストコースにおいて車両が走行不能になるまでの走行距離を測定し、その結果を従来タイヤを100とする指数値で示した。この値が大きい程、ランフラット走行時の耐久性が優れている。
Figure 0005326604
表1から、本発明タイヤは、ランフラット走行時の耐久性を従来レベル以上に維持しながら、乗り心地性を改善できることがわかる。
2 サイドウォール部
10 サイド補強部材
10A タイヤ径方向外側部
10B タイヤ径方向内側部
10C タイヤ径方向中央側部
S ストリップ材

Claims (7)

  1. サイドウォール部にランフラット走行を可能にする断面三日月形状のサイド補強部材を配置し、該サイド補強部材を熱可塑性樹脂または熱可塑性樹脂成分とエラストマー成分とをブレンドした熱可塑性エラストマー組成物から構成した空気入りタイヤにおいて、前記サイド補強部材の貯蔵弾性率をタイヤ径方向外側及び内側をタイヤ径方向中央側より低くした空気入りタイヤ。
  2. 前記サイド補強部材は熱可塑性エラストマー組成物から構成され、エラストマー成分をサイド補強部材のタイヤ径方向中央側よりタイヤ径方向外側及び内側で多くした請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記サイド補強部材は、タイヤ径方向中央側が熱可塑性エラストマー組成物から構成され、タイヤ径方向外側及び内側が熱可塑性樹脂または熱可塑性エラストマー組成物からなるストリップ材をゴム層を介在させるようにしてタイヤ周方向に巻回して構成される請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記サイド補強部材は、タイヤ径方向中央側が熱可塑性樹脂から構成され、タイヤ径方向外側及び内側が熱可塑性エラストマー組成物から構成される請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  5. 前記サイド補強部材の貯蔵弾性率をタイヤ径方向外側及び内側に向けて次第に低くした請求項1乃至4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  6. 前記熱可塑性樹脂と熱可塑性エラストマー組成物の60℃のtanδがそれぞれ0.04〜0.3である請求項1乃至5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  7. 前記サイド補強部材がストリップ材をタイヤ周方向に巻回して構成される請求項1乃至6のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
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