JP5325274B2 - 脆性材料用スクライビングホイールの製造方法 - Google Patents
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Description
例えば、FPDの一種である液晶表示機器用のパネルは、2枚のガラス基板を貼り合わせ、そのギャップに液晶が注入されて表示パネルを構成する。また、LCOSと呼ばれるプロジェクタ用基板の内の反射型の基板の場合は、石英基板と半導体ウェハとが貼り合わされた一対の基板が用いられる。このような基板を貼り合わせた貼り合わせ基板は、通常、マザー基板である大きいサイズの貼り合わせ基板の表面にスクライブラインを形成し、次いで形成されたスクライブラインに沿って基板をブレイクすることにより、所定の寸法に分断された単位基板となる。
また、本発明において、スクライブラインの形成によって、基板の表面から基板の板厚方向に垂直クラックを伸展させるスクライビングホイールの性質を「浸透効果」と称する。
図7を用いて従来のスクライブ方法を説明する。なお、この図において左右方向をX方向、紙面に直交する方向をY方向として以下に説明する。
図8および図9に基づいて、基板の割断工程の2例を説明する。なお、以下の説明では、液晶表示機器用のパネルに使用される貼り合わせガラスであるガラス基板Gを例にして、便宜的に、一方側のガラス基板をA面基板、他方側をB面基板と仮称する。
(2)次に、ガラス基板Gの上下を反転させて前記ガラス基板Gをブレイク装置に搬送する。そして、図8(b)に示すように、このブレイク装置で、マット4上に載置されたガラス基板GのB面基板に対して、ブレイクバー3をスクライブラインSaに対向するラインに沿って押し付ける。これにより、下側のA面基板は、スクライブラインSaから上方に向かってクラックが伸展し、A面基板は、スクライブラインSaに沿って分断される。
(3)次に、ガラス基板Gをスクライブ装置のスクライブテーブル上に搬送する。そして、このスクライブ装置で、図8(c)に示すように、B面基板に対して、スクライビングホイール50を用いてスクライブを行いスクライブラインSbを形成する。
(4)次に、ガラス基板Gの上下を反転させてブレイク装置に搬送する。そして、図8(d)に示すように、マット4上に載置された前記ガラス基板GのA面基板に対して、ブレイクバー3をスクライブラインSbに対向するラインに沿って押し付ける。これにより、下側のB面基板は、スクライブラインSbから上方に向かってクラックを伸展させ、B面基板は、スクライブラインSbに沿って分断される。
本発明では、上記の工程からなる割断方式をSBSB方式(Sはスクライブ、Bはブレイクを意味する)と称する。
(2)次に、ガラス基板Gの上下を反転させて前記ガラス基板Gをスクライブテーブル上に載置し、B面ガラス基板に対して、スクライビングホイール50を用いてスクライブを行いスクライブラインSbを形成する(図9(b))。
(3)次に、ガラス基板Gをブレイク装置に搬送する。そして、図9(c)に示すように、このブレイク装置で、マット4上に載置されたガラス基板GのB面ガラス基板に対して、ブレイクバー3をスクライブラインSaに対向するラインに沿って押し付ける。これにより、下側のA面基板は、スクライブラインSaから上方に向かってクラックを伸展させ、A面基板は、スクライブラインSaに沿って分断される。
(4)次に、ガラス基板Gの上下を反転させ、図9(d)に示すように、ブレイク装置のマット4上に載置する。そして、ガラス基板GのA面基板に対して、ブレイクバー3をスクライブラインSbに対向するラインに沿って押し付ける。これにより、下側のB面基板は、スクライブラインSbから上方に向かってクラックが伸展し、B面基板は、スクライブラインSbに沿って分断される。
本発明では、上記の工程からなる割断方式をSSBB方式と称する。
スクライビングホイール40は、円周稜線41が形成された外周縁部と、円周稜線41に沿って円周方向に交互に形成された多数の切り欠き40bおよび突起40aとからなる。突起40aは、円周稜線41を所定のピッチPおよび深さhで切り欠くことによって形成されている。スクライビングホイール40を用いてスクライブラインを形成することにより、ガラス基板の表面から垂直方向にガラス基板の板厚に対して相対的に深い垂直クラックを形成することができる。このような高い浸透効果を有するスクライビングホイール40を割断工程に用いた場合には、図8(b)および図8(d)に示したSBSB方式におけるブレイク工程、あるいは図9(c)および図9(d)に示したSSBB方式におけるブレイク工程を簡略化したり省略したりすることが可能になる。
上記端面強度の点では、N刃先を用いた分断面のデータが良好ではあるが、問題として(1)クロス切りにおいては交点飛びが発生する問題、(2)基板表面の硬度が高い基板に対しては、かかりのよさが要求される、(3)厚み0.4mm以下のガラスやケミカルエッチング等の化学処理にて薄型化されたガラスでは内切りによるスクライブ方法が要求されるのであるがN刃先では対応できない問題がある。
基板の表面強度の改良に加えて、パネル基板の素材となるマザー基板をケミカルエッチングして基板表面の強度補強を行う場合も増えてきているが、この場合には基板の外周が盛り上がり、『外切り』によるスクライブ動作(外切りスクライブ動作)が不安定となる傾向が出てきている。また、携帯電話に代表される携帯端末に用いられるパネル基板では、その厚みが軽量化のためにどんどん薄くなる傾向が出て来ていて、そうした基板に対してN刃先を用いる外切りスクライブ方法の採用も問題が出て来ている。その理由としては、厚さが薄い基板に対して外切りスクライブ方法を採用すると、カッターホイールの基板への乗り上げ時に基板の端面エッジに与える衝撃でエッジに欠けが発生したり、基板自身が割れてしまうので製品の歩留まりが低下するからである。したがって、薄い基板に対しては、N刃先による外切りスクライブは採用できないことになる。しかしながら、N刃先はかかりが悪い刃先であるので、その刃先を用いる内切りスクライブ方法は採用できない。
以上の説明から、刃先を使用するユーザからは、基板表面に対してかかりがよい刃先、したがって交点飛びが発生しにくい刃先であって、端面強度がN刃先と同程度の品質が確保できる刃先が要求される様になってきた。
図10に示すように、最初に形成されたスクライブラインL1〜L3をスクライビングホイールが通過してスクライブラインL4〜L6を形成する際、これらスクライブラインの交点付近で、後から形成されるスクライブラインL4〜L6が交点付近で部分的に形成されない現象が発生する場合がある(このような現象を「交点飛び」と称する)。
このような交点飛びがガラス基板に発生すると、ガラス基板はスクライブライン通りに分離されないものが多くなり、その結果、大量の不良品が発生し、生産効率を著しく低下させるといった問題があった。
しかし、スクライビングホイール40を用いてスクライブラインを形成する場合、図8(c)において、上側のB面基板をスクライブした時点で、このB面基板に深い垂直クラックが形成されて、実質的に、ガラス基板Gが分離された状態になる場合がある。そのため、図8(c)から図8(d)に移行するために、ガラス基板Gを吸引パッド等で吸引して第2のブレイク装置に搬送する際、分離されたガラス基板Gの一方が、第2のスクライブ装置に残されたり、ガラス基板Gの搬送中に分離されたガラス基板Gの一方が落下したりする場合があった。また、従来のスクライビングホイール(N刃先)を使用した場合と比較すると、脆性材料の分断面の品質(端面強度)が低くなる場合があった。
また、本発明は、スクライブ動作時のかかりがよく、脆性材料の分断面の品質(端面強度)が良好なスクライブ性能を発揮するスクライビングホイールの製造方法を提供することを目的とする。
本発明の製造方法によれば、回転軸を共有する二つの円錐台の底部が交わって円周稜線が形成された外周縁部と、前記円周稜線に沿って円周方向に交互に形成された多数の切り欠きおよび突起とからなり、前記突起は、前記円周稜線を等間隔に残して切り欠くことによって形成され、脆性材料基板に圧接させた状態で転動させて前記脆性材料基板にスクライブラインおよびスクライブラインから前記脆性材料基板の厚さ方向に伸びる垂直クラックを形成する脆性材料用スクライビングホイールであって、前記切り欠きは、その円周方向の長さが4〜14μm、より好ましくは7〜12μmの範囲であることを特徴とする脆性材料用スクライビングホイールが提供される。
本発明における突起とは、従来刃先であるN刃先の円周稜線が切り欠かれて残った、円周方向に長さを有する円周稜線の部分で構成されている。
すなわち、前記切り欠きは、その円周方向の長さが、前記突起の円周方向の長さよりも短い。前記外周縁部は、二つの前記円錐台の斜面を含んで形成され、前記斜面の中心線平均粗さRaが0.45μm以下である。また、前記円周稜線は、その中心線平均粗さRaが0.40μm以下である。
なお、脆性材料用スクライビングホイールとしては、前記ホイールを軸支するためのピンが貫通される軸孔を有するディスク状および前記ピン相当部分が一体的に形成された一体型の脆性材料用スクライビングホイールが本発明に含まれる。
少なくとも第1のスクライビングホイールが、本発明の脆性材料用スクライビングホイールであり、第2のスクライビングホイールは、第1のスクライビングホイールと同じ高浸透効果を有さないスクライビングホイールであってもよいし、あるいは前記した高浸透効果を有するスクライビングホイールであってもよい。
本発明の脆性材料用スクライビングホイールでは、切り欠きは、その円周方向の長さが4〜14μmの範囲であるので、脆性材料を切断するに際し、交点飛びを防止し、分離後のガラス基板の断面の品質を低下させることなく、搬送中に端材が落下することなく安定した搬送を可能にする。
なお、本発明において加工の対象となる脆性材料基板としては、形態、材質、用途および大きさについて特に限定されるものではなく、単板からなる基板または2枚以上の単板を貼り合わせた貼り合わせ基板であってもよく、これらの表面または内部に薄膜あるいは半導体材料を付着させたり、含ませたりされたものであってもよい。なお、上記脆性材料基板は、その表面に薄膜等が付着されていても本発明のスクライビングホイールによるスクライブの対象となるものである。
本発明における「中心線平均粗さRa」とは、JIS B 0601で規定された工業製品の表面粗さを表すパラメータの一つであり、対象物の表面からランダムに抜き取った算術平均値である。
なお、本発明のスクライビングホイール10は、ガラス等の脆性材料基板に圧接させた状態で転動させて前記脆性材料基板にスクライブラインを形成し、スクライブラインの形成にともなってスクライブラインから前記脆性材料基板の厚さ方向に伸びる垂直クラックを形成する脆性材料用スクライビングホイールである。本発明のスクライビングホイール10は、例えば、図7を用いて説明した従来のスクライブ装置100のスクライブヘッド1に、従来のスクライビングホイール50に代えて装着可能である。
円周稜線11は、軸心から半径方向外方に向かって研削加工が施されることによって形成され、研削加工が施された外周縁部14の表面には研削条痕が残る。外周縁部14は、収束角度(α)を有して形成されている。
スクライビングホイール10は、スクライビングホイール10を軸支するためのピン(図示せず)が貫通される軸孔17を有するディスク状のホイールである。
スクライビングホイール10の材質は、超硬合金、焼結ダイヤモンド、セラミックスあるいはサーメットが好ましい。
前記斜面に残される研削条痕がその中心線平均粗さRaが0.45μm以下になるように研削加工を施されるので、中心線平均粗さRaがより大きい従来の研削加工に比較して、削り取られる刃先構成材料の全量を少なくすることができ、それによって突起16の磨耗が抑えられ、寿命を大きく延ばすことができる。
円周稜線11は、外周縁部14を構成する円錐台13の斜面の上記研削条痕によって形成される微細な凹凸を有し、前記凹凸の中心線平均粗さRaが0.40μm以下である。
円周稜線11の凹凸の中心線平均粗さRaが0.40μm以下になるように研削加工を施されるので、円周稜線11に切り欠き15を形成する際に、切り欠き15の加工を開始する円周稜線11の高さ位置(半径方向における位置)を容易に決定することができる。
切り欠き15は、概略V字状の溝を平坦な円周稜線11から深さhに、ピッチP毎に切り欠くことにより形成されている。このような切り欠き15の形成により、円周稜線11には、高さhの突起16(稜線部11に相当)がピッチP毎に形成される。
突起16の円周稜線11に相当する部分は、円錐台13の斜面の上記研削条痕によって形成される微細な凹凸を有し、前記凹凸の中心線平均粗さRaが0.40μm以下である。
つまり、突起16の端部11aにおける接線Cが切り欠き面18と直角あるいは直角に近い角度で交わっていれば、突起16の端部11aにおける基板表面への食いつきはよくなるが、突起16の端部11aの磨耗が速まり、突起16の端部11aにおける接線Cが切り欠き面18と30°以下の角度で交わっていれば、突起16の端部11aにおける基板表面への食いつきが悪くなる。
角度(θ)の範囲を30〜60°とすることによって、スクライビングホイール10の長寿命化を図りながら、基板表面へのスクライビングホイールの食いつきを良好に維持することができる。
スクライビングホイール10の母体となる円柱ディスクを準備し、この円柱ディスクに対して両側の外周縁部14を研削加工することにより、二つの円錐台13の斜面が交差して円周稜線11を形成する。上記研削加工において、円錐台13の斜面の表面粗さおよび表面粗さに由来する円周稜線11の軸方向のうねりは小さいことが好ましい。
円錐台13の斜面はその中心線平均粗さRaが0.45μm以下になり、円周稜線11は、円錐台13の斜面の研削条痕によって形成される微細な凹凸を有するが、前記凹凸の中心線平均粗さRaが0.40μm以下となるように使用される砥石の粒度が選定される。このように、円錐台13の斜面および円周稜線11の表面粗さを抑えることにより、形成されるスクライブラインはその幅が細く一定のものとなり、スクライビングホイール10によるスクライビングによって得られる分離後のガラス基板Gの分断面は欠け(チッピング)等の発生が抑えられる。
切り欠き15を形成する一例としては、レーザ光の照射によって円錐台13の軸線方向からみた形状がV字状となる切り欠き15を外周縁部14に形成する。
この方法によれば、V字の中心角度を変えることによって、突起の高さhを一定に保持したまま、切り欠き15の円周方向の長さaと突起16の円周方向の長さbを容易に調整することができる。
スクライビングホイール10の外径、切り欠き15のピッチP、切り欠き15の円周方向の長さaと突起16の円周方向の長さb、切り欠き15の深さおよび外周縁部14の収束角度(α)等のスクライビングホイールの仕様は、切断対象の脆性材料の種類、厚さ、熱履歴および要望される脆性材料分断面の品質等に応じて適宜設定される。
一般に、切り欠きの深さの深いスクライビングホイールを使用することにより、脆性材料に対するかかり(特にクロススクライブ時の交点飛びの少なさ)が良好になる傾向があり、例えば、脆性材料に対するかかりの点からは、切り欠きの深さは、例えば2〜3μmであることが好ましい。一方、切り欠きの深さの浅いスクライビングホイールを使用することにより、脆性材料の分断面の品質(端面強度)が向上する傾向があり、端面強度の点からは、切り欠きの深さは、例えば、1〜2μmであることが好ましい。
一般に、貼り合わせガラス基板の分断には、外径の小さいスクライビングホイールを使用することが好ましく、例えば、外径が1〜4mmのスクライビングホイールが好適である。一方、原料単板の分断には、外径が大きいスクライビングホイールを使用することが好ましく、例えば、外径が4〜20mmのスクライビングホイールが好適である。
一般に、円周稜線の収束角度が大きいスクライビングホイールは、寿命が長い傾向があり、寿命の点からは、円周稜線の収束角度は、例えば、90〜140°であることが好ましく、100〜135°であることが特に好ましい。
一般に、切り欠きの円周方向の長さが長いスクライビングホイールを使用することにより、脆性材料に対するかかりが良好になる傾向があり、脆性材料に対するかかりの点からは、切り欠きは、その円周方向の長さが4〜14μmの範囲であり、より好ましくは7〜12μmの範囲である。一方、切り欠きの円周方向の長さが短いスクライビングホイールを使用することにより、脆性材料の分断面の品質(端面強度)が向上する傾向があり、脆性材料の分断面の品質の点からは、切り欠きは、その円周方向の長さが1〜6μmの範囲であり、より好ましくは1〜5μmの範囲である。
こうした優れた特徴を有するA刃先を単板のクロススクライブに適用する場合について以下に説明する。第1の方向の単一または複数のスクライブラインを第1のカッターホイール(第1の刃先)にて形成し、その後それらと交差する第2の方向に単一または複数のスクライブラインを第2のカッターホイール(第2の刃先)にて形成する場合を例として取り上げる。
そうした場合に、基板の材質、厚みなど加工対象の基板にも影響されるが、第1と第2の刃先の選択として次の組み合わせが可能となってくる。
第1の刃先 第2の刃先
a) N刃先 A刃先
b) A刃先 A刃先
c) A刃先 P刃先
上記のa),b),c)のケースの特徴は次の通りである。
a)の場合は、外切りスクライブが採用可能である、すなわち基板厚みが例えば0.6mm以上であって、N刃先にて対応可能な基板に対するスクライブライン形成の場合に第1の方向のスクライブラインをN刃先で形成し、その後の第2の方向のスクライブラインをA刃先にて形成させる場合である。
b)の場合は、基板が薄く例えば0.4mm以下である場合や、かかりがよくてしかも端面強度の確保が重要である場合には、第1の方向のスクライブラインをA刃先で形成し、その後の第2の方向のスクライブラインを同じまたは異なるA刃先にて形成させる場合である。
c)の場合は、同じ様に基板が薄く例えば0.4ミリ以下である場合や、かかりがよくてしかも端面強度の確保が重要である場合には、第1の方向のスクライブラインをA刃先で形成し、その後の第2の方向のスクライブラインを別のP刃先にて形成させる場合である。この場合は、第2の方向のスクライブラインの下に垂直クラックが深く形成され、その結果交点付近の「削げ」と「欠け」の発生が防止される効果がある。
次の表1に従来のスクライビングホイール(ノーマル刃先:切り欠きのない刃先)、本発明のスクライビングホイール、高浸透刃先(円周稜線に形成された溝の円周方向の長さが、突起の円周方向の長さよりも長い刃先)の特徴を示す。
*2:基板表面上の端部以外の任意の位置から、他の任意の位置(端部以外)までスクライブする切断方法。
*3:外−外切断時のかかり不良(リブマークが形成されない)。
*4:クロスカット時の交点飛び(リブマークが形成されない)。
*5:ソゲ、カケ、コジリ等の発生のしにくさ。
切り欠き15を構成するV字状底部の形状は、スクライビングホイール10の軸線方向からみた場合には円周方向に対称であってもよいし、非対称であってもよい。
このようなスクライビングホイール10を用いた場合には、クロススクライブの際の交点飛びを防止するとともに搬送中に端材が落下することなく安定した搬送が可能となる。
切り欠きは、図14に示すように、回転軸の軸線方向からみた形状が概略台形であってもよい。図14に示すように、切り欠き75が台形のスクライビングホイール70であれば、台形の底辺72の長さa’を変えることによって、突起76の端部71aにおける接線が切り欠き面78と交わる角度を変えることなく、切り欠き75の深さhを一定に保持したまま、切り欠き75の円周方向の長さaと突起76の円周方向の長さbを容易に調整することができる。なお、図14では、切り欠き75における台形の底辺72を便宜的に直線としたが、円弧であってもよい。
切り欠き75の例示として、回転軸の軸線方向からみた形状が略V字状や台形を示したが、本発明では特にこれらに限定されることなく、円弧状、略U字状であってもよい。
スクライビングホイール60は、スクライビングホイール10と同様に、円周稜線61に沿って円周方向に交互に形成された多数の切り欠き15および突起16を有する。
スクライビングホイール60では、スクライビングホイール10のようにピンを必要としないので、回転精度が高く摺動抵抗も少ないので安定した回転が得られ、刃先としての寿命が長い。
液晶パネル分断装置32は、スクライブ装置S(S1,S2)およびブレイク装置B(B1,B2)と、ガラス基板Gの上下の各面を反転させて搬送する反転搬送ロボットR1およびR2と、ガラス基板Gを反転させずに搬送する搬送ロボットMとから構成される。
液晶パネル分断装置34は、スクライブ装置S(S1,S2)およびブレイク装置B(B1,B2)と、ガラス基板Gを搬送するための反転搬送ロボットR1およびR2と搬送ロボットMとから構成される。
第1のスクライブヘッドにはチップホルダを介してこの発明のスクライビングホイール10が装着され、第2のスクライブヘッドにはチップホルダを介してこの発明のスクライビングホイール10または高浸透効果を有するスクライビングホイール40が装着される。
さらに、第1のスクライブヘッドおよび第2のスクライブヘッドの両方においてこの発明のスクライビングホイール10を用いて互いに直交するスクライブラインをガラス基板Gにテスト的に形成した後、ブレイク工程におけるガラス基板Gの分断が局部的に不十分であったためにガラス基板Gがスクライブラインに沿って良好に分離できないことが判明した場合には、高浸透性を有するスクライビングホイール40をクロス方向のスクライブ動作に用いて、スクライブラインを形成する様にしてもよい。
ガラス基板Gの割断が不十分になりやすい部分としては、例えばシール材が存在する部分である。シール材は、2枚のガラスを貼り合わせるとともに、貼り合わされたガラス板の間に注入される液晶を封入するために配置されている。
上下の基板をP刃先でスクライブした場合には、スクライブ後はブレイク工程の簡素化または省略化が可能となる。スクライブされた上下の基板は、例えば次の3通りの方法で分離が可能となる。
1)P刃先で上下基板をスクライブ後、上下の基板を左右に軽く引き離すことにより、上下の貼り合わせ基板を左右に分離させる。
2)P刃先で上下基板をスクライブ後、上下の基板を軽く折り曲げると同時に左右に引き離すことにより、上下の貼り合わせ基板を左右に分離させる。あるいは、
3)P刃先で上下基板をスクライブする際に、押圧用の弾性材料製のローラでスクライブライン形成直後の箇所の基板表面上を転動させていくことにより、スクライブ動作が終了した時点で上下の基板が左右に分離されている状態となる。
こうした上下分断装置に関しても、上側の基板をP刃先でスクライブする一方、下側の基板をP刃先ではなくA刃先でスクライブすることで、基板の搬送時の端材の脱落を防止できる。
また、貼り合わせ基板の用途にも関係してくるが、こうした上下分断装置に関しても、上下の基板それぞれに対してクロススクライブ動作を実行させる必要がある場合がある。そうした場合にも、第1の方向に対するスクライブ動作を第1の刃先で実行させた後、第2の方向に対するスクライブ動作を第2の刃先で実行させることになる。こうした場合に、第1と第2の刃先に関して同じ種類のものを用いることも可能であるし、反対に異なる種類のものを用いることも可能である。
例えば、第1と第2の両方の方向のスクライブ動作を同一種類のA刃先で実行する場合、端子部に相当する幅の狭い箇所の端材の切り離しが通常のブレイク操作では困難な場合がある。そうした場合に、第1の方向のスクライブ動作はA刃先で実行し、クロスする第2の方向のスクライブ動作はP刃先で実行することにより、幅の狭い端子部の取り出し(中抜き)操作も簡単なブレイク操作にて端材の取り出しが可能となる。
図13は、上記した手動スクライブ工具の正面図である。
手動スクライブ工具90は、一端にスクライビングホイール10が取り換え可能に装着されるホルダ91と、ホルダ91を着脱可能な棒状のハンドル92とから主に構成される。
ハンドル92は、内部に油室93が形成され、一端がホルダ91との結合部を形成し、他端が油室93に潤滑油を供給するためのキャップ94を着脱自在に備えている。
前記の実施形態では、切り欠き15を形成するためにレーザ照射を用いたが、スクライビングホイールの材質や加工効率を考慮して研削加工や放電加工による製造も本発明に含まれる。
さらに、本発明のスクライブ装置には、上記の複数のチップホルダを一つのスクライブヘッドに装着し、このようなスクライブヘッドからなる第1および第2のスクライブヘッドとを備え、XおよびYの各軸方向にそれぞれのスクライブヘッドを移動させた際、脆性材料基板に複数のスクライブラインを形成可能なマルチヘッドスクライブ装置も含まれる。
なお、本発明の脆性材料用スクライビングホイール10において形成されるそれぞれの切り欠き15の深さhは一定でなくてもよく、例えば、切り欠きの深さhが3,1,1,・・・,3,1,1,・・・と円周方向に変わっていてもよい。
図15および図16に示された結果より、本発明のスクライビングホイール(A刃先)を用いて分断された試験片は、従来のノーマル刃先(N刃先)で分断された試験片と同等の曲げ強度特性を示し、従来の高浸透刃先(P刃先)よりも、良好な曲げ強度を示すことがわかる。これは、本発明のスクライビングホイール(A刃先)を用いて分断された試験片は、端面の品質が良好であることに由来する。
本発明は、無アルカリガラスまたは石英ガラスであるガラス基板に特に有効であり、用途としてはTFT液晶パネル、TN液晶パネル、STN液晶パネルを代表例とする各種の平面表示パネル用の各種脆性材料基板が挙げられる。
10 スクライビングホイール
11 円周稜線
15 切り欠き
16 突起
60 スクライビングホイール
61 円周稜線
70 スクライビングホイール
71 円周稜線
75 切り欠き
76 突起
90 手動スクライブ工具
Claims (1)
- 回転軸を共有する二つの円錐台の底部が交わって円周稜線が形成された外周縁部と、前記円周稜線に沿って円周方向に交互に形成された複数の切り欠きおよび突起とからなり、
前記突起は、前記円周稜線が切り欠かれて残った、円周方向に長さを有する前記円周稜線の部分で構成される脆性材料用スクライビングホイールの製造方法であって、
レーザ光の照射によって前記円錐台の軸線方向からみた形状がV字状となる切り欠きを外周縁部に切り欠いて形成する工程を具備し、前記V字の中心角度を変えることによって前記切り欠きの円周方向における長さを設定することを特徴とする脆性材料用スクライビングホイールの製造方法。
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