JP5322199B2 - 電子部品用セラミックス基板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
また、ヒートシンクを想定した炭素粒子、炭素繊維成形体に金属を含浸させた高熱伝導、低熱膨張の複合材も開示されている(例えば、特許文献2参照)。
即ち、特許文献1に記載されている複合材にあっては、シート状のカーボン材を積層してあるため、その積層方向では伝熱性や導電性が殆ど無く、この複合材を配線層として用いると、主に半導体チップから発生した熱が、セラミック絶縁板を介して裏面のヒートシンクに伝えられない。また、電流も複合材表面にしか流れないことになるので、全体としては電気抵抗が大きくなってしまう。
一方、特許文献2に開示されている複合材は、熱伝導性はある程度良好であるが、電気抵抗が大きく、上記同様に配線層として用いるには、電気抵抗が大きすぎるといった問題がある。
上記配線層は、粒状炭素相と、微細炭素繊維と、金属相から成る導電性母材を含む複合材から成り、
上記粒状炭素相と上記微細炭素繊維は、上記金属相と密接した3次元ネットワーク状の構造体を形成しており、
上記配線層の厚さ方向において、上記金属相が連続した伝熱経路及び導電経路を形成しており、
上記配線層の外表面には上記3次元ネットワーク状構造体の一部が露出しており、この3次元ネットワーク状構造体が互いに接触し、厚さ方向において、連続した伝熱経路及び導電経路を形成していることを特徴とする。
上記配線層を、微細炭素繊維であるカーボンナノチューブとピッチ系バインダーを、有機溶媒中に添加し、分散・混合する工程(1)と、混合溶液を乾燥する工程(2)と、乾燥後の混合粉末を圧粉し、圧粉体を製造する工程(3)と、圧粉体に硬化処理を行う工程(4)と、硬化処理後の圧粉体を焼成する工程(5)と、工程(5)で作製したプリフォームに溶融したマトリックス金属を含浸する工程(6)と、工程(6)で得られたマトリックス金属基複合材料を圧延する工程(7)、で処理して作製することを特徴とする。
また、配線層は、粒状炭素相と、微細炭素繊維と、導電性母材を含む複合材から構成されており、粒状炭素相と微細炭素繊維は3次元ネットワーク構造体を形成しており、そして、配線層の厚さ方向には、連続した伝熱経路及び導電経路が形成されている。
図2(A)に示す例において、CNT22と粒状炭素相23とは、連結して3次元ネットワーク状の構造体を形成している(図2(B)参照)。
また、この配線層20では、熱及び電流は矢印aで示すように、配線層20の厚さ方向Tにおいて、連続した経路を形成している。
しかし、本例では、熱膨張率がほぼゼロであるCNT22と粒状炭素相23と金属相21を複合化することにより、配線層20を形成しているため、配線層20全体の熱膨張率は有意に低減されており、セラミックス基板10との熱膨張率差は小さく抑えられている。よって、両者の熱膨張率差に起因する歪みや剥離が効果的に抑制される。
よって、配線層20上部の半導体チップ40からセラミック板10、更に裏面のヒートシンク(図示せず)への熱の流れが良好である。従って、セラミック基板10及び配線層20の温度上昇を抑えることができる。このことによっても、セラミック板10と配線層20の温度差が大きくならず熱応力が低減される。電流も配線層の厚さ方向全体に流れることができ、全体としての電気抵抗が増大することはなくなる。
微細炭素繊維の具体例としては、ピッチ系又はPAN系の炭素繊維やカーボンナノファイバーやカーボンナノチューブなどが挙げられる。
この円相当平均径が50μm未満では、導電性が十分に発揮されないおそれがあり、100μmを超えると、プリフォームの製造する際に取り扱いが難しくなり、またプリフォーム中の微細炭素繊維濃度が不均一な状態となり易い。
なお、「面積基準の円相当平均径」とは、炭素繊維構造体の外形を電子顕微鏡などを用いて撮影し、この撮影画像において、各炭素繊維構造体の輪郭を適当な画像解析ソフトウェア、例えばWinRoof(商品名、三谷商事株式会社製)を用いてなぞり、輪郭内の面積を求め、各繊維構造体の円相当径を計算し、これを平均化したものである。
嵩密度が0.0001g/cm3未満では、プリフォームを製造する際に取り扱いが難しくなり、また熱伝導性や導電性の改善でも効果を発揮しにくくなる。一方、嵩密度が0.05g/cm3を超えると、少量添加によって、プリフォームの物性を改善することが難しくなることがある。
軸直交断面の最大径が15nm未満では、炭素繊維の断面が多角形状とならず、また単位量当たりの本数が増えるため、多量の微細炭素繊維が必要となる。また、軸直交断面が太くなりすぎると、特に800nmを超えると、同一添加量でCNTの量が減ってしまうため、伝熱や導電の経路が減ってしまう。
ID/IGが0.2を超えると、カーボンナノチューブが本来有する機械的特性を発現しないことがある。
このようなバインダーとしては、焼成により炭素相を生成するものであればよいが、例えば、ピッチバインダー、及びフェノール樹脂などの有機バインダーを挙げることができる。
体積比率で0.5倍未満では、炭素繊維同士の結合力が低下し、溶湯鍛造工程で炭素繊維及び粒状炭素相の3次元ネットワーク構造が破壊される可能性があり、10倍を超えると、炭素繊維が有する強度を有効に利用できず(粒状炭素相、炭素繊維単体の強度を比較すると炭素繊維の方が高強度であるため)、有効に熱膨張係数を低減できないことがある。
かかるハインダー量の増大により、配線層21’では、強固な3次元ネットワーク構造25’が形成されて(図3(B)参照)、マトリックスである金属相21を有効に拘束しており、おり、図2の例に比し、熱膨張率が著しく低下している。
よって、セラミックス基板10との熱膨張率差がいっそう小さく抑えられており、両者の熱膨張率差に起因する歪みや剥離が極めて効果的に抑制される。
導電性母材として導電性の樹脂やセラミックスを用いることも可能であるが、使用環境温度、それ自体の熱膨張性、熱伝導性及び電気抵抗、また靭性や製造し易さなどを総合的に評価すると、一般的な金属が良好である。
通常の配線に使われる銅(17ppm/K)やアルミニウム(23ppm/K)に比し、セラミック板の熱膨張率は5ppm/K以下であるから熱膨張差は大きく、この差に起因する熱応力も大きくなる。
配線層の熱膨張率が小さければ当然熱応力も小さくなるが、温度上昇がヒートシンクへの伝熱で抑えられるので15ppm/K以下、より好ましくは10ppm/K以下であれば十分である。
これにより、配線としての抵抗を小さくでき発熱損失の問題はなくなる。この抵抗値も小さいほど良好であるが、10x10−6Ω・cmを超えるようでは抵抗発熱により配線層の温度上昇の悪影響を無視でき無くなることがある。
図4及び図5は、それぞれ図2及び図3に示した配線層の顕微鏡写真(両図の(A)は光学顕微鏡写真(倍率:100倍)、(B)はSEM写真(倍率:30000倍))であるが、各図において、金属相の一例であるアルミニウム相が島状に分布していることが分かる。
この製造方法は、上述のような電子部品用セラミックス基板を製造するものであり、配線層を、下記の(1)〜(6)の工程で処理する方法である。
(1)微細炭素繊維であるカーボンナノチューブとピッチ系バインダーを、有機溶媒中に添加し、分散・混合する工程
(2)得られた混合溶液を乾燥する工程
(3)乾燥後に生成した混合粉末を圧粉し、圧粉体を製造する工程
(4)圧粉体に硬化処理を行う工程
(5)硬化処理後の圧粉体を焼成する工程
(6)工程(5)で作製したプリフォームに溶融したマトリックス金属を含浸する工程
チューブの長手方向に対する軸直交断面の平均径が50nmのカーボンナノチューブをプリフォームの全体積に対して20体積%となるように、ピッチバインダーをプリフォームの全体積に対して15体積%となるように、メタノール中に添加し、分散させ、約5分間攪拌した後、乾燥炉において大気中、70℃、1時間の条件で乾燥を行った。
乾燥後、内径40mmの成形型を用いて直径40mm、厚さ6mmの圧粉体を成形し、成形型から取り出した後、乾燥炉にて大気中、150℃、10分の熱処理により硬化させた。硬化後、圧粉体を焼成炉にて2500℃、20分の条件で焼成することにより、プリフォームを作製した(図7参照)。
このようにして作製したアルミニウム基複合材料を圧延し0.5mm厚さのシート状にし、このシートを配線層として窒化珪素製の基板にはんだ付けし、基板を作製した。作製した電子部品用セラミックス基板は、上記図1のような構造を有する。
カーボンナノチューブがプリフォームの全体積に対して5体積%となるように、ピッチバインダーをプリフォームの全体積に対して30体積%となるようにした以外は、実施例1と同様の操作を繰り返し、本実施例の基板を作製した。
(基板の配線層の熱膨張係数測定)
圧延を行う前の実施例1及び2で作製した配線層用アルミニウム基複合材をJIS規格で定められた試験片形状(Z2285)に加工し、昇温速度5℃/min、還流窒素雰囲気(200ml/min)の条件で室温〜300℃における熱膨張係数を測定した。結果を表1に示す。
表1より、実施例1及び2の複合材は、ともにマトリックスのアルミニウムに比べ熱膨張を低減できることが示された。
圧延を行う前の実施例1及び2で作製した配線層用アルミニウム基複合材を10×35×2mmの試験片に加工し、大気中、室温において比抵抗値を測定した。測定した比抵抗値の逆数をとり、電気伝導率を算出した。得られた結果を表1に示す。
表1より、実施例1及び2の複合材は、ともにマトリックスのアルミニウムに比べ電気伝導率は低下するものの、十分な導電性を有していることが示された。
圧延を行う前の実施例1及び2で作製した配線層用アルミニウム基複合材料をφ5×1mmに加工し、真空雰囲気下、室温においてレーザーフラッシュ法により熱伝導率を測定した。得られた結果を表1に示す。
表1より、実施例1及び2の複合材は、ともにマトリックスのアルミニウムに比べ熱伝導率は低下するものの、十分な熱伝導性を有していることが示された。
純銅粉を450℃で押出してφ20の丸棒を作製し、圧延して0.5mm厚さのシートを作製した。このシート材の熱膨張率は17ppm/Kで、電気抵抗は1.7μΩ・cm、熱伝導率は401W/m・Kであった。
このシートを窒化珪素製の基板にろう付けしたところ、界面に微細な割れを生じた。
アルミ合金粉を用い、純銅ブロックに高速フレーム溶射法で積層した後、被膜をはがし、熱膨張率を測定すると21ppm/Kであった。同様に電気抵抗は10.8μΩ・cm、熱伝導率は215W/m・Kであった。
同様にセラミック基板に積層したところ、冷却後に界面で剥離した。
10 セラミックス基板
20 配線層
20’ 配線層
21 金属相
22 カーボンナノチューブ
23 粒状炭素相
25 3Dネットワーク構造体
25’ 3Dネットワーク構造体
30 半田層
40 半導体チップ
H 熱
I 電流
Claims (10)
- セラミックス基板と、このセラミックス基板の表面に配設した配線層を備えた電子部品用セラミックス基板であって、
上記配線層は、粒状炭素相と、微細炭素繊維と、金属相から成る導電性母材を含む複合材から成り、
上記粒状炭素相と上記微細炭素繊維は、上記金属相と密接した3次元ネットワーク状の構造体を形成しており、
上記配線層の厚さ方向において、上記金属相が連続した伝熱経路及び導電経路を形成しており、
上記配線層の外表面には上記3次元ネットワーク状構造体の一部が露出しており、この3次元ネットワーク状構造体が互いに接触し、厚さ方向において、連続した伝熱経路及び導電経路を形成していることを特徴とする電子部品用セラミックス基板。 - 上記微細炭素繊維がカーボンナノチューブから成り、このカーボンナノチューブは、面積基準の円相当平均径が50〜100μmであることを特徴とする請求項1に記載の電子部品用セラミックス基板。
- 上記カーボンナノチューブは、その嵩密度が0.0001〜0.05g/cm3であることを特徴とする請求項2に記載の電子部品用セラミックス基板。
- 上記カーボンナノチューブは、その長手方向に対する軸直交断面の最大径が15〜800nmであることを特徴とする請求項2又は3に記載の電子部品用セラミックス基板。
- 上記カーボンナノチューブは、その長手方向に対する軸直交断面の形状が多角形をなすことを特徴とする請求項2〜4のいずれか1つの項に記載の電子部品用セラミックス基板。
- 上記カーボンナノチューブは、ラマン分光分析法で測定されるID/IGが0.2以下であることを特徴とする請求項2〜5のいずれか1つの項に記載の電子部品用セラミックス基板。
- 上記粒状炭素相が、上記微細炭素繊維に対し、体積比率で0.5〜10倍の割合で含まれていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1つの項に記載の電子部品用セラミックス基板。
- 上記金属相が、アルミニウム、銅、ニッケル、銀、金、モリブデン、タングステン、鉄、クロム、コバルト、チタン、マグネシウム、亜鉛及びタンタルから成る群より選ばれた少なくとも1種の金属、又はこれら金属の合金から構成されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1つの項に記載の電子部品用セラミックス基板。
- 上記配線層の厚さ方向に平行な断面において、上記金属相が島状に分布しており、上記断面と直交する方向では、上記島状金属相の一部が連続している構造を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1つの項に記載の電子部品用セラミックス基板。
- 請求項2〜9のいずれか1つの項に記載の電子部品用セラミックス基板の製造方法であって、
上記配線層を、微細炭素繊維であるカーボンナノチューブとピッチ系バインダーを、有機溶媒中に添加し、分散・混合する工程(1)と、混合溶液を乾燥する工程(2)と、乾燥後の混合粉末を圧粉し、圧粉体を製造する工程(3)と、圧粉体に硬化処理を行う工程(4)と、硬化処理後の圧粉体を焼成する工程(5)と、工程(5)で作製したプリフォームに溶融したマトリックス金属を含浸する工程(6)と、工程(6)で得られたマトリックス金属基複合材料を圧延する工程(7)、で処理して作製することを特徴とする電子部品用セラミックス基板の製造方法。
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