JP5321405B2 - 左右独立駆動車両における冷却装置 - Google Patents

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この発明は、左右の一対の車輪をそれぞれに対応して設けた電動機で駆動するように構成された車両に関し、特にそれらの電動機の温度上昇を抑制もしくは防止する冷却装置に関するものである。
車両の駆動力源として内燃機関以外に電動機が用いられるようになってきており、それに伴い車輪毎に電動機を用意し、それらの車輪を個別に駆動させる車両が開発されている。そのような電動機もしくは電動機と電気的に接続されているインバータもしくはコンバータなどの電力変換装置の温度が上昇することにより、出力抑制制御が作動し所望のトルクを出力できなくなるおそれがある。そのため、電動機や電力変換装置の搭載箇所にラジエータを通過した冷却風を送ることにより電動機もしくは電力変換装置を冷却する発明が特許文献1に記載されている。この特許文献1に記載された発明は、エンジンルーム内のダッシュパネルの前壁部の中央部が前方へ突形状とされており、ラジエータを通過した冷却風を左右輪が搭載されているホイールへと送ることにより、その冷却風によってホイールを冷却する構造が記載されている。
また、インホイールモータの冷却方法として、冷却オイルを用いて冷却する方法が知られている。特許文献2には左右輪それぞれに設けられたトラクションモータやオイル供給機構を備えたインホイールモータにおいて、そのトラクションモータの温度検出手段を設け、トラクションモータの効率が最大となる温度を目標温度としてオイル供給量を制御する発明が記載されている。さらに、他の冷却装置として、インホイールモータを駆動制御するインバータをフェンダーエプロンに搭載することによりインバータで生じた熱をフェンダーエプロンを介して車体に放熱するとともに、車両走行により車両内に取り込まれる走行風でインバータを冷却する装置が特許文献3に記載されている。
特開2005−112113号公報 特開2008−195233号公報 特開2007−161111号公報
上述した特許文献1に記載された構造は、ラジエータを通過した冷却風によりホイールを冷却するものである。しかしながら、走行時にはエンジンが高温となっているので、そのエンジンを冷却するラジエータの冷却水も高温となる場合がある。その場合には、ラジエータにより外気が加熱されるので、ホイールには昇温した空気が送られる。実験によれば、ホイールに外気が到達した時の空気温度は、外気と比較して約40℃高くなる(図6参照)。そのため、ホイールに設けられたブレーキのように数百℃となるものに対しては冷却効果があるが、動作効率の適正温度が低いインホイールモータに対しては放熱抑制として作用することがある。したがって、インホイールモータの冷却の点では改善の余地がある。
また、特許文献2に記載の制御装置は、オイルによってトラクションモータを冷却するように構成され、さらに特許文献3は、車体への放熱と外気による放熱とによりインバータを冷却しているが、モータと併せて搭載されているエンジンや伝動機構の熱影響を考慮しておらず、モータの冷却性能を向上させる点では未だ改善の余地がある。
この発明は上記の事情を背景としてなされたものであり、左右の車輪それぞれに設けられた電動機について、電動機の外部から電動機へ及ぼす熱の影響を遮断することにより、電動機の耐久性を向上させることのできる冷却装置を提供することを目的とするものである。
上記の目的を達成するために、請求項1の発明は、左右一対の左右輪を個別に駆動する電動機と、発熱源と、該発熱源を冷却するための空気の取り入れ部とを備えた左右独立駆動車両における冷却装置において、前記発熱源を冷却するために取り入れられ昇温した空気を前記電動機を避けて流すように構成された空気の誘導手段を備えたことを特徴とする左右独立駆動車両における冷却装置である。
また、請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記誘導手段は、前記発熱源と前記電動機との間に設けられた遮熱板と、前記発熱源を冷却するために取り入れられ昇温した空気を上方への排出する排出口とであることを特徴とする左右独立駆動車両における冷却装置である。
さらに、請求項3の発明は、請求項1または請求項2の発明において、前記電動機に向けて導入した空気の流路を前記電動機と前記発熱源との間を空気が流れるように分岐させる流路分岐手段を備えたことを特徴とする左右独立駆動車両における冷却装置である。
請求項1の発明によれば、発熱源により温度が上昇した空気は電動機を避けて流される。したがって、電動機周辺の空気の温度は発熱源の熱の影響を受けないので、電動機の冷却性能を確保でき、車両の走行安定性を良好な状態に維持することができる。
また、請求項2の発明によれば、発熱源の冷却のために取り入れられた空気が車輪の搭載されている方向とは逆の方向すなわち車両に対する上部方向へ排出するので、上記請求項1の発明と同様の効果を得ることができる。
さらに、請求項3の発明によれば、電動機と発熱源との間に空気が流れるので、前記請求項1および請求項2の効果に加え、さらに発熱源による温度の影響を抑制することができる。
この発明に係る冷却装置で対象とする車両の一例を示す車両の前部断面の概略図である。 この発明に係わる冷却装置の空気の流れを示す全体図である。 この発明に係る冷却装置で対象とする車両の他の例を示す車両断面の概略図である。 この発明に係る冷却装置で対象とする車両の更に他の例を示す車両前部の概略図である。 この発明に係る冷却装置で対象とする車両の更に他の例を示す車両の前部断面の概略図である。 従来の冷却構造(特許文献1)で行ったホイール内温度とラジエータからの風速との関係を調べた実験結果を示すグラフである。
つぎに、この発明を図に示す具体例に基づいて説明する。図1は、この発明で対象とすることのできる車両前部の一例を概念的に示しており、ここに示す車両は、左右前輪1FR,1FLにそれぞれモータMFR,MFLを内蔵しており、そのモータMFR,MFLにより駆動され、図示しない左右の後輪はいわゆるハイブリッド装置によって駆動されるように構成された例である。すなわち、図示しない操舵装置によって転舵される左右の前輪1FR,1FLのそれぞれに対応してモータMFR,MFLが設けられており、それらのモータMFR,MFLは、永久磁石式同期電動機などの発電機能を備えたモータである。そのそれぞれのモータMFR,MFLは図示しないインバータなどのコントローラを介して、図示しない蓄電装置に電気的に接続されている。したがって、車両の走行時には、蓄電装置から電力が供給されモータとして機能し、制動時では、モータが強制的に回転されることにより発電を行い、その電力を蓄電装置に充電するように構成されている。
前記左右の前輪1FR,1FLに設けられているモータMFR,MFLはいわゆるインホイールモータであり、ステータとロータとにより構成されたトラクションモータやそのトラクションモータを冷却するための冷却機構ならびに前記トラクションモータが出力したトルクを増大させる減速機構などを備えている。また左右の前輪1FR,1FLにはブレーキが備えられている。
つぎに後輪を駆動するためのハイブリッド装置について説明すると、この発明における発熱源に相当するエンジン1を備えており、そのエンジン1の出力軸は、ハイブリッドトランスミッション(HVT/M)2に連結されている。そのエンジン1は、要は燃料を燃焼して動力を得る内燃機関であって、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンあるいはLPGエンジンなどがその例である。また、そのハイブリッドトランスミッション2の一例としては、サンギアと、そのサンギアに対して同心円状に配置された内歯歯車であるリングギアと、これらのサンギアとリングギアとの間に配置されサンギアとリングギアとに噛み合っているピニオンギアがキャリアによって自転自在かつ公転自在に保持されているいわゆる遊星歯車機構である。そして、このキャリアにはモータ・ジェネレータが連結され、リングギアの出力軸には他のモータ・ジェネレータが連結されている。これらのモータ・ジェネレータは、それぞれにインバータなどのコントローラを介して、バッテリやキャパシタなどの蓄電装置を電気的に接続されている。
なお、遊星歯車機構の出力軸は、有段式もしくは無段式の変速機やプロペラシャフトなどの動力伝達機構と連結して、さらに終減速機(デファレンシャルギア)を介して、左右の後輪軸に連結されている。
このハイブリッド装置の作用を簡単に説明すると、エンジン1が出力した動力は動力分配装置によってモータ・ジェネレータと出力軸とに分配される。その場合、モータ・ジェネレータを発電機として機能させることによりサンギヤに対してその回転を減じる方向のトルク(すなわち負のトルク)を与え、かつその回転数を制御することによりエンジン1の回転数を適宜に制御することができる。また、エンジン1を停止した状態に制御することもできる。したがって、動力分配装置およびモータ・ジェネレータは、無段変速機あるいは電気的トルクコンバータとして機能することができる。一方、モータ・ジェネレータで発生した電力は、インバータなどのコントローラや蓄電装置を介して他のモータ・ジェネレータに供給され、他のモータ・ジェネレータがモータとして動作する。すなわち、モータ・ジェネレータ側に分配された動力が出力軸に伝達される。したがって、出力要求を満たしつつエンジン1を最適燃費点で運転することが可能になる。
上述したエンジン1や各モータ・ジェネレータおよび遊星歯車機構などで構成されるハイブリッドトランスミッション2は、エンジンルームに搭載されている。さらに、図1に示すようにラジエータ3がエンジンルームに搭載されており、そのラジエータ3はエンジン1が高温になることによるエンジン性能の低下を防ぐためにエンジン1を冷却するものである。そのラジエータ3は水管、フィン、フレームなどで構成されており、ラジエータ3の水管とエンジン1のウォータージャケットとを接続し、ラジエータ3の冷却水をエンジン1に供給することによる冷却方法と、外気をラジエータ3のフィンを通してエンジン1に送ることによる冷却方法とがある。それらの冷却方法によりエンジン1は最適温度を保つように構成されている。
この発明の装置は、上述したエンジン1から左右前輪に設けられたモータMFR,MFLへの熱の影響を防ぐものであり、以下に構成例の一例を図を参照しつつ説明する。図1は上述したとおり車両前部の概略図であり、エンジン1やハイブリッドトランスミッション2あるいはラジエータ3などはエンジンルーム内に搭載されている。また、エンジンルームとホイールとを遮熱するように遮熱板4が配置されている。そして、前方から外気をホイールに向けて直接供給できるように通風ダクト5が設けられている。さらに、エンジンルーム内に取り込まれた空気を外部へ排出するように通風口6(図2参照)がボンネットに形成されている。
このような構成とすることにより、エンジン1は、ラジエータを通過した外気により冷却され、そのエンジン1で昇温された空気はボンネット上の通風口6から車両外へ排出される。そして、他の空気供給箇所から通風ダクト5を介してホイールに空気を送り込むことにより、その空気はエンジン1の熱の影響を受けずにモータMFR,MFLを冷却することができる。また、エンジン1から各モータMFR,MFLへの熱輻射が遮熱板4によって遮熱される。すなわち、エンジンルームとモータとは直接的な熱の影響が遮断され、さらにエンジン1とモータとのそれぞれに外気を供給することからエンジン1で昇温した空気による間接的な熱の影響も防止することができる。したがって、ホイール近傍の温度を常温相当に保つことができ、インホイールモータの冷却効率を向上させることができる。なお、遮熱板4は要は熱源とモータとを遮断できれば良いので、この構成例で示した配置ではなく、例えばエンジンルーム内でエンジン1のみを囲ったものであっても良い。
また、この発明における発熱源はエンジン1などの内燃機関に限られるものではなく、電気自動車に用いられる燃料電池やバッテリーなどの蓄電装置でもよい。以下に、電気自動車にこの発明を適応する一例を図3を参照しつつ説明する。先ず、この発明の一例の説明において対象とする電気自動車の構成について簡単に説明すると、前後左右それぞれの車輪1FR,1FL,1RR,1RLにそれぞれモータMFR,MFL,MRR,MRLを設けてある。この各車輪1FR,1FL,1RR,1RLは上述した構成例の各前輪と同様にブレーキやモータなどを備えており、そのモータはステータとロータとにより構成されたトラクションモータやモータを冷却する冷却オイルなどを備えている。そして、各モータMFR,MFL,MRR,MRLはそれぞれに図示しないインバータなどのコントローラを介してバッテリやキャパシタなどの蓄電装置に電気的に接続されている。したがって、蓄電装置から電力を供給することでモータとして機能し、それとは反対にモータを強制的に回転させることで発電をし、その発電された電力を蓄電装置に充電する発電機として機能する。また、それぞれのモータは、マイクロコンピュータを主として構成された図示しない電子制御装置(ECU)の制御によりそれぞれの回転数などを出力する。さらにこの車両は化学反応などにより電力を発生させる燃料電池7(FCスタック)が備えられており、その燃料電池7の電力と蓄電装置に蓄えられた電力とを適宜選択して供給することにより、各モータMFR,MFL,MRR,MRLを駆動させるように構成されている。
このような電気自動車においても上述した内燃機関を動力源とした自動車と同様に、燃料電池7やバッテリ8などの動力源は電力の供給もしくは充電などにより温度が上昇する。その熱の影響を遮断する構成が図3に示すものであり、破線は遮熱板4である。図3に示す例では、燃料電池7およびバッテリ8が車両の前方部に搭載されており、それらを隔離するように周りに遮熱板4が配置されている。このように熱源である燃料電池7やバッテリ8を遮熱板4で隔離することにより、それらから発せられた熱の影響をホイールは受けることがなくインホイールモータの冷却効率を向上させることができる。なお、図3には図示していないが、燃料電池7やバッテリ8などの熱源を冷却する通風口および排出口をホイールに熱の影響を与えない箇所で設けてもよく、また上述した構成例と同様にホイールごとに向けて通風口を設けて、ホイールを外気により冷却することもできる。
さらに、上述した二つの構成例のように遮熱板4により熱の影響を防ぐもの以外に図4および図5に示すように空気により遮熱を可能とする構成例もあげられる。この構成例を説明すると、先ず、上述した二つの構成例と同様に熱源9が左右の車輪1FR,1FLの間もしくは左右いずれかの車輪の近傍に搭載されている。そして、空気の導入口は車両前方に備え、その空気の流路もしくは通風路を車輪に到達するまでの間で分岐させる。その分岐させられた一方の流路W1は、ホイールを冷却するためにそのままホイールへ通過させ、他方の流路W2は、熱源9とホイールとの間を通過させる。そして、熱源9とホイールとの間を通過した空気は、車両に対してホイールの内側かつ上方ならびに後方に向けて排出口を設け、空気の排出もしくは排気を行う。このような構成とすることにより、熱源9から発せられた熱は、ホイールへ達する間の空気の流れにより後方へ排出される。したがって、ホイールは熱源9の影響を受けることがないので、インホイールモータの冷却効率を向上させることができる。
この発明は上述した構成であり、内燃機関もしくは燃料電池などのいわゆる発熱源と電動機との間にを遮熱板や空気の流れを設けることにより電動機が熱の影響を受けないように熱源を隔離でき、電動機の周りの温度を上げず電動機の冷却効率を向上させるものである。
ここで、上述した各具体例とこの発明との関係を簡単に説明すると、前述した内燃機関および燃料電池が、請求項1の発明における発熱源に相当し、遮熱板およびボンネットに設けられた排出口が、請求項1および請求項2の発明における誘導手段に相当する。さらに、ホイールハウスを冷却する空気の流路および熱源と電動機との間を流れる空気の流路の分岐が請求項3の発明における流路分岐手段に相当する。
1…エンジン、 2…ハイブリッドトランスミッション(HVT/M)、 3…ラジエータ、 4…遮熱板、 5…通風ダクト、 6…通風口、 7…燃料電池(FCスタック)、 8…バッテリ、 9…熱源、 1FL,1FR,1RL,1RR…車輪、 W1,W2…流路、 MFR,MFL,MRR,MRL…モータ。

Claims (3)

  1. 左右一対の左右輪を個別に駆動する電動機と、
    発熱源と、
    該発熱源を冷却するための空気の取り入れ部と
    を備えた左右独立駆動車両における冷却装置において、
    前記発熱源を冷却するために取り入れられ昇温した空気を前記電動機を避けて流すように構成された空気の誘導手段を備えたことを特徴とする左右独立駆動車両における冷却装置。
  2. 前記誘導手段が前記発熱源と前記電動機との間に設けられた遮熱板と、
    前記発熱源を冷却するために取り入れられ昇温した空気を上方への排出する排出口と
    であることを特徴とする、請求項1に記載の左右独立駆動車両における冷却装置。
  3. 前記電動機に向けて導入した空気の流路を前記電動機へ向けて通過する方向と前記電動機と前記発熱源との間を空気が通過する方向とに分岐させる流路分岐手段を備えたことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の左右独立駆動車両における冷却装置。
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