JP5320664B2 - 凸版印刷用凸版及び印刷物 - Google Patents

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Description

本発明は、凸版印刷法に用いられる凸版、また、凸版印刷法により製造された印刷物に関するものである。この印刷物としては有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子)が例示でき、この有機EL素子の有機発光層等を凸版印刷法により形成する。また、前記印刷物としては、有機EL素子の他にカラーフィルタ、回路基材、薄膜トランジスタ、マイクロレンズ、バイオチップ等を印刷物として例示することができる。
例えば、前記有機EL素子は、二つの対向する電極の間に有機発光材料からなる有機発光層を形成し、有機発光層に電流を流すことで発光させるものであるが、効率良く発光させるには発光層の膜厚が重要であり、100nm程度の薄膜にする必要がある。さらに、これをディスプレイ化するには高精細にパターニングする必要がある。
有機発光材料には、低分子材料と高分子材料があり、一般に低分子材料は抵抗加熱蒸着法等により薄膜形成し、このときに微細パターンのマスクを用いてパターニングするが、この方法では基材が大型化すればするほどパターニング精度が出にくいという問題がある。
そこで、最近では有機発光材料に高分子材料を用い、有機発光材料を溶剤に溶かして塗工液にし、これをウェットコーティング法で薄膜形成する方法が試みられるようになってきている。薄膜形成するためのウェットコーティング法としては、スピンコート法、バーコート法、突出コート法、ディップコート法等があるが、高精細にパターニングしたりRGB3色に塗り分けしたりするためには、これらのウェットコーティング法では難しく、塗り分けパターニングを得意とする印刷法による薄膜形成が最も有効であると考えられる。
さらに各種印刷法の中でも、有機EL素子やディスプレイでは、基材としてガラス基材を用いることが多いため、グラビア印刷法等のように金属製の印刷版等の硬い版を用いる方法は不向きであり、弾性を有するゴム版を用いたオフセット印刷法や、ゴムやその他の樹脂を主成分とした感光性樹脂版を用いる凸版印刷法が好適である。実際にこれらの印刷法の試みとして、オフセット印刷による方法(特許文献1)、凸版印刷による方法(特許文献2)などが提唱されている。
特開2001−93668号公報 特開2001−155858号公報
有機EL素子の高精細化に伴い、凸版印刷法によってパターン形成する際に用いられる印刷用凸版も、より微細なパターンを要求されるようになっている。有機発光材料は、水、アルコール系の溶剤に対する溶解性が悪く、塗工液化するには、有機溶剤を用いて溶解若しくは分散させる必要がある。凸版印刷法に用いる印刷用凸版の主成分はゴムや樹脂であり、有機溶剤に対して膨潤や変形が起こりやすく、印刷時に位置ずれしてしまうため、位置精度の良いパターンが得られないという問題があった。
さらに、印刷用凸版のパターンの微細化に伴い、印刷用凸版の凸部と凸部の間隔が狭くなることにより、凸部と凸部の間の凹部の深さであるレリーフ深度が十分に得ることができなくなってしまう。そして、十分なレリーフ深度を持たない凸版を用いてパターン形成をおこなった場合には、インキを凸版に供給した際にレリーフ内にインキが流れ込むことにより、パターンが広幅になってしまい、微細なパターンが得られないという問題があった。
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明としては、塗工液を凸版の凸部に供給し、凸部にある塗工液を印刷し、印刷物表面に塗工液からなるパターンを形成する際に用いる印刷用凸版において、該印刷用凸版が凸部を有する金属製の支持体と該支持体の凸部の上に樹脂層を配置したことを特徴とする印刷用凸版であり、当該印刷用凸版が、支持体に表面にエッチングレジストとなる感光性樹脂材を積層する工程と、前記感光性樹脂材を露光・現像し、印刷用凸版となった際に凸部とする部分を被覆するレジストパターンを形成する工程と、前記支持体をエッチングし、レジストパターンで被覆されていない支持体を腐食させ、凸部を有する支持体を形成する工程と、前記支持体について、レジストパターンで被覆されていない支持体の表面に少なくともフッ素原子を含有する層を形成する工程と、前記レジストパターンを剥離する工程と、前記支持体の凸部表面に、樹脂層を形成する工程と、を経て製造されたことを特徴とする印刷用凸版とした。
また、請求項2に係る発明としては、前記樹脂層の厚みが1μm以上1mm以下であることを特徴とする請求項1記載の印刷用凸版とした。
また、請求項3に係る発明としては、前記印刷用凸版のレリーフ深度が10μm以上1.5mm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷用凸版とした。
また、請求項4に係る発明としては、前記樹脂層が親水性ポリマーとしてポリアミドを用いたポリアミド系の水現像タイプの感光性樹脂であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の印刷用凸版とした。
また、請求項5に係る発明としては、前記凸版がシームレス版であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の印刷用凸版とした。
また、請求項6に係る発明としては、前記印刷用凸版がスリーブ構造からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の印刷用凸版とした。
また、請求項に係る発明としては、少なくとも第一電極と第二電極と有機発光層を含む有機発光媒体層からなり、両電極から有機発光層に電流を流すことにより有機発光層を発光させる有機EL素子において、有機発光媒体層形成材料を溶剤に溶解または分散させてなる塗工液を請求項1乃至7のいずれかに記載の印刷用凸版を用いて凸版印刷法により被印刷基材上に印刷し、有機発光媒体層を形成することを特徴とする有機EL素子の製造方法とした。
本発明により、塗工液の溶剤に膨潤・変形することなく、また、レリーフ深度を十分に有し、凹部に塗工液が流れ込むことの無い印刷用凸版を得ることができた。また、さびに強く、かつ凹部への塗工液の流れ込みによる印刷パターンの乱れをより効果的に防ぐことができた。したがって、位置精度が良く、微細なパターンを有する高精細な印刷物を得ることができた。
特に、本発明の印刷用凸版を用いて有機EL素子における有機発光媒体層を形成した場合、微細なパターンを有する有機発光素子を得ることができた。
以下、この発明の実施の形態を説明する。なお、本発明にかかる印刷物は表示ディスプレイの表示画面を構成する光学部品として好適に利用できる。光学部品としては、例えば、有機EL素子を例示することができ、また、カラー液晶ディスプレイを構成するカラーフィルタを例示することができる。また、このほか、本発明にかかる印刷物として、回路基材、薄膜トランジスタ、マイクロレンズ、バイオチップ等を例示することができる。
図1は、本実施形態における印刷用凸版の断面図である。図1において1は凸部を有する支持体、2は樹脂層を示す。
凸部を有する支持体(以下、支持体)1としては、金属を用いることができる。金属を用いることにより、支持体全体が塗工液中の溶剤に対し膨潤することが無いため、寸法安定性の良い版として好適に用いることができる。使用される金属としては、Fe、Ni、Cu、Zn等をあげることができる。また、ステンレスといったこれら金属の合金であっても良い。
また、凸部を有する支持体における凸部の大きさは樹脂層2の大きさと比較して、大きくても良い。樹脂層のサイズより大きくすることにより、支持体の凸部の加工が容易となる。
樹脂層2は使用するインキに対する耐溶剤性があれば良く、ニトリルゴム、シリコーンゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリロニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴムなどのゴムの他に、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリビニルアルコールなどの合成樹脂やそれらの共重合体、セルロースなどの天然高分子などや、フッ素系エラストマーやポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ六フッ化ビニリデンやそれらの共重合体といったフッ素系樹脂から一種類以上を選択することができるが、加工の容易さといった点から、感光性樹脂を用いることが望ましい。
塗工液として有機溶剤を用いている場合には、水現像タイプの感光性樹脂が有機溶剤への耐性も高く好適である。水現像タイプの感光性樹脂としては公知のもので構わないが、例えば、親水性のポリマーと不飽和結合を含むモノマーと光重合開始材を構成要素とするタイプが挙げられる。このタイプでは親水性ポリマーとしてポリアミド、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体を用いることができる。また、不飽和結合を含むモノマーとしては例えばビニル結合を有するメタクリレート類を用いることができ、光重合開始剤としては例えば芳香族カルボニル化合物を用いることができる。中でも、印刷適性の面からポリアミド系の水現像タイプの感光性樹脂が適している。
また、樹脂層の厚みは1μm以上1mm以下であることが好ましい。厚みが1μm未満の場合、被印刷基材がガラスや金属等の硬質基材のときに、被印刷基材や被印刷基材上にあるパターンが傷つくことがある。また、厚みが1mmを超える場合、支持体と樹脂層の界面近傍または樹脂層において力学的な変形や破壊が発生し、また、溶剤による樹脂層の膨潤の度合いが大きくなってしまう。
また、凸部を有する支持体1aと樹脂層をあわせた形での凸部と凸部の間の凹部の深さであるレリーフ深度は10μm以上1.5mm以下であることが好ましい。レリーフ深度が10μm未満の場合、パターンの形状によっては広幅化してしまう。また、レリーフ深度が1.5mmを超える場合、支持体、特に支持体の凸部において変形や破壊が発生する。
本発明の印刷用凸版の形成方法としては、支持体上に凸部を形成し、支持体の凸部上に樹脂層を形成する方法と、支持体上に樹脂層を設けたあと、樹脂層と支持体を同時に加工する方法を用いることができる。支持体の凸部の形成方法としては、金属エッチング法により形成可能である。また、レーザーアブレーション法、または、切削加工により形成することも可能である。樹脂層については、感光性樹脂である場合は露光・現像をおこなうことにより形成可能である。また、スクリーン印刷法やオフセット印刷法を用いることも可能である。また、レーザーアブレーション法、切削加工により形成することも可能である。樹脂層と支持体を同時に加工する場合には、レーザーアブレーション法、切削加工等により形成することができる。
図2に本発明の別の実施形態について示す。このように樹脂層は単層構成ではなく、多層構成とすることも可能である。図2の場合、樹脂層は支持体側から、柔軟性を有する樹脂層4、耐溶剤性を有する樹脂層3とすることが好ましい。それに使用可能な材料としては樹脂層形成材料と同様のものが挙げられる。また、柔軟性を持った樹脂層4において気泡を形成することで、スポンジ状に加工したものを用いても良い。このスポンジについては独立気泡、連続気泡のどちらを用いても良い。柔軟性を有する樹脂層を設けることにより、印刷時に印圧を高くした場合においても、被印刷基材がガラスや金属等の硬質基材のときに被印刷基材や被印刷基材上にあるパターンが傷つくことを防止できる。
また、図3に別の実施形態について示す。図3のように柔軟性を持ったクッション層5を支持体の凸部とは逆の面に設けることも可能である。クッション層5としては弾性を有するゴムや発泡材料等、公知のものが使用できる。クッション層を設けることにより、印刷時に印圧を高くした場合においても、柔軟性を有する樹脂層を設けた場合と同様に、被印刷基材がガラスや金属等の硬質基材のときに被印刷基材や被印刷基材上にあるパターンが傷つくことを防止できる。
図6に支持体の表面へ処理を施した印刷用凸版の実施形態の一例を示す。凸部を有する支持体1の凸部の上には樹脂層2が配置され、樹脂層2が配置されていない支持体の表面には、少なくともフッ素原子を含有する層7を備えている。金属製の支持体表面に少なくともフッ素原子を含有する層を形成することにより、優れた耐候性、耐汚染性、撥水性を付与できる。
なお、フッ素原子を含有する層7の形成方法としては、フッ素原子を含むポリマーやシランカップリング剤などを塗工液化し、バーコート法、突出コート、ディップコート法、ダイコート法、スリットコート法、スプレーコート法といった公知のウェットコーティング法により形成することができる他に、電着塗装法を用いることができる。特に電着塗装法によれば、金属製の支持体表面に均一な層を形成することができるため好ましい。電着塗装法については、例えば特許第3001316号明細書に記載されている方法を用いることができる。
支持体表面に形成されるフッ素原子を含有する層は、少なくともフッ素系エラストマーやポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ六フッ化ビニリデンやそれらの共重合体といったフッ素系樹脂により形成されていれば良い。
特に電着塗装法により表面処理を行う場合、用いることのできる材料には、少なくともフッ素原子を含有していれば良く、フルオロエチレン−ビニルエーテル共重合体、フルオロエチレン−ビニルエーテル引くビニルエステル共重合体、フルオロエチレン−ビニルエーテル−アリルエーテル−ビニルエステル共重合体等が挙げられる。
フルオロエチレン−ビニルエーテル系共重合体としては、旭ガラス株式会社より、ルミフロン926として市販されているもの等を使用することができる。またフルオロエチレン−ビニルエーテル−アリルエーテル−ビニルエステル系共重合体としては、セントラルガラス株式会社よりセフラルコーロXA−5000−2、セフラルコートXA−500−3等として市販されているものを使用することができる。また、アクリル樹脂の側鎖にフッ素樹脂が結合したものが東レ株式会社よりコータックスFX−300等として市販されている。
図7にフッ素原子を含有する層を凸部を有する支持体表面に形成した印刷用凸版の作製手順の一例について示す。第一の工程として、支持体となる金属板31表面にエッチングレジストとなる感光性樹脂材32を積層する(図7(a))。感光性樹脂材としては、一般的なポジ型、ネガ型を問わず液状レジストをスピンコート等の方法により塗工する方法や、フィルム状のものをラミネートして用いることができるが、方法が容易で且つ取り扱いもし易いことから、一般的にドライフィルムレジストと呼ばれる感光性樹脂を支持体となる金属板表面にラミネートすることが望ましい。
用いることができるドライフィルムレジストとしては、旭化成エレクトロニクス社製のサンフォートシリーズ、デュポンMRCドライフィルム社製のリストンシリーズ、日立化成工業社製のフォテックシリーズなどが挙げられる。
第二の工程としてこの感光性樹脂材に対し、紫外線等の活性光線を照射し露光する。次いで、アルカリ性水溶液等を用いて現像を行い、印刷用凸版となった際に凸部とする部分を被覆するレジストパターン33を形成する(図7(b))。
第三の工程としてエッチング工程により、レジストパターン33で被覆されていない金属板を腐食させ、凸部を有する支持体34を形成する(図7(c))。エッチング液には例えば塩化第二鉄水溶液を用いる。
第四の工程として、前述の通り電着や塗布などの方法によりレジストパターンで被覆されていない金属支持体の表面処理を行い、少なくともフッ素原子を含有する層35を形成する(図7(d))。
第五の工程として、レジストパターンを剥離する(図7(e))。レジストパターンで被覆されていた凸部表面36のみが、表面処理されずに金属面が露出している。
第六の工程として金属製の支持体に形成された凸部表面36に、印刷に使用するインキに対する耐性や適性を有する樹脂材の塗布を行い、樹脂層37を形成する。具体的には感光性を有する樹脂材を用い、支持体の全面に塗布した後、凸部表面に対応する部分のみを硬化するよう露光し、現像を行って凸部表面のみに樹脂層を形成する。
こうして目的とする印刷用凸版38を製造することができる(図7(f))。
この方法によれば、効率よく凸部表面に樹脂層を、樹脂層のない支持体表面には少なくともフッ素原子を含有する層を形成することができる。特に、支持体の表面処理後にレジストパターンを剥離し、再度樹脂層を積層するため、樹脂層が変質することなく、良好にインキとの親和性を確保することができる。
ここで、支持体のエッチングのために用いるレジスト及び凸版となる支持体そのものが、印刷時に使用するインキに対する耐性を持つ場合、第三の工程であるエッチングの完了の後、レジストを剥離せずにこれを本発明の他の形態の印刷用凸版として用いることができる。
長時間の連続印刷を行う場合、レリーフ内へのインキ流入や外環境の変化による金属部(支持体)の錆びなどが懸念されるため、金属支持体に対し耐候性を与える表面処理を行う、すなわち少なくともフッ素原子を含有する層を形成することが望ましい。
また、本発明における凸版は、シームレス版であることが望ましい。シームレス版は凸部が表面円周上に連続形成された印刷用シリンダー版のことであり、つなぎ目を持たない。このことより版の連続回転が可能になり、連続印刷をおこなうことができる。したがってシリンダー版の径を大きくすること無く大面積の繰り返しパターンを有する印刷物を得ることができる。表示ディスプレイでは大画面化が進んでいるが、シームレス版を用いることにより装置を大型化することなく、大面積の有機EL素子やカラーフィルタを得ることが可能となる。
また、本発明における凸版は、スリーブ構造であることが望ましい。スリーブ構造とは、円筒状の構造を指す。円筒状の構造とすることで、円筒の内径と同じ外径を持つシリンダーに差し込むことにより、印刷用凸版を固定することが出来る。本発明の印刷用凸版は、版の形成プロセスと印刷のプロセスとを異なる装置を用いて行わなくてはならないが、スリーブ構造とすることで、容易に着脱可能となる。
次に本発明の印刷用凸版を用いた印刷物の製造方法について示す。
図4に該凸版を用いた印刷物製造装置の概略図を示す。例えば図4のように、インキ補充装置11から凸版へのインキング装置であるアニロックスロール12へ塗工液13の補充を行い、アニロックスロール12に補充された塗工液13のうち余剰なものはドクター装置14により除去することができる。インキ補充装置には、滴下型の補充装置の他に、ファウンテンロールやスリットコータ、ダイコータ、キャップコータなどのコータやそれらを組み合わせたものなどを用いることもできる。ドクター装置14にはドクターロールの他にドクターブレードを用いることもできる。
ドクター装置14により余剰な塗工液が除去された後、本件における印刷用凸版15へのインキングをおこなう。印刷用凸版15へインキングされたインキは被印刷基材16へ印刷される。本発明において、被印刷基材の材質は問わない。紙、プラスチックフィルム、ガラス、金属等を挙げることができる。被印刷基材16へ印刷された塗工液13は必要に応じて乾燥することにより印刷物を形成する。
次に本発明の印刷用凸版を用いた有機EL素子の製造工程について示す。
図5に有機EL素子一発光単位の断面図を示した。この有機EL素子の一発光単位は、基材21と第一電極22と第二電極25の間に有機発光媒体層であるホール注入層23と有機発光層24を配置したものである。なお、図5に示したホール注入層やホール輸送層、電子注入層、電子輸送層等は適宜選択し、設けることができる。
この有機EL素子の一単位において、基材21としては、ガラス基材やプラスチック製のフィルムまたはシートを用いることができる。プラスチック製のフィルムを用いれば、巻き取りにより有機発光素子の製造が可能となり、安価に素子を提供できる。そのプラスチックとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、シクロオレフィンポリマー、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリメタクリル酸メチル、ポリカーボネート等を用いることができる。また、第一電極22を成膜しない側にセラミック蒸着フィルムやポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体鹸化物等の他のガスバリア性フィルムを積層してもよい。
次に、第一電極を形成する。第一電極22、第二電極25は陽極、陰極としての機能をもち、光の取出し方向等により適宜選択される。陽極材料としてインジウムと錫の複合酸化物(以下ITOという)が挙げられる。また、アルミニウム、金、銀等の金属が半透明状に蒸着されたものや、ポリアニリン等の有機化合物などが挙げられる。陰極材料としてリチウム、マグネシウム、カルシウム、イッテルビウム、アルミニウムなどの金属単体や酸化物、これらと金、銀などの安定な金属との合金などが挙げられる。また、インジウム、亜鉛、錫などの導電性酸化物を用いることもできる。第一電極、第二電極は通常乾式成膜法、例えば真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、イオンビーム蒸着法等により形成される。
正孔注入層23をなす材料としては、ポリアニリン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリビニルカルバゾール誘導体、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合物等の導電性高分子材料を用いても良い。正孔注入層は水、アルコール類といった溶媒に溶解または分散され、スピンコート法、ダイコート法、スプレー法といった塗工法、凸版印刷法、インクジェット印刷法、スクリーン印刷法、オフセット印刷法といった印刷法により形成される。本発明の印刷用凸版を用い、凸版を形成することも可能である。
有機発光層24は有機発光体を含有する層であり、電圧の印加により発光する層である。有機発光材料としては、例えば、クマリン系、ペリレン系、ピラン系、アンスロン系、ポルフィリン系、キナクリドン系、N,N’−ジアルキル置換キナクリドン系、ナフタルイミド系、N,N’−ジアリール置換ピロロピロール系、イリジウム錯体系等の有機溶剤に可溶な有機発光材料や該有機発光材料をポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾール等の高分子中に分散させたものや、ポリアリーレン系、ポリアリーレンビニレン系やポリフルオレン系などの高分子有機発光材料が挙げられる。
本発明における図4を用いて製造するには、被印刷基材16として基材21上に第一電極22、ホール注入層23を積層した被転写基材を用い、塗工液として有機発光材料を含む塗工液13を用いる。
有機発光材料を含む塗工液は上述のように凸版の凸部へ供給され、上述の被転写基材へ印刷される。発光材料を溶解または分散させるような、塗工液に用いられる溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、テトラクロロエチレン、水などの単独またはこれらの混合溶媒などが挙げられる。特に芳香族系溶剤およびハロゲン系溶剤は有機発光材料を溶かすのに優れている。また、有機発光材料を含む塗工液には、必要に応じて、界面活性剤、酸化防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤、乾燥剤などが添加されても良い。有機発光層を形成後、第二電極を上述の方法で形成する。
(参考例1)
以下、本発明の実施形態について印刷物として有機EL素子を製造した例を詳細に説明する。
なお、輝度バラつきの評価方法については日本電子情報技術産業協会規格(JEITA)の「有機ELディスプレイモジュール測定方法(2005年4月制定)」に従った。
<有機発光層形成用塗工液の調製>
ポリ(パラフェニレンビニレン)誘導体からなる発光材料ををキシレンに塗工液濃度が1.0重量%となるように溶解させ、発光層形成用塗工液を調製した。
<被印刷基材の作製>
150mm角、厚さ0.4mmのガラス基材上に表面抵抗率15ΩのITOを成膜した基材(ジオマテック(株)製)に、スピンコーターを用いて正孔輸送層としてポリ(3,4)エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)を100nm膜厚で成膜した。さらにこの成膜されたPEDOT/PSS薄膜を減圧下100℃で1時間乾燥することで、被印刷基材を作製した。
<発光層形成用塗工液の印刷>
鏡面加工した厚さ0.3mmのスチール板を、エッチング法により、凸部幅が100μm、凹部幅が400μm、レリーフ深度が30μmとなるように加工した。このスチール板の全面にポリアミド系の感光性樹脂を塗布し、凸部における樹脂層の厚みが10μmとなるように板状の版材を作製した。板状の版材と、石英板にクロムを蒸着することで作製したフォトマスクとを重ね、CCDカメラを用い位置合わせを行ったのち、紫外線による露光を行った。露光を行った後、現像液を用い現像を行ったところ、レリーフ深度が40μmの深さの凸版を作製することができた。
この凸版と上記の発光層形成用塗工液を用いて、凸版印刷機により被印刷基材に対し印刷を行った。印刷したパターンは位置精度が±2μm以内だった。発光層の印刷を行った後、130℃で1時間乾燥を行った。乾燥の後、印刷により形成した発光層上にカルシウムを10nm成膜し、さらにその上に銀を300nm真空蒸着して有機EL素子を作製した。
この有機EL素子の5Vにおける発光特性を見たところ、発光面の平均輝度μ=108cd/mに対する輝度バラつき3σ=±11cd/mの発光が得られた。
(参考例2)
鏡面加工した厚さ0.3mmのスチール板の表面に、厚さ10μmのウレタン樹脂層、及び、ポリアミド樹脂層を10μm形成し、レーザーアブレーション法を用い、樹脂層側からレーザー照射を行い、凸部幅が100μm、凹部幅が400μm、レリーフ深度が40μmになるように加工し、自社製印刷機のシリンダーに両面テープを用いて固定した。これと上記の発光層形成用塗工液を用いて、被転写基材に対し印刷を行った。印刷したパターンは位置精度が±2μm以内だった。発光層の印刷を行った後、130℃で1時間乾燥を行った。乾燥の後、印刷により形成した発光層上にカルシウムを10nm成膜し、さらにその上に銀を300nm真空蒸着して有機EL素子を作製した。
この有機EL素子の5Vにおける発光特性を見たところ、発光面の平均輝度μ=103cd/mに対する輝度バラつき3σ=±18cd/mの発光が得られた。
(参考例3)
鏡面加工した厚さ0.3mmのスチール板の表面にポリアミド樹脂層を10μm形成し、レーザーアブレーション法を用い、樹脂層側からレーザー照射を行い、凸部幅が100μm、凹部幅が400μm、レリーフ深度が40μmになるように加工し、自社製印刷機のシリンダーにスポンジ状両面テープを用いて固定した。これと上記の発光層形成用塗工液を用いて、被転写基材に対し印刷を行った。印刷したパターンは位置精度が±2μm以内だった。
発光層の印刷を行った後、130℃で1時間乾燥を行った。乾燥の後、印刷により形成した発光層上にカルシウムを10nm成膜し、さらにその上に銀を300nm真空蒸着して有機EL素子を作製した。
この有機EL素子の5Vにおける発光特性を見たところ、発光面の平均輝度μ=102cd/mに対する輝度バラつき3σ=±17cd/mの発光が得られた。
(参考例4)
内径が15cmの鏡面加工した鉄製の円筒の表面に耐溶剤性の樹脂層を10μm形成し、レーザーアブレーション法により、凸部幅が100μm、凹部幅が400μm、レリーフ深度が40μmの継ぎ目のない印刷用シームレス凸版を形成した。この凸版と上記の発光層形成用塗工液を用いて、凸版印刷機により被印刷基材に対し印刷を行った。なお、円筒状の凸版は円筒の内径と同じ外径を持つシリンダーに固定した。印刷したパターンは位置精度が±2μm以内だった。
発光層の印刷を行った後、130℃で1時間乾燥を行った。乾燥の後、印刷により形成した発光層上にカルシウムを10nm成膜し、さらにその上に銀を300nm真空蒸着して有機EL素子を作製した。
この有機EL素子の5Vにおける発光特性を見たところ、発光面の平均輝度μ=111cd/mに対する輝度バラつき3σ=±17cd/mの発光が得られた。
鏡面加工した厚さ0.3mmのスチール板の一方の面に日立化成製ドライフィルムレジストフォテックRY−3315EEをラミネートし、ライン幅100μm、スペース幅400μmのライン状パターンを露光、現像工程により形成した。露光機にはオーク製作所製HMW−532Dを用いて250mJ/cmの照射を行い、炭酸ナトリウム水溶液をスプレーして現像を行った。
次いで、塩化第二鉄水溶液を用いてディッピング法により5分間エッチングを行い、凸部幅が100μm、凹部幅が400μm、レリーフ深度が30μmとなる凸部を有する支持体を得た。このとき、まだエッチングレジストは凸部表面に付着している。次いでフッ素系電着塗料を用い電着塗装を行い、レジストで被覆されていない支持体表面を塗装した。
水酸化ナトリウム水溶液を吹き付けてレジストパターンの剥離を行った後、この表面処理を行った支持体の凸部形成面の全面にポリアミド系のネガ型感光性樹脂を塗布し、厚みが10μmとなるように樹脂層を形成した。樹脂層を形成した板状の凸版と、石英板にクロムを蒸着することで作製したフォトマスクとを重ね、CCDカメラを用い位置合わせを行ったのち、紫外線による露光を行った。フォトマスクは凸版表面に対応する部分が露光・硬化するように設計されている。露光を行った後、現像液を用い現像を行ったところ、レリーフ深度が40μmの深さで、凸部表面に厚み10μmの樹脂層を備える凸版を作製することができた。支持体の樹脂層が形成されていない部分にはフッ素原子を含有する層が形成されている。この凸版と上記の発光層形成用塗工液を用いて、凸版印刷機により被印刷基材に対し印刷を行った。なお、凸版はシリンダーに固定し円筒状にして使用した。印刷したパターンは位置精度が±2μm以内だった。
発光層の印刷を行った後、130℃で1時間乾燥を行った。乾燥の後、印刷により形成した発光層上にカルシウムを10nm成膜し、さらにその上に銀を300nm真空蒸着して有機EL素子を作製した。
この有機EL素子の5Vにおける発光特性を見たところ、発光面の平均輝度μ=125cd/mに対する輝度バラつき3σ=±5cd/mの発光が得られた。
(比較例1)
厚さ0.1mmのPETフィルムにポリアミド系の感光性樹脂を塗布し、樹脂層の厚みが50μmとなるように板状の版材を作製した。板状の版材と、石英板にクロムを蒸着することで作製したフォトマスクとを重ね、CCDカメラを用い位置合わせを行ったのち、紫外線による露光を行った。露光を行った後、現像液を用い現像を行ったところ、レリーフ深度が30μmの樹脂製の凸版を作製することができた。
この凸版と上記の発光層形成用塗工液を用いて、凸版印刷機により被印刷基材に対し印刷を行った。印刷したパターンは位置精度が±40μm以内となってしまい、十分な印刷精度を得ることができなかった。
(比較例2)
鏡面加工した厚さ0.3mmのスチール板を、エッチング法により、凸部幅が100μm、凹部幅が400μm、レリーフ深度が30μmとなるように加工した。このスチール板の全面にポリアミド系の感光性樹脂を塗布し、凸部における樹脂層の厚みが0.5μmとなるように板状の版材を作製した。板状の版材と、石英板にクロムを蒸着することで作製したフォトマスクとを重ね、CCDカメラを用い位置合わせを行ったのち、紫外線による露光を行った。露光を行った後、現像液を用い現像を行ったところ、レリーフ深度が30.5μmの深さの凸版を作製することができた。
この凸版と上記の発光層形成用塗工液を用いて、凸版印刷機により被印刷基材に対し印刷を行った。印刷したパターンは位置精度が±2μm以内だった。発光層の印刷を行った後、130℃で1時間乾燥を行った。乾燥の後、印刷により形成した発光層上にカルシウムを10nm成膜し、さらにその上に銀を300nm真空蒸着して有機EL素子を作製した。この有機EL素子の発光特性を見たところ、パターン箇所内全面で均一な発光が得られた。しかし、ガラス基材に一部ヒビが入っている様子が確認された。
本発明における印刷用凸版の断面図 本発明における印刷用凸版の断面図 本発明における印刷用凸版の断面図 本発明の凸版を用いた印刷物製造装置の概略図 有機EL素子一発光の断面図 本発明における印刷用凸版の断面図 本発明における印刷用凸版の形成方法を示す工程図
1 凸部を有する支持体
2 樹脂層
3 耐溶剤性を有する樹脂層
4 柔軟性を有する樹脂層
5 クッション層
7 フッ素原子を含有する層
11 インキ補充装置
12 アニロックスロール
13 塗工液
14 ドクター装置
15 印刷用凸版
16 被印刷基材
17 シリンダー
21 基材
22 第一電極
23 ホール注入層
24 有機発光層
25 第二電極
31 金属板
32 感光性樹脂材
33 レジストパターン
34 凸部を有する支持体
35 フッ素原子を含有する層
36 凸部表面
37 樹脂層

Claims (7)

  1. 塗工液を凸版の凸部に供給し、凸部にある塗工液を印刷し、印刷物表面に塗工液からなるパターンを形成する際に用いる印刷用凸版において、
    該印刷用凸版が凸部を有する金属製の支持体と該支持体の凸部の上に樹脂層を配置したことを特徴とする印刷用凸版であり、当該印刷用凸版が、
    支持体に表面にエッチングレジストとなる感光性樹脂材を積層する工程と、
    前記感光性樹脂材を露光・現像し、印刷用凸版となった際に凸部とする部分を被覆するレジストパターンを形成する工程と、
    前記支持体をエッチングし、レジストパターンで被覆されていない支持体を腐食させ、凸部を有する支持体を形成する工程と、
    前記支持体について、レジストパターンで被覆されていない支持体の表面に少なくともフッ素原子を含有する層を形成する工程と、
    前記レジストパターンを剥離する工程と、
    前記支持体の凸部表面に、樹脂層を形成する工程と、
    を経て製造されたことを特徴とする印刷用凸版。
  2. 前記樹脂層の厚みが1μm以上1mm以下であることを特徴とする請求項1記載の印刷用凸版。
  3. 前記印刷用凸版のレリーフ深度が10μm以上1.5mm以下であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の印刷用凸版。
  4. 前記樹脂層が親水性ポリマーとしてポリアミドを用いたポリアミド系の水現像タイプの感光性樹脂であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の印刷用凸版。
  5. 前記凸版がシームレス版であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の印刷用凸版。
  6. 前記印刷用凸版がスリーブ構造からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の印刷用凸版。
  7. 少なくとも第一電極と第二電極と有機発光層を含む有機発光媒体層からなり、両電極から有機発光層に電流を流すことにより有機発光層を発光させる有機EL素子において、
    有機発光媒体層形成材料を溶剤に溶解または分散させてなる塗工液を請求項1乃至4のいずれかに記載の印刷用凸版を用いて凸版印刷法により被印刷基材上に印刷し、有機発光媒体層を形成することを特徴とする有機EL素子の製造方法。
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