JP2008091123A - 凸版、印刷機、有機電子デバイスの製造方法、及び凸版の製造方法 - Google Patents

凸版、印刷機、有機電子デバイスの製造方法、及び凸版の製造方法 Download PDF

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一伸 入江
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真吾 金田
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祐一 伊藤
Takao Taguchi
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Abstract

【課題】有機電子デバイスの有機パターン層を凸版印刷により高い精度で形成可能とする。
【解決手段】本発明の方法は、有機電子デバイスが含む有機パターン層を凸版印刷によって形成するために使用する凸版13を製造する方法であって、導電面を有する型基材の導電面上に有機パターン層に対応した形状を有する正規パターン層を形成し、導電面上であって正規パターン層の開口に対応した位置に正規パターン層と比較してより薄く且つ有機パターン層の開口に対応した形状を有する金属パターン層を鍍金法により形成し、型基材から正規パターン層を除去することにより、型基材と金属パターン層とを含んだ型を得る工程と、型とその金属パターン層側の主面を被覆した樹脂層135とを含んだ積層体を形成し、樹脂層から型を取り除くことにより、樹脂層を具備すると共に樹脂層の表面に有機パターン層に対応した形状を有する凸パターンが設けられた凸版を得る工程とを含む。
【選択図】図2

Description

本発明は、有機電子デバイスを製造するための凸版印刷技術に関する。
一般に、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ、有機薄膜トランジスタアレイ、及び有機印刷回路などの有機電子デバイスは、パターニングされた有機物層,すなわち、有機パターン層,を含んでいる。例えば、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイの多くにおいて、発光層は有機パターン層である。
この発光層に用いられる有機材料は、例えば、低分子材料と高分子材料とに分類することができる。
低分子材料を使用する場合、通常、マスクを用いた真空蒸着を行うことにより、有機パターン層としての発光層を得る。この方法は、発光層を均一な厚さに形成できる点で優れている。しかしながら、低分子材料を蒸着すべき基板が大きい場合、大きな寸法のマスクを使用することとなる。パターン精度に優れ且つ寸法の大きなマスクを製造することは難しい。そのため、この場合、基板上の所定の位置に発光層を形成できないことがある。
高分子材料を使用する場合、例えば、特許文献1に記載されているように、インクジェット法により有機パターン層としての発光層を形成することができる。インクジェット法を利用する場合、特許文献2に記載されているように、発光層を形成すべき各領域の周囲に撥インク性のバンクを形成することにより、高い位置精度で発光層を形成することができる。しかしながら、撥インク性のバンクを使用すると、各発光層の厚さが不均一になり易い。例えば、発光層の中央部が周縁部と比較してより厚くなることがある。
特許文献3乃至5には、平版印刷により有機パターン層としての発光層を形成することが記載されている。この方法によれば、各発光層を均一な厚さに形成することができる。しかしながら、平版印刷により高い位置精度で発光層を形成するには、平版と被印刷体とを正確に位置合わせするだけでなく、平版上に高い位置精度でインキパターンを形成しなければならない。
凸版印刷法によると、各発光層を均一な厚さに形成することができる。加えて、凸版印刷法によると、印刷版とインキパターンとの位置合わせの問題はないので、比較的容易に各発光層を高い位置精度で形成できると考えられる。しかしながら、本発明者らは、本発明を為すに際し、凸版印刷法を用いた場合であっても、必ずしも各発光層を高い精度で形成できる訳ではないことを見出している。
特開平10−12377号公報 特開2002−305077号公報 特開2005−310405号公報 特開2005−310406号公報 特開2006−19156号公報
本発明の目的は、有機電子デバイスの有機パターン層を凸版印刷により高い精度で形成可能とすることにある。
本発明の第1側面によると、有機電子デバイスが含む有機パターン層を凸版印刷によって形成するために使用する凸版を製造する方法であって、導電面を有する型基材の前記導電面上に前記有機パターン層に対応した形状を有する正規パターン層を形成し、前記導電面上であって前記正規パターン層の開口に対応した位置に前記正規パターン層と比較してより薄く且つ前記有機パターン層の開口に対応した形状を有する金属パターン層を鍍金法により形成し、前記型基材から前記正規パターン層を除去することにより、前記型基材と前記金属パターン層とを含んだ型を得る工程と、前記型とその前記金属パターン層側の主面を被覆した樹脂層とを含んだ積層体を形成し、前記樹脂層から前記型を取り除くことにより、前記樹脂層を具備すると共に前記樹脂層の表面に前記有機パターン層に対応した形状を有する凸パターンが設けられた凸版を得る工程とを含んだことを特徴とする方法が提供される。
本発明の第2側面によると、有機電子デバイスが含む有機パターン層を凸版印刷によって形成するために使用する凸版を製造する方法であって、導電面を有する型基材の前記導電面上に前記有機パターン層に対応した形状を有する正規パターン層を形成することにより第1型を得る工程と、前記正規パターン層を被覆すると共に前記正規パターン層の開口を埋め込んだ金属層を鍍金法により形成し、前記金属層から前記第1型を除去することにより、前記金属層を含み且つ一主面に前記有機パターン層に対応した形状を有する凹パターンが設けられた第2型を得る工程と、前記第2型とその前記凹パターン側の主面を被覆した樹脂層とを含んだ積層体を形成し、前記樹脂層から前記第2型を取り除くことにより、前記樹脂層を具備すると共に前記樹脂層の表面に前記有機パターン層に対応した形状を有する凸パターンが設けられた凸版を得る工程とを含んだことを特徴とする方法が提供される。
本発明の第3側面によると、第1又は第2側面に係る方法によって製造された凸版であって、前記樹脂層はタイプDデュロメータを用いて測定したデュロメータ硬さが40乃至70の範囲内にある熱可塑性樹脂からなることを特徴とする凸版が提供される。
本発明の第4側面によると、第1又は第2側面に係る方法によって製造された凸版であって、前記樹脂層は熱可塑性樹脂からなり、前記熱可塑性樹脂はエチレン−酢酸ビニル共重合体又はエチレン−酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体を含んだことを特徴とする凸版が提供される。
本発明の第5側面によると、第1又は第2側面に係る方法によって製造された凸版であって、前記樹脂層は熱可塑性樹脂からなり、前記樹脂層の厚さDと前記凸パターンの高さHと前記凸パターンの開口率Aとは不等式:D>(3−A)×Hに示す関係を満足していることを特徴とする凸版が提供される。
本発明の第6側面によると、有機電子デバイスが含む有機パターン層を凸版印刷によって形成するために使用する印刷機であって、第3乃至第5側面の何れか1つに係る凸版と、前記凸版の前記凸パターン側の面に前記有機パターン層の形成に使用するインキを供給してインキパターンを形成するインキ供給機と、前記凸版から前記有機電子デバイスが含むべき被印刷体上へと前記インキパターンを転写する転写機構とを具備したことを特徴とする印刷機が提供される。
本発明の第7側面によると、第3乃至第5側面の何れか1つに係る凸版の前記凸パターン側の面に前記有機パターン層の形成に使用するインキを供給してインキパターンを形成する工程と、前記凸版から前記有機電子デバイスが含むべき被印刷体上へと前記インキパターンを転写して前記有機パターンを形成する工程とを含んだことを特徴とする有機電子デバイスの製造方法が提供される。
本発明によると、有機電子デバイスの有機パターン層を凸版印刷により高い精度で形成することが可能となる。
本発明の第1及び第2側面に係る方法によると、断面形状が矩形又はそれに近い凸パターンが一主面に設けられた凸版を製造することができる。
本発明の第3及び第4側面に係る凸版は、凸パターンの断面形状に優れるのに加え、有機パターン層を形成するために使用するインキが凸パターンに付着し易い。また、これら凸版は、酸による金属の腐食を生じないので、有機電子デバイスの有機パターン層を形成するために酸性のインキを使用した場合であっても、金属の腐食に起因した劣化を生じない。
本発明の第5側面に係る凸版は、凸パターンの断面形状に優れるのに加え、その製造の際に凸パターンに欠落部を生じ難い構造を有している。また、この凸版は、酸による金属の腐食を生じないので、有機電子デバイスの有機パターン層を形成するために酸性のインキを使用した場合であっても、金属の腐食に起因した劣化を生じない。
本発明の第6側面に係る印刷機によると、有機電子デバイスの有機パターン層を凸版印刷により高い精度で形成することができる。また、この印刷機は、凸版の劣化に伴う部品交換の頻度が少ない。
本発明の第7速面に係る有機電子デバイスの製造方法によると、その有機パターン層を高い精度で形成することができる。したがって、性能に優れた有機電子デバイスを、高い歩留まりで製造することができる。
以下、本発明の態様について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図において、同様又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する説明は省略する。
図1は、本発明の一態様に係る印刷機を概略的に示す図である。
この印刷機は、ステージ11を含んでいる。ステージ11には、被印刷体である基板21が着脱可能に取り付けられている。被印刷体は、基板21でなくてもよい。
ステージ11の近傍には、版胴12が設置されている。版胴12とステージ11とは、基板21を間に挟んで向き合っている。版胴12には、印刷用凸版13が巻き付けられている。この凸版13については、後で詳述する。
版胴12には、これをその軸の周りで回転させる回転機構(図示せず)が取り付けられている。また、版胴12及びモータなどを搭載した印刷ユニット及び/又はステージ11には、これを基板21の主面に対して平行に及び版胴12の軸に対して垂直に移動させる直動機構(図示せず)が取り付けられている。回転機構及び直動機構は、ステージ11に支持された基板21上で、凸版13を巻き付けた版胴12が転動するのを可能としている。また、ステージ11と版胴12と回転機構と直動機構とは、凸版13から基板21上へとインキパターンを転写する転写機構を構成している。図1には、一例として、版胴12を時計回りに回転させ、ステージ11を版胴12に対して左側に相対移動させる構成を描いている。
版胴12の近傍には、アニロックスロール14がさらに設置されている。アニロックスロール14と版胴12とは、凸版13を間に挟んで向き合っている。アニロックスロール14は、例えば、クロムなどの金属製又はセラミックス製である。
アニロックスロール14には、これをその軸の周りで回転させる回転機構(図示せず)が取り付けられている。この回転機構は、アニロックスロール14を、版胴12に巻き付けた凸版13上で転動可能としている。図1に示す例では、アニロックスロール14は、反時計回りに回転する。
アニロックスロール14上には、インキ31の膜が形成されている。アニロックスロール14は、凸版13上で転動することにより、凸版13の凸部上面にインキ31を供給する。
アニロックスロール14の近傍には、そのロール面にインキ31を補充するインキ補充装置15が設置されている。インキ補充装置15は、アニロックスロール14のロール面に、必要量又はそれ以上のインキ31を補充する。インキ補充装置15としては、例えば、滴下型のインキ補充装置、ファウンテンロール、スリットコータ、ダイコータ、キャップコータなどのコータ、又はそれらの組み合わせを使用することができる。
アニロックスロール14の近傍には、ドクター16がさらに設置されている。ドクター16は、アニロックスロール14のロール面から過剰なインキ31を除去する。これにより、アニロックスロール14が凸版13の凸部に適正量のインキ31を供給するのを可能としている。ドクター16としては、例えば、ドクターブレード及びドクターロールを使用することができる。
アニロックスロール14とインキ補充装置15とドクター16とは、凸版13上にインキパターンを形成するインキ供給機を構成している。版胴12などを搭載した印刷ユニットを基板21の主面に対して平行に及び版胴12の軸に対して垂直に移動させる構成を採用した場合、通常、この印刷ユニットには先のインク供給機をさらに搭載させる。
図1に示す例では、凸版13にインキ31を供給するインキ供給体としてシリンダ状のアニロックスロール14を使用しているが、その代わりに、平板状のアニロックス板を使用してもよい。平板状のアニロックス板は、例えば、ステージ11上に基板21と並べて配置する。そして、インキ補充装置15によりアニロックス板の全面にインキ31を補充した後、版胴12をアニロックス板上で転動させ、次いで、基板21上で転動させる。これにより、基板21上にインキ31からなるインキパターンを形成することができる。
この印刷機は、他の装置をさらに含んでいてもよい。例えば、この印刷機は、インキパターンを転写した基板21を減圧処理する減圧処理装置や、基板21に転写したインキパターンを乾燥させるオーブンなどの乾燥装置をさらに含んでいてもよい。
なお、図1には、基板21を1枚毎に処理する枚葉式の印刷機を示しているが、被印刷体がウェブ状で巻き取り可能である場合には、印刷機にロール・トゥ・ロール方式などの他の構成を採用してもよい。ロール・トゥ・ロール方式を採用すると、被印刷体上にインキパターンを連続して形成することができ、それゆえ、有機電子デバイスの製造コストを低くすることが可能となる。
次に、図1の印刷機で使用する凸版13について説明する。
図2は、図1の印刷機で使用可能な凸版の一例を概略的に示す断面図である。
この凸版13は、樹脂層135からなる。樹脂層135は、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂の硬化物、又は光硬化性樹脂の硬化物からなる。
樹脂層135の一方の主面には、凸パターンが設けられている。凸パターンは、後述する有機電子デバイスが含む有機パターン層に対応した形状を有している。
図3乃至図8は、図2に示す凸版の製造方法の一例を概略的に示す断面図である。
この方法では、まず、図3に示す型基材431を準備する。型基材431は、導電面を有している。型基材431は、例えば、金属などの導電体からなる。或いは、型基材431として、非導電体とその上に形成された導電層とを含んだ複合体を使用してもよい。
非導電体の材料としては、例えば、シリコン又はガラスを使用することができる。平滑性に優れたシリコンウエハ又はガラス板は容易に入手でき、それゆえ、これを非導電体として用いると、平滑性に優れた型基材431を容易に形成することができる。
導電層の材料は、後述する鍍金を可能とするものであれば特に制限はない。導電層の材料としては、例えば金属を使用することができる。導電層は、例えば、無電解鍍金などの湿式成膜法、又は、スパッタリング、真空蒸着、化学気相堆積(CVD)、イオンプレーティングなどの気相堆積法により形成することができる。
次に、図3に示すように、型基材431の一方の主面を感光性のレジスト層434で被覆する。レジスト層434は、例えば、型基材431上に液状レジストを塗布することにより形成することができる。或いは、型基材431にドライフィルムレジストを貼り付けてもよい。但し、レジスト層434をパターニングすることにより得られる正規パターン層は、樹脂層135に形成すべき凸パターンの高さと比較してより厚い必要がある。したがって、この観点では、厚い正規パターン層を形成し易いドライフィルムレジストを使用することが有利である。
次に、レジスト層434をパターン露光する。例えば、ネガ型のレジストを使用した場合には、レジスト層434のうち、樹脂層135に形成すべき凸パターンに対応した部分を露光する。次いで、レジスト層434を現像処理に供し、図4に示す正規パターン層434’を得る。
正規パターン層434’の断面形状は、略矩形状であることが理想的であるが、順テーパ状又は逆テーパ状であっても構わない。但し、正規パターン層434’の断面形状が極端な順テーパ形状であると、後で説明する型40aの凸部は極端な逆テーパ状の断面形状を有することとなる。そのような型40aを用いた場合、樹脂層135から型40aを取り除き難くなる。
次いで、型基材431を鍍金処理に供する。これにより、図5に示す金属パターン層432を形成する。この鍍金処理は、金属パターン層432の厚さが正規パターン層434’の厚さと等しくなる前に終了する。金属パターン層432の厚さが正規パターン層434’の厚さ以上となると、金属パターン層432が正規パターン層434’の上面を被覆する可能性がある。
金属パターン層432の材料は、鍍金処理による成膜が可能な金属又は合金であれば特に制限はない。例えば、金属パターン層432の材料として、ニッケル、クロム、銅、及びそれらの合金などを使用することができる。特に、ニッケル、クロム、又はそれらの合金を使用することが好ましい。
ニッケルを含んだ金属パターン層432を電気鍍金により形成する場合、鍍金浴としては、例えば、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、及び硼酸を主成分として含有したワット浴、又は、スルファミン酸ニッケル、ホウ酸、及び塩化ニッケルを主成分として含有したスルファミン酸浴を使用することができる。鍍金浴は、添加剤を含有していてもよい。例えば、鍍金浴に、金属パターン層432の表面を平滑にする光沢剤を添加してもよい。
その後、型基材431から正規パターン層434’を除去する。以上のようにして、図6に示す型40aを得る。
次に、型40aとその金属パターン層432側の主面を被覆した樹脂層135とを含んだ積層体を形成する。例えば、まず、図7に示すように、熱可塑性樹脂からなる平坦な層135を準備する。次に、熱可塑性樹脂層135を、そのガラス転移点以上の温度に加熱して軟化させる。次いで、軟化した熱可塑性樹脂層135に、型40aを押し当てる。その後、熱可塑性樹脂層135を、そのガラス転移点未満の温度にまで冷却して、硬化させる。これにより、図8に示す構造を得る。
さらに、硬化後の樹脂層135から型40aを取り除く。以上のようにして、図2に示す凸版13を得る。
図2に示す凸版13は、他の方法で製造することも可能である。
図9乃至図14は、図2に示す凸版の製造方法の他の例を概略的に示す断面図である。
この方法では、まず、図9に示す構造を準備する。この構造体は、例えば、図3を参照しながら説明したのと同様の方法により得られる。
次に、レジスト層434をパターン露光し、続いて、現像処理に供する。これにより、図10に示すように、型基材431とその上に形成した正規パターン層434’とを含んだ第1型40bを得る。
次いで、型基材431を鍍金処理に供する。これにより、図11に示す金属層430を形成する。この鍍金処理は、金属層430の厚さが正規パターン層434’の厚さを超えた後に終了する。例えば、この鍍金処理は、金属層430の厚さと正規パターン層434’の厚さとの差が50μm以上となった後に終了する。金属層430は、より厚く形成すること以外は、図5を参照しながら金属層432に関して説明したのと同様の方法により形成することができる。
その後、金属層430から第1型40bを取り除く。以上のようにして、図12に示すように、金属層430を含んだ第2型40cを得る。
次に、第2型40cとその凹パターン側の主面を被覆した樹脂層135とを含んだ積層体を形成する。例えば、まず、図13に示すように、熱可塑性樹脂からなる平坦な層135を準備する。次に、熱可塑性樹脂層135を、そのガラス転移点以上の温度に加熱して軟化させる。次いで、軟化した熱可塑性樹脂層135に、第2型40cを押し当てる。その後、熱可塑性樹脂層135を、そのガラス転移点未満の温度にまで冷却して、硬化させる。これにより、図14に示す構造を得る。
さらに、硬化後の樹脂層135から第2型40cを取り除く。以上のようにして、図2に示す凸版13を得る。
樹脂層135を形成するための熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリメタクリル酸メチル、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、アクリロニトリル−スチレン(AS)樹脂、アクリル樹脂、ポリアミド、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、液晶性ポリマー、フッ素樹脂、ポリアレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、熱可塑性ポリイミド等、及びそれらの混合物を使用することができる。樹脂層135が、エチレン−酢酸ビニル共重合体又はエチレン−酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体を含んでいる場合、有機パターン層を形成するために使用するインキが凸パターンに付着し易い。したがって、形状精度に特に優れた有機パターン層を形成することができる。
樹脂層135の材料として、熱可塑性樹脂を使用する代わりに、熱硬化性樹脂又は光硬化性樹脂を使用してもよい。
熱硬化性樹脂を使用する場合、型40a又は40cの凹凸表面を熱硬化性樹脂からなる樹脂層135で被覆する。次いで、熱硬化性樹脂を、その硬化温度以上に加熱して硬化させる。その後、樹脂層135から型40a又は40cを取り除く。以上のようにして、図2の凸版13を得る。
熱硬化性樹脂としては、例えば、フェノール樹脂、ユリア樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ジアリルフタレート樹脂、及びそれらの混合物を使用することができる。この熱硬化性樹脂には、溶剤及び/又は添加剤を添加して使用してもよい。
光硬化性樹脂を使用する場合、型40a又は40cの凹凸表面を光硬化性樹脂からなる樹脂層135で被覆する。次いで、光硬化性樹脂を、光硬化させる。その後、樹脂層135から型40a又は40cを取り除く。以上のようにして、図2の凸版13を得る。
光硬化性樹脂は、例えば、重合性化合物と光重合開始剤とを含有した組成物である。重合性化合物としては、例えば、エポキシアクリレート及びウレタンアクリレート等のオリゴマー、多官能アクリレート等の重合性モノマー、又はそれらの混合物を使用することができる。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン系又はアセトフェノン系の光重合開始剤を使用することができる。この光硬化性樹脂には、溶剤及び/又は添加剤を添加して使用してもよい。
樹脂層135の成膜には、例えば、スピンコート、ディップコート、スリットコート、ダイコート、ロールコート、スプレーコート、又はバーコートを利用することができる。
なお、金属層の表面をパターニングすることにより、図2に示す凸版13と類似の構造を有する凸版を得ることができる。但し、この方法では、金属層の表面に対し、パターニングしたレジスト膜をマスクとして用いたエッチングを行う必要がある。厚い金属層をエッチングでパターニングした場合、断面形状が矩形又はそれに近い凸パターンを形成すること及び高い寸法精度を達成することは極めて難しい。
これに対し、図3乃至図8を参照しながら説明した方法及び図9乃至図14を参照しながら説明した方法では、金属層のエッチングは不要である。そのため、これら方法によると、凸パターンの形状精度及び寸法精度に優れた凸版13を容易に得ることができる。
また、有機パターン層の形成に使用するインキの中には、強酸性のものがある。この凸版13は、樹脂層135の表面に凸パターンを形成しているので、酸による劣化を生じ難い。
さらに、この凸版13では、凸パターンは樹脂層135の表面に設けられている。そのため、この凸版13は、例えば、凸パターンを金属層の表面に設けた場合と比較して、有機パターン層の形成に使用するインキが凸パターンに付着し易い。それゆえ、この凸版13を使用した場合、金属からなる凸版を使用した場合と比較して、有機パターン層に欠落部が生じ難い。
また、図2に示す凸版13は、図3乃至図8並びに図9乃至図14を参照しながら説明した方法以外の方法でも製造することができる。例えば、基材上に感光性樹脂層を形成し、この感光性樹脂層のパターン露光及び現像を行うことにより、図2に示す凸版13を製造することができる。
しかしながら、フォトリソグラフィに適した感光性樹脂が、凸版13の材料として適している訳ではない。すなわち、多くの場合、形状精度に優れた微細なパターンを形成可能な感光性樹脂は、凸版13に必要な物理的及び化学的安定性並びにインク付着性等を達成しない。逆に言えば、凸版13に必要な物理的及び化学的安定性並びにインク付着性等を達成し得る感光性樹脂を用いた場合、形状精度に優れた微細なパターンを形成できない。
図3乃至図8並びに図9乃至図14を参照しながら説明した方法では、フォトリソグラフィは正規パターン層432を形成するためのみに使用し、この正規パターン層432は、凸版13の材料としては使用せず、鍍金処理時にマスクとして利用する。それゆえ、正規パターン層432の材料として形状精度に優れた微細なパターンを形成可能な感光性樹脂を使用すること、及び、凸版13の材料としてそれに必要な物理的及び化学的安定性並びにインク付着性等を達成し得る樹脂を使用することが可能である。
したがって、図3乃至図8並びに図9乃至図14を参照しながら説明した方法によると、凸版13の凸パターンが微細な場合であっても、優れた形状精度、物理的及び化学的安定性、並びにインク付着性等を達成することができる。それゆえ、この凸版13を使用すると、性能に優れた有機電子デバイスを高い歩留まりで製造することが可能となる。
これについて、対角寸法が2インチのQVGA(quarter video graphic array)型有機エレクトロルミネッセンスディスプレイを例に説明する。
この有機エレクトロルミネッセンスディスプレイは、携帯電話に搭載する代表的な有機エレクトロルミネッセンスディスプレイである。このディスプレイにおける画素の密度は約200ppi(pixel per inch)であり、サブピクセルの幅は約40μmである。
サブピクセルの寸法が40μmであり且つ開口率が50%であるとすると、サブピクセルの発光部及び非発光部の各々の寸法は20μmである。発光層は発光色毎に形成するため、この場合、発光層を形成するために使用する凸版では、凸部の幅を20μmとし、凹部の幅を100μmとする必要がある。そして、正孔輸送層を形成するために使用する凸版では、凸部及び凹部の幅の各々を20μmとしなければならない。
上記の通り、凸版に必要な物理的及び化学的安定性並びにインク付着性等を達成し得る感光性樹脂を用いた場合、形状精度に優れた微細なパターンを形成できない。それゆえ、そのような凸版を用いた場合、有機パターン層,特には正孔輸送層,を高い精度で形成することは難しい。そのため、この場合、性能に優れた有機エレクトロルミネッセンスディスプレイを高い歩留まりで製造することはできない。
これに対し、図3乃至図8並びに図9乃至図14を参照しながら説明した方法によると、凸版13の凸パターンが微細な場合であっても、優れた形状精度、物理的及び化学的安定性、並びにインク付着性等を達成することができる。したがって、この凸版13を使用することにより、有機パターン層を高い精度で形成することができる。それゆえ、図3乃至図8並びに図9乃至図14を参照しながら説明した方法によると、性能に優れた有機エレクトロルミネッセンスディスプレイを高い歩留まりで製造することが可能となる。
この凸版13では、樹脂層135に設ける凸パターンの凸部間の最短距離Wは、例えば10μm乃至50μmの範囲内とし、典型的には20μm乃至40μmの範囲内とする。距離Wが大きい場合、先に説明した方法以外の方法でも、比較的高い形状精度及び寸法精度を達成できることがある。距離Wが小さい場合、先に説明した方法であっても、高い形状精度及び寸法精度を達成することは難しい。
凸パターンの高さHは、例えば10μm乃至100μmの範囲内とし、典型的には20μm乃至70μmの範囲内とする。高さHが小さい場合、高い形状精度で有機パターン層を形成することが難しくなる。高さHが大きい場合、凸版13の製造自体が難しくなる。
樹脂層135が熱可塑性樹脂からなる場合、表面に凸パターンが設けられた樹脂層135の厚さDと、樹脂層135の表面に設ける凸パターンの高さHと、この凸パターンの開口率Aとが、不等式:D>(3−A)×Hに示す関係を満足する設計を採用してもよい。凸パターンを転写する前の樹脂層135の厚さD0は、厚さDと高さHとの差D−Hに、開口率Aと高さHとの積A×Hとを加えてなる値D−H+A×Hとほぼ等しい。厚さD0を高さHの2倍よりも大きくすると、十分に小さな変形抵抗で樹脂層135に凸パターンを転写することができる。
樹脂層135は、例えば、JIS K7215−1986「プラスチックのデュロメータ硬さ試験」に規定されているタイプDデュロメータを用いて測定したデュロメータ硬さ(HDD)を40乃至70の範囲内とする。このデュロメータ硬さが小さいと、形状精度に優れた有機パターン層を形成することが難しくなる。また、このデュロメータ硬さが大きいと、有機パターン層に欠落部が生じ易くなる。
凸版13には、撥インキ層を設けてもよい。すなわち、樹脂層135の凸パターン側の主面のうち凸パターンの開口部に対応した領域を、樹脂層135と比較して有機パターン層の形成に使用するインキの付着性がより低い撥インキ層で被覆してもよい。この構造を採用すると、有機パターン層の形状精度が向上する。
撥インキ層の材料としては、例えば、弗素樹脂を使用することができる。また、撥インキ層は、例えば、以下の方法で形成することができる。まず、樹脂層135の凸部上面を、例えばレジスト層で被覆する。次いで、樹脂層135の凹凸表面上に弗素樹脂層を形成する。その後、樹脂層135からレジスト層を除去する。これにより、弗素樹脂からなる撥インキ層を得る。
次に、図1の印刷機を製造に利用可能な有機電子デバイスについて説明する。
図15は、図1の印刷機を製造に利用可能な有機電子デバイスの一例を概略的に示す断面図である。図15には、有機電子デバイスの例として、パッシブマトリクス駆動方式の有機エレクトロルミネッセンスディスプレイを描いている。
この有機エレクトロルミネッセンスディスプレイは、基板21を含んでいる。有機エレクトロルミネッセンスディスプレイが下面発光型である場合、基板21としては、例えばガラス基板などの透明基板を使用する。有機エレクトロルミネッセンスディスプレイが上面発光型である場合、基板21は光透過性である必要はない。
基板21の一方の主面上では、複数の画素がマトリクス状に配列している。各画素は、サブ画素として、発光色が赤色の有機エレクトロルミネッセンス素子22Rと、発光色が緑色の有機エレクトロルミネッセンス素子22Gと、発光色が青色の有機エレクトロルミネッセンス素子22Bとを含んでいる。有機エレクトロルミネッセンス素子22R、22G及び22Bの各々は、第1電極221と、第2電極222と、発光層223と、正孔輸送層224とを含んでいる。
第1電極221は、基板21と第2電極222との間に介在している。この例では、第1電極221及び第2電極222は、それぞれ、陽極及び陰極である。第1電極221は、例えば、画素の列に対応したストライプ状パターンを形成している。この場合、第2電極222には、画素の行に対応したストライプ状パターンを形成させる。
発光層223は、第1電極221と第2電極222との間に介在している。有機エレクトロルミネッセンス素子22R、22G及び22Bは、発光層223の材料が互いに異なっている。発光層223は、有機パターン層である。有機エレクトロルミネッセンス素子22R、22G及び22Bの発光層223は、例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子22R、22G及び22Bの列に対応してストライプ状のパターンを形成している。
正孔輸送層224は、第1電極221と発光層223との間に介在している。正孔輸送層224は、有機パターン層である。正孔輸送層224は、有機エレクトロルミネッセンス素子22R、22G及び22Bの列に対応してストライプ状のパターンを形成している。正孔輸送層224は、省略することができる。
有機エレクトロルミネッセンス素子22R、22G及び22Bは、第1電極221と第2電極222との間に、発光層223及び正孔輸送層224以外の層をさらに含むことができる。例えば、有機エレクトロルミネッセンス素子22R、22G及び22Bは、発光層223と第2電極222との間に電子輸送層を含んでいてもよい。
第1基板21と第2電極222との間には、隔壁23が発光層223及び正孔輸送層224と隣接して設置されている。隔壁23は、例えば樹脂などの絶縁体からなる。隔壁23は、第1電極221と第2電極222との短絡を防止する役割を果たす。
この有機エレクトロルミネッセンスディスプレイは、例えばガラスからなる封止体24をさらに含んでいる。封止体24は、有機エレクトロルミネッセンス素子22R、22G及び22Bを間に挟んで基板21と向き合っている。封止体24の周縁部は、接着剤層25を介して基板21に接着されている。すなわち、封止体24と基板21と接着剤層25とは、中空体を形成している。この中空体の内部空間は、真空とするか又は不活性ガスで満たす。これにより、有機エレクトロルミネッセンス素子22R、22G及び22Bの水分や酸素等による劣化を防止する。
この中空体の内部空間は、樹脂等で満たしてもよい。また、有機エレクトロルミネッセンス素子22R、22G及び22Bを缶封止する代わりに、薄膜封止してもよい。例えば、第2電極222をパッシベーション層で被覆してもよい。このパッシベーション層は、有機エレクトロルミネッセンス素子22R、22G及び22Bを外部応力から保護する保護層で被覆してもよい。
この有機エレクトロルミネッセンスディスプレイは、例えば、以下の方法により製造する。
まず、基板21の一方の主面上に、第1電極221を形成する。第1電極221は、例えば、マスクを用いたスパッタリングにより形成することができる。或いは、第1電極221は、連続膜としての導電膜を形成し、フォトリソグラフィを利用してこれをパターニングすることにより形成することができる。
次に、基板21の先の主面上に、隔壁23を形成する。隔壁23は、例えば、基板21上に感光性樹脂層を形成し、これをパターン露光、現像、乾燥、及び焼成することにより得られる。
次に、第1電極221上に、正孔輸送層224及び発光層223を順次形成する。第1電極221と第2電極222との間に介在させる有機物層の少なくとも1つは、図1に示す印刷機を用いて形成する。例えば、正孔輸送層224及び発光層223の双方を、図1に示す印刷機を用いて形成する。或いは、正孔輸送層224及び発光層223の一方を、図1に示す印刷機を用いて形成する。なお、第1電極221と第2電極222との間に複数の有機物層させ且つそれら有機物層の一部のみを図1に示す印刷機を用いて形成する場合、他の有機物層は、例えば、インクジェット法により形成してもよい。
図1に示す印刷機を用いてストライプ状の有機物層を形成する場合、凸版13としては、ストライプ状の凸部を有しているものを使用する。この場合、ストライプを形成している帯の長手方向は、版胴12の回転方向に対して垂直としてもよく、版胴12の回転方向に対して平行としてもよい。ここでは、一例として、前者の配置を採用することとする。
次いで、発光層223及び隔壁23上に、第2電極222を形成する。第2電極222は、例えば、マスクを用いた真空蒸着法により形成することができる。
その後、真空中又は不活性ガス中で、接着剤層25を介して、基板21と封止体24とを貼り合せる。これにより、図15に示す有機エレクトロルミネッセンスディスプレイを得る。
以上、図1等を参照しながら説明した有機パターン層の形成方法をパッシブマトリクス駆動方式の有機エレクトロルミネッセンスディスプレイの製造に利用したが、この技術は、他の駆動方式を採用した有機エレクトロルミネッセンスディスプレイの製造にも利用することができる。例えば、この技術は、アクティブマトリクス駆動方式を採用した有機エレクトロルミネッセンスディスプレイの製造に利用してもよい。
また、先の技術は、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ以外の有機電子デバイスの製造にも利用可能である。例えば、先の技術は、有機薄膜トランジスタアレイ、有機印刷回路、撮像素子及び液晶ディスプレイなどのカラーフィルタを含んだデバイス、マイクロレンズを含んだデバイス、又はバイオチップの製造に利用してもよい。
以下に、本発明の実施例を記載する。
(凸版Aの製造)
厚さが1.1mmのガラス基板上に、スパッタリング法により、厚さが150nmのクロム層を形成した。このようにして得られた型基材に、ラミネータを用いて、ドライフィルムレジストをラミネートした。このドライフィルムレジストとしては、日立化成社製のHM−4056を使用した。また、このラミネートは、ロール温度を110℃、ロール圧力を0.4MPa、ラミネート速度を50cm/分として行った。
次に、ストライプ状に遮光部が形成されたフォトマスクを介して、ドライフィルムレジストを露光した。この露光には、マスクアライナであるオーク製作所社製のEXM−1413を用い、露光量は80mJ/cm2とした。
その後、ドライフィルムレジストを現像処理に供した。具体的には、ドライフィルムレジストを型基材と共に、30℃に維持した1質量%の炭酸ナトリウム水溶液に浸漬した。次いで、これを炭酸ナトリウム水溶液から取り出し、ドライフィルムレジストに先の炭酸ナトリウム水溶液を5分間噴霧した。以上のようにして、クロム層上に、20μmのラインアンドスペースにパターニングされた樹脂層を正規パターン層として形成した。
次に、正規パターン層を形成した型基材を、10質量%の硫酸水溶液に1分間浸漬した。これにより、型基材の表面を清浄化した。
次いで、この型基材を45℃に維持したメルテックス社製のワット浴に浸漬し、これに電極を接続した。そして、電流密度を1.2A/dm2として2時間の鍍金処理を行った。
続いて、型基材から正規パターン層を除去した。これにより、金属パターン層として、20μmのラインアンドスペースにパターニングされた厚さが20μmの金属層を得た。以上のようにして、型基材と金属パターン層とからなる型を形成した。
次に、樹脂層として、厚さが200μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを準備した。次いで、170℃に加熱しながら、このPETフィルムに先の型を10MPaの圧力で10分間押し当てた。50℃まで徐冷した後、PETフィルムから型を取り除いた。
以上のようにして、PETフィルムからなる凸版を完成した。以下、この凸版を、「凸版A」と呼ぶ。
(凸版Bの製造)
厚さが1.1mmのガラス基板上に、スパッタリング法により、厚さが150nmのクロム層を形成した。このようにして得られた型基材に、ラミネータを用いて、ドライフィルムレジストをラミネートした。このドライフィルムレジストとしては、日立化成社製のHM−4056を使用した。また、このラミネートは、ロール温度を110℃、ロール圧力を0.4MPa、ラミネート速度を50cm/分として行った。
次に、ストライプ状に遮光部が形成されたフォトマスクを介して、ドライフィルムレジストを露光した。この露光には、マスクアライナであるオーク製作所社製のEXM−1413を用い、露光量は80mJ/cm2とした。
その後、ドライフィルムレジストを現像処理に供した。具体的には、ドライフィルムレジストを型基材と共に、30℃に維持した1質量%の炭酸ナトリウム水溶液に浸漬した。次いで、これを炭酸ナトリウム水溶液から取り出し、ドライフィルムレジストに先の炭酸ナトリウム水溶液を5分間噴霧した。これにより、クロム層上に、20μmのラインアンドスペースにパターニングされた樹脂層を正規パターン層として形成した。以上のようにして、型基材と正規パターン層とからなる第1型を得た。
次に、この第1型を、フルオロ系シランカップリング剤を含んだ溶液に浸漬し、第1型の凹凸表面に離型層を形成した。
次いで、この第1型を45℃に維持したメルテックス社製のワット浴に浸漬し、これに電極を接続した。そして、電流密度を1.2A/dm2として20時間の鍍金処理を行った。
続いて、鍍金処理によって形成した金属層から第1型を除去した。これにより、第2型として、一方の主面が20μmのラインアンドスペースにパターニングされた金属層を得た。なお、この金属層の厚さと凸パターンの高さとの差は、200μmであった。
次に、樹脂層として、厚さが200μmのPETフィルムを準備した。次いで、170℃に加熱しながら、このPETフィルムに第2型を10MPaの圧力で10分間押し当てた。50℃まで徐冷した後、PETフィルムから第2型を取り除いた。
以上のようにして、PETフィルムからなる凸版を完成した。以下、この凸版を、「凸版B」と呼ぶ。
(凸版Cの製造)
ニッケル含有率が36%の鉄とニッケルとの合金からなり且つ厚さが0.2mmの金属基材と、その一方の主面を被覆した厚さが0.3mmのポリアミド系感光性樹脂層とからなる版材を準備した。なお、この感光性樹脂は、樹脂製凸版の材料として一般に使用されているものである。
次に、ストライプ状に遮光部が形成されたフォトマスクを介して、感光性樹脂層を露光した。この露光には、マスクアライナであるオーク製作所社製のEXM−1413を用いた。その後、感光性樹脂層を現像処理に供した。ここでは、現像液として水を使用した。このようにして、金属基材上に、20μmのラインアンドスペースにパターニングされた樹脂層を形成した。
以上のようにして、樹脂からなる凸パターンを含んだ凸版を完成した。以下、この凸版を、「凸版C」と呼ぶ。
(ディスプレイAの製造)
厚さが0.7mmのガラス基板の一方の主面上に導電パターン層を形成してなる透明基板を準備した。ここでは、導電パターン層として、20μmのラインアンドスペースにパターニングされた厚さが110nmのインジウム錫酸化物(以下、ITOという)層を有しているものを使用した。
次に、この透明基板を、中性洗剤溶液中で5分間超音波洗浄した。次いで、純水でリンスし、続いて、純水で10分間超音波洗浄した。その後、イソプロパノールを用いて、透明基板から水分を除去した。
次に、透明基板のITO層側の主面上に、ノボラック系ポジ型レジスト層を形成した。次いで、フォトリソグラフィを利用してレジスト層をパターニングすることにより、ストライプ状の隔壁を得た。なお、この隔壁は、ガラス基板の上記主面のうちITO層で被覆されていない部分とITO層の縁とを被覆するように形成した。以上のようにして、被印刷基板を得た。
次いで、正孔輸送層インキして、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルフォン酸とを1.5質量%の濃度で含有した水溶液(スタルク社製CH8000)を準備した。この正孔輸送層インキと凸版Aとを用い、図1を参照しながら説明した印刷機により、被印刷基板のITO層上に厚さが50nmの正孔輸送層を形成した。
その後、発光層インキとして、ポリフェニレンビニレン誘導体のトルエン溶液を準備した。この溶液を被印刷基板上にスピンコートし、塗膜を真空中で乾燥させた。これにより、正孔輸送層上に、厚さが80nmの緑色発光層を得た。
次に、真空蒸着法により、発光層及び隔壁上に、厚さが5nmのカルシウム層と厚さが110nmのアルミニウム層とを順次形成した。ここでは、カルシウムの蒸着レートは0.1nm/secとし、アルミニウムの蒸着レートは5nm/secとした。また、この真空蒸着にはストライプ状に開口したメタルマスクを使用し、これにより、カルシウム層とアルミニウム層との積層体を、60μmのラインアンドスペースにパターニングされた導電層とした。なお、この真空蒸着は、この導電層が形成しているストライプと、先のITO層が形成しているストライプとが直交するように行った。
次に、接着剤シートを貼りつけたガラス基板を準備した。次いで、露点が−80℃である純窒素雰囲気中で、この基板と接着剤シートを貼りつけたガラス基板との周縁部同士を、紫外線硬化型接着剤層を介して貼り合わせた。この貼り合わせは、接着剤シートがそれら基板間に介在するように行った。さらに、接着剤層に紫外線を照射して、これを硬化させた。以上のようにして、表示パネルを得た。
その後、表示パネルに、ロウドライバ及びカラムドライバに接続した。これにより、パッシブマトリックス駆動方式のモノカラー有機エレクトロルミネッセンスディスプレイを完成した。以下、このディスプレイを、「ディスプレイA」と呼ぶ。
(ディスプレイBの製造)
凸版Aの代わりに凸版Bを使用したこと以外は、ディスプレイAについて説明したのと同様の方法により、パッシブマトリックス駆動方式のモノカラー有機エレクトロルミネッセンスディスプレイを製造した。以下、このディスプレイを、「ディスプレイB」と呼ぶ。
(ディスプレイCの製造)
凸版Aの代わりに凸版Cを使用したこと以外は、ディスプレイAについて説明したのと同様の方法により、パッシブマトリックス駆動方式のモノカラー有機エレクトロルミネッセンスディスプレイを製造した。以下、このディスプレイを、「ディスプレイC」と呼ぶ。
(性能評価)
ディスプレイAで全画素を点灯させたときに表示される画像と、ディスプレイBで全画素を点灯させたときに表示される画像と、ディスプレイCで全画素を点灯させたときに表示される画像とを肉眼で比較した。その結果、これら画像に相違を確認することはできなかった。
次に、ディスプレイA乃至Cの各々で、1画素ずつ点灯させた。その結果、ディスプレイA及びBでは、選択した画素のみが発光した。これに対し、ディスプレイCでは、選択した画素だけでなく、その両隣の画素も僅かに発光することがあった。すなわち、ディスプレイCでは、クロストークを生じた。
この相違を確認するために、以下の試験を行った。
まず、ディスプレイAについて説明したのと同様の方法により、ITO層付きガラス基板上に隔壁を形成して、3枚の被印刷基板を得た。
次いで、水溶性蛍光インキを添加したこと以外はディスプレイAの製造に使用したのと同様の組成を有する正孔輸送層インキを準備した。
その後、1つの被印刷基板には、この正孔輸送層インキを使用したこと以外はディスプレイAについて説明したのと同様の方法により正孔輸送層を形成した。以下、これにより得られた構造体をサンプルAと呼ぶ。
また、他の1つの被印刷基板には、先の正孔輸送層インキを使用したこと以外はディスプレイBについて説明したのと同様の方法により正孔輸送層を形成した。以下、これにより得られた構造体をサンプルBと呼ぶ。
さらに、残りの1つの被印刷基板には、先の正孔輸送層インキを使用したこと以外はディスプレイCについて説明したのと同様の方法により正孔輸送層を形成した。以下、これにより得られた構造体をサンプルCと呼ぶ。
次に、サンプルA乃至Cの各々を、ブラックライトを照射しながら顕微鏡で観察した。その結果、サンプルA及びBでは、帯状の正孔輸送層は、設計通りに互いから分離していた。これに対し、サンプルCでは、帯状の正孔輸送層同士が部分的に繋がっていた。すなわち、サンプルCでは、正孔輸送層を設計通りの形状に形成することができなかった。
次いで、凸版Cを顕微鏡で観察した。その結果、帯状凸部間の複数箇所で現像残りを確認することができた。凸版Cにおける現像残りの位置と、サンプルCにおいて正孔輸送層同士が繋がっていた位置と、ディスプレイCにおいてクロストークを生じた位置とを比較したところ、それらは対応していることが分かった。この結果から、ディスプレイCで生じたクロストークは、凸版Cにおける現像残りに起因していると考えられる。
次に、20μmのラインアンドスペースにパターニングされた樹脂層の代わりに、40μmのラインアンドスペースにパターニングされた樹脂層を形成したこと以外は、凸版Cについて説明したのと同様の方法により凸版を製造した。この凸版を顕微鏡で観察したところ、帯状凸部間に現像残りを確認することはできなかった。このことから、凸版に形成するパターンを精細化すると、現像残り及びこれに起因したクロストークが生じ易くなると考えられる。
本発明の一態様に係る印刷機を概略的に示す図。 図1の印刷機で使用可能な凸版の一例を概略的に示す断面図。 図2に示す凸版の製造方法の一例を概略的に示す断面図。 図2に示す凸版の製造方法の一例を概略的に示す断面図。 図2に示す凸版の製造方法の一例を概略的に示す断面図。 図2に示す凸版の製造方法の一例を概略的に示す断面図。 図2に示す凸版の製造方法の一例を概略的に示す断面図。 図2に示す凸版の製造方法の一例を概略的に示す断面図。 図2に示す凸版の製造方法の他の例を概略的に示す断面図。 図2に示す凸版の製造方法の他の例を概略的に示す断面図。 図2に示す凸版の製造方法の他の例を概略的に示す断面図。 図2に示す凸版の製造方法の他の例を概略的に示す断面図。 図2に示す凸版の製造方法の他の例を概略的に示す断面図。 図2に示す凸版の製造方法の他の例を概略的に示す断面図。 図1の印刷機を製造に利用可能な有機電子デバイスの一例を概略的に示す断面図。
符号の説明
11…ステージ、12…版胴、13…凸版、14…アニロックスロール、15…インキ補充装置、16…ドクター、21…基板、22B…有機エレクトロルミネッセンス素子、22G…有機エレクトロルミネッセンス素子、22R…有機エレクトロルミネッセンス素子、23…隔壁、24…封止体、25…接着剤層、31…インキ、40a…型、40b…型、40c…型、135…樹脂層、221…電極、222…電極、223…発光層、224…正孔輸送層、430…金属層、431…型基材、432…金属パターン層、434…レジスト層、434’…正規パターン層。

Claims (15)

  1. 有機電子デバイスが含む有機パターン層を凸版印刷によって形成するために使用する凸版を製造する方法であって、
    導電面を有する型基材の前記導電面上に前記有機パターン層に対応した形状を有する正規パターン層を形成し、前記導電面上であって前記正規パターン層の開口に対応した位置に前記正規パターン層と比較してより薄く且つ前記有機パターン層の開口に対応した形状を有する金属パターン層を鍍金法により形成し、前記型基材から前記正規パターン層を除去することにより、前記型基材と前記金属パターン層とを含んだ型を得る工程と、
    前記型とその前記金属パターン層側の主面を被覆した樹脂層とを含んだ積層体を形成し、前記樹脂層から前記型を取り除くことにより、前記樹脂層を具備すると共に前記樹脂層の表面に前記有機パターン層に対応した形状を有する凸パターンが設けられた凸版を得る工程とを含んだことを特徴とする方法。
  2. 有機電子デバイスが含む有機パターン層を凸版印刷によって形成するために使用する凸版を製造する方法であって、
    導電面を有する型基材の前記導電面上に前記有機パターン層に対応した形状を有する正規パターン層を形成することにより第1型を得る工程と、
    前記正規パターン層を被覆すると共に前記正規パターン層の開口を埋め込んだ金属層を鍍金法により形成し、前記金属層から前記第1型を除去することにより、前記金属層を含み且つ一主面に前記有機パターン層に対応した形状を有する凹パターンが設けられた第2型を得る工程と、
    前記第2型とその前記凹パターン側の主面を被覆した樹脂層とを含んだ積層体を形成し、前記樹脂層から前記第2型を取り除くことにより、前記樹脂層を具備すると共に前記樹脂層の表面に前記有機パターン層に対応した形状を有する凸パターンが設けられた凸版を得る工程とを含んだことを特徴とする方法。
  3. 前記樹脂層は熱可塑性樹脂からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記樹脂層は熱硬化性樹脂の硬化物からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
  5. 前記樹脂層は光硬化性樹脂の硬化物からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
  6. 前記型基材は導電体からなることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の方法。
  7. 前記型基材は金属からなることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の方法。
  8. 前記型基材は非導電体とその上に形成された導電層とを具備したことを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の方法。
  9. 請求項1又は2に記載の方法によって製造された凸版であって、前記樹脂層はタイプDデュロメータを用いて測定したデュロメータ硬さが40乃至70の範囲内にある熱可塑性樹脂からなることを特徴とする凸版。
  10. 前記熱可塑性樹脂はエチレン−酢酸ビニル共重合体又はエチレン−酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体を含んだことを特徴とする請求項9に記載の凸版。
  11. 請求項1又は2に記載の方法によって製造された凸版であって、前記樹脂層は熱可塑性樹脂からなり、前記熱可塑性樹脂はエチレン−酢酸ビニル共重合体又はエチレン−酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体を含んだことを特徴とする凸版。
  12. 前記樹脂層の厚さDと前記凸パターンの高さHと前記凸パターンの開口率Aとは不等式:D>(3−A)×Hに示す関係を満足していることを特徴とする請求項9乃至11の何れか1項に記載の凸版。
  13. 請求項1又は2に記載の方法によって製造された凸版であって、前記樹脂層は熱可塑性樹脂からなり、前記樹脂層の厚さDと前記凸パターンの高さHと前記凸パターンの開口率Aとは不等式:D>(3−A)×Hに示す関係を満足していることを特徴とする凸版。
  14. 有機電子デバイスが含む有機パターン層を凸版印刷によって形成するために使用する印刷機であって、
    請求項9乃至13の何れか1項に記載の凸版と、
    前記凸版の前記凸パターン側の面に前記有機パターン層の形成に使用するインキを供給してインキパターンを形成するインキ供給機と、
    前記凸版から前記有機電子デバイスが含むべき被印刷体上へと前記インキパターンを転写する転写機構とを具備したことを特徴とする印刷機。
  15. 請求項9乃至13の何れか1項に記載の凸版の前記凸パターン側の面に前記有機パターン層の形成に使用するインキを供給してインキパターンを形成する工程と、
    前記凸版から前記有機電子デバイスが含むべき被印刷体上へと前記インキパターンを転写して前記有機パターンを形成する工程とを含んだことを特徴とする有機電子デバイスの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN112339412A (zh) * 2019-08-09 2021-02-09 艾美柯技术株式会社 微细结构转印装置以及微细结构转印方法

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