近年、高精細加工技術を用いた電子デバイス開発が急速な進化を遂げている。このような電子デバイスは次世代のエレクトロニクス分野、バイオテクノロジー分野、オプトロニクス分野などの発展へ貢献することが期待される。
上述した電子デバイスの1つとして、有機EL素子がある。有機EL素子は、二つの対向する電極の間に有機発光材料からなる有機発光層を形成し、有機発光層に電流を流すことで発光させるものであるが、効率良く発光させるには発光層の膜厚が重要であり、100nm程度の薄膜にする必要がある。さらに、これをディスプレイ化するには高精細にパターニングする必要がある。
有機発光材料には、低分子材料と高分子材料があり、一般に低分子材料は抵抗加熱蒸着法等により薄膜形成し、このときに微細パターンのマスクを用いてパターニングするが、この方法では基板が大型化すればするほどパターニング精度が出にくいという問題がある。そのため、基板が大型となるディスプレイに用いる有機EL素子の有機発光層を形成するには不向きである。
そこで、最近では有機発光材料に高分子材料を用い、有機発光材料を溶剤に溶かして塗工液にし、これをウェットコーティング法で薄膜形成する方法が試みられるようになってきている。薄膜形成するためのウェットコーティング法としては、スピンコート法、バーコート法、突出コート法、ディップコート法等があるが、高精細にパターニングすることRGB3色に塗り分けしたりするためには、これらのウェットコーティング法では難しく、塗り分けパターニングを得意とする印刷法による薄膜形成が最も有効であると考えられる。
さらに各種印刷法の中でも、有機EL素子やディスプレイでは、基板としてガラス基板を用いることが多いため、グラビア印刷法等のように金属製の印刷版等の硬い版を用いる方法は不向きであり、弾性を有するゴム版を用いたオフセット印刷法や、ゴムやその他の樹脂を主成分とした感光性樹脂版を用いる凸版印刷法が適正である。実際にこれらの印刷法の試みとして、オフセット印刷による方法(特許文献1)、凸版印刷による方法(特許文献2)などが提唱されている。
ところで、一般的に電子デバイスの回路パターンは、大きいものは数マイクロメートル、小さなものになると数ナノメートルの高精細さに至る。
例えば、有機ELディスプレイの場合、携帯電話のメインディスプレイ用途等で、画素サイズは120μm、一色あたりの表示部幅は20〜40μm程度の高精細なパターンが要求され、また今後は更なる高精細化に向けた動きになるのは必至と考えられる。
透明電極を有する薄膜トランジスタ(TFT)を用いた電子回路を有する基板(TFT基板)上に、有機ELディスプレイを構成する正孔輸送層、発光層、電子輸送層、陰極層などの各層形成した場合、アクティブマトリックス型と呼ばれる高画質な有機ELディスプレイとなる。なお、ここで用いられるTFT回路も数μm程度の高精細な回路パターン
から形成される。
例えば有機ELディスプレイといった高精細パターンを形成しようとする場合、回路パターン上の薄膜形成に要求されるトータルピッチ精度やライン幅精度といったパターン精度は±5%以内程度を目標とするのが一般的であり、絶対値としては0.1μmから2μm程度の精度が要求される。
一方、広告や雑誌などの印刷物を印刷する場合、版のパターン精度は形成するパターンにより大きく異なるが、±10%以上であり、絶対値として10μmから100μm程度であることが多い。
また有機ELディスプレイなどの高精細パターンでは印刷法を用いた場合、転写される有機ELへの影響として欠け無き有機発光材料転写や面内均一な膜厚精度が要求される。
高精細なパターンを印刷法にて実施する場合、前述有機ディスプレイなどの課題と共に、版パターンの高精細化が求められる。その手法として、フォトリソ法にてパターン形成する手法があるが、そのフォトリソ法でパターンを形成した場合、感光性樹脂材料における解像度や樹脂形成の膜厚面内の均一性、実際に有機発光材料を転写する際の材料転移量を鑑み、パターン幅形成することがある。パターンが狙いの基板にある画素サイズより大きいことで隣接画素への材料の流れ込みや版上へ材料が供給された際に、パターンの下部に流れ込む懸念がある。この問題により、有機発光材料の転写制御ができない可能性がある。また解像度が上がるにつれて、微小な発塵物がフォトマスクに付着することにより、露光を妨げ、パターンの欠けや抜けの要因になり、感光性樹脂の成膜時に混入したコンタミが現像時に抜け落ちることで、欠けや抜けが起こり、本来のパターンが得られないことが発生する。
このパターンそのもの、もしくは一部の欠けや抜けにより、面内均一な転写が出来ず、基板で発光させたときに、発光のムラとして視認される。この場合のムラとは転写された有機発光材料の膜厚のバラツキが大きいことで、拡大視野で確認した際、発光状態が面内で模様のような濃淡が発生することである。
フォトリソ法を用いた印刷用凸版は種々研究、開発がされているが、凸型パターン形状において、特許文献5では、レリーフの厚みが10μm以上、500μm以下と記載されており、記レリーフ(本発明での印刷用凸版を指す)と前記被印刷体との押し込み量が100μm以下となる印圧で行なうことを特徴とする印刷方法としてあるが、レリーフ厚み(本発明では感光性樹脂層を指す)が10μmの時、押し込み量が100μmであると、レリーフは座屈してしまうことが考えられ、例え座屈しないにしても、レリーフ厚みよりも押し込み量が大きすぎるため、この押し込み量ではフレキソ版としての印刷が可能とは考えにくい。
また、特許文献6ではレリーフの厚みが10μm以上500μm以下であり、互いに最も近接する窪み同士の周縁の最短距離(A)で定義される場合に1μm以上20μm以下であると記載されているが、フォトリソ法でパターニングする際は500μmの感光性樹脂厚みでスペースとなる窪み同士の周縁の最短距離(A)の下限値1μmまたは上限値20μmを形成したとしても、浅彫り状態であり、かつテーパー形状も不安定であり、高精細な印刷をする際に印圧を掛けた時、浅彫りである為に、版パターンの底に有機発光材料が流れ込み、版上の有機発光材料量にバラツキが生じ、高精細パターンが要求される有機ELディスプレイや電子回路では面内均一な転写を得ることは難しいと考えられる。またフォトリソ法による露光光の透過や現像状態を考えると、500μmの厚みの底までパターンを彫ることが出来なく、得られる凸型パターン形状は順テーパー形状になりやすく、版上の有機発光材料はレリーフ形状(本発明の凸型パターン形状を指す)の高さ(断面図に対して深さ)方向に流れ込むことを確認している。
また、特許文献7のようにレーザー彫刻を用いたテーパー形状の形成には描画精度が悪化し、フォトリソ工程後に描画した後の形状には特にテーパーのサイド側の形状バラツキが大きい上、描画精度も要求され、本発明のような高精細な転写パターンには不向きである。
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明はこれに限るものではない。
図1は本発明の印刷用凸版の一実施形態の断面概略図である。図1(a)に示すように、本実施形態の印刷用凸版は、基材10の一方の面上に感光性樹脂層11を設け、フォトリソ法などにより凸型パターン13を単位画素として、一定の間隔で繰り返して形成されている。また図1(b)に示すように、感光性樹脂層11(一層目)及び感光性樹脂層12(二層目)の積層構成であってもよい。
本実施形態における凸型パターン13の形成方法としては、ポジ型感光性樹脂を用いたフォトリソグラフィー法、ネガ型感光性樹脂を用いたフォトリソグラフィー法、射出成型、レーザーアブレーション法等の種々のパターン成型法を用いることができるが、パターンの高精細さの観点から、感光性樹脂を用いたフォトリソグラフィー法が望ましい。なかでも、ネガ型感光性樹脂を用いたフォトリソグラフィー法が望ましい。
本発明に係る基材10としては、高い寸法安定性を保持するものが望ましく、例えば、鉄、アルミニウム、銅、亜鉛、ニッケル、チタン、クロム、金、銀やそれらの合金、積層体などの金属が好ましい。中でも特に、加工性、経済性から鉄を主成分とするスチール基材やアルミ基材を好適に用いることができる。または印刷機への適正を考えたとき、印刷に対する機械的強度を有する材料であれば良く、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリビニルアルコールなどの公知の合成樹脂を用いてもよい。
前記感光性樹脂層11,12に用いられる樹脂は、ニトリルゴム、シリコーンゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリロニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴムなどのゴムの他に、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリビニルアルコールなどの合成樹脂やそれらの共重合体、セルロースなどの天然高分子などから一種類以上を選択することができるが、有機発光材料などといった塗工液を塗布する場合、有機溶剤に対する耐溶剤性の観点から、ポリアミドやフッ素系エラストマーやポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ六フッ化ビニリデンやそれらの共重合体といった樹脂が好ましい。
また、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミド、三級窒素含有ポリアミド、アンモニウム塩型三級窒素原子含有ポリアミド、アミド結合を1つ以上有するアミド化合物と有機ジイソシアネート化合物の付加重合体、ポリビニルアルコール、ポリウレタン、酢酸セルロースコハク酸エステル、部分ケン化ポリ酢酸ビニル、カチオン型ピペラジン含有ポリアミドやこれらの誘導体といった水溶性溶剤に可溶なものを少なくとも一種類以上含有することによっても耐溶剤性を付与することができる。なかでも、フォトリソ法によるパターン形成において、水やアルコールでの現像が可能な三級窒素原子含有ポリアミドおよびアンモニウム塩型三級窒素原子含有ポリアミドが好ましい。
上記感光性樹脂層11,12には、上記樹脂の他に架橋性を有するモノマーまたはオリゴマー、光重合開始剤組成物、重合禁止剤を含んでいる。さらに他の添加剤、例えば熱重合防止剤、染料、顔料又は酸化防止剤を含んでも良い。
前記モノマー又はオリゴマーとしては、ジペンタエリスリトール、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、フタル酸、のエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールAやビスフェノールFのジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートのような多価グリシジルエーテルと(メタ)アクリル酸の付加反応物、アジピン酸のような多価カルボン酸とグリシジル(メタ)アクリレートとの反応付加物、プロピレンジアミンのような多価アミンとグリシジル(メタ)アクリレートの付加反応物など、多価不飽和化合物などが挙げられるが、これらに限定されるものでなく、また、これらの化合物を2種類以上混合して使用することも出来る。
また、前記光重合開始剤組成物としては、ベンゾフェノン類、ベンゾイン類、アセトフェノン類、ベンジル類、ベンゾインアルキルエーテル類、ベンジルアルキルケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類などが挙げられる。具体的には、ベンゾフェノン、クロロベンゾフェノン、ベンゾイン、アセトフェノン、ベンジル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、ベンジルジエチルケタール、ベンジルジイソプロピルケタール、アントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−メチルアントラキノン、2−アリルアントラキノン、2−クロロアントラキノン、チオキサントン、2−クロロチオキサントンなどを用いることができる。
また、重合禁止剤は凸型パターン13のエッジを鋭角にするために用られいる。この重合禁止剤としては、市販されているもの用いることができる。例えば、ベンゾフェノン類、ベンゾトリアゾール類、シアノアクリレート類が挙げられる。具体的には、p−ベンゾキノン、オキシベンゾン、4−tert−ブチル−4−メトキシ−ベンゾイルメタン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−ドデシロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、4−ベンジロキシ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ベンゾフェノンジメトキシ、1,4−ビス(4−ベンゾイル−3−ヒドロキシフェノキシ)−ブタンなどが挙げられるが、その中でもベンゾフェノン類が好ましい。
本実施形態の印刷用凸版における凸型パターン13について以下に説明する。なお、こ
れによる印刷用凸版の製造方法に限定されるものでは無い。
図2(a)は本発明に係る印刷用凸版の一実施形態であって、同一形状の凸型パターン13からなる断面図を示す。また、図2(b)は同じく印刷用凸版であって、異形の凸型パターン13が隣接する一実施形態の断面図を示す。
図2(a)の20や2図(b)の21に示すように、前記凸型パターンの断面形状は、基材10に接する側の下端部の幅a’、印刷インキに接する側の上端部a、隣接する凸型パターンとの下端部の間隔b、凸型パターンの上端部から下端部までの距離を高さdとした場合、
上端部の幅a<下端部の幅a’、0.5≦上端部の幅a/高さd≦1
下端部の幅a’+凸型パターンの間隔b≦150μm、且つ、高さd≦50μmであることを特徴とする順テーパー形状の印刷用凸版である。
発明者の鋭意努力の結果、上記に説明した順テーパー形状の凸型パターン13を形成することにより、凸型パターン上端部に供給した印刷インキの周辺へのに流れ込みを防ぎ、且つ、印刷時の印圧による座屈変形を受けることなく面内均一に保持でき、その結果として精度のよい転移ができることがわかった。
上記順テーパー形状の形成方法の一例として、感光性樹脂を用いたフォトリソ法による形成方法について以下に説明する。
有機EL素子の画素領域に対応して、被印刷基板の画素幅である25μmのストライプ状の開口と125μmの遮光部が形成された合成石英基材のクロムマスクを樹脂凸版パターンの原版とし、このマスクをプロキシミティ露光装置にセットしたものを用いて樹脂凸版を露光する。この際に、プロキシミティギャップは0μmで、露光量は400mJ/cm2が好ましく、露光の後、ライン搬送式スプレー現像機を用いて現像液である純水を噴射して現像し、順テーパー形状の凸型パターン形状を有する印刷用凸版を得ることができる。なお、順テーパー形状の形成方法としては上記方法に限定するものではない。
次に、本発明の印刷用凸版を用いて有機EL素子を作製する方法について以下に説明する。
図3は本発明に係るフレキソ印刷機の概要図を示している。また、図4は本発明の一実施形態である有機EL素子の概要を示す図である。これらの図3、4に基づき具体的に説明する。
まず、有機発光材料補充装置46から通液部47へ通過し、アニロックスロール43へ有機発光材料を補充し、アニロックスロール43に供給された有機発光材料のうち余分な有機発光材料は、ドクタリングされる等で除去される。有機発光材料補充装置には、滴下型の有機発光材料補充装置、ファウンテンロール、スリットコータ、ダイコータ、キャップコータなどのコータやそれらを組み合わせたものなどを用いることもできる。ドクタリングするにはドクターブレードの他にドクターロールといった公知の物を用いることもできる。また、アニロックスロール43は、クロム製やセラミックス製のものを用いることができる。また、印刷用凸版への有機発光材料供給体としてシリンダー状のアニロックスロールではなく、平版のアニロックス版を用いることも可能である。
印刷用凸版への有機発光材料供給体であるアニロックスロール43表面にドクターによって均一に保持された有機発光材料は、版胴42に取り付けられた印刷用凸版41の凸部のパターンに転移、供給される。そして、版胴42の回転に合わせて印刷用凸版41の凸部のパターンと基板45は接しながら相対的に移動し、有機発光材料は定盤44上にある被印刷基板45の所定位置に転移し被印刷基板に有機発光材料パターンを形成する。被印刷基板に有機発光材料パターンが設けられた後は、必要に応じてオーブンなどによる乾燥工程を設けることができる。
なお、印刷用凸版上にある有機発光材料を被印刷基板45に印刷するときにおいては、版胴42の回転にあわせ被印刷基板45が固定された定盤44を移動させる方式であってもよいし、図5上部の版胴42、印刷用凸版41、アニロックスロール43、有機発光材料補充装置からなる印刷ユニットを版胴42の回転に合わせ移動させる方式であってもよい。また、本発明の印刷用凸版は版胴43上に樹脂層を形成し、直接製版し、凸部のパターンを形成してもよい。
次に本発明における印刷用凸版のパターン配列について説明する。図2(a)の20に示すように、隣接する凸型パターン形状が同じ大きさでもよく、また図2(b)の21に示すような、隣接する凸型パターン形状が異形であってもよい。これにより、適応する基板形状や基板サイズによりパターンを選択することで高精細パターンの印刷を検討することができる。
次に、本発明によってパターン形成した印刷用凸版を用いた印刷物の製造方法の一例として、有機EL素子について説明する。なお、本発明はこれに限るものではない。図4に本発明の有機EL素子の説明断面図を示した。有機EL素子の駆動方法としては、パッシブマトリックス方式とアクティブマトリックス方式があるが、本発明の有機EL素子はパッシブマトリックス方式の有機EL素子、アクティブマトリックス方式の有機EL素子のどちらにも適用可能である。
パッシブマトリックス方式とはストライプ状の電極を直交させるように対向させ、その交点を発光させる方式であるのに対し、アクティブマトリックス方式は画素毎にトランジスタを形成した、いわゆる薄膜トランジスタ(TFT)基板を用いることにより、画素毎に独立して発光する方式である。
図4に示すように、本発明の有機EL素子は、基板60の上に、陽極としてストライプ状に第一電極59を有している。隔壁58は第一電極間に設けられ、第一電極端部のバリ等よるショートを防ぐことを目的として第一電極端部を覆うことがましい。
そして、本発明の有機EL素子は、第一電極59上であって、隔壁58で区画された領域(発光領域L、画素部)に有機発光層及び発光補助層からなる有機EL層を有している。電極間に挟まれる有機EL層は、有機発光層単独から構成されたものであってもよいし、有機発光層と発光補助層との積層構造から構成されたものでもよい。発光補助層としては正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層が挙げられる。図4では発光補助層である正孔輸送層55と有機発光層(51、52、53)との積層構造からなる構成を示している。第一電極59上に正孔輸送層55が設けられ、正孔輸送層55上に赤色(R)有機発光層51、緑色(G)有機発光層52、青色(B)有機発光層53がそれぞれ設けられている。
次に、有機発光媒体層上に陽極である第一電極59と対向するように陰極として第二電極54が配置される。パッシブマトリックス方式の場合、ストライプ状を有する第一電極と直交する形で第二電極はストライプ状に設けられる。アクティブマトリックス方式の場合、第二電極は、有機EL素子全面に形成される。更に、図示していないが、環境中の水分、酸素の第一電極、有機発光層、発光補助層、第二電極への侵入を防ぐために有効画素全面に対してガラスキャップ等による封止体が設けられ、接着剤を介して基板と貼りあわ
される。
本発明の有機EL素子は、少なくとも基板と、当該基板に支持されたパターン状の第一電極と、有機発光層と、第二電極を具備する。本発明の有機EL素子は、図4とは逆に、第一電極を陰極、第二電極を陽極とする構造であっても良い。また、ガラスキャップ等の封止体の代わりに有機発光媒体層や電極を外部の酸素や水分の浸入から保護するためにパッシベーション層や外部応力から保護する保護層、あるいはその両方の機能備えた封止基材を備えてもよい。
次に、有機EL素子の製造方法を説明する。
有機EL素子に用いられる基板60としては、絶縁性を有する基板であればいかなる基板も使用することができる。この基板側から光を取り出すボトムエミッション方式の有機EL素子とする場合には、基板として透明なものを使用する必要がある。
例えば、基板60としてはガラス基板や石英基板が使用できる。また、ポリプロピレン、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のプラスチックフィルムやシートであっても良い。これら、プラスチックフィルムやシートに、有機発光媒体層への水分の侵入を防ぐことを目的として、金属酸化物薄膜、金属弗化物薄膜、金属窒化物薄膜、金属酸窒化膜薄膜、あるいは高分子樹脂膜を積層したものを基板として利用してもよい。
また、これらの基板60は、あらかじめ加熱処理を行うことにより、基板内部や表面に吸着した水分を極力低減することがより好ましい。また、基板上に積層される材料に応じて、密着性を向上させるために、超音波洗浄処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、UVオゾン処理などの表面処理を施してから使用することが好ましい。
また、これらに薄膜トランジスタ(TFT)を形成して、アクティブマトリックス方式の有機EL素子用の基板とすることが可能である。
また、隔壁形成材料が感光性材料の場合、形成材料溶液をスリットコート法やスピンコート法により全面コーティングしたあと、露光、現像といったフォトリソ法によりパターニングがおこなわれる。スピンコート法の場合、隔壁の高さは、スピンコートするときの回転数等の条件でコントロールできるが、1回のコーティングでは限界の高さがあり、それ以上高くするときは複数回スピンコートを繰り返す手法を用いる。
感光性材料を用いてフォトリソ法により隔壁を形成する場合、その形状は露光条件や現像条件により制御可能である。例えば、ネガ型の感光性樹脂を塗布し、露光・現像した後、ポストベークして、隔壁を得るときに、隔壁端部の形状を順テーパー形状としたい場合には、この現像条件である現像液の種類、濃度、温度、あるいは現像時間を制御すればよい。現像条件を穏やかなものとすれば、隔壁端部は順テーパー形状となり、現像条件を過酷にすれば、隔壁端部は逆テーパー形状となる。
また、隔壁形成材料がSiO2、TiO2の場合、スパッタリング法、CVD法といった乾式成膜法で形成可能である。この場合、隔壁のパターニングはマスクやフォトリソ法により行うことができる。
次に、有機発光層及び発光補助層からなる有機EL層を形成する。電極間に挟まれる有機EL層としては、有機発光層単独から構成されたものでもよいし、有機発光層と正孔輸
送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層といった発光を補助するための発光補助層との積層構造としてもよい。なお、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層は必要に応じて適宜選択される。
そして、本発明は有機発光層や正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層、電荷発生層といった発光補助層からなる有機EL層のうち少なくとも1層を、有機EL層材料を溶媒に溶解、または分散させた有機発光材料を用い、基材上に樹脂からなる凸型パターンを有する印刷用凸版を具備するフレキソ印刷機により、前記第一電極の上方に印刷して形成する際に適用することができる。以降、本発明において、有機発光材料を溶媒に溶解、または分散させた有機発光有機発光材料を用いた場合について示す。
有機発光層は電流を流すことにより発光する層である。有機発光層の形成する有機発光材料としては、9,10−ジアリールアントラセン誘導体、ピレン、コロネン、ペリレン、ルブレン、1,1,4,4−テトラフェニルブタジエン、トリス(8−キノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノラート)アルミニウム錯体、ビス(8−キノラート)亜鉛錯体、トリス(4−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−5−シアノ−8−キノラート)アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−シアノー8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、トリス(8−キノリノラート)スカンジウム錯体、ビス[8−(パラ−トシル)アミノキノリン]亜鉛錯体及びカドミウム錯体、1,2,3,4−テトラフェニルシクロペンタジエン、ポリ−2,5−ジヘプチルオキシ−パラ−フェニレンビニレンなどの低分子系発光材料が使用できる。
また、クマリン系蛍光体、ペリレン系蛍光体、ピラン系蛍光体、アンスロン系蛍光体、ポリフィリン系蛍光体、キナクリドン系蛍光体、N,N’−ジアルキル置換キナクリドン系蛍光体、ナフタルイミド系蛍光体、N,N’−ジアリール置換ピロロピロール系蛍光体等、Ir錯体等の燐光性発光体などの低分子系発光材料を、高分子中に分散させたものが使用できる。高分子としてはポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾール等が使用できる。
また、ポリ(2−デシルオキシ−1,4−フェニレン)(DO−PPP)やポリ[2,5−ビス−[2−(N,N,N−トリエチルアンモニウム)エトキシ]−1,4−フェニル−アルト−1,4−フェニルレン]ジブロマイドなどのPPP誘導体、ポリ[2−(2’−エチルヘキシルオキシ)−5−メトキシ−1,4−フェニレンビニレン](MEHPPV)、ポリ[5−メトキシ−(2−プロパノキシサルフォニド)−1,4−フェニレンビニレン](MPS−PPV)、ポリ[2,5−ビス−(ヘキシルオキシ)−1,4−フェニレン−(1−シアノビニレン)](CN−PPV)、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン)(PDAF)、ポリスピロフルオレンなどの高分子発光材料であってもよい。
PPV前駆体、PPP前駆体などの高分子前駆体が挙げられる。また、その他既存の発光材料を用いることもできる。
正孔輸送層を形成する正孔輸送材料としては、銅フタロシアニン、テトラ(t−ブチル)銅フタロシアニン等の金属フタロシアニン類及び無金属フタロシアニン類、キナクリドン化合物、1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン、N,N’−ジ(1−ナフチル)−N,N’−ジフェニル−1,1’−ビフェニル−4,4’−ジアミン等の芳香族アミン系低分子正孔注入輸送材料や、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリビニルカルバゾール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合物などの高分子正孔輸送材料、チオフェンオリゴマー材料、その他既存の正孔輸送材料の中から選ぶことができる。
また、電子輸送層を形成する電子輸送材料としては、2−(4−ビフィニルイル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール、2,5−ビス(1−ナフチル)−1,3,4−オキサジアゾール、オキサジアゾール誘導体やビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリノラート)ベリリウム錯体、トリアゾール化合物等を用いることができる。
有機発光材料を溶解または分散する溶媒としては、トルエン、キシレン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、2−メチル−(t−ブチル)ベンゼン、1,2,3,4−テトラメチルベンゼン、ペンチルベンゼン、1,3,5−トリエチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、1,3,5−トリ−イソプロピルベンゼン等を単独又は混合して用いることができる。また、有機発光材料には、必要に応じて、界面活性剤、酸化防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤等が添加されてもよい。
正孔輸送材料、電子輸送材料を溶解または分散させる溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル、水等の単独またはこれらの混合溶剤などが挙げられる。特に、正孔輸送材料を有機発光材料化する場合には水またはアルコール類が好適である。
有機発光層や発光補助層は湿式成膜法により形成される。なお、これらの層が積層構造から構成される場合には、その各層の全てを湿式成膜法により形成する必要はない。湿式成膜法としては、スピンコート法、ダイコート法、ディップコート法、吐出コート法、プレコート法ロールコート法、バーコート法等の塗布法と、凸版印刷法、インクジェット印刷法、オフセット印刷法、グラビア印刷法等の印刷法が挙げられる。特に、RGB三色の有機発光層をパターン形成する場合、印刷法によって画素部に選択的に形成することができ、カラー表示のできる有機EL素子を製造することが可能となる。有機発光媒体層の膜厚は、単層又は積層により形成する場合においても1000nm以下であり、好ましくは50nm〜150nmである。
繰り返しになるが、本発明は有機発光材料を用い凸版印刷法により有機発光層形成する場合だけでなく、正孔輸送有機発光材料や電子輸送有機発光材料を用い凸版印刷法により正孔輸送層や電子輸送層といった発光補助層を形成する場合にも使用することができる。
次に、第二電極を形成する。第二電極を陰極とした場合その材料としては電子注入効率の高い物質を用いる。具体的にはMg、Al、Yb等の金属単体を用いたり、発光媒体と接する界面にLiや酸化Li、LiF等の化合物を1nm程度挟んで、安定性・導電性の高いAlやCuを積層して用いる。または電子注入効率と安定性を両立させるため、低仕事関数なLi、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb等の金属1種以上と、安定なAg、Al、Cu等の金属元素との合金系が用いられる。具体的にはMgAg、AlLi,CuLi等の合金が使用できる。また、トップエミッション方式の有機EL素子とする場合は、陰極は透明性を有する必要があり、例えば、これら金属とITO等の透明導電層の組み合わせによる透明化が可能となる。
第二電極の形成方法は、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等の乾式成膜法を用いることができる。また、第二電極をパターンとする必要がある場合には、マスク等によりパターニングすることができる。第二電極の厚さは10nm〜1000nmが好ましい。なお、本発明では第一の電極を陰極、第二の電極を陽極とすることも可能である。
有機EL素子としては電極間に有機発光層を挟み、電流を流すことで発光させることが可能であるが、有機発光材料や発光補助層形成材料、電極形成材料の一部は大気中の水分や酸素によって容易に劣化してしまうため通常は外部と遮断するための封止体を設ける。
封止体は、例えば第一電極、有機発光層、発光補助層、第二電極が形成された基板に対して、凹部を有するガラスキャップ、金属キャップを用いて、第一電極、有機発光媒体層、第二電極上空に凹部があたるようにして、その周辺部についてキャップと基板を接着剤を介して接着させることにより封止がおこなわれる。
また、封止体は、例えば第一電極、有機発光層、発光補助層、第二電極が形成された基板に対して、封止材上に樹脂層を設け、該樹脂層により封止材と基板を貼りあわせることによりおこなうことも可能である。
このとき封止材としては、水分や酸素の透過性が低い基材である必要がある。また、材料の一例として、アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素等のセラミックス、無アルカリガラス、アルカリガラス等のガラス、石英、アルミニウムやステンレスなどの金属箔、耐湿性フィルムなどを挙げることができる。耐湿性フィルムの例として、プラスチック基材の両面にSiOxをCVD法で形成したフィルムや、透過性の小さいフィルムと吸水性のあるフィルムまたは吸水剤を塗布した重合体フィルムなどがあり、耐湿性フィルムの水蒸気透過率は、10−6g/m2/day以下であることが好ましい。
樹脂層としては、エポキシ系樹脂、アクリル系樹脂、シリコーン樹脂などからなる光硬化型接着性樹脂、熱硬化型接着性樹脂、2液硬化型接着性樹脂や、エチレンエチルアクリレート(EA)ポリマー等のアクリル系樹脂、エチレンビニルアセテート(EVA)等のビニル系樹脂、ポリアミド、合成ゴム等の熱可塑性樹脂や、ポリエチレンやポリプロピレンの酸変性物などの熱可塑性接着性樹脂を挙げることができる。樹脂層を封止材の上に形成する方法の一例として、溶剤溶液法、押出ラミ法、溶融・ホットメルト法、カレンダー法、ノズル塗布法、スクリーン印刷法、真空ラミネート法、熱ロールラミネート法などを挙げることができる。必要に応じて吸湿性や吸酸素性を有する材料を含有させることもできる。封止材上に形成する樹脂層の厚みは、封止する有機EL素子の大きさや形状により任意に決定されるが、5〜500μm程度が望ましい。
第一電極、有機発光層、発光補助層、第二電極が形成された基板と封止体の貼り合わせは封止室でおこなわれる。封止体を、封止材と樹脂層の2層構造とし、樹脂層に熱可塑性樹脂を使用した場合は、加熱したロールで圧着のみ行うことが好ましい。熱硬化型接着樹脂を使用した場合は、加熱したロールで圧着した後、さらに硬化温度で加熱硬化を行うことが好ましい。光硬化性接着樹脂を使用した場合は、ロールで圧着した後、さらに光を照射することで硬化を行うことができる。なお、ここでは封止材上に樹脂層を形成したが、基板上に樹脂層を形成して封止材と貼りあわせることも可能である。
封止体を用いて封止を行う前やその代わりに、例えばパッシベーション膜として、CVD法を用いて、窒化珪素膜を150nm成膜するなど、無機薄膜による封止体とすることも可能であり、また、これらを組み合わせることも可能である。
以下に、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。
<実施例1>
(被印刷基板の作製)
被印刷基板として、支持体上に設けられたスイッチング素子として機能する薄膜トランジスタと、その上方に形成された平坦化層と、平坦化層上にコンタクトホールによって前記薄膜トランジスタと導通が図られている画素電極とを備えたアクティブマトリクス基板を用いた。
この基板上に設けられている画素電極の端部を被覆し画素を区画するような形状で隔壁を形成した。隔壁の形成は、日本ゼオン社製ポジレジストZWD6216−6をスピンコータにて基板全面に厚み2μmで形成した後、フォトリソグラフィー法によって隔壁を形成した。
画素電極上にスピンコート法により正孔輸送層としてポリ−(3,4)−エチレンジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)1.5wt%水溶液を100nm膜厚で成膜した。さらにこの成膜されたPEDOT/PSS薄膜を減圧下100℃で1時間乾燥することで、被印刷基板を作製した。
(有機発光層形成用有機発光材料の調製)
赤色、緑色、青色(RGB)の3色からなる以下の有機発光材料を調製した。赤色発光インク(R):ポリフルオレン系誘導体のトルエン1質量%溶液(住友化学社製赤色発光材料)緑色発光インク(G):ポリフルオレン系誘導体のトルエン1質量%溶液(住友化学社製緑色発光材料)青色発光インク(B):ポリフルオレン系誘導体のトルエン1質量%溶液(住友化学社製青色発光材料)。
(印刷用凸版の作製)
厚さ250μm幅330mmのクロムメッキ鋼板上に、ポリエステルウレタン系接着剤に0.3μmの酸化チタンを添加混合し、バーコーターを用いて均一に250mm幅となるように塗布し、直ちに130℃の熱風乾燥機の中に入れ、3分間乾燥し、膜厚約10μmの積層体を得た。これは鋼板と感光性樹脂層を積層する際に、密着性を高めるために用いた。蛍光ランプ下で観察した所、外観は白色を呈していた。これは白色顔料である酸化チタンによるものである。この時、JIS K6854−1に基づいて90°引張強度を測定したところ、90°引張強度は15N/cmであった。
親水性のポリマーとしてポリアミド、架橋性を有するモノマーとしてトリメチロールプロパントリグリシジルエーテルアクリレート、トリメチロールプロパン、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタールを用いた感光性樹脂を、50μmとなるように溶融塗工し、凸版のもととなる感光性樹脂層を形成した。
この感光性樹脂層上に、有機エレクトロルミネッセンス表示素子の画素領域に対応した画素幅25μmのストライプ状の開口と、125μmの遮光部が形成されたマスクをセットし、プロキシミティ露光装置を用いて露光した。プロキシミティギャップは0μmで、露光量は400mJ/cm2であった。露光の後、ライン搬送式スプレー現像機を用いて現像液である純水を噴射し現像パターンを得た。現像後、熱風乾燥を行い、後露光後、印刷用凸版を得た。なお、有機ELディスプレイの作製のために、赤、青、緑の各色用の印刷用凸版を同様にして作製した。
(有機EL素子の作製)
前述にて作成した印刷用凸版を枚葉式のフレキソ印刷機のシリンダーに固定した。これと前記有機発光材料を用いて、被印刷基板に対し印刷を各色についておこなった。有機発光層は、赤色有機発光層、緑色有機発光層、青色有機発光層がストライプ状に並ぶように
印刷した。各色について印刷をおこなった後、オーブン内にて130℃で1時間乾燥を行った。形成されたパターン各色の平均膜厚は102nmだった。乾燥の後、印刷により形成した有機発光層上にカルシウムを10nm成膜し、さらにその上に銀を300nm真空蒸着し、最後にガラスキャップを用い封止をおこない本発明の有機EL素子を作製した。
<比較例1>
(被印刷基板の作製)
実施例1と同様にして被印刷基板を作製した。
(有機発光層形成用有機発光材料の調製)
実施例1と同様にして有機発光層形成用有機発光材料を調整した。
(印刷用凸版の作製)
プロキシミティギャップを100μmにした以外は、実施例1と同様にして印刷用凸版を作製した。
(有機EL素子の作製)
実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
<比較例2>
(被印刷基板の作製)
実施例1と同様にして被印刷基板を作製した。
(有機発光層形成用有機発光材料の調製)
実施例1と同様にして有機発光層形成用有機発光材料を調製した。
(印刷用凸版の作製)
実施例1と同様にして印刷用凸版を作製した。但し、感光性樹脂層を60μm、80μm、100μmの膜厚で3種類作製した。
(有機EL素子の作製)
上記の3種類の印刷用凸版を用いて、それぞれ実施例1と同様にして有機EL素子を作製した。
(評価)
実施例1及び比較例1,2で得られた印刷用凸版の形状、印刷時のインキの挙動について、また、有機EL素子の発光状態について観察し評価した。評価結果を以下の表1に示す。
(比較結果)
実施例1の本発明品は、順テーパーの凸型パターンが形成された印刷用凸版のため、フレキソ印刷機によるインキ(有機発光材料)の流れ込みや、それに起因する抜けや欠けの印刷転写不良は観察されなかった。また、有機EL素子の発光状態も、発光ムラなどの特異な異常が無いことを確認した。一方、比較例1及び2で得られた印刷用凸版はいずれも逆テーパーの凸型パターンが形成された印刷用凸版のため、フレキソ印刷機によるインキ(有機発光材料)の流れ込みや、座屈変形によると推測される抜けや欠けの印刷転写不良が観察された。また、有機EL素子の発光状態においても発光ムラが観察された。