以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。なお、本発明はこれに限るものではない。
まず、本発明に係る印刷用凸版の製造方法について説明する。
図3に本発明の前提となる印刷用凸版の一例の説明断面図を示した。図3(a)、図3(b)ともに基材200上に反射防止層202、樹脂層により形成される複数の凸部からなる凸部パターン領域201が形成されている。図3(a)では、凸部パターン領域201は、複数の凸部が連続して基材200上に形成されることで構成されている。図3(b)では、凸部パターン領域201は、複数の凸部がそれぞれ切り離されて独立して基材200上に形成されることで構成されている。本発明では、図3(a)、図3(b)どちらの印刷用凸版を用いても構わない。なお、必要に応じて凸部パターン領域201と基材200との間に紫外線反射防止効果、耐水性、耐油性、発水性、接着性などを付与するための層を加えても良い。
本発明の印刷用凸版に用いられる版材において、凸部パターン領域201が形成される基材200としては、印刷に対する機械的強度を有していれば良く、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリビニルアルコールなどの公知の合成樹脂、鉄や銅、アルミニウムといった公知の金属、またはそれらの積層体を用いることができる。
なお、本発明に使用する印刷用凸版を構成する基材200としては、高い寸法安定性を保持するものが望ましい。従って、基材200として用いられる材料としては金属が好適に使用される。基材200として用いられる金属としては鉄、アルミニウム、銅、亜鉛、ニッケル、チタン、クロム、金、銀やそれらの合金、積層体などが挙げられるが、特に、加工性、経済性から鉄を主成分とするステンレス基材、スチール基材やアルミ基材を好適に用いることができる。
本発明における樹脂層による凸部パターン領域201の凸部は、ポジ型感光性樹脂を用いたフォトリソグラフィ法、ネガ型感光性樹脂を用いたフォトリソグラフィ法、射出成型、凸版印刷法、凹版印刷法、平版印刷法、孔版印刷法、レーザーアブレーション法等の種々のパターン成型法を用いることができるが、パターンの高精細さの観点から、感光性樹脂を用いたフォトリソグラフィー法が望ましく、また、要求精度の凸版を形成可能なネガ型感光性樹脂を用いたフォトリソグラフィー法が最も望ましい。
感光光性樹脂を用いたフォトリソグラフィ法を凸部パターン形成法として適用する場合、基材200、反射防止層202、感光性樹脂層が順次積層されている板状感光性樹脂積層体から凸版の凸部を形成することが最も望ましい。感光性樹脂層の成型方法は、射出成型法、突出成型法、ラミネート法、バーコート法、スリットコート法、カンマコート法などの公知の方法を用いることができる。
図4に本発明における板状感光性樹脂積層体の成型方法を示した。まず基材200にバーコート法、スリットコート法、スプレーコート法、フレキソ印刷、グラビア印刷などのウェットコーティング法もしくはスパッタ法、真空蒸着法、CVD法などのドライコーティング法により反射防止層202を成膜し、積層体203とする(図4(a)、(b))。次に積層体203に感光性樹脂層201´を射出成型法、突出成型法、ラミネート法、バーコート法、スリットコート法、カンマコート法などの公知の方法で成膜し積層体204とする(図4(c))。この積層体204に対し、公知の露光、現像の工程を経て、目的とするパターン形成用凸版を形成する(図4(d))。
凸部パターン領域201の凸部を形成する樹脂の一成分となるポリマーは、ニトリルゴム、シリコーンゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、アクリロニトリルゴム、エチレンプロピレンゴム、ウレタンゴムなどのゴムの他に、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエーテルスルホン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリビニルアルコールなどの合成樹脂やそれらの共重合体、セルロースなどの天然高分子などから一種類以上を選択することができるが、有機発光材料などといった塗工液を塗布する場合、有機溶剤に対する耐溶剤性の観点から、フッ素系エラストマーやポリ四フッ化エチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリ六フッ化ビニリデンやそれらの共重合体といったフッ素系樹脂が望ましい。
また、凸部を形成する樹脂の一成分となるポリマーとして、ポリアミド、ポリウレタン、ポリビニルアルコール、酢酸セルロースコハク酸エステル、部分ケン化ポリ酢酸ビニル、カチオン型ピペラジン含有ポリアミドやこれらの誘導体といった水溶性溶剤に可溶なものを一種類以上含有することにより水を用いた現像が可能となるため、これらの内から一つ以上を選択し用いることが最も望ましい。
露光光の照射によってラジカルを発生させる光重合開始剤としては、この用途に適するものであれば特に制限は無く、各種文献に報告されているものを用いることができる。前記光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタノール、2−クロロチオキサントン、2−エチルアントラキノン、ジエチルチオキサントン(カヤキュアDETX:日本化薬製)、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(イルガキュア184:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン(イルガキュア369:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン(イルガキュア651:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(イルガキュア819:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン(イルガキュア907:チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製)又はビイミダゾール化合物などがあり、これらに限定されるものではないが、本発明では露光光源に200〜450nmの波長領域に輝線スペクトルを持つものを用いるため、この範囲の光の照射によってラジカルを発生させるものが好ましい。また、これらの光重合開始剤は、必要に応じて適宜に複数のものを混合して使用しても良い。
感光性樹脂層は、上記のラジカル重合性モノマー及び光重合開始剤を主成分とするものであるが、これらのほかにバインダー樹脂や樹脂層を基材200の上に塗布する際に塗布しやすくするために可塑剤を添加することも可能であるし、また、適切な溶剤を加えてもよい。
反射抑制層202としては、測定装置の一般的な観察光である波長領域が400nmから800nm付近の白色光に対する反射抑制効果があれば良く、光の拡散・乱反射による方法と光吸収による方法のどちらを用いても良い。反射抑制層202の材料としては、一般的な感光性樹脂や熱硬化性樹脂等が用いられ、これらの樹脂に光を吸収する材料や光を拡散する材料、例えばカーボンブラックや酸化チタンを分散したものを用いることができる。
次に、本発明の印刷用凸版の形状について述べる。
凸版印刷法では、インキは凸版上に均一になるように供給されているが、凸版上のインキは、凸版のパターン中央部より、凸版のパターン外周部の方が乾燥し易い。そのため、凸版のパターン外周部上のインキ粘度が、凸版のパターン中央部のインキ粘度に比べて高くなり、被印刷基板へ転写された印刷パターン外周部で膜厚が厚くなる傾向がある(厚膜化)。そのため、有機発光層の膜厚が薄い印刷パターン中央部と該膜厚が厚い外周部との輝度に差が生じるといった問題がある。なお、凸版のパターン中央部とは、ストライプ状凸部のうち、凸部と被印刷基板とが接触する部分の中央の領域をいい、凸版のパターン外周部とは、ストライプ状凸部のうち、凸部と被印刷基板とが接触する部分の外周の領域をいう。ここで、ストライプ形状またはストライプ状とは直線状の平面形状やそのような状態をいい、少なくとも対向する4つの長辺と、対向する4つの短辺とで囲まれる六角形や、少なくとも対向する4つの長辺と一つの短辺を持つ三角形などの形状やそのような状態を含む。また、長辺や短辺自体は曲線であっても不連続な線分であっても良い。
ここで、有機発光層の膜厚、被印刷基板へ転写されるインキの量、凸部上のインキの量、凸部の幅の関係について述べると、有機発光層の膜厚は転写されるインキの量に対して正比例し、転写されるインキの量は凸部上のインキの量に対して正比例し、凸部上のインキの量は凸部の幅に対して正比例する。即ち、有機発光層の膜厚は凸部の幅に対し正比例する。なお、ここで凸部の幅とは、ストライプ状の凸部の被印刷基板と接する面のうち、印刷方向と直交する方向についての長さのことをいう。
本発明では、版の凸部パターン外周部の凸部幅を中央部より細幅化したストライプパターンを有する印刷用凸版を用いることにより、従来印刷法で発生する被印刷基板における印刷パターン外周部の厚膜化を軽減させることができる。これより有機発光層の膜厚の均一性が向上し、発光輝度ムラのない有機エレクトロルミネッセンス素子を作製することができる。
上記の様に、有機発光層の膜厚は凸部の幅に対し正比例するため、凸部の幅w(単位:μm)と有機発光層の膜厚t(単位:μm)の間にはt=α・wのような比例関係が成り立ち、αは用いるインキの固形分濃度、インキの溶媒の種類、インキの粘度、印圧、形成する画素幅などの要素によって変化する。本発明ではこれらの要素と幅wを調整し、所望の有機発光層の膜厚tが印刷開始側と印刷終了側で均一になるように、凸部の幅wを細幅化する。そのため、本発明の印刷用凸版は、凸部の幅がパターン中央部からパターン外周部に向かって細幅化するストライプパターンを有する図5および図6に示すような形状となっている。
本発明の一実施形態である図5および図6に示す印刷用凸版は、凸部の幅がパターン中央部からパターン外周部に向かって一様に細幅化するストライプパターンを有し、凸部幅が細幅化する割合は有機発光層が印刷開始側から印刷終了側に亘って均一な厚さで形成されるように調整され、用いるインキの固形分濃度、インキの溶媒の種類、インキの粘度、印圧、及び形成する画素幅などの要素によって変化させることが望ましい。そのため、凸部パターン中央部から凸部パターン外周部への細幅化の割合は、一定割合であっても、一定割合でなくても、凸部の幅がパターン中央部からパターン外周部に向かって細幅化し、有機発光層の膜厚が所望の厚さに形成できればよい。
具体的な凸部形状の例としては、細幅化の割合が一定割合である場合とは、凸部の幅が一次関数的に減少していく場合であり、凸部のストライプ形状は図6の(a)及び(b)のようなパターン中心点の版幅を最大とした、六角形、等のストライプ形状の四つの長辺が直線または曲線である場合が挙げられ、4つの長辺の長さが等しい形状でも、4つの長辺のうち一方の長さが他方よりも短い形状でも良い。このような形状の凸版を用いることで、従来の凸版では有機発光層の膜厚が一定の割合で厚膜化する場合でも均一な膜厚を形成することができる。
また、細幅化の割合が凸部パターン中央部から外周部へ進むにつれて変化する場合とは、凸部の幅が二次関数や指数関数、対数関数的に減少する場合であり、凸部のストライプ形状は図6の(b)のようにストライプ形状の長辺が曲線である形状等が挙げられ、一方は直線で他方は曲線であっても、両方が曲線であっても良い。このような形状の凸版を用いることで、従来の凸版では有機発光層の膜厚が厚膜化し、その厚膜化の割合が一定でない場合でも、均一な膜厚を形成することができる。さらに、ストライプ形状が不連続な線分で構成され、凸部の幅が不連続に細幅化しても良いし、二つの長辺のうち一方が直線で他方が曲線でも良いし、以上の形状のストライプ形状の凸部を複数組合せて本発明の印刷用凸版としても良い。以上の形状の版を用いることで、均一な膜厚の有機発光層を形成することができる。
なお、ストライプ状の凸部の途中から印刷開始又は印刷終了しても良いとするため、このような場合の印刷開始側及び/又は印刷終了側の前後のストライプ状の凸部は、印刷開始側から印刷終了側までの範囲が上記の何れかの形状であれば、どのような形状でも良い。
凸部の幅wについては、wが画素幅と比較して小さ過ぎる場合には、インキのレベリングが不十分となり、均一な膜を形成できない。一方、wが画素幅と比較して大き過ぎる場合には、被印刷基板の隣接画素へインキが流れ込み、異なる発光画素の混色が発生する。よって、画素の幅をL(単位:μm)、隔壁の幅をR(単位:μm)として、少なくとも0<w<L+2・Rの範囲においてwを使用する。ただし、画素及び隔壁の幅とは、印刷方向と直交する画素及び隔壁の辺の長さをいう。w≧L+2・Rの場合、wがLに対して大きすぎ、隣接する他色の発光画素にまでインキを塗布してしまう。異なる発光色を有する有機発光材料を溶媒に溶解または分散させた有機発光インキを用いて画素ごとに塗り分けをおこなう場合、隣接する画素との混色の発生を防止するためにw<L+2・Rであることが望ましい。
よって、実際の画素の幅と隔壁の幅を考慮した具体的なwの範囲としては、15μm≦w≦75μmであることが望ましく、上記の様に印刷開始側から印刷終了側に亘って細幅化させるストライプ状凸部の幅はこの範囲内にあることが望ましい。
次に、本発明の印刷用凸版を用いた凸版印刷装置について説明する。
有機発光層の形成に用いる印刷装置は、平板に印刷する方式の凸版印刷機であれば使用可能であるが、以下に示すような印刷装置が望ましい。図2に本発明でのインターレイヤ5および有機発光層6の形成に用いる印刷装置の模式図を示した。凸版印刷装置は、インキタンクとインキチャンバーとアニロックスロール13と本発明の樹脂凸版12を取り付けした版胴11を有している。インキタンクには、溶剤で希釈された有機発光インキが収容されており、インキチャンバーにはインキタンクより有機発光インキがアニロックスロール上にインキ供給部を介して送り込まれるようになっており、インキ供給部はアニロックスロール上にインキを直接押出て供給するダイコーターや、インキが溜まったインキ溜りにアニロックスロールを浸漬させてインキを供給するものであってもよい。アニロックスロール13は、インキチャンバーのインキ供給部及び版胴11に接して回転するようになっており、アニロックスロール上のインキ量を均一にするためのドクターブレードやドクターロールを有していてもよい。
アニロックスロール13の回転にともない、インキチャンバーから供給された有機発光インキはアニロックスロール13表面に均一に保持されたあと、版胴11に取り付けされた樹脂凸版12の凸部パターン領域201の凸部に均一な膜厚で転移する。さらに、被印刷基板10(TFT基板)は摺動可能な基板固定台上に固定され樹脂凸版12の凸部パターン領域201と被印刷基板のパターンの位置調整機構により、位置調整しながら印刷開始位置まで移動して、版胴11の回転に合わせて樹脂凸版12の凸部パターン領域201が被印刷基板10に接しながらさらに移動し、ステージ上にある被印刷基板10の所定位置(画素のライン)にパターニングして有機発光インキを転移する。その際、版胴11の転動方向と凸部パターン領域201のストライプ方向、また、画素の長辺方向は、平行であっても直行であっても構わない。
次に、本発明の印刷用凸版を用いた凸版印刷法により作製される有機EL素子について説明する。
図1に本発明の印刷用凸版を用いて作製される有機EL素子の断面模式図を示した。図1の有機EL素子においては基板1上に、画素電極2、正孔輸送層4、インターレイヤ5、有機発光層6、対向電極7を備える。画素電極2、対向電極7間には有機発光層6が設けられ、画素電極2と有機発光層5の間に正孔輸送層4とインターレイヤ5が設けられる。また、画素電極2パターン間には、隔壁3が設けられる。基板1上に、画素電極2、隔壁3、正孔輸送層4、インターレイヤ5、有機発光層6、対向電極7が設けられた有機EL構成体は、電極や有機発光層を外部の環境から保護するための封止体8が設けられる。封止体8は、封止キャップ8a、接着剤8b、乾燥剤8cを備える。
また、本発明の印刷用凸版を用いて作製される有機EL素子にあっては、画素電極2と対向電極7の間には有機発光層6の他に発光補助層を備える。発光補助層としては、図1に示した正孔輸送層やインターレイヤの他に、電子注入層、電子輸送層等を挙げることができる。これらの発光補助層は適宜選択されるが、複数選択してもよい。正孔輸送層4、インターレイヤ5は画素電極2と有機発光層6の間に設けられる。電子注入層、電子輸送層は有機発光層6、対向電極7間に設けられる。また、本発明の有機EL素子にあっては、画素電極2、対向電極7、有機発光層6、正孔輸送層4、インターレイヤ5は単層構造ではなく、多層構造としてもよい。
以上の有機EL素子の構成のうち、本発明の印刷用凸版は少なくとも有機発光層6の形成に用いられるが、印刷法により形成することができるものであれば上記のいずれの層も本発明により形成することができる。
正孔輸送層4と有機発光層6の間にバッファー層として形成されるインターレイヤ5は、正孔の輸送性を高める効果と、対向電極7を陰極として用いた場合に対向電極側から移動してきた電子をブロックする効果が期待される層であり、実際にインターレイヤ5を設けることで、有機EL素子の効率や寿命が向上することが確認されている。
なお本発明の有機EL素子にあっては、パッシブマトリックス方式の有機EL素子、アクティブマトリックス方式の有機EL素子のどちらにも適用可能である。パッシブマトリックス方式とはストライプ状の画素電極及び対向電極を直交させるように対向させ、その交点を発光させる方式であるのに対し、アクティブマトリックス方式は画素毎に薄膜トランジスタ(TFT)を形成した、いわゆるTFT基板を用いることにより、画素毎に独立して発光する方式である。アクティブマトリックス方式有機EL素子の場合、画素電極、対向電極の一方の電極はTFT基板上に画素毎に設けられ、もう一方の電極は画素全体に設けられる。
また、本発明の有機EL素子にあっては、発光した光を基板側から取り出すボトムエミッション方式の有機EL素子、発光した光を基板と反対側から取り出すトップエミッション方式の有機EL素子のどちらでもかまわない。ボトムエミッション方式の有機EL素子とする場合には、基板及び画素電極が光透過性を有する必要があり、トップエミッション方式の有機EL素子とするためには、対向電極及び封止体が光透過性を有する必要がある。
次に、図1に示した有機EL素子を本発明の図2に示す樹脂凸版12を用いて製造する方法について説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明にかかる基板1としては、絶縁性を有する基板であればいかなる基板も使用することができる。この基板側から光を出射するボトムエミッション素子の場合には、基板として透明なものを使用する必要がある。
例えば、このような基板としては、ガラス基板や石英基板が使用できる。また、ポリプロピレン、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリアリレート、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のプラスチックフィルムやシートであっても良い。これら、プラスチックフィルムやシートに、金属酸化物薄膜、金属フッ化物薄膜、金属窒化物薄膜、金属酸窒化膜薄膜、あるいは高分子樹脂膜を積層したものを基板として利用してもよい。
前記金属酸化物薄膜としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等が例示できる。前記金属フッ化物薄膜としては、フッ化アルミニウム、フッ化マグネシウム等が例示できる。金属窒化物薄膜としては、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等が例示できる。また、前記高分子樹脂膜としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂等が例示できる。また、トップエミッション素子の場合には、不透明な基板を使用することもできる。
また、これらの基板は、あらかじめ加熱処理を行うことにより、基板内部や表面に吸着した水分を極力低減することがより好ましい。また、基板上に積層される材料に応じて、密着性を向上させるために、超音波洗浄処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、UVオゾン処理などの表面処理を施してから使用することが好ましい。
また、前記基板上に薄膜トランジスタ(TFT)を形成して、駆動用基板としても良い。TFTの材料としては、ポリチオフェンやポリアニリン、銅フタロシアニンやペリレン誘導体等の材料を用いてもよく、また、アモルファスシリコンやポリシリコンを用いてもよい。また、前記基板のどちらかの面にカラーフィルタ層や光散乱層、光偏光層等を基板に設けてもよい。
次に、この基板1上に画素電極2を形成する。画素電極を陽極として用いる場合、形成材料としてはITO(インジウムスズ複合酸化物)、IZO(インジウム亜鉛複合酸化物)、亜鉛アルミニウム複合酸化物などの金属複合酸化物が利用できる。被膜形成方法としてはドライコーティング方式が利用できる。例えば、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等である。そして、真空製膜された金属酸化物被膜にフォトレジストを塗布して露光・現像し、ウェットエッチング又はドライエッチングして、パターン状に加工することができる。パッシブマトリックス方式の有機EL素子の場合には、画素電極はストライプ状に形成される。アクティブマトリックス方式の有機EL素子の場合には、画素電極はドット状にパターン形成される。
画素電極2を形成後、隣接する画素電極パターンの間に感光性材料を用いて、フォトリソグラフィ法により隔壁3が形成される。さらに詳しくは、感光性樹脂組成物を基板に塗布する工程と、パターン露光、現像、焼成して隔壁パターンを形成する工程を少なくとも有する。
隔壁3を形成する感光性材料としてはポジ型レジスト、ネガ型レジストのどちらであってもよく、市販のもので構わないが、絶縁性を有する必要がある。隔壁が十分な絶縁性を有さない場合には隔壁を通じて隣り合う画素電極に電流が流れてしまい表示不良が発生してしまう。また、TFTの誤作動により適正な表示ができないことがある。感光性材料としては、具体的にはポリイミド系、アクリル樹脂系、ノボラック樹脂系、フルオレン系といったものが挙げられるがこれに限定するものではない。また、有機ELディスプレイパネルの表示品位を上げる目的で、光遮光性の材料を感光性材料に含有させても良い。
隔壁3を形成する感光性樹脂はスピンコーター、バーコーター、ロールコーター、ダイコーター、グラビアコーター等の公知の塗布方法を用いて塗布される。次に、パターン露光、現像して隔壁パターンを形成する工程では、従来公知の露光、現像方法により隔壁部のパターンを形成できる。また焼成に関してはオーブン、ホットプレート等での従来公知の方法により焼成を行うことができる。
隔壁3は、厚みが0.5μmから5.0μmの範囲にあることが望ましい。隔壁3を隣接する画素電極間に設けることによって、電極パターン上に塗布された正孔輸送インキはレベリングとともに隔壁上の膜厚は薄くなることから隣接画素間のリーク等が発生しにくく、また画素電極端部からのショート発生を防ぐことが出来る。また、異なる発光色を有する有機発光材料を溶媒に溶解または分散させた有機発光インキを用いて画素ごとに塗り分けをおこなう場合、隣接する画素との混色を防止することが出来る。隔壁が低すぎると隣接画素間で正孔輸送層経由でのリーク電流の発生やショートの防止、有機発光インキの混色防止の効果が得られないことがあり注意が必要である。正孔輸送層を無機材料としても良い。
隔壁3形成後、正孔輸送層4を形成する。正孔輸送層4の形成材料としては、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリビニルカルバゾール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合物などの高分子正孔輸送材料、ポリチオフェンオリゴマー材料、その他既存の酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化ニッケルなどの金属酸化物等の中から選ぶことができる。正孔輸送層4の形成方法としては、前記高分子正孔輸送材料では、凸版印刷法やスピンコート法、バーコート法を用いることができ、前記金属酸化物では、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法を用いることができる。
正孔輸送層4形成後、有機発光層6を形成する。有機発光層6は電流を通すことにより発光する層であり、有機発光層6を形成する有機発光材料は、9,10−ジアリールアントラセン誘導体、ピレン、コロネン、ペリレン、ルブレン、1,1,4,4−テトラフェニルブタジエン、トリス(8−キノリノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−8−キノリノラート)アルミニウム錯体、ビス(8−キノリノラート)亜鉛錯体、トリス(4−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)アルミニウム錯体、トリス(4−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−トリフルオロメチル−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、ビス(2−メチル−5−シアノ−8−キノリノラート)[4−(4−シアノフェニル)フェノラート]アルミニウム錯体、トリス(8−キノリノラート)スカンジウム錯体、ビス〔8−(パラ−トシル)アミノキノリン〕亜鉛錯体及びカドミウム錯体、1,2,3,4−テトラフェニルシクロペンタジエン、ペンタフェニルシクロペンタジエン、ポリ−2,5−ジヘプチルオキシ−パラ−フェニレンビニレン、クマリン系蛍光体、ペリレン系蛍光体、ピラン系蛍光体、アンスロン系蛍光体、ポルフィリン系蛍光体、キナクリドン系蛍光体、N,N’−ジアルキル置換キナクリドン系蛍光体、ナフタルイミド系蛍光体、N,N’−ジアリール置換ピロロピロール系蛍光体等、Ir錯体等の燐光性発光体などの低分子系発光材料や、ポリフルオレン、ポリパラフェニレンビニレン、ポリチオフェン、ポリスピロなどの高分子発光材料や、これら高分子材料に前記低分子材料の分散または共重合した材料や、その他既存の蛍光発光材料や燐光発光材料を用いることができる。
また、有機EL素子における有機発光層6と正孔輸送層4の間に、加熱により正孔輸送層4との密着性を増す材料であるインターレイヤ5を挟んでも良い。このインターレイヤ5により、有機発光層6の発光効率が増し、駆動寿命も長く成ることが知られている。この様な材料としては、ポリ(2,7−(9,9−ジ−オクチルフルオロレン))−alt−(1,4−フェニレン−((4−sec−ブチルフェニル)イミノ)−1,4−フェニレン))(TFB)等が挙げられる。形成方法としては、高分子材料では、凸版印刷法やスピンコート法、バーコート法を用いることができ、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法を用いることができる。
本発明において有機発光材料は溶媒に溶解または安定に分散され、印刷法に用いるインキとして有機発光インキとして用いられる。上記の低分子系発光材料や高分子発光材料を溶解または分散する溶媒としては、トルエン、キシレン、アセトン、アニソール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等の単独またはこれらの混合溶媒が挙げられる。中でも、トルエン、キシレン、アニソールといった芳香族有機溶剤が有機発光材料の溶解性の面から好適である。又、有機発光インキには、必要に応じて、界面活性剤、酸化防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤等が添加されても良い。
次に、対向電極7を形成する。対向電極7を陰極として用いる場合、形成材料としては有機発光層6への電子注入効率の高い物質を用いる。具体的には、Mg、Al、Yb等の金属単体を用いたり、発光媒体と接する界面にLiや酸化Li,LiF等の化合物を1nm程度挟んで、安定性・導電性の高いAlやCuを積層して用いてもよい。または、電子注入効率と安定性を両立させるため、仕事関数が低いLi、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb等の金属1種以上と、安定なAg、Al、Cu等の金属元素との合金系を用いてもよい。具体的にはMgAg、AlLi、CuLi等の合金が使用できる。対向電極7を透光性電極層として利用する場合には、仕事関数が低いLi、Caを薄く設けた後に、ITO(インジウムスズ複合酸化物)やインジウム亜鉛複合酸化物、亜鉛アルミニウム複合酸化物などの金属複合酸化物を積層してもよく、有機発光層6に、仕事関数が低いLiCaなどの金属を少量ドーピングして、ITOなどの金属酸化物を積層してもよい。
対向電極7の形成方法は、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法を用いることができる。対向電極7の厚さに特に制限はないが、10nm〜1000nm程度が望ましい。対向電極の膜厚が10nm未満であると膜のピンホールが十分に埋められずショートの原因となる。また1000nmより大きいと成膜時間が長くなり生産性が悪くなる。なお、対向電極のパターニングについては、成膜時にマスクを用いることによりパターン形成をおこなうことができる。
最後にこれらの有機EL構成体を、外部の酸素や水分から保護するために、封止体8を用いて有機EL構成体を封止する。封止体8としては、凹部を有する封止キャップ8aを用い、封止キャップ8aと基板1を接着剤8bを介して貼りあわせる方法を用いることができる。また、封止キャップ8aと基板1で密封させた空間には乾燥剤8cを備えることが出来る。
封止キャップ8aとしては、アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素等のセラミックス、無アルカリガラス、アルカリガラス等のガラス、石英、アルミニウムやステンレスなどの金属箔、耐湿性フィルムなどを挙げることができる。接着剤8bとしては、エステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、メラミンアクリレート、アクリル樹脂アクリレート等のアクリレート、ウレタンポリエステル等の樹脂を用いたラジカル系接着剤や、エポキシ、ビニルエーテル等の樹脂を用いたカチオン系接着剤、チオール・エン付加型樹脂系接着剤等の光硬化型樹脂、または熱硬化型樹脂を用いることが出来る。また、紫外線硬化型エポキシ系接着剤も利用できる。乾燥剤8cとしては、酸化バリウムや酸化カルシウムを用いることができる。また、封止キャップではなく、上記の封止キャップ8a及び接着剤8bと同じ材料を用いて封止材上の全面に接着剤層を設け、封止材と有機EL構成体とを貼り合わせて作成することもできる。
さらに、この他にも有機EL構成体にバリア層を形成し、バリア層を封止体とすることも可能である。このとき、バリア層としては、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素等を用いることができ、これらは、CVD法等の真空成膜法により対向電極7上に有機EL構成体全面を覆うように形成される。また、バリア層が形成された有機EL素子は接着層を介して封止基板と貼りあわせ、これらを封止体とすることも可能である。
なお、本発明は凸版印刷法により均一な膜厚の有機発光層を形成することを課題として凸版印刷法により有機発光層を形成した有機EL素子について説明したが、凸版印刷法で機能性の材料を含むインキを基板に転写することで形成される他の電子デバイスにも応用でき、例えば、有機半導体材料を溶剤に溶解させた有機半導体材料インキを本発明の印刷用凸版を用いて基板に印刷することで均一な膜厚の有機薄膜トランジスタが形成できる。
次に、本発明の一実施形態を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれに限るものではない。
<実施例1>
次に、本発明の実施例を説明する。本実施例においては、既に画素電極(陽極2)、取り出し電極、TFT回路を保護するためのSiNx膜からなる絶縁層およびポリイミドからなる隔壁を備えたTFT基板を用い、隔壁は画素を仕切るような格子状に形成され、画素上に正孔輸送層4、凸版印刷法で形成される有機発光層6、対向電極7を順次形成して、アクティブマトリックス方式の有機ELディスプレイ用素子パネルを作製した。
本発明の印刷用樹脂凸版12の凸部パターン領域201の上面図は、版の凸部パターンの中心点から、版の凸部パターンの外側に向かって細幅化させた。印刷方向と平行な方向についての版幅変化は、版の凸部パターンの中心点から印刷方向および印刷方向の逆方向について、版の凸部パターンの外側に向かって1cmあたり0.55μmで細幅化し、印刷方向と垂直方向について、版の凸部パターンの中心点から版の凸部パターンの外側に向かって1cmあたり0.3μmで細幅化する六角形のストライプパターンとなっており、ネガ型感光性樹脂層にフォトリソグラフィー法を用いることによってこのパターンを作製した。このストライプパターンの印刷方向と平行な方向の長さは3.5cm、印刷方向と垂直な方向の長さは6.4cmであり、凸部パターン中心の幅は28μmであり、厚さは50μmであった。
凸版には水現像タイプの感光性樹脂版を使用した。この版表面に対する発光材料インキの接触角は10度以下であった。樹脂凸版12を巻きつけた版胴11をストライプ状の画像形成部のストライプ方向に転動させて画素長辺と平行に印刷した。
有機発光層6は、材料としてポリ[2−メトキシ−5−(2'−エチル−ヘキシロキシ)−1,4−フェニレンビニレン](MEHPPV)を用い、表1に示す膜厚で形成した。
正孔輸送層4は、TFT基板1上に酸化モリブデンをスパッタリング法で成膜して膜厚40nmの薄膜を得ることで形成した。インターレイヤ5は画素部9のラインに均一に印刷した。発光層6は有機発光材料であるポリフルオレン系の緑色発光材料を濃度2%になるように印刷溶剤Aに溶解させた有機発光インキを用い、凸版印刷法で画素に印刷をした。
その上にBa、Alからなる対向電極7を抵抗加熱蒸着法により真空蒸着して形成した。最後にこれらの有機EL構成体を、外部の酸素や水分から保護するために、封止キャップ8aと接着剤8bを用いて密閉封止し、有機ELディスプレイ用素子パネルを作製した。
得られたパネルの表示部の周縁部には、各電極に接続されている陽極側および陰極側それぞれの取り出し電極があり、これらのドライバーを介して駆動装置に接続することでパネルの点灯表示確認を行い、画素内の膜厚について平均膜厚からのズレを測定し、3σを算出したところ表1の様になった。また、パネルの点灯状態を肉眼で観察したところ発光にムラは見られなかった。
<比較例1>
比較例1では、印刷開始側から終了側にかけて凸部の幅が均一な通常の印刷用凸版を用いて、インターレイヤおよび有機発光層を印刷した。それ以外は実施例1と同様の工程で有機ELディスプレイ用素子パネルを作製した。
実施例1と同様にパネルの点灯表示確認を行い、画素内の膜厚について平均膜厚からのズレを測定し、3σを算出したところ表1の様になった。また、パネルの点灯状態を肉眼で観察したところ発光にムラが生じていた。
次に、表1に実施例1と比較例1のパネル点灯結果を示す。
表1において、3σの比較から実施例1では比較例1に比べて面内均一性がよく、また実施例1では発光ムラが見られなかったことから、本発明の効果として従来印刷法では厚膜傾向にある印刷終了側の厚膜化を軽減し、有機層の画素パターン部における面内バラツキを低減できることが分かった。即ち、ストライプパターン外周部の凸部形状を中央部より細幅化した凸部パターンを有する印刷用凸版を用いることにより、発光輝度ムラのない有機EL素子の製造が可能となった。