JP5593843B2 - 有機エレクトロルミネッセンス素子及びその製造方法 - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス素子及びその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、有機エレクトロルミネッセンス(EL)素子及び高精細ディスプレイ、それらの製造方法に関するものであり、詳しくは、精密部品製造用の基板等の被印刷体に、インキ化した材料を印刷法でパターン印刷し、高精細ディスプレイを製造する方法に関する。
ものである。
一般的に、有機EL素子は、二つの対向する電極基板の間に、有機発光材料からなる有機発光層を形成し、有機発光層に電流を流すことにより発光させるものであるが、効率良く発光させるには、有機発光層の膜厚のコントロールが重要であり、例えば膜厚100nm程度に極めて薄膜にする必要がある。さらに、これをディスプレイ化するには、高精細にパターニングする必要がある。
基板等に形成する有機発光材料には、低分子材料と高分子材料があり、一般に低分子材料は、基板に抵抗加熱蒸着法(真空蒸着法)等により薄膜形成し、このときに微細パターンのマスクを用いてパターニングするが、この方法では基板が大型化すればするほど、パターニング精度が出難いという問題がある。
一方、高分子系発光材料を用いてフルカラー化するために有機発光層をパターニングする手段としては、主にインキジェット法によるパターン形成方法と、印刷版を用いたパターン形成方法が提案されている。
インキジェット法によるパターン形成方法は、インキジェットノズルから溶剤に溶かした発光層形成用材料を基板上に噴出させ、基板上で乾燥させることで所望のパターンを得る方法である(特許文献1)。しかしながら、ノズルから噴出されたインキ液滴は球状をしている為、基板上に着弾する際にインキが円形状に広がり、形成されたパターンの形状が直線性に欠けたり、あるいは着弾精度が悪くなってパターンの直線性が得られないという問題点がある。
これに対し、例えば予め基板上にフォトリソグラフィなどにより撥インキ性のある材料でバンクを形成し、そこにインキ液滴を着弾させることで、バンクの部分でインキをはじかせ、直線性のパターンを得られるようにした方法が開示されている(特許文献2)。しかし、バンクの部分ではじかれたインキが画素内に戻るときに画素内部で盛り上がり、画素内の有機発光層の膜厚にばらつきができてしまうという問題がある。
そこで、低分子系有機発光材料にかえて、高分子系有機発光材料を溶剤に溶解あるいは分散させてインキ化し、このインキを用い、凸版印刷法、反転印刷法、スクリーン印刷法などの印刷法によりパターニングする方法が提案されている。特に凸版印刷による方法はパターン形成精度、膜厚均一性などに優れ、印刷による有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法として適している。
さらに、有機EL素子やディスプレイでは、基板としてガラス基板を用いることが多いため、各種印刷法の中でも、グラビア印刷法等のように金属製の印刷版等の硬い版を用いる方法は不向きである。そのために、弾性を有するゴム製の印刷版を用いた印刷法や、ゴム製の印刷用ブランケットを用いたオフセット印刷法や、弾性を有するゴムやその他の樹脂を主成分とした感光性樹脂版を用いる凸版印刷法等が適性な印刷法として採用すること
ができる。実際に、これらの印刷法の試みとして、オフセット印刷によるパターン印刷方法、凸版印刷によるパターン印刷方法などが提唱されている(特許文献3、4)。
特開平10−12377号公報 特開2002−305077号公報 特開2001−93668公報 特開2001−155858公報
しかしながら、インキジェット法、印刷法による有機発光層の形成においては、形成する領域の表面の形状、濡れ性の影響を顕著に受ける。このため、有機発光層の直下の層(これを下地層と定義する)を隔壁基板に対して従来のように画素内のみに施した場合、印刷されていない画素周辺の隔壁上は画素内と濡れ性が異なるために有機発光層の膜厚が安定しないという問題点が発生していた。さらには、下地層も隔壁や液体の表面張力、重力等により、湾曲面になる。そのため、均一に発光材料を塗布することが困難であった。
本発明は上記の問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは画素内の下地層の平坦化向上かつ有機発光層の成膜において均一な膜形成を行ない、欠陥やムラのない有機EL素子の製造方法を提供することである。
上記の課題を解決するために請求項1にかかる発明としては、隔壁によって区画された画素を有する基板上に、有機発光材料含有インキ組成物を用いて、凸版印刷法により有機発光層を形成する有機エレクトロルミネッセンスディスプレイの製造方法であって、前記有機発光層を形成する前に、前記隔壁の内側面部と前記画素部の全面に下地層を形成する工程を有し、前記下地層を形成する工程は、前記画素内において湾曲面となるように形成される工程と、前記湾曲面となるように形成された下地層を平坦化するための凸版印刷法による再形成工程とを少なくとも経ることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法である。

請求項2にかかる発明としては、前記下地層の前記有機発光材料含有インキ組成物に対する接触角が15°以内であることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
請求項にかかる発明としては、請求項1または請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を用いたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子である

請求項にかかる発明としては、請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いたことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスディスプレイである
本発明では、前記有機発光層を形成する前工程として、前記隔壁の内側面部と前記画素部の全面に下地層を形成することにより、面内均一性の高い下地層を形成することができ、濡れ性を均一にすることにより有機発光層の画素部分における面内ばらつきを低減させ、発光ムラのない有機EL素子の製造が可能となった。
図1は本発明の有機EL素子の断面模式図である。 図2は本発明における印刷工程を説明する説明図である。 図3は本発明の下地層の説明図である。
図1に本発明の有機EL素子の断面模式図を示した。図1の有機EL素子においては基板1上に、陽極2、正孔輸送層4、インターレイヤ5、有機発光層6、陰極7を備える。陽極2、陰極7間には有機発光層6が設けられ、陽極2と有機発光層6の間に正孔輸送層4とインターレイヤ5が設けられる。また、陽極2パターン間には、隔壁3が設けられる。基板1上に、陽極2、隔壁3、正孔輸送層4、インターレイヤ5、有機発光層6、陰極7が設けられた有機EL構成体は、電極や有機発光層を外部の環境から保護するための封止体8が設けられる。封止体8は、封止キャップ8a、接着剤8b、乾燥剤8cを備える。
また、本発明の有機EL素子にあっては、陽極と陰極の間には有機発光層の他に発光補助層を備える。発光補助層としては、図1に示した正孔輸送層やインターレイヤの他に、電子注入層、電子輸送層等を挙げることができる。これらの発光補助層は適宜選択されるが、複数選択してもよい。正孔輸送層、インターレイヤは陽極と有機発光層の間に設けられる。電子注入層、電子輸送層は有機発光層、陰極間に設けられる。また、本発明の有機EL素子にあっては、陽極、陰極、有機発光層、正孔輸送層、インターレイヤは単層構造ではなく、多層構造としてもよい。
正孔輸送層と発光層の間にバッファー層として形成されるインターレイヤは、正孔の輸送性を高める効果と、陰極側から移動してきた電子をブロックする効果が期待される層であり、実際にインターレイヤを設けることで、有機EL素子の効率や寿命が向上することが確認されている。
ここで、発光補助層の層構成に関わらず、発光補助層の最上層表面、即ち、その上に形成される有機発光層と直接接する層を下地層と呼ぶ。以降の説明では下地層にインターレイヤを用いた場合について説明するが、これ以外の発光補助層、特に塗布法で形成される層についても同様に適用することができる。
本発明によれば、下地層が画素内のみならず、隔壁内側面分を含む画素パターン部の全面に形成されていることにより、隔壁と画素内の濡れ性を均一にし、有機発光層の画素パターン部における面内ばらつきを低減させることができるから、有機発光層の膜厚の均一性が向上し、発光ムラのない有機EL素子とすることができる。
なお本発明の有機EL素子にあっては、パッシブマトリックス方式の有機EL素子、アクティブマトリックス方式の有機EL素子のどちらにも適用可能である。パッシブマトリックス方式とはストライプ状の陽極及び陰極を直交させるように対向させ、その交点を発光させる方式であるのに対し、アクティブマトリックス方式は画素毎に薄膜トランジスタ(TFT)を形成した、いわゆるTFT基板を用いることにより、画素毎に独立して発光する方式である。アクティブマトリックス方式有機EL素子の場合、陽極、陰極の一方の電極はTFT基板上に画素毎に設けられ、もう一方の電極は画素全体に設けられる。
また、本発明の有機EL素子にあっては、発光した光を基板側から取り出すボトムエミッション方式の有機EL素子、発光した光を基板と反対側から取り出すトップエミッション方式の有機EL素子のどちらでもかまわない。ボトムエミッション方式の有機EL素子とする場合には、基板及び陽極が光透過性を有する必要があり、トップエミッション方式の有機EL素子とするためには、陰極及び封止体が光透過性を有する必要がある。
次に、図1に示した本発明の有機EL素子の製造方法について説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
本発明にかかる基板1としては、絶縁性を有する基板であればいかなる基板も使用することができる。この基板側から光を出射するボトムエミッション素子の場合には、基板として透明なものを使用する必要がある。
例えば、このような基板としては、ガラス基板や石英基板が使用できる。また、ポリプロピレン、ポリエーテルサルフォン、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマー、ポリアリレート、ポリアミド、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のプラスチックフィルムやシートであっても良い。これら、プラスチックフィルムやシートに、密着性、バリア性を付与する為に、金属酸化物薄膜、金属フッ化物薄膜、金属窒化物薄膜、金属酸窒化膜薄膜、あるいは高分子樹脂膜を積層したものを基板として利用してもよい。
前記金属酸化物薄膜としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム等が例示できる。前記金属フッ化物薄膜としては、フッ化アルミニウム、フッ化マグネシウム等が例示できる。金属窒化物薄膜としては、窒化ケイ素、窒化アルミニウム等が例示できる。また、前記高分子樹脂膜としては、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂等が例示できる。また、トップエミッション素子の場合には、不透明な基板を使用することもできる。
また、これらの基板は、あらかじめ加熱処理を行うことにより、基板内部や表面に吸着した水分を極力低減することがより好ましい。また、基板上に積層される材料に応じて、密着性を向上させるために、超音波洗浄処理、コロナ放電処理、プラズマ処理、UVオゾン処理などの表面処理を施してから使用することが好ましい。
また、前記基板上に薄膜トランジスタ(TFT)を形成して、駆動用基板としても良い。TFTの材料としては、ポリチオフェンやポリアニリン、銅フタロシアニンやペリレン誘導体等の材料を用いてもよく、また、アモルファスシリコンやポリシリコンを用いてもよい。また、前記基板のどちらかの面にカラーフィルタ層や光散乱層、光偏光層等を基板に設けてもよい。
次に、この基板1上に、陽極2を形成する。陽極形成材料として、ITO(インジウムスズ複合酸化物)、IZO(インジウム亜鉛複合酸化物)、亜鉛アルミニウム複合酸化物などの金属複合酸化物が利用できる。被膜形成方法としてはドライコーティング方式が利用できる。例えば、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等である。そして、真空製膜された金属酸化物被膜にフォトレジストを塗布して露光・現像し、ウェットエッチング又はドライエッチングして、パターン状に加工することができる。パッシブマトリックス方式の有機EL素子の場合には、陽極はストライプ状に形成される。アクティブマトリックス方式の有機EL素子の場合には、陽極はドット状にパターン形成される。
陽極2を形成後、隣接する陽極パターンの間に感光性材料を用いて、フォトリソグラフィ法により隔壁3が形成される。さらに詳しくは、感光性樹脂組成物を基板に塗布する工程と、パターン露光、現像、焼成して隔壁パターンを形成する工程を少なくとも有する。
隔壁3を形成する感光性材料としてはポジ型レジスト、ネガ型レジストのどちらであってもよく、市販のもので構わないが、絶縁性を有する必要がある。隔壁が十分な絶縁性を有さない場合には隔壁を通じて隣り合う画素電極に電流が流れてしまい表示不良が発生してしまう。また、TFTの誤作動により適正な表示ができないことがある。感光性材料としては、具体的にはポリイミド系、アクリル樹脂系、ノボラック樹脂系、フルオレン系といったものが挙げられるがこれに限定するものではない。また、有機ELディスプレイパネルの表示品位を上げる目的で、光遮光性の材料を感光性材料に含有させても良い。
隔壁3を形成する感光性樹脂はスピンコーター、バーコーター、ロールコーター、ダイコーター、グラビアコーター等の公知の塗布方法を用いて塗布される。次に、パターン露光、現像して隔壁パターンを形成する工程では、従来公知の露光、現像方法により隔壁部のパターンを形成できる。また焼成に関してはオーブン、ホットプレート等での従来公知の方法により焼成を行うことができる。
隔壁3は、高さが0.5μmから5.0μmの範囲にあることが望ましい。隔壁3を隣接する画素電極間に設けることによって、電極パターン上に塗布された正孔輸送インキはレベリングとともに隔壁上の膜厚は薄くなることから隣接画素間のリーク等が発生しにくく、また陽極端部からのショート発生を防ぐことが出来る。また、異なる発光色を有する有機発光材料を溶媒に溶解または分散させた有機発光インキを用いて画素ごとに塗り分けをおこなう場合、隣接する画素との混色を防止することが出来る。隔壁が低すぎると隣接画素間で正孔輸送層経由でのリーク電流の発生やショートの防止、有機発光インキの混色防止の効果が得られないことがあり注意が必要である。隔壁が低い場合は混色がおこり易く、高い場合は隔壁形成時のパターニング性が悪化し、また、画素印刷時に隔壁にインキがもっていかれ、膜厚がでにくいという問題がある。
隔壁3形成後、正孔輸送層4を形成する。正孔輸送層4の形成材料として有機材料を用いる場合、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリビニルカルバゾール、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)とポリスチレンスルホン酸との混合物などの高分子正孔輸送材料、ポリチオフェンオリゴマー材料等の中から選ぶことができる。これらの材料は溶媒に溶解または分散させ、スピンコート法、突出コート法、ディップコート法を用いて一括塗布することができる。
また、正孔輸送材料として無機材料を用いる場合、無機材料としてはクロム(Cr)、タングステン(W)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、ルテニウム(Ru)、オスミウム(Os)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)などの酸化物、窒化物、酸窒化物を真空蒸着法を用いて形成することができる。無機物からなる正孔輸送層を設けることで、熱安定性や耐性に優れたより安定した有機EL素子を得ることができる。本発明の有機EL素子においては、下地層を形成することにより、無機材料を用いた場合でも平坦性良くムラのない発光層を形成することができる。
正孔輸送層4形成後、有機発光層6を形成する。有機発光層6は電流を通すことにより発光する層であり、有機発光層6を形成する有機発光材料は、例えば、クマリン系、ペリ
レン系、ピラン系、アンスロン系、ポルフィレン系、キナクリドン系、N,N’−ジアルキル置換キナクリドン系、ナフタルイミド系、N,N’―ジアリール置換ピロロピロール系、イリジウム錯体系等の発光性色素をポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルカルバゾール等の高分子中に分散させたものや、ポリアリーレン系、ポリアリーレンビニレン系、ポリフェニレンビニレン系やポリフルオレン系の高分子材料が挙げられる。
前記有機発光材料含有インキ組成物は、前記有機発光材料を溶媒に溶解または安定に分散させことで得られる。有機発光材料を溶解または分散する溶媒としては、トルエン、キシレン、アセトン、アニソール、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等の単独またはこれらの混合溶媒が挙げられる。中でも、トルエン、キシレン、アニソールといった芳香族有機溶剤が有機発光材料の溶解性の面から好適である。又、前記有機発光材料含有インキ組成物は、必要に応じて、界面活性剤、酸化防止剤、粘度調整剤、紫外線吸収剤等が添加されても良い。
また、有機EL素子における有機発光層6と正孔輸送層4の間に、加熱により正孔輸送層4との密着性を増す材料であるインターレイヤ5を挟んでも良い。このインターレイヤ5により、有機発光層6の発光効率が増し、駆動寿命も長く成ることが知られている。この様な材料としては、ポリ(2,7−(9,9−ジ−オクチルフルオロレン))−alt−(1,4−フェニレン−((4−sec−ブチルフェニル)イミノ)−1,4−フェニレン))(TFB)等が挙げられる。
またインターレイヤ5を形成する際、有機発光層6の下地の濡れ性を均一にするためインターレイヤ5を隔壁3上にも形成する。この際、画素内はまず湾曲面となるように形成し、隔壁上は画素内との濡れ性が一致しているようにする。湾曲面とすることでインターレイヤを再度形成する際、高い平坦性が得られる。なお、湾曲面の曲率半径が78μm以上が望ましい。78μm未満の場合、インターレイヤを再度形成した際、高い平坦性が得られない為である。また、前記有機発光材料含有インキ組成物にレベリング性を持たせ高い平坦率を得るために、前記有機発光材料含有インキ組成物に対する下地層上と隔壁上の両者の接触角がともに15°以内であることが望ましい。
インターレイヤ5および有機発光層6の形成方法とする印刷方法としては、特にパターン形成精度、膜厚均一性などに優れる凸版印刷法が好ましい。画素内及び隔壁上を含む発光面前面にインターレイヤ5を形成する方法としては画素部分でのパターニングを必要としないため、スピンコート法やバーコート法等の一般的コーティング法を用いることもできる。だだし、湾曲面形成後のインターレイヤ5の形成方法としては、上記理由から凸版印刷法が好適である。
有機発光層の形成に用いる印刷装置は、平板に印刷する方式の凸版印刷機であれば使用可能であるが、以下に示すような印刷装置が望ましい。図2に本発明でのインターレイヤ5および有機発光層6の形成に用いる印刷装置の模式図を示した。凸版印刷装置は、インクタンクとインキチャンバーとアニロックスロール13と樹脂凸版12を取り付けした版胴11を有している。樹脂凸版における、凸部の形成方法としては、フォトリソグラフィ法や、レーザーアブレーション法、切削加工により凸部を形成することが可能である。インクタンクには、溶剤で希釈された有機発光インキが収容されており、インキチャンバーにはインクタンクより前記有機発光材料含有インキ組成物が送り込まれるようになっている。アニロックスロールは、インキチャンバーのインキ供給部及び版胴に接して回転するようになっている。
アニロックスロールの回転にともない、インキチャンバーから供給された前記有機発光
材料含有インキ組成物はアニロックスロール表面に均一に保持されたあと、版胴に取り付けされた樹脂凸版の凸部に均一な膜厚で転移する。さらに、被印刷基板10(TFT基板)は摺動可能な基板固定台上に固定され樹脂凸版の凸部のパターンと被印刷基板のパターンの位置調整機構により、位置調整しながら印刷開始位置まで移動して、版胴の回転に合わせて樹脂凸版の凸部が被印刷基板に接しながらさらに移動し、ステージ上にある被印刷基板の所定位置(画素のライン)にパターニングして前記有機発光材料含有インキ組成物を転移する。その際、版胴の転動方向と版のストライプ方向、また、画素の長辺方向は、平行であっても直行であっても構わない。
インターレイヤ5についても有機発光層6と同様だが、隔壁内側面部を含む発光領域の全面に形成する点が異なる。まずロールコート法等のベタ印刷などで前記隔壁内側面部を含む発光領域の全面にインターレイヤを形成する。この際、素子として必要なインターレイヤの膜厚を狙う必要はない。次にストライプ状の樹脂凸版の凸部を画素が整列したラインに一致させ、画素内にインターレイヤを形成する。この時に素子として必要なインターレイヤの膜厚を塗布する。
また、画素形状が長辺と短辺を有する長方形の場合、いずれの方向で印刷することも可能であるが、版のストライプ方向を画素の長辺方向と平行にして印刷した場合、短辺方向に印刷するよりも各画素での版との接触時間が長くなるため、転写性が良く、平坦性に優れる。
次に、陰極7を形成する。陰極層7の材料としては、有機発光層6への電子注入効率の高い物質を用いる。具体的には、Mg、Al、Yb等の金属単体を用いたり、発光媒体と接する界面にLiや酸化Li,LiF等の化合物を1nm程度挟んで、安定性・導電性の高いAlやCuを積層して用いてもよい。または、電子注入効率と安定性を両立させるため、仕事関数が低いLi、Mg、Ca、Sr、La、Ce、Er、Eu、Sc、Y、Yb等の金属1種以上と、安定なAg、Al、Cu等の金属元素との合金系を用いてもよい。具体的にはMgAg、AlLi、CuLi等の合金が使用できる。陰極層6を透光性電極層として利用する場合には、仕事関数が低いLi、Caを薄く設けた後に、ITO(インジウムスズ複合酸化物)やインジウム亜鉛複合酸化物、亜鉛アルミニウム複合酸化物などの金属複合酸化物を積層してもよく、前記有機発光層6に、仕事関数が低いLi,Caなどの金属を少量ドーピングして、ITOなどの金属酸化物を積層してもよい。
陰極7の形成方法は、材料に応じて、抵抗加熱蒸着法、電子ビーム蒸着法、反応性蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等のドライコーティング方法を用いることができる。陰極の厚さに特に制限はないが、10nm〜1000nm程度が望ましい。陰極の膜厚が10nm未満であると膜のピンホールが十分に埋められずショートの原因となる。また1000nmより大きいと成膜時間が長くなり生産性が悪くなる。なお、陰極のパターニングについては、成膜時にマスクを用いることによりパターン形成をおこなうことができる。
最後にこれらの有機EL構成体を、外部の酸素や水分から保護するために、封止体8を用いて有機EL構成体を封止する。封止体8としては、凹部を有する封止キャップ8aを用い、封止キャップ8aと基板1を接着剤8bを介して貼りあわせる方法を用いることができる。また、封止キャップ8aと基板1で密封させた空間には乾燥剤8cを備えることが出来る。
封止キャップ8aとしては、金属キャップ、ガラスキャップを用いることができる。接着剤8bとしては、エステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、メラミンアクリレート、アクリル樹脂アクリレート等のアクリレート、ウレタンポリ
エステル等の樹脂を用いたラジカル系接着剤や、エポキシ、ビニルエーテル等の樹脂を用いたカチオン系接着剤、チオール・エン付加型樹脂系接着剤等の光硬化型樹脂、または熱硬化型樹脂を用いることが出来る。また、紫外線硬化型エポキシ系接着剤も利用できる。乾燥剤8cとしては、酸化バリウムや酸化カルシウムを用いることができる。
また、この他にも有機EL構成体にバリア層を形成し、バリア層を封止体とすることも可能である。このとき、バリア層としては、酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素等を用いることができ、これらは、CVD法等の真空成膜法により有機EL構成体全面を覆うように形成される。また、バリア層が形成された有機EL素子は接着層を介して封止基板と貼りあわせ、これらを封止体とすることも可能である。
<実施例1>
以下に、本発明の実施例を(図1)に従い説明する。本実施例においては、既に画素電極(陽極2)、取り出し電極、TFT回路を保護するためのSiNx膜からなる絶縁層およびポリイミドからなる絶縁層を備え、当該ポリイミドからなる絶縁層は画素を仕切るように形成されており、よって各画素の隔壁7としても機能するようなTFT基板1を用いて、その上に正孔輸送層4、有機発光層6、陰極7を順次形成して、アクティブマトリックス方式の有機ELディスプレイパネルを作成した。
正孔輸送層4は、TFT基板1上に酸化モリブデンをスッパタリング法で成膜して膜厚40nmの薄膜を得ることで形成した。インターレイヤ5はまず発光領域の全面にパターニングしていないベタ版を用いて印刷を行った。この時の画素内のインターレイヤ層の曲率半径は78μmであった。次に画素部9のラインに均一に凸版印刷法で形成した(図3)。発光層は有機発光材料であるポリフルオレン系のR材料、G材料、B材料をそれぞれ2質量%になるように印刷溶剤Aに溶解させたR、G、B3色の有機発光材料含有インキ組成物を用い、凸版印刷法で各画素にR、G、Bを塗り分けて形成した。
このとき、発光層の印刷には水現像タイプの感光性樹脂版を使用した。この版表面に対する有機発光材料含有インキ組成物の接触角は10度以下であった。凸版を巻きつけた版胴をストライプ状の画像形成部のストライプ方向に転動させて画素長辺と平行に印刷した。
その上にBa、Alからなる陰極7を抵抗加熱蒸着法により真空蒸着して形成した。最後にこれらの有機EL構成体を、外部の酸素や水分から保護するために、内部に乾燥剤8cを設けた封止キャップ8aと接着剤8bを用いて密閉封止し、有機ELディスプレイ用素子パネルを作製した。
得られたパネルの表示部の周縁部には、各画素電極に接続されている陽極側および陰極側それぞれの取り出し電極があり、これらのドライバーを介して駆動装置に接続することでパネルの点灯表示確認を行い、発光状態のチェックを行った。画素内の膜厚均一性も良く、パネル点灯もムラなく発光した。
<比較例1>
比較例1では、インターレイヤを画素部9のラインにのみ形成し、隔壁上に形成しなかった。それ以外は実施例1と同様の工程で有機ELディスプレイ用素子パネルを作製した。
<比較例2>
比較例2では、画素内のインターレイヤ層の曲率半径が20μm程度となるように発光領域の全面にパターニングしていないベタ版を用いて印刷を行った。それ以外は実施例1と
同様の工程で有機ELディスプレイ用素子パネルを作製した。
比較例1、2のパネルでは、有機発光材料含有インキ組成物の印刷の際に画素間の面内膜厚ばらつきが生じ、パネル点灯時にもムラが発生した。
<比較結果>
表1に実施例1と比較例1のパネル点灯結果を示す。
比較例1のようにTFT基板上の画素にのみインターレイヤ材料の印刷を施した場合、その隔壁上は正孔輸送材料として全面成膜された酸化モリブデンとなる。そのため画素上と隔壁上それぞれに存在する、インターレイヤ材料と酸化モリブデンの表面の濡れ性の相違について評価を行なった。
まず基板として厚さ0.7mm、40mm四方のガラス基板を用い、インターレイヤ形成材料インキをスピンコート法によって塗布した。上記基板を用い、インターレイヤ膜に対する水、および印刷溶剤Aの接触角の測定を行なった。尚、インターレイヤ層形成材料インキ塗布前の基板に前処理としてオーク製作所製UV/O3洗浄装置にて3分間紫外線照射を行った。塗布後速やかに200℃のホットプレートに移し15分間ベークした。このとき乾燥後のインターレイヤ層の膜厚は約20nmとなった。
酸化モリブデン膜の形成はインターレイヤ膜と同様のガラス基板を用い、スパッタリング法を用いて酸化モリブデンを約40nm成膜した。酸化モリブデン膜に対する水、および印刷溶剤Aの接触角の測定についてもインターレイヤ膜と同様に行なった。
表2にインターレイヤ膜と酸化モリブデン膜の接触角の結果を示す。
この結果から、インターレイヤ膜は酸化モリブデン膜に比べ極めて強い撥水性を有し、印刷溶剤Aに対しては非常に良好な濡れ性を有していることがわかる。また、印刷溶剤Aに対しての濡れ性の相違がみられたことで、インターレイヤ層上の有機発光層の印刷は画素と隔壁に濡れ性の違いから、比較例1では画素内への印刷安定性に欠けていることが示唆される。
また、比較例2での湾曲面の曲率が小さい場合は、狙い膜厚に対して端部へのせり上がりが大きい為
膜厚ばらつきが生じ膜厚ムラ・発光ムラとなったと考えられる。
以上から、発光層の下地層を、画素部分にまず湾曲面となるように形成、さらに画素部分を含むストライプラインを印刷によって形成することにより、面内均一性の高い下地層を形成することができ、発光層の面内ばらつきをより低減させることが可能となった。さらに画素部分及び隔壁の全面に形成し、濡れ性を均一にすることにより有機発光層の画素部分における面内ばらつきを低減させ、発光ムラのない有機EL素子の製造が可能となった。
1:基板
2:陽極
3:隔壁
4:正孔輸送層
5:インターレイヤ層
6:有機発光層
7:陰極
8:封止体
8a:封止キャップ
8b:接着剤
8c:乾燥剤
9:画素部
10:隔壁が形成された基板(被印刷基板)
11:版胴
12:樹脂凸版
13:アニロックスロール
14:版のストライプ

Claims (4)

  1. 隔壁によって区画された画素を有する基板上に、有機発光材料含有インキ組成物を用いて、凸版印刷法により有機発光層を形成する有機エレクトロルミネッセンスディスプレイの製造方法であって、
    前記有機発光層を形成する前に、前記隔壁の内側面部と前記画素部の全面に下地層を形成する工程を有し、
    前記下地層を形成する工程は、前記画素内において湾曲面となるように形成される工程と、前記湾曲面となるように形成された下地層を平坦化するための凸版印刷法による再形成工程とを少なくとも経ることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  2. 前記下地層の前記有機発光材料含有インキ組成物に対する接触角が15°以内であることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  3. 請求項1または請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を用いて製造したことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  4. 請求項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を用いて製造したことを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスディスプレイ。

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