JP5320314B2 - ガス検知器 - Google Patents
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熱線型半導体式ガスセンサにおいては、例えば接触燃焼式センサやニューセラミック式センサなどに比べて、高い感度が得られるという反面、センサ起動時に、センサ出力が安定するまでに長時間の時間を要するという問題がある。
従って、電源投入直後から使用したいという要請があり、また、駆動用電源として用いられる蓄電池の容量に制約のあるポータブル型のガス検知器においては、熱線型半導体式ガスセンサは、不向きであるのが実情であった。
従って、上記特許文献1に記載の技術においては、膨大なデータを収集して種々の条件による場合分けを行い、複数の判定基準のそれぞれに対して、センサ出力を予測するに際して使用する0点補正用補正曲線を予め取得しておくことが必要とされると共に、ゼロ点補正用補正曲線を取得するために、複数の同種の半導体式センサを対象として、通電開始5分後以降のセンサ出力の変化と、上記の初期出力取り込み時のセンサ出力正規化値との関係とを調べておくことが必要とされるので、場合分けなどのアルゴリズムが煩雑であり、しかも、電源投入時における熱線型半導体式ガスセンサの実際の状態に応じた適正な出力補正を行うことはできない、という問題がある。
前記ガスセンサについての、センサ起動時に検知対象ガスを含まないゼロガスが導入されている状態において取得されるセンサ出力値の経時的変化を示すセンサ出力初期変動特性曲線が、通電が開始されてからの経過時間を横軸、センサ出力値を縦軸とした両対数座標系において、センサ出力値が経時的に直線的に減少する対数関数領域を有するものであり、
前記出力補正機構は、少なくとも前記センサ出力初期変動特性曲線における対数関数領域に対応する時間範囲内のいずれかの測定時を出力補正対象測定時とし、当該出力補正対象測定時において、
前記ガスセンサの起動時にゼロガスが導入されている状態において取得される、前記センサ出力初期変動特性曲線における対数関数領域に対応する時間範囲内において選ばれた、前記出力補正対象測定時以前の2つの測定時の各々におけるセンサ出力値に基づいて、当該出力補正対象測定時におけるセンサ出力値を予測して当該予測されたセンサ出力値を補正用出力値として取得する補正用出力取得処理、および、
当該出力補正対象測定時において実際に取得されるガスセンサよりのセンサ出力値を、当該補正用出力取得処理によって取得された補正用出力値に基づいて補正する出力補正処理
を行う機能を有することを特徴とする。
さらにまた、本発明のガス検知器は、ポータブル型のものとして構成することができる。
また、ガスセンサの構成、電源がOFFされてから電源が再投入されるまでの無通電時間(無通電状態)の長さおよびその他の条件に拘らず、少なくとも2つの測定時におけるセンサ出力値が取得されさえすれば、出力補正対象測定時において実際に取得されるセンサ出力値を補正すべき補正用出力値を取得することができるので、高い汎用性を得ることができる。
さらにまた、電源投入後、ガス濃度測定を行うことのできる状態を早期に得ることができるので、ポータブル型のものとして構成された場合に、極めて有用なものとなる。
図1は、本発明に係るガス検知器の一例における要部の構成の概略を示すブロック図である。
このガス検知器は、例えば熱線型半導体式ガスセンサ10と、この熱線型半導体式ガスセンサ10を駆動するセンサ駆動手段20と、ガス検知器の動作制御を行う制御手段30と、ガス濃度測定および出力補正動作に係る情報が記録された記憶手段40と、後述する出力補正動作を行うに際しての時間情報を取得する計時手段50と、ガス検知器の動作設定を行うための操作手段(図示せず)と、検出されたガスの種類とその濃度値を表示する表示手段(図示せず)と、検知対象ガスの濃度が基準値を越えたことが検出されたときに警報を発する警報手段(図示せず)と、例えば蓄電池よりなる駆動用電源(図示せず)とを具えている。
抵抗体は、例えば白金またはその合金よりなる金属素線がコイル状に巻回されてなるコイル部13Aおよびこのコイル部13Aの両端に連続する直線状のリード部13Bを有するヒータ13よりなる。
また、ガス濃度の算出に際して用いられる個別検量線は、複数種の検知対象ガスの各々について設定された複数のものが記録されていてもよい。
上記のガス検知器においては、センサ駆動手段20によって適正な大きさに制御された電圧が熱線型半導体式ガスセンサ10におけるヒータ13に供給されてガス感応部12の表面温度が所定の温度状態、例えば300〜400℃に維持されるよう加熱された状態において、被検ガスが熱線型半導体式ガスセンサ10に供給されると、ガス感応部12を構成する金属酸化物半導体の抵抗値(検出出力値)に応じた検出信号(センサ出力)が制御手段30に入力されることにより、当該検出信号に応じたガス濃度が固有検量線に基づいて算出され、その結果が表示手段に表示される。
このセンサ起動時にゼロガスが導入されている状態において取得されるセンサ出力値を、例えばメタンガス濃度100ppmを100%として換算したときの出力割合(%)として縦軸に、通電が開始されてからの経過時間(sec)を横軸に、それぞれ、対数目盛でとった両対数座標系において示すと、図4において破線で示すように、センサ出力値が経時的に対数関数的に変化する対数関数領域LA、換言すれば、両対数座標系において直線近似(対数関数で近似)可能な領域を有するセンサ出力初期変動特性曲線(α)が得られる。ここに、センサ出力値は、例えば1秒間の時間間隔毎に取得される。
このセンサ出力初期変動特性曲線(α)における対数関数領域LAは、その開始時間t0および終了時間tnは、例えば熱線型半導体式ガスセンサ10の構成(仕様)、無通電時間の長さ等の条件によって異なるが、例えば、通電が開始されてからの経過時間が少なくとも4秒以上であって、90秒以内の時間範囲内に存在している。
次いで、第2の測定時t2におけるセンサ出力値V2と、出力補正対象測定時tmにおける本来あるべきセンサ出力値(センサ出力初期変動特性曲線α上)との間の経時的出力変化の傾向が、第1の測定時t1におけるセンサ出力値V1と、第2の測定時t2におけるセンサ出力値V2との間の経時的出力変化の傾向と同一であるとの前提のもと、当該出力補正対象測定時tmにおけるセンサ出力値Vmが近似曲線SLにより予測されて、このセンサ出力値Vmが、出力補正対象測定時tmにおいて熱線型半導体式ガスセンサ10より実際に取得されるセンサ出力値を補正すべき補正用出力値Vmとして取得される。
第2の測定時t2は、第1の測定時t1の後の特定の時刻を選択して設定することもできるが、出力補正対象測定時tmにおいてゼロガスが導入されていること(補正センサ出力値に基づいて算出されたガス濃度指示値が実質的に0ppmであること)が検出されたときに、当該出力補正対象測定時tmを新たな第2の測定時として更新設定されることが、補正の精度を向上させることができる点で、好ましい。
この場合には、第1の測定時t1におけるセンサ出力値V1(実測値)と、更新された新たな第2の測定時におけるセンサ出力値(実測値)との間の経時的出力変化の傾向を検出することにより新たな近似曲線が取得され、この近似曲線に基づいて、当該出力補正対象測定時tmの次の出力補正対象測定時t(m+1)において熱線型半導体式ガスセンサ10より実際に取得されるセンサ出力値を補正すべき補正用出力値V(m+1)が取得される。
このような校正処理(暖機処理)は、例えば大気中(加湿された空気が熱線型半導体式ガスセンサ10に供給された状態)で、熱線型半導体式ガスセンサ10の無通電時間に応じて設定された暖機時間に基づいて、行われる。例えば、熱線型半導体式ガスセンサ10の無通電時間が1〜24時間の範囲内である場合には、暖機時間は例えば4時間程度に設定され、暖機処理における加熱条件は、ガス濃度測定を行うに際しての加熱条件と同一の条件に設定される。
すなわち、本発明者らは、熱線型半導体式ガスセンサ10の起動時にゼロガスが導入されている状態においては、ガス検知器の電源が投入されて熱線型半導体式ガスセンサ10に対する通電が開始されてからセンサ出力値が安定するまでの間、熱線型半導体式ガスセンサ10のセンサ出力値は経時的に不規則に変化するわけではなく、一定の規則性を持って変化すること、すなわち、センサ出力値の経時的変化を示すセンサ出力初期変動特性曲線において、センサ出力値が経時的に対数関数的に減少する対数関数領域を有することに着目し、当該対数関数領域に対応する時間範囲内において選ばれた2つの測定時におけるセンサ出力値を取得しさえすれば、熱線型半導体式ガスセンサ10に固有のセンサ出力初期変動特性曲線を予め取得しておかなくても、対数関数領域に対応する時間範囲内におけるいずれの測定時におけるセンサ出力値であっても予測することができ、この予測されたセンサ出力値を補正用出力値とし、この補正用出力値に基づいて、熱線型半導体式ガスセンサ10より実際に取得されるセンサ出力を補正することによりガス濃度測定を行うことができることを見出した。
図2に示す構成の検出素子を具えた熱線型半導体式ガスセンサを作製した。この熱線型半導体式ガスセンサにおける検出素子(11)は、ガス感応部(12)の最大外径(D)が0.55mm、全長(L)が0.7mm、表面積が1.2mm2 であり、ヒータ(13)を構成する白金線の素線径がφ20μm、全長が12.4mm(コイル部(13A)の長さが8.9mm)、コイル部(13A)の巻き数が18であり、通電時におけるヒータ(13)の発熱量が0.15Wである。
この熱線型半導体式ガスセンサに対して所定の暖機処理を行うことによりゼロ校正およびスパン校正を行った後、電源を一旦OFFし、電源をOFFしてから60分間が経過した時点で(無通電時間が60分間)、大気中において、電源を再投入して1.2Vの電圧(電流約120mA)を印加して通電させ、通電開始から7秒間が経過した時点を第1の測定対象時(t1)、通電開始から25秒間が経過した時点を第2の測定対象時(t2)とし、上記出力補正動作を行いながらガス濃度測定を行った。結果を図5(曲線(β))に示す。
実験例1において、所定の暖機処理が行われた後の無通電時間を24時間としたことの他は、実験例1と同様にして、ガス濃度の測定を行った。結果を図6に示す。
実験例1において、所定の暖機処理が行われた後の無通電時間を30分間としたことの他は、実験例1と同様にして、ガス濃度の測定を行った。結果を図7に示す。
実験例1において、所定の暖機処理が行われた後の無通電時間を5分間としたことの他は、実験例1と同様にして、ガス濃度の測定を行った。結果を図8に示す。
例えば、本発明は、熱線型半導体式ガスセンサに限定されるものではなく、例えば、半導体式ガスセンサ、接触燃焼式ガスセンサ、ニューセラミック式ガスセンサ、熱伝導式ガスセンサなどにも適用することができる。
また、センサ起動時における出力補正動作を行うに際して選ばれる第1の測定時(t1)および第2の測定時(t2)は、ガスセンサに固有のセンサ出力初期変動特性曲線における対数関数領域に対応する時間範囲内で設定されていれば、特に制限されるものではない。
さらにまた、上記センサ起動時における出力補正動作は電源が投入されてから一定時間の間行われるが、その後における出力補正が、ゼロ点を追尾する方法に切り換えられて行われるよう構成されていてもよい。
11 ガス感応素子(検出素子)
12 ガス感応部
13 ヒータ
13A コイル部
13B リード部
20 センサ駆動手段
30 制御手段
40 記憶手段
50 計時手段
Claims (4)
- 通電により加熱された状態において検知対象ガスに感応するガス感応素子を有するガスセンサと、当該ガスセンサの起動時において、一定時間間隔毎の順次の測定時に取得される前記ガスセンサよりのセンサ出力値を補正する出力補正機構とを具えてなり、
前記ガスセンサについての、センサ起動時に検知対象ガスを含まないゼロガスが導入されている状態において取得されるセンサ出力値の経時的変化を示すセンサ出力初期変動特性曲線が、通電が開始されてからの経過時間を横軸、センサ出力値を縦軸とした両対数座標系において、センサ出力値が経時的に直線的に減少する対数関数領域を有するものであり、
前記出力補正機構は、少なくとも前記センサ出力初期変動特性曲線における対数関数領域に対応する時間範囲内のいずれかの測定時を出力補正対象測定時とし、当該出力補正対象測定時において、
前記ガスセンサの起動時にゼロガスが導入されている状態において取得される、前記センサ出力初期変動特性曲線における対数関数領域に対応する時間範囲内において選ばれた、前記出力補正対象測定時以前の2つの測定時の各々におけるセンサ出力値に基づいて、当該出力補正対象測定時におけるセンサ出力値を予測して当該予測されたセンサ出力値を補正用出力値として取得する補正用出力取得処理、および、
当該出力補正対象測定時において実際に取得されるガスセンサよりのセンサ出力値を、当該補正用出力取得処理によって取得された補正用出力値に基づいて補正する出力補正処理
を行う機能を有することを特徴とするガス検知器。 - 前記出力補正機構は、前記出力補正対象測定時においてゼロガスが導入されていることが検出されたとき、当該出力補正対象測定時を前記2つの測定時のうちの時系列的に後の測定時として更新し、当該出力補正対象測定時の次の出力補正対象測定時における補正用出力取得処理および出力補正処理を行う機能を有することを特徴とする請求項1に記載のガス検知器。
- ガスセンサが熱線型半導体式ガスセンサであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガス検知器。
- ポータブル型のものとして構成されていることを特徴とする請求項3に記載のガス検知器。
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