JP4455789B2 - ガス検知装置、車両用オートベンチレーションシステム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ガスセンサ素子を用いて環境中の特定ガスの濃度変化を検知するガス検知装置および車両用オートベンチレーションシステムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、鉛−フタロシアニンを用いたり、WO3やSnO2などの金属酸化物半導体を用いたガスセンサ素子など、環境中のNOxなどの酸化性ガスやCO、HC(ハイドロカーボン)など還元性ガスなど、特定のガスの濃度変化によってそのセンサ抵抗が変化するために、このセンサ抵抗の変化によって特定のガス濃度の変化を検知可能なガスセンサ素子が知られている。また、このようなガスセンサ素子を用いたガス検知装置も知られている。さらには、このガス検知装置を用いた各種の制御システム、例えば、車室外空気の汚染状況に応じて、車室内への外気導入・内気導入を切り替えるためのフラップ開閉制御を行う車両用オートベンチレーションシステムや、喫煙などによる室内空気の汚染を検知し、空気清浄機の制御を行うシステムなどが知られている。
【0003】
このようなガスセンサ素子を用いたガス検知装置では、ガスセンサ素子の出力信号を微分してガス検知をおこなうもの、アナログ微分値をA/D変換した後、さらにデジタル微分して2階微分値を得てガス検知を行うもの、センサ信号を積分して得た積分値とセンサ信号とを比較してガス検知を行うものなどがある。
【0004】
ところで、特定ガスの濃度変化によりセンサ抵抗が変化するガスセンサ素子を用いるガス検知装置では、この装置の起動後、ガスセンサ素子を所定の温度(例えば約200〜300℃)となるようにヒータで加熱する。このため、ガスセンサ素子のセンサ抵抗が安定するまでに、例えば数分〜数10分程度の時間を要しており、安定するまでの期間については、特定ガスの検知を行わないようにしていた。この期間中には、たとえガス濃度に変化が無くとも、ガスセンサ素子のセンサ抵抗が変化するため、特定ガスの濃度変化が有ったと誤検知する可能性があるからである。
【0005】
しかし、この期間中にも特定ガスの濃度変化が生じることがあるから、できるだけ早い時期から、ガス検知可能なガス検知装置が求められている。
これに対し、特開平11−208244号公報に記載の発明では、ガスセンサの出力値を時間に応じて近似した第1近似値DGS(t)と、安定出力値の近似値である第2近似値DGS(max)とを用い、第1所定時間T1が経過するまでは、第2近似値DGS(max)と第1近似値DGS(t)との差と、ガスセンサの検知値とに基づいて内外気処理を行うものを開示している。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、実際には、ガスセンサ素子毎の特性のバラツキや、環境の温度(気温)や湿度、ガスセンサ素子自身の温度、駆動履歴、劣化の程度などの影響で、ガスセンサ素子のセンサ抵抗の安定化までに、センサ抵抗のたどる経路は、起動の度に違う。例えば、ガス検知装置をある程度の時間動作させた後に、間をおかず再起動した場合と、前回の動作から長時間経過後に再起動する場合とでは、ガスセンサ素子のセンサ抵抗が安定化するまでにたどる経路は異なるものとなる。
従って、上記特開平11−208244号公報に記載の発明のように、予め近似値を設定してこれを一律に適用しても、適切な処理をすることは困難である。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、起動後のガスセンサ素子の電気的特性が安定するまでの期間においても、できるだけ早い時期から適切にガス検知を行うことができるガス検知装置、及びこれを用いた車両用オートベンチレーションシステムを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段、作用及び効果】
そして請求項1に記載の解決手段は、特定ガスの濃度変化に応じてセンサ抵抗が変化するガスセンサ素子を用いるガス検知装置であって、上記ガスセンサ素子を用いてセンサ出力値を所定サイクル時間毎に取得する出力値取得手段と、上記ガス検知装置の起動の初期期間内であるか否かを判断する初期判断手段と、を備え、上記ガス検知装置の起動の初期期間内において、現在の上記センサ出力値と、過去と現在とに得られた上記センサ出力値のうちから選択した複数の上記センサ出力値であって、選択された上記複数のセンサ出力値のうち最も離れた2つの上記センサ出力値の取得時期が少なくとも2サイクル以上離れている複数のセンサ出力値を用いて得た補正値と、を用いて上記特定ガスの濃度上昇を検知するガス検知装置である。
【0009】
本発明のガス検知装置では、起動の初期期間内においては、現在のセンサ出力値のほか、過去にあるいは過去と現在に得られた複数のセンサ出力値を用いて得た補正値、を用いて特定ガスの濃度上昇を検知する。このように、本発明では、補正値を予め与えておくのではなく、起動の度に得られたセンサ出力値から補正値を得るから、起動の度にガスセンサ素子のセンサ抵抗のたどる経路が異なっていても、いずれの時にも、適切な補正値を用いることができるから、初期期間内であっても適切にガス検知を行うことができる。
補正値を得るのに用いられる複数のセンサ出力値は、最も離れた2つのセンサ出力値の取得時期が少なくとも2サイクル以上離れている。つまり、相前後して得た隣り合う2つのセンサ出力値のみを用いない。
【0010】
なお、本明細書において、「現在のセンサ出力値」とは、所定サイクル時間毎に取得されたセンサ出力値のうち、直近に取得されたセンサ出力値をいい、「過去のセンサ出力値」とは、直近より以前に取得されたセンサ出力値をいう。また、「初期期間」とは、ガス検知装置の起動によるセンサ素子への通電開始直後にセンサ抵抗値が急激に減少する急変期間を経過した後から、センサ素子のセンサ抵抗がほぼ安定する安定期間に至るまでの期間をいう。 また、特定ガスの濃度上昇を検知の手法としては、ガス濃度が上昇している期間だけを濃度上昇の信号を発生させて濃度上昇を検知するもののほか、ガス濃度に応じて濃度高信号と濃度低信号とを切り替えて出力するようにしておき、ガス濃度の上昇を捉えたら濃度低信号に代えて濃度高信号を出力することによって、濃度上昇を検知するものも挙げられる。
【0011】
また、請求項2に記載のガス検知装置であって、前記補正値は、所定の更新期間毎に、所定の更新条件に従って取得されるガス検知装置とすると良い。
【0012】
本発明のガス検知装置では、所定の更新期間毎に所定の更新条件によって補正値を算出するので、更新期間毎に適切な補正値が取得されるから、各々の期間について適切な補正値を用いることができる。
なお、「所定の更新期間」とは、補正値を更新する期間を指し、例えば、一定のサイクル数毎(例えば16サイクル毎など)とするほか、当初(例えば1分間)は比較的短い期間(小さなサイクル数)毎とし、その後は比較的長い期間(大きなサイクル数毎)とするなど、時間とともに、期間を変更するようにしておいても良い。
また、「所定の更新条件」とは、更新時期に、補正値を得るための条件を指し、例えば、補正値を算出するための算出式や算出式の適用条件、予め与えた補正値の1次元や2次元のテーブルの作成手法や、このようなテーブルの中から適切な補正値をピックアップするための選択式などが挙げられる。
【0013】
また、請求項3に記載の解決手段は、特定ガスの濃度変化に応じてセンサ抵抗が変化するガスセンサ素子を用いるガス検知装置であって、上記ガスセンサ素子を用いてセンサ出力値を所定サイクル時間毎に取得する出力値取得手段と、上記ガス検知装置の起動の初期期間内であるか否かを判断する初期判断手段と、上記初期期間のうち、上記特定ガスの濃度上昇を検知していない期間において、過去と現在とに得られた上記センサ出力値のうちから選択した複数の上記センサ出力値であって、選択された上記複数のセンサ出力値のうち最も離れた2つの上記センサ出力値が少なくとも2サイクル以上離れている複数のセンサ出力値を用いて、所定の更新期間毎に、所定の更新条件に従って、補正値を得る補正値取得手段と、上記特定ガスの濃度上昇を検知する濃度上昇検知手段であって、上記初期期間のうち、上記特定ガスの濃度上昇を検知していない期間には、現在の上記センサ出力値、及び上記補正値、を用いて上記特定ガスの濃度上昇を検知する濃度上昇検知手段と、を備えるガス検知装置である。
【0014】
本発明のガス検知装置では、起動の初期期間のうち、特定ガスの濃度上昇を検知していない期間(検知前の期間)に、補正値取得手段で、所定の更新期間毎に、所定の更新条件に従って、過去にあるいは過去と現在とに得られた複数のセンサ出力値を用いて補正値を更新して得る。そして、濃度上昇検知手段により、初期期間のうち、特定ガスの濃度上昇を検知していない期間には、現在のセンサ出力値と補正値とを用いて特定ガスの濃度上昇を検知する。このように、本発明では、補正値を予め与えておくのではなく、起動の度に得られたセンサ出力値から補正値を得るから、起動の度にガスセンサ素子のセンサ抵抗のたどる経路が異なっていても、いずれの時にも、適切な補正値を更新して得ることができるから、初期期間うち特定ガスの濃度上昇を検知前の期間において、適切にガス検知を行うことができる。
【0015】
さらに、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のガス検知装置であって、前記特定ガスの濃度低下を検知する濃度低下検知手段であって、前記初期期間のうち、前記特定ガスの濃度上昇を検知した後に、現在の前記センサ出力値と、前記特定ガスの濃度上昇を検知した際に用いていた前記補正値である上昇検知時補正値と、を用いて前記特定ガスの濃度低下を検知する濃度低下検知手段を備えるガス検知装置とすると良い。
【0016】
初期期間においては、特定ガスの濃度が上昇してしまうと、その後に得たセンサ出力値から補正値を適切に得ることは困難になる。この期間に得られるセンサ出力値には、初期期間であるためにガス濃度の変化に拘わりなくセンサ抵抗に生ずる変化に起因する分のほかに、特定ガス濃度の上昇によるセンサ出力値の変化に起因する分が加わっている。このため、得られたセンサ出力値の中から、初期期間であることに起因するセンサ出力値の変化だけを分離することは、困難だからである。従って、適切な補正値を得られないために、特定ガスの濃度が低下した場合にも、これを適切に捉えることが困難となる。
【0017】
これに対し、本発明のガス検知装置では、初期期間のうち、特定ガスの濃度上昇を検知した後には、現在のセンサ出力値のほか、上昇検知時補正値を用いて、特定ガス濃度の低下を検知する。
上述のように、初期期間のうち特定ガスの濃度上昇を検知した後には、センサ出力値から補正値を適切に得ることは困難になる。しかし、特定ガスの濃度上昇検知の前に得たセンサ出力値は、初期期間であるためにガス濃度の変化に拘わりなくセンサ抵抗に生ずる変化による分だけが含まれており、従って、これに対応する補正値もこの分を補正するための値となっているはずである。一方、初期期間においてガス濃度の変化に拘わりなくセンサ抵抗に生じる変化は、時間の経過とともに、徐々に少なくなってゆく傾向があるため、もし特定ガスの濃度が上昇しなかったと仮定した場合(つまり濃度上昇を検知しなかったと仮定した場合)に得られたであろう補正値も、短期的にはあまり変化しないと考えられる。
そこで、初期期間のうち特定ガスの濃度上昇を検知した後に用いる補正値としては、濃度上昇検知の際に使用していた上昇検知時補正値を用いるのが、最も確からしい補正値となると考えられる。
本発明では、このような上昇検知時補正値を用いるので、特定ガス濃度が上昇した後の濃度が高い期間中も、初期期間であることによるセンサ出力値の変化の影響を補正できるから、この期間中であっても特定ガスの濃度が低下したことを的確に捉えることができる。
【0018】
さらに請求項5に記載の解決手段は、特定ガスの濃度変化に応じてセンサ抵抗が変化するガスセンサ素子を用いるガス検知装置であって、上記ガスセンサ素子を用いてセンサ出力値を所定サイクル時間毎に取得する出力値取得手段と、現在または過去に得られた上記センサ出力値を用いて基準値を得る基準値取得手段と、上記特定ガスの濃度が低下したことを示す濃度低信号を発生している期間において、現在の上記センサ出力値と上記基準値との差である差分値が、第1しきい値に対して第1の大小関係を満たしたときに、上記濃度低信号に代えて上記特定ガスの濃度が上昇したことを示す濃度高信号を発生する濃度高信号発生手段と、上記ガス検知装置の起動の初期期間内であるか否かを判断する初期判断手段と、上記初期期間のうち、上記濃度低信号を発生している期間において、過去と現在とに得られた上記センサ出力値のうちから選択した複数の上記センサ出力値であって、選択された上記複数のセンサ出力値のうち最も離れた2つの上記センサ出力値の取得時期が少なくとも2サイクル以上離れている複数のセンサ出力値を用いて、所定の更新期間毎に、所定の更新条件に従って、補正値を得る補正値取得手段と、上記初期期間のうち、上記濃度低信号を発生している期間において、上記基準値と上記補正値とを用いて、補正済基準値を得る補正済基準値取得手段と、を備え、上記濃度高信号発生手段は、上記初期期間のうち、上記濃度低信号を発生している期間には、上記基準値に代えて、上記補正済基準値を用いるガス検知装置である。
【0019】
本発明のガス検知装置では、起動の初期期間のうち、濃度低信号を発生している期間に、補正値取得手段で、所定の更新期間毎に、所定の更新条件に従って、過去にあるいは過去と現在とに得られた複数の上記センサ出力値を用いて補正値を得る。そして、この初期期間のうち、濃度低信号を発生している期間には、基準値と補正値とを用いて補正済基準値を得、濃度高信号発生手段で、基準値に代えて、補正済基準値を用いる。
このように、補正値を予め与えておくのではなく、起動の度に得られたセンサ出力値から補正値を得るから、起動の度にガスセンサ素子のセンサ抵抗のたどる経路が異なっていても、いずれの時にも、適切な補正値を更新して得ることができる。従って、起動の初期期間のうち、濃度低信号を発生している期間にも、補正された補正済基準値を用いて、特定ガス濃度の上昇を的確に捉えて、濃度高信号を発生することができる。
【0020】
なお、本明細書において、濃度高信号発生手段は、濃度高信号を発生するもので有ればよいが、濃度高信号として、複数種類の信号を含んでいても良い。例えば、濃度高信号に含まれる信号として、特定ガス濃度が高い中でも、濃度レベルが比較的低い場合から特に高い場合までの複数段階(例えば、濃度レベルが、+、++、+++の3段階)に対応する複数レベルの信号を含んでいても良い。これらの信号の区別のためには、公知の手法、例えば、信号電圧レベルや信号コードなどを異ならせる手法を用いることができる。
また、これとは逆に、濃度低信号発生手段は、濃度低信号を発生するもので有ればよいが、濃度低信号として複数種類の信号を含んでいても良い。例えば、濃度低信号に含まれる信号として、特定ガス濃度が低い中でも、濃度レベルが特に低い場合から若干高い場合までの複数段階(例えば、濃度レベルが、−−−、−−、−の3段階)に対応する複数レベルの信号を含んでいても良い。
【0021】
さらに請求項6に記載の解決手段は、特定ガスの濃度変化に応じてセンサ抵抗が変化するガスセンサ素子を用いるガス検知装置であって、上記ガスセンサ素子を用いてセンサ出力値を所定サイクル時間毎に取得する出力値取得手段と、上記センサ出力値から下記式(1)に従ってベース値を算出するベース値算出手段と、
B(n)=B(n−1)+k{S(n)−B(n−1)} …(1)
但し、S(n)はセンサ出力値、B(n)はベース値、B(n−1)は1サイクル過去のベース値である前回ベース値、kは係数であり、0<k<1、nは時系列の順序を示す整数、上記特定ガスの濃度が低下したことを示す濃度低信号を発生している期間において、上記センサ出力値S(n)と上記ベース値B(n)との差である差分値D(n)が、第1しきい値Tuに対して第1の大小関係を満たしたときに、上記濃度低信号に代えて上記特定ガスの濃度が上昇したことを示す濃度高信号を発生する濃度高信号発生手段と、上記ガス検知装置の起動の初期期間内であるか否かを判断する初期判断手段と、上記初期期間のうち、上記濃度低信号を発生している期間において、過去と現在とに得られた上記センサ出力値のうちから選択した複数の上記センサ出力値であって、選択された上記複数のセンサ出力値のうち最も離れた2つの上記センサ出力値の取得時期が少なくとも2サイクル以上離れている複数のセンサ出力値を用いて、所定の更新期間毎に、所定の更新条件に従って、補正値を得る補正値取得手段と、上記初期期間のうち、上記濃度低信号を発生している期間において、上記前回ベース値B(n−1)に上記補正値Lを加えて、または上記前回ベース値B(n−1)から上記補正値Lを差し引いて、補正済の前回ベース値B(n−1)とする前回ベース値補正手段と、を備え、上記ベース値算出手段は、上記初期期間のうち、上記濃度低信号を発生している期間には、上記補正済の前回ベース値B(n−1)を用いて、ベース値B(n)を算出するガス検知装置である。
【0022】
本発明のガス検知装置では、起動の初期期間のうち、濃度低信号を発生している期間に、補正値取得手段で、所定の更新期間毎に、所定の更新条件に従って、過去にあるいは過去と現在とに得られた複数のセンサ出力値を用いて補正値Lを得る。そして、この初期期間のうち濃度低信号を発生している期間には、前回ベース値B(n−1)値に補正値Lを加え、あるいは前回ベース値B(n−1)値から補正値Lを差し引いて、補正済の前回ベース値B(n−1)を得、ベース値算出手段で、補正前の前回ベース値に代えて、補正済の前回ベース値B(n−1)を用いてベース値を算出する。
これにより、濃度高信号発生手段で、センサ出力値S(n)と、補正済の前回ベース値B(n−1)を用いて算出したベース値B(n)との差分値D(n)が、第1しきい値Tuに対して第1の大小関係を満たしたときに、濃度低信号に代えて濃度高信号を発生する。
このように、本発明では、補正値を予め与えておくのではなく、起動の度に得られたセンサ出力値から補正値を得るから、起動の度にガスセンサ素子のセンサ抵抗のたどる経路が異なっていても、いずれの時にも、適切な補正値を更新して得ることができる。従って、起動の初期期間のうち、濃度低信号を発生している期間にも、補正された補正済の前回ベース値、及びこれを用いて算出されたベース値を用いて、特定ガス濃度の上昇を的確に捉えて、濃度高信号を発生することができる。
【0023】
なお、ベース値B(n)は、上記式(1)によって算出される。また、差分値D(n)が、第1しきい値Tuに対して第1の大小関係を満たすか否かで濃度高信号を発生するか否かを決定している。そこで、差分値の式を変形すると、差分値D(n)=S(n)−B(n)=S(n)−{B(n-1)+k(S(n)-B(n-1))}=(1-k){S(n)-B(n-1)}となる。つまり、現在のセンサ出力値S(n)と前回ベース値B(n−1)との差S(n)-B(n-1)の(1−k)倍が、第1しきい値Tuに対して第1の大小関係を満たすか否かで濃度高信号を発生するか否かを決定していることになる。
ここで、本発明では、前回ベース値B(n−1)を補正値Lで補正する(補正値Lを加える、あるいは補正値Lを差し引く)ことから、濃度高信号発生手段は、初期期間のうち、濃度低信号を発生している期間には、補正前の前回ベース値に代えて、補正済の前回ベース値を用いてベース値B(n)を算出していることが判る。以上のことから、前回ベース値B(n−1)を基準値と考えれば、本発明においても、現在のセンサ出力値と基準値とからガス濃度上昇を判断するとともに、初期期間内には基準値が補正されていることとなる。
【0024】
さらに、特定ガスのガス検知装置であって、上記特定ガスの濃度が高くなるとセンサ抵抗が大きくなり、上記ガス検知装置の起動の後、上記特定ガスの濃度変化がないときには、上記センサ抵抗が上昇しつつ徐々に安定するガスセンサ素子と、上記ガスセンサ素子を用いて、センサ出力値を所定サイクル時間毎に取得する出力値取得手段であって、上記ガスセンサ素子の上記センサ抵抗が上昇したときに上記センサ出力値が大きくなるように構成された出力値取得手段と、上記センサ出力値から下記式(2)に従ってベース値を算出するベース値算出手段と、
B(n)=B(n−1)+k1{S(n)−B(n−1)} …(2)
但し、S(n)はセンサ出力値、B(n)はベース値、B(n−1)は1サイクル過去のベース値である前回ベース値、k1は第1係数であり、0<k1<1、nは時系列の順序を示す整数、上記センサ出力値S(n)と上記ベース値B(n)とから下記式(3)に従って差分値D(n)を算出する差分値算出手段と、
D(n)=S(n)−B(n) …(3)
上記差分値D(n)が下記式(4)を満たしているか否かを判断する差分値判断手段と、
D(n)>Tu …(4)
但し、Tuは第1しきい値、濃度低信号を発生している期間において、上記差分値判断手段で上記式(4)が満たされたときに、上記濃度低信号に代えて濃度高信号を発生する濃度高信号発生手段と、上記ガス検知装置の起動の初期期間内であるか否かを判断する初期判断手段と、上記初期期間のうち、上記濃度低信号を発生している期間において、過去と現在とに得られた上記センサ出力値のうちから選択した複数の上記センサ出力値であって、選択された上記複数のセンサ出力値のうち最も離れた2つの上記センサ出力値の取得時期が少なくとも2サイクル以上離れている複数のセンサ出力値を用いて、所定の更新期間毎に、所定の更新条件に従って、補正値を得る補正値取得手段と、上記初期期間のうち、上記濃度低信号を発生している期間に、上記前回ベース値B(n−1)に上記補正値Lを加えて補正済の前回ベース値B(n−1)とする前回ベース値補正手段と、を備え、上記ベース値算出手段は、上記初期期間のうち、上記濃度低信号を発生している期間には、上記補正済の前回ベース値B(n−1)を用いて、ベース値B(n)を算出するガス検知装置とするのが好ましい。
【0025】
このガス検知装置では、起動の初期期間のうち、濃度低信号を発生している期間に、補正値取得手段で、所定の更新期間毎に、所定の更新条件に従って、過去にあるいは過去と現在とに得られた複数の上記センサ出力値を用いて補正値Lを得る。そして、この初期期間のうち濃度低信号を発生している期間には、前回ベース値B(n−1)値に補正値Lを加え、補正済の前回ベース値B(n−1)を得、ベース値算出手段で、補正前の前回ベース値に代えて、補正済の前回ベース値B(n−1)を用いてベース値を算出する。
これにより、センサ出力値S(n)と、補正済の前回ベース値B(n−1)を用いて算出したベース値B(n)との差分値D(n)が、第1しきい値Tuよりも大きくなったときに、濃度低信号に代えて上記濃度高信号を発生する。
このように、本発明では、補正値を予め与えておくのではなく、起動の度に得られたセンサ出力値から補正値を得るから、起動の度にガスセンサ素子のセンサ抵抗のたどる経路が異なっていても、いずれの時にも、適切な補正値を更新して得ることができる。従って、起動の初期期間のうち、濃度低信号を発生している期間にも、補正された補正済の前回ベース値、及びこれを用いて算出されたベース値を用いて、特定ガス濃度の上昇を的確に捉えて、濃度高信号を発生することができる。
【0026】
しかも、このガス検知装置に用いるガスセンサ素子は、ガス濃度上昇によるセンサ抵抗の変化方向と、初期期間に安定状態に向かうセンサ抵抗の変化方向とが一致している特性のものを用いる。具体的には、ガス濃度が上昇したときセンサ抵抗が大きくなり、初期期間にもセンサ抵抗が大きくなりつつ安定に近づく。このため、初期期間には、補正を行わないと、安定期間に近づいているためにセンサ抵抗が大きくなっているにも拘わらず、ガス濃度の上昇によってセンサ抵抗が大きくなったためにセンサ出力値が大きくなったと誤検知されやすい。従って、このようにして補正することで、誤検知を防止することができる。
【0027】
また、特定ガスのガス検知装置であって、上記特定ガスの濃度が高くなるとセンサ抵抗が大きくなり、上記ガス検知装置の起動の後、上記特定ガスの濃度変化がないときには、上記センサ抵抗が上昇しつつ徐々に安定するガスセンサ素子と、上記ガスセンサ素子を用いて、センサ出力値を所定サイクル時間毎に取得する出力値取得手段であって、上記ガスセンサ素子の上記センサ抵抗が上昇したときに上記センサ出力値が小さくなるように構成された出力値取得手段と、上記センサ出力値から下記式(5)に従ってベース値を算出するベース値算出手段と、
B(n)=B(n−1)+k2{S(n)−B(n−1)} …(5)
但し、S(n)はセンサ出力値、B(n)はベース値、k2は第2係数であり、0<k2<1、nは時系列の順序を示す整数、上記センサ出力値S(n)と上記ベース値B(n)とから下記式(6)に従って差分値D(n)を算出する差分値算出手段と、
D(n)=B(n)−S(n) …(6)
上記差分値D(n)が下記式(7)を満たしているか否かを判断する差分値判断手段と、
D(n)>Tu …(7)
但し、Tuは第1しきい値、濃度低信号を発生している期間において、上記差分値判断手段で上記式(7)が満たされたときに、上記濃度低信号に代えて濃度高信号を発生する濃度高信号発生手段と、上記ガス検知装置の起動の初期期間内であるか否かを判断する初期判断手段と、上記初期期間のうち、上記濃度低信号を発生している期間において、過去と現在とに得られた上記センサ出力値のうちから選択した複数の上記センサ出力値であって、選択された上記複数のセンサ出力値のうち最も離れた2つの上記センサ出力値の取得時期が少なくとも2サイクル以上離れている複数のセンサ出力値を用いて、所定の更新期間毎に、所定の更新条件に従って、補正値を得る補正値取得手段と、上記初期期間のうち、上記濃度低信号を発生している期間に、上記前回ベース値B(n−1)から上記補正値Lを差し引いて補正済の前回ベース値B(n−1)とする前回ベース値補正手段と、を備え、上記ベース値算出手段は、上記初期期間のうち、上記濃度低信号を発生している期間には、上記補正済の前回ベース値B(n−1)を用いて、ベース値B(n)を算出するガス検知装置とするのが好ましい。
【0028】
このガス検知装置では、起動の初期期間のうち、濃度低信号を発生している期間に、補正値取得手段で、所定の更新期間毎に、所定の更新条件に従って、過去にあるいは過去と現在とに得られた複数の上記センサ出力値を用いて補正値Lを得る。そして、この初期期間のうち濃度低信号を発生している期間には、前回ベース値B(n−1)値から補正値Lを差し引いて、補正済の前回ベース値B(n−1)を得、ベース値算出手段で、補正前の前回ベース値に代えて、補正済の前回ベース値B(n−1)を用いてベース値を算出する。
これにより、補正済の前回ベース値B(n−1)を用いて算出したベース値B(n)と、センサ出力値S(n)との差分値D(n)が、第1しきい値Tuよりも大きくなったときに、濃度低信号に代えて上記濃度高信号を発生する。
このように、本発明では、補正値を予め与えておくのではなく、起動の度に得られたセンサ出力値から補正値を得るから、起動の度にガスセンサ素子のセンサ抵抗のたどる経路が異なっていても、いずれの時にも、適切な補正値を更新して得ることができる。従って、起動の初期期間のうち、濃度低信号を発生している期間にも、補正された補正済の前回ベース値、及びこれを用いて算出されたベース値を用いて、特定ガス濃度の上昇を的確に捉えて、濃度高信号を発生することができる。
【0029】
しかも、このガス検知装置に用いるガスセンサ素子は、ガス濃度が上昇したときセンサ抵抗が大きくなり、初期期間にもセンサ抵抗が大きくなりつつ安定に近づく。このため、初期期間には、補正を行わないと、安定期間に近づいているためにセンサ抵抗が大きくなっているにも拘わらず、ガス濃度の上昇によってセンサ抵抗が大きくなったためにセンサ出力値が小さくなったと誤検知されやすい。従って、このようにして補正することで、誤検知を防止することができる。
【0030】
さらに、特定ガスのガス検知装置であって、上記特定ガスの濃度が高くなるとセンサ抵抗が小さくなり、上記ガス検知装置の起動の後、上記特定ガスの濃度変化がないときには、上記センサ抵抗が上昇しつつ徐々に安定するガスセンサ素子と、上記ガスセンサ素子を用いて、センサ出力値を所定サイクル時間毎に取得する出力値取得手段であって、上記ガスセンサ素子の上記センサ抵抗が上昇したときに上記センサ出力値が大きくなるように構成された出力値取得手段と、上記センサ出力値から下記式(8)に従ってベース値を算出するベース値算出手段と、
B(n)=B(n−1)+k3{S(n)−B(n−1)} …(8)
但し、S(n)はセンサ出力値、B(n)はベース値、k3は第3係数であり、0<k3<1、nは時系列の順序を示す整数、上記センサ出力値S(n)と上記ベース値B(n)とから下記式(9)に従って差分値D(n)を算出する差分値算出手段と、
D(n)=B(n)−S(n) …(9)
上記差分値D(n)が下記式(10)を満たしているか否かを判断する差分値判断手段と、
D(n)>Tu …(10)
但し、Tuは第1しきい値、濃度低信号を発生している期間において、上記差分値判断手段で上記式(10)が満たされたときに、上記濃度低信号に代えて濃度高信号を発生する濃度高信号発生手段と、上記ガス検知装置の起動の初期期間内であるか否かを判断する初期判断手段と、上記初期期間のうち、上記濃度低信号を発生している期間において、過去と現在とに得られた上記センサ出力値のうちから選択した複数の上記センサ出力値であって、選択された上記複数のセンサ出力値のうち最も離れた2つの上記センサ出力値の取得時期が少なくとも2サイクル以上離れている複数のセンサ出力値を用いて、所定の更新期間毎に、所定の更新条件に従って、補正値を得る補正値取得手段と、上記初期期間のうち、上記濃度低信号を発生している期間に、上記前回ベース値B(n−1)に上記補正値Lを加えて補正済の前回ベース値B(n−1)とする前回ベース値補正手段と、を備え、上記ベース値算出手段は、上記初期期間のうち、上記濃度低信号を発生している期間には、上記補正済の前回ベース値B(n−1)を用いて、ベース値B(n)を算出するガス検知装置とするのが好ましい。
【0031】
このガス検知装置では、起動の初期期間のうち、濃度低信号を発生している期間に、補正値取得手段で、所定の更新期間毎に、所定の更新条件に従って、過去にあるいは過去と現在とに得られた複数の上記センサ出力値を用いて補正値Lを得る。そして、この初期期間のうち濃度低信号を発生している期間には、前回ベース値B(n−1)値に補正値Lを加えて、補正済の前回ベース値B(n−1)を得、ベース値算出手段で、補正前の前回ベース値に代えて、補正済の前回ベース値B(n−1)を用いてベース値を算出する。
これにより、補正済の前回ベース値B(n−1)を用いて算出したベース値B(n)と、センサ出力値S(n)との差分値D(n)が、第1しきい値Tuよりも大きくなったときに、濃度低信号に代えて上記濃度高信号を発生する。
このように、本発明では、補正値を予め与えておくのではなく、起動の度に得られたセンサ出力値から補正値を得るから、起動の度にガスセンサ素子のセンサ抵抗のたどる経路が異なっていても、いずれの時にも、適切な補正値を更新して得ることができる。従って、起動の初期期間のうち、濃度低信号を発生している期間にも、補正された補正済の前回ベース値、及びこれを用いて算出されたベース値を用いて、特定ガス濃度の上昇を的確に捉えて、濃度高信号を発生することができる。
【0032】
しかも、このガス検知装置に用いるガスセンサ素子は、ガス濃度上昇によるセンサ抵抗の変化方向と、初期期間に安定状態に向かうセンサ抵抗の変化方向とが逆となる特性のものを用いる。具体的には、ガス濃度が上昇したときセンサ抵抗が小さくなる。一方、初期期間にはセンサ抵抗が大きくなりつつ安定に近づく。このため、初期期間には、補正を行わないと、安定期間に近づいているためにセンサ抵抗が大きくなっているから、ガス濃度の上昇によってセンサ抵抗が小さくなってもセンサ抵抗値の変化が打ち消され、ガス濃度の上昇が起きているのに上昇していないと誤検知されたり、検知が遅れたりしやすい。従って、このようにして補正することで、誤検知や検知遅れを防止することができる。
【0033】
さらに、特定ガスのガス検知装置であって、上記特定ガスの濃度が高くなるとセンサ抵抗が小さくなり、上記ガス検知装置の起動の後、上記特定ガスの濃度変化がないときには、上記センサ抵抗が上昇しつつ徐々に安定するガスセンサ素子と、上記ガスセンサ素子を用いて、センサ出力値を所定サイクル時間毎に取得する出力値取得手段であって、上記ガスセンサ素子の上記センサ抵抗が上昇したときに上記センサ出力値が小さくなるように構成された出力値取得手段と、上記センサ出力値から下記式(11)に従ってベース値を算出するベース値算出手段と、
B(n)=B(n−1)+k4{S(n)−B(n−1)} …(11)
但し、S(n)はセンサ出力値、B(n)はベース値、k4は第4係数であり、0<k4<1、nは時系列の順序を示す整数、上記センサ出力値S(n)と上記ベース値B(n)とから下記式(12)に従って差分値D(n)を算出する差分値算出手段と、
D(n)=S(n)−B(n) …(12)
上記差分値D(n)が下記式(13)を満たしているか否かを判断する差分値判断手段と、
D(n)>Tu …(13)
但し、Tuは第1しきい値、濃度低信号を発生している期間において、上記差分値判断手段で上記式(13)が満たされたときに、上記濃度低信号に代えて濃度高信号を発生する濃度高信号発生手段と、上記ガス検知装置の起動の初期期間内であるか否かを判断する初期判断手段と、上記初期期間のうち、上記濃度低信号を発生している期間において、過去と現在とに得られた上記センサ出力値のうちから選択した複数の上記センサ出力値であって、選択された上記複数のセンサ出力値のうち最も離れた2つの上記センサ出力値の取得時期が少なくとも2サイクル以上離れている複数のセンサ出力値を用いて、所定の更新期間毎に、所定の更新条件に従って、補正値を得る補正値取得手段と、上記初期期間のうち、上記濃度低信号を発生している期間に、上記前回ベース値B(n−1)から上記補正値Lを差し引いて補正済の前回ベース値B(n−1)とする前回ベース値補正手段と、を備え、上記ベース値算出手段は、上記初期期間のうち、上記濃度低信号を発生している期間には、上記補正済の前回ベース値B(n−1)を用いて、ベース値B(n)を算出するガス検知装置とするのが好ましい。
【0034】
このガス検知装置では、起動の初期期間のうち、濃度低信号を発生している期間に、補正値取得手段で、所定の更新期間毎に、所定の更新条件に従って、過去にあるいは過去と現在とに得られた複数の上記センサ出力値を用いて補正値Lを更新して得る。そして、この初期期間のうち濃度低信号を発生している期間には、前回ベース値B(n−1)値から補正値Lを差し引いて、補正済の前回ベース値B(n−1)を得、ベース値算出手段で、補正前の前回ベース値に代えて、補正済の前回ベース値B(n−1)を用いてベース値を算出する。
これにより、センサ出力値S(n)と、補正済の前回ベース値B(n−1)を用いて算出したベース値B(n)との差分値D(n)が、第1しきい値Tuよりも大きくなったときに、濃度低信号に代えて上記濃度高信号を発生する。
このように、本発明では、補正値を予め与えておくのではなく、起動の度に得られたセンサ出力値から補正値を得るから、起動の度にガスセンサ素子のセンサ抵抗のたどる経路が異なっていても、いずれの時にも、適切な補正値を更新して得ることができる。従って、起動の初期期間のうち、濃度低信号を発生している期間にも、補正された補正済の前回ベース値、及びこれを用いて算出されたベース値を用いて、特定ガス濃度の上昇を的確に捉えて、濃度高信号を発生することができる。
【0035】
しかも、このガス検知装置に用いるガスセンサ素子は、ガス濃度上昇によるセンサ抵抗の変化方向と、初期期間に安定状態に向かうセンサ抵抗の変化方向とが逆となる特性のものを用いる。具体的には、ガス濃度が上昇したときセンサ抵抗が小さくなる。一方、初期期間にはセンサ抵抗が大きくなりつつ安定に近づく。このため、初期期間には、補正を行わないと、安定期間に近づいているためにセンサ抵抗が大きくなっているから、ガス濃度の上昇によってセンサ抵抗が小さくなってもセンサ抵抗値の変化が打ち消され、ガス濃度の上昇が起きているのに上昇していないと誤検知されたり、検知が遅れたりしやすい。従って、このようにして補正することで、誤検知や検知遅れを防止することができる。
【0036】
さらに請求項7に記載の解決手段は、特定ガスの濃度変化に応じてセンサ抵抗が変化するガスセンサ素子を用いるガス検知装置であって、上記ガスセンサ素子を用いてセンサ出力値を所定サイクル時間毎に取得する出力値取得手段と、上記特定ガスの濃度が低下したことを示す濃度低信号を発生している期間において、現在の上記センサ出力値と1サイクル過去に得られた上記センサ出力値である基準値との差である差分値が、第1しきい値に対して第1の大小関係を満たしたときに、上記濃度低信号に代えて上記特定ガスの濃度が上昇したことを示す濃度高信号を発生する濃度高信号発生手段と、上記ガス検知装置の起動の初期期間内であるか否かを判断する初期判断手段と、上記初期期間のうち、上記濃度低信号を発生している期間に、過去と現在とに得られた上記センサ出力値のうちから選択した複数の上記センサ出力値であって、選択された上記複数のセンサ出力値のうち最も離れた2つの上記センサ出力値の取得時期が少なくとも2サイクル以上離れている複数のセンサ出力値を用いて、所定の更新期間毎に、所定の更新条件に従って、補正値を得る補正値取得手段と、上記初期期間のうち、上記濃度低信号を発生している期間に、上記基準値に上記補正値を加えて、または上記基準値から上記補正値を差し引いて、補正済基準値を得る補正済基準値取得手段と、を備え、上記濃度高信号発生手段は、上記初期期間のうち、上記濃度低信号を発生している期間には、補正前の上記基準値に代えて、上記補正済基準値を用いるガス検知装置である。
【0037】
本発明のガス検知装置では、起動の初期期間のうち、濃度低信号を発生している期間に、補正値取得手段で、所定の更新期間毎に、所定の更新条件に従って、過去にあるいは過去と現在とに得られた複数の上記センサ出力値を用いて補正値を得る。そして、この期間には、1サイクル過去に得られたセンサ出力値である基準値に補正値を加えて、あるいは基準値から補正値を差し引いて補正済基準値を得、濃度高信号発生手段では、基準値に代えて、補正済基準値を用いる。
このように、補正値を予め与えておくのではなく、起動の度に得られたセンサ出力値から補正値を得るから、起動の度にガスセンサ素子のセンサ抵抗のたどる経路が異なっていても、いずれの時にも、適切な補正値を更新して得ることができる。従って、起動の初期期間のうち、濃度低信号を発生している期間にも、補正された補正済基準値を用いて、特定ガス濃度の上昇を的確に捉えて、濃度高信号を発生することができる。
【0038】
ここで、上記請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載のガス検知装置であって、前記初期期間のうち、前記濃度高信号を発生している期間において、前記基準値または前回ベース値と、前記濃度低信号に代えて前記濃度高信号を発生した際に用いていた前記補正値である切換時補正値と、を用いて、第2補正済基準値または第2補正済前回ベース値を得る第2補正済基準値取得手段と、前記濃度高信号に代えて前記濃度低信号を発生する濃度低信号発生手段であって、前記初期期間のうち、前記濃度高信号を発生している期間には、取得された現在の前記センサ出力値と上記第2補正済基準値または第2補正済前回ベース値との差である第2差分値が、第2しきい値に対して第2の大小関係を満たしたときに、前記濃度高信号に代えて前記濃度低信号を発生する濃度低信号発生手段と、を備えるガス検知装置とすると良い。
【0039】
初期期間においては、特定ガスの濃度が上昇して濃度高信号に切換えられると、その後に得たセンサ出力値から補正値を適切に得ることは困難になる。この期間に得られるセンサ出力値には、初期期間であるためにガス濃度の変化に拘わりなくセンサ抵抗に生ずる変化による分のほかに、特定ガス濃度の上昇によるセンサ出力値の変化による分が加わっている。このため、得られたセンサ出力値の中から、初期期間であることによるセンサ出力値の変化だけを分離することは、困難だからである。従って、適切な補正値が得られために、特定ガスの濃度が低下した場合にも、これを適切に捉えることが困難となる。
【0040】
これに対し、本発明のガス検知装置では、初期期間のうち濃度高信号を発生している期間には、第2補正済基準値取得手段において、基準値のほか、濃度低信号に代えて濃度高信号を発生した際に用いていた補正値である切換時補正値を用いて、第2補正済基準値または第2補正済前回ベース値を得る。次いで、濃度低信号発生手段で、取得された現在のセンサ出力値と第2補正済基準値または第2補正済前回ベース値との差である第2差分値が、第2しきい値に対して第2の大小関係を満たしたときに、濃度高信号に代えて濃度低信号を発生する。つまり特定ガス濃度の低下を検知する。
【0041】
上述のように、初期期間のうち濃度高信号の発生期間中は、この期間中に得たセンサ出力値から補正値を適切に得ることは困難になる。しかし、特定ガスの濃度上昇前、つまり濃度高信号発生の前に得たセンサ出力値は、初期期間であるためにガス濃度の変化に拘わりなくセンサ抵抗に生ずる変化による分だけが含まれており、従って、これに対応する補正値もこの分を補正するための値となっているはずである。一方、初期期間においてガス濃度の変化に拘わりなくセンサ抵抗に生じる変化は、時間の経過とともに徐々に少なくなってゆくと考えられるため、もし特定ガスの濃度が上昇しなかったと仮定した場合(つまり濃度低信号が維持されたと仮定した場合)に得られたであろう補正値も、短期的にはあまり変化しないと考えられる。そこで、初期期間のうち濃度高信号発生期間中に用いる補正値としては、濃度低信号に代えて濃度高信号を発生した際に使用していた切換時補正値を用いるのが、最も確からしい補正値となると考えられる。
本発明では、このような切換時補正値を用いて第2補正済基準値を得て、第2差分値が第2しきい値に対して第2の大小関係を満たしたときに、濃度高信号に代えて濃度低信号を発生する。このため、特定ガス濃度が上昇し濃度高信号の発生期間中も、初期期間であることによるセンサ出力値の変化の影響を補正できるから、この期間中であっても特定ガスの濃度が低下したことを的確に捉えて、濃度低信号を発生することができる。
【0042】
さらに、上記請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のガス検知装置であって、前記初期判断手段は、少なくとも、前記補正値が所定値よりも小さくなったことを条件として、前記初期期間が経過したと判断するガス検知装置とすると良い。
【0043】
ガスセンサ素子のセンサ抵抗は、特定ガスの濃度変化がないとした場合には、起動から時間が経過して初期期間の終了近くになると、ある値に徐々に近づくように変化する。従って、時間と共に変化が少なくなるから、補正値は徐々に小さな値で済むようになり、センサ抵抗が安定になれば、補正は不要となるはずである。従って、補正値が所定値よりも小さくなった場合には、初期期間が終了して補正が不要になったと考えられる。
そこで、本発明のガス検知装置では、これを条件とすることで、初期期間の経過を的確に判断することができる。
【0044】
さらに具体的には、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のガス検知装置であって、前記初期判断手段は、前記ガス検知装置の起動から所定時間の経過後であり、かつ、前記補正値が所定値よりも小さくなったとき、初期期間を経過したと判断するガス検知装置とするのが好ましい。
どのような場合でも、ある程度の初期期間は存在すると考えられる。一方、補正値は、ノイズその他の外乱によって変動することがあり得るため、補正値の大小のみから初期期間の経過を判断すると、実際には初期期間が経過していないのにも拘わらず、初期期間の経過と判断してしまう場合があり得る。
これに対し、このガス検知装置では、補正値が所定値よりも小さくなったことのほか、起動から所定時間の経過後であることを、初期期間が経過したと判断するための条件とする。このため、初期期間として所定時間以上の期間を確保できるから、少なくともその期間は確実に補正をすることが出来る。
【0045】
さらに、上記請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のガス検知装置であって、前記出力値取得手段において、前記特定ガスの濃度が上昇したときに、前記センサ出力値が変化する方向を第1方向、この逆を第2方向と定義したとき、更新後の前記補正値が、更新前の前記補正値よりも上記第2方向に変化しているときには、上記更新前の補正値に近づけるように上記更新後の補正値を修正する補正値修正手段を備えるガス検知装置とすると良い。
【0046】
初期期間においては、特定ガスの濃度上昇を確実に捉えることに加え、特定ガス濃度が上昇していないのにも拘わらず、上昇していると誤検知して、濃度高信号など濃度上昇を検知した信号を誤発生するのを防ぐことが重要になる場合がある。例えば、この信号を基に動作する車両用オートベンチレーションシステムにおいては、フラップを閉じるなどの誤動作が生じることになるからである。
ところで、センサ出力値は、ノイズや温度、湿度の変化などの外乱により、本来得られるはずの値からずれた値が取得される場合がある。また、補正値は、このようなセンサ出力値を用いて算出されるのであるから、補正値も、ノイズや温度、湿度の変化などの外乱により、本来用いるべき理想の補正値とは異なった補正値が得られることがある。
特に、更新後の補正値が更新前よりも第2方向に変化している場合には、以下の懸念がある。即ち、もし更新後の補正値が、ノイズ等の影響を受けて、不適切に第2方向に変化した場合には、この補正値を用いて補正すると適切な補正ができず、補正が不十分となるから、初期変化によるセンサ出力値の変化をガス濃度上昇であると誤検知する恐れがある。
【0047】
これに対し、本発明のガス検知装置では、更新後の補正値が、更新前の補正値よりも第2方向に変化しているときには、補正値修正手段により、更新後の補正値を更新前の補正値に近づけるように修正するので、特定ガス濃度が上昇していないにも拘わらず、上昇を検知するような誤検知を防止することができる。
なお、本明細書において、「第1方向」とは、前述したように、出力値取得手段において、特定ガスの濃度が上昇したときに、センサ出力値が変化する方向を指す。また、「第2方向」とは、第1方向と逆の方向、つまり、出力値取得手段において、特定ガスの濃度が低下した場合に、センサ出力値が変化する方向を指す。例えば、ガス検知装置が、特定ガス濃度が低下した場合に、センサ出力値が小さくなる出力値取得手段を有しているときには、値が大きくなる方向を第1方向といい、逆に、値が小さくなる方向を第2方向という。従って、この場合には、更新後の補正値が、更新前の補正値よりも小さな値となる方向に変化した場合が第2方向に変化した場合に該当する。逆に、ガス検知装置が、特定ガス濃度が低下した場合に、センサ出力値が大きくなる出力値取得手段を有しているときには、更新後の補正値が、更新前の補正値よりも大きな値となる方向に変化した場合が第2方向に変化した場合に該当する。
【0048】
さらに、上記請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載のガス検知装置であって、前記補正値を、第1サイクル数r(但しr≧2)経過毎に、その時点の前記センサ出力値と、これより上記第1サイクル数rだけ過去の前記センサ出力値との差を上記第1サイクル数rで除して得た値とするガス検知装置とすると良い。
【0049】
初期期間において、特定ガスの濃度変化がないとした場合には、ガスセンサ素子のセンサ抵抗値及びセンサ出力値は、それぞれ一定値に対して漸近するようにして近づくため、比較的短い期間毎に区切れば、その区間内では直線近似することができる。すると、その傾きはその期間のセンサ出力値の平均変化分に相当する。
このガス検知装置では、第1サイクルr経過毎に、第1サイクル数rに相当する期間のセンサ出力値の平均変化分に相当する補正値を更新して得る。例えば、r=16とすると、16サイクル毎に補正値L=[S(n)-S(n-16)]/16によって求める。このように平均変化分の大きさの補正値を用いることで、簡易に補正値を得ることができる。しかも、補正値を更新するので、各時点で適切な補正値を得ることができる。
また、第1サイクル数r毎に補正値を求めるので、rの数を増やした場合でも、記憶しておくべき過去のセンサ出力値の数を1つまたは2つの少ない数で済ますことができるから、必要となるメモリが小さくて済む。
【0050】
さらに、上記請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載のガス検知装置であって、前記補正値を、各サイクル毎に、現在の前記センサ出力値と、これよりも第2サイクル数t(但しt≧2)だけ過去の前記センサ出力値との差を、上記第2サイクル数tで除して得た値とするガス検知装置とすると良い。
【0051】
上述のように、初期期間において、センサ出力値は徐々に変化するため、次に得られる(次回の)センサ出力値と、現在のセンサ出力値との差は、最近の平均変化値とほぼ同じであると予測される。本発明では、第2サイクル数tに相当する期間のセンサ出力値の平均変化分に相当する補正値を更新して得る。例えば、t=16とすると、毎回、補正値L=[S(n)-S(n-16)]/16によって求める。このように平均変化分の大きさの補正値を用いることで、簡易に補正値を得ることができる。しかも、1サイクル毎に補正値を更新するので、各時点で適切な補正値を得ることができる。
【0052】
さらに、請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載のガス検知装置を含む車両用オートベンチレーションシステムとすると良い。
【0053】
本発明の車両用オートベンチレーションシステムは、初期期間であっても、特定ガスの濃度上昇、あるいは濃度上昇と濃度低下を検知できるので、これを用いて適切にベンチレーションを行うことができる。
【0054】
あるいは、外気導入口の開閉装置と、請求項5〜請求項8のいずれか1項に記載のガス検知装置と、前記濃度低信号の発生期間中は、上記外気導入口の開閉装置を全開とし、前記濃度高信号の発生期間中は、上記外気導入口の開閉装置を全閉とする開閉指示信号を出力する開閉指示手段と、を備える車両用オートベンチレーションシステムとすると良い。
【0055】
この車両用オートベンチレーションシステムでは、特定ガスの濃度に応じて、上記ガス検出装置が濃度低信号及び濃度高信号を発生し、濃度低信号を発生している時には、外気導入口の開閉装置を全開とし、濃度高信号を発生しているときには、外気導入口の開閉装置を全閉とする開閉支持信号を出力する。このため、初期期間も含め、特定ガスの濃度に応じて、適切に外気導入口の開閉装置を駆動することができる。
【0056】
【発明の実施の形態】
(実施形態1)
本発明の第1の実施形態について、図1〜図5を参照して説明する。図1に本実施形態1のガス検知装置10の回路図及びブロック図と、これを含む車両用オートベンチレーションシステム100の概略構成を示す。このシステム100は、被測定ガス中の特定ガスの濃度変化に応じて濃度信号LVを出力するガス検知装置10と、フラップ34を回動させて、内気取り入れ用ダクト32及び外気取り入れ用ダクト33のいずれかをダクト31に接続させる換気系30と、濃度信号LVに従って換気系30のフラップ34を制御する電子制御アセンブリ20とを備える。
【0057】
まずガス検知装置10について説明する。このガス検知装置10は、被測定ガス(本実施形態では大気)中にNOxなど酸化性ガス成分がある場合に、これに反応し、酸化性ガス成分の濃度上昇と共にセンサ抵抗値Rsが上昇するタイプの酸化物半導体のガスセンサ素子11を用いるものである。このガスセンサ素子11は自動車の車室外に配置される。
【0058】
このガスセンサ素子11を用い、センサ抵抗値変換回路14、バッファ13、A/D変換回路15からなるセンサ出力値取得回路19で、センサ出力値S(n)を取得する。センサ抵抗値変換回路14は、このガスセンサ素子11のセンサ抵抗値Rsに応じたセンサ出力電位Vsを出力する。具体的には、電源電圧Vccをガスセンサ素子11と検出抵抗値Rdを有する検出抵抗12とで分圧した動作点Pdのセンサ出力電位Vsを、バッファ13を介して出力するようになっている。このため、このセンサ抵抗値変換回路14では、NOxなどの酸化性ガスの濃度が上昇すると、センサ抵抗値Rsが上昇し、センサ出力電位Vsが上昇して、得られるセンサ出力値が大きくなるように構成されている。
バッファ13の出力(センサ出力電位Vs)は、A/D変換回路15に入力され、所定のサイクル時間毎(本実施形態では0.4秒毎)にデジタル化されたセンサ出力値S(n)としてマイクロコンピュータ16の入力端子17から取得される。nは順序を表す一連の整数である。このセンサ出力値取得回路19では、第1方向とはセンサ出力値S(n)などの値が大きくなる方向であり、第2方向とは、この逆に、センサ出力値S(n)などの値が小さくなる方向である。本実施形態におけるこのセンサ出力値取得回路19は、出力値取得手段の一例である。
【0059】
さらにこのマイクロコンピュータ16の出力端子18からは、電子制御アセンブリ20を制御するための濃度高信号と濃度低信号のいずれかの濃度信号LVが出力される。この電子制御アセンブリ20は、自動車の内気循環及び外気取り入れを制御する換気系30のフラップ34を制御するものである。この換気系30は、本実施形態では具体的には、自動車室内につながるダクト31に、二股状に接続された、内気を取り入れ循環させる内気取り入れ用ダクト32と外気を取り入れる外気取り入れ用ダクト33とを切り替えるフラップ34を制御するものである。
電子制御アセンブリ20のうち、フラップ駆動回路21は、マイクロコンピュータ16の出力端子18からの濃度信号LV、本実施形態に即して言えば、NOxなどの酸化性ガス成分の濃度が上昇したか下降したかを示す濃度信号LVに従って、アクチュエータ22を動作させフラップ34を回動させて、内気取り入れ用ダクト32及び外気取り入れ用ダクト33のいずれかをダクト31に接続させる。
【0060】
例えば、図2のフローチャートに示すように、ステップS1で初期設定を行った後、ステップS2で濃度信号LVを取得し、ステップS3で濃度信号LVが濃度高信号であるか否か、つまり濃度高信号発生中であるか否かを判断する。ここで、Noつまり濃度低信号発生中の場合には、特定ガスの濃度が低いのであるから、ステップS4において、フラップ34の全開を指示する。これにより、フラップ34が回動して、外気取り入れ用ダクト33がダクト31に接続され、外気が車室内に取り入れられる。一方、ステップS3においてYesつまり濃度高信号発生中の場合には、車室外の特定ガスの濃度が高いのであるから、ステップS5において、フラップ34の全閉を指示する。これにより、フラップ34が回動して、内気取り入れ用ダクト32がダクト31に接続され、外気導入が遮断されると共に、内気循環となる。なお、図2に示す電子制御アセンブリ20(フラップ駆動回路21)の制御は、後述する実施形態2及び変形形態1〜6においても共通に用いる。また、本実施形態におけるステップS3,S4,S5は、開閉指示手段の一例である。
【0061】
ダクト31内には、空気を圧送するファン35が設置されている。なお、フラップ駆動回路21は、濃度信号LVだけに応じてフラップ34を開閉するようにしても良いが、例えば、マイクロコンピュータなどを用い、ガス検出装置10による濃度信号LVの他、図1中に破線で示すように、例えば室温センサや湿度センサ、外気温センサなどからの情報をも加味して、フラップ34を開閉するようにしても良い。
【0062】
マイクロコンピュータ16では、入力端子17から入力されたセンサ出力値S(n)を後述するフローに従った処理を行うことにより、ガスセンサ素子11のセンサ抵抗値Rsやその変化などから酸化性ガス成分の濃度変化を検出する。マイクロコンピュータ16は、詳細は図示しないが、公知の構成を有し、演算を行うマイクロプロセッサ、プログラムやデータを一時記憶しておくRAM、プログラムやデータを保持するROMなどを含む。また、バッファ13やA/D変換回路15をも含むものを用いることもできる。
【0063】
次いで、マイクロコンピュータ16における制御を、図3のフローチャートに従って説明するのであるが、その前にまず、本実施形態で使用するガスセンサ素子11の特性が安定化するまでの期間におけるセンサ抵抗値Rsの変化について説明する。
ガスセンサ素子11は、通常使用時には、図1に示すように、ヒータ41によって約300℃程度に加熱された状態で使用される。不使用時のガスセンサ素子11が冷えた状態から、制御システムを起動し、ヒータ41によりガスセンサ素子11を加熱すると、特定ガスの濃度変化がない場合でも、センサ抵抗値Rsは、一旦、急激に低下した後、徐々に上昇し、次第に安定するような変化を示す。なお、この変化は、ガスセンサ素子の置かれた環境や使用履歴に影響を受けるため、同じ変化が起こるとは限らず、むしろ起動の度に異なる経路を通る。なお、ヒータ41は、マイクロコンピュータ16の端子43によりスイッチ素子42をオンオフさせることで、通電制御される。
【0064】
一方、このガスセンサ素子11の特定ガス(本実施形態では酸化性ガス)に対する反応は、センサ抵抗値Rsが徐々に上昇している期間においても生じることが判っている。即ち、センサ抵抗値Rsが、徐々に上昇している期間においても、特定ガスの濃度が上昇すると、センサ抵抗値Rsが加重して変化(本実施形態では、さらに大きく上昇)する。
このため、本実施形態1では、起動の後、センサ抵抗値Rsが徐々に上昇する期間には、特定ガスの濃度が変化しなくとも、得られるセンサ出力値S(n)が徐々に増加する。さらに、特定ガスの濃度が上昇すれば、センサ出力値S(n)の増加がさらに大きくなる。
【0065】
そこで、図3のフローチャートに従ってマイクロコンピュータ16の制御を行い、センサ抵抗値Rsが、徐々に上昇している期間においても、特定ガスの濃度変化を適切に把握することができるようにする。
自動車のエンジンが駆動されると、本制御システムが立ち上がり、ステップS11において、ヒータ19への通電が開始され、ガスセンサ素子11の加熱が始まる。その後、ステップS12において、センサ抵抗値が急激に減少する急変期間の経過を待つ。上記したように、ヒータ19への通電直後には、ガスセンサ素子11のセンサ抵抗値Rsが、一旦、急激に低下するから、この期間の経過を待つためである。この期間を本実施形態では30秒としている。その後、まずステップS13で初期設定を行う。初期設定としては、各フラグFc、Fdを初期値にリセットし(初期期間経過フラグFc=1,ガス検知フラグFd=1)、補正値L(0)=0とし、指定サンプリング回数Ns=0とする。ベース値B(0)として、急変期間経過後に得た当初のセンサ出力値S(0)を記憶しておく(B(0)=S(0))。また、濃度信号LVとして濃度低信号を発生させてフラップ34を全開としておく。具体的には濃度信号LVをローレベルとする。さらに、タイマのカウントを開始する。
【0066】
その後、ステップS14に進み、センサ信号つまりセンサ出力電位Vsを所定のサイクル時間(0.4秒)ごとにA/D変換したセンサ出力値S(n)を読み込む。
次いで、ステップS15において、初期期間が経過したか否かを判断する。具体的には、初期期間経過フラグFcが、Fc=0であるか否かを判断する。Fc=0(Yes)、つまりセンサ抵抗値Rsが十分安定して初期期間が経過した場合には、後述する補正は不要であるから、ステップS1Aに進む。一方、Fc=1(No)、つまりセンサ抵抗値Rsが上昇している初期期間内である場合には、ステップS16に進み、指定サンプリング回数NsをNs=Ns+1としてインクリメントする。ついでステップS17に進み、指定サンプリング回数Nsが所定値(本実施形態ではNs=16)となったか否かを判断する。ここで、No、即ちNs<16の場合には、ステップS18に進む。一方、Yes、即ち、Ns=16の場合には、ステップS20のサブルーチンに進む。つまり、ステップS14でのセンサ出力値S(n)のサンプリングを16回する毎に、ステップS20に進むことになる。このステップS15が、初期判断手段の一例である。
【0067】
ステップS18では、ガス検知フラグFdが、Fd=1であるか否か、つまりガス検知を行うか否かを判断する。なぜならば、システムを起動して、センサ出力値S(n)のサンプリングを開始してから、サンプリング回数がまだ16回未満の場合には、補正値L(Na)が算出されていないので、適切にガス検出ができないため、補正値L(Na)が算出されるまで待つ必要があるからである。従って、ガス検知フラグFdが、Fd=1(Yes)の場合には、ステップS14に戻る。このようにして、後述するサブルーチンS20内でガス検知フラグFdがFd=0にセットされるまで、ステップS14〜S18の処理を繰り返すこととなる。
一方、Fd=0(No)の場合には、ステップS19に進む。
【0068】
ステップS19では、1サイクル前に得た前回ベース値B(n−1)を、B(n−1)=B(n−1)+L(Na)の式に従って補正する。なお、補正値L(Na)は、後述するサブルーチンS20で算出したものである。
初期期間中には、特定ガスの濃度上昇がないにも拘わらず、初期期間中であるが故にガスセンサ素子11のセンサ抵抗値Rsが徐々に増加する。このため、センサ出力値S(n)も徐々に増加する。従って、後述するステップS1Bで差分値D(n)を得るために、次述するステップS1Aでベース値B(n)を算出するのに、この影響を加味しておく必要がある。そこで、初期期間であることに起因して、1サイクル分の期間中に増加するセンサ抵抗値Rsの増分を補償すべく、この増分に対応して生じるセンサ出力値S(n)の増分に概略相当する補正値L(Na)を別途算出しておき、ベース値B(n)の算出に用いる前回ベース値B(n−1)を補正値L(Na)で補正する(具体的には補正値L(Na)を加える)のである。これにより、初期期間内におけるセンサ抵抗値Rsやセンサ出力値S(n)の増加の影響を抑制して、初期期間内でも、後述するステップS1Cで、特定ガスの濃度上昇を検知できるようにする。このステップS19は、前回ベース値補正手段の一例である。
【0069】
次いで、ステップS1Aにおいて、現在のベース値B(n)を、B(n)=B(n−1)+k1{S(n)−B(n−1)}の式に従って算出する。なお、係数k1は、0<k1<1である。このベース値B(n)は、センサ出力値S(n)に遅れて追従するように変化する。追従の程度は上記係数k1によって変わり、k1が小さいと変化が小さく、S(n)の変化に対して遅れが大きくなる。一方、k1が大きいと、S(n)が素早く追従する。このステップS1Aは、ベース値算出手段の一例である。
さらに、ステップS1Bで差分値D(n)を、D(n)=S(n)−B(n)の式に従って算出する。
【0070】
さらに、ステップS1Cにおいて、この差分値D(n)が第1しきい値Tuよりも大きいか否かを判断する。ここで、Yes、つまりD(n)>Tuの場合には、センサ出力値S(n)とこれに遅れて追従するベース値B(n)との差が大きくなった、つまり特定ガスの濃度が上昇したために、S(n)が大きくなってB(n)との差が開いたと考えられるので、ステップS30のサブルーチンに進む。一方、NoつまりD(n)≦Tuの場合には、特定ガスの濃度は上昇していないと考えられ、ステップS1Dに進む。
なお、初期期間中(Fc=1)であるときは、ステップS19で前回ベース値B(n−1)を補正しているので、このステップS1Cでは補正された差分値D(n)を用いて判断することとなる。従って、初期期間内におけるセンサ抵抗値Rsやセンサ出力値S(n)の増加の影響を抑制して、特定ガスの濃度上昇の有無を判断することができる。これらのステップS1A,S1B,S1Cは、濃度上昇検知手段の一例である。
【0071】
ここで、前回ベース値B(n−1)が、上述のステップS19で補正されているので、差分値D(n)はD(n)=S(n)−B(n)=S(n)−{B(n-1)+k1(S(n)-B(n-1))}=(1-k1){S(n)-B(n-1)}と変形できる。つまり、このステップS1Cでは、現在のセンサ出力値S(n)と前回ベース値B(n−1)との差S(n)−B(n−1)の(1−k1)倍と、第1しきい値Tuとの大小関係により特定ガスの検知を行っているとも考えられる。従って、過去のセンサ出力値を用いて算出した前回ベース値B(n−1)を基準値として、センサ出力値S(n)と基準値B(n−1)との差分値を用いて特定ガス濃度の濃度上昇を判断していると考えることもできる。このように考えた場合には、ステップS19において、ステップS1Bで求め、ステップS1Cで判断する差分値D(n)を求めるための基準値B(n−1)が補正されたと考えることもできる。つまり、ステップS19は、補正済基準値算出手段の一例と考えることもできる。
【0072】
ステップS1Dでは、ステップS1Aで算出した現在のベース値B(n)を記憶し、ステップS14に戻る。これにより、再びセンサ出力値S(n)がサンプリングされ、前回ベース値B(n−1)が補正され(ステップS19)、ベース値B(n)が算出され(ステップS1A)、差分値D(n)が算出され(ステップS1B)、ステップS1Cにおいて、D(n)>Tuであるか否か、つまり、特定ガス濃度が上昇したかどうかが繰り返し判断される。
【0073】
次いで、ステップS20のサブルーチンについて、図4のフローチャートを参照して説明する。このサブルーチンでは、補正値L(Na)を算出する。即ち、このステップS20は、補正値取得手段の一例である。具体的には、ステップS21で、各数値を整えた(Ns=0,Fd=0,Na=Na+1)後、ステップS22で、補正値L(Na)を算出する。本実施形態では、L(Na)={S(n)−S(n−16)}/16の式により得る。この式から容易に理解できるように、直近に得た現在のセンサ出力値S(n)と、これより16サイクル前のセンサ出力値S(n−16)との差を、その間のサンプリング回数16で割って、この間のセンサ出力値の平均増加分を補正値L(Na)とする。なお、Naは正の整数であり、センサ出力値の指定サンプリング回数がNs回(本実施形態では16回)となる毎に、1ずつ増える値である。
補正値L(Na)として、最近のセンサ出力値の平均増加分を用いるのは、センサ出力値S(n)に含まれるノイズ分を除きつつ、初期期間内であるために特定ガス濃度に変化が無くてもセンサ抵抗値Rsが徐々に上昇することに起因する、最近のセンサ出力値の増加をキャンセルするのに適切な値となるからである。
【0074】
次いで、ステップS23で、L(Na)>L(Na−1)であるか否か、即ち、今回得た補正値L(Na)が、前回(即ち17サンプリング前)に得た補正値L(Na−1)よりも大きいか否かを判断する。ここで、Yesの場合には、ステップS24に進み、今回算出した補正値L(Na)を更新して記憶し、メインルーチン(図3参照)に戻り、ステップS19に進む。従って、更新された補正値L(na)を用いて以降の補正が行われることとなる。
一方、No、即ち、今回得た補正値L(Na)が、前回に得た補正値L(Na−1)よりも小さいとき、つまり、補正値が前回よりも小さな値となり、第2方向に変化した場合には、ステップS25に進む。
【0075】
ステップS25では、今回得た補正値L(Na)を、L(Na)=L(Na−1)+s{L(Na)−L(Na−1)}の式により修正する。なお、sは修正係数(0<s<1)である。この修正により、補正値L(Na)は、修正前よりも前回得た補正値L(Na−1)に近い値に修正される。
このようにして補正値L(Na)を修正するのは、ノイズや温度、湿度の変化などの外乱により、本来用いるべき理想の補正値L(Na)とは異なった補正値が得られることがあるから、特定ガス濃度が上昇していないにも拘わらず、上昇を検知するような誤検知が生じることがあるので、これを防止するためである。このステップS25は、補正値修正手段の一例である。
【0076】
さらに、ステップS26に進み、補正値L(Na)がしきい値SHより小さな値であるか否かを判断する。初期期間が経過し、センサ抵抗値Rsが安定して変化が小さくなると、センサ出力値S(n)の変化も少なくなり、補正値L(Na)も小さな値となるから、しきい値SHより小さくなった場合には、初期期間が経過したと考えられるからである。そこで、Yes(L(Na)<SH)の場合には、ステップS27に進む。一方、No((L(Na)≧SH)の場合には、ステップS24に進む。
【0077】
ステップS27では、ステップS13で計測を始めたタイマが、所定時間(本実施形態では3分)を経過したか否かを判断する。ステップS26でL(Na)<SHとなり、時間も十分経過していれば、初期期間を過ぎてセンサ抵抗値Rsは安定したと考えられるからである。そこで、ステップS28に進む。
一方、たとえステップS26でL(Na)<SHとなっても、タイマが所定時間を経過していない場合には、ステップS29を経由してステップS24に進む。通常の場合では、3分など所定時間以内にセンサ抵抗値Rsが安定になることは考えにくく、むしろ何らかの理由で補正値が小さくなりすぎた場合が考えられるからである。なお、このステップS29では、補正値L(Na)をさらに修正し、L(Na)=SHとする。たとえステップS22やS25で算出あるいは修正した得た補正値L(Na)であっても、しきい値SHよりも小さい場合には、補正による効果が小さくなりすぎる。従って、補正値L(Na)をしきい値SHに一致させて補正値L(Na)の取りうる最低値を保ち、補正の効果を保つためである。
【0078】
ステップS28では、初期期間経過フラグFcをFc=0にセットする。これにより、以降は初期期間が経過したとみなされる。そこで、続くステップS2Aでは補正値L(Na)をL(Na)=0とし、メインルーチン(図3参照)に戻り、ステップS19に進む。これにより、以降は、ステップS15によって初期期間が経過したと判断され、ステップS16〜S19がスキップされ、補正値L(Na)による補正を行うことなく、ベース値B(n)や差分値D(n)が算出され、特定ガスの濃度上昇の有無が判断される(ステップS1A〜S1C)。
【0079】
次いで、ステップS30のサブルーチンについて、図5を参照して説明する。このサブルーチンでは、ステップS1CでD(n)>Tuであるとき、つまり特定ガスの濃度上昇を検知した後の処理を行う。まず、ステップS31で、濃度高信号を発生する。具体的には、濃度信号LVをハイレベルにする。これにより、フラップ34が全閉となる。このステップS31は、濃度高信号発生手段の一例である。
次いで、ステップS32で、ステップS1Aで算出した現在のベース値B(n)を記憶し、ステップS33に進む。
ステップS33では、前記したステップS14と同様に、サンプリング周期(0.4秒)ごとにセンサ出力値S(n)を読み込む。
【0080】
次いで、ステップS34で、ステップS19と同様に、前回ベース値B(n−1)を、B(n−1)=B(n−1)+L(Na)の式に従って補正する。なお、補正値L(Na)は、ステップS1CでD(n)>Tuである、つまり特定ガスの濃度が上昇を検知したと判断したときに、上記したサブルーチンS20で算出して用いていた補正値(上昇検知時補正値、切換時補正値)である。つまり、前記したステップS19では、補正値L(Na)として、センサ出力値S(n)のサンプリング回数が指定サンプリング回数Nsとなる毎に更新された値を用いたが、ステップS34では、補正値L(Na)は更新されない。従って、このサブルーチンS30を一旦抜けない限り、サンプリング回数に拘わらず、補正値L(Na)として同じ値を用い続けることとなる。
なぜならば、特定ガスの濃度が高い場合には、ステップ20と同様にして補正値L(Na)を算出しようとしても、得られるセンサ出力値S(n)には、初期期間であるために、センサ抵抗値Rsが徐々に増加することに起因する影響のほかに、特定ガスの濃度が高くなったことに起因する影響が含まれているため、適切な補正値が得られない。そのため、補正値として、特定ガスを検出するときまで使用していた補正値L(Na)をそのまま用いるのが、適切であると考えられるからである。
【0081】
次いで、ステップS35において、現在のベース値B(n)を、前述のステップS1Aと同じく、B(n)=B(n−1)+k1{S(n)−B(n−1)}の式に従って算出する。ステップS34あるいはS35が第2補正済基準値取得手段の一例である。
さらに、ステップS36で、前述したステップS1Bと同じく、差分値D(n)を、D(n)=S(n)−B(n)の式に従って算出する。
【0082】
次いで、ステップS37で、この差分値D(n)が第2しきい値Tdよりも小さいか否かを判断する。ここで、Yes、つまりD(n)<Tdの場合には、センサ出力値S(n)とこれに遅れて追従するベース値B(n)との差が小さくなった、つまり特定ガスの濃度が低下したために、S(n)にB(n)が追従して、その差が縮まったと考えられるので、ステップS38に進み、濃度低信号を発生する。具体的には、濃度信号LVをローレベルにする。これにより、フラップ34が全開となる。このステップS38は、濃度低信号発生手段の一例である。また、ステップS34〜S37は、濃度低下検出手段の一例である。
一方、NoつまりD(n)≧Tdの場合には、特定ガスの濃度がまだ低下していないと考えられるので、ステップS32に戻り、ステップS32〜S37を繰り返す。
なお、第2しきい値Tdは、第1しきい値Tuと比して、Td<Tuとなるように設定しておくと良い。短時間で濃度高信号と濃度低信号とが入れ替わるチャタリングの発生を防止するためである。
【0083】
ステップS38の後には、ステップS39で、現在のベース値B(n)を記憶し、ステップS3Aで、各数値を整えた(Ns=0,Fd=1)後、メインルーチンに戻り、ステップS14に進む。従って、再び、濃度低信号発生期間中の処理が行われる。なお、このサブルーチンを経由してメインルーチンに戻った直後には、適切な補正値L(Na)が得られていないと考えられるため、ガス検知フラグFd=1としている。これにより、16回のサンプリング回数を重ねて再び補正値L(Na)を得た後に、ガス濃度上昇を検知することができるようになる。
なお、ステップS30のサブルーチンにおいても、初期期間が経過した後には、ステップS29で補正値L(Na)がL(Na)=0とされることから、ステップS34で実質的に前回ベース値B(n−1)が補正されることなく、ステップS37で特定ガスの濃度低下の有無が判断されることになる。
【0084】
上記した本実施形態1の車両用オートベンチレーションシステム100のうち、ガス検知装置10の制御によれば、システム100の起動後、概略以下の処理が行われる。即ち、濃度低信号を発生した状態からスタートし、初期期間が経過した否かを判断する(ステップS15)。初期期間経過前には、補正値L(Na)を得た後(ステップS20)、前回ベース値B(n−1)を補正し(ステップS19)、ベース値B(n)及び差分値D(n)を算出し(ステップS1A,S1B)、差分値D(n)を第1しきい値Tuと比較して特定ガス濃度の上昇の有無を判断する(ステップS1C)。このため、本実施形態1によれば、初期期間中であるために生じるガスセンサ素子11のセンサ抵抗値Rsの変動(増加)にも拘わらず、適切に特定ガスの濃度上昇を検知することができる。
なお、初期期間経過後は、補正を行わずに、ベース値及び差分値を算出して、特定ガス濃度の上昇の有無を判断する。従って、初期期間経過後も、適切に特定ガスの濃度上昇検知ができる。
【0085】
一方、ステップS20のサブルーチン内では、補正値L(Na)を算出するとともに、補正値L(Na)としきい値SHとの比較(ステップS26)及び初期タイマの経過(ステップS27)により、初期期間の経過を判断する。
また、ステップS30のサブルーチンでは、ステップS1Cで特定ガスの濃度上昇を検知した後の処理をする。具体的には、濃度高信号を発生し(S31)、ベース値B(n)及び差分値D(n)を算出し(ステップS35,S36)、差分値D(n)を第2しきい値Tdと比較して特定ガス濃度の低下の有無を判断する(ステップS37)。なお、ステップS34において前回ベース値B(n−1)が、特定ガスの濃度上昇検知時の補正値L(Na)によって補正される。従って、初期期間中でも、適切にガス濃度の低下を検知できる。なお、初期期間経過後は補正値L(Na)=0となるので、実質的に補正はなされないようになっている。その後、特定ガスの濃度低下を検知すると、濃度低信号を発生してメインルーチンに戻り、再び特定ガスの濃度上昇の有無を判断する。
【0086】
次いで、具体的にガス検出装置10によって測定して得たセンサ出力値S(n)、及び上述のフローチャートに従って処理算出されたベース値B(n)、出力された濃度信号LVの変化と、別途同時に測定したNO2ガス濃度計測器(Interscan社製、MODEL4150-2)によるNO2ガス濃度変化との関係のグラフを、図6に示す。なお、実際には、S(n),B(n)は数値として処理されているが、理解容易のため、センサ出力電圧Vsに相当する値に換算して示してある。また、このグラフでは、急変期間に相当する起動から30秒間は除外し、30秒経過時点を時間の起点として表示している。
この図6のグラフから容易に理解できるように、センサ出力値S(n)は、全体としてみると、徐々に増加しながらも次第に安定して、ほぼ一定値(本例では約3.0V)に近づくように変化する。
但し、NO2ガス濃度が高くなった各時点では、このような緩やかな変化に加えて上側に凸状となる変化が生じることが判る。つまり、センサ出力値Rsが安定するまでの初期期間内でも、NO2ガスに反応してセンサ出力値Rsが変化し、センサ出力値S(n)が変化することが判る。
【0087】
これに対して、ベース値B(n)はセンサ出力値S(n)に遅れつつも追従して変化する。しかも、このベース値B(n)は補正されているので、NO2ガスの濃度が低い期間には、センサ出力値S(n)との差があまり大きくならず、従って、濃度信号は、大半の期間において、ローレベル(濃度低信号)を保っていることが判る。一方、NO2ガスの濃度が上昇すると、センサ出力値S(n)とベース値B(n)との差が開いて第1しきい値Tuを超えるため、濃度信号がハイレベル(濃度高信号)に切り替わる。そして再びNO2ガスの濃度が低下すると、センサ出力値S(n)とベース値B(n)との差が小さくなって第2しきい値Tdを下回るため、濃度信号が再びローレベル(濃度低信号)に戻される。
このようにして、本実施形態1によれば、初期期間内であっても、NO2ガス濃度計測器でのNO2ガス濃度が低い場合にはローレベルを、ガス濃度が高い場合にはハイレベルを出力しており、適切にNO2ガスのガス検知が可能であることが判る。
【0088】
なお、比較形態として、同じセンサ出力値S(n)について、上述の補正を行わずに、ベース値B(n)及び差分値D(n)を算出して、濃度信号LVを出力させた場合について、結果を図7のグラフに示す。この比較形態では、初期期間の大半において、濃度信号がハイレベルとなっている。これは、ベース値B(n)が補正されていないため、初期期間内である故にガスセンサ素子11に生じるセンサ抵抗値Rsの増加を、NO2ガスの濃度上昇によるものであると誤検知したために生じるものである。具体的には、ベース値B(n)は補正されていないため、センサ出力値S(n)の増加に十分追従できず、その差が大きくなりがちになる。このため、NO2ガスの濃度が低いのにも拘わらず、センサ出力値S(n)とベース値B(n)との差が大きくなって第1しきい値Tuを超えて、濃度信号LVがハイレベルとなって誤検知が生じるのである。
従って、補正を行わない本比較形態では、初期期間において適切なガス検知ができないことが判る。
【0089】
(変形形態1)
上記実施形態1では、センサ抵抗値変換回路14のガスセンサ素子11と検出抵抗12との分圧回路において、ガスセンサ素子11を接地側に配置してセンサ出力値S(n)を得ていたため、センサ抵抗値Rsが増加すると、得られるセンサ出力値S(n)が大きくなるように構成されている(図1参照)。これに対し、センサ抵抗値Rsが増加すると、得られるセンサ出力値S(n)が小さくなるようにセンサ出力値取得回路を構成することもできる。その一例である本変形形態1の車両用オートベンチレーションシステム100Aでは、図8に示すように、ガス検知装置10Aのセンサ抵抗値変換回路14Aのうち、ガスセンサ素子11Aと検出抵抗12Aとの分圧回路において、検出抵抗12Aを接地側に配置している。
本変形形態1の車両用オートベンチレーションシステム100Aは、その構成上は、図8に示すように、センサ抵抗値変換回路14Aにおけるガスセンサ素子11Aと検出抵抗12Aとの分圧回路について実施形態1と異なる(図1参照)のみであるので、説明を省略する。即ち、本変形形態1でも、NOxなど酸化性ガス成分に反応し、その濃度上昇と共にセンサ抵抗値Rsが上昇するタイプの酸化物半導体のガスセンサ素子11Aを用いる。
また、図9に示すように、マイクロコンピュータ16における処理が実施形態1(図3〜図5参照)と若干異なるが、他の部分は同様である。そこで、本変形形態1におけるマイクロコンピュータ16の処理のうち、実施形態1と異なる部分を中心に説明し、同様な部分は説明を省略あるいは簡略化する。
【0090】
本変形形態1では、上述したように、センサ抵抗値Rsが増加すると、得られるセンサ出力値S(n)が小さくなるようにセンサ出力値取得回路19Aを構成してある。このため、マイクロコンピュータ16における処理において、この特性を考慮する必要がある。即ち、酸化性ガスの濃度が上昇して、センサ抵抗値Rsが大きくなると、センサ出力値S(n)が小さくなる。また、初期期間内であるためにセンサ抵抗値Rsが大きくなっても、センサ出力値S(n)が小さくなる。
そこで、実施形態1のメインルーチン(図3参照)におけるステップS19に代えて、図9(a)に示すように、ステップS19Aにより、前回ベース値B(n−1)を、B(n−1)=B(n−1)−L(Na)の式に従って補正する。さらに、ステップS1Aに代えて、ステップS1AAにより、B(n)=B(n−1)+k2{S(n)−B(n−1)}の式に従って算出する。なお、係数k2は、0<k2<1である。次いで、ステップS1Bに代えて、ステップS1BAにより、差分値を、D(n)=B(n)−S(n)の式に従って算出する。
【0091】
その後は、実施形態1と同じく、ステップS1Cにおいて、この差分値D(n)が第1しきい値Tuよりも大きいか否かを判断し、Yesの場合には、ステップS30のサブルーチンに進み、Noの場合には、ステップS1Dに進む。ステップS1Dでは、現在のベース値B(n)を記憶し、ステップS14に戻る。これにより、特定ガス濃度が上昇したかどうかが繰り返し判断される。
なお、初期期間中(Fc=1)であるときは、ステップS19Aで前回ベース値B(n−1)を補正しているので、このステップS1Cでは補正された差分値D(n)を用いて判断することとなる。従って、初期期間内におけるセンサ抵抗値Rsやセンサ出力値S(n)の増加の影響を抑制して、特定ガスの濃度上昇の有無を判断することができる。ここで、前回ベース値B(n−1)が、上述のステップS19Aで補正されているので、実施形態1で説明したのと同様に考えて、、ステップS1BAで差分値D(n)を求めるための基準値B(n−1)が補正されたと考えることもできる。
【0092】
次いで、ステップS20のサブルーチンについて、図9(b)に示すフローチャートの変更部分を参照して説明する。本変形形態1のサブルーチンでも、実施形態1とほぼ同様にして補正値L(Na)を算出する。
但し、ステップS21で各数値を整えた後、ステップS22に代えてステップS22Aで、補正値L(Na)を、L(Na)={S(n−16)−S(n)}/16の式に従って算出する。このステップS22Aでも直近に得た現在のセンサ出力値S(n)と、これより16サイクル前のセンサ出力値S(n−16)との差を、その間のサンプリング回数16で割り、この間のセンサ出力値の平均増加分を補正値L(Na)とする。
【0093】
以降は実施形態1と同様にして処理する。即ち、ステップS23で、L(Na)>L(Na−1)を判断し、Yesのときは、今回算出した補正値L(Na)を更新して記憶し(ステップS24)、メインルーチン(図3、図9(a)参照)に戻り、ステップS19Aに進む。一方、Noのときは、今回得た補正値L(Na)を修正し(ステップS25)、さらにL(Na)<SHか否かを判断し(ステップS26)、Yesのときはステップ27に、NoのときはステップS24に進む。ステップS27では、タイマが、所定時間を経過したか否かを判断し、YesのときはステップS28に進む。一方、NoのときはステップS29を介してステップS24に進む。ステップS28では、初期期間経過フラグFcをFc=0にセットし、続くステップS29で補正値L(Na)をL(Na)=0とし、メインルーチン(図3、図9(a)参照)に戻り、ステップS19Aに進む。これにより、以降は、ステップS15によって初期期間が経過したと判断され、補正値L(Na)による補正を行うことなく、ベース値B(n)や差分値D(n)が算出され、特定ガスの濃度上昇の有無が判断される。
【0094】
次いで、ステップS30のサブルーチンについて、図9(c)を参照して説明する。本変形形態1のサブルーチンでも、実施形態1と同様にして特定ガスの濃度上昇を検知した後の処理を行う。
但し、本変形形態1のメインルーチン(図9(a)参照)と同じく、ステップS34に代えて、ステップS34Aで、ステップS19Aと同様に、前回ベース値B(n−1)を、B(n−1)=B(n−1)−L(Na)の式に従って補正する。なお、このステップS34Aでも、更新されない補正値L(Na)を用いる点は実施形態1と同じである。さらに、ステップS35Aにおいて、現在のベース値B(n)を、前述のステップS1AAと同じく、B(n)=B(n−1)+k2{S(n)−B(n−1)}の式に従って算出する。さらに、ステップS36Aで、前述したステップS1BAと同じく、差分値D(n)を、D(n)=B(n)−S(n)の式に従って算出する。
【0095】
以降は実施形態1と同様にして処理する。即ち、ステップS37で、この差分値D(n)が第2しきい値Tdよりも小さいか否かを判断し、Yesのときは、ステップS38に進み、濃度低信号を発生する。一方、Noのときには、ステップS32に戻り、ステップS32〜S37を繰り返す。ステップS38の後には、ステップS39で、現在のベース値B(n)を記憶し、ステップS3Aで、各数値を整えた後、メインルーチンに戻り、ステップS14に進み、再び、濃度低信号発生期間中の処理行う。
なお、ステップS30のサブルーチンにおいて、初期期間が経過した後には、実質的に前回ベース値が補正されることなく特定ガスの濃度低下の有無が判断される点も実施形態1と同様である。
【0096】
以上の変形形態1の車両用オートベンチレーションシステム100Aのうち、ガス検知装置10Aの制御によっても、初期期間経過前には、補正値L(Na)を得た後(ステップS20)、前回ベース値B(n−1)を補正し(ステップS19A)、ベース値B(n)及び差分値D(n)を算出し(ステップS1AA,S1BA)、差分値D(n)を第1しきい値Tuと比較して特定ガス濃度の上昇の有無を判断する(ステップS1C)。このため、本変形形態1によっても、初期期間中であるために生じるガスセンサ素子11Bのセンサ抵抗値Rsの変動にも拘わらず、適切にガス検知をすることができる。つまり、初期期間中であるため、ガスセンサ素子11Aのセンサ抵抗値Rsの変動(増加)するにも拘わらず、適切に特定ガスの濃度上昇を検知することができる。また、ステップ30のサブルーチン(特にステップ34A)により、初期期間中であっても、適切に特定ガスの濃度低下を検知することができる。
【0097】
(変形形態2)
次いで、変形形態2について説明する。上記実施形態1及び変形形態1では、NOxなど酸化性ガス成分に反応し、その濃度上昇と共にセンサ抵抗値Rsが上昇するタイプの酸化物半導体のガスセンサ素子11,11Aを用いた。これに対し、本変形形態2及び次述する変形形態3では、CO(一酸化炭素),HC(ハイドロカーボン)など還元性ガス成分に反応し、その濃度上昇と共にセンサ抵抗値Rsが低下するタイプの酸化物半導体のガスセンサ素子11B、11Cを用いる点で異なる。
なお、これらのガスセンサ素子11B,11Cは、不使用時であるためガスセンサ素子11B,11Cが冷えた状態から、ヒータ41によりガスセンサ素子11B,11Cを加熱すると、特定ガスの濃度変化がない場合でも、センサ抵抗値Rsは、一旦、急激に低下した後、徐々に上昇し、次第に安定するような変化を示す点、及びこの変化は、環境や使用履歴等に影響を受け、起動の度に異なる経路を通る点で、実施形態1及び変形形態1のガスセンサ素子11,11Aと同様である。また、これらのガスセンサ素子11B,11Cの還元性ガスに対する反応が、センサ抵抗値Rsが徐々に上昇している期間においても生じる点でも同じである。但し、センサ抵抗値Rsが、徐々に上昇している期間において、還元性ガスの濃度が上昇すると、センサ抵抗値Rsが加重して変化し、センサ抵抗値Rsが、小さくなる、あるいは上昇が緩やかになる点で異なる。
【0098】
さらに、図1に示す本変形形態2の車両用オートベンチレーションシステム100Bでは、ガス検知装置10Bのセンサ抵抗値変換回路14Bのうち、ガスセンサ素子11Bと検出抵抗12の分圧回路において、ガスセンサ素子11Bを接地側に配置している。従って、本変形形態2では、センサ抵抗値Rsが徐々に上昇する期間には、特定ガスの濃度が変化しなくとも、得られるセンサ出力値S(n)が徐々に増加する。一方、特定ガスの濃度が上昇すれば、センサ出力値S(n)が減少するか、その増加が緩やかに(小さく)なる。
【0099】
上記したように、本変形形態2の車両用オートベンチレーションシステム100Bは、実施形態1と対比して、その構成上は、図1に示すように、ガスセンサ素子11Bの特性が異なるのみであるので、説明を省略する。
また、図10に示すように、マイクロコンピュータ16における処理が実施形態1と若干異なる(図3〜図5参照)が、他の部分は同様である。そこで、本変形形態2におけるマイクロコンピュータ16の処理のうち、実施形態1と異なる部分を中心に説明し、同様な部分は説明を省略あるいは簡略化する。
【0100】
本変形形態2では、上述したように、センサ抵抗値Rsが増加すると、得られるセンサ出力値S(n)が大きくなるようにセンサ出力値取得回路19Bを構成してある。このため、マイクロコンピュータ16における処理において、この特性を考慮する必要がある。即ち、還元性ガスの濃度が上昇して、センサ抵抗値Rsが小さくなると、センサ出力値S(n)が小さくなる。一方、初期期間内であるためにセンサ抵抗値Rsが大きくなると、センサ出力値S(n)が大きくなる。
そこで、図10(a)に示すように、まず、実施形態1のメインルーチン(図3参照)におけるステップS19と同様に、前回ベース値B(n−1)を、B(n−1)=B(n−1)+L(Na)の式に従って補正する。一方、ステップS1Aに代えて、ステップS1ABにより、B(n)=B(n−1)+k3{S(n)−B(n−1)}の式に従って算出する。なお、係数k3は、0<k3<1である(例えば、k3=1/16)。次いで、ステップS1Bに代えて、ステップS1BBにより、差分値を、D(n)=B(n)−S(n)の式に従って算出する。
その後は、実施形態1と同様に処理する。
【0101】
次いで、ステップS20のサブルーチンについて、図10(b)に示す部分フローチャートを参照して説明する。本変形形態2のサブルーチンでは、実施形態1と同様にして補正値L(Na)を算出する。
つまり、変形形態1とは異なり、ステップS21で各数値を整えた後、実施形態1と同じく、ステップS22で、補正値L(Na)を、L(Na)={S(n)−S(n−16)}/16の式に従って算出する。その後も、実施形態1と同様にして処理する。但し、ステップS27(図3参照)においては図示しないが、タイマが30秒経過したかどうかで判断するようにしている。実施形態1で用いた素子に比して、比較的早く安定期間となる傾向があるからである。
【0102】
次いで、ステップS30のサブルーチンについて、図10(c)を参照して説明する。本変形形態2のサブルーチンでも、実施形態1と同様にして特定ガスの濃度上昇を検知した後の処理を行う。
但し、メインルーチン(図3、図10(a)参照)と同じく、ステップS34で、ステップS19と同様に、前回ベース値B(n−1)を、B(n−1)=B(n−1)+L(Na)の式に従って補正した後、ステップS35Bにおいて、現在のベース値B(n)を、前述のステップS1ABと同じく、B(n)=B(n−1)+k3{S(n)−B(n−1)}の式に従って算出する。さらに、ステップS36Bで、前述したステップS1BBと同じく、差分値D(n)を、D(n)=B(n)−S(n)の式に従って算出する。
以降は実施形態1と同様にして処理する。
【0103】
以上の変形形態2の車両用オートベンチレーションシステム100Bのうち、ガス検知装置10Bの制御によっても、初期期間経過前には、補正値L(Na)を得た後(ステップS20)、前回ベース値B(n−1)を補正し(ステップS19)、ベース値B(n)及び差分値D(n)を算出し(ステップS1AB,S1BB)、差分値D(n)を第1しきい値Tuと比較して特定ガス濃度の上昇の有無を判断する(ステップS1C)。このため、本変形形態2によっても、初期期間中であるために生じるガスセンサ素子11Bのセンサ抵抗値Rsの変動(増加)にも拘わらず、適切に特定ガスの濃度上昇を検知をすることができる。また、ステップ30のサブルーチン(特にステップ34)により、初期期間中であっても、適切に特定ガスの濃度低下を検知することができる。
【0104】
(変形形態3)
次いで、変形形態3について説明する。上記変形形態2において説明したように、本変形形態3では、CO(一酸化炭素),HC(ハイドロカーボン)など還元性ガス成分に反応し、その濃度上昇と共にセンサ抵抗値Rsが低下するタイプの酸化物半導体のガスセンサ素子11Cを用いる点で、実施形態1と異なる。
さらに、図8に示す変形形態3の車両用オートベンチレーションシステム100Cでは、ガス検知装置10Cのセンサ抵抗値変換回路14Cのうち、ガスセンサ素子11Cと検出抵抗12Aの分圧回路において、検出抵抗12Aを接地側に配置している。従って、本変形形態3では、センサ抵抗値Rsが徐々に上昇する期間には、特定ガス(還元性ガス)の濃度が変化しなくとも、得られるセンサ出力値S(n)が徐々に低下する。一方、特定ガスの濃度が上昇すれば、センサ出力値S(n)が増加するか、その減少が緩やかに(小さく)なる。
【0105】
上記したように、本変形形態3の車両用オートベンチレーションシステム100Cは、実施形態1と対比して、その構成上は、図8に示すように、センサ抵抗値変換回路14Cにおけるガスセンサ素子11Cと検出抵抗12Aとの分圧回路が異なることと、ガスセンサ素子11Cの特性が異なることのみであるので、説明を省略する。
また、図11に示すように、マイクロコンピュータ16における処理が実施形態1と若干異なる(図3〜図5参照)が、他の部分は同様である。そこで、本変形形態3におけるマイクロコンピュータ16の処理のうち、実施形態1と異なる部分を中心に説明し、同様な部分は説明を省略あるいは簡略化する。
【0106】
本変形形態3では、上述したように、センサ抵抗値Rsが増加すると、得られるセンサ出力値S(n)が小さくなるようにセンサ出力値取得回路19Cを構成してある。このため、マイクロコンピュータ16における処理において、この特性を考慮する必要がある。即ち、還元性ガスの濃度が上昇して、センサ抵抗値Rsが小さくなると、センサ出力値S(n)が大きくなる。一方、初期期間内であるためにセンサ抵抗値Rsが大きくなると、センサ出力値S(n)が小さくなる。
そこで、図11(a)に示すように、まず、実施形態1のメインルーチン(図3参照)におけるステップS19に代えて、ステップS19Cに示すように、前回ベース値B(n−1)を、B(n−1)=B(n−1)−L(Na)の式に従って補正する。さらに、ステップS1Aに代えて、ステップS1ACにより、B(n)=B(n−1)+k4{S(n)−B(n−1)}の式に従って算出する。なお、係数k4は、0<k4<1である。次いで、実施形態1と同じく、ステップS1Bにより、差分値を、D(n)=S(n)−B(n)の式に従って算出する。
その後は、実施形態1と同様に処理する。
【0107】
次いで、ステップS20のサブルーチンについて、図11(b)に示す部分フローチャートを参照して説明する。本変形形態2のサブルーチンでは、実施形態1とほぼ同様にして補正値L(Na)を算出する。
但し、ステップS21で各数値を整えた後、ステップS22に代えてステップS22Cで、補正値L(Na)を、L(Na)={S(n−16)−S(n)}/16の式に従って算出する。このステップS22Cでも直近に得た現在のセンサ出力値S(n)と、これより16サイクル前のセンサ出力値S(n−16)との差を、その間のサンプリング回数16で割り、この間のセンサ出力値の平均増加分を補正値L(Na)とする。その後は、実施形態1と同様にして処理する。但し、変形形態2と同じく、ステップS27(図3参照)においては図示しないが、タイマが30秒経過したかどうかで判断するようにしている。実施形態1で用いた素子に比して、比較的早く安定期間となる傾向があるからである。
【0108】
次いで、ステップS30のサブルーチンについて、図11(c)を参照して説明する。本変形形態3のサブルーチンでも、実施形態1とほぼ同様にして特定ガスの濃度上昇を検知した後の処理を行う。
但し、本変形形態3のメインルーチンと同じく、ステップS34に代えて、ステップS34Cで、ステップS19Cと同様に、前回ベース値B(n−1)を、B(n−1)=B(n−1)−L(Na)の式に従って補正する。なお、このステップS34Cでも、更新されない補正値L(Na)を用いる点は実施形態1と同様である。さらに、ステップS35Cにおいて、現在のベース値B(n)を、前述のステップS1ACと同じく、B(n)=B(n−1)+k4{S(n)−B(n−1)}の式に従って算出する。その後は、ステップS1Bと同じく、ステップS36で、差分値D(n)を、D(n)=S(n)−B(n)の式に従って算出する。
以降は実施形態1と同様にして処理する。
【0109】
以上の変形形態3の車両用オートベンチレーションシステム100Cのうち、ガス検知装置10Cの制御によっても、初期期間経過前には、補正値L(Na)を得た後(ステップS20)、前回ベース値B(n−1)を補正し(ステップS19C)、ベース値B(n)及び差分値D(n)を算出し(ステップS1AC,S1B)、差分値D(n)を第1しきい値Tuと比較して特定ガス濃度の上昇の有無を判断する(ステップS1C)。このため、本変形形態3によっても、初期期間中であるために生じるガスセンサ素子11Bのセンサ抵抗値Rsの変動(増加)にも拘わらず、適切に特定ガスの濃度上昇を検知することができる。また、ステップ30のサブルーチン(特にステップ34C)により、初期期間中であっても、適切に特定ガスの濃度低下を検知することができる。
【0110】
(実施形態2)
さらに、本発明の第2の実施形態について、図1、及び図12〜図14を参照して説明する。ガス検知装置10、及び、これを含む車両用オートベンチレーションシステム100の構成は、図1に示すように、前述した実施形態1と同様である。
但し、マイクロコンピュータ16における処理に関し、実施形態1では、前回ベース値B(n−1)を補正し(ステップS19)、これを用いて現在のベース値B(n)を求め(ステップS1A)、さらに差分値D(n)を求めて(ステップS1B)、特定ガス(酸化性ガス)の濃度上昇を検知する(図3参照)など、ベース値B(n)を用いてガス検知を行った(図4,図5参照)。
【0111】
これに対し、本実施形態2では、1サイクル過去のセンサ出力値、つまり前回得たセンサ出力値S(n−1)と現在のセンサ出力値S(n)との差分値D(n)を用いて酸化性ガスの検知を行う点で異なる。
従って、マイクロコンピュータ16における処理、特に本実施形態2に特有な処理を中心に説明し、実施形態1と同様な部分については、説明を省略あるいは簡略化する。
なお、本実施形態2でも、実施形態1と同じく、酸化性ガスに反応し、その濃度上昇と共にセンサ抵抗値Rsが上昇するタイプのガスセンサ素子11を、検出抵抗12との分圧回路の接地側として用いる。このため、酸化性ガスの濃度が上昇して、センサ抵抗値Rsが大きくなると、得られるセンサ出力値S(n)が大きくなる。また、初期期間内であるためにセンサ抵抗値Rsが大きくなっても、センサ出力値S(n)が大きくなる。
【0112】
本実施形態2における、マイクロコンピュータ16における制御を、図12のフローチャートに従って説明する。自動車のエンジンが駆動されると、本制御システムが立ち上がり、ステップS41において、ヒータ19への通電が開始され、ガスセンサ素子11の加熱が始まる。その後、ステップS42において、センサ抵抗値が急激に減少する急変期間の経過を待つ。その後、まずステップS43で初期設定を行う。初期設定としては、各フラグFc、Fdを初期値にリセットし(初期期間経過フラグFc=1,ガス検知フラグFd=1)、補正値L=0とし、指定サンプリング回数Ns=0とする。また、濃度信号LVとして濃度低信号を発生させてフラップ34を全開としておく。具体的には濃度信号LVをローレベルとする。さらに、タイマのカウントを開始する。
【0113】
その後、ステップS44に進み、サンプリング周期(0.4秒)ごとにセンサ出力値S(n)を読み込む。次いで、ステップS45(初期判断手段)において、初期期間が経過したか否かを、初期期間経過フラグFcが、Fc=0であるか否かにより判断する。Fc=0(Yes)、つまり初期期間が経過した場合には、後述する補正は不要であるから、ステップS4Aに進む。一方、Fc=1(No)、つまり初期期間内である場合には、ステップS46に進み、指定サンプリング回数NsをNs=Ns+1としてインクリメントする。ついでステップS47に進み、指定サンプリング回数Nsが所定値(本実施形態ではNs=16)となったか否かを判断する。ここで、No、即ちNs<16の場合には、ステップS48に進む。一方、Yes、即ち、Ns=16の場合には、ステップS50(補正値取得手段)のサブルーチンに進む。つまり、センサ出力値S(n)を16回サンプリングする毎に、ステップS50に進むことになる。
【0114】
ステップS48では、ガス検知フラグFdが、Fd=1であるか否か、つまりガス検知を行うか否かを判断する。起動直後は補正値Lが算出されておらず、適切にガス検出ができないため、補正値Lが算出されるまで待つためである。従って、後述するサブルーチンS50内でガス検知フラグFdがFd=0にセットされるまで、ステップS44〜S48の処理を繰り返すこととなる。一方、Fd=0の場合には、ステップS49に進む。
【0115】
ステップS49(補正済基準値取得手段)では、前回得たセンサ出力値S(n−1)を、S(n−1)=S(n−1)+Lの式に従って補正する。なお、補正値Lは、後述するサブルーチンS50で算出したものである。
初期期間中には、特定ガスの濃度上昇がないにも拘わらず、初期期間中であるが故にガスセンサ素子11のセンサ抵抗値Rsが徐々に増加する。このため、センサ出力値S(n)も徐々に増加する。従って、後述するステップS4Aで、現在のセンサ出力値S(n)と、基準値である前回のセンサ出力値S(n−1)との差分値D(n)を得るのに当たり、この影響を加味しておく必要がある。そこで、1サイクル分の期間中に増加するセンサ抵抗値Rsの増分を補償すべく、この増分に対応して生じるセンサ出力値S(n)の増分に概略相当する補正値Lを別途算出しておき、差分値D(n)の算出に用いる前回のセンサ出力値S(n−1)を補正値Lで補正する(具体的には補正値Lを足しておく)のである。これにより、初期期間内におけるセンサ抵抗値Rsやセンサ出力値S(n)の増加の影響を抑制して、初期期間内でも、後述するステップS4Bで、特定ガスの濃度上昇によるセンサ抵抗値Rsの増加を検知できるようにする。
【0116】
次いで、ステップS4Aにおいて、差分値D(n)を、D(n)=S(n)−S(n−1)の式に従って算出する。
さらに、ステップS4Bにおいて、この差分値D(n)が第1しきい値THよりも大きいか否かを判断する。ここで、Yes、つまりD(n)>THの場合には、現在のセンサ出力値S(n)が基準となる前回のセンサ出力値S(n−1)よりもかなり大きくなった、つまり特定ガスの濃度が上昇したために、S(n)が大きくなってS(n−1)との差が開いたと考えられるので、ステップS60のサブルーチンに進む。一方、NoつまりD(n)≦THの場合には、特定ガスの濃度は上昇していないと考えられ、ステップS44に戻る。これにより、再びセンサ出力値S(n)がサンプリングされ、前回のセンサ出力値S(n−1)が補正され(ステップS49)、差分値D(n)が算出され(ステップS4A)、ステップS4Bにおいて、D(n)>THであるか否か、つまり、特定ガス濃度が上昇したかどうかが繰り返し判断される。
【0117】
なお、初期期間中(Fc=1)であるときは、ステップS49で基準値である前回のセンサ出力値S(n−1)を補正しているので、このステップS4Bでは補正された差分値D(n)を用いて判断することとなる。従って、初期期間内におけるセンサ抵抗値Rsやセンサ出力値S(n)の増加の影響を抑制して、特定ガスの濃度上昇の有無を判断することができる。
【0118】
次いで、ステップS50のサブルーチンについて、図13のフローチャートを参照して説明する。このサブルーチンでは、補正値Lを算出する。具体的には、ステップS51で、各数値を整えた(Ns=0,Fd=0)後、ステップS52で、補正値Lを算出する。本実施形態2では、実施形態1と同様に、L={S(n)−S(n−16)}/16の式により得る。この式から容易に理解できるように、直近に得た現在のセンサ出力値S(n)と、これより16サイクル前のセンサ出力値S(n−16)との差を、その間のサンプリング回数16で割って、この間のセンサ出力値の平均増加分を補正値Lとする。
補正値Lとして、最近のセンサ出力値の平均増加分を用いるのは、センサ出力値S(n)に含まれるノイズ分を除きつつ、初期期間内であるために特定ガス濃度に変化が無くてもセンサ抵抗値Rsが徐々に上昇することに起因する、最近のセンサ出力値の増加をキャンセルするのに適切な値となるからである。
【0119】
さらに、ステップS53に進み、補正値Lがしきい値SHより大きな値であるか否か(L>SH)を判断する。初期期間が経過し、センサ抵抗値Rsが安定して変化が小さくなると、センサ出力値S(n)の変化も少なくなり、補正値Lも小さな値となるから、しきい値SHより小さくなった場合には、初期期間が経過したと考えられるからである。そこで、No(L≦SH)の場合には、ステップS55に進む。一方、Yes(L>SH)の場合には、ステップS54に進む。
【0120】
ステップS55では、ステップS43で計測を始めたタイマが、所定時間(本実施形態2では3分)を経過したか否かを判断する。ステップS53でL≦SHとなり、時間も十分経過していれば、初期期間を過ぎてセンサ抵抗値Rsは安定したと考えられるからである。そこで、ステップS56に進む。
一方、たとえステップS53でL≦SHとなっても、タイマが所定時間を経過していない場合には、ステップS57を経由してステップS54に進む。通常の場合では、3分など所定時間以内にセンサ抵抗値Rsが安定になることは考えにくく、むしろ何らかの理由で補正値が小さくなりすぎた場合が考えられるからである。なお、このステップS57では、補正値Lをさらに修正し、L=SHとする。たとえステップS52で算出した得た補正値Lであっても、しきい値SHよりも小さい場合には、補正による効果が小さくなりすぎる。従って、補正値Lをしきい値SHに一致させて補正値Lの取りうる最低値を保ち、補正の効果を保つためである。
【0121】
ステップS56では、初期期間経過フラグFcをFc=0にセットする。これにより、以降は初期期間が経過したとみなされる。そこで、続くステップS58では補正値LをL=0とし、メインルーチン(図12参照)に戻り、ステップS49に進む。これにより、以降は、ステップS45によって初期期間が経過したと判断され、ステップS46〜S48がスキップされ、補正値Lによる補正を行うことなく、差分値D(n)が算出され、特定ガスの濃度上昇の有無が判断される(ステップS4A,S4B)。
【0122】
次いで、ステップS60のサブルーチンについて、図14を参照して説明する。このサブルーチンでは、ステップS4BでD(n)>THであるとき、つまり特定ガスの濃度上昇を検知した後の処理を行う。まず、ステップS61(濃度高信号発生手段)で、濃度高信号を発生する。具体的には、濃度信号LVをハイレベルにする。これにより、フラップ34が全閉となる。
次いで、ステップS62で、前記したステップS44と同様に、サンプリング周期(0.4秒)ごとにセンサ出力値S(n)を読み込む。
【0123】
次いで、ステップS63(第2補正済基準値取得手段)で、ステップS49と同様に、前回得たセンサ出力値S(n−1)を、S(n−1)=S(n−1)+Lの式に従って補正する。なお、補正値Lは、ステップS4BでD(n)>THである、つまり特定ガスの濃度が上昇を検知したと判断したときに、上記したサブルーチンS50で算出して用いていた補正値である。つまり、前記したステップS49では、補正値Lとして、センサ出力値S(n)のサンプリング回数が指定サンプリング回数Nsとなる毎に更新された値を用いたが、ステップS63では、補正値Lは更新されない。従って、このサブルーチンS60を一旦抜けない限り、サンプリング回数に拘わらず、補正値Lは同じ値を用い続ける。
これは、実施形態1で説明したのと同様に理由による。
次いで、ステップS64において、前述したステップS4Aと同じく、差分値D(n)を、D(n)=S(n)−S(n−1)の式に従って算出する。
【0124】
さらに、この差分値D(n)が負の値になったら、特定ガスの濃度が低下したと判断する。濃度低下によりセンサ出力値S(n)は小さくなるので、差分値が負となるからである。
但し、本実施形態2では、ステップS65で、2回連続して負の値であるか否かを判断する。センサ出力値S(n)に混入するノイズなどにより、差分値D(n)が偶発的に負の値となる場合が考えられるため、濃度低下の誤検知を防止すべく、2回連続して負の値になった場合のみ、ガス低下が生じたと判断することにしたためである。
ここで、Yes、つまりD(n)<0が2回連続して発生した場合には、特定ガスの濃度が低下したために、S(n)がS(n−1)よりも小さくなったと考えられるので、ステップS66(濃度低信号発生手段)に進み、濃度低信号を発生する。具体的には、濃度信号LVをローレベルにする。これにより、フラップ34が全開となる。
一方、NoつまりD(n)<0が2回連続して発生していない場合には、特定ガスの濃度がまだ低下していないと考えられるので、ステップS62に戻り、ステップS62〜S65を繰り返す。
【0125】
ステップS66の後には、ステップS67で、各数値を整えた(Ns=0,Fd=1)後、メインルーチンに戻り、ステップS44に進む。従って、再び、濃度低信号発生期間中の処理が行われる。なお、このサブルーチンを経由してメインルーチンに戻った直後には、適切な補正値Lが得られていないと考えられるため、実施形態1と同じく、ガス検知フラグFd=1としている。これにより、16回のサンプリング回数を重ねて再び補正値Lを得た後に、ガス濃度上昇を検知することができるようになる。
なお、ステップS60のサブルーチンにおいても、初期期間が経過した後には、ステップS57で補正値LがL=0とされることから、ステップS63で実質的には前回のセンサ出力値S(n−1)が補正されることなく、ステップS65で特定ガスの濃度低下の有無が判断されることになる。
【0126】
上記した本実施形態2の車両用オートベンチレーションシステム100のうち、ガス検知装置10の制御によれば、システム100の起動後、概略以下の処理が行われる。即ち、濃度低信号を発生した状態からスタートし、初期期間が経過した否かを判断する(ステップS45)。初期期間経過前には、補正値Lを得た後(ステップS50)、前回のセンサ出力値S(n−1)を補正し(ステップS49)、差分値D(n)を算出し(ステップS4A)、差分値D(n)を第1しきい値THと比較して特定ガス濃度の上昇の有無を判断する(ステップS4B)。このため、本実施形態2によれば、初期期間中であるために生じるガスセンサ素子11のセンサ抵抗値Rsの変動(増加)にも拘わらず、適切に特定ガスの濃度上昇を検知することができる。
なお、初期期間経過後は、補正を行わずに差分値を算出して、特定ガス濃度の上昇の有無を判断する。従って、初期期間経過後も、適切に特定ガスの検知ができる。
【0127】
ステップS50のサブルーチン内では、補正値Lを算出するとともに、補正値Lとしきい値SHとの比較(ステップS53)及び初期タイマの経過(ステップS55)により、初期期間の経過を判断する。
また、ステップS60のサブルーチンでは、ステップS4Bで特定ガスの濃度上昇を検知した後の処理、具体的には、濃度高信号を発生する。また、その後、特定ガスの濃度低下を検出するため、差分値D(n)を算出し(ステップS64)、差分値D(n)が2回連続して負となったか否かを判断する(ステップS65)。なお、ステップS63において前回のセンサ出力値S(n−1)が、特定ガスの濃度上昇検知時の補正値Lによって補正される。従って、初期期間中でも、適切に特定ガスの濃度低下を検知することができる。なお、初期期間経過後は補正値L=0となるので、実質的に補正はなされないようになっている。その後、特定ガスの濃度低下を検知すると、濃度低信号を発生してメインルーチンに戻り、再び特定ガスの濃度上昇の有無を判断する。
【0128】
(変形形態4)
上記実施形態2では、実施形態1と同様、センサ抵抗値変換回路14のガスセンサ素子11と検出抵抗12との分圧回路において、ガスセンサ素子11を接地側に配置してセンサ出力値S(n)を得ていたため、センサ抵抗値Rsが増加すると、得られるセンサ出力値S(n)が大きくなるように構成されている(図1参照)。これに対し、センサ抵抗値Rsが増加すると、得られるセンサ出力値S(n)が小さくなるようにセンサ出力値取得回路を構成することもできる。その一例である本変形形態4の車両用オートベンチレーションシステム100Aでは、図8に示すように、ガス検知装置10Aのセンサ抵抗値変換回路14Aのうち、ガスセンサ素子11Aと検出抵抗12Aとの分圧回路において、検出抵抗12Aを接地側に配置している。
本変形形態4の車両用オートベンチレーションシステム100Aは、その構成上は、変形形態1と同じく、図8に示すように、センサ抵抗値変換回路14Aにおけるガスセンサ素子11Aと検出抵抗12Aとの分圧回路について実施形態2と異なる(図1参照)のみであるので、説明を省略する。即ち、本変形形態4でも、NOxなど酸化性ガス成分に反応し、その濃度上昇と共にセンサ抵抗値Rsが上昇するタイプの酸化物半導体のガスセンサ素子11Aを用いる。
また、図15に示すように、マイクロコンピュータ16における処理が上記実施形態2(図12〜図14参照)と若干異なるが、他の部分は同様である。そこで、本変形形態4におけるマイクロコンピュータ16の処理のうち、実施形態4と異なる部分を中心に説明し、同様な部分は説明を省略あるいは簡略化する。
【0129】
本変形形態4では、上述したように、センサ抵抗値Rsが増加すると、得られるセンサ出力値S(n)が小さくなるようにセンサ出力値取得回路19Aを構成してある。このため、マイクロコンピュータ16における処理において、この特性を考慮する必要がある。即ち、酸化性ガスの濃度が上昇して、センサ抵抗値Rsが大きくなると、センサ出力値S(n)が小さくなる。また、初期期間内であるためにセンサ抵抗値Rsが大きくなっても、センサ出力値S(n)が小さくなる。
そこで、実施形態3のメインルーチン(図12参照)におけるステップS49に代えて、図15(a)に示すように、ステップS49Aにより、前回のセンサ出力値S(n−1)を、S(n−1)=S(n−1)−Lの式に従って補正する。さらに、ステップS4Aに代えて、ステップS4AAにより、差分値を、D(n)=S(n−1)−S(n)の式に従って算出する。
【0130】
その後は、実施形態2と同じく、ステップS4Bにおいて、この差分値D(n)が第1しきい値THよりも大きいか否かを判断し、Yesの場合には、ステップS60のサブルーチンに進み、Noの場合には、ステップS44に戻る。これにより、特定ガス濃度が上昇したかどうかが繰り返し判断される。
【0131】
次いで、ステップS50のサブルーチンについて、図15(b)に示すフローチャートの変更部分を参照して説明する。本変形形態4のサブルーチンでも、実施形態2とほぼ同様にして補正値Lを算出する。
但し、ステップS51で各数値を整えた後、ステップS52に代えてステップS52Aで、補正値Lを、L={S(n−16)−S(n)}/16の式に従って算出する。このステップS52Aでも直近に得た現在のセンサ出力値S(n)と、これより16サイクル前のセンサ出力値S(n−16)との差を、その間のサンプリング回数16で割り、この間のセンサ出力値の平均増加分を補正値L(Na)とする。
【0132】
以降は実施形態2と同様にして処理する。即ち、ステップS53で、L>SHか否かを判断し、Noのときはステップ55に、YesのときはステップS54に進む。ステップS55では、タイマが、所定時間を経過したか否かを判断し、YesのときはステップS56に進む。一方、NoのときはステップS57を経由してステップS54に進む。ステップS56では、初期期間経過フラグFcをFc=0にセットし、続くステップS58で補正値LをL=0とし、メインルーチン(図12参照)に戻り、ステップS49に進む。これにより、以降は、ステップS45によって初期期間が経過したと判断され、補正値Lによる前回のセンサ出力値S(n−1)の補正を行うことなく、差分値D(n)が算出され、特定ガスの濃度上昇の有無が判断される。
【0133】
次いで、ステップS60のサブルーチンについて、図15(c)を参照して説明する。本変形形態4のサブルーチンでも、実施形態2と同様にして特定ガスの濃度上昇を検知した後の処理を行う。
但し、本変形形態4のメインルーチン(図15(a)参照)と同じく、ステップS63に代えて、ステップS63Aで、ステップS49Aと同様に、前回のセンサ出力値S(n−1)を、S(n−1)=S(n−1)−Lの式に従って補正する。なお、このステップS63Aでも、更新されない補正値Lを用いる点は実施形態2と同じである。さらに、ステップS64Aにおいて、前述のステップS4AAと同じく、差分値D(n)を、D(n)=S(n−1)−S(n)の式に従って算出する。
【0134】
以降は実施形態2と同様にして処理する。即ち、ステップS65で、この差分値D(n)が2回連続で負となったか否かを判断し、Yesのときは、ステップS66に進み、濃度低信号を発生する。一方、Noのときには、ステップS62に戻り、ステップS62〜S65を繰り返す。ステップS66の後には、ステップS67で、各数値を整えた後、メインルーチンに戻り、ステップS44に進み、再び、濃度低信号発生期間中の処理行う。
なお、ステップS60のサブルーチンにおいて、初期期間が経過した後には、実質的に前回のセンサ出力値S(n−1)が補正されることなく、特定ガスの濃度低下の有無が判断される点も実施形態2と同様である。
【0135】
以上の変形形態4の車両用オートベンチレーションシステム100Aのうち、ガス検知装置10Aの制御によっても、初期期間経過前には、補正値Lを得た後(ステップS50)、前回のセンサ出力値S(n−1)を補正し(ステップS49A)、差分値D(n)を算出し(ステップS4AA)、差分値D(n)を第1しきい値THと比較して特定ガス濃度の上昇の有無を判断する(ステップS4B)。このため、本変形形態4によっても、初期期間中であるために生じるガスセンサ素子11Bのセンサ抵抗値Rsの変動にも拘わらず、適切にガス検知をすることができる。つまり、初期期間経過の前から、ガスセンサ素子11Aのセンサ抵抗値Rsの変動(増加)にも拘わらず、適切に特定ガスの濃度上昇を検知することができる。また、ステップ60のサブルーチン(特にステップ63A)により、初期期間中であっても、適切に特定ガスの濃度低下を検知することができる。
【0136】
(変形形態5)
次いで、変形形態5について説明する。上記実施形態2及び変形形態4では、酸化性ガス成分に反応し、その濃度上昇と共にセンサ抵抗値Rsが上昇するタイプのガスセンサ素子11,11Aを用いた。これに対し、本変形形態5及び次述する変形形態6では、還元性ガス成分に反応し、その濃度上昇と共にセンサ抵抗値Rsが低下するタイプのガスセンサ素子11B、11Cを用いる点で異なる。
なお、これらのガスセンサ素子11B,11Cは、ヒータ41により加熱すると、特定ガスの濃度変化がない場合でも、センサ抵抗値Rsは、一旦、急激に低下した後、徐々に上昇し、次第に安定するような変化を示す点、及びこの変化は、環境や使用履歴等に影響を受け、起動の度に異なる経路を通る点で、実施形態2及び変形形態4のガスセンサ素子11,11Aと同様である。また、これらのガスセンサ素子11B,11Cの還元性ガスに対する反応が、センサ抵抗値Rsが徐々に上昇している期間においても生じる点でも同じである。但し、センサ抵抗値Rsが、徐々に上昇している期間において、還元性ガスの濃度が上昇すると、センサ抵抗値Rsが加重して変化し、センサ抵抗値Rsが、小さくなる、あるいは上昇が緩やかになる点で異なる。
【0137】
さらに、図1に示す本変形形態5の車両用オートベンチレーションシステム100Bでは、ガス検知装置10Bのセンサ抵抗値変換回路14Bのうち、ガスセンサ素子11Bと検出抵抗12の分圧回路において、ガスセンサ素子11Bを接地側に配置している。従って、本変形形態5では、センサ抵抗値Rsが徐々に上昇する期間には、特定ガスの濃度が変化しなくとも、得られるセンサ出力値S(n)が徐々に増加する。一方、特定ガスの濃度が上昇すれば、センサ出力値S(n)が減少するか、その増加が緩やかに(小さく)なる。
【0138】
上記したように、本変形形態5の車両用オートベンチレーションシステム100Bは、実施形態2と対比して、その構成上は、図1に示すように、ガスセンサ素子11Bの特性が異なるのみであるので、説明を省略する。
また、図16に示すように、マイクロコンピュータ16における処理が実施形態2(図12〜図14参照)と若干異なるが、他の部分は同様である。そこで、本変形形態5おけるマイクロコンピュータ16の処理のうち、実施形態2と異なる部分を中心に説明し、同様な部分は説明を省略あるいは簡略化する。
【0139】
本変形形態5では、上述したように、センサ抵抗値Rsが増加すると、得られるセンサ出力値S(n)が大きくなるようにセンサ出力値取得回路19Bを構成してある。このため、マイクロコンピュータ16における処理において、この特性を考慮する必要がある。即ち、還元性ガスの濃度が上昇して、センサ抵抗値Rsが小さくなると、センサ出力値S(n)が小さくなる。一方、初期期間内であるためにセンサ抵抗値Rsが大きくなると、センサ出力値S(n)が大きくなる。
そこで、図16(a)に示すように、まず、実施形態2のメインルーチン(図12参照)におけるステップS49と同様に、前回のセンサ出力値S(n−1)を、S(n−1)=S(n−1)+Lの式に従って補正する。一方、ステップS4Aに代えて、ステップS4ABにより、差分値D(n)を、D(n)=S(n−1)−S(n)の式に従って算出する。
その後は、実施形態2と同様に処理する。
【0140】
次いで、ステップS50のサブルーチンについて、図16(b)に示す部分フローチャートを参照して説明する。本変形形態5のサブルーチンでは、実施形態2と同様にして補正値Lを算出する。
つまり、変形形態4とは異なり、ステップS51で各数値を整えた後、実施形態2と同じく、ステップS52で、補正値Lを、L={S(n)−S(n−16)}
但し、ステップS55Bでは、ステップS55と異なり、タイマが3分ではなく、30秒経過したかどうかで判断するようにしている。実施形態2で用いた素子に比して、比較的早く安定期間となる傾向があるからである。
/16の式に従って算出する。その後も、実施形態2と同様にして処理する。
【0141】
次いで、ステップS60のサブルーチンについて、図16(c)を参照して説明する。本変形形態5のサブルーチンでも、実施形態2と同様にして特定ガスの濃度上昇を検知した後の処理を行う。
但し、メインルーチン(図16(a)参照)と同じく、ステップS63で、ステップS49と同様に、前回のセンサ出力値S(n−1)を、S(n−1)=S(n−1)+Lの式に従って補正する。その後、ステップS64に代えて、ステップS64Bにおいて、前述したステップS4ABと同じく、差分値をD(n)=S(n−1)−S(n)の式によって算出し、その後ステップS65で、差分値D(n)が2回連続して負となったか否かを判断して、還元性ガス濃度の低下を検知する。
以降は実施形態2と同様に処理する。
【0142】
以上の変形形態5の車両用オートベンチレーションシステム100Bのうち、ガス検知装置10Bの制御によっても、初期期間経過前には、補正値Lを得た後(ステップS50)、前回のセンサ出力値S(n−1)を補正し(ステップS49)、差分値D(n)を算出し(ステップS4AB)、差分値D(n)を第1しきい値THと比較して特定ガス濃度の上昇の有無を判断する(ステップS4B)。このため、本変形形態5によっても、初期期間中であるために生じるガスセンサ素子11Bのセンサ抵抗値Rsの変動(増加)にも拘わらず、適切に特定ガスの濃度上昇を検知することができる。また、ステップ60のサブルーチン(特にステップ63)により、初期期間中であっても、適切に特定ガスの濃度低下を検知することができる。
【0143】
(変形形態6)
次いで、変形形態6について説明する。上記変形形態5において説明したように、本変形形態6では、還元性ガス成分に反応し、その濃度上昇と共にセンサ抵抗値Rsが低下するタイプのガスセンサ素子11Cを用いる点で、実施形態2と異なる。
さらに、図8に示す変形形態6の車両用オートベンチレーションシステム100Cでは、ガス検知装置10Cのセンサ抵抗値変換回路14Cのうち、ガスセンサ素子11Cと検出抵抗12Cの分圧回路において、検出抵抗12Cを接地側に配置している。従って、本変形形態6では、センサ抵抗値Rsが徐々に上昇する期間には、特定ガス(還元性ガス)の濃度が変化しなくとも、得られるセンサ出力値S(n)が徐々に低下する。一方、特定ガスの濃度が上昇すれば、センサ出力値S(n)が増加するか、その減少が緩やかに(小さく)なる。
【0144】
上記したように、本変形形態6の車両用オートベンチレーションシステム100Cは、実施形態2と対比して、その構成上は、図8に示すように、センサ抵抗値変換回路14Cにおけるガスセンサ素子11Cと検出抵抗12Cとの分圧回路が異なることと、ガスセンサ素子11Cの特性が異なることのみであるので、説明を省略する。
また、図17に示すように、マイクロコンピュータ16における処理が実施形態2と若干異なる(図12〜図14参照)が、他の部分は同様である。そこで、本変形形態6におけるマイクロコンピュータ16の処理のうち、実施形態2と異なる部分を中心に説明し、同様な部分は説明を省略あるいは簡略化する。
【0145】
本変形形態6では、上述したように、センサ抵抗値Rsが増加すると、得られるセンサ出力値S(n)が小さくなるようにセンサ出力値取得回路19Cを構成してある。このため、マイクロコンピュータ16における処理において、この特性を考慮する必要がある。即ち、還元性ガスの濃度が上昇して、センサ抵抗値Rsが小さくなると、センサ出力値S(n)が大きくなる。一方、初期期間内であるためにセンサ抵抗値Rsが大きくなると、センサ出力値S(n)が小さくなる。
そこで、図17(a)に示すように、まず、実施形態2のメインルーチン(図12参照)におけるステップS49に代えて、ステップS49Cに示すように、前回のセンサ出力値S(n−1)を、S(n−1)=S(n−1)−Lの式に従って補正する。さらに、実施形態2と同じく、ステップS4Aにより、差分値D(n)を、D(n)=S(n)−B(n)の式に従って算出する。
その後は、実施形態2と同様に処理する。
【0146】
次いで、ステップS50のサブルーチンについて、図17(b)に示す部分フローチャートを参照して説明する。本変形形態6のサブルーチンでは、実施形態2とほぼ同様にして補正値Lを算出する。
但し、ステップS51で各数値を整えた後、ステップS52に代えてステップS52Cで、補正値Lを、L={S(n−16)−S(n)}/16の式に従って算出する。このステップS52Cでも直近に得た現在のセンサ出力値S(n)と、これより16サイクル前のセンサ出力値S(n−16)との差を、その間のサンプリング回数16で割り、この間のセンサ出力値の平均増加分を補正値L(Na)とする。その後は、実施形態2と同様にして処理する。但し、ステップS55Bでは、ステップS55と異なり、タイマが3分ではなく、30秒経過したかどうかで判断するようにしている。実施形態2で用いた素子に比して、比較的早く安定期間となる傾向があるからである。
【0147】
次いで、ステップS60のサブルーチンについて、図17(c)を参照して説明する。本変形形態6のサブルーチンでも、実施形態2とほぼ同様にして特定ガスの濃度上昇を検知した後の処理を行う。
但し、本変形形態6のメインルーチン(図17(a)参照)と同じく、ステップS63に代えて、ステップS63Cで、ステップS49Cと同様に、前回のセンサ出力値S(n−1)を、S(n−1)=S(n−1)−Lの式に従って補正する。なお、このステップS63Cでも、更新されない補正値Lを用いる点は実施形態2と同様である。さらに、実施形態2及びステップS4Aと同じく、ステップS64で、差分値D(n)を、D(n)=S(n)−B(n)の式に従って算出する。
以降は実施形態2と同様にして処理する。
【0148】
以上の変形形態6の車両用オートベンチレーションシステム100Cのうち、ガス検知装置10Cの制御によっても、初期期間経過前には、補正値Lを得た後(ステップS50)、前回のセンサ出力値S(n−1)を補正し(ステップS49C)、差分値D(n)を算出し(ステップS4A)、差分値D(n)を第1しきい値THと比較して特定ガス濃度の上昇の有無を判断する(ステップS4B)。このため、本変形形態6によっても、初期期間中であるために生じるガスセンサ素子11Bのセンサ抵抗値Rsの変動(増加)にも拘わらず、適切に特定ガスの濃度上昇を検知することができる。また、ステップ60のサブルーチン(特にステップ63C)により、初期期間中であっても、適切に特定ガスの濃度低下を検知することができる。
【0149】
以上において、本発明を実施形態1,2及び変形形態1〜6に即して説明したが、本発明は上記実施形態等に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることはいうまでもない。
例えば、実施形態1及び変形形態1〜3では、補正値L(Na)を指定サンプリング回数Ns毎(具体的には16回毎)に算出して用いた。このようにすることで、補正値を算出する頻度が、16サンプリングに1回というように少なくなるので、補正値を算出する負荷を少なくすることが出来る。さらに、過去のセンサ出力値を記憶しておくメモリ容量を小さくすることが出来るメリットがある。
しかし、センサ出力値S(n)のサンプリング毎に、現在のセンサ出力値S(n)とそれよりt(tは2以上の整数)サイクル(例えば16サイクル)前のセンサ出力値S(n−t)とから、補正値Lを算出するようにしても良い。このようにすると、補正値Lの値がサンプリング間隔毎に毎回更新されるので、さらに適切な補正値Lを得ることが出来る。また、補正値Lとしては、実施形態1,2と同様に、L={S(n)−S(n−t)}/tで求めると良い。ノイズによるセンサ出力値の変動を低減し、確からしい補正値を得ることができるからである。
【0150】
また、実施形態1及び変形形態1〜3では、B(n)=B(n−1)+k1{S(n)−B(n−1)}などの式によって算出したベース値B(n)あるいは前回ベース値B(n−1)を基準値として、センサ出力値S(n)との差を差分値D(n)とし、特定ガス濃度の上昇や下降を判断した。また、実施形態2及び変形形態4〜6では、前回のセンサ出力値S(n−1)を基準値とし、現在のセンサ出力値S(n)との差を差分値D(n)とし、特定ガス濃度の上昇や下降を判断した。しかし、基準値としては、他の算出手法で算出してもよく、例えば、センサ出力値の移動平均値や二階微分値などの値を用いることもできる。
また、実施形態1,2及び変形形態1〜6では、差分値D(n)を用いて特定ガス濃度の上昇や下降を判断したが、基準値とセンサ出力値との比を用いて特定ガス濃度の上昇や下降を判断することも出来る。
【0151】
また、実施形態1,2及び変形形態1〜6では、マイクロコンピュータ16は、濃度高信号に対応するハイレベルと、濃度低信号に対応するローレベル、の2つの信号レベルを有する濃度信号LVを出力するとした。しかし、例えば、複数の信号レベルを濃度高信号に対応させ、複数の信号レベルを濃度低信号に対応させるようにしても良い。この場合にも、濃度高信号に属する信号レベルと濃度低信号に属する信号レベルとの切換に、本発明を適用することが出来る。
さらに、各実施形態や変形形態では、センサ出力値取得回路19(図1参照)などにおいて、ガスセンサ素子11等と検出抵抗12等との分圧回路を用いて、センサ出力値S(n)を得た。しかし、他の回路構成によるセンサ出力値取得回路を用いることもできる。例えば、特開2001−242113号に記載の回路を用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態1,2、及び、変形形態2,5にかかるガス検知装置および車両用オートベンチレーションシステムの概要を示す説明図である。
【図2】実施形態1,2、変形形態1〜6にかかる車両用オートベンチレーションシステムのうち、電子制御アセンブリ20(フラップ駆動回路21)における制御のフローを示す説明図である。
【図3】実施形態1にかかるガス検知装置のうちマイクロコンピュータにおける制御のフローのうちメインルーチンを示す説明図である。
【図4】実施形態1にかかるガス検知装置のうちマイクロコンピュータにおける制御のフローのうちサブルーチンを示す説明図である。
【図5】実施形態1にかかるガス検知装置のうちマイクロコンピュータにおける制御のフローのうちサブルーチンを示す説明図である。
【図6】実施形態1にかかる補正を行ったときの、実測したセンサ出力値S(n)に対するベース値B(n)及び濃度信号LVの変化と、実測したNO2濃度計の出力とを対比して示す説明図である。
【図7】比較形態として補正を行わなかったときの、実測したセンサ出力値S(n)に対するベース値B(n)及び濃度信号LVの変化と、実測したNO2濃度計の出力とを対比して示す説明図である。
【図8】変形形態1,3,4,6にかかるガス検知装置および車両用オートベンチレーションシステムの概要を示す説明図である。
【図9】変形形態1にかかるガス検知装置における制御のフローのうち、要部を抜き出して示す説明図である。
【図10】変形形態2にかかるガス検知装置における制御のフローのうち、要部を抜き出して示す説明図である。
【図11】変形形態3にかかるガス検知装置における制御のフローのうち、要部を抜き出して示す説明図である。
【図12】実施形態2にかかるガス検知装置のうちマイクロコンピュータにおける制御のフローのうちメインルーチンを示す説明図である。
【図13】実施形態2にかかるガス検知装置のうちマイクロコンピュータにおける制御のフローのうちサブルーチンを示す説明図である。
【図14】実施形態2にかかるガス検知装置のうちマイクロコンピュータにおける制御のフローのうちサブルーチンを示す説明図である。
【図15】変形形態4にかかるガス検知装置における制御のフローのうち、要部を抜き出して示す説明図である。
【図16】変形形態5にかかるガス検知装置における制御のフローのうち、要部を抜き出して示す説明図である。
【図17】変形形態6にかかるガス検知装置における制御のフローのうち、要部を抜き出して示す説明図である。
【符号の説明】
100,100A,100B,100C 車両用オートベンチレーションシステム
10,10A,10B,10C ガス検知装置
11,11A,11B,11C ガスセンサ素子
12,12A 検出抵抗
13 バッファ
14,14A,14B,14C センサ抵抗値変換回路
15 A/Dコンバータ
16 マイクロコンピュータ
19,19A,19B,19C センサ出力値取得回路(出力値取得手段)
20 電子制御アセンブリ
21 フラップ駆動回路
31,32,33 ダクト
34 フラップ
Claims (14)
- 特定ガスの濃度変化に応じてセンサ抵抗が変化するガスセンサ素子を用いるガス検知装置であって、
上記ガスセンサ素子を用いてセンサ出力値を所定サイクル時間毎に取得する出力値取得手段と、
上記ガス検知装置の起動の初期期間内であるか否かを判断する初期判断手段と、
を備え、
上記ガス検知装置の起動の初期期間内において、
現在の上記センサ出力値と、
過去と現在とに得られた上記センサ出力値のうちから選択した複数の上記センサ出力値であって、選択された上記複数のセンサ出力値のうち最も離れた2つの上記センサ出力値の取得時期が少なくとも2サイクル以上離れている複数のセンサ出力値を用いて得た補正値と、
を用いて上記特定ガスの濃度上昇を検知する
ガス検知装置。 - 請求項1に記載のガス検知装置であって、
前記補正値は、所定の更新期間毎に、所定の更新条件に従って取得される
ガス検知装置。 - 特定ガスの濃度変化に応じてセンサ抵抗が変化するガスセンサ素子を用いるガス検知装置であって、
上記ガスセンサ素子を用いてセンサ出力値を所定サイクル時間毎に取得する出力値取得手段と、
上記ガス検知装置の起動の初期期間内であるか否かを判断する初期判断手段と、
上記初期期間のうち、上記特定ガスの濃度上昇を検知していない期間において、過去と現在とに得られた上記センサ出力値のうちから選択した複数の上記センサ出力値であって、選択された上記複数のセンサ出力値のうち最も離れた2つの上記センサ出力値の取得時期が少なくとも2サイクル以上離れている複数のセンサ出力値を用いて、所定の更新期間毎に、所定の更新条件に従って、補正値を得る補正値取得手段と、
上記特定ガスの濃度上昇を検知する濃度上昇検知手段であって、
上記初期期間のうち、上記特定ガスの濃度上昇を検知していない期間には、
現在の上記センサ出力値、及び上記補正値、
を用いて上記特定ガスの濃度上昇を検知する
濃度上昇検知手段と、
を備えるガス検知装置。 - 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のガス検知装置であって、
前記特定ガスの濃度低下を検知する濃度低下検知手段であって、
前記初期期間のうち、前記特定ガスの濃度上昇を検知した後に、
現在の前記センサ出力値と、前記特定ガスの濃度上昇を検知した際に用いていた前記補正値である上昇検知時補正値と、を用いて前記特定ガスの濃度低下を検知する
濃度低下検知手段
を備えるガス検知装置。 - 特定ガスの濃度変化に応じてセンサ抵抗が変化するガスセンサ素子を用いるガス検知装置であって、
上記ガスセンサ素子を用いてセンサ出力値を所定サイクル時間毎に取得する出力値取得手段と、
現在または過去に得られた上記センサ出力値を用いて基準値を得る基準値取得手段と、
上記特定ガスの濃度が低下したことを示す濃度低信号を発生している期間において、現在の上記センサ出力値と上記基準値との差である差分値が、第1しきい値に対して第1の大小関係を満たしたときに、上記濃度低信号に代えて上記特定ガスの濃度が上昇したことを示す濃度高信号を発生する濃度高信号発生手段と、
上記ガス検知装置の起動の初期期間内であるか否かを判断する初期判断手段と、
上記初期期間のうち、上記濃度低信号を発生している期間において、過去と現在とに得られた上記センサ出力値のうちから選択した複数の上記センサ出力値であって、選択された上記複数のセンサ出力値のうち最も離れた2つの上記センサ出力値の取得時期が少なくとも2サイクル以上離れている複数のセンサ出力値を用いて、所定の更新期間毎に、所定の更新条件に従って、補正値を得る補正値取得手段と、
上記初期期間のうち、上記濃度低信号を発生している期間において、上記基準値と上記補正値とを用いて、補正済基準値を得る補正済基準値取得手段と、
を備え、
上記濃度高信号発生手段は、
上記初期期間のうち、上記濃度低信号を発生している期間には、上記基準値に代えて、上記補正済基準値を用いる
ガス検知装置。 - 特定ガスの濃度変化に応じてセンサ抵抗が変化するガスセンサ素子を用いるガス検知装置であって、
上記ガスセンサ素子を用いてセンサ出力値を所定サイクル時間毎に取得する出力値取得手段と、
上記センサ出力値から下記式(1)に従ってベース値を算出するベース値算出手段と、
B(n)=B(n−1)+k{S(n)−B(n−1)} …(1)
但し、S(n)はセンサ出力値、B(n)はベース値、B(n−1)は1サイクル過去のベース値である前回ベース値、kは係数であり、0<k<1、nは時系列の順序を示す整数、
上記特定ガスの濃度が低下したことを示す濃度低信号を発生している期間において、上記センサ出力値S(n)と上記ベース値B(n)との差である差分値D(n)が、第1しきい値Tuに対して第1の大小関係を満たしたときに、上記濃度低信号に代えて上記特定ガスの濃度が上昇したことを示す濃度高信号を発生する濃度高信号発生手段と、
上記ガス検知装置の起動の初期期間内であるか否かを判断する初期判断手段と、
上記初期期間のうち、上記濃度低信号を発生している期間において、過去と現在とに得られた上記センサ出力値のうちから選択した複数の上記センサ出力値であって、選択された上記複数のセンサ出力値のうち最も離れた2つの上記センサ出力値の取得時期が少なくとも2サイクル以上離れている複数のセンサ出力値を用いて、所定の更新期間毎に、所定の更新条件に従って、補正値を得る補正値取得手段と、
上記初期期間のうち、上記濃度低信号を発生している期間において、上記前回ベース値B(n−1)に上記補正値Lを加えて、または上記前回ベース値B(n−1)から上記補正値Lを差し引いて、補正済の前回ベース値B(n−1)とする前回ベース値補正手段と、
を備え、
上記ベース値算出手段は、
上記初期期間のうち、上記濃度低信号を発生している期間には、上記補正済の前回ベース値B(n−1)を用いて、ベース値B(n)を算出する
ガス検知装置。 - 特定ガスの濃度変化に応じてセンサ抵抗が変化するガスセンサ素子を用いるガス検知装置であって、
上記ガスセンサ素子を用いてセンサ出力値を所定サイクル時間毎に取得する出力値取得手段と、
上記特定ガスの濃度が低下したことを示す濃度低信号を発生している期間において、現在の上記センサ出力値と1サイクル過去に得られた上記センサ出力値である基準値との差である差分値が、第1しきい値に対して第1の大小関係を満たしたときに、上記濃度低信号に代えて上記特定ガスの濃度が上昇したことを示す濃度高信号を発生する濃度高信号発生手段と、
上記ガス検知装置の起動の初期期間内であるか否かを判断する初期判断手段と、
上記初期期間のうち、上記濃度低信号を発生している期間に、過去と現在とに得られた上記センサ出力値のうちから選択した複数の上記センサ出力値であって、選択された上記複数のセンサ出力値のうち最も離れた2つの上記センサ出力値の取得時期が少なくとも2サイクル以上離れている複数のセンサ出力値を用いて、所定の更新期間毎に、所定の更新条件に従って、補正値を得る補正値取得手段と、
上記初期期間のうち、上記濃度低信号を発生している期間に、上記基準値に上記補正値を加えて、または上記基準値から上記補正値を差し引いて、補正済基準値を得る補正済基準値取得手段と、
を備え、
上記濃度高信号発生手段は、
上記初期期間のうち、上記濃度低信号を発生している期間には、補正前の上記基準値に代えて、上記補正済基準値を用いる
ガス検知装置。 - 請求項5〜請求項7のいずれか1項に記載のガス検知装置であって、
前記初期期間のうち、前記濃度高信号を発生している期間において、前記基準値または前回ベース値と、前記濃度低信号に代えて前記濃度高信号を発生した際に用いていた前記補正値である切換時補正値と、を用いて、第2補正済基準値または第2補正済前回ベース値を得る第2補正済基準値取得手段と、
前記濃度高信号に代えて前記濃度低信号を発生する濃度低信号発生手段であって、
前記初期期間のうち、前記濃度高信号を発生している期間には、
取得された現在の前記センサ出力値と上記第2補正済基準値または第2補正済前回ベース値との差である第2差分値が、第2しきい値に対して第2の大小関係を満たしたときに、
前記濃度高信号に代えて前記濃度低信号を発生する濃度低信号発生手段と、を備えるガス検知装置。 - 請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のガス検知装置であって、
前記初期判断手段は、
少なくとも、前記補正値が所定値よりも小さくなったことを条件として、前記初期期間が経過したと判断する
ガス検知装置。 - 請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載のガス検知装置であって、
前記出力値取得手段において、前記特定ガスの濃度が上昇したときに、前記センサ出力値が変化する方向を第1方向、この逆を第2方向と定義したとき、
更新後の前記補正値が、更新前の前記補正値よりも上記第2方向に変化しているときには、上記更新前の補正値に近づけるように上記更新後の補正値を修正する補正値修正手段を備える
ガス検知装置。 - 請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載のガス検知装置であって、
前記補正値を、第1サイクル数r(但しr≧2)経過毎に、その時点の前記センサ出力値と、これより上記第1サイクル数rだけ過去の前記センサ出力値との差を上記第1サイクル数rで除して得た値とする
ガス検知装置。 - 請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載のガス検知装置であって、
前記補正値を、各サイクル毎に、現在の前記センサ出力値と、これよりも第2サイクル数t(但しt≧2)だけ過去の前記センサ出力値との差を、上記第2サイクル数tで除して得た値とする
ガス検知装置。 - 請求項1〜請求項12のいずれか1項に記載のガス検知装置を含む
車両用オートベンチレーションシステム。 - 外気導入口の開閉装置と、
請求項5〜請求項8のいずれか1項に記載のガス検知装置と、
前記濃度低信号の発生期間中は、上記外気導入口の開閉装置を全開とし、
前記濃度高信号の発生期間中は、上記外気導入口の開閉装置を全閉とする開閉指示信号を出力する開閉指示手段と、
を備える車両用オートベンチレーションシステム。
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