JP5921845B2 - 熱線型半導体式ガスセンサの感度補正方法およびポータブル型ガス検知器 - Google Patents
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Description
しかしながら、湿度センサは高価であるため、ガス検知器の製造コストが高騰すると共に、特に、吸引式のガス検知器においては、湿度センサが接ガス環境下に晒されることとなるため、湿度センサとして、ガスに対する耐久性を有するものを用いることが必要となる。
熱線型半導体式ガスセンサの基準湿度における基準ガス感度をSd、測定雰囲気において検知対象ガスが含まれないガスが導入されることにより取得されるゼロ出力値と前記基準湿度のゼロ校正用ガスによるゼロ校正値との差で示されるゼロ出力変動量をDz、湿度補正係数をKとしたき、測定雰囲気の湿度に応じたガス感度Smを下記式(1)に基づいて算出することを特徴とする。
前記測定雰囲気の湿度に応じたガス感度を算出するに際して、前記ゼロ校正値の前記ゼロ出力温度補正データに基づく温度補正がなされると共に、前記基準ガス感度の前記ガス感度温度補正データに基づく温度補正がなされることが好ましい。
前記ガス感度補正機構は、熱線型半導体式ガスセンサの基準湿度における基準ガス感度をSd、測定雰囲気において検知対象ガスが含まれないガスが導入されることにより取得されるゼロ出力値と前記基準湿度のゼロ校正用ガスによるゼロ校正値との差で示されるゼロ出力変動量をDz、湿度補正係数をKとしたき、測定雰囲気の湿度に応じたガス感度Smを上記式(1)に基づいて算出する機能を有することを特徴とする。
前記ガス感度補正機構は、前記測定雰囲気の湿度に応じたガス感度を算出するに際して、前記ゼロ校正値の、前記ゼロ出力温度補正データに基づく温度補正を行うと共に、前記基準ガス感度の、前記ガス感度温度補正データに基づく温度補正を行う機能を有する構成とされていることが好ましい。
また、熱線型半導体式ガスセンサのガス感度補正を行うに際して、測定雰囲気の環境に応じて生成したものではなく、ボンベガス(相対湿度0%Rh)を校正用ガスとして用いることができるので、高い利便性を得ることができる。
従って、熱線型半導体式ガスセンサについて上記のガス感度補正が行われる本発明のポータブル型ガス検知器によれば、測定雰囲気の環境条件によるセンサ出力の変動が補償された信頼性の高いガス検知を効率よく行うことができる。また、湿度センサ等の特別なデバイスが不要であるので、所期のガス検知器をコスト的に有利に製造することができる。
図1は、本発明のポータブル型ガス検知器の一例における要部の構成を概略的に示すブロック図である。
この実施の形態に係るポータブル型ガス検知器(以下、単に、「ガス検知器」という。)は、熱線型半導体式ガスセンサ10と、この熱線型半導体式ガスセンサ10を駆動するセンサ駆動手段20と、測定雰囲気の温度を測定する温度センサ30と、ガス検知器の動作制御を行う制御手段と、ガス濃度測定および感度補正に係る情報が記録された記憶手段60とを具えている。
上記のガス検知器においては、例えばセンサ駆動手段20によって適正な大きさに制御された電圧が熱線型半導体式ガスセンサ10におけるヒータ13に供給されて(定電流制御)ガス感応部12の表面温度が所定の温度状態、例えば300〜400℃に維持されるよう加熱された状態において、測定雰囲気における被検ガスが熱線型半導体式ガスセンサ10に供給されると、ガス感応部12を構成する金属酸化物半導体の抵抗値(検出出力値)に応じた検出信号(センサ出力)がガス濃度算出機構50に入力されることにより、当該検出信号に応じたガス濃度が検量線データに基づいて算出され、その結果が表示手段(図示せず)に表示される。
次いで、ゼロ出力変動量算出部43によって、測定雰囲気の湿度の影響によるゼロ出力変動量、すなわち、測定されたゼロ出力値Zmのゼロ校正点(この例では一次補正ゼロ出力値Zd(t))に対する変動量Dz(=Zm−Zd(t))が算出される(S3)。
そして、ガス感度湿度補正部44によって、一次補正ガス感度Sd(t)の、測定雰囲気の湿度に応じた湿度補正が行われ、湿度の影響によるセンサ出力値の変動が補償されたガス感度Smが算出される(S5)。具体的には、測定雰囲気の湿度に応じたガス感度Smは、基準ガス感度(この例では一次補正ガス感度)をSd(t)、測定雰囲気の湿度の影響によるゼロ出力変動量をDz、湿度補正係数をKとしたとき、下記式(2)により示される。
すなわち、各々相対湿度が異なる基準温度(例えば20℃)の複数種のゼロ校正用ガスを用意し、各々のゼロ校正用ガスを用いて熱伝導型半導体式ガスセンサ10のゼロ校正処理を行い、各々のゼロ校正用ガスに係るゼロ出力値Zmの、相対湿度が0%Rhであるゼロ校正用ガスに係るゼロ出力値(ゼロ校正点)Zdに対する変動量Dz(=Zm−Zd)を算出する。
また、各々相対湿度が異なる基準温度(例えば20℃)の複数種のスパン校正用ガスを用意し、各々のスパン校正用ガスを用いて熱線型半導体式ガスセンサ10のスパン校正処理を行うことによりガス感度を算出し、各々のスパン校正用ガスを用いて算出されるガス感度Smの、相対湿度が0%Rhであるスパン校正用ガス(ボンベガス)を用いて算出される基準ガス感度Sdに対するガス感度比(Sm/Sd)を算出する。
そして、図4に示すように、ゼロ出力変動量Dz〔mV〕を横軸、ガス感度比Sm/Sdを縦軸にとって結果をプロット(四角形のプロット)し、これらを直線近似することにより取得される、図4において破線で示す湿度特性データにおいて、近似直線Lの傾きが基準温度における湿度補正係数Kとして設定される。
さらに、基準ガス感度の補正に際して、予め取得されたゼロ校正点Zdおよび基準ガス感度Sdについて測定雰囲気の温度に応じた補正(温度補正)が行われることにより、上記効果を一層確実に得ることができる。
さらにまた、湿度センサ等の特別なデバイスが不要であるので、所期のガス検知器をコスト的に有利に製造することができる。
<実験例1>
図2に示す構成の検出素子を具えた、各々互いに同一の構成を有する10個の熱線型半導体式ガスセンサを作製し、各々の熱線型半導体式ガスセンサについて、相対湿度0%Rh、温度20℃であるボンベガス(エアー(ゼロ校正用ガス)および濃度500ppmのメタンガス(スパン校正用ガス))を用いてゼロ校正処理およびスパン校正処理を行うことにより、ゼロ校正値(Zd)、スパン校正値(Gd)および基準ガス感度(Sd)を取得すると共にガス感度についての湿度補正係数(K)を取得した。
各々の熱線型半導体式ガスセンサにおける検出素子(11)は、ガス感応部(12)の最大外径(D)が0.55mm、全長(L)が0.7mm、表面積が1.2mm2であり、ヒータ(13)を構成する白金線の素線径がφ20μm、全長が12.4mm(コイル部(13A)の長さが8.9mm)、コイル部(13A)の巻き数が18であり、供給電流が120mA(定電流)、通電時におけるヒータ(13)の発熱量が0.15Wである。
上記実験例1において、各々の試験用ガスについてのガス濃度測定に際して、ガス感度の補正を行わないことの他は、実験例1と同様のガス濃度測定を行った。結果を図6に示す。
例えば、熱線型半導体式ガスセンサの感度補正を行うに際して用いられる測定雰囲気の温度は、ガス検知器それ自体が有する温度センサにより検出された値であっても、ガス検知器と別個の温度検出手段によって検出された値が入力されたものであってもよく、従って、ガス検知器それ自体が温度センサを具備する構成とされている必要はない。
また、ガス感度補正を行うに際して用いられるゼロ校正点およびスパン校正点は、相対湿度が0%Rhである校正用ガスによる値でなくてもよい。
11 ガス感応素子
12 ガス感応部
13 ヒータ
13A コイル部
13B リード部
20 センサ駆動手段
30 温度センサ
40 ガス感度補正機構
41 ゼロ校正点温度補正部
42 ガス感度温度補正部
43 ゼロ出力変動量算出部
44 ガス感度湿度補正部
50 ガス濃度算出機構
60 記憶手段
Claims (6)
- 測定雰囲気における温度および前記ゼロ校正用ガスの温度の温度差と当該温度差によるゼロ出力値の変動量との関係を示すゼロ出力温度補正データ、および、前記温度差と当該温度差によるガス感度の変動量との関係を示すガス感度温度補正データを予め取得しておき、
前記測定雰囲気の湿度に応じたガス感度を算出するに際して、前記ゼロ校正値の前記ゼロ出力温度補正データに基づく温度補正がなされると共に、前記基準ガス感度の前記ガス感度温度補正データに基づく温度補正がなされることを特徴とする請求項1に記載の熱線型半導体式ガスセンサの感度補正方法。 - 前記ゼロ校正値が、相対湿度が0%Rhであるゼロ校正用ガスを用いて取得されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の熱線型半導体式ガスセンサの感度補正方法。
- 熱線型半導体式ガスセンサと、当該熱線型半導体式ガスセンサのガス感度を測定雰囲気の湿度に応じて補正する機能を有するガス感度補正機構と、前記熱線型半導体式ガスセンサについての基準湿度のゼロ校正用ガスによるゼロ校正値および当該基準湿度における基準ガス感度を含む情報が記録された記憶手段とを具えており、
前記ガス感度補正機構は、熱線型半導体式ガスセンサの基準湿度における基準ガス感度をSd、測定雰囲気において検知対象ガスが含まれないガスが導入されることにより取得されるゼロ出力値と前記基準湿度のゼロ校正用ガスによるゼロ校正値との差で示されるゼロ出力変動量をDz、湿度補正係数をKとしたき、測定雰囲気の湿度に応じたガス感度Smを下記式(1)に基づいて算出する機能を有することを特徴とするポータブル型ガス検知器。
- 前記記憶手段には、前記測定雰囲気における温度および前記ゼロ校正用ガスの温度との温度差と当該温度差によるゼロ出力値の変動量との関係を示すゼロ出力温度補正データ、および、前記温度差と当該温度差によるガス感度の変動量との関係を示すガス感度温度補正データがさらに記録されており、
前記ガス感度補正機構は、前記測定雰囲気の湿度に応じたガス感度を算出するに際して、前記ゼロ校正値の、前記ゼロ出力温度補正データに基づく温度補正を行うと共に、前記基準ガス感度の、前記ガス感度温度補正データに基づく温度補正を行う機能を有することを特徴とする請求項4に記載のポータブル型ガス検知器。 - 前記ゼロ校正値が、相対湿度が0%Rhであるゼロ校正用ガスを用いて取得されるものであることを特徴とする請求項4または請求項5に記載のポータブル型ガス検知器。
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