JP2021004851A - ガス検知器 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、MEMS型半導体式ガス検知素子が劣化しても、劣化前と同等の測定時間で、検知対象ガスの検知を精度よく行うことが可能なガス検知器を提供することを目的とする。【解決手段】本発明のガス検知器は、MEMS型半導体式ガス検知素子21を含み、MEMS型半導体式ガス検知素子21の変化を検知信号として出力するガス検知部2と、制御部3とを備え、制御部3が、ガス検知部2により、MEMS型半導体式ガス検知素子21の加熱の開始から所定の検知時間までの測定時間の間に、時間間隔をおいて、測定対象ガスについての複数の検知信号強度を取得し、ガス検知部2により取得された複数の検知信号強度に基づいて、所定の検知時間より後の測定時間における検知信号強度を外挿し、外挿された検知信号強度に基づいて、検知対象ガスの有無および/または濃度を判定するように構成されることを特徴とする。【選択図】図1
Description
本発明は、ガス検知器に関する。
従来、環境雰囲気に含まれるメタンなどの検知対象ガスを検知するために、たとえば特許文献1に開示されるようなMEMS型半導体式ガス検知素子などの半導体式ガス検知素子を備えたガス検知器が用いられている。ガス検知器は、検知対象ガスとの相互作用によって変化する半導体式ガス検知素子の抵抗値の変化量を検知信号強度として測定することで、検知対象ガスを検知する。たとえば、MEMS型半導体式ガス検知素子は、コイル型半導体式ガス検知素子など他のタイプの半導体式ガス検知素子と比べて、小型で消費電力が小さいという利点を有している。そのため、MEMS型半導体式ガス検知素子は、消費電力を極力小さく抑える必要のある電池を電源とするガス検知器に好適に用いられる。MEMS型半導体式ガス検知素子を備えるガス検知器は、消費電力をさらに小さく抑えるために、駆動開始から短時間で検知信号強度を測定するように設計されている。
ここで、環境雰囲気には、検知対象ガス以外にも、エタノールやトルエンなどを含む揮発性有機化合物など、半導体式ガス検知素子が相互作用する非検知対象ガスが含まれる場合がある。このような非検知対象ガスが環境雰囲気に含まれると、測定される検知信号強度には、検知対象ガスに加えて非検知対象ガスに起因して得られる検知信号強度も含まれるために、検知対象ガスの検知が困難になる場合がある。そのため、半導体式ガス検知素子では、ガス種に応じて異なるガス応答挙動を利用して、非検知対象ガスの検知信号強度の安定時、つまり、非検知対象ガスの検知信号強度が検出されにくく、検知対象ガスの検知信号強度が検出され易い時点に、測定時間・素子温度が設定されている。
また、非検知対象ガスに対する検知感度を低下させ、検知対象ガスの選択性を高めるために、たとえば非検知対象ガスを選択的に燃焼除去するための触媒機能が付与されることもある。
ところが、半導体式ガス検知素子は、特定条件下での使用により、触媒機能が劣化する場合がある。触媒機能の劣化は、たとえば、半導体式ガス検知素子が、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)などの有機シリコーンガスに曝されて被毒したり、ハロゲン系ガスに曝されたり、高温・高湿度環境下で使用されたりすることにより劣化することによって生じ得る。半導体式ガス検知素子では、触媒機能が劣化すると、特に非検知対象ガスに対する応答性が劣化し、検知対象ガスに比べて、半導体式ガス検知素子の駆動開始から非検知対象ガスの検知信号強度が安定するまでの時間が長くなるという問題が生じる。そのような場合、MEMS型半導体式ガス検知素子では、消費電力を小さく抑えるために駆動開始から短時間で測定を完了させようとすると、非検知対象ガスに起因した検知信号強度の影響で検知対象ガスを精度よく検知することができない。また、非検知対象ガスの検知信号強度が安定するまで待ってから検知信号強度の測定を行うと、消費電力が大きくなってしまい、MEMS型半導体式ガス検知素子の本来の低消費電力用途に適さなくなってしまう。
本発明は、上記問題に鑑みなされたもので、MEMS型半導体式ガス検知素子が劣化しても、劣化前と同等の測定時間で、検知対象ガスの検知を精度よく行うことが可能なガス検知器を提供することを目的とする。
本発明のガス検知器は、検知対象ガスおよび非検知対象ガスを含み得る測定対象ガス中の検知対象ガスを検知するために用いられるガス検知器であって、前記ガス検知器が、所定の温度で加熱された状態で前記検知対象ガスおよび前記非検知対象ガスに感応するMEMS型半導体式ガス検知素子を含み、前記検知対象ガスおよび前記非検知対象ガスに感応することで生じる前記MEMS型半導体式ガス検知素子の変化を検知信号として出力するガス検知部と、前記ガス検知部により出力される検知信号に基づいて、前記検知対象ガスの有無および/または濃度を判定するように構成される制御部とを備え、前記制御部が、前記ガス検知部により、前記MEMS型半導体式ガス検知素子の加熱の開始から所定の検知時間までの測定時間の間に、時間間隔をおいて、前記測定対象ガスについての複数の検知信号強度を取得し、前記ガス検知部により取得された複数の検知信号強度に基づいて、前記所定の検知時間より後の測定時間における検知信号強度を外挿し、外挿された検知信号強度に基づいて、前記検知対象ガスの有無および/または濃度を判定するように構成されることを特徴とする。
また、前記外挿された検知信号強度は、前記ガス検知部により取得された複数の検知信号強度に基づいて外挿された検知信号強度の時間変化を示す検知信号波形において、測定時間に対する検知信号強度の変化の傾きが所定値以下となる測定時間での検知信号強度として決定されることが好ましい。
また、前記ガス検知器が、前記MEMS型半導体式ガス検知素子の上流側に、前記非検知対象ガスを吸着するガスフィルタを備えることが好ましい。
また、前記MEMS型半導体式ガス検知素子は、前記検知対象ガスおよび前記非検知対象ガスに感応する感応層と、前記感応層を覆うように形成される触媒層とを含むことが好ましい。
また、前記制御部が、前記MEMS型半導体式ガス検知素子の加熱の開始から、前記MEMS型半導体式ガス検知素子が前記所定の温度に加熱されるまでの間の、検知信号強度の時間変化を示す検知信号波形に基づいて、前記測定対象ガスに前記非検知対象ガスが含まれるか否かを判定し、前記測定対象ガスに前記非検知対象ガスが含まれないと判定した場合に、前記所定の検知時間において取得された検知信号強度に基づいて、前記検知対象ガスの有無および/または濃度を判定し、前記測定対象ガスに前記非検知対象ガスが含まれると判定した場合に、前記MEMS型半導体式ガス検知素子が前記所定の温度に加熱された後から前記所定の検知時間までの測定時間の間に前記ガス検知部により取得された複数の検知信号強度に基づいて、前記所定の検知時間より後の測定時間における検知信号強度を外挿し、外挿された検知信号強度に基づいて、前記検知対象ガスの有無および/または濃度を判定するように構成されることが好ましい。
本発明によれば、MEMS型半導体式ガス検知素子が劣化しても、劣化前と同等の測定時間で、検知対象ガスの検知を精度よく行うことが可能なガス検知器を提供することができる。
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態に係るガス検知器を説明する。ただし、以下に示す実施形態は一例であり、本発明のガス検知器は以下の例に限定されることはない。
本実施形態のガス検知器は、たとえば大気などの環境雰囲気など、検知対象ガスおよび非検知対象ガスを含み得る測定対象ガス中の検知対象ガスを検知するために用いられる。測定対象ガスに含まれ得る検知対象ガスとは、後述するMEMS型半導体式ガス検知素子21が感応し、検知対象とするガスである。検知対象ガスとしては、特に限定されることはなく、たとえば、メタン、ブタン、イソブタン、プロパンなどが例示される。測定対象ガスに含まれ得る非検知対象ガスとは、MEMS型半導体式ガス検知素子21が感応するが、検知対象としないガスである。非検知対象ガスとしては、特に限定されることはなく、たとえば、エタノールやトルエンなどを含む揮発性有機化合物(VOC)などが例示される。また、検知対象ガスの検知には、測定対象ガス中での検知対象ガスの有無の判定や、測定対象ガス中の検知対象ガスの濃度の判定が含まれる。
ガス検知器1は、図1に示されるように、検知対象ガスおよび非検知対象ガスに対する検知信号を出力するガス検知部2と、ガス検知部2により出力される検知信号に基づいて、検知対象ガスの有無および/または濃度を判定するように構成される制御部3とを備えている。ガス検知器1はさらに、ガス検知部2により出力される検知信号に関するデータなどを記憶する記憶部4と、制御部3により判定された結果などを表示する表示部5と、ガス検知部2、制御部3、記憶部4および表示部5に電力を供給するための電池などの電源(図示せず)と、制御部3に対する指示を入力するための入力部(図示せず)とをさらに備えていてもよい。これらのガス検知部2、制御部3、記憶部4、表示部5、電源、入力部は、1つのガス検知器1に組み込まれていてもよいし、それぞれ別個の装置として構成されてもよい。
ガス検知部2は、図1に示されるように、所定の温度で加熱された状態で検知対象ガスおよび非検知対象ガスに感応するMEMS型半導体式ガス検知素子21を含んでいる。ガス検知部2は、検知対象ガスおよび非検知対象ガスに感応することで生じるMEMS型半導体式ガス検知素子21の変化を検知信号として出力する。ガス検知部2は、本実施形態では、MEMS型半導体式ガス検知素子21の変化を検知信号として出力するために、ブリッジ回路22を含んでいる。ブリッジ回路22は、固定抵抗R0、R1、R2、MEMS型半導体式ガス検知素子21、電源Eおよび電位差計Vが組み込まれて形成される。MEMS型半導体式ガス検知素子21は、ブリッジ回路22内において電源Eによって常時または間欠的に通電されることで、検知対象ガスの検知に適した所定の温度に加熱される。ブリッジ回路22は、MEMS型半導体式ガス検知素子21における電気抵抗値の変化によって生じる回路内の電位差の変化を電位差計Vによって測定して、その電位差の変化を検知信号として出力する。ただし、ガス検知部2は、検知対象ガスおよび非検知対象ガスに感応することで生じるMEMS型半導体式ガス検知素子21の変化を検知信号として出力するように構成されていれば、本実施形態に限定されることはなく、ブリッジ回路22とは異なる回路など、他の検知信号出力手段を備えていてもよい。
MEMS型半導体式ガス検知素子21は、上述したように、所定の温度で加熱された状態で、検知対象ガスおよび非検知対象ガスに感応して変化する。より具体的には、MEMS型半導体式ガス検知素子21は、所定の温度で加熱された状態で、表面に吸着した酸素と測定対象ガス中の検知対象ガスおよび非検知対象ガスとの化学反応に伴って電気抵抗値(または電気伝導度)が変化する。MEMS型半導体式ガス検知素子21が加熱される所定の温度は、検知対象ガスの感度が高くなる範囲で適宜設定することができる。ガス検知部2は、MEMS型半導体式ガス検知素子21のこの電気抵抗値の変化量を検知対象ガスおよび非検知対象ガスの検知信号強度として出力する。出力された検知信号強度は、制御部3に送られ、および/または記憶部4に記憶される。
MEMS型半導体式ガス検知素子21は、図2に示されるように、MEMS(Micro Electro Mechanical System)構造を有している。MEMS構造とは、シリコン基板などの基板の上に微細加工技術によって素子構成要素の少なくとも一部を集積化したデバイス構造のことを意味する。MEMS型半導体式ガス検知素子21は、MEMS構造を有することにより、コイル型の半導体式ガス検知素子と比べて、小型化が可能で、低消費電力での駆動が可能である。
MEMS型半導体式ガス検知素子21は、MEMS構造を有し、所定の温度で加熱された状態で検知対象ガスおよび非検知対象ガスに感応して変化するように構成されていればよく、その構成は特に限定されることはない。MEMS型半導体式ガス検知素子21は、本実施形態では、検知対象ガスの選択性を高めるために、非検知対象ガスを選択的に燃焼するための触媒機能を有している。より具体的には、MEMS型半導体式ガス検知素子21は、図2に示されるように、検知対象ガスおよび非検知対象ガスに感応する感応層211と、感応層211を覆うように形成される触媒層212とを含んでいる。感応層211および触媒層212は、感応層211を加熱するための加熱部213とともに、基板本体214a、絶縁膜214bおよび空洞部214cを含む基板214上に設けられる。MEMS型半導体式ガス検知素子21は、本実施形態では触媒層212によって触媒機能が付与されているが、触媒層212以外の要素によって触媒機能が付与されていてもよい。
感応層211は、金属酸化物半導体を主成分とし、所定の温度で加熱された状態で、表面の吸着酸素と、検知対象ガスおよび非検知対象ガスとの化学反応に伴って電気抵抗が変化する部位である。感応層211は、たとえば、酸化スズや酸化インジウムなどの金属酸化物半導体にアンチモンやニオブなどの金属をドナーとして添加することで形成することができる。触媒層212は、触媒機能を有し、測定対象ガス中の非検知対象ガスと接触することで、非検知対象ガスが感応層211と接触する前に非検知対象ガスを酸化分解(燃焼)し、非検知対象ガスが感応層211の吸着酸素と化学反応するのを抑制する。触媒層212は、たとえば、アルミナやシリカなどの金属酸化物に、白金やパラジウムなどの貴金属触媒を担持させることにより形成することができる。加熱部213は、感応層211を所定の温度に加熱するとともに、感応層211の電気抵抗値変化を検出するための電極としても機能する。加熱部213は、たとえば、白金、白金−ロジウム合金などの貴金属などにより形成し、通電により発熱するように形成することができる。
ガス検知器1は、図1に示されるように、MEMS型半導体式ガス検知素子21の上流側に、非検知対象ガスを吸着するガスフィルタ6を備えていてもよい。ガスフィルタ6は、非検知対象ガスを吸着し、非検知対象ガスがMEMS型半導体式ガス検知素子21に到達するのを抑制する。ガスフィルタ6は、本実施形態では、MEMS型半導体式ガス検知素子21とともに、収納部7に収納される。収納部7は、筐体71と、筐体71に設けられた開口部72と、筐体71内に設けられ、開口部72と連通する内部空間73とを備えている。ガスフィルタ6は、開口部72に隣接して筐体71内の内部空間73に設けられ、MEMS型半導体式ガス検知素子21は、開口部72とは反対側の筐体71の端部に隣接して筐体71内の内部空間73に設けられる。測定対象ガスは、開口部72を介して筐体71内の内部空間73に導入される。内部空間73に導入される測定対象ガスのうち、非検知対象ガスは、ガスフィルタ6に吸着され、検知対象ガスは、ガスフィルタ6を通過して、MEMS型半導体式ガス検知素子21に到達する。ガスフィルタ6は、非検知対象ガスを吸着するための吸着材を含んでいる。吸着材は、たとえば、活性炭、カーボンブラック、シリカアルミナ、ゼオライトなどにより形成される。
ここで、ガス検知器1では、ガスフィルタ6を備える場合、長期間の使用の間に、非検知対象ガスがガスフィルタ6に吸着されて保持される。ガスフィルタ6に保持された非検知対象ガスは、所定の温度に加熱されるMEMS型半導体式ガス検知素子21の輻射熱などによりガスフィルタ6が加熱されると、その一部は筐体71外に放出されるが、その一部は筐体71内の内部空間73に放出される場合がある。内部空間73に放出された非検知対象ガスは、それ以後、内部空間73に保持されて、内部空間73は、場合によっては、筐体71外の環境よりも非検知対象ガスの濃度が高い状況となる可能性がある。このような状況で、たとえば有機シリコーンガスによる被毒などによりMEMS型半導体式ガス検知素子21の触媒機能が劣化すると、MEMS型半導体式ガス検知素子21の検知対象ガスに対する検知精度がより低下してしまう。しかし、このような場合でも、以下で詳しく述べるように、本実施形態のガス検知器1では、たとえMEMS型半導体式ガス検知素子21の触媒機能が劣化しても、劣化前と同等の測定時間で、検知対象ガスの検知を精度よく行うことができる。それによって、長期間使用後に筐体71内の内部空間73に非検知対象ガスが保持されても、劣化前と同等の測定時間で検知対象ガスの検知を精度よく行うことができるので、ガス検知器1をさらに長期間に亘って継続して使用することができる。
ここで、MEMS型半導体式ガス検知素子は、一般的に、加熱開始(測定開始)から所定の温度に到達するまでにある程度の時間を要し、所定の温度に到達してから電気抵抗値の変化量(検知信号強度)が安定するまでにある程度の時間を要するという特性を有している。したがって、MEMS型半導体式ガス検知素子を備えるガス検知器では、安定した検知信号強度を得るために、加熱を開始してから所定時間が経過するのを待って、検知信号強度を取得する必要がある。その一方で、MEMS型半導体式ガス検知素子を備えるガス検知器では、消費電力を抑えるために、測定開始からできる限り早い時間で検知信号強度を取得する必要がある。したがって、ガス検知器では、可能な限り安定した検知信号強度を取得するとともに、可能な限り電力消費を抑制するという観点から、検知信号強度の取得は、MEMS型半導体式ガス検知素子の加熱開始から、たとえば90msecなどの所定の検知時間において行われる。
触媒機能を有するMEMS型半導体式ガス検知素子は、ヘキサメチルジシロキサン(HMDS)やオクタメチルシクロテトラシロキサンなどの有機シリコーンガスに曝されて被毒したり、ハロゲン系ガスに曝されたり、高温・高湿度環境下で使用されたりすることによって、触媒機能が劣化する場合がある。触媒機能が劣化すると、特に非検知対象ガスに対する応答性が劣化し、検知対象ガスに比べて、非検知対象ガスの検知信号強度が安定するまでの時間が長くなる。図3は、一例として、有機シリコーンガス被毒処理(劣化処理)後のMEMS型半導体式ガス検知素子21から得られた検知信号強度の測定時間に対する変化(検知信号波形)を示しており、その検知信号波形は、MEMS型半導体式ガス検知素子21の触媒機能が有機シリコーンガスによる被毒によって劣化した状態を表している。このときの有機シリコーンガス被毒処理は、大気中にオクタメチルシクロテトラシロキサンが10ppm含まれる環境において、MEMS型半導体式ガス検知素子21を、0.09秒の通電(600℃加熱)と29.91秒の無通電とを交互に繰り返す間欠駆動を30分間させることにより行なわれたものである。また、検知信号強度(図中では、センサ出力)は、大気中に検知対象ガスであるメタンが3000ppmの濃度で含まれる環境、大気中に非検知対象ガスであるエタノールが100ppmの濃度で含まれる環境、検知対象ガスおよび非検知対象ガスが含まれない大気のみの環境のそれぞれにおいて測定されたものである。
図3に示されるように、大気のみの環境や、大気中にメタンのみが含まれる環境では、MEMS型半導体式ガス検知素子21の加熱開始から測定時間の増加に伴って検知信号強度は低下するが、測定時間が、所定の検知時間である90msec近傍以降では、ほぼ一定の値を示している。それに対して、大気中にエタノールのみが含まれる環境では、測定時間が、所定の検知時間である90msecを超えても、検知信号強度が低下し続け、所定の検知時間の倍である180msecを超えてもなお、検知信号強度が低下する傾向を示している。このことは、MEMS型半導体式ガス検知素子21の触媒機能の劣化によって、特に非検知対象ガスに対する応答性が劣化していることを示している。たとえば、検知対象ガスであるメタンのみが大気中に含まれる環境下では、所定の検知時間である90msecにおいて検知信号強度がほぼ一定の値を示しているので、その所定の検知時間において検知信号強度を取得することによって、精度よく検知対象ガスを検知することができる。ところが、非検知対象ガスであるエタノールのみが大気中に存在する環境下や、検知対象ガスであるメタンと非検知対象ガスであるエタノールが大気中に共存する環境下では、所定の検知時間である90msecにおいて取得される検知信号強度には、非検知対象ガスの、安定せず、しかも高い検知信号強度が含まれるために、その所定の検知時間において検知信号強度を取得しても、精度よく検知対象ガスを検知することが難しい。
本実施形態のガス検知器1は、以上に述べた問題に鑑み、以下で詳しく述べるように、所定の検知時間までに取得された検知信号強度に基づいて、所定の検知時間の後の測定時間における検知信号強度を外挿し、外挿された検知信号強度に基づいて検知対象ガスを検知するように構成される。これにより、本実施形態のガス検知器1では、MEMS型半導体式ガス検知素子21が劣化しても、劣化前と同等の測定時間で、検知対象ガスの検知を精度よく行うことができる。
上述した目的のために、ガス検知器1の制御部3は、まず、ガス検知部2により、MEMS型半導体式ガス検知素子21の加熱の開始から所定の検知時間までの測定時間の間に、時間間隔をおいて、測定対象ガスについての複数の検知信号強度を取得するように構成される。制御部3は、ガス検知部2を制御し、ガス検知部2を通じて検知信号強度を取得する。MEMS型半導体式ガス検知素子21の加熱は、本実施形態では、MEMS型半導体式ガス検知素子21の加熱部213への通電開始によって開始される。所定の検知時間は、たとえば有機シリコーンガスによって被毒していないなど、劣化していないMEMS型半導体式ガス検知素子21において、可能な限り安定した検知信号強度を取得するとともに、可能な限り電力消費を抑制するという要求を満たすように、適宜設定することができる。たとえば、所定の検知時間は、特に限定されることはなく、加熱の開始から90msecなどに設定することができる。検知信号強度を取得する時間間隔は、所定の検知時間の後の検知信号強度の測定時間変化を精度よく外挿するために、所定の検知時間までに取得される検知信号強度の測定時間変化の挙動を求めることができるように、適宜設定することができる。たとえば、検知信号強度を取得する時間間隔は、特に限定されることはなく、5msecなどに設定することができる。検知信号強度を取得する測定時間の時間範囲は、加熱の開始から所定の検知時間までの範囲であればよく、特に限定されることはないが、MEMS型半導体式ガス検知素子21が所定の温度に到達した後から所定の検知時間までの範囲であることが好ましく、たとえば加熱の開始から30〜90msecの範囲、好ましくは加熱の開始から60〜90msecの範囲で設定することができる。取得する検知信号強度の点数は、2点以上であればよく、検知信号強度の測定時間変化の挙動を求めることができる範囲で適宜設定することができ、特に限定されることはなく、たとえば2〜13点などの範囲で設定することができる。
ガス検知器1の制御部3は、つぎに、ガス検知部2により取得された複数の検知信号強度に基づいて、所定の検知時間より後の測定時間における検知信号強度を外挿(予測)するように構成される。本実施形態では、ガス検知部2により取得された複数の検知信号強度は、制御部3に送られ、および/または記憶部4に記憶される。制御部3は、ガス検知部2から送られた複数の検知信号強度、または記憶部4に記憶された複数の検知信号強度に基づいて、所定の検知時間より後の測定時間における検知信号強度を外挿する。所定の検知時間より後の測定時間における検知信号強度は、たとえば、所定の検知時間以前の、取得された検知信号強度の測定時間に対する変化を適切な関数(たとえば、対数関数)でフィッティングすることにより外挿することができる。あるいは、たとえば、以下で詳しく説明するように、所定の検知時間以前の、取得された検知信号強度の測定時間に対する傾きの変化を適切な関数(たとえば、対数関数)でフィッティングして、所定の検知時間より後の測定時間における傾きを外挿し、外挿された傾きから検知信号強度を求めることもできる。ただし、検知信号強度の外挿方法は、所定の検知時間以前に取得された検知信号強度に基づいて、所定の検知時間の後の測定時間における検知信号強度を外挿するものであれば、上述した例に限定されることはない。
ここで、図4および図5を用いて、非検知対象ガスであるエタノールの検知信号強度の測定時間に対する変化を測定した結果を例に挙げて、検知信号強度の外挿方法の一例を説明する。なお、以下の外挿方法は、非検知対象ガスの測定結果を例に挙げて説明するものであるが、検知対象ガスおよび非検知対象ガスが含まれ得る測定対象ガスの検知信号強度についても同様に適用可能である。図4(a)は、図3と同じ条件でエタノールについて得られた検知信号強度の測定時間に対する変化(検知信号波形)を示している。図4(a)中、測定時間が0〜90msecの範囲では、実際に取得された検知信号強度の変化を示しており、測定時間が90msec以降の範囲では、外挿された検知信号波形を概略的に示している。図4(b)は、図4(a)の測定時間が60〜90msecの範囲を拡大した図である。制御部3は、この例では、所定の検知時間である90msec以前の、測定時間が60〜90msecの範囲の検知信号波形の傾きに基づいて、所定の検知時間である90msecより後の検知信号波形の傾きを外挿する。より具体的には、まず、測定時間70、80、90msecのそれぞれにおける検知信号波形の傾きとして、測定時間60〜70msec、70〜80msec、80〜90msecのそれぞれの範囲における傾きを算出する。図5は、この傾きの測定時間に対する変化を示している。図5から分かるように、傾きの絶対値は、測定時間の増加に伴って減少している。このことから、測定時間の経過に伴って検知信号強度の変化が小さくなっていることが分かる。つぎに、制御部3は、測定時間に対する傾きの変化を適切な関数(対数関数)でフィッティングし(図5中の直線を参照)、フィッティングした関数により、所定の検知時間である90msec以降の各測定時間における傾きを外挿する。最後に、制御部3は、各測定時間における外挿された傾きを用いて、各測定時間における検知信号強度を算出する。外挿された傾きを用いて算出された検知信号強度の測定時間に対する変化(検知信号波形)は、図4(a)中に点線で概略的に示されている。
検知対象ガスの検知に際して、所定の検知時間より後の測定時間における外挿された検知信号強度を用いることで、所定の検知時間における検知信号強度を用いるよりも、非検知対象ガスに対する検知信号強度の影響を抑えることができるので、検知対象ガスを精度よく検知することができる。検知対象ガスの検知に用いる検知信号強度としては、所定の検知時間より後の測定時間における外挿された検知信号強度であればよく、特に限定されることはないが、検知信号強度の測定時間に対する変化が小さくなる測定時間における検知信号強度を採用することが好ましい。より具体的には、外挿された検知信号強度は、ガス検知部2により取得された複数の検知信号強度に基づいて外挿された検知信号強度の時間変化を示す検知信号波形において、測定時間に対する検知信号強度の変化の傾き(の絶対値)が所定値以下(たとえば、ゼロ)となる測定時間での検知信号強度として決定することが好ましい。測定時間に対する検知信号強度の変化の傾きが所定値以下となる測定時間での検知信号強度を採用することで、より安定した検知信号強度が得られる。
制御部3は、所定の検知時間以前の測定時間において取得された検知信号強度に基づいて外挿された検知信号強度に基づいて、検知対象ガスの有無および/または濃度を判定するように構成されている。制御部3は、本実施形態では、外挿された検知信号強度が所定の閾値以上である場合に、測定対象ガス中に検知対象ガスが存在すると判定し、外挿された検知信号強度が所定の閾値よりも小さい場合に、測定対象ガス中に検知対象ガスが存在しないと判定する。所定の閾値は、測定対象ガス中に検知対象ガスが所定量存在する場合に取得され得る検知信号強度に基づいて予め設定される。また、制御部3は、本実施形態では、予め作成された検量線を用いて、外挿された検知信号強度から検知対象ガスの濃度を判定する。ガス検知器1は、このように制御部3が外挿された検知信号強度に基づいて検知対象ガスの有無および/または濃度を判定するように構成されることで、MEMS型半導体式ガス検知素子21が劣化しても、劣化前と同等の測定時間で、検知対象ガスの検知を精度よく行なうことができる。
制御部3はさらに、任意で、MEMS型半導体式ガス検知素子21の加熱の開始から、MEMS型半導体式ガス検知素子21が所定の温度に加熱されるまでの間の、検知信号強度の時間変化を示す検知信号波形に基づいて、測定対象ガスに非検知対象ガスが含まれるか否かを判定するように構成されていてもよい。エタノールなどの非検知対象ガスは、図3および図4(a)に示されるように、MEMS型半導体式ガス検知素子21の加熱の開始から所定の温度に加熱されるまでの間(図中、0〜30msec)、メタンなどの検知対象ガスと比べて、加熱開始直後に検知信号強度が増加する傾向がある(図中、矢印を参照)。このような傾向は、図6(a)、(b)にも示されるように、MEMS型半導体式ガス検知素子21の劣化の有無に関わらず、トルエンなど他の揮発性有機化合物(VOC)などの非検知対象ガスにも同様に見られる。これは、MEMS型半導体式ガス検知素子21が所定の温度に加熱されるまでの間では、触媒層212の触媒機能が発揮されずに非検知対象ガスの燃焼が抑制されて、非検知対象ガスが、感応層211の表面に吸着した酸素と反応することによるものと考えられる。MEMS型半導体式ガス検知素子21が所定の温度に加熱されたあとは、触媒層212の触媒機能が発揮し始めることで、非検知対象ガスと感応層211上の吸着酸素との間の反応が抑制されて、非検知対象ガスの検知信号強度が低下し始める。このように、検知対象ガスと非検知対象ガスとでは、MEMS型半導体式ガス検知素子21の加熱の開始から所定の温度に加熱されるまでの間における検知信号波形が異なる。制御部3は、検知対象ガスと非検知対象ガスとで検知信号波形が異なることを利用して、より具体的には、MEMS型半導体式ガス検知素子21の加熱の開始から所定の温度に加熱されるまでの間の検知信号強度の増加の有無を判定することで、測定対象ガスに非検知対象ガスが含まれるか否かを判定することができる。
制御部3は、測定対象ガスに非検知対象ガスが含まれるか否かの判定において、測定対象ガスに非検知対象ガスが含まれないと判定した場合に、所定の検知時間において取得された検知信号強度に基づいて、検知対象ガスの有無および/または濃度を判定するように構成される。測定対象ガスに非検知対象ガスが含まれない場合には、MEMS型半導体式ガス検知素子21が劣化していたとしても、非検知対象ガスの、長い測定時間に亘って安定せず、しかも高い検知信号強度が含まれないので、所定の検知時間において取得される検知信号強度に基づいて、検知対象ガスを精度よく検知することができる。
制御部3は、測定対象ガスに非検知対象ガスが含まれるか否かの判定において、測定対象ガスに非検知対象ガスが含まれると判定した場合に、MEMS型半導体式ガス検知素子21が所定の温度に加熱された後から所定の検知時間までの測定時間の間にガス検知部2により取得された複数の検知信号強度に基づいて、所定の検知時間より後の測定時間における検知信号強度を外挿し、外挿された検知信号強度に基づいて、検知対象ガスの有無および/または濃度を判定するように構成される。測定対象ガスに非検知対象ガスが含まれる場合には、少なくともMEMS型半導体式ガス検知素子21が劣化していると、所定の検知時間において取得される検知信号強度には、非検知対象ガスの、長い測定時間に亘って安定せず、しかも高い検知信号強度が含まれることになるので、上述した検知信号強度の外挿方法を採用することで、劣化前と同等の測定時間で、検知対象ガスの検知を精度よく行うことができる。
以下において、実施例をもとに本実施形態のガス検知器の優れた効果を説明する。ただし、本発明のガス検知器は、以下の実施例に限定されるものではない。
(ガス検知器)
ガス検知器として、図1に概略的に示されるガス検知器1を作製した。ガス検知器1に含まれるガス検知素子としては、図2に示されるMEMS型半導体式ガス検知素子21を作製した。その際、基板214をシリコン基板とし、加熱部213を白金ヒーターとした。また、感応層211は、アンチモンをドナーとして添加した酸化スズ半導体の微粉体のペーストを、基板214上の加熱部213を覆うように塗布した後、乾燥・加熱して、酸化スズ半導体を焼結することにより形成した。触媒層212は、パラジウム担持アルミナの微粒子ペーストを、感応層211を覆うように塗布した後、乾燥・加熱して形成した。その他は、公知の方法を採用した。
ガス検知器として、図1に概略的に示されるガス検知器1を作製した。ガス検知器1に含まれるガス検知素子としては、図2に示されるMEMS型半導体式ガス検知素子21を作製した。その際、基板214をシリコン基板とし、加熱部213を白金ヒーターとした。また、感応層211は、アンチモンをドナーとして添加した酸化スズ半導体の微粉体のペーストを、基板214上の加熱部213を覆うように塗布した後、乾燥・加熱して、酸化スズ半導体を焼結することにより形成した。触媒層212は、パラジウム担持アルミナの微粒子ペーストを、感応層211を覆うように塗布した後、乾燥・加熱して形成した。その他は、公知の方法を採用した。
(MEMS型半導体式ガス検知素子の劣化処理)
MEMS型半導体式ガス検知素子を劣化させる処理として、大気中にオクタメチルシクロテトラシロキサンが10ppmの濃度で含まれる環境において、MEMS型半導体式ガス検知素子に対して、0.09秒の通電(600℃加熱)と29.91秒の無通電とを交互に繰り返す間欠駆動を30分間行なった。
MEMS型半導体式ガス検知素子を劣化させる処理として、大気中にオクタメチルシクロテトラシロキサンが10ppmの濃度で含まれる環境において、MEMS型半導体式ガス検知素子に対して、0.09秒の通電(600℃加熱)と29.91秒の無通電とを交互に繰り返す間欠駆動を30分間行なった。
(検知信号強度の測定)
劣化処理前後のMEMS型半導体式ガス検知素子を所定の温度である600℃に加熱した状態で、MEMS型半導体式ガス検知素子から出力される検知信号強度(センサ出力)を測定した。検知信号強度の測定は、MEMS型半導体式ガス検知素子の加熱の開始から60、70、80、90msec後の測定時間において、MEMS型半導体式ガス検知素子を含むブリッジ回路で生じる電位差を測定することにより行なった。測定を行なった環境は、大気中にメタンのみが含まれる環境、大気中にメタンおよびエタノール(100ppm)が含まれる環境、大気中にメタンおよびエタノール(1000ppm)が含まれる環境において、メタンが、0、1000、3000、5000、10000ppmの濃度で存在する環境とした。なお、大気中に含まれるメタンの濃度が0ppmの環境では、エタノールの濃度も0ppmとした。
劣化処理前後のMEMS型半導体式ガス検知素子を所定の温度である600℃に加熱した状態で、MEMS型半導体式ガス検知素子から出力される検知信号強度(センサ出力)を測定した。検知信号強度の測定は、MEMS型半導体式ガス検知素子の加熱の開始から60、70、80、90msec後の測定時間において、MEMS型半導体式ガス検知素子を含むブリッジ回路で生じる電位差を測定することにより行なった。測定を行なった環境は、大気中にメタンのみが含まれる環境、大気中にメタンおよびエタノール(100ppm)が含まれる環境、大気中にメタンおよびエタノール(1000ppm)が含まれる環境において、メタンが、0、1000、3000、5000、10000ppmの濃度で存在する環境とした。なお、大気中に含まれるメタンの濃度が0ppmの環境では、エタノールの濃度も0ppmとした。
(検知信号強度の外挿処理)
制御部3により、まず、測定時間70、80、90msecのそれぞれにおける検知信号波形の傾きとして、測定時間60〜70msec、70〜80msec、80〜90msecのそれぞれの範囲における傾きを算出した。つぎに、制御部3により、測定時間に対する傾きの変化を対数関数でフィッティングし、フィッティングした関数により、傾きがゼロとなる測定時間を求めた。最後に、制御部3により、傾きがゼロとなる測定時間における検知信号強度を外挿した。
制御部3により、まず、測定時間70、80、90msecのそれぞれにおける検知信号波形の傾きとして、測定時間60〜70msec、70〜80msec、80〜90msecのそれぞれの範囲における傾きを算出した。つぎに、制御部3により、測定時間に対する傾きの変化を対数関数でフィッティングし、フィッティングした関数により、傾きがゼロとなる測定時間を求めた。最後に、制御部3により、傾きがゼロとなる測定時間における検知信号強度を外挿した。
(外挿処理前の検知信号強度)
図7(a)〜(c)は、劣化処理前後のMEMS型半導体式ガス検知素子を用いて測定された、メタン濃度の変化に対する検知信号強度(センサ出力)の変化を示している。検知信号強度は、90msecの測定時間において測定された値を示している。図7(a)を参照すると、エタノールが含まれない環境においては、MEMS型半導体式ガス検知素子の劣化処理によって、いずれのメタン濃度でも検知信号強度の増加が認められるものの、メタン濃度の変化に対する検知信号強度の変化の傾向は劣化処理前後でほぼ同じである。それに対して、エタノールが100ppm(図7(b))、1000ppm(図7(c))の濃度で含まれる環境では、MEMS型半導体式ガス検知素子の劣化処理によって、エタノールが含まれない環境の場合と比べて、検知信号強度が大きく増加しており、メタン濃度の変化に対する検知信号強度の変化の傾向も変化している。これは、MEMS型半導体式ガス検知素子の劣化処理によって、触媒層の触媒機能が劣化して、非検知対象ガスであるエタノールが十分に燃焼されていないことによるものと考えられる。このことから、エタノールなどの非検知対象ガスが含まれる環境においては、MEMS型半導体式ガス検知素子が劣化すると、劣化前と同等の測定時間で、メタンなどの検知対象ガスを精度よく検知することが難しいことが分かる。
図7(a)〜(c)は、劣化処理前後のMEMS型半導体式ガス検知素子を用いて測定された、メタン濃度の変化に対する検知信号強度(センサ出力)の変化を示している。検知信号強度は、90msecの測定時間において測定された値を示している。図7(a)を参照すると、エタノールが含まれない環境においては、MEMS型半導体式ガス検知素子の劣化処理によって、いずれのメタン濃度でも検知信号強度の増加が認められるものの、メタン濃度の変化に対する検知信号強度の変化の傾向は劣化処理前後でほぼ同じである。それに対して、エタノールが100ppm(図7(b))、1000ppm(図7(c))の濃度で含まれる環境では、MEMS型半導体式ガス検知素子の劣化処理によって、エタノールが含まれない環境の場合と比べて、検知信号強度が大きく増加しており、メタン濃度の変化に対する検知信号強度の変化の傾向も変化している。これは、MEMS型半導体式ガス検知素子の劣化処理によって、触媒層の触媒機能が劣化して、非検知対象ガスであるエタノールが十分に燃焼されていないことによるものと考えられる。このことから、エタノールなどの非検知対象ガスが含まれる環境においては、MEMS型半導体式ガス検知素子が劣化すると、劣化前と同等の測定時間で、メタンなどの検知対象ガスを精度よく検知することが難しいことが分かる。
(外挿処理後の検知信号強度)
図8(a)〜(c)は、図7(a)〜(c)に示されたすべてのデータ点に関して外挿処理を行なった後の、メタン濃度の変化に対する検知信号強度(センサ出力)の変化を示している。図8(a)を参照すると、エタノールが含まれない環境においては、外挿処理を行なっても、MEMS型半導体式ガス検知素子の劣化処理の前後ともに、外挿処理前の図7(a)の検知信号強度とほぼ同程度の値を示している。それに対して、エタノールが100ppm(図8(b))、1000ppm(図8(c))の濃度で含まれる環境では、外挿処理を行なうことによって、MEMS型半導体式ガス検知素子の劣化処理前は、外挿処理前の図7(b)、(c)の検知信号強度とほぼ同一の値を示しているが、MEMS型半導体式ガス検知素子の劣化処理後は、外挿処理前の図7(b)、(c)の検知信号強度よりも大幅に低い値を示している。そして、外挿処理によって低下した検知信号強度は、エタノールが含まれない環境において、MEMS型半導体式ガス検知素子の劣化処理後に得られた検知信号強度とほぼ同等の値を示している。これは、検知信号強度の外挿処理をすることによって、MEMS型半導体式ガス検知素子の劣化処理による触媒層の触媒機能の劣化によって生じる非検知対象ガスの検知信号強度の増加の影響を抑えることができることを示している。このことから、上記外挿処理を行なうように構成された本実施形態のガス検知器では、MEMS型半導体式ガス検知素子が劣化した場合であっても、劣化前と同等の測定時間で、検知対象ガスの検知を精度よく行うことができることが分かる。
図8(a)〜(c)は、図7(a)〜(c)に示されたすべてのデータ点に関して外挿処理を行なった後の、メタン濃度の変化に対する検知信号強度(センサ出力)の変化を示している。図8(a)を参照すると、エタノールが含まれない環境においては、外挿処理を行なっても、MEMS型半導体式ガス検知素子の劣化処理の前後ともに、外挿処理前の図7(a)の検知信号強度とほぼ同程度の値を示している。それに対して、エタノールが100ppm(図8(b))、1000ppm(図8(c))の濃度で含まれる環境では、外挿処理を行なうことによって、MEMS型半導体式ガス検知素子の劣化処理前は、外挿処理前の図7(b)、(c)の検知信号強度とほぼ同一の値を示しているが、MEMS型半導体式ガス検知素子の劣化処理後は、外挿処理前の図7(b)、(c)の検知信号強度よりも大幅に低い値を示している。そして、外挿処理によって低下した検知信号強度は、エタノールが含まれない環境において、MEMS型半導体式ガス検知素子の劣化処理後に得られた検知信号強度とほぼ同等の値を示している。これは、検知信号強度の外挿処理をすることによって、MEMS型半導体式ガス検知素子の劣化処理による触媒層の触媒機能の劣化によって生じる非検知対象ガスの検知信号強度の増加の影響を抑えることができることを示している。このことから、上記外挿処理を行なうように構成された本実施形態のガス検知器では、MEMS型半導体式ガス検知素子が劣化した場合であっても、劣化前と同等の測定時間で、検知対象ガスの検知を精度よく行うことができることが分かる。
1 ガス検知器
2 ガス検知部
21 MEMS型半導体式ガス検知素子
211 感応層
212 触媒層
213 加熱部
214 基板
214a 基板本体
214b 絶縁膜
214c 空洞部
22 ブリッジ回路
3 制御部
4 記憶部
5 表示部
6 ガスフィルタ
7 収納部
71 筐体
72 開口部
73 内部空間
E 電源
R0、R1、R2 固定抵抗
V 電位差計
2 ガス検知部
21 MEMS型半導体式ガス検知素子
211 感応層
212 触媒層
213 加熱部
214 基板
214a 基板本体
214b 絶縁膜
214c 空洞部
22 ブリッジ回路
3 制御部
4 記憶部
5 表示部
6 ガスフィルタ
7 収納部
71 筐体
72 開口部
73 内部空間
E 電源
R0、R1、R2 固定抵抗
V 電位差計
Claims (5)
- 検知対象ガスおよび非検知対象ガスを含み得る測定対象ガス中の検知対象ガスを検知するために用いられるガス検知器であって、
前記ガス検知器が、
所定の温度で加熱された状態で前記検知対象ガスおよび前記非検知対象ガスに感応するMEMS型半導体式ガス検知素子を含み、前記検知対象ガスおよび前記非検知対象ガスに感応することで生じる前記MEMS型半導体式ガス検知素子の変化を検知信号として出力するガス検知部と、
前記ガス検知部により出力される検知信号に基づいて、前記検知対象ガスの有無および/または濃度を判定するように構成される制御部と
を備え、
前記制御部が、
前記ガス検知部により、前記MEMS型半導体式ガス検知素子の加熱の開始から所定の検知時間までの測定時間の間に、時間間隔をおいて、前記測定対象ガスについての複数の検知信号強度を取得し、
前記ガス検知部により取得された複数の検知信号強度に基づいて、前記所定の検知時間より後の測定時間における検知信号強度を外挿し、
外挿された検知信号強度に基づいて、前記検知対象ガスの有無および/または濃度を判定する
ように構成される、
ガス検知器。 - 前記外挿された検知信号強度は、前記ガス検知部により取得された複数の検知信号強度に基づいて外挿された検知信号強度の時間変化を示す検知信号波形において、測定時間に対する検知信号強度の変化の傾きが所定値以下となる測定時間での検知信号強度として決定される、
請求項1に記載のガス検知器。 - 前記ガス検知器が、前記MEMS型半導体式ガス検知素子の上流側に、前記非検知対象ガスを吸着するガスフィルタを備える、
請求項1または2に記載のガス検知器。 - 前記MEMS型半導体式ガス検知素子は、前記検知対象ガスおよび前記非検知対象ガスに感応する感応層と、前記感応層を覆うように形成される触媒層とを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載のガス検知器。
- 前記制御部が、
前記MEMS型半導体式ガス検知素子の加熱の開始から、前記MEMS型半導体式ガス検知素子が前記所定の温度に加熱されるまでの間の、検知信号強度の時間変化を示す検知信号波形に基づいて、前記測定対象ガスに前記非検知対象ガスが含まれるか否かを判定し、
前記測定対象ガスに前記非検知対象ガスが含まれないと判定した場合に、前記所定の検知時間において取得された検知信号強度に基づいて、前記検知対象ガスの有無および/または濃度を判定し、
前記測定対象ガスに前記非検知対象ガスが含まれると判定した場合に、前記MEMS型半導体式ガス検知素子が前記所定の温度に加熱された後から前記所定の検知時間までの測定時間の間に前記ガス検知部により取得された複数の検知信号強度に基づいて、前記所定の検知時間より後の測定時間における検知信号強度を外挿し、外挿された検知信号強度に基づいて、前記検知対象ガスの有無および/または濃度を判定する
ように構成される、
請求項1〜4のいずれか1項に記載のガス検知器。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2019119966A JP2021004851A (ja) | 2019-06-27 | 2019-06-27 | ガス検知器 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2019119966A JP2021004851A (ja) | 2019-06-27 | 2019-06-27 | ガス検知器 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JP2021004851A true JP2021004851A (ja) | 2021-01-14 |
Family
ID=74098161
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP2019119966A Pending JP2021004851A (ja) | 2019-06-27 | 2019-06-27 | ガス検知器 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2021004851A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP7559275B1 (ja) | 2024-04-09 | 2024-10-01 | 新コスモス電機株式会社 | ガス検知器およびガス検知方法 |
-
2019
- 2019-06-27 JP JP2019119966A patent/JP2021004851A/ja active Pending
Cited By (1)
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