JP4197823B2 - ガス検知方法及び装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、金属酸化物半導体を主成分とするガス感応部を設けられ、被検知ガスと接触状態に配置されるガス検知素子を、そのガス検知素子の劣化要因を除去するためのパージ電圧をパルス印加して通電加熱した後、設定時間経過後に、前記ガス検知素子に出力を得るための検知電圧をパルス印加したときの出力から被検知ガスを検知する技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
上述のように被検知ガスを検知する場合、検知対象ガス中の被検知ガスは、前記ガス検知素子に接触して、前記ガス感応部において前記金属酸化物半導体により酸化される。その酸化反応に伴う電子の授受に伴い前記ガス検知素子の抵抗値が定量的に変化する。そのため、前記ガス検知素子を備えたガス検知装置は、前記抵抗値の変化に基づく出力値からその検知対象ガス中の被検知ガスの濃度を求めることが出来るものである。このとき、前記感応層に被検知ガスが接触したときに、電圧が印加されている場合にのみ、前記被検知ガスは、前記感応層を構成する酸化物半導体により触媒作用を受け、酸化される。そのため、前記パージ電圧印加後、前記検知電圧印加までの期間は、前記感応層に対して被検知ガスが吸着し、前記検知電圧印加時にその吸着したガスが急激に反応を開始し、前記感応層に抵抗の変化を与えるため、出力が得られる。(図8(a)参照)
【0003】
このような場合、前記ガス感応部における反応の速度は前記ガス検知素子の周囲(雰囲気)温度に依存するため、反応に伴う抵抗値の変化量に基づく出力値も温度依存性を有することになる。すると、雰囲気温度によって同じ被検知ガス濃度の検知対象ガスに対して異なる出力値が得られることになり、正確な濃度測定が困難になる場合が考えられる。
【0004】
そこで、前記雰囲気温度の変化による出力値の変動を、補正するために、雰囲気温度をサーミスタ等の温度測定手段により求め、標準温度における標準出力と、各雰囲気温度における出力との出力との関係をあらかじめ求めておき、前記温度測定手段による温度出力と前記ガス出力比から測定出力を較正し、より正確な濃度測定を行うことが考えられている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上述のように標準出力との出力比から測定出力を較正しようとする場合、得られた測定出力自体が小さな値になると、出力比は大きくなり、前記測定出力の小さな揺らぎ(誤差)も大きく増幅されることになり、濃度測定値の安定性、信頼性が十分であるとはいえなかった。たとえば、雰囲気温度がー10℃に達するような低温条件下でガス検知を行うと、ガス検知素子からの出力がほとんどなく、被検知ガスによる前記ガス検知素子の抵抗値変化に基づく出力としての被検知ガスの含まれていない標準ガスとの出力差(感度出力)がほとんどなく、感度出力の揺らぎが被検知ガスの濃度として換算される場合に増幅されて大きな誤差となって表れることになっていた。
【0006】
従って、本発明の目的は、被検知ガス濃度に対応する出力を、雰囲気温度によらず安定させられるガス検知方法および装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記ガス検知素子のガス検知出力が、被検知ガスとの接触により、時間とともに次第に上昇し、十分な時間の経過とともに飽和に達する傾向がある点を、上述の観点に基づき考慮すると、前記標準ガスに対する感度出力が雰囲気温度によっても変動しなくなる条件下で被検知ガスを検出すれば、前記雰囲気温度によらず前記感度比を較正することなく取り扱えるために、前記揺らぎによる誤差が増幅されるのを避けられるのではないかと考え、本発明に想到した。
【0008】
〔構成〕
金属酸化物半導体を主成分とするガス感応部を設けられ、被検知ガスと接触状態に配置されるガス検知素子を、そのガス検知素子の劣化要因を除去するためのパージ電圧をパルス印加して通電加熱した後、所定の待機時間経過後に、前記ガス検知素子に出力を得るための検知電圧をパルス印加したときの出力から被検知ガスを検知するガス検知方法であって、
前記ガス検知素子の周囲温度に基づき、前記待機時間を可変に設定する点にあり、
前記ガス検知素子が所定濃度の被検知ガスを検知させたときに、所定出力値を出力するまでの時間の温度依存性に基づき、前記設定時間が設定されることが好ましい。
【0009】
〔作用効果1〕
つまり上述の構成によれば、金属酸化物半導体を主成分とするガス感応部を設けられ、被検知ガスと接触状態に配置されるガス検知素子を、そのガス検知素子の劣化要因を除去するためのパージ電圧をパルス印加して通電加熱した後、所定の待機時間経過後に、前記ガス検知素子にパルス電圧を印加したときの出力から被検知ガスを検知すると、前記パージ電圧を印加してガス検知素子が加熱された際に、前記ガス検知素子に油分等の付着した付着物が焼失させられるとともに、前記感応層の表面への付着水の量などの表面状態が一定の環境に整えられる。そのため、前記パージ電圧印加後の前記感応層は、ほぼ一定のガス反応性を示し、その反応に基づく安定した出力を得ることができる。
ここで、前記触媒反応は、反応速度が温度に依存して変化するため、その出力値も温度に依存して変化する。そのため、前記待機時間を一定にそろえた条件下で、種々の温度条件下における出力を調べると、一定濃度の被検知ガスを含有する基準となる検知対象ガス(標準ガス)に対しても出力は温度が低下して反応速度が低くなるにつれ低下する。
この一方、前記温度条件を一定にそろえた条件下で前記待機時間を種々変化させると、前記被検知ガスの前記感応層への吸着量は変化するため、前記標準ガスに対する出力は上昇する。
そこで、前記ガス検知素子の雰囲気温度に基づき、前記待機時間を可変に設定してあれば、低温条件では前記待機時間を長く設定するとともに、高温条件下では前記待機時間を短く設定することができるので、前記標準ガスに対する出力を、温度条件によらず、一定に保つことが出来る。
そのため、待機時間を可変に設定し、雰囲気温度によらず標準ガスに対する出力を一定に保つことが出来る条件下において、検知対象ガス中の被検知ガスを検知すれば、その検知出力は、いずれの温度条件下においても、前記検知対象ガスの出力を基準にして同一較正条件下の換算により濃度に変換することのできるものとして与えられるのである。そのため、出力の揺らぎなどによる誤差を較正条件により増幅させてしまうことの少ない、安定出力が得られる条件で被検知ガス出力を得ることが出来る。
従って、揺らぎの少ない、安定した濃度測定に寄与することが出来るのである。
【0010】
〔構成2〕
また、本発明のガス検知装置の特徴構成は、金属酸化物半導体を主成分とするガス感応部を設けたガス検知素子を、被検知ガスと接触状態に配設し、そのガス検知素子を通電加熱して劣化要因を除去するためのパージ電圧をパルス印加した後、待機時間経過後に、前記ガス検知素子に被検知ガスを検知するための検知電圧をパルス印加する通電制御機構を設けたガス検知装置であって、
前記ガス検知素子の周囲温度に基づき、前記待機時間を可変に設定する待機時間設定機構を設けてある点にあり、
前記ガス検知素子の周囲温度を測定する温度測定機構を設け、前記待機時間設定機構が、前記温度測定機構からの温度出力情報に基づき前記待機時間を設定可能に構成してあることが好ましい。
〔作用効果2〕
つまり、上述の構成によれば、金属酸化物半導体を主成分とするガス感応部を設けたガス検知素子を、被検知ガスと接触状態に配設し、そのガス検知素子を通電加熱して劣化要因を除去するためのパージ電圧をパルス印加した後、待機時間経過後に、前記ガス検知素子に被検知ガスを検知するためのパルス電圧を印加する通電制御機構を設けてあれば、前記パージ電圧を印加したガス検知素子が加熱された際に、前記ガス検知素子に油分等の付着した付着物が焼失させられるとともに、前記感応層の表面への付着水の量などの表面状態が一定の環境に整えられる。そのため、前記パージ電圧印加後の前記感応層は、ほぼ一定のガス反応性を示し、その反応に基づく安定した出力を得ることができる。その後待機時間経過後に、前記ガス検知素子に被検知ガスを検知するための検知電圧をパルス印加すると、前述の作用効果1に述べたように、前記待機時間の間に前記検知対象ガス中の被検知ガス濃度に応じて前記ガス検知素子に吸着した被検知ガスの量に対応する出力が得られる。
このとき、前記待機時間を可変に設定する待機時間設定機構を設けて有れば、前記ガス検知素子の雰囲気温度に従って、前記待機時間を設定することによって、雰囲気温度によらず標準ガスに対する出力を一定に保つことが出来る条件を設定することが出来る。このような条件下で検知対象ガス中の被検知ガスを検知すれば、その検知出力は、いずれの温度条件下においても、前記検知対象ガスの出力を基準にして同一較正条件下の換算により濃度に変換することのできるものとして与えられる。そのため、出力の揺らぎなどによる誤差を較正条件により増幅させてしまうことの少ない、安定出力が得られる条件で被検知ガス出力を得ることが出来る。
従って、揺らぎの少ない、安定した濃度測定に寄与することが出来るのである。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
本発明のガス検知装置は、図1に示すように、金属酸化物半導体を主成分とする感応層11を設けたガス検知素子10を、被検知ガスと接触状態に配設してあるガス検知部1を設け、そのガス検知素子1を通電加熱して劣化要因を除去するためのパージ電圧をパルス印加した後、待機時間経過後に、前記ガス検知素子に被検知ガスを検知するための検知電圧をパルス印加する通電制御機構2を設けるとともに、前記ガス検知素子1に被検知ガスが接触してそのガス検知素子10の抵抗値が変化したときに、その抵抗値の変化に基づく電気信号を受け、警報装置7に警報出力を発する出力部3を備えた回路部4に接続してある。
【0012】
前記ガス検知部1には、前記ガス検知素子10の周囲の温度を測定するための温度測定機構5として、たとえばサーミスタ51を設けるとともに、前記回路部4には、前記通電制御機構2が参照する前記待機時間を前記サーミスタ51の温度出力情報を基に所定の出力が得られるように可変に設定する待機時間設定機構6を設けて、前記通電制御機構2が前記ガス検知素子10にパージ電圧、検知電圧を印加するタイミングを前記ガス検知素子10の雰囲気温度に従って自動的に設定変更可能に構成してある。
【0013】
これによりこのガス検知装置は図8(b)に示すように雰囲気温度の変化に伴なって待機時間が変更されつつ、ガス検知されるため較正なしに一定の出力を得ることが出来るようになっている。
【0014】
前記ガス検知素子10は、白金、パラジウム、白金−パラジウム合金等の貴金属線12に酸化スズ、酸化インジウム等の金属酸化物を主成分とする金属酸化物半導体を塗布、乾燥後焼結成型してある感応層11を備えた、いわゆる熱線型半導体式ガス検知素子を用いることができる。
【0015】
また、前記ガス検知素子10としては前記熱線型半導体式のものに限らず、基板型などの形態であってもよい。また、出力部についても、警報出力を発するものに替え、測定濃度値をデジタル表示するものであっても良いし、これらの複合的な出力であっても良い。さらに、温度測定機構にも、前記ガス検知素子の雰囲気温度を測る機能を有していれば、サーミスタに限らず種々のものを適用できる。
【0016】
【実施例】
以下に本発明の実施例を詳述する。
(1) 前記ガス検知素子として、白金線コイルに前記感応層に酸化インジウム半導体を用いるとともに、その感応層の表面部にパラジウム触媒を添加してある一酸化炭素検知用の熱線型半導体式ガス検知素子(図2参照)を用い、種々の温度条件下での100ppm及び500ppmの一酸化炭素ガス(空気中)に対する出力電圧(センサ出力)の応答性を図3に示す。これらのグラフから前記待機時間として各温度ごとに所定出力を示す経過時間を求められることがわかる。
これらのグラフを基に、200ppmの一酸化炭素ガスに対して約150mvのセンサ出力を示す待機時間を各温度において求めたところ表1のようになり、従来待機時間として一律に15秒としていた場合に比べ、実測値がほぼ一定に維持されていることがわかった。尚、このときガス検知素子にはパージ電圧を2.0Vかけた後待機時間経過後1msガス検知電圧を印加し、出力を得ている。この待機時間の設定により一酸化炭素ガス濃度出力(CO感度)の濃度依存性を求めたところ、図4のようになった。図4より、各温度においてCO感度は、ほぼ共通の曲線を描く出力を示すために、較正する事なしに、安定して一酸化炭素ガス濃度が求められることがわかる。
【0017】
【表1】
【0018】
(2) 先の実施例における感応層を、酸化インジウムから酸化スズに替え、同様にして雰囲気温度によらず一定の出力を与える待機時間を求めたところ、表2のようになり、また、表2の待機時間に基づき、一酸化炭素ガス濃度出力(CO感度)の濃度依存性を求めたところ、図5のようになった。図5より、各温度においてCO感度は、ほぼ共通の曲線を描く出力を示すために、較正する事なしに、安定して一酸化炭素ガス濃度が求められることがわかる。
【0019】
【表2】
【0020】
(3 ) また、同様にして、基板型厚膜半導体式ガス検知素子(図7参照)についても雰囲気温度と待機時間との関係について調べたところ、表3のようになり、表3の待機時間に基づき、一酸化炭素ガス濃度出力(CO感度)の濃度依存性を求めたところ、図6のようになった。図6より、各温度においてCO感度は、ほぼ共通の曲線を描く出力を示すために、較正する事なしに、安定して一酸化炭素ガス濃度が求められることがわかる。
【0021】
【表3】
【0022】
従って、本発明によれば、前記待機時間を温度測定機構の測定温度に従って、所定出力を出力するまでの温度依存性に基づいて設定される構成にしてあれば、雰囲気温度の変化によらず安定した出力を維持することができることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】熱線形半導体式ガス検知装置の概略図
【図2】ガス検知素子の概略図
【図3】センサ出力の待機時間依存性を示すグラフ
(a)は、一酸化炭素濃度100ppm、
(b)は、一酸化炭素濃度500ppmの場合を示す
【図4】実施例(1)におけるガス検知方法の相違に基づくガス感度の濃度依存性を示すグラフ
(a)は、従来のもの、
(b)は、本発明によるものを示す
【図5】実施例(2)におけるガス検知方法の相違に基づくガス感度の濃度依存性を示すグラフ
(a)は、従来のもの、
(b)は、本発明によるものを示す
【図6】実施例(3)におけるガス検知方法の相違に基づくガス感度の濃度依存性を示すグラフ
(a)は、従来のもの、
(b)は、本発明によるものを示す
【図7】基板型厚膜半導体式ガス検知素子の概略図
【図8】ガス検知素子に対する電圧の印加パターンと応答出力との関係を示す図
(a)は従来のもの、
(b)は、本発明によるものを示す
【符号の説明】
10 ガス検知素子
2 通電制御機構
7 警報装置
3 出力部
4 回路部
51 サーミスタ
6 待機時間設定機構
Claims (4)
- 金属酸化物半導体を主成分とするガス感応部を設けられ、被検知ガスと接触状態に配置されるガス検知素子を、そのガス検知素子の劣化要因を除去するためのパージ電圧をパルス印加して通電加熱した後、所定の待機時間経過後に、前記ガス検知素子に出力を得るための検知電圧をパルス印加したときの出力から被検知ガスを検知するガス検知方法であって、
前記ガス検知素子の周囲温度に基づき、前記待機時間を可変に設定するガス検知方法。 - 前記ガス検知素子が所定濃度の被検知ガスを検知させたときに、所定出力値を出力するまでの時間の温度依存性に基づき、前記設定時間が設定される請求項1に記載のガス検知方法。
- 金属酸化物半導体を主成分とするガス感応部を設けたガス検知素子を、被検知ガスと接触状態に配設し、そのガス検知素子を通電加熱して劣化要因を除去するためのパージ電圧をパルス印加した後、待機時間経過後に、前記ガス検知素子に被検知ガスを検知するための検知電圧をパルス印加する通電制御機構を設けたガス検知装置であって、
前記ガス検知素子の周囲温度に基づき、前記待機時間を可変に設定する待機時間設定機構を設けてあるガス検知装置。 - 前記ガス検知素子の周囲温度を測定する温度測定機構を設け、前記待機時間設定機構が、前記温度測定機構からの温度出力情報に基づき前記待機時間を設定可能に構成してある請求項3に記載のガス検知装置。
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