JP5319373B2 - ガスバリアフィルムおよびガスバリアフィルムの製造方法 - Google Patents
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Description
特許文献1においては、架橋アクリレート層および重合アクリレート層はフラッシュ蒸着法により形成されている。
特許文献2には、ガスバリア層上に、上述の方法で形成された有機化合物層(活性エネルギー線硬化樹脂層)を形成することが記載されている。
特許文献2においては、シリル基を有する(メタ)アクリル化合物等の2種以上の混合物を含む有機層が提案されている。しかし、その後、プラズマを用いた成膜工程においては、プラズマ中のイオンおよびラジカルの衝突により、表面温度が高温になるため、有機層の劣化が生じ、その上形成される無機層との密着性が低下するとともに、ガスバリア性も低下する。
また、特許文献1においても、真空雰囲気で、架橋アクリレート層および重合アクリレート層がフラッシュ蒸着で形成されている。このため、酸素阻害がなく、効果反応が促進され、内部応力が高くなる。これにより、無機層上の重合アクリレート層に更に無機層を形成する場合、無機層との密着性が悪化するという問題点がある。
このように、無機層上に形成された有機層に、更に無機層をプラズマを用いて形成して、複数の有機層と無機層とを形成する場合、密着性が優れると共に、最終的にガスバリア性が良好なものを得ることができないのが現状である。
また、本発明においては、前記無機層は、窒化珪素、窒化酸化珪素および酸化珪素のうち、いずれかで構成されていることが好ましい。
さらに、本発明においては、前記プラズマを用いた成膜方法は、プラズマCVD法、スパッタ法、およびイオンプレーティング法のうち、いずれかであることが好ましい。
また、本発明においては、前記第1の有機層は、ガラス転移温度が210℃以上であり、厚さが300nm以上600nm未満であることが好ましい。
また、本発明においては、前記基板は、長尺状のものであり、この長尺な基板をドラムの表面に巻き掛けて、前記基板を所定の搬送方向に搬送しつつ、前記ドラムに巻き掛けられた基板に、前記有機層および前記無機層を形成することが好ましい。
さらに、本発明においては、前記長尺の基板を一方向に搬送しつつ、前記基板上に第1の有機層を形成して、前記第1の有機層上に無機層を形成し、前記無機層上に第2の有機層を形成して、その後、前記長尺の基板を前記一方向とは逆方向に搬送しつつ、前記第2の有機層上に無機層を形成することが好ましい。
さらに、本発明においては、前記無機層は、窒化珪素、窒化酸化珪素および酸化珪素のうち、いずれかで構成されていることが好ましい。
また、本発明によれば、有機層と無機層との層間の密着力が高く、ガスバリア性能が優れたガスバリアフィルムを製造することができる。
図1(a)は、本発明の実施形態に係るガスバリアフィルムの一例を示す模式的断面図であり、(b)は、本発明の実施形態に係るガスバリアフィルムの他の例を示す模式的断面図である。
本実施形態のガスバリアフィルム100は、基板Zの表面Zfに、積層体110が2層以上積み重ねられた構成である。
このため、第1の有機層102は、ガラス転移温度が200℃以上でモノマー中のC−C結合密度が0.19以上の(メタ)アクリル化合物を含有するものにより構成する。さらには、第1の有機層102は、厚さt1(図1(a)参照)が300nm以上1000nm未満とする。
第1の有機層102においては、ガラス転移温度が210℃以上であると、ガスバリア性および表面平滑性が更に向上するため好ましい。また、ガラス転移温度が230℃以上であると、プラズマに晒された場合の表面安定性が更に向上するため、より好ましい。
本発明においては、ガラス転移点の測定方法には、以下の3つを用いることができる。(1)試料の温度をゆっくりと上昇または下降させながら力学的物性の変化を測定すること、(2)試料の温度をゆっくりと上昇または下降させながら吸熱や発熱を測定すること、(3)試料に加える周期的力の周波数を変えながらその応答を測定することである。上記(2)は、例えば、DSCであり、(3)は、例えば、動的粘弾性測定である。
第1の有機層102においては、モノマー中のC−C結合密度が0.21以上であると、プラズマ耐性および表面平滑性が更に向上するため好ましい。
C−C結合密度は、Nを全原子数とし、NcをC−C結合数とし、NoをC−O結合数とした場合、下記の数式1により算出することができる。
第1の有機層102において、厚さt1が300nm未満では、支持体上のゴミおよび欠陥を、十分に被覆することができず、平坦性が得られない。
また、第1の有機層102において、厚さt1が1000nm以上では、成膜時間がかかり、搬送速度を速くすることができず、結果的にコストが高くなってしまう。なお、第1の有機層102は、さらに好ましくは、厚さt1は300nm以上600nm未満である。
このガラス転移温度が105℃未満では、耐熱性が劣り、第2の有機層106の表面106aに形成される無機層104との密着性が低下する。
第2の有機層106においては、屈曲性の観点から、ガラス転移温度は、150℃以上であることが好ましい。また、第2の有機層106においては、ガラス転移温度は、200℃未満であることが好ましい。第2の有機層105において、ガラス転移温度が200℃以上であると、屈曲性が低くなり、応力が高まり、密着性が悪くなる可能性がある。
第2の有機層106は、第1の有機層102と同じ、モノマー中のC−C結合密度が0.19以上の(メタ)アクリル化合物により構成することができる。このため、第2の有機層106を構成するモノマー中のC−C結合密度が0.19以上の(メタ)アクリル化合物についての詳細な説明は省略する。
なお、第2の有機層106を、モノマー中のC−C結合密度が0.19未満の(メタ)アクリル化合物をとすると、プラズマ耐性が劣化するとともに、屈曲性も低下する。このため、無機層104との密着性が低下する。
また、第2の有機層106において、厚さt2が500nm以上では、内部応力が強くなり密着性が悪くなる。
なお、第2の有機層106は、厚さt2が50nm以上300nm未満であることが好ましい。
無機層104は、プラズマを用いた成膜方法により形成されたものであり、例えば、プラズマCVD法、スパッタリング法、イオンプレーティング法により形成される。
なお、プラズマCVD法は、例えば、CCP(Capacitively Coupled Plasma;容量結合プラズマ)−CVD法、ICP(Inductively Coupled Plasma;誘導結合プラズマ)−CVD法、マイクロ波CVD法、ECR(Electron Cyclotron Resonance)−CVD法、大気圧バリア放電CVD法等、各種のプラズマCVD法が、全て利用可能である。さらには、Cat(Catalytic 触媒)−CVD法であってもよい。
本発明においては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、ポリアクリレート、ポリメタクリレートなどの有機物からなる基板を用いるのが好適である。
なお、基板Zの表面Zfに、形成する層の厚さを、大きく上回るサイズの凹凸または異物があると、ガスバリア性が劣化し、目的のガスバリア性が得られない可能性がある。このため、用いる基板は、表面が十分に平滑で異物の付着が少ないものが好ましい。
図2は、本発明の実施形態に係るガスバリアフィルムの製造に用いられる製造装置を示す模式図である。
図2に示す製造装置10は、ロール・ツー・ロール(Roll to Roll)タイプの製造装置である。
製造装置10は、長尺の基板Z(フィルム原反)を長手方向に搬送しつつ、真空中で、連続的に第1の有機層102、無機層104、および第2の有機層106を形成する機能を有するものである。
なお、製造装置10は、図示した構成以外にも、各種センサ、搬送ローラ対、基板Zの幅方向の位置を規制するガイド部材など、基板Zを所定の経路で搬送するための各種の部材等を有してもよく、更には、プラズマCVD法による成膜装置が有する各種の部材を有してもよい。
供給室12、成膜室14および巻取り室16は、例えば、ステンレス、アルミニウムまたはアルミニウム合金など、各種の真空チャンバで利用されている材料を用いて構成されている。
なお、供給室12、成膜室14および巻取り室16には、それぞれ大気開放(ベント)または排気量の調節などをするためのバルブ(図示せず)が設けられており、このバルブも制御部36で制御され、供給室12、成膜室14および巻取り室16が大気開放される。
真空排気部32は、ターボポンプ、メカニカルブースターポンプ、ドライポンプ、ロータリーポンプなどの真空ポンプを有する。この真空排気部32には、更にクライオコイル等の補助手段を設けてもよい。
真空排気部32による供給室12、成膜室14および巻取り室16の到達真空度には、特に限定はなく、実施する成膜方法等に応じて、十分な真空度を保てればよい。この真空排気部32は、制御部36により制御される。
供給室12および巻取り室16の圧力が成膜室14の真空度に与える影響を小さくするために、スリット状の等の基板Zが通過する部分を可能な限り小さくするか、または供給室12と成膜室14との間および成膜室14と巻取り室16との間にサブチャンバを設け、このサブチャンバ内を減圧してもよい。
回転軸20aは、長尺な基板Zが巻き回された基板ロール20を巻き戻して連続的に送り出すものである。基板ロール20は、例えば、反時計回りに基板Zが巻回されている。
回転軸20aは、例えば、駆動源としてモータ(図示せず)が接続されている。このモータによって回転軸20aが基板Zを巻き戻す方向R1に回転されて、本実施形態では、時計回りに回転されて、基板Zが連続的に送り出される。
本実施形態の製造装置10においては、ガイドローラ21は、駆動ローラまたは従動ローラでもよい。また、ガイドローラ21は、基板Zの搬送時における張力を調整するテンションローラとして作用するローラであってもよい。
回転軸30aには、例えば、駆動源としてモータ(図示せず)が接続されている。このモータにより回転軸30aが回転されて、基板Zが巻き取られる。
回転軸30aにおいては、モータによって基板Zを巻き取る方向R2に回転されて、本実施形態では、時計回りに回転されて、成膜済の基板Zを連続的に、例えば、時計回りに巻き取る。
成膜室14には、2つのガイドローラ24、28と、ドラム26と、成膜部40とが設けられている。
搬送方向Dにおける上流側Duから、ガイドローラ24、ドラム26、ガイドローラ28の順で設けられている。
なお、基板ロール20、ガイドローラ21およびガイドローラ24により、第1の搬送手段が構成される。
なお、ガイドローラ28、ガイドローラ31、巻取りロール30により、第2の搬送手段が構成される。
また、2つのガイドローラ24、28は、上記構成以外は、供給室12に設けられたガイドローラ21と同様の構成であるため、その詳細な説明は省略する。
このドラム26は、例えば、円筒状を呈し、その両端面に、それぞれ円筒状の支持部(図示せず)が設けられている。この支持部が成膜室14の壁面に設けられた、例えば、ベアリング(図示せず)により回転可能に支持される。これにより、回転軸Cを中心として、ドラム26は、回転方向ω、およびその反対方向ωrに回転する。
さらには、ドラム26は接地されていても、バイアス電源が接続されてもよい。また、ドラム26は、バイアス電源の接続と、接地とが切り換え可能であってもよい。
ドラム26の温度調節手段には、特に限定はなく、冷媒等を循環させるもの、ペルチェ素子等を用いる冷却手段を用いるもの等、各種の温度調節手段が全て利用可能である。
第1の有機層形成ユニット42と無機層形成ユニット44との間には、これらを区画する仕切板48aが設けられている。また、無機層形成ユニット44と第2の有機層形成ユニット46との間には、これらを区画する仕切板48bが設けられている。
第1の有機層形成ユニット42は、ドラム26の表面26aに対向して設けられた有機層原料蒸着部50と、有機層原料蒸着部50に対して搬送方向Dの下流側に設けられた硬化部56と、有機層原料蒸着部50に配管52を介して接続される有機層原料供給部54とを有する。
第1の有機層形成ユニット42の有機層原料蒸着部50、有機層原料供給部54、硬化部56は、図示はしないが制御部36に接続されている。この制御部36により、有機層原料蒸着部50、有機層原料供給部54、硬化部56が制御される。
この有機層原料供給部54は、図3に示すように、液体状の(メタ)アクリル化合物が貯留され、所定の減圧された圧力に保たれるとともに、内部を所定の圧力に減圧する排気手段と攪拌手段が設けられたタンク70と、このタンク70に接続されたシリンジポンプ72と、このタンク70に配管74を介して接続された液体噴射部76とを有する。
有機層原料供給部54においては、更に、配管74を介して液体噴射部76にガス供給部78が接続されている。
このガス供給部78による配管74の内部の残留モノマーの押し出しは、メンテナンス時になされるものである。このため、通常の成膜時には、ガス供給部78は、使用されない。
有機層原料供給部54から供給されたモノマーの蒸発体が、加熱ノズル50aを通過し、基板Z上に一定量凝集される。この場合、加熱ノズル50aの温度は150〜300℃に保持されていることが好ましい。
また、凝集効率を向上させるために、ドラム26を冷却して基板Zを、例えば、−15〜25℃に保持することが好ましい。
なお、硬化部56としては、電子線を照射する電子線照射手段、またはマイクロ波を照射するマイクロ波照射手段を用いてもよい。
無機層形成ユニット44は、例えば、容量結合型プラズマCVD法(CCP−CVD法)により無機層104を形成するものである。この無機層形成ユニット44は、成膜電極60、高周波電源62および原料ガス供給部66を有する。成膜部40の高周波電源62、および原料ガス供給部66は、制御部36に、図示はしないが接続されている。この制御部36により、無機層形成ユニット44の高周波電源62および原料ガス供給部66が制御される。
成膜電極60は、一般的にシャワー電極と呼ばれるものであり、表面60aには、複数の貫通孔(図示せず)が等間隔で形成されている。
また、成膜電極60は、ドラム26と対向する表面60aが、ドラム26の表面26aに沿うようにして湾曲されている。成膜電極60は、いずれの領域においても、その表面60aに垂直で、かつドラム26の回転軸Cを通る線上における表面60aとドラム26の表面26aとの距離が所定の設定距離となるように形成されている。この成膜電極60は、ドラム26の表面26aの同心円に一致するように配置されている。
ドラム26の表面26aと成膜電極60との隙間Sがプラズマの発生空間になり、成膜空間となる。
なお、高周波電源62は、印加する高周波電力(RF電力)を変えることができる。
成膜電極60と高周波電源62とは、必要に応じて、インピーダンス整合をとるためのマッチングボックスを介して接続してもよい。
なお、本実施形態においては、活性種ガスおよび希釈ガスが含まれていても、単に原料ガスという。
また、原料ガス供給部66においては、原料ガスのみならず、アルゴンガスまたは窒素ガスなどの不活性ガス、および酸素ガス等の活性種ガス等、プラズマCVD法で用いられている各種のガスを、原料ガスと共に、隙間Sに供給してもよい。このように、複数種のガスを導入する場合には、各ガスを同じ配管で混合して、成膜電極60の複数の貫通孔を通して隙間Sに供給しても、各ガスを異なる配管から成膜電極60の複数の貫通孔を通して隙間Sに供給してもよい。
さらに、原料ガスまたはその他、不活性ガスおよび活性種ガスの種類または導入量も、形成する膜の種類、または目的とする成膜レート等に応じて、適宜、選択/設定すればよい。
なお、成膜電極60は、表面60aに貫通孔を形成する構成としたが、成膜空間である隙間Sに均一に原料ガスを供給することができれば、これに限定されるものではない。例えば、成膜電極60の屈曲部にスリット状の開口部を形成し、このスリット状の開口部から原料ガスを放出させるようにしてもよい。
第2の有機層形成ユニット46は、第1の有機層形成ユニット42に比して、無機層成膜ユニット44の搬送方向Dにおける下流側に設けられている点、および有機層原料蒸着部50で蒸発させる(メタ)アクリル化合物が第2の有機層106(図1(a)参照)に用いるものである点が異なり、それ以外の構成は、第1の有機層形成ユニット42と同様の構成であるため、その詳細な説明は省略する。
第2の有機層形成ユニット46においても、有機層原料蒸着部50、有機層原料供給部54、硬化部56は、図示はしないが制御部36に接続されており、この制御部36により、有機層原料蒸着部50、有機層原料供給部54、硬化部56が制御される。
一方、膜中に残留溶剤が多いと、無機層104形成で用いるプラズマによって膜表面が昇温したとき、脱ガスして無機層104内に不純物が含まれ、バリア性が低下する。なお、脱ガスした場合、第1の有機層102および第2の有機層106には、泡状の欠陥が見られる。
そして、回転軸20aをモータにより時計回りに回転させて、順次、長尺な基板Zが反時計回り巻回された基板ロール20から基板Zを連続的に搬送方向Dに送り出し、成膜部40に基板Zを搬送する。
次に、硬化部56により、基板Zの表面Zfに凝集した第1の有機層102となるモノマーが硬化されて第1の有機層102が形成される。第1の有機層102を形成することにより基板Zの表面Zfの凹凸が覆われて、しかも、第1の有機層102の表面102aは平坦な面となる。
そして、有機層原料蒸着部50の加熱ノズル50aから、無機層104の表面104aに第2の有機層106となるモノマーを噴霧して、その無機層104の表面104aに、膜厚が50nm以上500nm未満となるように凝集させる。
次に、第2の有機層106が形成された基板Zが回転軸30aにより巻取られる。なお、この第2の有機層106の表面106aに再度、無機層104を形成するので、供給室14の回転軸20aに基板Zは接続されている。
これにより、第2の有機層106が形成された基板Zが、無機層形成ユニット44に搬送される。この無機層形成ユニット44においては、成膜電極60に高周波電源62から高周波電圧を印加するとともに、原料ガス供給部66から配管64を介して成膜電極60に原料ガスを供給し、この成膜電極60の貫通孔52から、隙間Sに原料ガスを均一に供給して、ドラム26を逆回転方向ωrに回転させつつ、上述のように、このドラム26に巻き掛けられた、第2の有機層106が形成された基板Zに対して、無機層104を連続的に、第2の有機層106の表面106aに形成する。このようにして、ガスバリアフィルム100の各層が形成される。そして、基板ロール20に、ガスバリアフィルム100が巻き取られて、ガスバリアフィルム100が製造される。
しかも、第2の有機層106は、無機層104の形成時にプラズマに晒されて高温になっても、膜の収縮が抑制され、その表面106aに形成される無機層104との密着性が確保される。
このため、ガスバリアフィルム100の最表層の無機層104を、第2の有機層106に悪影響を与えることなく、密着性を高く形成できる。このようにして、2層の積層体110を有するガスバリアフィルム100を製造することができる。
例えば、ガスバリアフィルム100を構成する4つの層を形成する形成手段を設けて、搬送方向に搬送しつつ、1度の巻取りロール30への巻き取りで形成してもよい。
この場合、第1の有機層形成ユニット42の有機層原料供給部54に、第2の有機層106となる(メタ)アクリル化合物を有機層原料供給部54に供給し、有機層原料蒸着部50から、第2の有機層106となる(メタ)アクリル化合物を無機層104上に噴霧して凝集させ、硬化部56により、機層104の表面104aに凝集した第2の有機層106となる(メタ)アクリル化合物を硬化させて第2の有機層106を形成する。
なお、プラズマCVD法は、例えば、CCP−CVD法以外にも、上述のように、ICP−CVD法、マイクロ波CVD法、ECR−CVD法、大気圧バリア放電CVD法等、各種のプラズマCVD法が全て利用可能である。さらには、Cat−CVD法であってもよい。
基板温度を120℃以下にして無機層104を形成することにより、基板Zに、耐熱性が低いPEN等のプラスチックフィルム、耐熱性が低い有機材料を基材として用いる基板にも、無機層を形成することができ、内部応力が低い無機層を形成できる等の点で好ましい。
さらに、無機層104を形成する場合、ドラム26に設けられた温度調整手段により、基板温度を80℃以下にして無機層を形成することにより、より耐熱性が低いPET等のプラスチックフィルム基板にも、無機層を形成することができ、内部応力が低い無機層を形成できる等の点で好ましい。
本実施例においては、図1(a)に示す構成のガスバリアフィルム100の最表層の無機層104の上に更に第2の有機層(図示せず)を形成したものをガスバリアフィルムとして用いた。
本実施例では、実施例1〜実施例3および比較例1〜比較例8の各ガスバリアフィルムを作成した。
各実施例1〜実施例3および比較例1〜比較例8のガスバリアフィルムにおける第1の有機層、および第2の有機層は、それぞれ、下記表1に示す厚さおよび物性とした。
以下、実施例1〜実施例3および比較例1〜比較例8における第1の有機層および第2の有機層の詳細を示す。
第1の有機層は、トリメチロールプロパントリアクリレート(ライトアクリレートシリーズTMP−A、共栄社化学社製)が198g、紫外線重合開始剤(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製、Cibaイルガキュアー907(商品名))が2gの混合溶液を用いてフラッシュ蒸着した。
第2の有機層は、ビスフェノールA型エポキシアクリレート60部(ダイセル・ユーシービー社製、エベクリルEB600)が198g、紫外線重合開始剤(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製、Cibaイルガキュアー907(商品名))が2gの混合溶液を用いてフラッシュ蒸着した。
第1の有機層は、2−ブチル−2−エチル−プロパンジオールジアクリレート(共栄社化学社製、ライトアクリレートBEPG−A)が198g、紫外線重合開始剤(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製、Cibaイルガキュアー907(商品名))が2gの混合溶液を用いてフラッシュ蒸着した。
第2の有機層は、第1の有機層と同様のものを用いた。
第1の有機層は、トリメチロールプロパントリアクリレート(ライトアクリレートシリーズTMP−A、共栄社化学社製)が198g、紫外線重合開始剤(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製、Cibaイルガキュアー907(商品名))が2gの混合溶液を用いてフラッシュ蒸着した。
第2の有機層は、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート (M−350(製品名)、東亜合成社製)が198g、紫外線重合開始剤(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製、Cibaイルガキュアー907(商品名))が2gの混合溶液を用いてフラッシュ蒸着した。
第1の有機層は、イソシアヌル酸EO変性ジ及びトリアクリレート(M315(製品名)、東亜合成(株))が198g、紫外線重合開始剤(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製、Cibaイルガキュアー907(商品名))が2gの混合溶液を用いてフラッシュ蒸着した。
第2の有機層は、ビスフェノールA型エポキシアクリレート60部(ダイセル・ユーシービー社製、エベクリルEB600)が198g、紫外線重合開始剤(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製、Cibaイルガキュアー907(商品名))が2gの混合溶液を用いてフラッシュ蒸着した。
第1の有機層は、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(NKエステル702A(製品名) 新中村化学工業(株))が198g、紫外線重合開始剤(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製、Cibaイルガキュアー907(商品名))が2gの混合溶液を用いてフラッシュ蒸着した。
第2の有機層は、ビスフェノールA型エポキシアクリレート60部(ダイセル・ユーシービー社製、エベクリルEB600)が198g、紫外線重合開始剤(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製、Cibaイルガキュアー907(商品名))が2gの混合溶液を用いてフラッシュ蒸着した。
第1の有機層は、トリメチロールプロパントリアクリレート(ライトアクリレートシリーズTMP−A、共栄社化学社製)が198g、紫外線重合開始剤(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製、Cibaイルガキュアー907(商品名))が2gの混合溶液を用いてフラッシュ蒸着した。
第2の有機層は、ポリプロピレングリコールジアクリレート(M−270(製品名)、東亜合成社製)が198g、紫外線重合開始剤(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製、Cibaイルガキュアー907(商品名))が2gの混合溶液を用いてフラッシュ蒸着した。
第1の有機層は、トリメチロールプロパントリアクリレート(ライトアクリレートシリーズTMP−A、共栄社化学社製)が198g、紫外線重合開始剤(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製、Cibaイルガキュアー907(商品名))が2gの混合溶液を用いてフラッシュ蒸着した。
第2の有機層は、イソシアヌル酸EO変性ジ及びトリアクリレート(M315(製品名)、東亜合成社製)が198g、紫外線重合開始剤(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製、Cibaイルガキュアー907(商品名))が2gの混合溶液を用いてフラッシュ蒸着した。
第1の有機層は、トリメチロールプロパントリアクリレート(ライトアクリレートシリーズTMP−A、共栄社化学社製)が198g、紫外線重合開始剤(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製、Cibaイルガキュアー907(商品名))が2gの混合溶液を用いてフラッシュ蒸着した。
第2の有機層は、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクリレート (M−350(製品名)、東亜合成社製)が198g、紫外線重合開始剤(チバ・スペシャルティー・ケミカルズ社製、Cibaイルガキュアー907(商品名))が2gの混合溶液を用いてフラッシュ蒸着した。
また、無機層としては、窒化珪素膜を形成した。
なお、第1の有機層および第2の有機層の成膜条件は、シリンジポンプ送液量を10ml/分、シリンジポンプ圧を300PSI、有機蒸着部温度を200℃、UV照射量を100mW/cm2とした。
なお、水蒸気透過率測定器の検出限界値は、0.01g/(m2/day)である。この水蒸気透過率測定器の測定限界である0.01g/(m2/day)未満の値は、以下の方法を用いて補完した。
まず、ガスバリアフィルムの最表層の第2の有機層の表面に直接に金属Caを蒸着する。Ca層が蒸着されたガスバリアフィルムを、このCa層をガラス基板に向けて市販の有機EL用封止材を用いてガスバリアフィルムとガラス基板とを封止して測定試料を作成した。
次に、この測定試料を、温度40℃、相対湿度90%の温湿度条件に保持し、ガスバリアフィルム上の金属Caの光学濃度変化から水蒸気透過率を求めた。これは、Ca層が水酸化または酸化により金属光沢が減少することを利用したものである。
密着性の評価においては、碁盤目クロスカット法の結果について、100マスのうち、剥がれたものが0個のものを「◎」とし、100マスのうち、剥がれたものが1個〜25個のものを「○」とし、100マスのうち、剥がれたものが26個〜49個のものを「△」とし、100マスのうち、剥がれたものが50個以上のものを「×」とした。
また、第2の有機層は、屈曲性が比較的高いため、内部応力が低い。また、第2の有機層は、プラズマ耐性が強いため、膜表面で微小突起物または欠陥が生じることがなく、無機層との密着性が極めて良好である。
このため、実施例1は、表2に示すように、バリア性能が良好であり、密着性が極めて良好であり、総合評価も良好であった。
さらに、第2の有機層は、耐熱性が高いため、バリア性能向上に適している。また、第2の有機層は、プラズマ耐性が強いため、膜表面で微小突起物または欠陥が生じることがなく、無機層との密着性が良好である。しかし、第2の有機層はガラス転移温度が高く、屈曲性が比較的低いため、内部応力が少し残り、密着性能が少し劣るが、実用レベルである。
実施例2は、表2に示すように、バリア性能が極めて良好であり、密着性がやや良好であり、総合評価は良好であった。
さらに、第2の有機層は、ガラス転移温度が好ましい範囲であり、屈曲性が良好であるため、密着性が極めて良好であった。
実施例3は、表2に示すように、バリア性能が良好であり、密着性が極めて良好であり、総合評価も良好であった。
12 供給室
14 成膜室
16 巻取り室
20 基板ロール
21、24、28、31 ガイドローラ
26 ドラム
30 巻取りロール
32 真空排気部
36 制御部
40 成膜部
42 成膜電極
44 高周波電源
46 原料ガス供給部
60 成膜電極
100、100a ガスバリアフィルム
102 第1の有機層
104 無機層
106 第2の有機層
110 積層体
D 搬送方向
Dr 逆搬送方向
ω 回転方向
ωr 逆回転方向
Z 基板
Claims (11)
- 真空中で、基板上に、有機層と無機層とが順に形成されてなる積層体が、2層以上積層されており、
前記有機層のうち、前記基板上に直接形成される第1の有機層は、ガラス転移温度が200℃以上でモノマー中のC−C結合密度が0.19以上の(メタ)アクリル化合物により構成され、厚さが300nm以上1000nm未満であり、
前記有機層のうち、前記第1の有機層以外の第2の有機層は、ガラス転移温度が105℃以上でモノマー中のC−C結合密度が0.19以上の(メタ)アクリル化合物により構成され、厚さが50nm以上300nm未満であり、
前記C−C結合密度は、Nを全原子数とし、NcをC−C結合数とし、NoをC−O結合数とした場合、(Nc−No)/Nで算出されるものであり、
前記無機層は、プラズマを用いた成膜方法により形成されたものであることを特徴とするガスバリアフィルム。 - 前記第1の有機層と前記第2の有機層は、フラッシュ蒸着法により形成されたものである請求項1に記載のガスバリアフィルム。
- 前記無機層は、窒化珪素、窒化酸化珪素および酸化珪素のうち、いずれかで構成されている請求項1または2に記載のガスバリアフィルム。
- 前記プラズマを用いた成膜方法は、プラズマCVD法、スパッタ法、およびイオンプレーティング法のうち、いずれかである請求項1〜3のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム。
- 前記第1の有機層は、ガラス転移温度が210℃以上であり、厚さが300nm以上600nm未満である請求項1〜4のいずれか1項に記載のガスバリアフィルム。
- 真空中で、基板上に、有機層と無機層とを交互に、それぞれ2層以上形成する工程を有し、
前記有機層のうち、前記基板上に直接形成される第1の有機層を、ガラス転移温度が200℃以上でモノマー中のC−C結合密度が0.19以上の(メタ)アクリル化合物を用い、300nm以上1000nm未満の厚さに形成し、
前記有機層のうち、前記第1の有機層以外の第2の有機層を、ガラス転移温度が105℃以上でモノマー中のC−C結合密度が0.19以上の(メタ)アクリル化合物を用い、50nm以上300nm未満の厚さに形成し、
前記無機層を、プラズマを用いた成膜方法により形成するものであり、
前記C−C結合密度は、Nを全原子数とし、NcをC−C結合数とし、NoをC−O結合数とした場合、(Nc−No)/Nで算出されることを特徴とするガスバリアフィルムの製造方法。 - 前記第1の有機層と前記第2の有機層は、フラッシュ蒸着法により形成される請求項6に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
- 前記基板は、長尺状のものであり、この長尺な基板をドラムの表面に巻き掛けて、前記基板を所定の搬送方向に搬送しつつ、前記ドラムに巻き掛けられた基板に、前記有機層および前記無機層を形成する請求項6または7に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
- 前記長尺の基板を一方向に搬送しつつ、前記基板上に第1の有機層を形成して、前記第1の有機層上に無機層を形成し、前記無機層上に第2の有機層を形成して、その後、前記長尺の基板を前記一方向とは逆方向に搬送しつつ、前記第2の有機層上に無機層を形成する請求項8に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
- 前記プラズマを用いた成膜方法は、プラズマCVD法、スパッタ法、およびイオンプレーティング法のうち、いずれかである請求項6〜9のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
- 前記無機層は、窒化珪素、窒化酸化珪素および酸化珪素のうち、いずれかで構成されている請求項6〜10のいずれか1項に記載のガスバリアフィルムの製造方法。
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