JP5318843B2 - 履帯ブシュおよび履帯リンク装置 - Google Patents
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Description
図10(a)に示されるように、特許文献1に係る履帯ブシュ101においては、耐摩耗コーティングを施した耐摩耗プレート102がシール接触端面部分に接着剤103によって接着されている。この履帯ブシュ101を具備する履帯リンク装置100においては、履帯リンク104に組み込まれたシール部材105を耐摩耗プレート102に接触させることにより、履帯ブシュ101のシール接触端面の摩耗を抑えるようにされている。
しかし、この履帯リンク装置100では、耐摩耗プレート102が履帯ブシュ101に接着剤103で接着されているため、耐摩耗プレート102の交換に手間がかかるという問題点がある。
図10(b)に示されるように、特許文献2に係る履帯ブシュ111においては、その端面に環状の凹部112が設けられ、この凹部112に弾性リング113を介して耐腐食性を有する耐食環状挿入部材114が挿入されている。この履帯ブシュ111を具備する履帯リンク装置110においては、履帯リンク115に組み込まれたシール部材116を耐食環状挿入部材114に接触させることにより、履帯ブシュ111のシール接触端面の摩耗を抑えるようにされている。なお、耐食環状挿入部材114は、弾性リング113を若干押し潰すように変形させた状態で凹部112に挿入されている。このため、耐食環状挿入部材114は、弾性リング113からその潰し代に応じた反発力を受けてシーリング方向、つまり履帯ブシュ111の軸線方向外向きに付勢されている。
この履帯リンク装置110によれば、履帯ブシュ111の凹部112に弾性リング113を介して耐食環状挿入部材114が押し込まれているだけなので、耐食環状挿入部材114を容易に交換することができる。
軸線方向に隣接配置のシール部材に接触されるシール接触端面を有する履帯ブシュにおいて、
軸線方向の中間部を形成する大径円筒部とその大径円筒部よりも小径で軸線方向の端部を形成する小径円筒部とを有してなる履帯ブシュ本体と、
前記小径円筒部の外周に装着される弾性リングと、
外端側に前記シール接触端面が形成され、前記弾性リングを介して前記小径円筒部に装着されるシールリングと、
前記弾性リングが前記小径円筒部の軸線方向外向きに移動するのを止める第1の係止手段と、
前記シールリングが前記小径円筒部の軸線方向外向きに移動するのを止める第2の係止手段とを備え、
前記第2の係止手段は、前記シールリングの内端面に円周方向の溝を設けることによって形成され、該溝の径方向内側において、径方向内向きに突出して前記弾性リングに掛け止められる舌状突起と、該舌状突起に連設され、前記シールリングの内周面において、軸線方向内向きに進むに従って径方向内向きに狭まるテーパ面とにより構成される
ことを特徴とするものである(第1発明)。
互いの端部が重ね合わされた履帯リンク同士が同軸線上に配されるリンクピンおよび履帯ブシュを介して連結されるとともに、前記履帯ブシュの軸線方向に隣接配置されるシール部材が組み込まれて構成される履帯リンク装置において、
前記履帯ブシュは、第1発明〜第4発明のいずれかの発明に係る履帯ブシュであることを特徴とするものである(第5発明)。
シールリングの交換にあたっては、第1の係止手段あるいは第2の係止手段の係止力に抗してシールリングを履帯ブシュ本体から引き離すように引っ張ることにより、履帯ブシュ本体からシールリングを容易に取り外すことができる。また、弾性リングからの潰し代に応じた反発力に抗してシールリングを履帯ブシュに向けて押し込むことにより、履帯ブシュ本体にシールリングを容易に装着することができる。したがって、シール機能回復のためのメンテナンスを容易に行うことができる。
第1発明の履帯ブシュによれば、シール機能を長期に亘って安定的に保つことができ、しかもシール機能回復のためのメンテナンスを容易に行うことができる。
また、シールリングの軸線方向外向きへの移動を極めて簡易な構成で止めることができるとともに、シールリングの内端部において、径方向内向きに突出して弾性リングに掛け止められる突起やテーパ面を容易に形成することができる。
以下に述べる実施の形態は、ブルドーザに装備される履帯ブシュおよび履帯リンク装置に本発明が適用された例である。しかし、これに限定されるものではなく、例えば油圧ショベルのような履帯ブシュおよび履帯リンク装置を装備する作業車両全般に本発明が適用されるのは言うまでもない。
<ブルドーザの概略説明:図1参照>
図1に示されるブルドーザ1は、車両本体2を備えている。車両本体2の左右には、それぞれ履帯式走行装置3(左側のみ図示)が配設されている。車両本体2の前側には、ブレード装置(前方作業機)4が配設されている。車両本体2の後側には、リッパ装置(後方作業機)5が配設されている。そして、このブルドーザ1においては、ブレード装置4による押土・運土作業や、リッパ装置5による破砕・掘削作業等が行われるようになっている。
履帯式走行装置3は、その骨組を構成するトラックフレーム6を備えている。トラックフレーム6は、車両本体2の後部に支承された駆動輪としてのスプロケット7の前方に配置され、前後方向に延設されている。トラックフレーム6の前部には、遊動輪としてのアイドラ8が回転自在に取り付けられている。アイドラ8とスプロケット7との間には、無限軌道としての履帯9が楕円状に巻き掛け装着されている。トラックフレーム6の上面側には、所要の上転輪10が設けられている。上転輪10は、スプロケット7からアイドラ8に向けて進む履帯9を、あるいはその逆の方向に進む履帯9を下側から支え、自重による垂れ下がりと蛇行を防止する働きをする。トラックフレーム6の下面側には、所要の下転輪11が設けられている。下転輪11は、車体重量を分散して履帯9に伝えるとともに、履帯9の蛇行を防止する働きをする。
図2に示されるように、履帯9は、トラックチェーン12を備えている。
トラックチェーン12は、複数のリンクアセンブリ13の互いの端部同士が回動可能に連結されて構成されている。
各リンクアセンブリ13の接地面側には、履板14が図示されないボルトの締結によって固定されている。
履帯リンクアセンブリ13は、トラックチェーン12の中心線Tを挟んで互いに対向する一対の履帯リンク15により構成されている。
図2に示されるように、履帯リンク15は、一端部に対し他端部がトラックチェーン12の中心線Tから離れる方向にオフセットされたオフセットタイプのリンクである。
図3に示されるように、互いの端部同士が重ね合わされる一方の履帯リンク15(図3において外側の履帯リンク15)の他端部には、ピン挿通孔16が形成されている。このピン挿通孔16の周縁には、内向きに開口された段付き穴17がそのピン挿通孔16と同心を成して形成されている。
互いの端部同士が重ね合わされる他方の履帯リンク15(図3において内側の履帯リンク15)の一端部には、ブシュ挿通孔18が形成されている。
第1の実施形態において、履帯リンク装置20は、互いの端部が重ね合わされた履帯リンク15,15同士が同じ軸線O上に配されるリンクピン21および履帯ブシュ22を介して連結されるとともに、軸線O方向に隣接配置されるシール部材23が履帯リンク15の段付き穴17に組み込まれて構成されている。
リンクピン21は、履帯リンク15のピン挿通孔16に圧入されている。リンクピン21とピン挿通孔16とは、その締め代が比較的小さく設定されており、ピン挿通孔16に対しリンクピン21を簡単に抜き差しすることができないようにされている。
履帯ブシュ22は、履帯リンク15のブシュ挿通孔18に圧入されている。履帯ブシュ22とブシュ挿通孔18も同様に、その締め代が比較的小さく設定されており、ブシュ挿通孔18に対し履帯ブシュ22を簡単に抜き差しすることができないようにされている。
リンクピン21においては、潤滑油を溜めるためにその中心部に潤滑油溜め部21aが形成されている。また、この潤滑油溜め部21aから外周面側に貫通する連通孔21bが形成されている。そして、潤滑油溜め部21aに溜められた潤滑油は、連通孔21bを通して外周面側へと導かれ、リンクピン21の外周面と履帯ブシュ22の内周面との間を潤滑する。
なお、リンクピン21の端部と履帯リンク15のピン挿通孔16の周縁との間には、金属製弾性リング24が介在されている。こうして、リンクピン21と履帯リンク15との間から潤滑油が漏れないようにされている。
図4に示されるように、シール部材23は、シール骨組環25に負荷リング26とシール本体27とが設けられて構成されている。
シール骨組環25は、剛性を備えた断面略L字状の金属製の環状部材からなり、円筒部25aと、この円筒部25aから径方向外向きに張り出して履帯ブシュ22と向かい合わせにされるフランジ部25bとを有している。
負荷リング26は、段付き穴17の奥面と周面との交わりの角部に密着可能なゴム等の環状弾性体からなり、シール骨組環25の円筒部25aに当接されている。
シール本体27は、後述するシールリング33のシール接触端面37に接当可能なゴム等の環状弾性体からなり、シール骨組環25のフランジ部25bに一体的に接合されている。
なお、段付き穴17の奥面と履帯ブシュ22との間には、スペーサ28が介挿されている。このスペーサ28は、リンクピン21の外周に装着可能な所定厚み寸法のリング状部材で構成され、段付き穴17に対する履帯ブシュ22の位置を規定して段付き穴17の内部にシール部材23が適切に収納されるスペースを安定的に保つ働きをする。
図3に示されるように、履帯ブシュ22は、リンクピン21が滑合可能に挿入される中空部を有する履帯ブシュ本体31を備えている。
履帯ブシュ本体31は、軸線O方向の中間部を形成する大径円筒部31aと、この大径円筒部31aよりも小径で軸線O方向の両端部をそれぞれ形成する小径円筒部31bとを有している。
小径円筒部31bの外周面には、弾性リング32が、大径円筒部31aと小径円筒部31bとの境界部における段付き面に突き合わされた状態で装着されている。
小径円筒部31bの外周側には、弾性リング32を介してシールリング33が装着されている。
弾性リング32は、ゴム等の弾性部材からなる断面がO型(円形)の環状パッキンで、いわゆるOリングと称されるものが採用されている。この弾性リング32は、履帯ブシュ本体31の小径円筒部31bとシールリング33との間において所定の潰し代を持たせて適度に圧縮した状態で装着され、履帯ブシュ本体31とシールリング33との隙間から潤滑油が外部に漏れるのを防ぐ役目をする。
図4に示されるように、履帯ブシュ本体31における小径円筒部31bの外周面と先端面との交わりの角部には、面取りが施されており、軸線O方向外向きに進むに従って径方向内向きに狭まる先細りのテーパ面34aが形成されている。この先細りのテーパ面34aに宛がいながら弾性リング32を小径円筒部31bの奥の方へと押し込むことにより、弾性リング32をより容易に小径円筒部31bに装着することができる。
小径円筒部31bの先端部(外端部)には、径方向外向きに突出して弾性リング32を掛け止める山状突起35が形成されている。
小径円筒部31bの先端部と基端部との間の中間部における外周面には、軸線O方向外向きに進むに従って径方向外向きに広がる逆テーパ面36が形成されている。
小径円筒部31bの基端部には、大径円筒部31aとの境界角部に丸味を付すようにR面取り部34bが形成されている。このR面取り部34bを設けることにより、小径円筒部31bの基端部に弾性リング32をぴったりと合うように嵌め付けることができる。
履帯ブシュ本体31の小径円筒部31bに設けられる山状突起35および逆テーパ面36は、それぞれ弾性リング32が小径円筒部31b上で軸線O方向外向きに移動するのを極めて簡易な構成で止める第1の係止手段として機能する。
図4に示されるように、シールリング33は、履帯ブシュ本体31の大径円筒部31aの外径と略同じ外径のリング状部材で構成されている。なお、このシールリング33の素材としては、耐食性に優れる例えばステンレスのような金属材料が好ましい。
シールリング33の外端面は、シール部材23のシール本体27に接当されるシール接触端面37とされている。なお、このシール接触端面37には、浸炭処理や高周波焼入れ処理等による表面硬化処理を施してその表面を硬化させるのが好ましい。
シールリング33の外端部には、履帯ブシュ22の端面外側から見たときに弾性リング32を覆うように、径方向内向きに張り出すフランジ部38が形成されている。
シールリング33の内端部には、径方向内向きに突出して弾性リング32に掛け止められる舌状突起39が形成されている。
シールリング33の内周面には、軸線方向内向きに進むに従って径方向内向きに狭まって弾性リング32に掛け止められる逆テーパ面40が舌状突起39に繋がるように形成されている。
シールリング33の内端面には、円環状の溝41が形成されている。
シールリング33に設けられる舌状突起39および逆テーパ面40は、それぞれシールリング33が軸線O方向外向きに移動するのを極めて簡易な構成で止める第2の係止手段として機能する。
シールリング33のシール接触端面37とシール部材23のシール本体27とが接当されることにより、履帯ブシュ22と履帯リンク15との間を密封して潤滑油が漏れ出さないようにされている。
シールリング33の溝41は、舌状突起39および逆テーパ面40をプレス加工で形成する上で必要とされるものである。
図5(a)には、プレス加工を施す前のシールリング33の要部断面図が示されている。
プレス加工を施す前のシールリング33において、溝41の内周面は、軸線O方向内向きに進むに従って径方向内向きに狭まるように傾斜角θ1が付されたテーパ面42とされている。
図5(b)には、プレス加工を施した後のシールリング33の要部断面図が示されている。
プレス加工を施した後のシールリング33において、溝41の内周面は、軸線O方向内向きに進むに従って径方向内向きに狭まるように傾斜角θ2が付されたテーパ面42´とされている。ここで、傾斜角θ2は傾斜角θ1よりも大きい。
このプレス加工においては、パンチ43が用いられる。このパンチ43は、シールリング33の溝41に係合する係合突起43aを有している。この係合突起43aには、軸線O方向内向きに進むに従って径方向内向きに狭まるように傾斜角θ3が付されたテーパ面44が形成されている。ここで、傾斜角θ3は傾斜角θ2よりも大きい。
シールリング33に舌状突起39および逆テーパ面40を形成するに当たっては、まず、図5(a)に示されるように、パンチ43の係合突起43aのテーパ面44をシールリング33の溝41のテーパ面42に突き合わせる。次いで、図示されないプレス機械の作動により、図5(b)に示されるように、パンチ43を軸線O方向外向きに所定の送り量だけ移動させてパンチ43の係合突起43aをシールシング33の溝41の奥へと押し込む。すると、シールリング33の内端部において、弾性リング32に掛け止め可能な舌状突起39と、所定の傾斜角(θ2−θ1)で弾性リング32に接触可能な逆テーパ面40が形成される。
ここで、舌状突起39や逆テーパ面40は、シールリング33の円周方向に一続きで連続的に設けても、あるいはシールリング33の円周方向に所定ピッチで間欠的に設けてもよい。なお、図示による詳細説明は省略するが、舌状突起39や逆テーパ面40をシールリング33の円周方向に所定ピッチで間欠的に設ける場合には、パンチ43の係合突起43aもそれに合わせて円周方向に所定ピッチで間欠的に設けられるのは言うまでもない。
第1の実施形態の履帯ブシュ22においては、弾性リング32の軸線O方向外向きへの移動が履帯ブシュ本体31の逆テーパ面36および山状突起35によって止められる。また、シールリング33の軸線O方向外向きへの移動がシールリング33の逆テーパ面40および舌状突起39によって止められる。したがって、弾性リング32からの潰し代に応じた反発力を受けたとしても、シールリング33は弾性リング32と共に履帯ブシュ本体31に堅固に固定される。そのため、シール部材23がシールリング33に過剰な力で押し付けられるようなことがなく、シール機能を長期に亘って安定的に保つことができる。
シール部材23とシールリング33とからなるシール装置の寿命は、シール部材23のシール本体27の摩耗によるものよりもシールシング33のシール接触端面37の摩耗によるものによって決まることが多い。したがって、シールリング33を必要に応じて、または定期的に交換する必要がある。
シールリング33の交換にあたっては、履帯ブシュ本体31の逆テーパ面36および山状突起35からの係止力、もしくはシールリング33の逆テーパ面40および舌状突起39からの係止力、あるいはそれら両方の係止力が合成された合成係止力に抗してシールリング33を履帯ブシュ本体31から引き離すように引っ張ることにより、履帯ブシュ本体31からシールリング33を容易に取り外すことができる。また、弾性リング32からの潰し代に応じた反発力に抗してシールリング33を履帯ブシュ本体31に向けて押し込むことにより、履帯ブシュ本体31にシールリング33を容易に装着することができる。したがって、シール機能回復のためのメンテナンスを容易に行うことができる。
図6には、本発明の第2の実施形態に係る履帯ブシュおよび履帯リンク装置の構造説明図が示されている。なお、第2の実施形態において、第1の実施形態と同一または同様のものについては図に同一符号を付してその詳細な説明を省略することとし、以下においては第1の実施形態と異なる点を中心に説明することとする。
第2の実施形態の履帯リンク装置20Aは、第1の実施形態の履帯リンク装置20にロータリ式履帯ブシュを採用した態様例に関するものである。
第2の実施形態において、第1の実施形態における履帯ブシュ22に相当する履帯ブシュ50は、軸線O方向の中間部分を構成する第1の履帯ブシュ51と、軸線O方向のそれぞれの端部を構成する第2の履帯ブシュ52とを組み合わせてなるものである。
互いの端部同士が重ね合わされる他方の履帯リンク15(図6において内側の履帯リンク15)のブシュ挿通孔18Aと第1の履帯ブシュ51との間には、所定の隙間が設けられている。第1の履帯ブシュ51は、履帯リンク15およびリンクピン21のそれぞれに対して回転自在とされている。第1の履帯ブシュ51は、いわゆるロータリ式履帯ブシュと称されるものである。
これに対し、第2の履帯ブシュ52は、ブシュ挿通孔18Aに圧入されている。ブシュ挿通孔18Aと第2の履帯ブシュ52とは、その締め代が比較的小さく設定されており、ブシュ挿通孔18Aに対し第2の履帯ブシュ52を簡単に抜き差しすることができないようにされている。
第1の履帯ブシュ51は、第1の実施形態における履帯ブシュ本体31と同様の履帯ブシュ本体61を備えている。
履帯ブシュ本体61は、軸線O方向の中間部を形成する大径円筒部61aと、この大径円筒部61aよりも小径で軸線O方向の両端部をそれぞれ形成する小径円筒部61bとを有している。
小径円筒部61bの外周面には、弾性リング62が、大径円筒部61aと小径円筒部61bとの境界部における段付き面に突き合わされた状態で装着されている。
小径円筒部61bの外周側には、弾性リング62を介してシールリング63が装着されている。
第2の履帯ブシュ52は、履帯ブシュ本体71を備えている。
履帯ブシュ本体71は、軸線O方向の中間部を形成する大径円筒部71aと、この大径円筒部71aよりも小径で軸線O方向の外端部を形成する小径円筒部71bとを有している。
履帯ブシュ本体71の大径円筒部71aにおける内端部には、段付き穴17Aが形成されている。
小径円筒部71bの外周面には、弾性リング72が、大径円筒部71aと小径円筒部71bとの境界部における段付き面に突き合わされた状態で装着されている。
小径円筒部71bの外周側には、弾性リング72を介してシールリング73が装着されている。
段付き穴17Aには、シール部材23Aが組み込まれている。
ここで、大径円筒部61a、71a、小径円筒部61b,71b、弾性リング62,72およびシールリング63,73は、それぞれ第1の実施形態における大径円筒部31a、小径円筒部31b、弾性リング32およびシールリング33と同様のものである。
なお、第2の履帯ブシュ52における段付き穴17Aの奥面と第1の履帯ブシュ51との間には、スペーサ28Aが介挿されている。このスペーサ28Aは、リンクピン21の外周に装着可能な所定厚み寸法のリング状部材で構成され、段付き穴17Aに対する第1の履帯ブシュ51の位置を規定してその段付き穴17Aの内部にシール部材23Aが適切に収納されるスペースを安定的に保つ働きをする。
第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができるのは言うまでもない。
さらに、第2の実施形態によれば、第1の履帯ブシュ51がロータリ式ブシュとされるので、スプロケット7(図1参照)との噛み合い時の接触摩擦を軽減することができるという利点がある。
図7には、本発明の第3の実施形態に係る履帯ブシュおよび履帯リンク装置の構造説明図が示されている。なお、第3の実施形態において、第1の実施形態と同一または同様のものについては図に同一符号を付してその詳細な説明を省略することとし、以下においては第1の実施形態と異なる点を中心に説明することとする。
第3の実施形態の履帯リンク装置20Bは、第1の実施形態の履帯リンク装置20にカートリッジピン方式の構造を採用した態様例に関するものである。
図7に示されるように、互いの端部同士が重ね合わされる一方の履帯リンク15(図7において外側の履帯リンク15)の他端部には、スリーブ挿通孔74が形成されている。このスリーブ挿通孔74には、スリーブ75が挿通されている。
スリーブ75には、リンクピン21が挿通されるピン挿通孔16Bが形成されている。このピン挿通孔16Bの周縁には、内向きに開口された段付き穴17Bがそのピン挿通孔16Bと同心を成して形成されている。このスリーブ75におけるピン挿通孔16Bおよび段付き穴17Bは、それぞれ第1の実施形態における履帯リンク15のピン挿通孔16および段付き穴17に相当するものである。
リンクピン21の端部とスリーブ75のピン挿通孔16Bの周縁との間には、金属製弾性リング24が介在されている。こうして、リンクピン21とスリーブ75との間から潤滑油が漏れないようにされている。
第3の実施形態においては、リンクピン21と、履帯ブシュ22と、シール部材23と、金属製弾性リング24と、スペーサ28と、スリーブ75とによってカートリッジピン80Bが構成されている。このカートリッジピン80Bは、連結ピンとしての働きと軸受装置としての働きと密封装置としての働きとを兼ね備えるものである。
第3の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができるのは言うまでもない。
第3の実施形態においては、カートリッジピン80Bが採用されている。カートリッジピン80Bの抜き差しは、連結ピン、軸受装置および密封装置を一纏めに抜き差しするのと同等である。したがって、履帯9(図1,2参照)の接続・切断作業の効率を向上させることができるという利点がある。
図8には、本発明の第4の実施形態に係る履帯ブシュおよび履帯リンク装置の構造説明図が示されている。なお、第4の実施形態において、前記各実施形態と同一または同様のものについては図に同一符号を付してその詳細な説明を省略することとし、以下においては前記各実施形態と異なる点を中心に説明することとする。
第4の実施形態の履帯リンク装置20Cは、第2の実施形態の履帯リンク装置20Aと第3の実施形態の履帯リンク装置と組み合わせて、ロータリ式履帯ブシュとカートリッジピン方式の構造とを採用した態様例に関するものである。
第4の実施形態においては、リンクピン21と、第1の履帯ブシュ51と、第2の履帯ブシュ52と、シール部材23,23Aと、金属製弾性リング24と、スペーサ28,28Aと、スリーブ75とによってカートリッジピン80Cが構成されている。このカートリッジピン80Cは、やはり連結ピンとしての働きと軸受装置としての働きと密封装置としての働きとを兼ね備えるものである。
第4の実施形態によれば、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができるのは言うまでもない。
さらに、第4の実施形態によれば、第2の実施形態と第3の実施形態との合成効果を得ることができる。すなわち、スプロケット7(図1参照)との噛み合い時の接触摩擦を軽減することができるとともに、履帯9(図1,2参照)の接続・切断作業の効率を向上させることができる。
なお、上記の実施形態においては、図4に示されるように、第1の係止手段として、山状突起35と逆テーパ面36とを採用する例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、図9に示されるように、逆テーパ面36に代えて、軸線O方向に平行なフラット面81を採用し、第1の係止手段として実質的に山状突起35のみを機能させる構成を採用することもできる。
15 履帯リンク
20,20A,20B,20C 履帯リンク装置
21 リンクピン
22,50 履帯ブシュ
23,23A シール部材
31,61,71 履帯ブシュ本体
31a,61a,71a 大径円筒部
31b,61b,71b 小径円筒部
32,62,72 弾性リング
33,63,73 シールリング
35 山状突起(第1の係止手段)
36 逆テーパ面(第1の係止手段)
37 シール接触端面
39 舌状突起(第2の係止手段)
40 逆テーパ面(第2の係止手段)
41 溝
51 第1の履帯ブシュ
52 第2の履帯ブシュ
Claims (5)
- 軸線方向に隣接配置のシール部材に接触されるシール接触端面を有する履帯ブシュにおいて、
軸線方向の中間部を形成する大径円筒部とその大径円筒部よりも小径で軸線方向の端部を形成する小径円筒部とを有してなる履帯ブシュ本体と、
前記小径円筒部の外周に装着される弾性リングと、
外端側に前記シール接触端面が形成され、前記弾性リングを介して前記小径円筒部に装着されるシールリングと、
前記弾性リングが前記小径円筒部の軸線方向外向きに移動するのを止める第1の係止手段と、
前記シールリングが前記小径円筒部の軸線方向外向きに移動するのを止める第2の係止手段とを備え、
前記第2の係止手段は、前記シールリングの内端面に円周方向の溝を設けることによって形成され、該溝の径方向内側において、径方向内向きに突出して前記弾性リングに掛け止められる舌状突起と、該舌状突起に連設され、前記シールリングの内周面において、軸線方向内向きに進むに従って径方向内向きに狭まるテーパ面とにより構成される
ことを特徴とする履帯ブシュ。 - 前記第1の係止手段は、前記小径円筒部の外周面において、軸線方向外向きに進むに従って径方向外向きに広がるテーパ面である請求項1に記載の履帯ブシュ。
- 前記第1の係止手段は、前記小径円筒部の外端部において、径方向外向きに突出して前記弾性リングを掛け止める突起である請求項1または2に記載の履帯ブシュ。
- 前記シールリングの外径寸法と前記大径円筒部の外径寸法とが略同じである請求項1〜3のいずれかに記載の履帯ブシュ。
- 互いの端部が重ね合わされた履帯リンク同士が同軸線上に配されるリンクピンおよび履帯ブシュを介して連結されるとともに、前記履帯ブシュの軸線方向に隣接配置されるシール部材が組み込まれて構成される履帯リンク装置において、
前記履帯ブシュは、請求項1〜4のいずれかに記載の履帯ブシュであることを特徴とする履帯リンク装置。
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